JP2016179799A - 車両用モータ駆動装置 - Google Patents

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俊明 圓増
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Abstract

【課題】 偏心軸受の組み付け作業性を向上させると共に、偏心軸受の転動疲労寿命の長期化を図る。【解決手段】 モータ部と、サイクロイド減速機からなる減速機部と、回転ポンプからモータ部のモータ回転軸を経由してサイクロイド減速機の減速機入力軸25へ潤滑油を供給する軸心給油構造をなす潤滑機構とを備えた車両用モータ駆動装置であって、潤滑機構は、減速機入力軸25の内部に軸方向に沿って形成された油路25cと、減速機入力軸25の偏心部25a,25bに配置されて油路25cと連通し、偏心部25a,25bに外装された偏心軸受41に給油する油孔25eとを備え、偏心軸受41の内輪41bの周方向で軸受荷重を分担しない無荷重範囲に配置されて偏心部25a,25bの油孔25eと連通する1つの油孔41aを形成し、偏心部25a,25bの油孔25eに対する内輪41bの油孔41aの周方向ずれを防止する回り止め手段61を設ける。【選択図】 図8

Description

本発明は、例えば、電動モータの回転駆動力を減速機部に入力し回転数を減速して車輪側に伝達する車両用モータ駆動装置に関する。
従来の車両用モータ駆動装置として、例えば、特許文献1に開示されたインホイールモータ駆動装置がある。この特許文献1のインホイールモータ駆動装置は、駆動力を発生させるモータ部と、車輪に接続される車輪用軸受部と、モータ部と車輪用軸受部との間に配置され、モータ部の回転を減速して車輪用軸受部に伝達する減速機部とを備えている。
前述の構成からなるインホイールモータ駆動装置において、装置のコンパクト化の観点から、モータ部には低トルクで高回転の小型モータが採用されている。一方、車輪用軸受部で車輪を駆動するために大きなトルクが必要となることから、減速機部には、コンパクトで高い減速比が得られるサイクロイド減速機が採用されている。
サイクロイド減速機は、モータ部により回転駆動される減速機入力軸と、減速機入力軸の偏心部の外周に転がり軸受(以下、偏心軸受と称す)を介して回転自在に支持された一対の曲線板と、曲線板の外周面に係合して曲線板に自転運動を生じさせる外ピンと、外ピンおよび減速機出力軸を回転自在に支持する外ピンハウジングと、減速機出力軸に固定されて曲線板の貫通孔に係合する内ピンとで主要部が構成されている。
このインホイールモータ駆動装置では、モータ部および減速機部に潤滑油を供給する潤滑機構が設けられている。潤滑機構は、潤滑油を圧送する回転ポンプと、潤滑油を一時的に貯溜する油タンクと、モータ部および減速機部に設けられた油路および油孔とを備え、潤滑油がモータ部および減速機部を循環する構造を有する。
この潤滑機構は、回転ポンプからモータ回転軸の油路を経由してモータ部へ潤滑油を供給すると共に、モータ回転軸の油路と連通する減速機入力軸の油路を経由して減速機部へ潤滑油を供給する軸心給油構造を採用している。
この軸心給油構造では、モータ回転に伴うポンプ圧力および遠心力によって、モータ回転軸の油路を経由して供給された潤滑油をモータ部で吐出させることにより、モータ部の冷却が行われる。また、減速機入力軸の油路を経由して供給された潤滑油を減速機部で吐出させることにより、減速機部の冷却および潤滑が行われる。
特許第5374215号公報
ところで、従来のインホイールモータ駆動装置では、サイクロイド減速機を構成する曲線板が偏心しながら回転しているため、減速機入力軸の偏心部に取り付けられて曲線板を支持する偏心軸受は、大きな変動荷重を受けている。また、高減速比であるために高速で回転することになり、焼き付き等の損傷を防止するには、十分な潤滑油の供給が必要となる。一方、このインホイールモータ駆動装置の潤滑機構は、回転ポンプから減速機入力軸の油路を経由して減速機部へ潤滑油を供給する軸心給油構造となっている。
軸心給油構造では、減速機部に潤滑油を供給する油路が減速機入力軸の内部に軸方向に沿って形成されている。また、減速機入力軸の偏心部に、減速機入力軸の油路と連通して偏心部の外周面に開口する油孔が形成されている。さらに、偏心部に外装された偏心軸受の内輪に、偏心部の油孔と連通して軌道面に開口する油孔が形成されている。この内輪の油孔から吐出される潤滑油により偏心軸受を冷却および潤滑する。
この偏心軸受において、特許文献1のインホイールモータ駆動装置では、転動体と内輪の軌道面との接触面圧を増加させないように、内輪の油孔は、軸受荷重を分担しない無荷重範囲内で周方向に沿う3箇所に配置されている(特許文献1の段落[0051]および図6参照)。これに対して、偏心部の油孔は、周方向の1箇所に配置されている。そのため、偏心部の外周面に環状溝を周方向に沿って形成することにより、偏心部における1つの油孔と内輪における3つの油孔とを環状溝で接続する構造としている。
このように、偏心部の油孔と内輪の油孔とを繋ぐ環状溝を設けたことにより、減速機入力軸の偏心部に偏心軸受の内輪を圧入などで組み付ける際に、偏心部の油孔と内輪の油孔とを厳密に位置合わせすることなく、両部材の油孔を接続することができる構造となっている。また、減速機入力軸の回転中に偏心軸受の内輪がクリープ等により初期の固定位置からずれても、偏心部の油孔と内輪の油孔との接続を確保することができる。
しかしながら、従来のインホイールモータ駆動装置では、前述したように、偏心軸受の内輪の油孔が、軸受荷重を分担しない無荷重範囲内で周方向に沿う3箇所に配置された構造を採用していることから、以下のような課題がある。つまり、車両の右側に搭載されるインホイールモータ駆動装置と、車両の左側に搭載されるインホイールモータ駆動装置とでは、偏心軸受における軸受荷重の方向が異なる。
