JP2016183228A - 塗布液組成物、被覆層形成方法、および該被覆層形成方法によって形成された被覆層を有するコイル - Google Patents

塗布液組成物、被覆層形成方法、および該被覆層形成方法によって形成された被覆層を有するコイル Download PDF

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Tokuyuki Hayashisaka
徳之 林坂
蛯名 武雄
Takeo Ebina
武雄 蛯名
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Abstract

【課題】 被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成するための塗布液組成物であって、均一な厚みの被覆層を形成することができる塗布液組成物、該塗布液組成物を用いた被覆層形成方法、および該被覆層形成方法によって形成された被覆層を有するコイルを提供する。【解決手段】 本発明の塗布液組成物は、被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成するためのものであり、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が混合液体に溶解されて成る。前記混合液体は、ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体と、該第1の液体よりも沸点が低く、ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体とから成る。【選択図】 なし

Description

本発明は、被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成するための塗布液組成物、該塗布液組成物を用いた被覆層形成方法、ならびに被覆層形成方法による被覆層が形成されたコイルに関する。
ポリイミドは、耐薬品性、耐熱性、および電気的絶縁性などの特性に優れた樹脂であるので、これらの特性を付与するための被覆層を形成する材料として用いられる。たとえば、ポリイミドは、モータ用のコイルにおいて螺旋状の導線の表面に被覆層を形成するための材料として用いられ、その他として電子回路基盤の金属板表面、フレキシブル基盤の金属表面、ガラス繊維布、炭素繊維布、平板状ヒートパイプ、円筒状ヒートパイプに被覆層を形成するための材料として用いられる。
以下では、螺旋状の導線の表面にポリイミドの被覆層が形成されて成るモータ用のコイルを例として、説明する。
モータ用コイルは小型高出力を求めて、エッジワイズコイルなどの平角型金属コイルが用いられるようになっている。これらの平角型金属コイルは、予めポリイミドの被覆層が形成された平角型導線を螺旋状に巻くことで製造されている(特許文献1参照)。
ポリイミドの被覆層を形成する方法としては、電着塗装を行う方法が知られている(特許文献2参照)。
近年、より小型で高出力に適した特殊な形状の異形コイルが求められており、異形コイルは占積率を最大にするため、異なる断面形状を有する複数の導線部材が接合された、螺旋状の導線によって構成されている(特許文献3参照)。
特開2005−174561号公報 特開2008−50634号公報 国際公開第2013/187501号
特許文献3に開示されるような異形コイルにおいて、導線の表面にポリイミドの被覆層が形成された異形コイルとする場合、導線が、異なる断面形状を有する複数の導線部材が接合された複雑な形状であるので、予めポリイミドの被覆層が形成された導線を螺旋状に巻くことで異形コイルを製造することは困難である。そのため、螺旋状の導線と、該導線の表面に形成されたポリイミドから成る被覆層とを有する異形コイルを製造する場合、異なる断面形状を有する複数の導線部材を接合して形成された螺旋状の導線を予め準備しておいて、その螺旋状の導線の表面にポリイミドの被覆層を形成することになる。
ポリイミドから成る被覆層が形成された異形コイルを製造するに際し、特許文献2に開示されるような電着塗装により被覆層を形成する場合には、被覆層の厚みを厚くすることが困難であり、また、特殊な分子構造を有するポリイミドが必要となるため、製造コストが高くなってしまう。
電着塗装以外の、ポリイミドの被覆層を形成する方法としては、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含む塗布液を、被塗布物の表面に浸漬塗布などの方法で塗布し、その塗布後の被塗布物を加熱することによってポリアミド酸を脱水閉環反応させて、被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成する方法が知られている。
しかしながら、従来公知の浸漬塗布などの塗布法によって被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成した場合には、被覆層の厚みが不均一なものとなる。その理由は、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が、N−メチル−2−ピロリドンなどの高沸点溶媒にしか溶解しないためである。すなわち、ポリアミド酸が高沸点溶媒に溶解されて成る塗布液を被塗布物に塗布した場合、塗布液中の高沸点溶媒が蒸発し難いので、塗布後に液ダレ、液流れが発生し、被覆層の厚みが不均一なものとなる。
本発明の目的は、被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成するための塗布液組成物であって、厚みの均一な被覆層を形成することができる塗布液組成物、該塗布液組成物を用いた被覆層形成方法、および該被覆層形成方法によって形成された被覆層を有するコイルを提供することである。
本発明は、被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成するための塗布液組成物であって、
ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸と、
前記ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体と、前記第1の液体よりも沸点が低く、前記ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体とから成る混合液体と、を含み、
前記ポリアミド酸が、前記混合液体に溶解されて成る塗布液組成物である。
また本発明の塗布液組成物において、前記第2の液体の沸点は、20℃以上100℃以下であることが好ましい。
また本発明の塗布液組成物において、前記第1の液体は、N−メチル−2−ピロリドンであることが好ましい。
また本発明の塗布液組成物において、前記第2の液体は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メタノール、およびエタノールから選ばれた液体であることが好ましい。
また本発明の塗布液組成物において、前記ポリアミド酸は、下記式(I)または下記式(II)で表される芳香族ポリアミド酸の少なくともいずれか一方であることが好ましい。
[式(I)中、nは2以上の整数である。]
[式(II)中、nは2以上の整数である。]
また本発明は、前記塗布液組成物を、被塗布物の表面に塗布する塗布工程と、
前記塗布液組成物を塗布した後の被塗布物を加熱し、被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成する被覆層形成工程と、を含むことを特徴とする被覆層形成方法である。
また本発明の被覆層形成方法において、前記被塗布物が、螺旋状の導線であることが好ましい。
また本発明は、螺旋状の導線と、
前記被覆層形成方法によって前記導線の表面に形成された、ポリイミドから成る被覆層と、を含むことを特徴とするコイルである。
また本発明は、螺旋状の導線と、
前記導線の表面に形成された、ポリイミドから成る被覆層とを含み、
前記被覆層は、
ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸と、該ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体、および該第1の液体よりも沸点が低く該ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体から成る混合液体と、を含み、該ポリアミド酸が該混合液体に溶解されて成る塗布液組成物を、前記導線の表面に塗布した後に加熱することによって形成される、ことを特徴とするコイルである。
本発明によれば、塗布液組成物は、被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成するためのものであり、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が混合液体に溶解されて成る。前記混合液体は、ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体と、該第1の液体よりも沸点が低く、ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体とから成る。
本発明の塗布液組成物は、混合液体が、ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体に加えて、ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体を含むので、混合液体中においてポリアミド酸の分子鎖間が広がり、ポリアミド酸がゲル状態(いわゆる膨潤状態)となる。ポリアミド酸の分子鎖間が広がってポリアミド酸がゲル状態(膨潤状態)となると、第1の液体に対する溶解性が高くなり、その結果、第1の液体のみでポリアミド酸を溶解させたものに比べて、第1の液体と第2の液体とから成る混合液体では、濃度分布が均一で、かつ粘度が低く流動性が高い塗布液組成物とすることができる。したがって、この塗布液組成物を被塗布物に塗布することによって、均一な厚みの被覆層を形成することができる。
さらに、混合液体中の、ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体が、ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体よりも沸点が低いので、この塗布液組成物を被塗布物に塗布して被覆層を形成する際には、沸点の低い第2の液体が速やかに蒸発し、塗布後に液ダレ、液流れが発生することを防止することができる。その結果、均一な厚みの被覆層を形成することができる。
また本発明によれば、好ましくは、第2の液体の沸点が、20℃以上100℃以下であるので、たとえば塗布液組成物の製造時や貯蔵時に第2の液体が蒸発してしまうのが抑制されて、塗布液組成物におけるポリアミド酸の濃度が変化するのが抑制されるとともに、塗布液組成物を被塗布物に塗布して被覆層を形成する際には、沸点の低い第2の液体が速やかに蒸発し、塗布後に液ダレ、液流れが発生することを防止することができる。
また本発明によれば、好ましくは、第1の液体がN−メチル−2−ピロリドンである。また、好ましくは、第2の液体がテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メタノール、およびエタノールから選ばれた液体である。第1の液体がN−メチル−2−ピロリドンであることによって、ポリアミド酸に対する溶解性が高いものとなり、第2の液体がテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メタノール、およびエタノールから選ばれた液体であることによって、ポリアミド酸に対する膨潤性が高いものとなる。
また本発明によれば、好ましくは、ポリアミド酸が、下記式(I)または下記式(II)で表される芳香族ポリアミド酸の少なくともいずれか一方である。
[式(I)中、nは2以上の整数である。]
[式(II)中、nは2以上の整数である。]
ポリアミド酸が上記式(I)または上記式(II)で表される芳香族ポリアミド酸の少なくともいずれか一方であることによって、耐薬品性、耐熱性、および電気的絶縁性などの特性に優れたポリイミドから成る被覆層を、被塗布物の表面に形成することができる。また、上記式(I)または上記式(II)で表される芳香族ポリアミド酸は、一般的に、N−メチル−2−ピロリドンなどの高沸点溶媒にしか溶解されないが、本発明の塗布液組成物を構成する、前記第1の液体と前記第2の液体とから成る混合液体は、上記式(I)または上記式(II)で表される芳香族ポリアミド酸の少なくともいずれか一方を、濃度分布が均一で、かつ粘度が低く流動性が高い状態で溶解させることができる。
また本発明によれば、被覆層形成方法は、被塗布物の表面に塗布液組成物を塗布する塗布工程と、塗布液組成物を塗布した後の被塗布物を加熱し、被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成する被覆層形成工程と、を含む。
本発明の被覆層形成方法において、塗布工程では、前記第1の液体と前記第2の液体とから成る混合液体に、濃度分布が均一で、かつ粘度が低く流動性が高い、塗布後の液ダレ、液流れの発生が防止された、本発明に係る塗布液組成物を、被塗布物の表面に塗布するので、均一な厚みの被覆層を形成することができる。
また本発明によれば、被覆層形成方法において、好ましくは、塗布工程では、被塗布物としての螺旋状の導線に、塗布液組成物を塗布する。塗布工程で用いる塗布液組成物が、濃度分布が均一で、かつ粘度が低く流動性が高い、塗布後の液ダレ、液流れの発生が防止された塗布液組成物であるので、被塗布物が複雑な形状を有する螺旋状の導線であったとしても、該螺旋状の導線の表面に、均一な厚みの被覆層を形成することができる。
また本発明によれば、コイルは、螺旋状の導線と、該螺旋状の導線の表面に形成された、ポリイミドから成る被覆層と、を含む。コイルの被覆層が、本発明に係る被覆層形成方法によって形成された、均一な厚みの被覆層であるので、コイルは、電気的絶縁性などの特性に優れた被覆層が形成されたものとなる。
また本発明によれば、コイルは、螺旋状の導線と、該螺旋状の導線の表面に形成された、ポリイミドから成る被覆層と、を含む。コイルの被覆層は、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸と、ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体、および第1の液体よりも沸点が低くポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体から成る混合液体と、を含み、ポリアミド酸が混合液体に溶解されて成る塗布液組成物を、前記導線の表面に塗布した後に加熱することによって形成される。このような被覆層は、均一な厚みの被覆層であるので、コイルは、電気的絶縁性などの特性に優れた被覆層が形成されたものとなる。
本発明の一実施形態に係る被覆層形成方法を示す工程図である。 本発明の一実施形態に係るコイル10を備えるコイル装置20の構成を概略的に示す図である。 コイル10の断面図である。
<塗布液組成物>
本実施形態に係る塗布液組成物は、被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成するための組成物である。ポリイミドは、一般に溶媒に対して不溶であり、加熱によっても溶融しないため、その前駆体であるポリアミド酸を溶解させて成るポリアミド酸溶液を被塗布物の表面に塗布した後、乾燥、加熱処理を行い、ポリアミド酸を脱水閉環反応させて、ポリイミドから成る被覆層を形成する。
被塗布物としては、モータ用のコイルにおける螺旋状の導線、電子回路基盤の金属板表面、フレキシブル基盤の金属表面、ガラス繊維布、炭素繊維布、平板状ヒートパイプ、円筒状ヒートパイプなどが挙げられる。
本実施形態に係る塗布液組成物は、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸と、混合液体とを含み、ポリアミド酸が、前記混合液体に溶解されて成る。混合液体は、ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体と、前記第1の液体よりも沸点が低く、ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体とから成る。
ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸は、芳香族ポリアミド酸であることが好ましく、たとえば、無水ピロメリット酸と4,4’ジアミノジフェ二ルエーテルから合成されるポリアミド酸、無水ピロメリット酸の代わりにビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物を用いたポリアミド酸、4,4’ジアミノジフェ二ルエーテルの代わりに1,4−ジアミノベンゼンを用いたポリアミド酸、およびそれらを2種以上混合して使用したものなどが挙げられる。
これらの中でも、ポリアミド酸は、下記式(I)または下記式(II)で表される芳香族ポリアミド酸の少なくともいずれか一方であることが好ましい。すなわち、下記式(I)または下記式(II)で表される芳香族ポリアミド酸をそれぞれ単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
[式(I)中、nは2以上の整数である。]
[式(II)中、nは2以上の整数である。]
ポリアミド酸が上記式(I)または上記式(II)で表される芳香族ポリアミド酸の少なくともいずれか一方であることによって、耐薬品性、耐熱性、および電気的絶縁性などの特性に優れたポリイミドから成る被覆層を、被塗布物の表面に形成することができる。また、上記式(I)または上記式(II)で表される芳香族ポリアミド酸は、一般的に、N−メチル−2−ピロリドンなどの高沸点溶媒にしか溶解されないが、本実施形態の塗布液組成物を構成する、後述の混合液体は、上記式(I)または上記式(II)で表される芳香族ポリアミド酸の少なくともいずれか一方を、濃度分布が均一で、かつ粘度が低く流動性が高い状態で溶解させることができる。
本発明にかかるポリアミド酸の平均分子量は、特に限定されるものではないが、平均分子量が10,000以上のポリアミド酸が好ましく用いられる。ポリアミド酸の平均分子量が10,000未満である場合には、塗布液組成物を塗布することによって形成される、被塗布物表面のポリイミドから成る被覆層の強度が低下するおそれがある。なお、ポリアミド酸の平均分子量は、ゲルパーミレーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリエチレングリコール換算の値で算出することができる。
塗布液組成物において、ポリアミド酸の濃度は、特に限定されるものではないが、たとえば、5重量%以上30重量%以下であり、より好ましくは、5重量%以上20重量%以下である。
本実施形態では、ポリアミド酸は、ポリアミド酸の単独であっても良いし、何らかのフィラーを混合したものであっても良い。混合する場合に用いるフィラーとしては、水不溶性無機化合物が好ましい。水不溶性無機化合物としては、たとえば、シリカ化合物、シリカアルミナ化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、層状ケイ酸塩鉱物、および、窒化物からなる群のうち少なくとも1種であることが好ましい。なかでも、シリカ化合物、シリカアルミナ化合物や、層状ケイ酸塩鉱物であることが好ましい。前記層状ケイ酸塩鉱物としては、たとえば、天然物または合成物の雲母、タルク、カオリン、パイロフィライト、セリサイト、バーミキュライト、スメクタイト、ベントナイト、スチーブンサイト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ノントロナイトなどが挙げられる。
前記シリカアルミナ化合物としては、ゼオライト、ムライトなどが挙げられる。前記シリカ化合物としては、ワラステナイト、ガラスビーズなどが挙げられる。前記アルミニウム化合物としては、たとえば、スピネル、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムなどが挙げられる。前記カルシウム化合物としては、たとえば、炭酸カルシウムなどが挙げられる。前記窒化物としては、たとえば、窒化ケイ素、窒化ホウ素などが挙げられる。
水不溶性無機化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。水不溶性無機化合物を用いることによって、被塗布物の表面に形成されるポリイミドから成る被覆層の絶縁寿命が向上する。
水不溶性無機化合物の混合割合は、用途によって異なり、特に限定されないが、被塗布物の表面に形成されるポリイミドから成る被覆層を構成する固形分の全重量に対して1〜60重量%となるような混合割合であることが好ましい。水不溶性無機化合物の混合割合が1重量%未満では絶縁寿命の向上効果が薄くなるおそれがあり、60重量%を超える場合では、被塗布物の表面に形成されるポリイミドから成る被覆層が割れるおそれがある。
ポリアミド酸を脱水閉環反応させることによって得られる、被塗布物の表面に形成される被覆層を構成するポリイミドは、下記式(1)の繰り返し構造を有する樹脂である。
式(1)中、Rは4価であり、ベンゼン環を1つまたは2つ有する有機基である。なかでも、Rは下記式(2)に示す構造であることが好ましく、ポリイミドは、Rとして下記式(2)に示す構造を単独で有するものであってもよいし、2種類以上有する共重合体であってもよい。
式(1)中、Rは2価であり、ベンゼン環を1つまたは2つ有する有機基である。なかでも、Rは下記式(3)に示す構造であることが好ましく、ポリイミドは、Rとして下記式(3)に示す構造を単独で有するものであってもよいし、2種類以上有する共重合体であってもよい。
なかでも、式(1)中、RおよびRは、下記式(4)に示す構造であることが好ましい。ポリイミドは、R、Rとして下記式(4)に示す構造を単独で有するものであってもよいし、2種類以上有する共重合体であってもよい。
なお、上記式(I)または上記式(II)で表されるポリアミド酸を脱水閉環反応させて得られるポリイミドは、上記式(1)中においてRおよびRが、上記式(4)に示す構造である。
本実施形態の塗布液組成物は、前述したように、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が、ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体と、前記第1の液体よりも沸点が低く、ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体とによって構成される混合液体に溶解されて成る。
第1の液体は、ポリアミド酸を溶解させ得る液体であれば特に限定されるものではない。ポリアミド酸を溶解させ得る液体とは、該液体中においてポリアミド酸の分子鎖間が完全に離れた状態となり、均一な液相を形成することが可能な液体をいう。このような、ポリアミド酸を溶解させ得る液体である第1の液体としては、たとえば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらのなかでも、環境負荷や人体への影響等が少なく、ポリアミド酸に対する溶解性が高いという観点から、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
第2の液体は、第1の液体よりも沸点が低く、ポリアミド酸を膨潤させ得る液体であれば特に限定されるものではない。ポリアミド酸を膨潤させ得る液体とは、該液体中においてポリアミド酸の分子鎖間が完全に離れた状態とはならずに、ポリアミド酸の分子鎖間が広がって、ポリアミド酸をゲル状態にして軟化させることが可能な液体をいう。
任意の一の液体が、ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体であるか否かは、ポリアミド酸からなるフィルムの引張試験により確認することができる。具体的には、直径5mmφの2本の円柱状部材を、互いに20mmの間隔をあけて平行に設置し、その上に幅5mm、長さ50mm、厚み50μmのポリアミド酸フィルムを載置する。ポリアミド酸フィルムの長手方向一端部を一方の円柱状部材に固定し、長手方向他端部には30gの錘をつけて、ポリアミド酸からなるフィルムを2本の円柱状部材間に張架させる。このように、2本の円柱状部材間に張架されたポリアミド酸からなるフィルム上に液体を滴下し、ポリアミド酸からなるフィルムの伸び状態を観察する。液体を滴下することによってポリアミド酸からなるフィルムが伸び、やがては切断される現象が観察された場合には、その液体が、ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体であると判断することができる。
