JP2016175803A - 可塑性グラウト材及びそれを用いて行う止水工法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セメントミルク材に含有される主材セメントを、低熱ポルトランドセメントとし、セメントミルク材に含有されるフライアッシュを、JIS規格II種相当の高品質フライアッシュである改質フライアッシュとし、セメントミルク材に含有される水中不分離性混和剤を、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸系増粘剤とした可塑性グラウト材とする。
【選択図】なし
Description
本発明の可塑性グラウト材は、それぞれ独自の配合からなるセメントミルク材と、可塑化材とを混合することにより得ることができる。可塑化材は、2種の可塑化材、即ち、セメント鉱物系可塑化材及びポリマー系可塑化材とからなる。これらの2種の可塑化材は、それぞれ別途製造保管し、使用時、即ち、空隙部等への注入直前に混合することが好ましいが、それらの混合物であってもよい。
セメントミルク材の主材セメントとしては、低熱ポルトランドセメントを用いる。そして、この主材セメントに、改質フライアッシュを添加してなる混合セメントを、可塑性グラウト材を構成するセメントミルク材として用いることができる。
従来の可塑性グラウト材においては、特に、低熱ポルトランドセメントに限ることなく、経済性や作業性を高める観点から、普通、早強、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメントを適宜使い分けていた。これに対し、本発明の可塑性グラウト材においては、独自の知見に基づき、ポルトランドセメントの中でも、特に低熱ポルトランドセメントを限定的に選択した点がその特徴の一つである。主材セメントを低熱ポルトランドセメントに限定することにより、可塑性グラウト材のフレッシュ性状及び可塑化までの時間のばらつきを抑制することができる。
例えば、火力発電所のボイラから排出される石炭燃焼灰等、手段を問わず、石炭を燃焼させて得られた石炭灰を、主材セメントに混合させることは、セメント製造の経済性向上等を企図して従来広く行われている。可塑性グラウト材におけるセメントミルク材についても同様である。そのような石炭灰のなかでも、JIS規格のフライアッシュが好ましく用いられてきた。本発明の可塑性グラウト材は、独自の知見に基づき、フライアッシュの中でも、特に、JIS規格II種相当の高品質フライアッシュである改質フライアッシュを、主材セメントに付加混合する石炭灰として選択した点がその特徴の一つである。尚、改質フライアッシュとは、フライアッシュを加熱改質して未燃炭素量を低減することによって得られたものであって、上記JIS規格に係る要件を満たすフライアッシュのことを言う。
本発明の可塑性グラウト材を構成するセメントミルク材は、以下にその詳細を説明する特定の水中不分離性混和剤、即ち、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸系増粘剤(以下、「AMPS系増粘剤」とも言う)を含有することを特徴とする。
可塑化材は、上述の通り、2種の可塑化材、即ち、セメント鉱物系可塑化材及びポリマー系可塑化材とからなる。或いは、可塑化材は、これら2種の可塑化材の混合物であってもよい。前者のセメント鉱物系可塑化材としては、例えば、電気化学工業社製の「クリーングラウトCG−1000」を用いることができ、一方のポリマー系可塑化材としては、電気化学工業社製の「クリーングラウトCG−2000」を用いることができる。
セメント鉱物系可塑化材は、主として、カルシウムアルミネート、石膏、凝結遅延剤、及び水からなる。
ポリマー系可塑化材は、主として、アクリル酸エステル共重合体エマルジョン(以下「エマルジョン」とも言う)と水とからなる。エマルジョンは、急硬材の練り置き性能、安全性、及び可塑性の点で、使用することが好ましい。エマルジョンは、不飽和カルボン酸と、不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和化合物とを、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、又は塊状重合等の方法を用いて共重合することにより得られるポリマーエマルジョンである。
本発明の止水工法は、上述の各成分を含有してなる可塑性グラウト材を止水対象域の流水中に注入することによって流水をせき止める止水工法である。