そのため、従来のように、偏心軸受の内輪の油孔を3箇所に設けた場合、油孔の位置が右側駆動用と左側駆動用のそれぞれに適合するように内輪の向きを考慮しながら、内輪を偏心部に組み付けなければならない。このことから、偏心軸受の内輪を減速機入力軸の偏心部に組み付ける作業が煩雑となり、右側駆動用と左側駆動用とで組み付け間違いを招くおそれがある。
また、インホイールモータ駆動装置の設計上、偏心軸受の径方向寸法を小さくする必要が生じた場合、内輪の厚みを小さくする手段が考えられる。その場合、厚みが小さい内輪を減速機入力軸の偏心部に圧入しようとすると、その偏心部の外周面に周方向に沿う環状溝が形成されていることから、その環状溝の形成部分と非形成部分で内輪の締め代および変形状態が不均一となる。これにより、転動体と内輪の軌道面との接触状態が不均一となり、偏心軸受の転動疲労寿命が短くなる可能性がある。
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、偏心軸受の組み付け作業性を向上させると共に、偏心軸受の転動疲労寿命の長期化を図り得る車両用モータ駆動装置を提供することにある。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、モータ部と、サイクロイド減速機からなる減速機部と、車輪用軸受部と、回転ポンプからモータ部のモータ回転軸を経由してサイクロイド減速機の減速機入力軸へ潤滑油を供給する軸心給油構造をなす潤滑機構とを備えた車両用モータ駆動装置であって、潤滑機構は、減速機入力軸の内部に軸方向に沿って形成された油路と、減速機入力軸の偏心部に配置されて油路と連通し、偏心部に外装された偏心軸受に給油する油孔とを備え、偏心軸受の内輪の周方向で軸受荷重を分担しない無荷重範囲に配置されて偏心部の油孔と連通する1つの油孔を形成し、偏心部の油孔に対する内輪の油孔の周方向ずれを防止する回り止め手段を設けたことを特徴とする。
本発明では、偏心軸受の内輪の周方向で軸受荷重を分担しない無荷重範囲に配置されて偏心部の油孔と連通する1つの油孔を形成したことにより、その油孔の位置が右側駆動用と左側駆動用の両方に適合するので、内輪の向きを考慮することなく、内輪を偏心部に組み付けることができる。このことから、偏心軸受の内輪を減速機入力軸の偏心部に組み付ける作業が簡易となり、右側駆動用と左側駆動用とで組み付け間違いを未然に防止することができる。
この場合、偏心部における1つの油孔に対して内輪における1つの油孔を連通させるために位置合わせする必要がある。減速機入力軸の偏心部に偏心軸受の内輪を圧入などで組み付ける際に、偏心部の油孔と内輪の油孔とを位置合わせしても、減速機入力軸の回転中に偏心軸受の内輪がクリープ等により初期の固定位置からずれる可能性がある。
そこで、本発明では、偏心部の油孔に対する内輪の油孔の周方向ずれを防止する回り止め手段を設けている。この回り止め手段により、減速機入力軸の回転中に偏心軸受の内輪がクリープ等により初期の固定位置からずれることを未然に防止できる。
この回り止め手段により、偏心部の油孔と内輪の油孔とを位置合わせした状態を維持することができるので、従来のように、偏心部の油孔と内輪の油孔とを繋ぐ環状溝を偏心部の外周面に形成する必要がない。このように、偏心部の外周面に環状溝を形成しないことから、インホイールモータ駆動装置の設計上、偏心軸受の径方向寸法を小さくする必要が生じた場合に内輪の厚みを小さくしても、厚みが小さい内輪を減速機入力軸の偏心部に圧入した構造において、偏心部の外周面に対する内輪の締め代および変形状態が均一となる。これにより、転動体と内輪の軌道面との接触状態が均一となって、偏心軸受の転動疲労寿命が長くなる。
本発明における回り止め手段は、偏心軸受の内輪端部の内周面に形成された切り欠きと、減速機入力軸の外周面で周方向位置が規制された連結部材とを備え、内輪の切り欠きに連結部材を挿入配置した構造を具備することが望ましい。このようにすれば、簡易な構造でもって偏心部の油孔に対する内輪の油孔の周方向ずれを防止することができる。なお、連結部材の周方向位置を減速機入力軸の外周面で規制するには、減速機入力軸の偏心部端部の外周面に切り欠きを形成し、その切り欠きに連結部材を挿入配置した構造が可能であるが、これ以外の他の構造であってもよい。
本発明における回り止め手段は、減速機入力軸の偏心部および偏心軸受の内輪の周方向180°対称位置の2箇所に配設されていることが望ましい。このようにすれば、高速回転する偏心部および内輪について良好なバランスを確保することができる。
本発明によれば、偏心軸受の内輪の周方向で軸受荷重を分担しない無荷重範囲に配置されて偏心部の油孔と連通する1つの油孔を形成したことにより、偏心軸受の内輪を減速機入力軸の偏心部に組み付ける作業が簡易となり、右側駆動用と左側駆動用とで組み付け間違いを未然に防止することができる。
また、偏心部の油孔に対する内輪の油孔の周方向ずれを防止する回り止め手段を設けたことにより、減速機入力軸の回転中に偏心軸受の内輪が初期の固定位置からずれることを未然に防止できるので、従来のような環状溝を偏心部の外周面に形成する必要がない。その結果、偏心軸受の内輪の厚みを小さくしても、その内輪を減速機入力軸の偏心部に圧入した構造において、転動体と内輪の軌道面との接触状態が均一となって、偏心軸受の転動疲労寿命が長くなる。
