JP2016175950A - 熱伝導性感圧接着剤組成物、熱伝導性感圧接着性シート状成形体、これらの製造方法、及び、電子機器 - Google Patents

熱伝導性感圧接着剤組成物、熱伝導性感圧接着性シート状成形体、これらの製造方法、及び、電子機器 Download PDF

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亮子 西岡
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Abstract

【課題】燐酸エステル成分のブリード量を低減することが可能な熱伝導性感圧接着剤組成物、及び、熱伝導性感圧接着性シート状成形体の提供。【解決手段】(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)、及び、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)0.2〜3質量%、を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、イソプロピル化率90%以下のリン酸エステル(D)と、熱伝導性フィラー(E)を150〜600質量部、を含む混合組成物中において、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応が行われてなる、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)。【選択図】なし

Description

本発明は、熱伝導性感圧接着剤組成物、熱伝導性感圧接着性シート状成形体、これらの製造方法、及び、該熱伝導性感圧接着剤組成物又は該熱伝導性感圧接着性シート状成形体を備えた電子機器に関する。
近年、プラズマディスプレイパネル(PDP)、集積回路(IC)チップ等のような電子部品は、その高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、温度上昇による機能障害対策を講じる必要が生じている。一般的には、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を電子部品等に備えられる発熱体に取り付けることによって放熱させる方法が採られている。発熱体から放熱体への熱伝導を効率よく行うためには、熱伝導性が高いシート状の部材(熱伝導シート)が使用されている。一般的に、発熱体と放熱体とを固定する用途においては、熱伝導性に加えて感圧接着性も備えた組成物(以下、「熱伝導性感圧接着剤組成物」という。)やシート状の部材(以下、「熱伝導性感圧接着性シート状成形体」という。)が必要とされる。
熱伝導性感圧接着剤組成物又は熱伝導性感圧接着性シート状成形体には、柔軟性及び難燃性を向上させることを目的として、添加剤としてリン酸エステルが用いられることがある。例えば、特許文献1には、アクリル系エラストマーからなるバインダー樹脂に高熱伝導性化合物と金属水酸化物系難燃剤とリン酸エステル系可塑剤と架橋剤を配合してなる組成物を用いて熱成形するとともに上記バインダー樹脂を架橋することにより得られる難燃性放熱シートが開示されている。
特開2006−176640号公報
しかしながら、上記従来技術のようにリン酸エステルを含有する放熱シートにおいては、発熱体と放熱体との間に挟まれ、温度や圧力を加えられた状態で時間が経過することにより、主にリン酸エステル成分が表面に染み出てきてしまう(ブリードしてしまう)という問題があった。
そこで本発明は、ブリード量を低減することが可能な熱伝導性感圧接着剤組成物、熱伝導性感圧接着性シート状成形体、これらの製造方法、及び、該熱伝導性感圧接着剤組成物又は該熱伝導性感圧接着性シート状成形体を備えた電子機器を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、リン酸エステルのイソプロピル化率を所定の上限値以下とすることにより、熱伝導性感圧接着剤組成物又は熱伝導性感圧接着性シート状成形体からのブリード量を低減させることが可能であることを見出した。
すなわち、本発明の第1の態様は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)、及び、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)0.2質量%以上3質量%以下、を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、分散剤(C)を1.5質量部以上10質量部以下と、イソプロピル化率90%以下のリン酸エステル(D)と、熱伝導性フィラー(E)を150質量部以上600質量部以下と、を含む混合組成物中において、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応が行われてなる、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)である。
本明細書中において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル、及び/又は、メタクリル」を意味する。また、「(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応」とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)由来の構造単位をそれぞれ含む重合体を得る重合反応を意味する。
また、本明細書中において「熱伝導性フィラー」とは、添加することによって熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の熱伝導性を向上させることができ、自身の熱伝導率が0.3W/m・K以上であるフィラーを意味する。
本発明の第2の態様は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)、及び、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)0.2質量%以上3質量%以下、を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、分散剤(C)を1.5質量部以上10質量部以下と、イソプロピル化率90%以下のリン酸エステル(D)と、熱伝導性フィラー(E)を150質量部以上600質量部以下と、を含む混合組成物をシート状に成形した後、又は該混合組成物をシート状に成形しながら、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応が行われてなる熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)である。
本発明の第3の態様は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)、及び、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)0.2質量%以上3質量%以下、を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、分散剤(C)を1.5質量部以上10質量部以下と、イソプロピル化率90%以下のリン酸エステル(D)と、熱伝導性フィラー(E)を150質量部以上600質量部以下と、を含む混合組成物を作製する工程、並びに、混合組成物中において、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応を行う工程、を含む、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の製造方法である。
本発明の第4の態様は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)、及び、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)0.2質量%以上3質量%以下、を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、分散剤(C)を1.5質量部以上10質量部以下と、イソプロピル化率90%以下のリン酸エステル(D)と、熱伝導性フィラー(E)を150質量部以上600質量部以下と、を含む混合組成物を作製する工程、並びに、混合組成物をシート状に成形した後、又は、混合組成物をシート状に成形しながら、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応を行う工程、を含む、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法である。
本発明の第1〜第4の態様において、混合組成物が、さらに分散剤(C)を1.5質量部以上10質量部以下と、を含むことが好ましい。
本発明の第1〜第4の態様において、混合組成物が、さらにタッキファイヤー(T)を3質量部以上20質量部以下と、を含むことが好ましい。
本発明の第5の態様は、上記本発明の第1の態様に係る熱伝導性感圧接着剤組成物(F)、又は、上記本発明の第2の態様に係る熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を備えた電子機器である。
本発明によれば、ブリード量を低減することが可能な熱伝導性感圧接着剤組成物、熱伝導性感圧接着性シート状成形体、これらの製造方法、及び、該熱伝導性感圧接着剤組成物又は該熱伝導性感圧接着性シート状成形体を備えた電子機器を提供することができる。
熱伝導性感圧接着性シート状成形体の使用例を概略的に示した図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されない。
1.熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)、及び、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)0.2質量%以上3質量%以下、を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、イソプロピル化率90%以下のリン酸エステル(D)と、熱伝導性フィラー(E)を150質量部以上600質量部以下と、を含む混合組成物中において、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応が行われてなるものである。
また、本発明の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は、上記混合組成物をシート状に成形した後、又は上記混合組成物をシート状に成形しながら、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応が行われてなるものである。
このような熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を構成する物質について以下に説明する。
<(メタ)アクリル樹脂組成物(A)>
本発明に用いる(メタ)アクリル樹脂組成物(A)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)、及び、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)(以下、単に「多官能性単量体(α2)」ということがある。)を含んでいる。なお、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を得る際には、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応が行われる。当該重合反応を行うことによって(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)由来の構造単位を含む重合体は(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の成分と混合及び/又は一部結合する。