前記ポリアミド酸を膨潤させ得る液体である第2の液体としては、たとえば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系の液体、メタノール、エタノールなどの低分子量のアルコール系の液体が挙げられる。これらのなかでも、混合液体においてポリアミド酸が析出するまでの混合可能な割合が大きいこと、塗布後の乾燥速度が高いことから、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メタノール、およびエタノールから選ばれた液体であることが好ましく、テトラヒドロフランが特に好ましい。
本実施形態に係る塗布液組成物は、混合液体が、ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体に加えて、ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体を含むので、混合液体中においてポリアミド酸の分子が、第2の液体の分子との静電的な相互作用によって、第2の液体の分子との間に弱い結合を生じ、ポリアミド酸の分子鎖間に第2の液体の分子が配向する現象(溶媒和)が起こると推察される。
このように、ポリアミド酸の分子鎖間に第2の液体の分子が配向する現象が生じると、ポリアミド酸の分子鎖間が広がり、ポリアミド酸がゲル状態(いわゆる膨潤状態)となる。ポリアミド酸の分子鎖間が広がってポリアミド酸がゲル状態(膨潤状態)となると、第1の液体に対する溶解性が高くなり、その結果、第1の液体のみでポリアミド酸を溶解させたものに比べて、第1の液体と第2の液体とから成る混合液体では、濃度分布が均一で、かつ粘度が低く流動性が高い塗布液組成物とすることができる。したがって、この塗布液組成物を被塗布物に塗布することによって、均一な厚みの被覆層を形成することができる。
さらに、混合液体中の、ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体が、ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体よりも沸点が低いので、この塗布液組成物を被塗布物に塗布して被覆層を形成する際には、沸点の低い第2の液体が速やかに蒸発し、塗布後に液ダレ、液流れが発生することを防止することができる。その結果、均一な厚みの被覆層を形成することができる。
また、混合液体を構成する第2の液体は、沸点が、20℃以上100℃以下であることが好ましく、40℃以上80℃以下であることがより好ましい。これによって、たとえば、塗布液組成物の製造時や貯蔵時に第2の液体が蒸発してしまうのが抑制されて、塗布液組成物におけるポリアミド酸の濃度が変化するのが抑制されるとともに、塗布液組成物を被塗布物に塗布して被覆層を形成する際には、沸点の低い第2の液体が速やかに蒸発し、塗布後に液ダレ、液流れが発生することを防止することができる。
また、塗布後に液ダレ、液流れが発生することを防止する対策として、ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体よりも沸点が低く、ポリアミド酸を溶解も膨潤もさせない液体(以下、「ポリアミド酸に対する貧溶媒」という)である酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系の貧溶媒や、ノルマルヘキサンなどの炭化水素系の貧溶媒を、ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体に代えて用いることが考えられるが、この場合には、塗布後に乾燥させた塗膜に皺が発生するという問題が生じる。これに対して、本実施形態に係る塗布液組成物のように、ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体と、ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体との混合液体を用いることによって、塗布後に乾燥させた塗膜に皺が発生することを防止することができる。
また、塗布液組成物を構成する混合液体において、混合液体の全重量(W1)に対する第2の液体の重量(W2)の割合[{(W2/W1)×100}重量%]は、特に限定されるものではないが、たとえば、20重量%以上70重量%以下である。20重量%未満である場合には、塗布後に液ダレ、液流れが発生するおそれがあり、70重量%を超える場合には、ポリアミド酸の濃度分布が均一でなくなるおそれがある。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体と、ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体との混合液体以外の液体等が混合されていてもよい。さらに、本実施形態に係る塗布液組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて例えば、塗布液組成物が帯電する事を防ぐ静電防止剤やフィラー等の分散を良くする分散剤等の添加剤を添加してもよい。
<被覆層形成方法>
次に、図1を用いて本実施形態に係る被覆層形成方法について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る被覆層形成方法を示す工程図である。本実施形態に係る被覆層形成方法は、被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成するための方法であって、塗布液組成物調製工程s1と、塗布工程s2と、被覆層形成工程s3とを含む。
塗布液組成物調製工程s1では、前述した、本実施形態に係る塗布液組成物を調製する。塗布液組成物は、撹拌混合装置(たとえば、シンキー社製の自転公転ミキサー「ARE−310」)を用いて調製することができる。具体的には、第1の液体と第2の液体との混合液体に、撹拌しながらポリアミド酸を投入し、前記混合液体にポリアミド酸を溶解させることによって塗布液組成物を調製することができる。なお、第1の液体にポリアミド酸を溶解させたポリアミド酸溶液を予め調製しておいて、そのポリアミド酸溶液に、撹拌しながら第2の液体を投入し、混合液体にポリアミド酸が溶解されて成る塗布液組成物を調製するようにしても良い。
塗布液組成物調製工程s1で調製される塗布液組成物の粘度は、特に限定されるものではないが、20℃の温度条件下で100mPa・s以上1000mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以上200mPa・s以下であることがより好ましい。なお、塗布液組成物の粘度は、B型粘度計で測定することができる。塗布液組成物の粘度が100mPa・s未満である場合には、被塗布物に対する塗布後の塗膜の膜厚が薄くなりすぎて、所望の膜厚を得るためには塗布回数を増やす必要が生じて効率的ではない。塗布液組成物の粘度が1000mPa・sを超える場合には、被塗布物に対する塗布後の塗膜の膜厚が厚くなりすぎて、液ダレや液流れが発生するおそれがある。
塗布工程s2は、塗布液組成物調製工程s1で調製した塗布液組成物を、被塗布物の表面に塗布する工程であり、塗膜形成工程s21と乾燥工程s22とを含む。
塗膜形成工程s21では、浸漬塗布法やスプレー塗布法などの方法で、被塗布物の表面に塗布液組成物を塗布し、被塗布物の表面に塗膜を形成する。塗布方法は、浸漬塗布法およびスプレー塗布法のいずれであってもよいが、本実施形態では浸漬塗布法を用いる。塗膜形成工程s21において、浸漬塗布法により被塗布物の表面に塗膜を形成する場合には、塗布液組成物に浸漬後の被塗布物の引き上げ速度は、目標とする塗膜の膜厚に応じて適宜変更可能であるが、0.01cm/s以上5cm/s以下であることが好ましい。引き上げ速度が0.01cm/s未満である場合には、被塗布物に対する塗布後の塗膜の膜厚が薄くなりすぎて、所望の膜厚を得るためには塗布回数を増やす必要が生じて効率的ではない。引き上げ速度が5cm/sを超える場合には、被塗布物に対する塗布後の塗膜の膜厚が厚くなりすぎて、液ダレや液流れが発生するおそれがある。
