JP2016180858A - ファラデー回転子 - Google Patents

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欽哉 大井川
Kinya Oigawa
欽哉 大井川
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Abstract

【課題】小型、軽量かつ低価格化の要請に対応でき、耐熱性に係る温度管理の問題も解消できるファラデー回転子を提供する。【解決手段】光軸と垂直で光軸から離れる方向に磁化された第1の磁石31と、光軸と垂直で光軸に向かう方向に磁化された第2の磁石32と、これ等磁石間に配置され光軸と平行で第1の磁石から第2の磁石に向かう方向に磁化された第3の磁石33とで構成され、各磁石の孔部で構成される貫通孔内にファラデー素子35が配置されたファラデー回転子であって、第1〜第3の磁石が残留磁束密度1.1±0.1T(テスラ)のサマリウムコバルト系磁石で構成され、ファラデー素子がベルデ定数42rad/T/m以上の常磁性体で構成されていることを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明は、光通信システムやレーザ加工システムに用いられるレーザ装置をレーザ反射戻り光から保護する光アイソレータ用ファラデー回転子に係り、特に、小型、軽量かつ低価格な光アイソレータの提供を可能とするファラデー回転子の改良に関するものである。
光通信システムに用いられる半導体レーザおよびレーザ加工システムに用いられる固体レーザ等のレーザ素子(レーザ装置)においては、レーザ共振器外部の光学面や加工面で反射したレーザ反射戻り光がレーザ素子に戻るとレーザ発振が不安定になる。レーザ発振が不安定になると、光通信システムであれば信号ノイズとなり、レーザ加工システムであればレーザ素子が破壊されるため、レーザ反射戻り光を遮断してレーザ反射戻り光がレーザ素子(レーザ装置)に戻らないようにする光アイソレータが使用される。
図1は、光アイソレータに組み込まれる光アイソレータ用ファラデー回転子の基本構成を示す断面図であり、符号10は光軸方向(黒矢印)に磁化された永久磁石を示し、一般的に磁石の形状は円筒型でその貫通孔内にファラデー素子11が組み込まれている。そして、ファラデー素子11は、貫通孔内において永久磁石10の磁界によってファラデー効果を生じさせる。尚、図1に示す光アイソレータ用ファラデー回転子においては、光軸方向(黒矢印)と永久磁石10における磁化の向が同一になっているが、永久磁石10における磁化方向が逆向きに設定されていても機能的に差異はない。
ところで、光通信システムで使用される光(レーザ)の波長帯域は、主に1.3〜1.7μmであり、光アイソレータ用ファラデー回転子に組み込まれるファラデー素子11としては希土類鉄ガーネット膜が用いられている。他方、加工機用ファイバーレーザの励起光に使用される固体レーザ(レーザ装置)の波長は、光通信システムで使用され光通信帯域よりも短い波長であり、主に1μm付近の波長である。そして、1μm付近の波長では、上記希土類鉄ガーネット膜は光の吸収が大きくその吸収熱により破壊されて使用に耐えられないことから、一般的に常磁性体から成るファラデー素子としてテルビウム・ガリウム・ガーネット(以下、TGGと略記する場合がある)が広く使われている。
そして、磁石とファラデー素子を備えたファラデー回転子が光アイソレータに組み込まれる場合、ファラデー効果により光の偏光面を回転させる回転角度(以下、ファラデー回転角と称する)は一般に45度であるため、ファラデー回転角θ=45度となるようにファラデー素子の長さLが決定される。尚、ファラデー素子のベルデ定数をV、光軸方向の磁束密度をHとした場合、ファラデー回転角θとファラデー素子長さLは式(1)の関係にある。 ファラデー回転角θ=V×H×L 式(1)
ところで、常磁性体であるテルビウム・ガリウム・ガーネット(TGG)のベルデ定数Vは、上記希土類鉄ガーネット膜のベルデ定数Vと較べて小さく、その値は35rad/T/mであることが知られている。
そして、ファラデー回転角θを45度(0.785rad)回転させるのに必要な磁束密度を得るには大きな磁界が必要とされ、光アイソレータに要請されている小型かつ軽量な光アイソレータの提供を実現するため、残留磁束密度が高い「ネオジム鉄ボロン系」材料から成る永久磁石を用いて構成された図1に示すファラデー回転子が、現在、主流を占めていた。