本発明において、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の使用割合は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量%として、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)が10質量%以上60質量%以下、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)が40質量%以上90質量%以下であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)が20質量%以上50質量%以下、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)が50質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を上記範囲とすることによって、低硬度の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を作製し易くなる。
((メタ)アクリル酸エステル重合体(A1))
本発明に用いることができる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は特に限定されないが、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位(a1)を含有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位(a1)を与える(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は特に限定されないが、例えば、アクリル酸エチル(単独重合体のガラス転移温度は、−24℃)、アクリル酸n−プロピル(同−37℃)、アクリル酸n−ブチル(同−54℃)、アクリル酸sec−ブチル(同−22℃)、アクリル酸n−ヘプチル(同−60℃)、アクリル酸n−ヘキシル(同−61℃)、アクリル酸n−オクチル(同−65℃)、アクリル酸2−エチルヘキシル(同−50℃)、メタクリル酸n−オクチル(同−25℃)、メタクリル酸n−デシル(同−49℃)などの、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸2−メトキシエチル(同−50℃)、アクリル酸3−メトキシプロピル(同−75℃)、アクリル酸3−メトキシブチル(同−56℃)、アクリル酸エトキシメチル(同−50℃などの、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;などを挙げることができる。中でも、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましく、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アクリル酸2−エチルヘキシルがさらに好ましい。
これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよいが、一種を単独で使用することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は、それから導かれる単量体単位(a1)が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、好ましくは80質量%以上100質量%以下、より好ましくは85質量%以上100質量%以下となるような量で重合に供する。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)の使用量が上記範囲内であると、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になるとともに、柔軟性に優れた熱伝導性感圧接着剤組成物(F)や熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を得ることができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、有機酸基を有する単量体単位(a2)を含有していてもよい。有機酸基を有する単量体単位(a2)を与える単量体(a2m)は特に限定されないが、その代表的なものとして、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基などの有機酸基を有する単量体を挙げることができる。また、これらのほか、スルフェン酸基、スルフィン酸基、燐酸基などを含有する単量体も使用することができる。
カルボキシル基を有する単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸や、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の他、イタコン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノプロピルなどのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステルなどを挙げることができる。また、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの、加水分解などによりカルボキシル基に誘導することができる基を有するものも同様に使用することができる。
スルホン酸基を有する単量体の具体例としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのα,β−不飽和スルホン酸、及び、これらの塩を挙げることができる。
単量体(a2m)としては、上に例示した有機酸基を有する単量体のうち、カルボキシル基を有する単量体がより好ましく、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸がさらに好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。これらの単量体は工業的に安価で容易に入手することができ、他の単量体成分との共重合性も良く、生産性の点でも好ましい。なお、単量体(a2m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
有機酸基を有する単量体(a2m)は、それから導かれる単量体単位(a2)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下となるような量で重合に供する。有機酸基を有する単量体(a2m)の使用量が上記範囲内であると、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になる。
なお、有機酸基を有する単量体単位(a2)は、前述のように、有機酸基を有する単量体(a2m)の重合によって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中に導入するのが簡便であり好ましいが、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)生成後に、公知の高分子反応により、有機酸基を導入してもよい。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、有機酸基以外の官能基を有する単量体(a3m)から誘導される単量体単位(a3)を含有していてもよい。上記有機酸基以外の官能基としては、水酸基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、メルカプト基などを挙げることができる。
水酸基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどの、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどを挙げることができる。
アミノ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アミノスチレンなどを挙げることができる。
アミド基を有する単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体などを挙げることができる。
エポキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
有機酸基以外の官能基を有する単量体(a3m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
これらの有機酸基以外の官能基を有する単量体(a3m)は、それから導かれる単量体単位(a3)が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、10質量%以下となるような量で重合に使用することが好ましい。10質量%以下の単量体(a3m)を使用することにより、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になる。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、上述したガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1)、有機酸基を有する単量体単位(a2)、及び、有機酸基以外の官能基を有する単量体単位(a3)以外に、上述した単量体と共重合可能な単量体(a4m)から誘導される単量体単位(a4)を含有していてもよい。
単量体(a4m)は、特に限定されないが、その具体例として、上記(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステル、アルケニル芳香族単量体、シアン化ビニル単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、オレフィン系単量体などを挙げることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、アクリル酸メチル(単独重合体のガラス転移温度は、10℃)、メタクリル酸メチル(同105℃)、メタクリル酸エチル(同63℃)、メタクリル酸n−プロピル(同25℃)、メタクリル酸n−ブチル(同20℃)などを挙げることができる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステルの具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどを挙げることができる。
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンなどを挙げることができる。
シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどを挙げることができる。
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
オレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどを挙げることができる。
単量体(a4m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
