JP2016176842A - 薄切片試料作製装置 - Google Patents

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健吾 渡辺
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Abstract

【課題】薄切片試料作製装置においてスライドガラスに対して、熱転写方式により、サーマルヘッドを移動させて、試料に関する情報をムラなく明瞭に印刷する。【解決手段】試料11が包埋剤12中に包埋された試料ブロック10を切削して薄切片16を作製する切削手段31と、表面の一部に印刷領域18が形成されたスライドガラス17を該印刷領域以外の部分で固定する固定手段と、前記固定手段により固定され、かつ静止したスライドガラスに対して、サーマルヘッド71を移動させて前記印刷領域に試料に関する情報を印刷する印刷手段と、前記情報が印刷されたスライドガラスに前記薄切片を貼付する貼付手段とを有する薄切片試料作製装置。【選択図】図1

Description

本発明は、生体試料等の顕微鏡観察などに利用される薄切片試料を作製する装置に関する。
従来、理化学試料分析や生体試料等の顕微鏡観察等に利用される薄切片試料を作製するための装置としてミクロトームが広く知られている。ミクロトームは、動物の生体試料等の試料(被検体)をパラフィン等の包埋剤の中に埋め込んだ(包埋した)試料ブロックをカッターによって薄切りすることにより、薄切片試料を作製する装置である。例えば、特許文献1〜5には、試料ブロックの薄切り、スライドガラスへの貼付、伸展、乾燥という一連の動作を行う薄切片試料作製装置が記載されている。
ところで、このような薄切片試料には、後の処理や解析の際に試料を間違えることがないよう、試料に関する情報が付されることがある。情報の種類としては、患者名、臓器の種類等の組織情報、何枚作製した内の何枚目か等の作製記録や、試料の染色条件等の後工程でのプロトコルに関するものが挙げられる。これらの情報は、試料の解析結果をまとめるときや、後工程で処理を行うときなどに利用される。具体的には、スライドガラスの長さ方向の一方の端部に、樹脂塗料などをコーティングして不透明な領域を形成しておき、この領域に各種情報が印刷される。情報は、文字、バーコード(1次元コード)、2次元コードなどの形で印刷される。
スライドガラスへの印刷方法としては、細いピンをインクリボンに叩き付けて印刷するドットインパクト方式や、インクリボンに塗布されたインクをサーマルヘッドによって加熱溶融して転写する熱転写方式が知られている。特許文献6および7には、薄切片標本(薄切片試料)作製装置におけるスライドガラスへの印刷に、熱転写プリンタを使用できることが記載されている。
特開2012−229993号公報 特開2012−229994号公報 特開2012−229995号公報 特開2012−229996号公報 特開2012−229997号公報 特開2007−212386号公報 特開2007−212388号公報
しかしながら、ドットインパクト方式による印刷では個々のドット形状が丸いため、QRコード(登録商標)のように四角形のセルで構成される2次元コードを印刷したときに鋭敏な角が得られず、後工程での読み取りに失敗することがあった。
一方、熱転写方式について、特許文献6および7にはスライドガラスへの印刷に利用できるとの記載があるものの、その具体的な構成については開示されていない。本発明者らが、市販されている多種のスライドガラスに対して熱転写方式による印刷を行ったところ、印刷に濃い部分と淡い部分からなる印刷ムラが生じることがあった。また、サーマルヘッドを静止させてスライドガラスを移動させながら印刷を行うと、サーマルヘッドからの押圧を受けた状態でスライドガラスを移動させるので、スライドガラスとそれを支える台が擦れることにより、ガラス粉が発生して装置に悪影響を与える虞がある。
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、薄切片試料作製装置において多種のスライドガラスに対して、熱転写方式により、サーマルヘッドを移動させて、試料に関する情報をムラなく明瞭に印刷することが可能な薄切片試料作製装置を提供することを目的とする。