尚、TGG(ベルデ定数V:35rad/T/m)がファラデー素子に適用された場合、ファラデー回転角θを45度(0.785rad)回転させるのに必要なファラデー素子の長さLは、磁石貫通孔内における光軸方向の平均磁束密度H(T:テスラ)を「0.5T、1.0T、1.5T、1.9T、2.0T」とすると、上記式(1)から、以下の表1に示すような長さ寸法値(mm)となる。
一方、図1に示すファラデー回転子の構造に代え、図2に示す「第1の磁石」「第2の磁石」および「第3の磁石」を組み合わせて磁束密度を高めたファラデー回転子が開発されている(特許文献1参照)。
すなわち、光が通過する貫通孔を中心に有する磁石体と、該貫通孔内に配置されかつ光が透過する常磁性体から成るファラデー素子を備える特許文献1に記載されたファラデー回転子は、図2に示すように、磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸に向かう方向に磁化されている「第1の磁石1」と、磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸から離れる方向に磁化されている「第2の磁石2」と、上記「第1の磁石1」と「第2の磁石2」間に配置され磁化方向が光軸と平行でかつ「第2の磁石2」から「第1の磁石1」に向かう方向に磁化されている「第3の磁石3」で上記磁石体が構成され、「第1の磁石1」「第2の磁石2」および「第3の磁石3」の各中心には上記磁石体の貫通孔を構成する孔部が設けられていると共に、これ等孔部で構成される貫通孔の長さ方向中央部にファラデー素子5が配置されて成るものであった。
そして、コンピュータシミュレーション(JMAGデザイナー)を用いた磁場解析によれば、図2に示す「第1の磁石1」「第2の磁石2」および「第3の磁石3」で構成された磁石体(「ネオジム鉄ボロン系」材料から成る磁石が適用されている)の場合、光アイソレータの貫通孔内に形成される平均磁束密度は約1.9T(テスラ)となり、ファラデー素子(TGG)の長さLは、表1に示す計算値から約12mm(11.8mm)となる。
尚、一般に売られている光アイソレータの平均磁束密度は「ネオジム鉄ボロン系」材料から成る永久磁石を適用した光アイソレータにおいても約1.0T(テスラ)であり、そのファラデー素子(TGG)の長さLは、表1に示す計算値から約22mm(22.4mm)となる。このため、特許文献1に記載されたファラデー回転子を適用することにより、光アイソレータの著しい小型化が図られることが確認される。
特開2009−229802号公報
ところで、ファラデー回転子において高い磁束密度を得るためには、一般に、大きな体積を有する磁石が必要になるが、光アイソレータにおける小型でかつ軽量化の要請には逆らうことになるためできるだけ残留磁束密度の高い磁石が必要となる。このため、常磁性体から成るファラデー素子が適用される光アイソレータにおいては、上述したように最も残留磁束密度が高い「ネオジム鉄ボロン系」材料から成る永久磁石(「ネオジム鉄ボロン系磁石」)を用いることが、現在、世界の主流となっている。
一方、後述する理由により「ネオジム鉄ボロン系磁石」に配合され、他の工業製品用途においてその需要が著しく拡大しているレアアースの「ジスプロシウム」はその産出量が極めて少なく、かつ、産出国も限定されている。そして、主たる産出国の大幅な輸出制限により2011年に価格が以前の20倍まで高騰し、その後「ジスプロシウム」の価格は下落しているものの、高騰以前の価格に較べ依然として高い水準となっている。このため、低価格化という光アイソレータの要請には応えることが困難な状況となっている。
また、上記「ネオジム鉄ボロン系磁石」はその特性から熱減磁温度が30℃と低いものもあるため、10℃から50℃の動作温度を確保する目的で上述したように「ジスプロシウム」の配合を増やし、耐熱性が60℃まで高められた「ネオジム鉄ボロン系磁石」を用いるのが一般的とされている。しかし、このことが、光アイソレータの保管温度を60度に制限する原因となっている。そして、一度60℃を超えてしまうと、その後室温に戻しても当初の機能を失ってしまうため、常磁性体から成るファラデー素子を適用した光アイソレータにおいて、工業製品として温度管理が必要となる分、その取り扱いを難しいものとしていた。