単量体(a4m)は、それから導かれる単量体単位(a4)の量が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下となるような量で重合に供する。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、上述した、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)を単独重合させることによって特に好適に得ることができ、必要に応じて、上述した有機酸基を有する単量体(a2m)、有機酸基以外の官能基を含有する単量体(a3m)、及び、単量体(a1m)〜(a3m)と共重合可能な単量体(a4m)から選ばれる少なくとも1種を共重合させてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)を得る際の重合方法は特に限定されず、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などのいずれであってもよく、これら以外の方法でもよい。ただしこれらの重合方法の中で溶液重合が好ましく、中でも重合溶媒として、酢酸エチル、乳酸エチルなどのカルボン酸エステルやベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒を用いた溶液重合がより好ましい。重合に際して、単量体は、重合反応容器に分割添加してもよいが、全量を一括添加するのが好ましい。重合開始の方法は、特に限定されないが、重合開始剤として熱重合開始剤を用いるのが好ましい。当該熱重合開始剤は特に限定されず、例えば過酸化物重合開始剤やアゾ化合物重合開始剤を用いることができる。
過酸化物重合開始剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシドや、ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドのようなペルオキシドの他、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などを挙げることができる。これらの過酸化物は、還元剤と適宜組み合わせて、レドックス系触媒として使用することもできる。
アゾ化合物重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などを挙げることができる。
重合開始剤の使用量は特に限定されないが、単量体100質量部に対して0.01質量部以上50質量部以下の範囲であることが好ましい。
これらの単量体のその他の重合条件(重合温度、圧力、撹拌条件など)は、特に制限がない。
重合反応終了後、必要により、得られた重合体を重合媒体から分離する。分離の方法は特に限定されない。例えば、溶液重合の場合、重合溶液を減圧下に置き、重合溶媒を留去することによって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)を得ることができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)で測定して、標準ポリスチレン換算で1000以上100万以下の範囲にあることが好ましく、10万以上50万以下の範囲にあることが、より好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の重量平均分子量は、重合の際に使用する重合開始剤の量や、連鎖移動剤の量を適宜調整することによって制御することができる。
((メタ)アクリル酸エステル単量体(α1))
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有するものであれば特に限定されないが、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)を含有するものであることが好ましい。
ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の合成に用いる(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)と同様の(メタ)アクリル酸エステル単量体を挙げることができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の比率は、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは75質量%以上100質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の比率を上記範囲とすることによって、感圧接着性や柔軟性に優れた熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を得やすくなる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)、及び、これらと共重合可能な有機酸基を有する単量体(a6m)の混合物としてもよい。
上記単量体(a6m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の合成に用いてもよい単量体(a2m)として例示したものと同様の有機酸基を有する単量体を挙げることができる。単量体(a6m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における単量体(a6m)の比率は、30質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における単量体(a6m)の比率を上記範囲とすることによって、感圧接着性や柔軟性に優れた熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を得やすくなる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)及び所望により共重合させることができる有機酸基を有する単量体(a6m)の他に、これらと共重合可能な単量体(a7m)も含む混合物としてもよい。
上記単量体(a7m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の合成に用いてもよい単量体(a3m)及び単量体(a4m)として例示したものと同様の単量体を挙げることができる。単量体(a7m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における単量体(a7m)の比率は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
低硬度の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を作製し易くする観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、水素末端極性官能基を有する単量体単位を含有しないことが好ましい。一方、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の凝集力を高める観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)が水素末端極性官能基を有する単量体単位を含有していてもよい。
水素末端極性官能基を有する単量体単位としては、例えば、上述した有機酸基を有する単量体単位(a2)、及び、上述した有機酸基以外の官能基を有する単量体(a3m)から誘導される単量体単位(a3)等が挙げられる。
(多官能性単量体(α2))
本発明において、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)は多官能性単量体(α2)を必須の成分として含む。通常、ラジカル熱重合などの重合時には、多官能性単量体を用いずともある程度の架橋反応は進行する。しかしながら、より確実にしかも所望の量の架橋構造を形成させるためには多官能性単量体を用いることを要する。
本発明に用いる多官能性単量体(α2)としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)に含まれる単量体と共重合可能なものを用いる。また、当該多官能性単量体(α2)は重合性不飽和結合を複数有しており、該不飽和結合を末端に有することが好ましい。このような多官能性単量体(α2)を用いることによって、共重合体に分子内及び/又は分子間架橋を導入して、熱伝導性感圧接着剤としての凝集力を高めることができる。
多官能性単量体(α2)としては、例えば1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートや、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチレン−5−トリアジンなどの置換トリアジンの他、4−アクリルオキシベンゾフェノンのようなモノエチレン系不飽和芳香族ケトンなどを用いることができる。中でも、多官能性(メタ)アクリレートが好ましく、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートがより好ましい。多官能性単量体(α2)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
多官能性単量体(α2)の使用量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量%として、0.2質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。多官能性単量体(α2)の使用量を上記範囲とすることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の硬度を低く抑えつつ、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に適正な凝集力を付与し易くなる。
<分散剤(C)>
次に、分散剤(C)について説明する。熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の前駆体である混合組成物に分散剤(C)を適量添加することによって、柔軟性と粘着性の高い熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を得ることができる。
本発明に用いる分散剤(C)は、多価アルコール重合体の脂肪酸エステルである。また、当該多価アルコール重合体の脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリソルビタン脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。中でも、ポリグリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリンリシノレイン酸エステル、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、などが挙げられる。中でも、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルが特に好ましい。
上記ポリソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルビタン縮合リシノレイン酸エステル、ポリソルビタンリシノレイン酸エステル、ポリソルビタンオレイン酸エステル、ポリソルビタンステアリン酸エステル、などが挙げられる。
上記ポリプロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、ポリプロピレングリコール縮合リシノレイン酸エステル、ポリプロピレングリコールリシノレイン酸エステル、ポリプロピレングリコールオレイン酸エステル、ポリプロピレングリコールステアリン酸エステル、などが挙げられる。
上記における「縮合リシノレイン酸」について説明する。リシノレイン酸はカルボキシル基と水酸基との両方を有する化合物であるが、リシノレイン酸が有するカルボキシル基と、別分子であるリシノレイン酸が有する水酸基とがエステル化反応することで多量化したものを「縮合リシノレイン酸」と称する。また、上記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、縮合リシノレイン酸中のカルボキシル基が、水酸基を有する化合物中の水酸基との間でエステル化反応することにより得られるものである。
なお、分散剤(C)としては、数平均分子量が1,000〜10,000のものが好ましい。また、分散剤(C)は、10℃以上40℃以下の温度下において液体であることが好ましい。