上記課題に対して、本発明の薄切片試料作製装置は、スライドガラスを印刷領域以外の部分で固定して印刷を行う。
本発明の薄切片試料作製装置は、試料が包埋剤中に包埋された試料ブロックを切削して薄切片を作製する切削手段と、表面の一部に印刷領域が形成されたスライドガラスを該印刷領域以外の部分で固定する固定手段と、前記固定手段により固定され、かつ静止したスライドガラスに対して、サーマルヘッドを移動させて前記印刷領域に試料に関する情報を印刷する印刷手段と、前記情報が印刷されたスライドガラスに前記薄切片を貼付する貼付手段とを有する。
好ましくは、前記固定手段は、前記スライドガラスの下面を支持する吸着台と、該吸着台の上面に設けられた吸引孔を有する。
また、好ましくは、前記サーマルヘッドは、印刷時の進行方向に略垂直な面内で搖動可能であり、印刷時に弾性部材により前記スライドガラスに押圧可能である。
また、好ましくは、前記薄切片試料作製装置は、前記スライドガラスに接着液を供給する接着液供給手段と、前記スライドガラスを前記接着液供給手段から、前記印刷手段を経て、前記貼付手段へ搬送するスライドガラス搬送手段をさらに有する。そして、前記貼付手段は、前記薄切片が一時的に保持されたキャリアテープから該薄切片を前記スライドガラス上に移し替える。
さらに好ましくは、前記薄切片試料作製装置は、前記サーマルヘッドの側方にインクリボンの下面を支持する中間ガイドをさらに有する。これにより、該インクリボンが前記スライドガラス上の前記接着液と接触することを防止する。
本発明の薄切片試料作製装置によれば、スライドガラスの印刷領域に、試料に関する情報をムラなく明瞭に印刷することができる。
本発明の一実施形態にかかる薄切片試料作製装置の全体構成を示す図である。 スライドガラスの処理部分の構成を示す図である。 スライドガラス収納部および接着液塗布部を示す図である。 印刷部を示す図である。 吸着台を示す図であり、図5Aは平面図、図5Bは側面図である。 サーマルヘッドの支持構造を示す図であり、図6Aは側面図、図6Bは図6AのB矢視図である。 スライドガラス搬送手段を示す図であり、図7Aは平面図、図7Bは側面図である。 スライドガラス搬送手段の他の例を示す平面図である。 吸着台の比較例を示す図である。 ドットインパクト方式(左、比較例)および熱転写方式(右、実施例)による印刷見本である。
本発明の一実施形態にかかる薄切片試料作製装置について、まず全体の構成と動作を図1に基づいて説明する。
図1において、薄切片試料作製装置100は、試料ブロック10から切削手段であるカッター31により薄切片16を切り出し、これをスライドガラス17に貼付して、自動的かつ連続的に薄切片付スライドガラス20を作製する装置である。なお、本明細書において、薄切片付スライドガラスを単に「薄切片試料」ということがある。
薄切片試料作製装置100は、試料ブロック収納部21、高さ検出部22、撮像部23、切削部30、スライドガラス収納部51、接着液塗布部60、印刷部70、貼付部90、伸展部95を具備する。
試料ブロック10は、試料11をパラフィン等の包埋剤12の中に包埋したものである。被検体である試料11の例としては、人間や動物の組織などの生体試料が挙げられる。試料ブロック10は、表面のサイズが24mm×24mm、24mm×30mm、24mm×37mmであるものが一般的である。また、試料ブロック10の高さは5mm程度であることが一般的である。
試料ブロック収納部21から取り出された試料ブロック10は、高さ検出部22へと搬送される。試料ブロックは、図示されていない試料ブロック台に乗せて搬送される。試料ブロック台は傾きおよび高さを調整可能に構成されている。高さ検出部では、試料ブロック10の傾きと高さが検出される。高さ検出部としては、例えば、特許文献4に記載された、同一直線上にない少なくとも3つの接触式センサーで試料ブロック10の表面を検知するものを用いることができる。最初に試料ブロック10の水平面に対する傾斜(傾き)が調整された後は、切削量に応じて試料ブロック台の高さを適宜上げていくことができる。
試料ブロック10は次いで、撮像部23へと搬送される。撮像部では、試料ブロック表面が撮像され、試料ブロック表面における試料11の露出が、薄切片を切り出すのに十分であるか否かが判定される。試料の露出が不十分な場合は、試料ブロックは切削部30で表面を粗削りされる。試料が十分に露出するまで、撮像および粗削りが繰り返される。