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、上述した「ネオジム鉄ボロン系磁石」を用いることなく、光アイソレータの小型、軽量かつ低価格化の要請に応えられると共に、工業製品としての温度管理の問題も解消できるファラデー回転子を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、常磁性体から成るファラデー素子が用いられた光アイソレータにおいて、「ネオジム鉄ボロン系磁石」より磁束密度が低いために適用されることがなかった「サマリウムコバルト系磁石」と、ベルデ定数が42rad/T/m以上である常磁性体から成るファラデー素子を組み合わせ、かつ、特許文献1に記載された「第1の磁石」「第2の磁石」および「第3の磁石」から成る磁石体の構造を採用した場合、小型、軽量かつ低価格な光アイソレータを提供できることを見出すにいたった。本発明はこのような技術的発見により完成されたものである。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
光が通過する貫通孔を中心に有する磁石体と、この貫通孔内に配置されかつ光が透過する常磁性体から成るファラデー素子を備え、
上記磁石体が、磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸から離れる方向に磁化されている第1の磁石と、磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸に向かう方向に磁化されている第2の磁石と、上記第1の磁石と第2の磁石間に配置され磁化方向が光軸と平行でかつ第1の磁石から第2の磁石に向かう方向に磁化されている第3の磁石とで構成され、第1の磁石、第2の磁石および第3の磁石の各中心には上記磁石体の貫通孔を構成する孔部が設けられていると共に、これ等孔部で構成される貫通孔の長さ方向中央部にファラデー素子が配置されたファラデー回転子において、
第1の磁石、第2の磁石および第3の磁石が、残留磁束密度1.1±0.1T(テスラ)のサマリウムコバルト系磁石で構成され、かつ、ファラデー素子が、ベルデ定数42rad/T/m以上の常磁性体で構成されていることを特徴とするものである。
次に、本発明に係る第2の発明は、
第1の発明に記載のファラデー回転子において、
上記ファラデー素子が、TAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット)、TSAG(テルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット)、TSLAG(テルビウム・スカンジウム・ルテチウム・アルミニウム・ガーネット)、TCSAG(テルビウム・セリウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット)から選択される常磁性体で構成されていることを特徴とし、
第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載のファラデー回転子において、
8個の磁石片を組み合わせて成る8角形の集合磁石により第1の磁石および第2の磁石が構成され、かつ、1個の単体磁石または4個若しくは8個の磁石片を組み合わせて成る集合磁石により第3の磁石が構成されていることを特徴とし、
また、第4の発明は、
第1の発明〜第3の発明のいずれかに記載のファラデー回転子において、
上記ファラデー素子が、磁石体の貫通孔内に磁力若しくは接着剤により保持されていることを特徴とするものである。
本発明に係るファラデー回転子は、
残留磁束密度1.1±0.1Tの「サマリウムコバルト系磁石」により第1の磁石、第2の磁石および第3の磁石が構成され、かつ、ベルデ定数42rad/T/m以上の常磁性体によりファラデー素子が構成されているため、従来、主流であった「ネオジム鉄ボロン系磁石」に起因した価格高騰の問題と、「ネオジム鉄ボロン系磁石」の熱減磁温度に起因した耐熱性の問題を解消できる効果を有している。
光アイソレータに組み込まれるファラデー回転子の基本構成を示す概略断面図。 特許文献1に記載されたファラデー回転子の概略構成断面図。 図3(A)は本発明に係るファラデー回転子の左側面図、図3(B)は概略構成断面図、および、図3(C)は右側面図。 図4(A)は実施例に係るファラデー回転子の側面図、および、図4(B)は概略構成断面図。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