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に含有される分散剤(C)の量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部として、1.5質量部以上10質量部以下が好ましく、2質量部以上8質量部以下であることがより好ましく、3質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。分散剤(C)の含有量が上記範囲内にあることにより、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の凝集力を効果的に高く維持することができ、かつ、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の好適な柔軟性と粘着性を得ることができる。
<リン酸エステル(D)>
次に、リン酸エステル(D)について説明する。熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の前駆体である混合組成物にリン酸エステル(D)を添加することによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に優れた難燃性を付与し易くなる。本発明者らは、リン酸エステル(D)のイソプロピル化率を90%以下とすることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)のブリード量を低減することが可能であることを見出した。本発明に用いるリン酸エステル(D)のイソプロピル化率は90%以下であり、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。リン酸エステル(D)のイソプロピル化率を上記上限以下とすることにより、リン酸エステル(D)のブリード量を低減し易くなる。一方、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)が絶縁性を備えている場合、絶縁性の劣化を抑制する観点から、イソプロピル化率は50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましい。熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)が絶縁性を有さない場合も、混合する際の作業性の観点から、イソプロピル化率は50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましい。
(イソプロピル化率の測定方法)
本発明に用いるリン酸エステル(D)のイソプロピル化率の測定は、リン酸エステル(D)を1,000ppm程度(LC/MSでは10倍希釈)に調整したアセトニトリル溶液を作製し、LC/UV及びLC/MSにより、イソプロピル基の置換体と非置換体とのUVピークでの面積比から求める。LC/UV及びLC/MSのLC(液体クロマトグラフィー)の条件を表1に示す。
Figure 2016175950
本発明に用いるリン酸エステル(D)は、25℃における粘度が3000mPa・s以上であることが好ましい。リン酸エステル(D)の粘度を上記範囲とすることで、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又は熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の成形性が悪くなることを防止し易くなる。なお、本発明においてリン酸エステル(D)の「粘度」とは、以下に説明する方法によって測定した粘度を意味する。
(リン酸エステルの粘度測定方法)
リン酸エステルの粘度測定には、B型粘度計(東京計器株式会社製)を用いて、以下に示す手順で行う。
(1)常温の環境でリン酸エステルを300ml計量し、500mlの容器に入れる。
(2)攪拌用ロータNo.1、2、3、4、5、6、7から、いずれかを選択し、粘度計に取り付ける。
(3)リン酸エステルが入った容器を粘度計の上に置き、ロータを該容器内の縮合リン酸エステルに沈める。このとき、ロータの目印となる凹みが丁度、リン酸エステルの液状界面にくるように沈める。
(4)回転数を20、10、4、2の中から選択する。
(5)攪拌スイッチを入れ、1分後の数値を読み取る。
(6)読み取った数値に、係数Aを掛け算した値が粘度[mPa・s]となる。
なお、係数Aは、下記表2に示すように、選択したロータNo.と回転数とから決まる。
Figure 2016175950
また、本発明に用いるリン酸エステル(D)は、大気圧下での15℃以上100℃以下の温度領域において常に液体であることが好ましい。リン酸エステル(D)は、混合する際に液体であれば、作業性が良く、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又は熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を成形することが容易になる。リン酸エステル(D)を含んだ感圧接着剤組成物(F)又は熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を成形する際、15℃以上100℃以下の環境で、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又は熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を構成する各物質を混合することが好ましい。混合時の温度を上記範囲とすることによって、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)のガラス転移温度以上とし、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)に含まれる単量体等の揮発あるいは重合反応が始まってしまうことを防止し易くなるため、安全性及び作業性を良くすることができる。
本発明には、リン酸エステル(D)として、縮合リン酸エステルも非縮合リン酸エステルも用いることができる。ここでいう「縮合リン酸エステル」とは、1分子内にリン酸エステル部位が複数存在するものを意味し、「非縮合リン酸エステル」とは、1分子内にリン酸エステル部位が1つだけ存在するものを意味する。これまでに説明した条件を満たすリン酸エステルの具体例を以下に列記する。
縮合リン酸エステルの具体例としては、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)などの芳香族縮合リン酸エステル;ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェートなどの含ハロゲン系縮合リン酸エステル;非芳香族非ハロゲン系縮合リン酸エステル;などが挙げられる。これらの中でも、比重が比較的小さく、有害物質(ハロゲンなど)の放出の危険がなく、入手も容易であることなどから、芳香族縮合リン酸エステルが好ましく、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)がより好ましい。
非縮合リン酸エステルの具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル;トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;などが挙げられる。この中でも、有害物質(ハロゲンなど)が発生しないことなどから、芳香族リン酸エステルが好ましい。
リン酸エステル(D)は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に使用するリン酸エステル(D)の量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部として、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上40質量部以下であることがさらに好ましい。リン酸エステル(D)の含有量を上記範囲とすることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又は熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の粘着性を維持しやすくなる。
<熱伝導性フィラー(E)>
本発明において、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の前駆体である混合組成物は、熱伝導性フィラー(E)を含む。本発明に用いる熱伝導性フィラー(E)は、添加することによって熱伝導性を向上させることができる無機化合物である。熱伝導性フィラー(E)の熱伝導率は0.3W/m・K以上であり、0.5W/m・K以上であることが好ましい。
熱伝導性フィラー(E)の具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化ガリウム、水酸化インジウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどの金属水酸化物;酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛(後述する酸化亜鉛(Z)を除く)などの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸アルミニウムなどの金属炭酸塩;窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物;ホウ酸亜鉛水和物;カオリンクレー;アルミン酸カルシウム水和物;ドーソナイト;シリカ;膨張化黒鉛粉、人造黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維などの、炭素含有導電性フィラー;等を挙げることができる。中でも金属水酸化物及び金属酸化物が好ましく、金属水酸化物がより好ましく、水酸化アルミニウム及び酸化アルミニウム(アルミナ)がより好ましく、水酸化アルミニウムがさらに好ましい。熱伝導性フィラー(E)は一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に使用する熱伝導性フィラー(E)の量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)100質量部に対して、150質量部以上600質量部以下であり、250質量部以上550質量部以下であることが好ましく、350質量部以上500質量部以下であることがより好ましい。熱伝導性フィラー(E)の含有量を上記下限以上とすることによって、熱伝導性を向上させる効果を発揮しやすくなる。一方、熱伝導性フィラー(E)の含有量を上記上限以下とすることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の硬度が上昇することを防止することができる。
熱伝導性フィラー(E)の平均粒径は、0.5μm以上25μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることがより好ましい。また、熱伝導性フィラー(E)のBET比表面積は、0.3m/g以上10m/g以下であることが好ましく、0.5m/g以上2m/g以下であることがより好ましい。熱伝導性フィラー(E)の平均粒径及びBET比表面積を上記範囲内とすることによって、熱伝導性フィラー(E)の含有量を増やしても、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)が脆くなりにくくすることができ、作業性に優れる。
なお、本発明において「BET比表面積」とは、以下の方法で計測したものを意味する。まず、窒素及びヘリウムの混合ガスをBET比表面積測定装置内に導入し、試料(BET比表面積の測定対象物)を入れた試料セルを液体窒素に浸して、窒素ガスを試料表面に吸着させる。吸着平衡に達した後、試料セルを水浴に入れ常温まで温め、試料に付着していた窒素を脱着させる。窒素ガスの吸着、脱着時に試料セルを通過する前後のガスの混合比は変化するので、この変化を窒素及びヘリウムの混合比が一定のガスを対照として熱伝導度検出器(TCD)で検知し、窒素ガスの吸着量及び脱着量を求める。測定前に単位量の窒素ガスを装置内に導入してキャリブレーションを行い、TCDで検出した値に対応する表面績の値を求めておくことにより、その試料の表面積を求める。そして、求めた表面積をその試料の質量で除すことにより、BET比表面積を求めることができる。