切削部30では、カッター31により、試料ブロック10の表層部分が切削される。カッター31は、刃先が図1において紙面に垂直な方向に延在するように保持されている。本実施形態ではカッター31が固定されており、試料ブロック10が図1右方向に移動することによって、試料ブロック10の表層部分が薄切りされる。撮像部23で試料ブロック表面における試料の露出が十分であると判断された場合、切削部で、薄切片16を切り出すための捨て削りおよび本削りが行われる。切削部で切り出される薄切片は、厚さが3〜10μm程度と非常に薄い。そのため、通常は本削りと同じ厚さ・条件で複数回の捨て削りを行ってから、本削りが行われる。捨て削りを行うことによって、薄切片の厚さが安定してくるからである。なお、捨て削りについては省略される場合もある。
切削部30には、切削により得られた薄切片16を一時的に保持するキャリアテープ33が供給される。キャリアテープ33は、供給リール32から繰り出され、ガイドロール34,35に案内されて試料ブロック10の上方に供給される。薄切片16を保持したキャリアテープ33は、ガイドロール36〜39に案内されて、貼付部90を経て、巻取リール40に巻き取られる。
一方、スライドガラス17が、スライドガラス収納部51から接着液塗布部60へ供給される。接着液塗布部では、水などの接着液19がタンク61からポンプ62によって送られ、ノズル63から供給されて、スライドガラス17上に塗布される。スライドガラスは次いで、印刷部70でスライドガラス表面の印刷領域18に試料に関する情報が印刷され、貼付部90に搬送される。接着液塗布部および印刷部の詳細は後述する。
接着液19が塗布され、情報が印刷されたスライドガラス17は貼付部90に移動する。キャリアテープ33に保持された薄切片16は、ガイドロール38,39の間に配置された貼付部でスライドガラス17に貼り付けられる。貼付部は、一対のガイドロール91,91と一対のガイドロール92,92の間でキャリアテープ33を下方に撓ませ、当該キャリアテープに保持された薄切片を、接着液19が塗布されたスライドガラス17に接触させる。これにより、薄切片がキャリアテープからスライドガラス上に転置され、すなわち移し替えられる。
薄切片付きスライドガラス20は、伸展部95へ搬送される。伸展部は、図示しない加温板を備え、薄切片16の皺を伸展するとともに、スライドガラス17上の水分を蒸発させて薄切片をスライドガラスに密着固定する。
次に、薄切片の貼付に至るまでのスライドガラスの処理部分の構成を、図2〜8に基づいて説明する。
図2において、スライドガラス17は、スライドガラス収納部51から接着液塗布部60へ供給される。スライドガラスは次いで、スライドガラス搬送手段によって、接着液塗布部60から、印刷部70を経て、貼付部90へと搬送される。
スライドガラス17としては、市販のものを含め、種々公知のものを用いることができる。スライドガラスは、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラスなどの無機ガラスからなる。スライドガラスの大きさは、通常、短辺が約25mm、長辺が約75mm、厚さが0.8〜1.2mm程度である。印刷領域18は、スライドガラスの長さ方向の片方の端部に、耐溶剤性の合成樹脂インクをコーティングして、不透明な部分が設けられたものである。印刷領域の大きさは、スライドガラスの長辺方向に15〜25mm程度である。ほとんどの場合、鉛筆等の筆記具で記入ができるように、印刷領域の表面には微細な凹凸が形成されている。この凹凸は、ガラス表面をすりガラス状に加工した上に樹脂をコーティングしたり、樹脂インクに凹凸を付与するための添加剤を加えるなどの方法で形成されている。薄切片は、この印刷領域以外の部分に貼付される。
図3において、スライドガラス収納部51は、複数のスライドガラス17を収納している。スライドガラスは、1枚ずつ、接着液塗布部60の支持台64上へ供給される。スライドガラスの供給方法は特に限定されないが、板状等の押出具を用いて、スライドガラスを水平に押し出すのが好ましい。構造が単純であるからと、後述するように接着液をスライドガラス上の複数位置に供給することが容易に実現できるからである。
