以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る噴射制御装置10について説明する。噴射制御装置10は、車両の内燃機関(不図示)における燃料噴射を制御するための噴射制御装置として構成されている。
具体的には、上記内燃機関は3つの気筒を備えており、気筒毎に、燃料噴射弁であるインジェクタ(第1インジェクタIJ1、第2インジェクタIJ2、第3インジェクタIJ3)が1つずつ設けられている。噴射制御装置10は、これら3つのインジェクタのそれぞれの動作を制御する。第1インジェクタIJ1、第2インジェクタIJ2、及び第3インジェクタIJ3の構成は、互いに全て同一となっている。以下では、これら3つのインジェクタのことを総じて「第1インジェクタIJ1等」とも表記する。
第1インジェクタIJ1等は、車両に備えられたコモンレールCRから燃料の供給を受け、当該燃料をそれぞれの気筒に噴射する。コモンレールCRは、フューエルポンプ(不図示)の動作により燃圧が高められた燃料を蓄え、当該燃料を第1インジェクタIJ1等に供給するための蓄圧容器である。
第1インジェクタIJ1等は、噴射制御装置10から駆動用電流が供給されると、その内部の弁体が移動して開弁状態となり、燃料の噴射が開始される。また、駆動用電流の供給が停止されると、その内部の弁体が元の位置に戻って閉弁状態となり、燃料の噴射が停止される。
噴射制御装置10の構成について説明する。図1に示されるように、噴射制御装置10は、2つのハイサイドスイッチ(第1ハイサイドスイッチHSW1、第2ハイサイドスイッチHSW2)と、3つのローサイドスイッチ(第1ローサイドスイッチLSW1、第2ローサイドスイッチLSW2、第3ローサイドスイッチLSW3)と、双方向接続部CPとを備えている。
第1ハイサイドスイッチHSW1は、第3インジェクタIJ3に対する駆動用電流の供給及び遮断を切り替えるためのスイッチである。第1ハイサイドスイッチHSW1がオンの状態(閉状態)になると、電力供給経路PL1を介して第3インジェクタIJ3に駆動用電流が供給され得る状態となる。ただし、第3インジェクタIJ3に駆動用電流が実際に流れるのは、後述の第3ローサイドスイッチLSW3がオンの状態となったときである。通常動作時(車両が正常に走行している時。以下同様)には、第1ハイサイドスイッチHSW1はオンのままの状態となっている。
第2ハイサイドスイッチHSW2は、第1インジェクタIJ1及び第2インジェクタIJ2の両方に対する駆動用電流の供給及び遮断を切り替えるためのスイッチである。第2ハイサイドスイッチHSW2がオンの状態になると、電力供給経路PL2を介して第1インジェクタIJ1及び第2インジェクタIJ2の両方に駆動用電流が供給され得る状態となる。ただし、第1インジェクタIJ1に駆動用電流が実際に流れるのは、後述の第1ローサイドスイッチLSW1がオンの状態となったときである。同様に、第2インジェクタIJ2に駆動用電流が実際に流れるのは、後述の第2ローサイドスイッチLSW2がオンの状態となったときである。通常動作時には、第2ハイサイドスイッチHSW2はオンのままの状態となっている。
第2ハイサイドスイッチHSW2から伸びる電力供給経路PL2は途中で分岐しており、分岐した一方が第1インジェクタIJ1に接続され、他方が第2インジェクタIJ2に接続されている。第1ローサイドスイッチLSW1は、上記分岐箇所から第1インジェクタIJ1側へと伸びる電力供給経路PL2のうち、第1インジェクタIJ1を挟んで第2ハイサイドスイッチHSW2とは反対側となる位置に設けられたスイッチ(MOSFET)である。噴射制御装置10は、第1ローサイドスイッチLSW1を所定のタイミング及びデューティで開閉動作させることにより、第1インジェクタIJ1から気筒への燃料噴射(噴射タイミングや噴射量)を制御する。