まず、実施の形態に係るファラデー回転子は、図3(A)〜図3(C)に示すように、8個の磁石片をそれぞれ組み合わせて成る外形が8角形の集合磁石により構成された第1の磁石31および第2の磁石32と、第1の磁石31と第2の磁石32間に設けられかつ1個の円筒型単体磁石または4個若しくは8個の磁石片を組み合わせて成る外形が4角形若しくは8角形の集合磁石により構成された第3の磁石33と、第1の磁石31、第2の磁石32および第3の磁石33の孔部で構成される貫通孔の長さ方向中央部に配置されたファラデー素子35を備えており、該ファラデー素子35は、第1の磁石31、第2の磁石32および第3の磁石33の孔部で構成される貫通孔内に磁力若しくは接着剤により保持されている。
より具体的に説明すると、光が通過する貫通孔を中心に有する磁石体と、該磁石体の貫通孔内に配置されかつ光が透過する常磁性体から成るファラデー素子を備えた本実施の形態に係るファラデー回転子は、
上記磁石体が、磁化方向が光軸34と垂直でかつ光軸34から離れる方向に磁化されている第1の磁石31と、磁化方向が光軸34と垂直でかつ光軸34に向かう方向に磁化されている第2の磁石32と、上記第1の磁石31と第2の磁石32間に配置され磁化方向が光軸34と平行でかつ第1の磁石31から第2の磁石32に向かう方向に磁化されている第3の磁石33とで構成され、第1の磁石31、第2の磁石32および第3の磁石33の各中心には上記磁石体の貫通孔を構成する孔部が設けられていると共に、これ等孔部で構成される貫通孔の長さ方向中央部にファラデー素子35が配置されており、かつ、
上記第1の磁石31、第2の磁石32および第3の磁石33が、残留磁束密度1.1±0.1T(テスラ)の「サマリウムコバルト系磁石」でそれぞれ構成され、上記ファラデー素子35が、ベルデ定数42rad/T/m以上の常磁性体で構成されていることを特徴としている。
尚、本実施の形態に係るファラデー回転子を光通信システムやレーザ加工システムに組み込んで「偏波無依存型光アイソレータ」を構成する場合、図3(B)に示すファラデー回転子におけるファラデー素子35の光入射側(第1の磁石31における孔部外の近傍若しくは孔部内)に入射側楔型複屈折板(図示せず)が配置され、ファラデー素子35の光出射側(第2の磁石32における孔部外の近傍若しくは孔部内)に出射側楔型複屈折板(図示せず)が配置されると共に、該出射側楔型複屈折板の出射側近傍位置に異常光線と常光線を合波する図示外の複屈折性結晶平板(ディスプレイサ)が配置された構造となる。
そして、本実施の形態に係るファラデー回転子によれば、残留磁束密度が1.1±0.1Tの「サマリウムコバルト系磁石」により第1の磁石31、第2の磁石32および第3の磁石33が構成され、かつ、ベルデ定数が42rad/T/m以上の常磁性体によりファラデー素子35が構成され、従来、主流であった「ネオジム鉄ボロン系磁石」を適用していないため、該「ネオジム鉄ボロン系磁石」に起因した価格高騰に関する問題、および、「ネオジム鉄ボロン系磁石」の熱減磁温度に起因した耐熱性に関する問題を解消することが可能となる。
尚、ファラデー素子35を構成するベルデ定数42rad/T/m以上の常磁性体としては、TAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット)、TSAG(テルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット)、TSLAG(テルビウム・スカンジウム・ルテチウム・アルミニウム・ガーネット)、TCSAG(テルビウム・セリウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット)等が挙げられる。
以下、本発明の実施例について比較例も挙げて具体的に説明する。
(1)磁石体の構成と貫通孔内に形成される平均磁束密度
図4(A)〜(B)は実施例と比較例で適用された磁石体の構造を示している。
すなわち、実施例と比較例で適用された磁石体は、図4(A)〜(B)に示すように磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸から離れる方向に磁化されている第1の磁石41と、磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸に向かう方向に磁化されている第2の磁石42と、上記第1の磁石41と第2の磁石42間に配置され磁化方向が光軸と平行でかつ第1の磁石41から第2の磁石42に向かう方向に磁化されている第3の磁石43とで構成され、第1の磁石41、第2の磁石42および第3の磁石43の各中心には上記貫通孔を構成する孔部がそれぞれ設けられていると共に、これ等孔部で構成される貫通孔の長さ方向中央部に常磁性体で構成されたファラデー素子(図示せず)が配置されている。