乾燥工程s22では、塗膜形成工程s21において被塗布物の表面に形成された塗膜を乾燥する。乾燥工程s22において塗膜の乾燥温度は、特に限定されるものではないが、60℃以上150℃以下であることが好ましい。塗膜の乾燥温度が60℃未満である場合には、塗膜の乾燥に要する時間が長時間となり効率的ではない。塗膜の乾燥温度が150℃を超える場合には、塗膜中に残留している液体成分が急激に蒸発するため、乾燥後の塗膜に欠損が生じるおそれがある。
また、乾燥工程s22において乾燥後の塗膜の膜厚は特に限定されるものではないが、たとえば、3μm以上200μm以下であることが好ましい。乾燥後の塗膜の膜厚が3μm未満である場合には、絶縁性が確保できなくなるおそれがあり、また被塗布物を保護する効果が低くなるおそれがある。200μmを超える場合には、被塗布物の外形サイズが大きくなるおそれがあり、また乾燥が不十分になるおそれがある。
被覆層形成工程s3では、乾燥工程s22において塗膜が乾燥された後の被塗布物を加熱することによって、ポリアミド酸を脱水閉環反応させて、被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成する。被覆層形成工程s3において被塗布物の加熱条件は、ポリアミド酸の脱水閉環反応が起こる条件であれば特に限定されるものではないが、たとえば、120℃以上400℃以下の温度下で、0.5時間以上10時間以下の時間加熱するような条件であることが好ましい。なお、被覆層形成工程s3において被塗布物を加熱するときには、120℃以上400℃以下の温度範囲内において、加熱温度を連続的に上昇させる、または加熱温度を断続的に多段階に上昇させるようにしても良い。
被覆層形成工程s3における加熱によって被塗布物の表面に形成された、ポリイミドから成る被覆層の層厚は、たとえば、2μm以上100μm以下であることが好ましい。被覆層の層厚が2μm未満である場合には、絶縁性が確保できなくなるおそれがあり、また被塗布物を保護する効果が低くなるおそれがある。100μmを超える場合には、被塗布物の外形サイズが大きくなるおそれがあり、また脱水する水が塗膜内に閉じ込められることで加熱後の塗膜に欠損が生じるおそれがある。
以上のように、本実施形態に係る被覆層形成方法において、塗布工程s2では、第1の液体と第2の液体とから成る混合液体に、濃度分布が均一で、かつ粘度が低く流動性が高い状態でポリアミド酸が溶解され、塗布後の液ダレ、液流れの発生が防止された、本実施形態に係る塗布液組成物を、被塗布物の表面に塗布するので、均一な厚みの被覆層を形成することができる。
また、本実施形態に係る被覆層形成方法において、塗布工程s2では、塗布液組成物を塗布する対象となる被塗布物が、モータ用のコイルとして使用される螺旋状の導線であることが好ましい。塗布工程s2で用いる塗布液組成物が、濃度分布が均一で、かつ粘度が低く流動性が高い状態でポリアミド酸が溶解され、塗布後の液ダレ、液流れの発生が防止された塗布液組成物であるので、被塗布物が複雑な形状を有する螺旋状の導線であったとしても、該螺旋状の導線の表面に、均一な厚みの被覆層を形成することができる。
<コイル>
次に、図2および図3を用いて本実施形態に係るコイルについて説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るコイル10を備えるコイル装置20の構成を概略的に示す図である。図3は、コイル10の断面図である。
コイル10は、螺旋状の導線11の表面に、ポリイミドから成る被覆層11aが形成されていること以外は、特許文献3に記載されるコイル状部材と同様に構成される。コイル10は、モータ、発電機、トランスなどの電気機器であるコイル装置20を構成する一部品である。
本実施形態に係るコイル10は、螺旋状の導線11と、該導線11の表面に形成された、ポリイミドから成る被覆層11aとを含んで構成され、被覆層11aが、前述した被覆層形成方法によって形成された層であることを特徴とする。螺旋状の導線11は、断面形状の異なる複数の導線部材12が接合されて、螺旋状に形成されたものである。螺旋状の導線11の材質は、導電性を有する金属材料であれば特に限定されるものではないが、たとえば銅である。
以下では、コイル装置20の構成を説明することにより、コイル10の構成について、より詳細に説明する。
コイル装置20は、たとえば、複数のコア21が周方向に間隔をあけて設けられた環状部材22を備えている。コア21は、たとえば、環状部材22に対して、環状部材22の径方向に突出するように配設されており、コア21の軸方向を環状部材22の径方向としている。コア21は、たとえば、複数の電磁鋼板を積層して構成されている。各コア21の間には、コイル10を配設するための空間部23が形成されている。各空間部23は、たとえば、環状部材22の径方向の外側に向かって周方向の幅が広くなっている。なお、図2では、コア21を環状部材22の外周側に配設する場合を示したが、内周側に配設するようにしても良い。
各コア21の周りには、たとえば、絶縁材料から成るコイルボビン24を介してコイル10が配設されており、コア21とコイル10とでコイル部25を構成している。
コイル10は、コア21の周りを巻回するように配設された螺旋状の導線11と、該導線11の表面に形成された被覆層11aとを有している。導線11は、たとえば、1周ごとに、コア21の軸方向に位置をずらして連続して整列配置される螺旋状に形成される。導線11の断面形状は、コイル10の占積率を高くすることができるという観点から、矩形状であることが好ましい。また、導線11は、コア21の周方向に沿うように形成された、断面形状が異なる複数の導線部材12を接合することにより構成されている。
本実施形態に係るコイル10において、被覆層11aが、前述した本実施形態に係る被覆層形成方法によって形成された、均一な厚みの層であるので、コイル10は、電気的絶縁性などの特性に優れた被覆層11aが形成されたものとなる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[塗布液組成物調製工程]
第1の液体であるN−メチル−2−ピロリドンに、上記式(I)で表される芳香族ポリアミド酸が20.0重量%の濃度で溶解されて成るポリアミド酸溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)50.0gをプラスチック製密閉容器に投入し、それに第2の液体であるテトラヒドロフラン40.0gを加えた。自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間、脱泡モード(2200rpm)を10分間行って撹拌することによって、ポリアミド酸が混合液体に溶解されて成る塗布液組成物Aを調製した。調製した塗布液組成物Aの粘度は、20℃の温度条件下で197.4mPa・sであった。なお、塗布液組成物Aにおいてポリアミド酸が混合液体に溶解されていることは、目視により評価した。
[塗布工程]
螺旋状の導線の一部を切り取ったもの(縦10.0cm、横1.0cm、幅0.3cm)を、被塗布物とした。塗布液組成物Aを容器に入れ、浸漬塗布装置(株式会社SDI社製、MD−408)を用いて被塗布物に、塗布液組成物Aを浸漬塗布した。塗布液組成物Aに浸漬した後の被塗布物の引き上げ速度は1.0mm/secとし、引き上げ後の被塗布物に対して、60℃の温度下で乾燥処理を施した。乾燥後の被塗布物の表面に形成された塗膜の膜厚は、任意の10箇所について測定したところ、9.5μmから11.0μmであった。なお、塗膜の膜厚は、塗布前後の被塗布物の厚みをマイクロメータで測定し、塗布後の厚みから塗布前の厚みを差し引くことによって算出した。
[被覆層形成工程]
塗膜が乾燥された後の被塗布物をオーブンに入れて、加熱温度を断続的に多段階に上昇させて加熱し、ポリアミド酸を脱水閉環反応させてポリイミド化させて、ポリイミドから成る被覆層が形成された、実施例1のサンプルを得た。加熱条件は、120℃1時間、150℃1時間、170℃1時間、200℃1時間、および250℃1時間で、段階的に昇温させる条件とした。実施例1のサンプルにおいて、加熱によって被塗布物の表面に形成されたポリイミドから成る被覆層の層厚は、任意の10箇所について測定したところ、5.5μmから8.5μmであった。なお、被覆層の層厚は、加熱後の被塗布物の厚みをマイクロメータで測定し、加熱後の厚みから前記塗布前の厚みを差し引くことによって算出した。