熱伝導性フィラー(E)はチタネート処理されていることが好ましい。チタネート処理の方法は特に限定されず、公知のチタネート系カップリング剤を用いて行うことができる。
チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、及びジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
熱伝導性フィラー(E)にチタネート処理を施す場合、熱伝導性フィラー(E)としては以下のものが挙げられる。水酸化アルミニウム、水酸化ガリウム、水酸化インジウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどの金属水酸化物;酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛(後述する酸化亜鉛(Z)を除く)などの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸アルミニウムなどの金属炭酸塩;窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物;ホウ酸亜鉛水和物;カオリンクレー;アルミン酸カルシウム水和物;ドーソナイト;シリカ;等を挙げることができる。この中でも、金属水酸化物、金属酸化物及び金属炭酸塩が好ましく、金属水酸化物がより好ましく、水酸化アルミニウムが特に好ましい。これらのうち、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
なお、チタネート処理された熱伝導性フィラーとチタネート処理されていない熱伝導性フィラーとを併用してもよい。
チタネート処理された熱伝導性フィラーを用いる場合、チタネート処理された熱伝導性フィラーの平均粒径は、1μm以上80μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、5μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。
<タッキファイヤー(T)>
次に、タッキファイヤー(T)について説明する。タッキファイヤー(T)としては、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)と相溶し、溶剤を含まない公知のタッキファイヤー(粘着付与剤)を特に限定することなく用いることができる。例えば、ロジン系タッキファイヤー、テルペン系タッキファイヤー、石油樹脂系タッキファイヤーをタッキファイヤー(T)として用いることができる。
ロジン系タッキファイヤーとしては、例えば、松ヤニや松根油中のアビエチン酸を主成分とするロジン酸とグリセリンやペンタエリスリトールとのエステル、及び、これらの水素添加物、不均化物を挙げられる。より具体的には、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、変性ロジン、ロジンエステル(ロジンジオール)などを挙げられる。
テルペン系タッキファイヤーとしては、松に含まれるテルペン油やオレンジの皮などに含まれる天然のテルペンを重合したものを挙げられる。より具体的には、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂などを挙げられる。
石油樹脂系タッキファイヤーとしては、石油を原料とした脂肪族、脂環族、芳香族系の樹脂を挙げられる。より具体的には、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、スチレン系石油樹脂などが挙げられる。
タッキファイヤー(T)としては、ロジン系タッキファイヤーが好ましく、ロジンエステルがより好ましい。タッキファイヤー(T)は、一種を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に用いるタッキファイヤー(T)の量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部として、3質量部以上20質量部以下であり、4質量部以上15質量部以下であることが好ましく、5質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。このようにタッキファイヤー(T)を熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に所定量含有させることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の好ましい強度や接着力を得ることができる。タッキファイヤー(T)の含有量が上記範囲の上限を超えると、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を得る際の重合反応を阻害したり、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の強度を低下させる虞がある。一方、タッキファイヤー(T)の含有量が上記範囲の下限未満であると、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の接着力を向上させる効果を十分に得られない虞がある。
<重合開始剤(P)>
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を得る際、上述したように(メタ)アクリル樹脂組成物(A)に含まれる成分が重合する。当該重合反応を促進するため、重合開始剤(P)を用いることが好ましい。当該重合開始剤(P)としては、光重合開始剤、アゾ系熱重合開始剤、有機過酸化物熱重合開始剤などが挙げられる。ただし、得られる熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に強い接着力を付与する等の観点からは、有機過酸化物熱重合開始剤を用いることが好ましい。
光重合開始剤としては、公知の各種光重合開始剤を用いることができる。その中でも、アシルホスフィンオキサイド系化合物が好ましい。好ましい光重合開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
アゾ系熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などが挙げられる。
有機過酸化物熱重合開始剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシドや、ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンのようなペルオキシドなどを挙げることができる。ただし、熱分解時に臭気の原因となる揮発性物質を放出しないものが好ましい。また、有機過酸化物熱重合開始剤の中でも、1分間半減期温度が100℃以上かつ170℃以下のものが好ましい。
上記重合開始剤(P)の使用量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以上2質量部以下であることがさらに好ましい。
重合開始剤(P)の使用量を上記範囲とすることによって、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合転化率を適正な範囲にし易くなり、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に単量体臭が残ることを防止し易くなる。
なお、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合転化率は、95質量%以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合転化率が95質量%以上であれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に単量体臭が残ることを防止し易くなる。
また、重合開始剤(P)の使用量を上記範囲とすることによって、重合反応が過度に進行して熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)が平滑なシート状にならずに表面に凹凸やピンホールが発生するという事態を防止し易くなる。
<酸化亜鉛(Z)>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)には酸化亜鉛(Z)を用いてもよい。本発明に用いてもよい酸化亜鉛(Z)は、嵩比重が0.1g/mL以上0.3g/mL以下であり、0.11g/mL以上0.25g/mL以下であることが好ましく、0.13g/mL以上0.2g/mL以下であることがより好ましい。酸化亜鉛(Z)の嵩比重を上記範囲とすることによって、貼付直後にはリワーク可能であり、所定の時間を経過した後には強い粘着力を発揮することができる熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)とすることができる。
樹脂組成物にフィラーを添加する場合、通常、混合し易くするためにシランカップリング剤等によって表面処理されたものを用いることが多い。しかしながら、本発明では酸化亜鉛(Z)の嵩比重を上記範囲とするため、酸化亜鉛(Z)としては表面処理されてない酸化亜鉛を用いることが好ましい。
また、酸化亜鉛(Z)は針状部を有していることが好ましい。酸化亜鉛(Z)は、核となる部分の周囲に1又は複数の針状部が備えられていてもよく、針状部のみで構成されていてもよい。ただし、後述するように、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)内に充填された或る熱伝導性フィラー(E)と他の熱伝導性フィラー(E)との間を酸化亜鉛(Z)によって繋ぎ易くする観点からは、核となる部分の周囲に複数の針状部がそれぞれ異なる方向に伸びて備えられている形状が好ましい。より好ましい形状は、核となる部分の周囲に3つ以上の針状部があり、該針状部のうちの少なくとも1つは他の針状部と同一平面上にない形状である。なお、1つの核の周囲に存在する針状部の数は、3〜6個が好ましい。この範囲の数であると針状部の配向が3次元的になり、かつ、他のフィラーとの結びつきが良いものとなる。核となる部分の周囲に複数の針状部が備えられている酸化亜鉛の市販品としては、例えば、株式会社アムテック製の「パナテトラ(登録商標)」を挙げることができる。
酸化亜鉛(Z)に備えられる針状部の長さは、2μm以上50μm以下であることが好ましい。なお、酸化亜鉛(Z)の針状部の長さは、例えば、走査電子顕微鏡で観察して測定することができる。酸化亜鉛(Z)の針状部の長さを上記範囲とすることによって、後に説明するようにして熱伝導性フィラー(E)との組み合わせで熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に高い熱伝導性を備えさせ易くなる。
本発明によれば、熱伝導性フィラー(E)及び酸化亜鉛(Z)を組み合わせて用いることによって熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の熱伝導性を向上させ易くなる。これには以下の理由が考えられる。酸化亜鉛(Z)は針状部を有していることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)内に充填された或る熱伝導性フィラー(E)と他の熱伝導性フィラー(E)との間を該針状部によって繋ぐことができる。このように或る熱伝導性フィラー(E)と他の熱伝導性フィラー(E)とが酸化亜鉛(Z)によって繋がれることにより、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)内で熱の伝達経路が形成され、熱伝導性が向上すると推察される。