本発明の実施形態で、インホイールモータ駆動装置の全体構成を示す縦断面図である。 図1のP−P線に沿う断面図である。 図1の減速機部を示す要部拡大断面図である。 図1の曲線板に作用する荷重を示す説明図である。 図1の回転ポンプを示す横断面図である。 図4の偏心軸受が分担する軸受荷重の荷重分布を示す模式図である。 回り止め手段の一例で、(A)は減速機入力軸の偏心部および偏心軸受を示す正面図、(B)は(A)のQ−Q線に沿う断面図である。 回り止め手段の一例で、(A)は減速機入力軸の偏心部および偏心軸受を示す平面図、(B)は(A)のR−R線に沿う断面図である。 厚みが大きい内輪を有する偏心軸受を示す部分断面図である。 厚みが小さい内輪を有する偏心軸受を示す部分断面図である。 一方の鍔部を別部材とした偏心軸受を示す部分断面図である。 回り止め手段の他例で、(A)は減速機入力軸の偏心部および偏心軸受を示す正面図、(B)は(A)のS−S線に沿う断面図である。 インホイールモータ駆動装置を搭載した電気自動車の概略構成を示す平面図である。 図13の電気自動車を示す後方断面図である。
本発明に係る車両用モータ駆動装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。
図13は、車両用モータ駆動装置の一例としてのインホイールモータ駆動装置21を搭載した電気自動車11の概略平面図、図14は、電気自動車11を後方から見た概略断面図である。図13に示すように、電気自動車11は、シャシー12と、操舵輪としての前輪13と、駆動輪としての後輪14と、後輪14に駆動力を伝達するインホイールモータ駆動装置21とを装備する。図14に示すように、後輪14は、シャシー12のホイールハウジング12aの内部に収容され、懸架装置(サスペンション)12bを介してシャシー12の下部に固定されている。
懸架装置12bは、左右に延びるサスペンションアームによって後輪14を支持すると共に、コイルスプリングとショックアブソーバとを含むストラットによって、後輪14が地面から受ける振動を吸収してシャシー12の振動を抑制する。さらに、左右のサスペンションアームの連結部分には、旋回時などの車体の傾きを抑制するスタビライザが設けられている。懸架装置12bは、路面の凹凸に対する追従性を向上させ、後輪14の駆動力を効率よく路面に伝達するために、左右の車輪を独立して上下させることができる独立懸架式としている。
電気自動車11は、ホイールハウジング12aの内部に、左右それぞれの後輪14を駆動するインホイールモータ駆動装置21を設けることによって、シャシー12上にモータ、ドライブシャフトおよびデファレンシャルギヤ機構などを設ける必要がなくなるので、客室スペースを広く確保でき、かつ、左右の後輪14の回転をそれぞれ制御することができるという利点を有する。電気自動車11の走行安定性およびNVH特性を向上させるためにばね下重量を抑える必要があり、さらに、広い客室スペースを確保するためにインホイールモータ駆動装置21の小型化が求められる。
そこで、この実施形態のインホイールモータ駆動装置21は、以下の構造を具備する。図1はインホイールモータ駆動装置21の概略構成を示す縦断面図、図2は図1のP−P線に沿う断面図、図3は減速機部Bを示す拡大断面図、図4は曲線板26aに作用する荷重を示す説明図、図5は回転ポンプ51を示す横断面図である。なお、この実施形態の特徴的な構成を説明する前にインホイールモータ駆動装置21の全体構成を説明する。
図1に示すように、インホイールモータ駆動装置21は、駆動力を発生させるモータ部Aと、モータ部Aの回転を減速して出力する減速機部Bと、減速機部Bからの出力を駆動輪としての後輪14(図13および図14参照)に伝達する車輪用軸受部Cとを備え、モータ部Aと減速機部Bはケーシング22に収納されて、電気自動車11のホイールハウジング12a(図14参照)内に取り付けられる。ケーシング22は、モータ部Aが収容されたモータハウジングと減速機部Bが収容された減速機ハウジングとからなる分割構造で、ボルトにより締結一体化されている。
モータ部Aは、ケーシング22に固定されたステータ23aと、ステータ23aの径方向内側に隙間をもって対向するように配置されたロータ23bと、ロータ23bの径方向内側に配置されてロータ23bと一体回転するモータ回転軸24とを備えたラジアルギャップモータである。ステータ23aは磁性体コア23cの外周にコイル23dを巻回することによって構成され、ロータ23bは永久磁石または磁性体で構成されている。
モータ回転軸24は、径方向外側へ一体的に延びるホルダ部24dによりロータ23bが保持されている。このホルダ部24dは、ロータ23bが嵌め込み固定された凹溝を環状に形成した構成としている。モータ回転軸24は、その軸方向一方側端部(図1の右側)が転がり軸受36aに、軸方向他方側端部(図1の左側)が転がり軸受36bによって、ケーシング22に対して回転自在に支持されている。
減速機入力軸25は、その軸方向一方側略中央部(図1の右側)が転がり軸受37aに、軸方向他方側端部(図1の左側)が転がり軸受37bによって、減速機出力軸28に対して回転自在に支持されている。この減速機入力軸25は、減速機部B内に偏心部25a,25bを有する。2つの偏心部25a,25bは、偏心運動による遠心力を互いに打ち消し合うために、180°位相をずらして設けられている。減速機入力軸25と前述のモータ回転軸24とは、スプライン嵌合(セレーション嵌合も含む。以下、同じ)によって連結されてモータ部Aの駆動力が減速機部Bに伝達される。
減速機部Bは、減速機入力軸25の偏心部25a,25bに回転自在に保持される曲線板26a,26bと、その曲線板26a,26bの外周部に係合する複数の外ピン27と、曲線板26a,26bの自転運動を減速機出力軸28に伝達する運動変換機構と、偏心部25a,25bに隣接して減速機入力軸25に設けられたカウンタウェイト29とを備えたサイクロイド減速機である。
減速機出力軸28は、フランジ部28aと軸部28bとを有する。フランジ部28aには、減速機出力軸28の回転軸心を中心とする円周上に複数の内ピン31が等間隔に固定されている。また、軸部28bは車輪用軸受部Cの内方部材としてのハブ輪33aにスプライン嵌合によってトルク伝達可能に連結され、減速機部Bの出力を後輪14(図13および図14参照)に伝達する。この減速機出力軸28は、転がり軸受46bによって外ピンハウジング60に回転自在に支持されている。