単位時間当たりの導入水量と、水路自体の傾斜を調節することによって、適宜所望の速度の流水環境を疑似的に発現可能な実験用水路において、本発明の可塑性グラウト材による止水効果を確認する試験を行った。水路は、φ1000mmの円筒状の形状で、傾斜角度は水平面に対して20°の傾斜角度とした。又、可塑性グラウト材注入前の、水路内の流水の流速が25cm/secとなるように導入水量を調節した。尚、導入する水の水温は40℃とした。可塑性グラウト材の材料は下記のものをそれぞれ用い、それらの配合は下記表1の通りとした。そして、上記の流水環境の水路に、内径25mmのシリンダーを用いて、300リットル/分の可塑性グラウト材を注入した。尚、比較例1として、セメント鉱物系可塑化材の含有量比のみを従来の可塑性グラウト材程度に減量した点のみを実施例1との配合上の差異としたものを用意した。又、比較例2として、従来品の配合による一般的な可塑性グラウト材を用意した。実験の結果は表2に示す通りであった。
(主材セメント)
低熱ポルトランドセメント:市販品、ブレーン値3440cm2/g、密度3.22g/cm3
普通ポルトランドセメント:市販品、ブレーン値3200cm2/g、密度3.15g/cm3
(石炭灰)
改質フライアッシュ:高品質フライアッシュII種相当、密度2.21g/cm3
普通フライアッシュ:東京電力常磐火力産フライアッシュII種、密度2.23g/cm3
(不分離性混和剤)
アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸系増粘剤(AMPS系増粘剤):「テルビス」((株)テルナイト製)
(セメント鉱物系可塑化材)
「クリーングラウトCG−1000」(電気化学工業(株)製)、カルシウムアルミネートC12A7組成、非晶質、ブレーン値6050cm2/g、ガラス化率100%、市販無水セッコウの粉砕品、ブレーン値5900cm2/gを同等で混合。密度2.21g/cm3
(凝結遅延剤)
「D−100セッター」(電気化学工業(株)社製)
(ポリマー系可塑化材)
「クリーングラウトCG−2000」(電気化学工業(株)製)、エチルアクリレート/メタクリル酸を共重合したポリマーエマルジョン(モル比45/55)固形分濃度30%、密度1.05g/cm3
実施例の可塑性グラウト材について、不分離性混和剤の添加率(主材セメントと石炭灰の合計量に対する含有量比(%))のみを、0%から4%まで順次変動させたものについて、それぞれ水中不分離性を評価した。測定は、土木学会の水中不分離コンクリート設計施工指針付属書の水中分離度試験に準じて行い、不分離性混和剤の添加率の異なる上記各可塑性グラウト材を20℃の温度の水中に落下させた場合の浮遊物質量と混濁物質量を、それぞれ測定した。結果を表3に示す。
実施例の可塑性グラウト材について、可塑後の貫入抵抗値を測定した。又、上記の比較例2の可塑性グラウト材に実施例と同量比の添加率(主材セメントと石炭灰の合計量に対する含有量比(%):2%)となるように不分離性混和剤を添加したものを比較例3とした。測定は、バッチ式ミキサにて5秒間撹拌した後の可塑化した状態の各可塑性グラウト材について、下記条件による「針貫入抵抗試験」によって、可塑後90秒にて測定した貫入針抵抗値(最大荷重値)について、各3回測定し、その平均値を求めた。結果を表4に示す。
(針貫入抵抗試験)
使用ミキサ:愛工舎製作所ケンミックスプレミアKMM770
回転数:自転:約450rpm、公転:約135rpm
撹拌時間:5秒
試験開始までの時間:90秒(90秒以内に下記の容器に詰める)
容器(塩ビTSキャップ):内φ48mm×h=55mm×3個
貫入針の太さ:φ6mm
Claims (5)
- 主材セメントとフライアッシュと水中不分離性混和剤とを含有してなるセメントミルク材と、
カルシウムアルミネートと石膏とを含有してなるセメント鉱物系可塑化材と、
アクリル酸エステル共重合体エマルジョンを含有してなるポリマー系可塑化材と、を含有し、
前記セメントミルク材に含有される主材セメントは、低熱ポルトランドセメントであって、
前記セメントミルク材に含有されるフライアッシュは、JIS規格II種相当の高品質フライアッシュである改質フライアッシュであって、
前記セメントミルク材に含有される水中不分離性混和剤は、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸系増粘剤である可塑性グラウト材。 - 前記水中不分離性混和剤の前記主材セメント及び前記フライアッシュの合計量に対する含有量が1.5質量%以上3.0質量%以下である請求項1に記載の可塑性グラウト材。
- 請求項1又は2に記載の可塑性グラウト材を止水対象域の流水中に注入することによって行う止水工法であって、
前記可塑性グラウト材中における前記主材セメントに対する前記セメント鉱物系可塑化材の含有量比が、7.0質量%以上11.0質量%以下となる配合比で、前記セメント鉱物系可塑化材及び前記ポリマー系可塑化材からなる可塑化剤と、前記セメントミルク材と、を、止水対象域への注入直前に混合する止水工法。 - 前記止水対象域における、前記流水の流速が、20cm/sec以上30cm/sec以下である請求項3に記載の止水工法。
- 止水対象域における前記流水の水温が35℃以上100℃以下である請求項3又は4のいずれかに記載の止水工法。
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