また、第1の磁石41、第2の磁石42および第3の磁石43は8個の磁石片をそれぞれ組み合わせて成る外形が8角形の集合磁石でそれぞれ構成され、上記第1の磁石41、第2の磁石42および第3の磁石43における8個の各磁石片は、残留磁束密度が1.1±0.1T(テスラ)の「サマリウムコバルト系磁石」で構成されていると共に、上記8角形の対辺距離は32mm±1mmに設定されている。
更に、第1の磁石41と第2の磁石42の厚みが16mm±1mm、第3の磁石43の厚みが8mm±1mm、および、第1の磁石41、第2の磁石42および第3の磁石43に設けられた孔部(貫通孔を構成)の直径が3mm±1mmに設定されている。
そして、コンピュータシミュレーション(JMAGデザイナー)を用いた磁場解析によれば、図4(A)〜(B)に示す「第1の磁石41」「第2の磁石42」および「第3の磁石43」で構成された磁石体(「サマリウムコバルト系磁石」が適用)の場合、光アイソレータの貫通孔内に形成される平均磁束密度は約1.3T(テスラ)と想定される。
(2)ファラデー素子
常磁性体から成るファラデー素子は、ベルデ定数が35rad/T/mであるテルビウム・ガリウム・ガーネット(比較例:TGG)、および、ベルデ定数が42rad/T/mであるテルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット(実施例:TSAG)が適用されている。
[比較例]
図4(A)〜(B)に示す磁石体が適用され、かつ、ベルデ定数が35rad/T/mであるテルビウム・ガリウム・ガーネット(TGG)から成るファラデー素子を適用した比較例に係るファラデー回転子においては、ファラデー回転角θを45度(0.785rad)回転させるのに必要なファラデー素子(TGG)の長さLは、上述した式(1)から表2に示す長さ寸法となる。
そして、図4(A)〜(B)に示す磁石体が適用された光アイソレータの貫通孔内に形成される平均磁束密度は上述したように約1.3T(テスラ)と想定されることから、比較例に係るファラデー回転子においてファラデー回転角θを45度(0.785rad)回転させるのに必要なファラデー素子(TGG)の長さLは、表2に示す計算値から約17mm(17.2mm)となる。
しかし、図4(A)〜(B)に示す磁石体が適用された光アイソレータの貫通孔内に形成される平均磁束密度が約1.3T(テスラ)である範囲は、上記貫通孔内の長さ方向中央における約16mmの範囲であり、ファラデー素子(TGG)の長さLが上記約17mm(17.2mm)の場合に、平均磁束密度の数値(約1.3T)を満たさなくなるため、従来の「ネオジム鉄ボロン系磁石」に起因した価格高騰に関する問題、および、「ネオジム鉄ボロン系磁石」の熱減磁温度に起因した耐熱性に関する問題を解消することはできないことが確認される。
[実施例]
図4(A)〜(B)に示す磁石体が適用され、かつ、ベルデ定数が42rad/T/mであるテルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット(TSAG)から成るファラデー素子を適用した実施例に係るファラデー回転子においては、ファラデー回転角θを45度(0.785rad)回転させるのに必要なファラデー素子(TSAG)の長さLは、上述した式(1)から表3に示す長さ寸法となる。
そして、図4(A)〜(B)に示す磁石体が適用された光アイソレータの貫通孔内に形成される平均磁束密度は上述したように約1.3T(テスラ)と想定されることから、実施例に係るファラデー回転子においてファラデー回転角θを45度(0.785rad)回転させるのに必要なファラデー素子(TSAG)の長さLは、表3に示す計算値から約14mm(14.3mm)となる。
従って、図4(A)〜(B)に示す磁石体が適用された光アイソレータの貫通孔内に形成される平均磁束密度が約1.3T(テスラ)である範囲、すなわち約16mmの範囲内の要件を満たすため、従来の「ネオジム鉄ボロン系磁石」に起因した価格高騰に関する問題、および、「ネオジム鉄ボロン系磁石」の熱減磁温度に起因した耐熱性に関する問題を解消できることが確認される。
すなわち、光アイソレータの小型、軽量化を保持しながら、レアアースの価格高騰の影響を回避できることで低価格化が可能となり、更に、不可逆減磁温度が200℃を超える「サマリウムコバルト系磁石」を適用したことにより、「ネオジム鉄ボロン系磁石」の不可逆減磁温度60℃と比べて3倍以上の耐熱温度の改善効果が得られる。