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に使用する酸化亜鉛(Z)の量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)100質量部に対して0.3質量部以上4質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以上3.8質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以上3.5質量部以下であることがさらに好ましい。酸化亜鉛(Z)の含有量を上記範囲とすることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に適度な粘着性を付与することができる。すなわち、貼付直後にはリワーク可能であり、貼付後、時間の経過とともに強い粘着力を発揮することができる熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)とすることができる。一方、酸化亜鉛(Z)の含有量が上記範囲を超えると、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の素となる混合組成物の粘度が増し、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の生産性が低下する傾向にある。また、酸化亜鉛(Z)の含有量が上記範囲未満であると、酸化亜鉛(Z)によって拘束される樹脂成分が少なくなることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は貼付直後から粘着力が強くなり、リワークが困難になる傾向にある。
<その他の添加剤>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)には、これまでに説明した物質以外にも、上述した本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の性能を満足できる範囲で、公知の各種添加剤を添加することができる。
公知の添加剤としては、発泡剤(発泡助剤を含む。);上述した熱伝導性フィラー(E)を除いた金属の水酸化物や金属塩水和物などの難燃性熱伝導無機化合物;ガラス繊維;PITCH系炭素繊維などの、上述した熱伝導性フィラー(E)を除いた熱伝導性無機化合物;外部架橋剤;顔料;二酸化チタンなどのフィラー;フラーレン、カーボンナノチューブなどのナノ粒子;ポリフェノール系、ハイドロキノン系、ヒンダードアミン系などの酸化防止剤;アクリル系ポリマー粒子、微粒シリカ、酸化マグネシウムなどの増粘剤;などを挙げることができる。
<硬度>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は、低硬度であることにより、放熱体又は発熱体への形状追従性や密着性に優れる。形状追従性や密着性を高める観点から、日本ゴム協会標準規格(SRIS)アスカーC法に基づいて測定した硬度が20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。
一方、上記日本ゴム協会標準規格(SRIS)アスカーC法に基づいて測定した硬度の測定下限値は0であり、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の硬度は0以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましい。硬度が高いほど、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)はその形状を維持する性能に優れ、所謂、コールドフロー(流れだし)を防止しやすくなる。
2.製造方法
次に、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法について説明する。
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)は、これまでに説明した各物質を混合して混合組成物を作製した後、該混合組成物中において、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応を行うことにより得ることができる。
すなわち、本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)、及び、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)0.2質量%以上3質量%以下、を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、イソプロピル化率90%以下のリン酸エステル(D)と、熱伝導性フィラー(E)を150質量部以上600質量部以下と、を含む混合組成物を作製する工程、並びに、混合組成物中において、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応を行う工程、を含んでいる。
なお、その他に使用できる物質や、各物質の好ましい含有比率等は上述した通りであり、ここでは詳細な説明を省略する。
本発明の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は、これまでに説明した各物質を混合して混合組成物を作製し、該混合組成物をシート状に成形した後、又は該混合組成物をシート状に成形しながら、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応を行うことにより得ることができる。
すなわち、本発明の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)、及び、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)0.2質量%以上3質量%以下、を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、イソプロピル化率90%以下のリン酸エステル(D)と、熱伝導性フィラー(E)を150質量部以上600質量部以下と、を含む混合組成物を作製する工程、並びに、混合組成物をシート状に成形した後、又は、混合組成物をシート状に成形しながら、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応を行う工程、を含んでいる。
なお、その他に使用できる物質や、各物質の好ましい含有比率等は上述した通りであり、ここでは詳細な説明を省略する。
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法において、上記重合反応を行う際には、加熱することが好ましい。当該加熱には、例えば、熱風、電気ヒーター、赤外線などを用いることができる。このときの加熱温度は、重合開始剤が効率良く分解し、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合が進行する温度が好ましい。温度範囲は、用いる重合開始剤の種類等により異なるが、100℃以上200℃以下が好ましく、120℃以上180℃以下がより好ましい。
また、本発明の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法において、上記混合組成物をシート状に成形する方法は特に限定されない。好適な方法としては、例えば、離型処理されたポリエステルフィルムなどの工程紙の上に上記混合組成物を塗布してシートを成形する方法、二枚の離型処理された工程紙間に上記混合組成物を挟んでロールの間を通して押圧することでシートを成形する方法、及び、押出機を用いて上記混合組成物を押出し、その際にダイスを通して厚さを制御することでシートを成形する方法などが挙げられる。上記工程紙は特に限定されないが、例えば、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムや離型処理されたポリエチレンナフタレートフィルムなどを用いることができる。中でも、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は、厚みを薄くすることによって厚さ方向の熱抵抗を低くすることができる。かかる観点から、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の厚さの上限は、好ましくは4mm程度であることが望ましい。一方、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の厚さの下限は、好ましくは0.2mmであることが望ましい。熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)にある程度の厚さをもたせることによって、当該熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を発熱体及び放熱体に貼付する際に空気を巻き込むことを防止し易くなり、結果として熱抵抗の増加を防止し、且つ、被着体への貼り付け工程における作業性を良好にし易くなる。
また、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は、基材の片面又は両面に成形することもできる。当該基材を構成する材料は特に限定されない。当該基材の具体例としては、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ベリリウム銅などの熱伝導性に優れる金属、及び、合金の箔状物や、熱伝導性シリコーンなどのそれ自体熱伝導性に優れるポリマーからなるシート状物や、熱伝導性添加物を含有させた熱伝導性プラスチックフィルムや、各種不織布や、ガラスクロスや、ハニカム構造体などを挙げることができる。プラスチックフィルムとしては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、芳香族ポリアミドなどの耐熱性ポリマーのフィルムを使用することができる。
3.使用例
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は、熱伝導性が高く、感圧接着性を有しているため、発熱体と放熱体との間に介在させて、発熱体から放熱体への熱伝導を効率よく行うなどの用途に使用できる。また、本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は、電子機器に備えられる発熱体である電子部品に取り付け、該電子部品の一部として用いることができる。本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の使用例について、図1を参照しつつ説明する。図1は、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の使用例を説明する図である。
図1(A)は、パーソナルコンピュータ等の電子機器の一部を概略的に示す斜視図である。図1(A)には、基板1、基板1上に設置した発熱体である電子部品2、放熱体であるヒートシンク3、および電子部品2とヒートシンク3との間に配置した熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)4と、を示している。
図1(A)に示したように、電子部品2とヒートシンク3とで熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)4を挟んで固定することによって、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)4が有する感圧接着性により、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)4は電子部品2とヒートシンク3とに接着する。そして、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)4は高い熱伝導性を有しているので、電子部品2で発した熱は熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)4を介してヒートシンク3へと効率よく伝えられ、ヒートシンク3から放熱される。
図1(B)は、放熱体であるヒートシンク13に熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)14、14を介して発熱体であるNPNトランジスタ12a及びPNPトランジスタ12bを取り付けた様子を概略的に示す斜視図である。