図2および図3に示すように、曲線板26a,26bは、外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される複数の波形を有し、一方側端面から他方側端面に貫通する貫通孔30a,30bを有する。貫通孔30aは、曲線板26a,26bの自転軸心を中心とする円周上に等間隔に複数個設けられており、前述の内ピン31を受け入れる。また、貫通孔30bは、曲線板26a,26bの中心に設けられており、偏心部25a,25bに嵌合する。曲線板26a,26bは、転がり軸受である偏心軸受41によって偏心部25a,25bに対して回転自在に支持されている。
外ピン27は、減速機入力軸25の回転軸心を中心とする円周上に等間隔に設けられている。曲線板26a,26bが公転運動すると、曲線形状の波形と外ピン27とが係合して、曲線板26a,26bに自転運動を生じさせる。外ピン27は、針状ころ軸受27aによって外ピンハウジング60に回転自在に保持され、この外ピンハウジング60がケーシング22に回り止めされ、フローティング状態で支持されている。
カウンタウェイト29は、略扇形状で、減速機入力軸25と嵌合する貫通孔を有し、曲線板26a,26bの回転によって生じる不釣合い慣性偶力を打ち消すために、偏心部25a,25bと隣接する位置に偏心部25a,25bと180°位相をずらして配置される。2枚の曲線板26a,26b間の回転軸心方向の中心点をG(図3参照)とすると、その中心点Gの右側について、中心点Gと曲線板26aの中心との距離をL1、曲線板26a、偏心軸受41および偏心部25aの質量の和をm1、曲線板26aの重心の回転軸心からの偏心量をε1とし、中心点Gとカウンタウェイト29との距離をL2、カウンタウェイト29の質量をm2、カウンタウェイト29の重心の回転軸心からの偏心量をε2とすると、L1×m1×ε1=L2×m2×ε2を満たす関係となっている。L1×m1×ε1=L2×m2×ε2の関係は、不可避的に生じる誤差を許容する。中心点Gの左側の曲線板26bとカウンタウェイト29との間にも同様の関係が成立する。
運動変換機構は、減速機出力軸28に保持されて軸方向に延びる複数の内ピン31と、曲線板26a,26bに設けられた貫通孔30aとで構成されている。内ピン31は、減速機出力軸28の回転軸心を中心とする円周上に等間隔に設けられており、その軸方向一方側端部が減速機出力軸28のフランジ28aに固定されている。また、曲線板26a,26bとの摩擦抵抗を低減するために、曲線板26a,26bの貫通孔30aの内壁面に当接する位置に針状ころ軸受31aが設けられている。貫通孔30aは、複数の内ピン31それぞれに対応する位置に設けられ、貫通孔30aの内径寸法は、内ピン31の外径寸法(針状ころ軸受31aを含む最大外径)より所定寸法大きく設定されている。
内ピン31の軸方向他方側端部には、減速機出力軸28の一部を構成するスタビライザ32が設けられている。スタビライザ32は、外ピンハウジング60に転がり軸受46aによって回転自在に支持された円環部32aと、その円環部32aの内周面から軸方向に延びる円筒部32bとからなる。複数の内ピン31の軸方向他方側端部は、円環部32aに固定されている。曲線板26a,26bから一部の内ピン31に負荷される荷重はフランジ部28aおよびスタビライザ32を介して全ての内ピン31によって支持されるため、内ピン31に作用する応力を低減させ、耐久性を向上させることができる。
曲線板26a,26bに作用する荷重の状態を図4に基づいて説明する。偏心部25aの軸心O2は減速機入力軸25の軸心Oから偏心量eだけ偏心している。偏心部25aの外周には、曲線板26aが取り付けられ、偏心部25aは曲線板26aを回転自在に支持するので、軸心O2は曲線板26aの軸心でもある。曲線板26aの外周は波形曲線で形成され、径方向に窪んだ波形の凹部26cを周方向等間隔に有する。曲線板26aの周囲には、凹部26cと係合する外ピン27が、軸心Oを中心として周方向に複数配設されている。
図4において、減速機入力軸25と共に偏心部25aが紙面上で反時計周りに回転すると、偏心部25aは軸心Oを中心とする公転運動を行うので、曲線板26aの凹部26cが、外ピン27と周方向に順次当接する。この結果、矢印で示すように、曲線板26aは、複数の外ピン27から荷重Fiを受けて、時計回りに自転する。
また、曲線板26aには貫通孔30aが軸心O2を中心として周方向に複数配設されている。各貫通孔30aには、軸心Oと同軸に配置された減速機出力軸28と結合する内ピン31が挿通する。貫通孔30aの内径寸法は、内ピン31の外径寸法(針状ころ軸受31aを含む最大外径)よりも所定寸法大きいため、内ピン31は曲線板26aの公転運動の障害とはならず、内ピン31は曲線板26aの自転運動を取り出して減速機出力軸28を回転させる。このとき、減速機出力軸28は、減速機入力軸25よりも高トルクかつ低回転数になり、図4に矢印で示すように、曲線板26aは、複数の内ピン31から荷重Fjを受ける。これら複数の荷重Fi,Fjの合力Fsが減速機入力軸25にかかる。
合力Fsの方向は、曲線板26aの波形形状、凹部26cの数などの幾何学的条件や遠心力の影響により変化する。具体的には、自転軸心O2と軸心Oとを結ぶ直線Yと直角であって自転軸心O2を通過する基準線Xと、合力Fsとの角度αは概ね30°〜60°で変動する。複数の荷重Fi、Fjは、減速機入力軸25が1回転(360°)する間に荷重の方向や大きさが変り、その結果、減速機入力軸25に作用する合力Fsも荷重の方向や大きさが変動する。減速機入力軸25が反時計周りに1回転すると、曲線板26aの波形の凹部26cが減速されて1ピッチ時計回りに回転して図4の状態になり、これを繰り返す。