第2ローサイドスイッチLSW2は、上記分岐箇所から第2インジェクタIJ2側へと伸びる電力供給経路PL2のうち、第2インジェクタIJ2を挟んで第2ハイサイドスイッチHSW2とは反対側となる位置に設けられたスイッチ(MOSFET)である。噴射制御装置10は、第2ローサイドスイッチLSW2を所定のタイミング及びデューティで開閉動作させることにより、第2インジェクタIJ2から気筒への燃料噴射(噴射タイミングや噴射量)を制御する。
第3ローサイドスイッチLSW3は、第1ハイサイドスイッチHSW1から伸びる電力供給経路PL1のうち、第3インジェクタIJ3を挟んで第1ハイサイドスイッチHSW1とは反対側となる位置に設けられたスイッチ(MOSFET)である。噴射制御装置10は、第3ローサイドスイッチLSW3を所定のタイミング及びデューティで開閉動作させることにより、第3インジェクタIJ3から気筒への燃料噴射(噴射タイミングや噴射量)を制御する。
双方向接続部CPは、第1インジェクタIJ1等よりも第1ハイサイドスイッチHSW1側となる位置において、電力供給経路PL1と電力供給経路PL2とを接続するものである。双方向接続部CPは、第1経路PL12及び第2経路PL21を有している。これらはいずれも、電力供給経路PL1と電力供給経路PL2とを接続する電力供給経路であって、互いに並列に配置されている。
第1経路PL12の途中には、第1スイッチCSW1と、第1ダイオードD1が設けられている。第1スイッチCSW1は、通常動作時においては常にオフの状態(開状態)となっている。第1ダイオードD1は、駆動用電流が電力供給経路PL1側から電力供給経路PL2側に流れることを許容し、電力供給経路PL2側から電力供給経路PL1側に流れることを抑制するように設けられている。このため、第1スイッチCSW1がオンの状態になると、駆動用電流が電力供給経路PL1側から電力供給経路PL2側に流れるようになる。
第2経路PL21の途中には、第2スイッチCSW2と、第2ダイオードD2が設けられている。第2スイッチCSW2は、通常動作時においては常にオフの状態となっている。第2ダイオードD2は、駆動用電流が電力供給経路PL2側から電力供給経路PL1側に流れることを許容し、電力供給経路PL1側から電力供給経路PL2側に流れることを抑制するように設けられている。このため、第2スイッチCSW2がオンの状態になると、駆動用電流が電力供給経路PL2側から電力供給経路PL1側に流れるようになる。
噴射制御装置10のその他の構成について説明する。電力供給経路PL1のうち双方向接続部CPよりも第1ハイサイドスイッチHSW1寄りとなる位置には、第3ダイオードD3が設けられている。第3ダイオードD3は、駆動用電流が第1ハイサイドスイッチHSW1側から双方向接続部CP側に流れることを許容し、双方向接続部CP側から第1ハイサイドスイッチHSW1側に流れることを抑制するように設けられている。
電力供給経路PL2のうち双方向接続部CPよりも第2ハイサイドスイッチHSW2寄りとなる位置には、第4ダイオードD4が設けられている。第4ダイオードD4は、駆動用電流が第2ハイサイドスイッチHSW2側から双方向接続部CP側に流れることを許容し、双方向接続部CP側から第2ハイサイドスイッチHSW2側に流れることを抑制するように設けられている。
電力供給経路PL2のうち、双方向接続部CPと第1インジェクタIJ1との間となる位置には、第1遮断スイッチDSW1が設けられている。第1遮断スイッチDSW1は、通常動作時においては常にオンの状態となっている。
同様に、電力供給経路PL2のうち、双方向接続部CPと第2インジェクタIJ2との間となる位置には、第2遮断スイッチDSW2が設けられている。第2遮断スイッチDSW2は、通常動作時においては常にオンの状態となっている。
既に述べたように、通常動作時においては、第1スイッチCSW1及び第2スイッチCSW1はいずれも常にオフの状態となっており、第1遮断スイッチDSW1及び第2遮断スイッチDSW2はいずれも常にオンの状態となっている。このような状態において、噴射制御装置10は、第1ローサイドスイッチLSW1等の開閉を切り替えることによって第1インジェクタIJ1等からの燃料の噴射を制御する。
