JP2016172802A - 帯電防止性成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の帯電防止性成形品の製造方法は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの導電性複合体と、酸基のアルカリ金属塩を有するポリエステル樹脂と、グリシジル基含有アクリル系樹脂と、分散媒とを含有する導電性高分子分散液をシート基材の少なくとも一方の面に塗工して塗工シートを得る塗工工程と、該塗工シートを110℃以下の温度で乾燥して成形用シートを得る乾燥工程と、前記成形用シートを成形温度110℃超で成形する成形工程とを有する。
【選択図】なし
Description
帯電防止性を付与した電子部品収納用の成形品の製造方法としては、例えば、シート基材の表面に、π共役系導電性高分子を含有する水系分散液を塗布して導電性塗膜を形成して成形用シートを作製し、その成形用シートを真空成形する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
本発明は、耐水性が優れた導電性塗膜を容易に形成でき、充分な帯電防止性を有する帯電防止性成形品を容易に製造できる帯電防止性成形品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の帯電防止性成形品の製造方法においては、前記ポリエステル樹脂が、ジカルボン酸成分とジグリコール成分との重縮合物であり、前記ジカルボン酸成分は、スルホン酸アルカリ金属塩型の置換基(−SO3 −X+、ただし、X+はアルカリ金属イオンである。)を有するジカルボン酸を含み、前記ジグリコール成分は、ジエチレングリコールを含むことが好ましい。
本発明の帯電防止性成形品の製造方法における前記塗工工程では、前記シート基材の両面に前記導電性高分子分散液を同時に塗工してもよい。
本発明の帯電防止性成形品の製造方法における前記塗工工程では、前記シート基材の一方に前記導電性高分子分散液を塗工した後、巻き取ることなく、前記シート基材の他方の面に前記導電性高分子分散液を塗工してもよい。
本発明の帯電防止性成形品の製造方法においては、前記シート基材が、非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ゴム強化ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムのいずれかであることが好ましい。
本発明の帯電防止性成形品の製造方法においては、前記分散媒における水の含有割合を80質量%以上とすることが好ましい。
本発明の帯電防止性成形品の製造方法においては、前記導電性高分子分散液に導電性向上剤をさらに添加することが好ましい。
本発明の帯電防止性成形品の製造方法における前記塗工工程では、押出成形により前記シート基材を連続作製しながら、そのシート基材に導電性高分子分散液を連続塗工してもよい。
本発明の帯電防止性成形品の製造方法は、塗工工程と乾燥工程と成形工程とを有して、導電性塗膜を有する帯電防止性成形品を製造する。
塗工工程は、導電性高分子分散液をシート基材に塗工して塗工シートを得る工程である。
ここで、導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの導電性複合体と、酸基のアルカリ金属塩を有するポリエステル樹脂と、グリシジル基含有アクリル系樹脂と、分散媒とを含有する分散液である。酸基のアルカリ金属塩を有するポリエステル樹脂及びグリシジル基含有アクリル系樹脂は、バインダ樹脂としての役割を果たすものである。
シート基材としては、プラスチックシートを用いることができる。
プラスチックシートを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、非晶性ポリエチレンテレフタレート等のポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらの樹脂材料の中でも、成形性、強度及びコストの点から、非晶性ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン(ゴムを含まないポリスチレン)、ゴム強化ポリスチレン、ポリプロピレンのいずれかが好ましく、非晶性ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
また、非晶性ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン(ゴムを含まないポリスチレン)、ゴム強化ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)、ポリプロピレンは、耐熱性が低いものであり、後述するように乾燥温度を110℃以下にする本発明が好適である。
プラスチックシートは未延伸のシートでもよいし、一軸延伸のシートでもよいし、二軸延伸のシートでもよい。機械的物性に優れる点では、プラスチックシートは二軸延伸のシートが好ましい。
また、プラスチックシートは、導電性高分子分散液から形成される導電性塗膜の密着性を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、導電性、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子の中でも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
前記π共役系導電性高分子は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホン酸基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万〜100万であることが好ましく、10万〜50万であることがより好ましい。
ただし、ポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープせず、余剰のアニオン基を有している。この余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。
本発明の導電性高分子分散液に含まれるポリエステル樹脂(以下、「ポリエステル樹脂(A)」という。)は、ジカルボン酸成分とジグリコール成分との重縮合物であって、酸基(スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基等)のアルカリ金属塩を有するポリエステル樹脂である。このポリエステル樹脂(A)は極性が大きいため、水分散性に優れ、乳化剤や安定剤を使用しなくても水中に安定に分散できる。
前記ジカルボン酸成分は、スルホン酸基がアルカリ金属によって中和されたスルホン酸アルカリ金属塩型の置換基(−SO3 −X+、ただし、Xはアルカリ金属イオンである。)を有するジカルボン酸を含むことが好ましい。
スルホン酸基を有するジカルボン酸としては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン酸−2,7−ジカルボン酸、またはそれらの誘導体等が挙げられる。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
スルホン酸アルカリ金属塩型の置換基を有するジカルボン酸としては、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩及びその誘導体が好ましい。