[被覆層の層厚均一性の評価]
実施例1のサンプルにおいて、液ダレや液流れによる、被覆層の厚みが平均の厚みの2倍以上の不均一な部位は見られず、実施例1のサンプルは、被覆層の層厚均一性に優れたものであった。
(実施例2)
[塗布液組成物調製工程]
実施例1と同様の塗布液組成物Aを用いた。
[塗布工程]
螺旋状の導線の一部を切り取ったもの(縦10.0cm、横1.0cm、幅0.3cm)を、被塗布物とした。塗布液組成物Aを容器に入れ、浸漬塗布装置を用いて被塗布物に、塗布液組成物Aを浸漬塗布した。塗布液組成物Aに浸漬した後の被塗布物の引き上げ速度は2.0mm/secとし、引き上げ後の被塗布物に対して、60℃の温度下で乾燥処理を施した。次いで、上記と同様の操作を再度繰り返した。すなわち、浸漬塗布から乾燥処理の一連の操作を2回行った。2回目の乾燥後の被塗布物の表面に形成された塗膜の膜厚は、任意の10箇所について測定したところ、63.0μmから69.5μmであった。
[被覆層形成工程]
実施例1と同様の加熱処理を実施し、ポリイミドから成る被覆層が形成された、実施例2のサンプルを得た。実施例2のサンプルにおいて、加熱によって被塗布物の表面に形成されたポリイミドからなる被覆層の層厚は、任意の10箇所について測定したところ、33.5μmから39.0μmであった。
[被覆層の層厚均一性の評価]
実施例2のサンプルにおいて、液ダレや液流れによる、被覆層の厚みが平均の厚みの2倍以上の不均一な部位は見られず、実施例2のサンプルは、被覆層の層厚均一性に優れたものであった。
(実施例3)
[塗布液組成物調製工程]
撹拌機と温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、4,4’ジアミノジフェ二ルエーテル73.2gとN−メチル−2−ピロリドン832gを仕込み、撹拌しながら50℃に昇温して溶解させた。次に、無水ピロメリット酸40gとビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物51gを徐々に添加した。添加終了後1時間撹拌し、第1の液体であるN−メチル−2−ピロリドンに、上記式(II)で表される芳香族ポリアミド酸が16.5重量%の濃度で溶解されて成るポリアミド酸溶液を得た。得られたポリアミド酸溶液50.0gをプラスチック製密閉容器に投入し、それに第2の液体であるテトラヒドロフラン41.8gを加えた。自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間、脱泡モード(2200rpm)を10分間行って撹拌することによって、ポリアミド酸が混合液体に溶解されて成る塗布液組成物Bを調製した。調製した塗布液組成物Bの粘度は、20℃の温度条件下で115.4mPa・sであった。なお、塗布液組成物Bにおいてポリアミド酸が混合液体に溶解されていることは、目視により評価した。
[塗布工程]
塗布液組成物Aの代わりに塗布液組成物Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被塗布物の表面に塗膜を形成した。乾燥後の被塗布物の表面に形成された塗膜の膜厚は、任意の10箇所について測定したところ、4.5μmから6.5μmであった。
[被覆層形成工程]
実施例1と同様の加熱処理を実施し、ポリイミドから成る被覆層が形成された、実施例3のサンプルを得た。実施例3のサンプルにおいて、加熱によって被塗布物の表面に形成されたポリイミドから成る被覆層の層厚は、任意の10箇所について測定したところ、3.5μmから5.5μmであった。
[被覆層の層厚均一性の評価]
実施例3のサンプルにおいて、液ダレや液流れによる、被覆層の厚みが平均の厚みの2倍以上の不均一な部位は見られず、実施例3のサンプルは、被覆層の層厚均一性に優れたものであった。
(実施例4)
[塗布液組成物調製工程]
実施例3と同様の塗布液組成物Bを用いた。
[塗布工程]
螺旋状の導線の一部を切り取ったもの(縦10.0cm、横1.0cm、幅0.3cm)を、被塗布物とした。塗布液組成物Bを容器に入れ、浸漬塗布装置を用いて被塗布物に、塗布液組成物Bを浸漬塗布した。塗布液組成物Bに浸漬した後の被塗布物の引き上げ速度は2.0mm/secとし、引き上げ後の被塗布物に対して、60℃の温度下で乾燥処理を施した。次いで、上記と同様の操作を再度繰り返した。すなわち、浸漬塗布から乾燥処理の一連の操作を2回行った。2回目の乾燥後の被塗布物の表面に形成された塗膜の膜厚は、任意の10箇所について測定したところ、29.0μmから34.0μmであった。
[被覆層形成工程]
実施例1と同様の加熱処理を実施し、ポリイミドから成る被覆層が形成された、実施例4のサンプルを得た。実施例4のサンプルにおいて、加熱によって被塗布物の表面に形成されたポリイミドから成る被覆層の層厚は、任意の10箇所について測定したところ、13.0μmから15.5μmであった。
[被覆層の層厚均一性の評価]
実施例4のサンプルにおいて、液ダレや液流れによる、被覆層の厚みが平均の厚みの2倍以上の不均一な部位は見られず、実施例4のサンプルは、被覆層の層厚均一性に優れたものであった。
(実施例5)
[塗布液組成物調製工程]
実施例1と同様の塗布液組成物Aを用いた。
[塗布工程]
螺旋状の導線(縦3.0cm、横1.5cm、コイル幅0.5cm、10巻き)を、被塗布物とした。この被塗布物において、コイル間に2mm以上の隙間ができるように広げ、このコイル間が広がった状態が保持されるように治具で固定した。塗布液組成物Aを容器に入れ、浸漬塗布装置(株式会社SDI社製、MD−408)を用いて被塗布物に、塗布液組成物Aを浸漬塗布した。塗布液組成物Aに浸漬した後の被塗布物の引き上げ速度は1.0mm/secとし、引き上げ後の被塗布物に対して、60℃の温度下で乾燥処理を施した。次いで、上記と同様の操作を再度繰り返した。すなわち、浸漬塗布から乾燥処理の一連の操作を2回行った。
[被覆層形成工程]
実施例1と同様の加熱処理を実施し、ポリイミドから成る被覆層が形成された、実施例5のサンプルを得た。
[被覆層の層厚均一性の評価]
実施例5のサンプルにおいて、液ダレや液流れによる、被覆層の厚みが不均一な部位は見られず、実施例5のサンプルは、被覆層の層厚均一性に優れたものであった。
(実施例6)
[塗布液組成物調製工程]
実施例3と同様の塗布液組成物Bを用いた。
[塗布工程]
塗布液組成物Aの代わりに塗布液組成物Bを用いたこと以外は、実施例5と同様にして、被塗布物の表面に塗膜を形成した。
[被覆層形成工程]
実施例1と同様の加熱処理を実施し、ポリイミドから成る被覆層が形成された、実施例6のサンプルを得た。
[被覆層の層厚均一性の評価]
実施例6のサンプルにおいて、液ダレや液流れによる、被覆層の厚みが不均一な部位は見られず、実施例6のサンプルは、被覆層の層厚均一性に優れたものであった。
(実施例7)
[塗布液組成物調製工程]
第2の液体であるテトラヒドロフランを2−メチルテトラヒドロフランに代えたこと以外は、実施例3と同様にして、塗布液組成物Cを調製した。調製した塗布液組成物Cの粘度は、20℃の温度条件下で200.6mPa・sであった。なお、塗布液組成物Cにおいてポリアミド酸が混合液体に溶解されていることは、目視により評価した。
[塗布工程]
塗布液組成物Aの代わりに塗布液組成物Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被塗布物の表面に塗膜を形成した。乾燥後の被塗布物の表面に形成された塗膜の膜厚は、任意の10箇所について測定したところ、5.7μmから10.2μmであった。
[被覆層形成工程]
実施例1と同様の加熱処理を実施し、ポリイミドから成る被覆層が形成された、実施例7のサンプルを得た。実施例7のサンプルにおいて、加熱によって被塗布物の表面に形成されたポリイミドから成る被覆層の層厚は、任意の10箇所について測定したところ、4.5μmから8.0μmであった。
[被覆層の層厚均一性の評価]
実施例7のサンプルにおいて、液ダレや液流れによる、被覆層の厚みが不均一な部位は見られず、実施例7のサンプルは、被覆層の層厚均一性に優れたものであった。