尚、本実施例においては、ベルデ定数が42rad/T/mであるテルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット(TSAG)を適用しているが、テルビウム・ガリウム・ガーネット(TGG)におけるベルデ定数(35rad/T/m)の1.2倍を超えるベルデ定数を有するTAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット)、TSLAG(テルビウム・スカンジウム・ルテチウム・アルミニウム・ガーネット)、および、TCSAG(テルビウム・セリウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット)の適用も可能であることを確認している。
本発明に係るファラデー回転子によれば、残留磁束密度が1.1±0.1Tの「サマリウムコバルト系磁石」により第1の磁石31、第2の磁石32および第3の磁石33が構成され、かつ、ベルデ定数が42rad/T/m以上の常磁性体によりファラデー素子35が構成されて、従来、主流であった「ネオジム鉄ボロン系磁石」を適用していないため、「ネオジム鉄ボロン系磁石」に起因した価格高騰に関する問題および「ネオジム鉄ボロン系磁石」の熱減磁温度に起因した耐熱性に関する問題を解消することが可能となる。このため、小型、軽量かつ低価格化が要請されている光アイソレータに適用される産業上の利用可能性を有している。
1 第1の磁石
2 第2の磁石
3 第3の磁石
5 ファラデー素子
10 永久磁石
11 ファラデー素子
31 第1の磁石
32 第2の磁石
33 第3の磁石
34 光軸
35 ファラデー素子
41 第1の磁石
42 第2の磁石
43 第3の磁石

Claims (4)

  1. 光が通過する貫通孔を中心に有する磁石体と、この貫通孔内に配置されかつ光が透過する常磁性体から成るファラデー素子を備え、
    上記磁石体が、磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸から離れる方向に磁化されている第1の磁石と、磁化方向が光軸と垂直でかつ光軸に向かう方向に磁化されている第2の磁石と、上記第1の磁石と第2の磁石間に配置され磁化方向が光軸と平行でかつ第1の磁石から第2の磁石に向かう方向に磁化されている第3の磁石とで構成され、第1の磁石、第2の磁石および第3の磁石の各中心には上記磁石体の貫通孔を構成する孔部が設けられていると共に、これ等孔部で構成される貫通孔の長さ方向中央部にファラデー素子が配置されたファラデー回転子において、
    第1の磁石、第2の磁石および第3の磁石が、残留磁束密度1.1±0.1T(テスラ)のサマリウムコバルト系磁石で構成され、かつ、ファラデー素子が、ベルデ定数42rad/T/m以上の常磁性体で構成されていることを特徴とするファラデー回転子。
  2. 上記ファラデー素子が、TAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット)、TSAG(テルビウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット)、TSLAG(テルビウム・スカンジウム・ルテチウム・アルミニウム・ガーネット)、TCSAG(テルビウム・セリウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット)から選択される常磁性体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のファラデー回転子。
  3. 8個の磁石片を組み合わせて成る8角形の集合磁石により第1の磁石および第2の磁石が構成され、かつ、1個の単体磁石または4個若しくは8個の磁石片を組み合わせて成る集合磁石により第3の磁石が構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のファラデー回転子。
  4. 上記ファラデー素子が、磁石体の貫通孔内に磁力若しくは接着剤により保持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のファラデー回転子。
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