本実施形態に係る噴射制御装置10では、駆動用電流の供給源である第2ハイサイドスイッチHSW2等が故障した時(以下、「異常時」という)であっても、第1インジェクタIJ1等への駆動用電流の供給を継続させることが可能となっている。異常時において噴射制御装置10で実行される制御の概要について、図2乃至図5を参照しながら説明する。
図2は、第2ハイサイドスイッチHSW2が故障した際における、噴射制御装置10の状態を示す図である。第2ハイサイドスイッチHSW2が故障して駆動用電流を供給し得ない状態になると、図2に示されるように、第1スイッチCSW1がオンの状態に切り替えられる。
図2の状態では、第1ハイサイドスイッチHSW1からの駆動用電流が、第1経路PL12及び電力供給経路PL2を経由して、第1インジェクタIJ1及び第2インジェクタIJ2にも供給される。つまり、全ての第1インジェクタIJ1等に対して、第1ハイサイドスイッチHSW1からの駆動用電流が供給される。その結果、第2ハイサイドスイッチHSW2が故障した状態であっても、車両が備える全て(3つ)の気筒の動作を継続させることができる。
図3は、第1ハイサイドスイッチHSW1が故障した際における、噴射制御装置10の状態を示す図である。第1ハイサイドスイッチHSW1が故障して駆動用電流を供給し得ない状態になると、図3に示されるように、第2スイッチCSW2がオンの状態に切り替えられる。
図3の状態では、第2ハイサイドスイッチHSW2からの駆動用電流が、第2経路PL21及び電力供給経路PL1を経由して、第3インジェクタIJ3にも供給される。つまり、全ての第1インジェクタIJ1等に対して、第2ハイサイドスイッチHSW2からの駆動用電流が供給される。その結果、第1ハイサイドスイッチHSW1が故障した状態であっても、車両が備える全て(3つ)の気筒の動作を継続させることができる。
図4は、第1インジェクタIJ1が故障した場合における、噴射制御装置10の状態を示す図である。第1インジェクタIJ1が故障して燃料を噴射し得ない状態になると、図4に示されるように、第1遮断スイッチDSW1(故障した第1インジェクタIJ1と、双方向接続部CPとの間に配置されたスイッチ)がオフの状態に切り替えられる。これにより、第1インジェクタIJ1への駆動用電流の供給が遮断される。
例えば、第1インジェクタIJ1の近傍において電力供給経路PL2と接地ラインとがショートしてしまった場合には、電力供給経路PL2における電圧が0Vとなってしまい、第1インジェクタIJ1のみならず第2インジェクタIJ2も動作し得ない状態となってしまうことが懸念される。しかしながら、本実施形態では、上記のように第1遮断スイッチDSW1がオフの状態に切り替えられるので、第1インジェクタIJ1の故障が第2インジェクタIJ2の動作に影響してしまうことが防止される。
同様に、第2インジェクタIJ2が故障して燃料を噴射し得ない状態になると、第2遮断スイッチDSW2がオフの状態に切り替えられる。これにより、第2インジェクタIJ2の故障が第1インジェクタIJ1の動作に影響してしまうことが防止される。
図5は、第2ハイサイドスイッチHSW2と第2インジェクタIJ2とが同時に故障した際における、噴射制御装置10の状態を示す図である。このように、第1インジェクタIJ1等の故障、及び、第1インジェクタIJ1等の故障が同時に生じてしまった場合には、それぞれの故障に対応した上記の処理(第1スイッチCSW1等の切り替え)が同時に行われる。
図5の例では、第1スイッチCSW1がオンの状態に切り替えられており、それぞれの第1インジェクタIJ1等に対して、正常な第1ハイサイドスイッチHSW1から駆動用電流が供給されている。また、第2遮断スイッチDSW2がオフの状態に切り替えられており、故障した第2インジェクタIJ2への駆動用電流の供給が遮断されている。