接着液塗布部60は、タンク61、ポンプ62およびノズル63を有する。タンクは接着液19を貯留する。ポンプは、接着液をタンクからノズルへと送液する。接着液供給手段であるノズルは、接着液をスライドガラス17上に供給する。
接着液19としては、通常水が用いられる。また、試料の種類等によっては0.1%酢酸水溶液などの弱酸性液が用いられることがある。ポンプとしては、容積型のポンプ、特にダイヤフラムポンプを好適に用いることができる。スライドガラス17上に供給される接着液量は、典型的には数十μLと少量であり、これらのポンプは少量の接着液の適量を正確に供給できるからである。
図4において、印刷部70は、吸着台55と熱転写方式による印刷のためのサーマルヘッド71を有する。インクリボン80は、供給リール81からガイドロール82、サーマルヘッド71の下面、中間ガイド83、ガイドロール84に案内されて、巻取リール85に巻き取られる。
図5を参照して、吸着台55は、上面が平坦に形成されており、スライドガラス17下面を支持する。なお、以下において、吸着台の長さおよび幅とはそれぞれ、吸着台上に固定されたときのスライドガラスの長辺方向および短辺方向の大きさのことをいう。
吸着台55が小さすぎると、スライドガラス17のはみ出しが大きくなり、印刷時のムラやガラス破損等の原因となるので好ましくない。吸着台の長さは、好ましくはスライドガラスの長さの70%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。吸着台の幅は、好ましくはスライドガラスの幅の80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。スライドガラスの大きさは通常長さ75mm、幅25mm程度であることを考慮すると、吸着台の長さは、好ましくは55mm以上であり、さらに好ましくは60mm以上である。また、吸着台の幅は、好ましくは20mm以上であり、さらに好ましくは22mm以上である。
一方、吸着台55が大きすぎると、装置が大型化するので好ましくない。吸着台の長さは、好ましくは95mm以下であり、さらに好ましくは85mm以下である。吸着台の幅は、好ましくは45mm以下であり、さらに好ましくは35mm以下である。
また、後述するように、スライドガラスの移動手段がスライドガラスを両側から挟み込む構造を有する場合は、スライドガラスの当該挟み込まれる方向の両端が吸着台からわずかにはみ出していることが好ましい。具体的には、スライドガラスの移動手段がスライドガラスを長さ方向から挟み込む場合は、吸着台の長さは73mm以下であることが好ましい。スライドガラスの移動手段がスライドガラスを幅方向から挟み込む場合は、吸着台の幅は23mm以下であることが好ましい。
吸着台55の上面には、スライドガラスの印刷領域18ではない部分に、複数の真空吸引孔56が設けられている。吸引孔から真空吸引することにより、スライドガラスを吸着台上に吸着・固定することができる。図5に示した吸着台では、長さ方向の中央付近に幅方向に並んだ2つの吸引孔が、スライドガラスの印刷領域とは反対側(図5の右側)にス幅方向の中央付近に1つの吸引孔が設けられている。吸引孔の直径は特に限定されないが、2〜5mmであることが好ましい。
吸引孔56は、スライドガラスが吸着台上に戴置されたときに、印刷領域18以外の位置に、すなわち印刷領域の真下を避けて設けられる。最も印刷領域に近い吸引孔の端Pが、吸着台55を長さ方向に二分する中心面Cより印刷領域側にある場合(図5の場合)は、当該端点Pと中心面Cとの距離aは、好ましくは20mm以下であり、さらに好ましくは10mm以下である。これにより、印刷領域の大きさが異なる種々のスライドガラスを使用可能となる。一方、端点Pが中心面Cに対して印刷領域と反対側にある場合は、当該端点Pと中心面Cとの距離は、好ましくは10mm以下である。吸引孔が印刷領域と反対側に偏在しすぎると、スライドガラスを安定して固定することが難しくなるからである。