図1(B)に示したように、1つのヒートシンク13に熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)14、14を介してNPNトランジスタ12a及びPNPトランジスタ12bを取り付けることによって、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)14が有する感圧接着性により、一方の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)14はNPNトランジスタ12aとヒートシンク13とに接着し、他方の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)14はPNPトランジスタ12bとヒートシンク13とに接着する。そして、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)14は高い熱伝導性を有しているので、NPNトランジスタ12a及びPNPトランジスタ12bで発した熱は熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)14、14を介してヒートシンク13へと効率よく伝えられ、ヒートシンク13から放熱される。このとき、NPNトランジスタ12a及びPNPトランジスタ12bが、共に、高い熱伝導性を有する熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)14、14を介して一つのヒートシンク13に取り付けられていることによって、NPNトランジスタ12aとPNPトランジスタ12bとで温度差が生じることを抑制できる。
図1(C)は、発熱体である2つのトランジスタ22、22が熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)24を介して固定された様子を概略的に示す断面図である。
図1(C)に示したように、2つの発熱体22、22が熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)24を介して固定されることによって、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)24が有する感圧接着性により、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)24は2つの発熱体22、22に接着する。そして、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)24は高い熱伝導性を有しているので、2つの発熱体22、22の一方の温度が他方に比べて高くなれば、一方から他方へと速やかに熱を伝えられるので、2つの発熱体22、22の間で温度差が生じることを抑制できる。
なお、図1に示した例では熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を用いたが、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に代えて熱伝導性感圧接着剤組成物(F)を同様に用いることもできる。また、上記例では放熱体としてヒートシンクを用いたが、電子部品の筐体などを放熱体とすることもできる。以下、本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の他の使用例について説明する。
上述したように、本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は、電子機器に備えられる電子部品の一部として用いることができる。当該電子機器及び電子部品の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)、発光ダイオード(LED)光源を有する機器における発熱部周囲の部品、自動車等のパワーデバイス周囲の部品、燃料電池、太陽電池、バッテリー、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、液晶パネル、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、又は集積回路(IC)などの発熱部を有する機器や部品を挙げることができる。
なお、本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の電子機器への使用方法の一例としては、LED光源を例にすると下記に記述するような使用方法を挙げることができる。すなわちLED光源に直接貼り付ける;LED光源と放熱材料(ヒートシンク、ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、グラファイトシート等)との間に挟みこむ;LED光源に接続された放熱材料(ヒートシンク、ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、グラファイトシート等)に貼り付ける;LED光源を取り囲む筐体として使用する;LED光源を取り囲む筐体に貼り付ける;LED光源と筐体との隙間を埋める;等の方法である。LED光源の用途例としては、透過型の液晶パネルを有する表示装置のバックライト装置(テレビ、携帯、PC、ノートPC、PDA等);車両用灯具;工業用照明;商業用照明;一般住宅用照明;等が挙げられる。
また、LED光源以外の具体例としては、以下のものが挙げられる。すなわち、PDPパネル;IC発熱部;冷陰極管(CCFL);有機EL光源;無機EL光源;高輝度発光LED光源;高輝度発光有機EL光源;高輝度発光無機EL光源;CPU;MPU;半導体素子;等である。
更に本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の使用方法としては、装置の筐体に貼り付けること等を挙げることができる。例えば、自動車等に備えられる装置に使用する場合、自動車に備えられる筐体の内部に貼り付ける;自動車に備えられる筐体の外側に貼り付ける;自動車に備えられる筐体の内部にある発熱部(カーナビ/燃料電池/熱交換器)と該筐体とを接続する;自動車に備えられる筐体の内部にある発熱部(カーナビ/燃料電池/熱交換器)に接続した放熱板に貼り付ける;こと等が挙げられる。
なお、自動車以外にも、同様の方法で本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を使用することができる。その対象としては、例えばパソコン;住宅;テレビ;携帯電話機;自動販売機;冷蔵庫;太陽電池;表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED);有機ELディスプレイ;無機ELディスプレイ;有機EL照明;無機EL照明;有機ELディスプレイ;ノートパソコン;PDA;燃料電池;半導体装置;炊飯器;洗濯機;洗濯乾燥機;光半導体素子と蛍光体とを組み合わせた光半導体装置;各種パワーデバイス;ゲーム機;キャパシタ;等が挙げられる。
更に、本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は上記の使用方法に留まらず、用途に応じて他の方法で使用することも可能である。例えば、カーペットや温暖マット等の熱の均一化のために使用する;LED光源/熱源の封止剤として使用する;太陽電池セルの封止剤として使用する;太陽電池のバックシ−トとして使用する;太陽電池のバックシ−トと屋根との間に使用する;自動販売機内部の断熱層の内側に使用する;有機EL照明の筐体内部に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層、放熱層、及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層、エポキシ系の放熱層、及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;人や動物を冷やすための装置、衣類、タオル、シート等の冷却部材に対し、身体と反対の面に使用する;電子写真複写機、電子写真プリンタ等の画像成形装置に搭載する定着装置の加圧部材に使用する;電子写真複写機、電子写真プリンタ等の画像成形装置に搭載する定着装置の加圧部材そのものとして使用する;制膜装置の処理対象体を載せる熱流制御用伝熱部として使用する;制膜装置の処理対象体を載せる熱流制御用伝熱部に使用する;放射性物質格納容器の外層と内装の間に使用する;太陽光線を吸収するソーラパネルを設置したボックス体の中に使用する;CCFLバックライトの反射シートとアルミシャーシの間に使用する;こと等を挙げることができる。
以下に、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、ここで用いる「部」や「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
<硬度>
日本ゴム協会標準規格(SRIS)アスカーC法で硬度を測定した。硬度計は、高分子計器社製、商品名「ASKER CL−150LJ」を使用した。まず、後に説明するようにして2枚の離型PETフィルムに挟持された熱伝導性感圧接着性シート状成形体を作製後、幅30mm×長さ60mmに切りだした試験片を用意した。離型PETフィルムを剥した試験片を4枚重ね合わせ、23℃に保たれた恒温室に24時間以上静置して、状態調整を行なったものを試料とした。指針が95〜98となるようにダンパー高さを調整した。サンプルとダンパーが衝突してから60秒後の硬度を測定し、測定を3回繰り返して、その平均値を採用した。結果を表4に示す。
<ブリード試験>
後に説明するようにして2枚の離型PETフィルムに挟持された熱伝導性感圧接着性シート状成形体を作製し、それを円形(直径28mm)に打ち抜いた試験片を用意した。離型PETフィルムを剥がした試験片を、銅箔(100mm×100mm×厚さ23μm)の中央に貼り、その上にゴム製のワッシャー(直径20mm、穴直径10.2mm、厚さ3.2mm)を挟んで、ガラス板(直径30mmm、厚さ2.7mm)を置き、さらに総重量500gに調整したガラス瓶(底面直径51.4mm)を載せ、90℃に設定したオーブンに入れた。24時間後に取り出し、銅箔が変色したブリード部分の面積を、3次元測定機(Mitutoyo製 COORDINATE MEASURING MACHINE BHS04)で求めた。結果を表4に示す。
本試験の結果が750mm以下であれば、ブリード量が低減されていると言える。
<表面タック>
Probe Tack Tester PT−1000(ChemInstruments社製)を用いて熱伝導性感圧接着性シート状成形体の粘着力を測定した。まず、後に説明するようにして熱伝導性感圧接着性シート状成形体を作製後、30mm×30mmに切りだした試験片を用意した。離型PETフィルムを剥がした試験片を、円形の冶具にしっかりと貼り付けた。その後、61cm/分の速度でプローブ(直径5.0mm)を試験片に向けて移動させ、測定部を試験片に1秒間接触させた後、測定部と試験片とを離した。この時の試験片と測定部との塑性変形応力を数値化し、表面タック(単位:N/cm)として記録した。その結果を表4に示した。この数値が高い方が、粘着力が強いといえる。
<XY熱伝導率>
後に説明するようにして2枚の離型PETフィルムに挟持された熱伝導性感圧接着性シート状成形体を作製し、それを50mm×110mmの大きさに裁断した試験片を用意した。その後、試験片の一方の面から離型PETフィルムを剥離し、当該離型PETフィルムを剥がした面に、空気が入らないようにラップフィルム(ポリ塩化ビニル製、厚さ8μm)を貼った。このラップフィルムの大きさは、試験片の粘着面より大きいものであれば良い。そして、この試験片のラップフィルムを貼った面とは反対の面の離型PETフィルムを剥離して、当該離型PETフィルムを剥離した面を後述のリファレンスプレートに接するようにセットし、以下の方法で熱伝導率を測定した。熱伝導率[W/m・K]の測定は、迅速熱伝導率計(京都電子工業株式会社製、QTM−500)を用いて、非定常熱線比較法により行った。なお、リファレンスプレートには、シリコーンゴム(電流値:2A)、石英(電流値:4A)、及び、ジルコニア(電流値:6A)をこの順で使用した。測定は23℃雰囲気下で行った。
その結果を表4に示した。この評価による結果が0.5W/m・K以上であれば、熱伝導性に優れていると言える。