尚、故障が生じたハイサイドスイッチとインジェクタとの組み合わせは、上記以外にも様々な組み合わせが考えられる。それぞれの組み合わせと、それに対応して切り替えられるべき各スイッチ(第1スイッチCSW1、第2スイッチCSW2、第1遮断スイッチDSW1、第2遮断スイッチDSW2)の状態をまとめた表を、図10に示した。図10の表における最上行には、故障が生じたインジェクタが示されている。図10の表における最左列には、故障が生じたハイサイドスイッチが示されている。また、表中における「(OFF)」のような括弧書きは、オン又はオフのいずれの状態でもよいことを示すものである。
図10に示されるように、第1スイッチCSW1及び第2スイッチCSW2のそれぞれの状態の切り替えは、第1ハイサイドスイッチHSW1等のうち故障していない方から全ての第1インジェクタIJ1等に駆動用電流が供給されるように行われる。また、第1遮断スイッチDSW1及び第2遮断スイッチDSW2のそれぞれの状態の切り替えは、第1インジェクタIJ1等のうち故障しているものには駆動用電流が供給されないように行われる。
以上に説明したような故障時の対応を行うために、噴射制御装置10で実行される具体的な処理の流れについて説明する。図6は、当該処理の流れを示すフローチャートである。最初のステップS100では、回路診断が実行される。回路診断とは、第1スイッチCSW1及び第2スイッチCSW2が正常に動作するかどうか(固着等が生じていないかどうか)を予め確認しておくための処理である。回路診断は、車両の内燃機関が始動された直後に行われる。
回路診断の具体的な内容について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。図7のフローチャートは、図6のステップS100で行われる処理の具体的な内容を示すものである。
最初のステップS101では、第1ハイサイドスイッチHSW1がオフの状態に切り替えられる。続くステップS102では、第2スイッチCSW2がオンの状態に切り替えられる。これにより、全ての第1インジェクタIJ1等に対して、第2ハイサイドスイッチHSW2のみから駆動用電流が供給され得る状態となる。
ステップS102に続くステップS103では、全ての第1インジェクタIJ1等が正常に動作しているか否かが判定される。かかる判定は、第1インジェクタIJ1等のそれぞれを流れる駆動用電流の波形を、正常動作を示す波形と比較することによって行われる。
第1インジェクタIJ1等の全てが正常に動作している場合には、ステップS104に移行する。ステップS104に移行したということは、第2スイッチCSW2が正常に動作し、オンの状態に切り替えられたということである。ステップS104では、第2スイッチ禁止フラグの値が0に設定される。
第2スイッチ禁止フラグとは、噴射制御装置10が備える記憶装置(不図示)に確保された情報の記憶場所である。第2スイッチ禁止フラグの値が0のときには、第2スイッチCSW2の切り替えを行うことが許可される。第2スイッチ禁止フラグの値が1のときには、第2スイッチCSW2の切り替えを行うことが禁止される。
ステップS103において、第1インジェクタIJ1等のうちいずれかが故障していると判定された場合には、ステップS105に移行する。ステップS105に移行したということは、第2スイッチCSW2が正常に動作せず、オフの状態のままになっているということである。このため、ステップS105では、第2スイッチ禁止フラグの値が1に設定され、以降において第2スイッチCSW2の切り替えを行うことが禁止される。
ステップS104及びステップS105に続くステップS106では、第2スイッチCSW2がオフの状態に切り替えられる。続くステップS107では、第1ハイサイドスイッチHSW1がオンの状態に切り替えられる。これにより、各スイッチの状態が回路診断の実行前の状態に戻される。
ステップS107に続くステップS111では、第2ハイサイドスイッチHSW2がオフの状態に切り替えられる。続くステップS112では、第1スイッチCSW1がオンの状態に切り替えられる。これにより、全ての第1インジェクタIJ1等に対して、第1ハイサイドスイッチHSW1のみから駆動用電流が供給され得る状態となる。