吸引孔56の数および配置は特に限定されないが、スライドガラス全体を確実に固定するためには、ある程度広がりを持って吸引孔が配置されることが好ましい。吸引孔は、2つ以上設けることが好ましい。さらに、同一直線上にない3つ以上の吸引孔を設けることが、より好ましい。また、吸引孔はスライドガラスの長さ方向にある程度の広がりをもって存在することが好ましい。図5において、吸引孔が散在する範囲の、スライドガラス長さ方向における広がりbが15mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがさらに好ましい。
なお、スライドガラスを固定するための手段は、吸引孔を用いるのが、単純な構造で確実に固定可能である点で好ましいが、これに限定されるものではない。例えば、印刷領域以外の部分で、スライドガラスを幅方向から挟み込んでもよい。この場合は、吸着台の長さ方向の中心Cとスライドガラスが挟み込まれた部分のうち最も印刷領域寄りの点との距離を、好ましくは20mm以下とし、さらに好ましくは10mm以下とすればよい。また、スライドガラスが挟み込まれた部分のうち、最も印刷領域寄りの点と、印刷領域から最も遠い点との距離を好ましくは15mm以上とし、さらに好ましくは20mm以上とすればよい。
図4に戻り、サーマルヘッド71としては、公知のものを用いることができる。サーマルヘッドは制御回路等とともにサーマルヘッドモジュール72を構成する。サーマルヘッドは、モジュール72の下部に組み込まれている。サーマルヘッドは、幅方向(図4の紙面に垂直な方向)に発熱素子が断続してライン状に配列されている。これにより、サーマルヘッドをインクリボン80に押し当てて、インクを加熱溶融することができる。
中間ガイド83は、サーマルヘッド71の側方に配置され、インクリボン80を下方から支持する。中間ガイドはインクリボンを案内するガイドロールの一つであるが、インクリボンのインク面に接する点で、他のガイドロール82、84と異なる。本実施形態では、スライドガラス表面に接着液を供給してから印刷を行うが、中間ガイド83によって、インクリボンがスライドガラス17上の接着液19に触れることがない。中間ガイドは、両端をベアリング(図示せず)で受けて取り付けられており、インクリボンの移送に伴って回転可能である。これにより中間ガイドの表面全体が均等にインクリボンと接触し、特定の部位にインク汚れが堆積することがない。また、中間ガイドの表面はインク汚れが付きにくいように、撥油性の材料でコーティングされていることが好ましい。撥油性の材料としては、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂などを好適に用いることができる。
図6Aはサーマルヘッドを横方向(図4と同じ方向)から見た図であり、図6Bは図6AのB矢視図である。サーマルヘッド71はサーマルヘッドモジュール72の下部に組み込まれている。モジュール72は固定部材73に固定されている。固定部材73は側面に、図6Aの右方向に突き出たピン軸74を有し、ピン軸を介して支持部材75から吊り下げられて固定されている。ピン軸は支持部材の穴に嵌合しており、これにより、固定部材およびモジュール72が一体となって、ピン軸を中心として、印刷時のサーマルヘッドの進行方向(図6AのX方向)に垂直な面内で搖動可能である。この搖動により、スライドガラスの傾き等があっても、サーマルヘッドが印刷領域表面に均一に当たることができる。その結果、印刷の均一性が向上する。
サーマルヘッドモジュール72、固定部材73および支持部材75は、一体となって上下に可動である。印刷時には、ばね76により、支持部材および固定部材を介して、サーマルヘッド71がスライドガラスに押し付けられる。このばねにより、サーマルヘッドがスライドガラスに対して一定の力で押圧されるので、印刷の均一性が向上する。また、このばねにより、印刷時にスライドガラスが破損することが防止される。
サーマルヘッドモジュール72、固定部材73、支持部材75およびばね76は、一体となって、スライドガラスの長さ方向(図6Aの左右方向)に可動である。
図7において、スライドガラス移動手段は、スライドガラス17を長さ方向から挟持可能な4つの挟持部材52とガイドレール53を有する。スライドガラス移動手段は、接着液塗布部60の支持台64上のスライドガラスを挟持部材によって挟持し、ガイドレールの上を滑らせて、印刷部70の吸着台55へと移動させる。スライドガラス移動手段はさらに、印刷終了後に、スライドガラスを印刷部の吸着台から貼付部90へと移動させる。