図1に示すように、車輪用軸受部Cの車輪用軸受33は、減速機出力軸28にトルク伝達可能に連結されたハブ輪33aと、ハブ輪33aの外周面に嵌合された内輪33bと、ケーシング22に嵌合固定された外輪33cと、ハブ輪33aおよび内輪33bと外輪33cとの間に配置された複数の玉33dと、複数の玉33dを保持する保持器33eとを備えた複列アンギュラ玉軸受である。車輪用軸受33の軸方向両端部には、泥水などの侵入防止のためにシール部材33fが設けられている。この車輪用軸受33のハブ輪33aにボルト34で後輪14(図13および図14参照)が連結される。
次に、全体的な潤滑機構を説明する。この潤滑機構は、モータ部Aを冷却するためにモータ部Aに潤滑油を供給すると共に、減速機部Bを冷却および潤滑するために潤滑油を供給するものである。
潤滑機構は、図1に示すように、回転ポンプ51と、ケーシング22に配設された油路22aと、モータ回転軸24に配設された油路24a,24bおよび油孔24cと、減速機入力軸25に配設された油路25cおよび油孔25d,25e,25fと、ケーシング22の下方に配置された油タンク22dとを主な構成としている。回転ポンプ51の吸入口55および吐出口56は、ケーシング22のモータハウジングに設けられている。また、ケーシング22の減速機ハウジングに油タンク22dが一体的に設けられている。
油路22aは、回転ポンプ51から径方向外側へ延びて屈曲した上で軸方向に延び、さらに屈曲した上で径方向内側へ延びて油路24aに接続される。油路24aは、モータ回転軸24の内部を軸線方向に沿って延びて油路25cに接続される。油路24bは、軸線方向に沿って延びる油路24aと連通し、径方向外側に位置するホルダ部24dに向かって延びて油孔24cと連通する。油孔24cは、ホルダ部24dのインボード側およびアウトボード側の端面で開口する。
モータ回転軸24の油路24aと連通する油路25cは、減速機入力軸25の内部を軸線方向に沿って延びている。また、減速機入力軸25の油路25cと連通する油孔25dは、径方向外側へ延びて減速機入力軸25の外周面で開口する。減速機入力軸25の偏心部25a,25bに設けられた油孔25eは、油路25cと連通して径方向外側へ延び、減速機入力軸25の外周面で開口する。曲線板26a,26bを支持する偏心軸受41の内輪には、減速機入力軸25の油孔25eと連通する油孔41a(図3参照)が設けられている。さらに、減速機入力軸25の先端部に設けられた油孔25fは、油路25cと連通して軸方向に延び、減速機入力軸25の軸端面で開口する。
モータ部Aのケーシング22の底部には、潤滑油を油タンク22dに排出するための排油孔22bが設けられ、減速機部Bのケーシング22の底部には、潤滑油を油タンク22dに排出するための排油孔22fが設けられている。また、油タンク22dから回転ポンプ51へ潤滑油を還流させるための油路22eがケーシング22に設けられている。潤滑油を強制的に循環させるための回転ポンプ51は、ケーシング22の油路22eと油路22aとの間に設けられている。
図5に示すように、回転ポンプ51は、減速機出力軸28(図1参照)の回転と同期して回転するインナロータ52と、インナロータ52の回転に伴って従動回転するアウタロータ53と、ポンプ室54と、油路22eに連通する吸入口55と、油路22aに連通する吐出口56とを備えるサイクロイドポンプである。この回転ポンプ51をケーシング22内に配置することによって、インホイールモータ駆動装置21の大型化を防止することができる。
インナロータ52は、外周面にサイクロイド曲線で構成された歯形を有する。具体的には、歯先部分52aの形状がエピサイクロイド曲線、歯溝部分52bの形状がハイポサイクロイド曲線となっている。インナロータ52は、スタビライザ32の円筒部32b(図1および図3参照)の外周面に嵌合して減速機出力軸28と一体回転する。アウタロータ53は、内周面にサイクロイド曲線で構成された歯形を有する。具体的には、歯先部分53aの形状がハイポサイクロイド曲線、歯溝部分53bの形状がエピサイクロイド曲線となっている。アウタロータ53は、ケーシング22に回転自在に支持されている。
インナロータ52は、回転中心c1を中心として回転し、一方、アウタロータ53は、回転中心c2を中心として回転する。インナロータ52およびアウタロータ53はそれぞれ異なる回転中心c1,c2を中心として回転するので、ポンプ室54の容積は連続的に変化する。これにより、吸入口55から流入した潤滑油が吐出口56から油路22aに圧送される。
前述した構成の潤滑機構による潤滑油の流れを説明する。図1において、潤滑機構内に付した白抜き矢印は潤滑油の流れを示す。モータ部Aの冷却として、回転ポンプ51から圧送された潤滑油は油路22a,24aを経由し、その一部がモータ回転軸24の回転に伴う遠心力およびポンプ圧力によって油路24bを経てロータ23bを冷却する。さらに、ホルダ部24dの油孔24cから潤滑油が吐出されてステータ23aを冷却する。このようにして、モータ部Aの冷却が行われる。
一方、減速機部Bの冷却および潤滑として、回転ポンプ51から圧送された潤滑油は油路22a,24a,25cを経由し、その一部が減速機入力軸25の回転に伴う遠心力およびポンプ圧力によって油孔25d,25e,25fから吐出する。油孔25dから吐出した潤滑油は、減速機入力軸25を支持する転がり軸受37aに供給される。また、油孔25eから吐出した潤滑油は、曲線板26a,26bを支持する偏心軸受41に供給される。さらに、油孔25fから吐出した潤滑油は、減速機入力軸25を支持する転がり軸受37bに供給される。これらの潤滑油は、内ピン31の針状ころ軸受31aおよび外ピン27の針状ころ軸受27aに供給されながら、外ピンハウジング60内を径方向外側へ移動する。このようにして、減速機部Bの冷却および潤滑が行われる。