ステップS112に続くステップS113では、全ての第1インジェクタIJ1等が正常に動作しているか否かが判定される。かかる判定は、ステップS103の場合と同様に行われる。つまり、第1インジェクタIJ1等のそれぞれを流れる駆動用電流の波形を、正常動作を示す波形と比較することによって行われる。
第1インジェクタIJ1等の全てが正常に動作している場合には、ステップS114に移行する。ステップS114に移行したということは、第1スイッチCSW1が正常に動作し、オンの状態に切り替えられたということである。ステップS114では、第1スイッチ禁止フラグの値が0に設定される。
第1スイッチ禁止フラグとは、既に説明した第2スイッチ禁止フラグと同様に、噴射制御装置10が備える記憶装置(不図示)に確保された情報の記憶場所である。第1スイッチ禁止フラグの値が0のときには、第1スイッチCSW1の切り替えを行うことが許可される。第1スイッチ禁止フラグの値が1のときには、第1スイッチCSW1の切り替えを行うことが禁止される。
ステップS113において、第1インジェクタIJ1等のうちいずれかが故障していると判定された場合には、ステップS115に移行する。ステップS115に移行したということは、第1スイッチCSW1が正常に動作せず、オフの状態のままになっているということである。このため、ステップS115では、第1スイッチ禁止フラグの値が1に設定され、以降において第1スイッチCSW1の切り替えを行うことが禁止される。
ステップS114及びステップS115に続くステップS116では、第1スイッチCSW1がオフの状態に切り替えられる。続くステップS117では、第2ハイサイドスイッチHSW2がオンの状態に切り替えられる。これにより、各スイッチの状態が回路診断の実行前の状態に戻される。
図6に戻って説明を続ける。ステップS100の回路診断が終了すると、ステップS200に移行する。ステップS200では、それぞれの第1インジェクタIJ1等における燃料の噴射が、正常に行われているか否かが判定される。全て第1インジェクタIJ1等で燃料の噴射が正常に行われていれば、第1ハイサイドスイッチHSW1、第2ハイサイドスイッチHSW2、第1インジェクタIJ1、第2インジェクタIJ2、及び第3インジェクタIJ3の全てが正常に動作しているということである。この場合、第1スイッチCSW1等の切り替えを行うことなくステップS500に移行する。
ステップS500では、定周期処理の起床が行われるまで処理が待機される。定周期処理の起床が行われれば、ステップS200以降の処理が再度行われる。車両のイグニッションスイッチがオフとされ、定周期処理の起床が行われない状態になると、図6に示される一連の処理を終了する。
ステップS200において、いずれかの第1インジェクタIJ1等で燃料の噴射が正常に行われていない場合には、ステップS300に移行する。この場合には、第1ハイサイドスイッチHSW1、第2ハイサイドスイッチHSW2、第1インジェクタIJ1、第2インジェクタIJ2、及び第3インジェクタIJ3のいずれかで故障が生じていると推測される。
ステップS300では、ハイサイドスイッチ(第1ハイサイドスイッチHSW1、第2ハイサイドスイッチHSW2)で故障が生じているか否かが判定され、故障が生じている場合には必要な対応が行われる。
図8のフローチャートは、図6のステップS300で行われる処理の具体的な内容を示すものである。最初のステップS301では、いずれかのハイサイドスイッチにおいて、OPEN故障又はGNDショート故障が生じているか否かが判定される。
OPEN故障とは、第1ハイサイドスイッチHSW1等と第1インジェクタIJ1等との間において断線が生じ、第1インジェクタIJ1等に対する駆動用電流の供給ができない状態となるような故障のことである。
GNDショート故障とは、第1ハイサイドスイッチHSW1等から伸びる電力供給経路PL1等の一部と接地ラインとがショートしてしまい、やはり第1インジェクタIJ1等に対する駆動用電流の供給ができない状態となるような故障のことである。