挟持部材52の形状や数は特に限定されない。挟持部材の材質は、特に限定されないが、少なくともスライドガラスに接触する部分は、プラスチックやゴム等の、ガラスを傷つけない材料で構成されていることが好ましい。
ガイドレール53は、支持台64および吸着台55の長さ方向の両端を通って、塗布部から印刷部を経由して貼付まで連続して配置されている。なお、ガイドレールは、図8に示すように、各支持台、吸着台の間だけに設けてもよい。
スライドガラス移動手段は図7や図8の構造には限られず、例えば、1つの吸着台がレール上などを走行して、スライドガラスを載せたまま、塗布部、印刷部および貼付部の間を移動するようにしてもよい。
次に、薄切片の貼付に至るまでのスライドガラスの処理動作を、図3、図4および図7に基づいて説明する。
図3において、スライドガラス17は、スライドガラス収納部51から1枚ずつ、押出具等によって、接着液塗布部60の支持台64上へ押し出される。このとき、スライドガラスを移動させながら、ノズル63から接着液19を断続的に供給することによって、スライドガラス上の複数の点に接着液を分けて供給することができる。これにより、接着液の所要量を1点に全量供給する場合と比べて、接着液をより均一に塗布することができる。
図7において、支持台64上のスライドガラス17は、その長さ方向から挟持部材52によって挟持され、ガイドレール53上を滑って、印刷部70へ移動する。
図4において、スライドガラス17は印刷部に到達すると、吸引孔により吸着されて、吸着台55上面に固定される。サーマルヘッド71が下がって、その下面に架け渡されたインクリボン80をスライドガラスの印刷領域18に押し当て、インクを加熱溶融して印刷領域に転写する。このとき、スライドガラスは動かず、サーマルヘッドが図4の右方向に移動することによって、印刷が行われる。印刷が完了すると、サーマルヘッド71が上昇し、インクリボン80が適量送られて巻取ロール85に巻き取られる。
図7において、スライドガラス17は次いで、その長さ方向から挟持部材52によって挟持され、ガイドレール53上を滑って、貼付部90へ移動する。
次に、本実施形態の効果について述べる。
前述のとおり、熱転写方式でスライドガラスに印刷すると、印刷ムラが生じやすい。これは、ドットインパクト方式では細いピンをインクリボンに叩きつけるのに対して、熱転写方式ではサーマルヘッド全体でリボンを押さえるので、印刷領域の表面(印刷面)に微小な撓み、捩れ等の歪みがあると、サーマルヘッドとリボンの密着が均一でなくなるためと考えられる。また、印刷領域は、基材であるガラス自体が硬いため、コーティングの膜質が硬い場合や膜厚が小さい場合には、印刷面の硬度も高くなる。そのため、スライドガラスの微小な歪みによって、印刷ムラが生じやすいと考えられる。
比較例として、本実施形態の薄切片試料作製装置を用い、ただし、吸着台のみを図9に示すものに替えて印刷を行った。図9において、吸引孔59は吸着台58上面のより広い範囲に散在し、吸引孔59の一つが印刷領域18と重なっている。この吸着台を用いた場合、何種類かのスライドガラスで印刷ムラが発生した。この原因は必ずしも明らかでないが、吸着台上面の平坦度が影響している可能性がある。つまり、加工精度の不足や装置の組み付けに伴う歪みにより吸着台上面の平坦度が悪い場合、スライドガラスを印刷領域で固定すると、印刷領域にも歪みが生じる可能性がある。あるいは、印刷領域直下にある吸引孔による真空吸引によって、スライドガラスが歪んでいる可能性もある。
これに対して、本実施形態の薄切片試料作製装置では、図5に示したように、印刷時にスライドガラスが印刷領域以外の部分で固定される。これにより、スライドガラスの印刷領域部分が真空吸引による束縛を受けず、いわゆるフリーな状態になって、吸着台上面の平坦度や真空吸引の影響を受けない。ただし、スライドガラスの印刷領域部分がフリーであるといっても、その下面は吸着台で支持されており、印刷時にガラスが破損することはない。