モータ部Aの冷却、減速機部Bの冷却および潤滑を行った潤滑油は、ケーシング22の内壁面を伝って重力により下部へ移動する。モータ部Aの下部へ移動した潤滑油は、排油孔22bから排出されて油タンク22dに一時的に貯溜される。減速機部Bの下部へ移動した潤滑油は、外ピンハウジング60に設けられた油孔60aを経由して排油孔22fから排出されて油タンク22dに一時的に貯溜される。このように、油タンク22dが設けられているので、回転ポンプ51によって圧送しきれない潤滑油が一時的に発生しても、油タンク22dに貯溜しておくことができる。
この実施形態におけるインホイールモータ駆動装置21の全体構成は、前述のとおりであるが、その特徴的な構成を以下に詳述する。
インホイールモータ駆動装置21の減速機部Bでは、サイクロイド減速機を構成する曲線板26a,26bが偏心しながら回転している。そのため、減速機入力軸25の偏心部25a,25bに外装されて曲線板26a,26bを支持する偏心軸受41は、大きな変動荷重を受けている。この偏心軸受41の転動疲労寿命を長くするためには、十分な潤滑油の供給が必要となる。
一方、このインホイールモータ駆動装置21の潤滑機構は、回転ポンプ51によりケーシング22の油路22aからモータ回転軸24の油路24aを経由してモータ部Aに潤滑油を供給すると共に、そのモータ回転軸24の油路24aと連通する減速機入力軸25の油路25cを経由して減速機部Bに潤滑油を供給する軸心給油構造となっている。
この軸心給油構造では、減速機部Bに潤滑油を供給する油路25cが減速機入力軸25の内部に軸方向に沿って形成されている。また、減速機入力軸25の偏心部25a,25bに、減速機入力軸25の油路25cと連通して偏心部25a,25bの外周面に開口する油孔25eが形成されている。さらに、偏心部25a,25bに外装された偏心軸受41の内輪41bに、偏心部25a,25bの油孔25eと連通して軌道面に開口する油孔41aが形成されている。この内輪41bの油孔41aから吐出される潤滑油により偏心軸受41を冷却および潤滑する(図1および図3参照)。
偏心軸受41に支持された曲線板26a,26bは、回転時、その外周面に係合する複数の外ピン27と貫通孔30aに係合する複数の内ピン31から荷重を受けるため、その合力が偏心軸受41に作用する荷重となる。例えば、曲線板26a,26bが時計回りに回転する時には、図6に示すように、合力Fs(図4参照)が軸受荷重Mとなり、曲線板26a,26bが反時計回りに回転する時には、これと線対称な方向の軸受荷重Nとなる。この時、図6に示す角度βで規定される範囲が、軸受荷重M,Nを分担しない無荷重範囲となる。
この実施形態では、偏心軸受41において、転動体(円筒ころ)41cと内輪41bの軌道面との接触面圧を増加させないように、内輪41bの油孔41aは、軸受荷重M,Nを分担しない無荷重範囲内にある周方向部位(垂直方向の基準線Y上)の1箇所のみに配置されている。この内輪41bの油孔41aは、減速機入力軸25の偏心部25a,25bの周方向で1箇所に形成された油孔25eと連通している。ここで、車両の右側に搭載されるインホイールモータ駆動装置21と、車両の左側に搭載されるインホイールモータ駆動装置21とでは、偏心軸受41における軸受荷重M,Nの方向が異なる(図6参照)。これは、車両が前進する場合と後進する場合についても同様である。
この実施形態では、前述したように、偏心軸受41の内輪41bの周方向で軸受荷重M,Nを分担しない無荷重範囲に配置されて偏心部25a,25bの油孔25eと連通する1つの油孔41aを形成したことにより、その油孔41aの位置が右側駆動用と左側駆動用の両方に適合するので、内輪41bの向きを考慮することなく、内輪41bを偏心部25a,25bに組み付けることができる。このことから、偏心軸受41の内輪41bを減速機入力軸25の偏心部25a,25bに組み付ける作業が簡易となり、右側駆動用と左側駆動用とで組み付け間違いを未然に防止することができる。
ここで、偏心部25a,25bにおける1つの油孔25eに対して内輪41bにおける1つの油孔41aを連通させるために位置合わせする必要がある。減速機入力軸25の偏心部25a,25bに偏心軸受41の内輪41bを圧入などで組み付ける際に、偏心部25a,25bの油孔25eと内輪41bの油孔41aとを位置合わせしても、減速機入力軸25の回転中に偏心軸受41の内輪41bがクリープ等により初期の固定位置からずれる可能性がある。
そこで、この実施形態では、図7(A)(B)および図8(A)(B)に示すように、偏心部25a,25bの油孔25eに対する内輪41bの油孔41aの周方向ずれを防止する回り止め手段61を設けている。この回り止め手段61により、減速機入力軸25の偏心部25a,25bに偏心軸受41の内輪41bを圧入などで組み付けた後、減速機入力軸25の回転中に偏心軸受41の内輪41bがクリープ等により初期の固定位置からずれることを未然に防止できる。
図7(A)(B)および図8(A)(B)は、回り止め手段61の具体的構造を例示している。なお、図7(B)および図8(B)では、図7(A)および図8(A)に示す偏心軸受41の転動体41cおよび保持器41dを図示省略している。
回り止め手段61は、偏心軸受41の内輪41bの端部(鍔部)の内周面に形成された切り欠き62と、減速機入力軸25の外周面で周方向位置が規制されたピンやキー等の連結部材63とを備え、減速機入力軸25の偏心部25a,25bに外装された内輪41bの切り欠き62に連結部材63を挿入配置した構造を具備する。
この構造では、連結部材63の周方向位置を減速機入力軸25の外周面で規制するため、減速機入力軸25の偏心部25a,25bの端部の外周面に切り欠き64を形成し、その切り欠き64に連結部材63を挿入配置した構造としている。これにより、簡易な構造でもって偏心部25a,25bの油孔25eに対する内輪41bの油孔41aの周方向ずれを防止することができる。