尚、ハイサイドスイッチで生じる故障の種類としては、上記のようなOPEN故障やGNDショート故障の他、駆動用電流の遮断ができなくなってしまう(駆動用電流が供給され続けてしまう)ような故障も生じ得る。しかしながら、このような故障が生じた場合には、本実施形態では第1スイッチCSW1等の切り替えは行われず、正常時と同様の対応がとられる。
ステップS301において、第1ハイサイドスイッチHSW1等においてOPEN故障及びGNDショート故障のいずれも生じていなかった場合には、図8に示される一連の処理を終了する。OPEN故障又はGNDショート故障のいずれかが生じていた場合には、ステップS302に移行する。
ステップS302に移行した時点では、上記のように故障の種類が特定できていることに加えて、故障が生じたハイサイドスイッチについても特定できている。第2ハイサイドスイッチHSW2のみが故障しており、第1ハイサイドスイッチHSW1が故障していない場合には、ステップS302からステップS303へと移行する。
ステップS303では、第1スイッチ禁止フラグの値が1になっているか否かが判定される。第1スイッチ禁止フラグの値が1であれば、何ら処理を行うことなく、図8に示される一連の処理を終了する。第1スイッチ禁止フラグの値が0であれば、ステップS304に移行する。
ステップS304では、第1スイッチCSW1がオンの状態に切り替えられる。これにより、全ての第1インジェクタIJ1等に対して、第1ハイサイドスイッチHSW1のみから駆動用電流が供給され得る状態(図2)となる。
上記とは逆に、第1ハイサイドスイッチHSW1のみが故障しており、第2ハイサイドスイッチHSW2が故障していない場合には、ステップS302からステップS305を経てステップS306へと移行する。
ステップS306では、第2スイッチ禁止フラグの値が1になっているか否かが判定される。第2スイッチ禁止フラグの値が1であれば、何ら処理を行うことなく、図8に示される一連の処理を終了する。第2スイッチ禁止フラグの値が0であれば、ステップS307に移行する。
ステップS307では、第2スイッチCSW2がオンの状態に切り替えられる。これにより、全ての第1インジェクタIJ1等に対して、第2ハイサイドスイッチHSW2のみから駆動用電流が供給され得る状態(図3)となる。
第1ハイサイドスイッチHSW1、第2ハイサイドスイッチHSW2の両方が故障している場合には、ステップS302からステップS305を経てステップS308へと移行する。
この場合、第1インジェクタIJ1等に駆動用電流を供給することが不可能な状態となっている。このため、ステップS308では、全ての第1インジェクタIJ1等について駆動信号の送信が停止される。駆動信号とは、第1ローサイドスイッチLSW1等の開閉を切り替えるために送信される信号のことである。
図6に戻って説明を続ける。ステップS300の処理が終了すると、ステップS400に移行する。ステップS400では、それぞれのインジェクタ(第1インジェクタIJ1、第2インジェクタIJ2、第3インジェクタIJ3)で故障が生じているか否かが判定され、故障が生じている場合には必要な対応が行われる。
尚、インジェクタで生じる故障の種類としては、例えば、電力供給経路PL1等の一部において断線が生じ、第1インジェクタIJ1等に対する駆動用電流の供給が行われない状態が考えられる。また、電力供給経路PL1等の一部と接地ラインとがショートしてしまい、第1インジェクタIJ1等に対する駆動用電流の供給が行われない状態が考えられる。
更に、電力供給経路PL1等の一部と他の電力供給ラインとがショートしてしまい、第1インジェクタIJ1等に対する駆動用電流の供給を遮断できなくなってしまうことが考えられる。また、第1インジェクタIJ1等の噴射口に目詰まりが生じ、燃料を噴射することができなくなってしまうことも考えられる。
図9のフローチャートは、図6のステップS400で行われる処理の具体的な内容を示すものである。最初のステップS401では、3本のインジェクタのうち2本以上で故障が生じているかどうかが判定される。2本以上のインジェクタで故障が生じている場合には、ステップS402に移行する。