(実施例8)
[塗布液組成物調製工程]
第2の液体であるテトラヒドロフランをメタノールに代えたこと以外は、実施例3と同様にして、塗布液組成物Dを調製した。調製した塗布液組成物Dの粘度は、20℃の温度条件下で125.4mPa・sであった。なお、塗布液組成物Dにおいてポリアミド酸が混合液体に溶解されていることは、目視により評価した。
[塗布工程]
塗布液組成物Aの代わりに塗布液組成物Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被塗布物の表面に塗膜を形成した。乾燥後の被塗布物の表面に形成された塗膜の膜厚は、任意の10箇所について測定したところ、3.3μmから5.8μmであった。
[被覆層形成工程]
実施例1と同様の加熱処理を実施し、ポリイミドから成る被覆層が形成された、実施例8のサンプルを得た。実施例8のサンプルにおいて、加熱によって被塗布物の表面に形成されたポリイミドから成る被覆層の層厚は、任意の10箇所について測定したところ、2.8μmから4.8μmであった。
[被覆層の層厚均一性の評価]
実施例8のサンプルにおいて、液ダレや液流れによる、被覆層の厚みが不均一な部位は見られず、実施例8のサンプルは、被覆層の層厚均一性に優れたものであった。
(実施例9)
[塗布液組成物調製工程]
第2の液体であるテトラヒドロフランをエタノールに代えたこと以外は、実施例3と同様にして、塗布液組成物Eを調製した。調製した塗布液組成物Eの粘度は、20℃の温度条件下で293.6mPa・sであった。なお、塗布液組成物Eにおいてポリアミド酸が混合液体に溶解されていることは、目視により評価した。
[塗布工程]
塗布液組成物Aの代わりに塗布液組成物Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被塗布物の表面に塗膜を形成した。乾燥後の被塗布物の表面に形成された塗膜の膜厚は、任意の10箇所について測定したところ、4.5μmから11.5μmであった。
[被覆層形成工程]
実施例1と同様の加熱処理を実施し、ポリイミドから成る被覆層が形成された、実施例9のサンプルを得た。実施例9のサンプルにおいて、加熱によって被塗布物の表面に形成されたポリイミドからなる被覆層の層厚は、任意の10箇所について測定したところ、3.8μmから9.6μmであった。
[被覆層の層厚均一性の評価]
実施例9のサンプルにおいて、液ダレや液流れによる、被覆層の厚みが不均一な部位は見られず、実施例9のサンプルは、被覆層の層厚均一性に優れたものであった。
(比較例1)
[塗布液組成物調製工程]
N−メチル−2−ピロリドンに、上記式(I)で表される芳香族ポリアミド酸が20.0重量%の濃度で溶解されて成るポリアミド酸溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)50.0gをプラスチック製密閉容器に投入し、それにN−メチル−2−ピロリドン40.0gを加えた。自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間、脱泡モード(2200rpm)を10分間行って撹拌することによって、ポリアミド酸がN−メチル−2−ピロリドンに溶解されて成る塗布液組成物Fを調製した。調製した塗布液組成物Fの粘度は、20℃の温度条件下で413.6mPa・sであった。
[塗布工程]
塗布液組成物Aの代わりに塗布液組成物Fを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被塗布物の表面に塗膜を形成した。乾燥後の被塗布物の表面に形成された塗膜の膜厚は、任意の10箇所について測定したところ、6.0μmから9.5μmであった。しかしながら、被塗布物の表面において、浸漬後の引き上げ時の下端部に対応する部分に、液ダレによる厚みが41.0μmの膜厚異常部が発生した。
[被覆層形成工程]
実施例1と同様の加熱処理を実施し、ポリイミドから成る被覆層が形成された、比較例1のサンプルを得た。比較例1のサンプルにおいて、加熱によって被塗布物の表面に形成されたポリイミドから成る被覆層の層厚は、任意の10箇所について測定したところ、4.5μmから6.5μmであった。
[被覆層の層厚均一性の評価]
比較例1のサンプルにおいて、浸漬後の引き上げ時の下端部に対応する部分に、液ダレによる厚みが25.5μmの層厚異常部が発生した。
(比較例2)
[塗布液組成物調製工程]
比較例1と同様の塗布液組成物Fを用いた。
[塗布工程]
塗布液組成物Fを容器に入れ、浸漬塗布装置を用いて被塗布物に、塗布液組成物Fを浸漬塗布した。塗布液組成物Fに浸漬した後の被塗布物の引き上げ速度は2.0mm/secとした。被塗布物の引き上げ時に、塗布液組成物Fが垂れ落ちた。引き上げ後の被塗布物に対して、60℃の温度下で乾燥処理を施した。次いで、上記と同様の操作を再度繰り返した。すなわち、浸漬塗布から乾燥処理の一連の操作を2回行った。2回目の乾燥後の被塗布物の表面に形成された塗膜の膜厚は、任意の10箇所について測定したところ、13.0μmから17.5μmであった。しかしながら、被塗布物の表面において、浸漬後の引き上げ時の下端部に対応する部分に、液ダレによる厚みが85.0μmの膜厚異常部が発生した。
[被覆層形成工程]
実施例1と同様の加熱処理を実施し、ポリイミドから成る被覆層が形成された、比較例2のサンプルを得た。比較例2のサンプルにおいて、加熱によって被塗布物の表面に形成されたポリイミドから成る被覆層の層厚は、任意の10箇所について測定したところ、6.0μmから11.0μmであった。
[被覆層の層厚均一性の評価]
比較例2のサンプルにおいて、浸漬後の引き上げ時の下端部に対応する部分に、液ダレによる厚みが43.0μmの層厚異常部が発生した。
(比較例3)
[塗布液組成物調製工程]
撹拌機と温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、4,4’ジアミノジフェ二ルエーテル73.2gとN−メチル−2−ピロリドン832gを仕込み、撹拌しながら50℃に昇温して溶解させた。次に、無水ピロメリット酸40gとビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物51gを徐々に添加した。添加終了後1時間撹拌し、N−メチル−2−ピロリドンに、上記式(II)で表される芳香族ポリアミド酸が16.5重量%の濃度で溶解されて成るポリアミド酸溶液を得た。得られたポリアミド酸溶液50.0gをプラスチック製密閉容器に投入し、それにN−メチル−2−ピロリドン41.8gを加えた。自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間、脱泡モード(2200rpm)を10分間行って撹拌することによって、塗布液組成物Gを調製した。調製した塗布液組成物Gの粘度は、20℃の温度条件下で228.6mPa・sであった。
[塗布工程]
塗布液組成物Fの代わりに塗布液組成物Gを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、被塗布物の表面に塗膜を形成した。乾燥後の被塗布物の表面に形成された塗膜の膜厚は、任意の10箇所について測定したところ、5.0μmから7.0μmであった。しかしながら、被塗布物の表面において、浸漬後の引き上げ時の下端部に対応する部分に、液ダレによる厚みが35.0μmの膜厚異常部が発生した。
[被覆層形成工程]
実施例1と同様の加熱処理を実施し、ポリイミドから成る被覆層が形成された、比較例3のサンプルを得た。比較例3のサンプルにおいて、加熱によって被塗布物の表面に形成されたポリイミドから成る被覆層の層厚は、任意の10箇所について測定したところ、2.0μmから3.5μmであった。
[被覆層の層厚均一性の評価]
比較例3のサンプルにおいて、浸漬後の引き上げ時の下端部に対応する部分に、液ダレによる厚みが15.5μmの層厚異常部が発生した。
(比較例4)
[塗布液組成物調製工程]
比較例3と同様の塗布液組成物Gを用いた。
[塗布工程]