この図示の構造では、回り止め手段61を2つの偏心部25a,25bおよび偏心軸受41間に設けている。つまり、図7(A)および図8(A)に示すように、軸方向で隣接する2つの偏心部25a,25bの内側端部の外周面に2つの切り欠き64を対向するように設けると共に、この切り欠き64に対応させて軸方向で隣接する偏心軸受41の内輪41bの内側端部の内周面に2つの切り欠き62を対向するように設け、これらの切り欠き62,64で形成された凹所に連結部材63を挿入配置している。
このように、2つの偏心部25a,25bおよび偏心軸受41間に切り欠き62,64および連結部材63を配設した構造とすることにより、2つの偏心部25a,25bおよび偏心軸受41で共通する1つの回り止め手段61を構成することができる。また、切り欠き62,64に挿入配置された連結部材63は、偏心部25a,25bの両側から圧入などによって組み付けられる内輪41bによって抜け止めされる。
また、切り欠き62,64および連結部材63からなる回り止め手段61は、図7(B)および図8(B)に示すように、一方の偏心部25aと他方の偏心部25bとで外周面に段差がなくなる中間位置で、減速機入力軸25の偏心部25a,25bおよび偏心軸受41の内輪41bの周方向180°対称位置の2箇所に配設されている。
このように、回り止め手段61を周方向180°対称位置の2箇所に設けたことにより、高速回転する偏心部25a,25bおよび内輪41bについて良好なバランスを確保することができる。また、インホイールモータ駆動装置21を右側駆動用と左側駆動用の両方に使用することができる。
なお、この回り止め手段61は、連結部材63を切り欠き62,64に周方向すきまがない状態で圧入した構造とすれば、偏心部25a,25bの油孔25eに対して内輪41bの油孔41aを一致させた状態が維持できる。一方、切り欠き62,64と連結部材63との間に周方向すきまがあっても、周方向すきまによる内輪41bの位置ずれが偏心部25a,25bの油孔25eと内輪41bの油孔41aとを連通させて潤滑油を流通させる上で支障がない許容範囲であれば、偏心部25a,25bの油孔25eに対する内輪41bの油孔41aの位置ずれがあってもよい。この場合、内輪41bを偏心部25a,25bに圧入などにより組み付ける際の位置決めも比較的容易となる。
この回り止め手段61により、偏心部25a,25bの油孔25eと内輪41bの油孔41aとを位置合わせした状態を維持することができるので、従来のように、偏心部25a,25bの油孔25eと内輪41bの油孔41aとを繋ぐ環状溝を偏心部25a,25bの外周面に形成する必要がない。
このように、偏心部25a,25bの外周面に環状溝を形成しないことから、インホイールモータ駆動装置21の設計上、偏心軸受41の径方向寸法を小さくする必要が生じた場合に内輪41bの厚みを小さくしても、厚みが小さい内輪41bを減速機入力軸25の偏心部25a,25bに圧入した構造において、偏心部25a,25bの外周面に対する内輪41bの締め代および変形状態が均一となる。これにより、転動体41cと内輪41bの軌道面との接触状態が均一となって、偏心軸受41の転動疲労寿命が長くなる。
図9に示すように、内輪41bの端部内周面に形成される切り欠き62が、軌道面において転動体41cが接触する範囲に及ばないようにすれば、図10に示すように、インホイールモータ駆動装置21の設計上、偏心軸受41の径方向寸法を小さくする必要が生じた場合に内輪41bの厚みを小さくすることが容易となる。
つまり、切り欠き62が、軌道面における転動体41cの接触範囲K1に及ばないようにするとは、切り欠き62の軸方向寸法K2を、内輪41bの端面から軌道面における転動体41cの接触位置までの軸方向寸法K3よりも小さくすることを意味する。この切り欠き62は、図11に示すように、一方の端部に鍔部が一体的に形成された内輪41bの他方の端部に別体の鍔部材41eを固定することによっても実現可能である。
以上の実施形態では、2つの偏心部25a,25bおよび偏心軸受41間に設けた回り止め手段61を例示したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、図12(A)(B)に示す構造を具備した回り止め手段65であってもよい。
サイクロイド減速機は、曲線板26a,26bの偏心回転によって生じる不釣り合いな慣性偶力を打ち消すためにカウンタウェイト29を具備する(図1および図3参照)。図12(A)(B)に示す回り止め手段65は、減速機入力軸25に取り付けられたカウンタウェイト29を利用している。このカウンタウェイト29は、減速機入力軸25のフラットな面取り部25gで位置決めされた状態で減速機入力軸25に固定されている。
この回り止め手段65は、カウンタウェイト29を貫通する孔29aを減速機入力軸25の面取り部25gと対応する部位に形成すると共に、偏心軸受41の内輪41bの外側端部の内周面に切り欠き66を形成し、カウンタウェイト29の孔29aおよび内輪41bの切り欠き66に連結部材67を挿入配置した構造を具備する。連結部材67は、カウンタウェイト29と隣接して配置された転がり軸受37a,37bによって抜け止めされる。なお、この転がり軸受37a,37b以外の他の周辺部品で連結部材67を抜け止めすることも可能である。
最後に、この実施形態におけるインホイールモータ駆動装置21の全体的な作動原理を説明する。
図1〜図3に示すように、モータ部Aは、例えば、ステータ23aのコイルに交流電流を供給することによって生じる電磁力を受けて、永久磁石又は磁性体によって構成されるロータ23bが回転する。これにより、モータ回転軸24に連結された減速機入力軸25が回転すると、曲線板26a,26bは減速機入力軸25の回転軸心を中心として公転運動する。このとき、外ピン27が、曲線板26a,26bの曲線形状の波形と係合して、曲線板26a,26bを減速機入力軸25の回転とは逆向きに自転回転させる。