この場合、車両が備える全て(3つ)の気筒のうち2つ以上が動作を停止するので、内燃機関が動作を継続し得ない状態となっている。このため、ステップS402では、全ての第1インジェクタIJ1等について駆動信号の送信が停止される。
ステップS401の処理が行われた時点では、故障が生じたインジェクタの本数のみならず、どのインジェクタで故障が生じたのかについても特定できている。第1インジェクタIJ1のみが故障し、他のインジェクタは故障していない場合には、ステップS401からステップS411を経てステップS412へと移行する。ステップS412では、第1インジェクタIJ1についての駆動信号の送信が停止される。つまり、第1ローサイドスイッチLSW1の開閉動作が停止される。
ステップS412に続くステップS413では、第1遮断スイッチDSW1がオフの状態に切り替えられる。これにより、第1インジェクタIJ1への駆動用電流の供給が遮断される(図4)。
第2インジェクタIJ2のみが故障し、他のインジェクタは故障していない場合には、ステップS401からステップS411、ステップS421を経てステップS422へと移行する。ステップS422では、第2インジェクタIJ2についての駆動信号の送信が停止される。つまり、第2ローサイドスイッチLSW2の開閉動作が停止される。
ステップS422に続くステップS423では、第2遮断スイッチDSW2がオフの状態に切り替えられる。これにより、第2インジェクタIJ2への駆動用電流の供給が遮断される。
第3インジェクタIJ3のみが故障し、他のインジェクタは故障していない場合には、ステップS401からステップS411、ステップS421、ステップS431を経てステップS432へと移行する。ステップS432では、第3インジェクタIJ3についての駆動信号の送信が停止される。つまり、第3ローサイドスイッチLSW3の開閉動作が停止される。
第1インジェクタIJ1、第2インジェクタIJ2、及び第3インジェクタIJ3のいずれも故障しておらず、正常に動作している場合には、ステップS401からステップS411、ステップS421、ステップS431を経た後、図9に示される一連の処理を終了する。
図6に戻って説明を続ける。ステップS400の処理が終了すると、ステップS500に移行する。以降は、既に述べたように、車両のイグニッションスイッチがオフとされ、定周期処理の起床が行われない状態となるまでの間、ステップS200以降の処理が繰り返し実行される。
以上に説明したように、本実施形態に係る噴射制御装置10では、第1ハイサイドスイッチHSW1及び第2ハイサイドスイッチHSW2のいずれかが故障すると、双方向接続部CPの状態(第1スイッチCSW1、第2スイッチCSW2のそれぞれの開閉)が切り替えられる。これにより、故障していない方のハイサイドスイッチから全ての第1インジェクタIJ1等に駆動用電流が供給される状態となる。その結果、第1ハイサイドスイッチHSW1等の一つが故障した時点以降においても、内燃機関を継続して動作させることができる。
尚、このような状態においては、一つの第1ハイサイドスイッチHSW1等から駆動用電流が出力される頻度が、正常時に比べて高くなる。従って、高負荷時において内燃機関の出力トルクが高いとき、すなわち、高頻度で燃料の噴射が行われるようなときには、第1ハイサイドスイッチHSW1等における(次の噴射に備えた)電力のチャージが間に合わなくなってしまい、第1インジェクタIJ1等を正常に開弁させることができなくなってしまう可能性が考えられる。
このため、第1ハイサイドスイッチHSW1のうちの一つが故障している状態のときにおいては、高負荷時における内燃機関の出力を、所定以下となるように制限することが望ましい。これにより、車両の走行性能は犠牲になるのであるが、車両を停止させることなく確実に退避走行を行うことが可能となる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。