塗布液組成物Gを容器に入れ、浸漬塗布装置を用いて被塗布物に、塗布液組成物Gを浸漬塗布した。塗布液組成物Gに浸漬した後の被塗布物の引き上げ速度は2.0mm/secとした。被塗布物の引き上げ時に、塗布液組成物Gが垂れ落ちた。引き上げ後の被塗布物に対して、60℃の温度下で乾燥処理を施した。次いで、上記と同様の操作を再度繰り返した。すなわち、浸漬塗布から乾燥処理の一連の操作を2回行った。2回目の乾燥後の被塗布物の表面に形成された塗膜の膜厚は、任意の10箇所について測定したところ、14.0μmから17.0μmであった。しかしながら、被塗布物の表面において、浸漬後の引き上げ時の下端部に対応する部分に、液ダレによる厚みが80.0μmの膜厚異常部が発生した。
[被覆層形成工程]
実施例1と同様の加熱処理を実施し、ポリイミドから成る被覆層が形成された、比較例4のサンプルを得た。比較例4のサンプルにおいて、加熱によって被塗布物の表面に形成されたポリイミドから成る被覆層の層厚は、任意の10箇所について測定したところ、5.5μmから10.0μmであった。
[被覆層の層厚均一性の評価]
比較例4のサンプルにおいて、浸漬後の引き上げ時の下端部に対応する部分に、液ダレによる厚みが20.5μmの層厚異常部が発生した。
(比較例5)
[塗布液組成物調製工程]
比較例1と同様の塗布液組成物Fを用いた。
[塗布工程]
塗布液組成物Aの代わりに塗布液組成物Fを用いたこと以外は、実施例5と同様にして、被塗布物の表面に塗膜を形成した。
[被覆層形成工程]
実施例1と同様の加熱処理を実施し、ポリイミドから成る被覆層が形成された、比較例5のサンプルを得た。
[被覆層の層厚均一性の評価]
比較例5のサンプルにおいて、浸漬後の引き上げ時の下端部に対応する部分に、コイル間が融着した層厚異常部が発生した。
(比較例6)
[塗布液組成物調製工程]
比較例3と同様の塗布液組成物Gを用いた。
[塗布工程]
塗布液組成物Aの代わりに塗布液組成物Gを用いたこと以外は、実施例5と同様にして、被塗布物の表面に塗膜を形成した。
[被覆層形成工程]
実施例1と同様の加熱処理を実施し、ポリイミドから成る被覆層が形成された、比較例6のサンプルを得た。
[被覆層の層厚均一性の評価]
比較例6のサンプルにおいて、浸漬後の引き上げ時の下端部に対応する部分に、コイル間が融着した層厚異常部が発生した。
(比較例7)
[塗布液組成物調製工程]
撹拌機と温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、4,4’ジアミノジフェ二ルエーテル73.2gとN−メチル−2−ピロリドン832gを仕込み、撹拌しながら50℃に昇温して溶解させた。次に、無水ピロメリット酸40gとビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物51gを徐々に添加した。添加終了後1時間撹拌し、N−メチル−2−ピロリドンに、上記式(II)で表される芳香族ポリアミド酸が16.5重量%の濃度で溶解されて成るポリアミド酸溶液を得た。得られたポリアミド酸溶液50.0gをプラスチック製密閉容器に投入し、それに酢酸エチル20.9gを加えた。自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間、脱泡モード(2200rpm)を10分間行って撹拌することによって、塗布液組成物Hを調製した。調製した塗布液組成物Hの粘度は、20℃の温度条件下で489.4mPa・sであった。なお、実施例3におけるテトラヒドロフランと同量の酢酸エチルを添加すると、ポリアミド酸が析出してしまったので、比較例7において酢酸エチルの添加量は20.9gとした。
[塗布工程]
塗布液組成物Aの代わりに塗布液組成物Hを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被塗布物の表面に塗膜を形成した。乾燥後の被塗布物の表面に形成された塗膜の膜厚は、任意の10箇所について測定したところ、8.8μmから10.3μmであった。しかしながら、被塗布物の表面において、浸漬後の引き上げ時の下端部に対応する部分に、液ダレによる厚みが44.3μmの膜厚異常部が発生した。
(比較例8)
[塗布液組成物調製工程]
比較例7と同様の塗布液組成物Hを用いた。
[塗布工程]
塗布液組成物Aの代わりに塗布液組成物Hを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、被塗布物の表面に塗膜を形成した。乾燥後の被塗布物の表面に形成された塗膜の膜厚は、任意の10箇所について測定したところ、53.7μmから56.2μmであった。しかしながら、被塗布物の表面において、浸漬後の引き上げ時の下端部に対応する部分に、液ダレによる厚みが236.7μmの膜厚異常部が発生した。
10 コイル
11 導線
11a 被覆層
12 導線部材
20 コイル装置
21 コア
22 環状部材
23 空間部
24 コイルボビン
25 コイル部

Claims (9)

  1. 被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成するための塗布液組成物であって、
    ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸と、
    前記ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体と、前記第1の液体よりも沸点が低く、前記ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体とから成る混合液体と、を含み、
    前記ポリアミド酸が、前記混合液体に溶解されて成る塗布液組成物。
  2. 前記第2の液体の沸点は、20℃以上100℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の塗布液組成物。
  3. 前記第1の液体は、N−メチル−2−ピロリドンであることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布液組成物。
  4. 前記第2の液体は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メタノール、およびエタノールから選ばれた液体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の塗布液組成物。
  5. 前記ポリアミド酸は、下記式(I)または下記式(II)で表される芳香族ポリアミド酸の少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の塗布液組成物。
    [式(I)中、nは2以上の整数である。]
    [式(II)中、nは2以上の整数である。]
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の塗布液組成物を、被塗布物の表面に塗布する塗布工程と、
    前記塗布液組成物を塗布した後の被塗布物を加熱し、被塗布物の表面にポリイミドから成る被覆層を形成する被覆層形成工程と、を含むことを特徴とする被覆層形成方法。
  7. 前記被塗布物が、螺旋状の導線であることを特徴とする請求項6に記載の被覆層形成方法。
  8. 螺旋状の導線と、
    請求項7に記載の被覆層形成方法によって前記導線の表面に形成された、ポリイミドから成る被覆層と、を含むことを特徴とするコイル。
  9. 螺旋状の導線と、
    前記導線の表面に形成された、ポリイミドから成る被覆層とを含み、
    前記被覆層は、
    ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸と、該ポリアミド酸を溶解させ得る第1の液体、および該第1の液体よりも沸点が低く該ポリアミド酸を膨潤させ得る第2の液体から成る混合液体と、を含み、該ポリアミド酸が該混合液体に溶解されて成る塗布液組成物を、前記導線の表面に塗布した後に加熱することによって形成される、ことを特徴とするコイル。
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JP2019204786A (ja) * 2019-06-06 2019-11-28 宇部興産株式会社 電極用バインダー樹脂組成物、電極合剤ペースト、及び電極

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