貫通孔30aに挿通する内ピン31は、曲線板26a,26bの自転運動に伴って貫通孔30aの内壁面と当接する。これにより、曲線板26a,26bの公転運動が内ピン31に伝わらず、曲線板26a,26bの自転運動のみが減速機出力軸28を介して車輪用軸受部Cに伝達される。このとき、減速機入力軸25の回転が減速機部Bによって減速されて減速機出力軸28に伝達されるので、低トルク、高回転型のモータ部Aを採用した場合でも、後輪14に必要なトルクを伝達することが可能となる。
この減速機部Bの減速比は、外ピン27の数をZA、曲線板26a,26bの波形の数をZBとすると、(ZA−ZB)/ZBで算出される。図2に示す実施形態では、ZA=12、ZB=11であるので、減速比は1/11と非常に大きな減速比を得ることができる。このように、多段構成とすることなく大きな減速比を得ることができる減速機部Bを採用することにより、コンパクトで高減速比のインホイールモータ駆動装置21を得ることができる。また、外ピン27および内ピン31に針状ころ軸受27a,31a(図3参照)を設けたことにより、曲線板26a,26bとの間の摩擦抵抗が低減されるので、減速機部Bの伝達効率が向上する。
この実施形態においては、油路24bをモータ回転軸24に設け、油孔25eを偏心部25a,25bに設け、油孔25fを減速機入力軸25の軸端に設けた場合を例示したが、モータ回転軸24や減速機入力軸25の任意の位置に設けることができる。また、回転ポンプ51としてサイクロイドポンプの例を示したが、減速機出力軸28の回転を利用して駆動するあらゆる回転型ポンプを採用することができる。
減速機部Bの曲線板26a,26bを180°位相をずらして2枚設けた例を示したが、この曲線板の枚数は任意に設定することができ、例えば、曲線板を3枚設ける場合は、120°位相をずらして設けるとよい。運動変換機構は、減速機出力軸28に固定された内ピン31と、曲線板26a,26bに設けられた貫通孔30aとで構成された例を示したが、減速機部Bの回転をハブ輪33aに伝達可能な任意の構成とすることができる。例えば、曲線板26a,26bに固定された内ピンと減速機出力軸28に形成された穴とで構成される運動変換機構であってもよい。
この実施形態における作動の説明は、各部材の回転に着目して行ったが、実際にはトルクを含む動力がモータ部Aから後輪14に伝達される。従って、前述のように減速された動力は高トルクに変換されたものとなっている。また、モータ部Aに電力を供給してモータ部を駆動させ、モータ部Aからの動力を後輪14に伝達させる場合を示したが、これとは逆に、車両が減速したり坂を下ったりするようなときは、後輪14側からの動力を減速機部Bで高回転低トルクの回転に変換してモータ部Aに伝達し、モータ部Aで発電してもよい。さらに、ここで発電した電力は、バッテリーに蓄電しておき、後でモータ部Aを駆動させたり、車両に備えられた他の電動機器などの作動に用いてもよい。
この実施形態においては、モータ部Aにラジアルギャップモータを採用した例を示したが、任意の構成のモータを適用可能である。例えば、ケーシングに固定されるステータと、ステータの内側の軸方向の隙間を開けて対向する位置に配置されるロータとを備えるアキシャルギャップモータであってもよい。さらに、図13および図14に示した電気自動車11は、後輪14を駆動輪とした例を示したが、前輪13を駆動輪としてもよく、4輪駆動車であってもよい。なお、本明細書中で「電気自動車」とは、電力から駆動力を得る全ての自動車を含む概念であり、例えば、ハイブリッドカー等も含むものである。
以上の実施形態では、車輪に直接取り付けられるインホイールモータ駆動装置に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、車体に搭載されてドライブシャフトを介して車輪と結合されるオンボードタイプのモータ駆動装置にも適用可能である。このタイプのモータ駆動装置は、前述のインホイールモータ駆動装置と同一構造のサイクロイド減速機を有する減速機部と、その減速機部のサイクロイド減速機を駆動するモータ部を左右に2個ずつ備え、減速機部の減速機出力軸にドライブシャフトが連結されている。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
21 インホイールモータ駆動装置
24 モータ回転軸
25 減速機入力軸
25a,25b 偏心部
25c 油路
25e 油孔
41 偏心軸受
41a 油孔
41b 内輪
51 回転ポンプ
61,65 回り止め手段
62,66 切り欠き
63,67 連結部材
A モータ部
B 減速機部
C 車輪用軸受部

Claims (3)

  1. モータ部と、サイクロイド減速機からなる減速機部と、回転ポンプからモータ部のモータ回転軸を経由して前記サイクロイド減速機の減速機入力軸へ潤滑油を供給する軸心給油構造をなす潤滑機構とを備えた車両用モータ駆動装置であって、
    前記潤滑機構は、減速機入力軸の内部に軸方向に沿って形成された油路と、前記減速機入力軸の偏心部に配置されて前記油路と連通し、前記偏心部に外装された偏心軸受に給油する油孔とを備え、前記偏心軸受の内輪の周方向で軸受荷重を分担しない無荷重範囲に配置されて前記偏心部の油孔と連通する1つの油孔を形成し、前記偏心部の油孔に対する前記内輪の油孔の周方向ずれを防止する回り止め手段を設けたことを特徴とする車両用モータ駆動装置。
  2. 前記回り止め手段は、偏心軸受の内輪端部の内周面に形成された切り欠きと、減速機入力軸の外周面で周方向位置が規制された連結部材とを備え、前記内輪の切り欠きに前記連結部材を挿入配置した構造を具備する請求項1に記載の車両用モータ駆動装置。
  3. 前記回り止め手段は、減速機入力軸の偏心部および偏心軸受の内輪の周方向180°対称位置の2箇所に配設されている請求項1又は2に記載の車両用モータ駆動装置。
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