また、本実施形態では、図2に示したように、スライドガラスへの接着液の供給、印刷、薄切片貼付の順番で処理が行われる。このように薄切片貼付の直前で印刷することにより、貼付される薄切片と印刷される情報とを確実に対応させることができる。薄切片は極めて薄いため、切削部においてその作製に失敗することがある。薄切片貼付の直前で印刷することにより、薄切片の作製に成功したことを確認してから、作製した薄切片に対応する情報を印刷部に送信して、印刷を行うことも可能となる。
また、接着液がスライドガラス上に供給されてから面状に均一に広がるには、ある程度の時間を要する。上記順番で処理を行うことにより、接着液が広がる時間を待つ間に印刷を行うことができるので、薄切片試料作製のサイクルタイムを短縮することができる。
図10に、ドットインパクト方式(図10左)および熱転写方式(図10右)による印刷例を示す。熱転写方式の印刷例は、本実施形態の薄切片試料作製装置を用いて印刷されたもので、実施例である。実施例では、2次元コードの四角形のセルの角が鋭敏に再現されている。また、実施例では、印刷ムラがなく、明瞭な印刷が得られた。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、スライドガラス上に接着液を塗布して、薄切片をキャリアテープからスライドガラス上に移し替えた。しかし、薄切片の貼付手段は、薄切片を水面に浮かべておき、スライドガラスで掬って、スライドガラス上に戴置するものであってもよい。そのような貼付手段は、例えば特許文献6および7に記載されており公知である。なお、その場合は、スライドガラス上に接着液を塗布する工程は不要である。
10 試料ブロック
11 試料(被検体)
12 包埋剤
16 薄切片
17 スライドガラス
18 スライドガラスの印刷領域
19 接着液
20 薄切片付スライドガラス
21 試料ブロック収納部
22 高さ検出部
23 撮像部
30 切削部
31 カッター
32 供給リール
33 キャリアテープ
34〜39,91,92 ガイドロール
40 巻取リール
51 スライドガラス収納部
52 挟持部材
53 ガイドレール
55 吸着台
56 吸引孔
58 吸着台(比較例)
59 吸引孔(比較例)
60 接着液塗布部
61 タンク
62 ポンプ
63 ノズル
64 支持台
70 印刷部
71 サーマルヘッド
72 サーマルヘッドモジュール
73 固定部材
74 ピン軸
75 支持部材
76 弾性バネ
80 インクリボン
81 供給リール
82、84 ガイドロール
83 中間ガイド
85 巻取リール
90 貼付部
95 伸展部
100 薄切片試料作製装置

Claims (5)

  1. 試料が包埋剤中に包埋された試料ブロックを切削して薄切片を作製する切削手段と、
    表面の一部に印刷領域が形成されたスライドガラスを該印刷領域以外の部分で固定する固定手段と、
    前記固定手段により固定され、かつ静止したスライドガラスに対して、サーマルヘッドを移動させて前記印刷領域に試料に関する情報を印刷する印刷手段と、
    前記情報が印刷されたスライドガラスに前記薄切片を貼付する貼付手段と、
    を有する薄切片試料作製装置。
  2. 前記固定手段は、前記スライドガラスの下面を支持する吸着台と、該吸着台の上面に設けられた吸引孔を有する、
    請求項1に記載の薄切片試料作製装置。
  3. 前記サーマルヘッドは、印刷時の進行方向に略垂直な面内で搖動可能であり、印刷時に弾性部材により前記スライドガラスに押圧可能である、
    請求項1または2に記載の薄切片試料作製装置。
  4. 前記薄切片試料作製装置は、
    前記スライドガラスに接着液を供給する接着液供給手段と、
    前記スライドガラスを前記接着液供給手段から、前記印刷手段を経て、前記貼付手段へ搬送するスライドガラス搬送手段をさらに有し、
    前記貼付手段は、前記薄切片が一時的に保持されたキャリアテープから該薄切片を前記スライドガラス上に移し替える、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄切片試料作製装置。
  5. 前記サーマルヘッドの側方にインクリボンの下面を支持する中間ガイドをさらに有することにより、該インクリボンが前記スライドガラス上の前記接着液と接触することを防止する、
    請求項4に記載の薄切片試料作製装置。
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