<熱伝導性感圧接着性シート状成形体の作製>
(実施例1)
反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)単量体100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.03部及び酢酸エチル700部を入れて均一に溶解し、窒素置換後、80℃で6時間重合反応を行った。重合転化率は97%であった。得られた重合体を減圧乾燥して酢酸エチルを蒸発させ、さらにアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)単量体を加えて粘性のある固体状の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)と2EHAとの質量比7:3の混合物を得た。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は250,000であった。重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレン換算で求めた。
次に、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)と2EHAとの質量比7:3の混合物60部と、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)60部と、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びペンタエリスリトールジアクリレートを60:35:5の割合で混合した、架橋剤である多官能性単量体(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトアクリレートPE−3A」)0.7部と、分散剤(C)(太陽化学株式会社製、商品名「チラバゾール H−818」、数平均分子量4000)5部と、タッキファイヤー(T)(荒川化学工業株式会社製、商品名「KE−359」、超淡色ロジンエステル)10部と、イソプロピル化率60.1%のリン酸エステル(D)(味の素ファインテクノ株式会社製、商品名「レオフォス35」、化合物名「リン酸トリアリールイソプロピル化物」)30部と、熱伝導性フィラー(E)としてのチタネート処理された水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、商品名「B303T」、平均粒径:15μm)500部と、重合開始剤(P)としての有機過酸化物熱重合開始剤(1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン(1分間半減期温度は150℃である。))1部と、酸化亜鉛(Z)(株式会社アムテック製、パナテトラ WZ−0501)2部と、を電子天秤で計量し、これらを混合した。混合には、恒温槽(東機産業株式会社製、商品名「ビスコメイト 150III」)及びホバートミキサー(株式会社小平製作所製、商品名「ACM−5LVT型」、容量:5L)を用いた。ホバート容器の温調は50℃に設定し、真空(−0.1MPaG)にして、回転数目盛を3にして30分間攪拌し、混合組成物を得た。
なお、リン酸エステル(D)のイソプロピル化率は、LC/UV及びLC/MSにより求めた。イソプロピル化率の測定結果を表3に示す。
次に上記混合組成物を、厚さ75μmの離型PETフィルム上に垂らし、当該混合組成物上にさらに、厚さ75μmの他の離型PETフィルムを被せた。混合組成物が離型PETフィルムに挟持されたこの積層体を、間隔を3mmに調整した2つのロールの間に通し、混合組成物をシート状に成形した。その後、当該積層体をオーブンに投入し、130℃で8分間加熱し、引き続き、140℃で17分間加熱した。この加熱工程によって、(メタ)アクリル酸エステル単量体及び多官能性単量体を重合させ、離型フィルムに挟持された厚さ3mmの熱伝導性感圧接着性シート状成形体を得た。なお、熱伝導性感圧接着性シート状成形体中の残存単量体量から、全単量体の重合転化率を計算したところ、99.9%であった。
(実施例2及び3、並びに比較例1)
リン酸エステル(D)の種類を、表4に示したようにイソプロピル化率の異なるものに変更した以外は実施例1と同様にして実施例2及び3に係るシート、及び比較例1に係るシートを作製した。表4には各物質の配合量を質量部で示している。なお、実施例2では、イソプロピル化率76.1%のリン酸エステル(商品名「レオフォス65」)、イソプロピル化率88.4%のリン酸エステル(商品名「レオフォス65」)、イソプロピル化率92%のリン酸エステル(商品名「レオフォス65」)を用いた(いずれも味の素ファインテクノ株式会社製、化合物名「リン酸トリアリールイソプロピル化物」)。LC/UV及びLC/MSによるイソプロピル化率の測定結果を表3に示す。
Figure 2016175950
Figure 2016175950
表4に示したように、実施例1〜3に係るシートは、いずれも表面タック、硬度及びXY熱伝導率に優れ、ブリード量が低減されていた。一方、リン酸エステルのイソプロピル化率が90%を越えていた比較例1に係るシートは、表面タックが低下しており、ブリード試験の結果に劣るものであった。
1 基板
2、12a、12b、22 発熱体
3、13 放熱体
4、14、24 熱伝導性感圧接着性シート状成形体

Claims (13)

  1. (メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)、及び、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)0.2質量%以上3質量%以下、を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、
    イソプロピル化率90%以下のリン酸エステル(D)と、
    熱伝導性フィラー(E)を150質量部以上600質量部以下と、
    を含む混合組成物中において、
    少なくとも前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び前記重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応が行われてなる、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)。
  2. 前記混合組成物が、さらに分散剤(C)を1.5質量部以上10質量部以下と、を含む、請求項1に記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)。
  3. 前記混合組成物が、さらにタッキファイヤー(T)を3質量部以上20質量部以下と、を含む、請求項1又は2に記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)。
  4. (メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)、及び、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)0.2質量%以上3質量%以下、を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、
    イソプロピル化率90%以下のリン酸エステル(D)と、
    熱伝導性フィラー(E)を150質量部以上600質量部以下と、
    を含む混合組成物をシート状に成形した後、又は該混合組成物をシート状に成形しながら、
    少なくとも前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び前記重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応が行われてなる熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)。
  5. 前記混合組成物が、さらに分散剤(C)を1.5質量部以上10質量部以下と、を含む、請求項4に記載の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)。
  6. 前記混合組成物が、さらにタッキファイヤー(T)を3質量部以上20質量部以下と、
    を含む、請求項4又は5に記載の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)。
  7. (メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)、及び、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)0.2質量%以上3質量%以下、を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、
    イソプロピル化率90%以下のリン酸エステル(D)と、
    熱伝導性フィラー(E)を150質量部以上600質量部以下と、
    を含む混合組成物を作製する工程、並びに、
    前記混合組成物中において、少なくとも前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び前記重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応を行う工程、
    を含む、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の製造方法。
  8. 前記混合組成物が、さらに分散剤(C)を1.5質量部以上10質量部以下と、を含む、請求項7に記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の製造方法。
  9. 前記混合組成物が、さらにタッキファイヤー(T)を3質量部以上20質量部以下と、
    を含む、請求項7又は8に記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の製造方法。
  10. (メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)、及び、重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)0.2質量%以上3質量%以下、を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、
    イソプロピル化率90%以下のリン酸エステル(D)と、
    熱伝導性フィラー(E)を150質量部以上600質量部以下と、
    を含む混合組成物を作製する工程、並びに、
    前記混合組成物をシート状に成形した後、又は、前記混合組成物をシート状に成形しながら、少なくとも前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び前記重合性不飽和結合を複数有する多官能性単量体(α2)の重合反応を行う工程、
    を含む、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法。
  11. 前記混合組成物が、さらに分散剤(C)を1.5質量部以上10質量部以下と、を含む、請求項10に記載の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法。
  12. 前記混合組成物が、さらにタッキファイヤー(T)を3質量部以上20質量部以下と、
    を含む、請求項10又は11に記載の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法。
  13. 請求項1〜3に記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又は請求項4〜6に記載の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を備えた電子機器。
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