ジグリコール成分は、耐水性より向上させることから、ジエチレングリコールを含むことが好ましい。
ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量が前記下限値以上であれば、ポリエステル樹脂(A)の耐水性がより高くなり、前記上限値以下であれば、ポリエステル樹脂(A)の水分散性がより高くなる。
得られたポリエステル樹脂(A)は、水に添加して水分散体としてもよい。ポリエステル樹脂(A)の水分散体は、固形分濃度が高くなると、均一分散体が得られにくくなるため、ポリエステル固形分濃度は30質量%以下が好ましい。
グリシジル基含有アクリル系樹脂は、グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーの単独重合体、あるいは、グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーと該モノマーと共重合可能な他のラジカル重合性不飽和モノマーとの共重合体である。
グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーの含有割合は、全モノマーの10〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることがより好ましい。
グリシジル基含有アクリル系樹脂は、グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマー単位を有することによって、自己架橋を進め、耐水性を向上させると考えられる。
他のラジカル重合性不飽和モノマーとしては、グリシジル基との架橋によって耐水性の向上効果が一層発揮されることから、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸モノマーを用いることが好ましい。
不飽和カルボン酸モノマーの含有割合は全モノマー中の5〜20質量%であることが好ましい。不飽和カルボン酸モノマーの含有割合が前記下限値以上であれば、不飽和カルボン酸モノマーを併用する効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、経時的に液がゲル化して貯蔵安定性が低下することを抑制できる。
乳化重合によるグリシジル基含有アクリル系樹脂の製造では、例えば、反応槽にイオン交換水、重合開始剤、界面活性剤を仕込み、次に滴下槽にイオン交換水と界面活性剤を仕込み、モノマーを投入して乳化物を作製した後、該乳化物を反応槽に滴下することによって乳化ラジカル重合させる。反応温度は60〜100℃とすることが好ましく、反応時間は4〜10時間とすることが好ましい。
乳化重合に使用する界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系反応性界面活性剤及び非反応性界面活性剤の1種もしくは2種以上を使用することができる。
乳化重合に使用する重合開始剤としては一般的なラジカル重合性開始剤、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の水溶性過酸化物、又は過酸化ベンゾイルやt−ブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性過酸化物、あるいはアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物などが挙げられる。
適度に自己架橋させるためには、ポリエステル樹脂(A)/グリシジル基含有アクリル系樹脂は、固形分質量比で、10/90〜80/20であることが好ましく、20/80〜70/30であることがより好ましい。
具体的に、ポリエステル樹脂(A)が10質量%以上、すなわちグリシジル基含有アクリル系樹脂が90質量%以下であると、非晶性ポリエステル基材への密着性、導電性塗膜の透明性がより高くなり、ポリエステル樹脂(A)が80質量%以下、すなわちグリシジル基含有アクリル系樹脂が20質量以上であると、耐水性がより高くなる。
分散媒としては、水系分散媒、具体的には、水、又は、水と有機溶媒との混合液を用いることができる。
有機溶媒としては、導電性高分子分散液を均一にできることから、水溶性溶媒が好ましい。水溶性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価脂肪族アルコール類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、ジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよい。
また、押出成形によりシート基材を連続作製しながら、そのシート基材に導電性高分子分散液を連続塗工する、いわゆるインライン塗工を適用した場合には、特に、分散媒における水の含有割合を80質量%以上とすることが好ましい。分散媒における水の含有割合を80質量%以上であれば、導電性高分子分散液が引火点を有さなくなるため、有機溶媒を排気するための大掛かりな排気設備を必要としない。
具体的に、導電性向上剤は、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、2個以上のカルボキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
これら化合物の具体例は、例えば、特開2010−87401号公報に記載されている。ただし、導電性向上剤は、前記π共役系導電性高分子、前記ポリアニオン、前記ポリエステル樹脂(A)、前記グリシジル基含有アクリル系樹脂及び前記分散媒以外の化合物である。
導電性向上剤の中でも、導電性向上の効果が高く、耐水性にも優れることから、1個以上のヒドロキシ基と1個以上のカルボキシ基を有する化合物が好ましく、ガリック酸(没食子酸)又はガリック酸のエステル(例えば、ガリック酸メチル、ガリック酸エチル等)がより好ましい。
導電性高分子分散液は、公知の添加剤等を含有してもよい。なお、添加剤は、前記π共役系導電性高分子、前記ポリアニオン、前記ポリエステル樹脂(A)、前記グリシジル基含有アクリル系樹脂、前記分散媒、前記導電性向上剤以外の化合物である。
添加剤としては本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、ビタミン類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
導電性高分子分散液は、以下の方法により製造される。
すなわち、ポリアニオン水溶液中でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを化学酸化重合により重合して、導電性複合体の水分散液を得た後、該水分散液に、ポリエステル樹脂(A)及びグリシジル基含有アクリル系樹脂を添加し、さらに、必要に応じて、添加剤、導電性向上剤、有機溶媒を添加することにより、導電性高分子分散液を製造することができる。
塗工工程において、導電性高分子分散液をシート基材に塗工する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方式、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
上記のうち、簡便に塗工できることから、バーコーターを用いることがある。バーコーターにおいては、種類によって塗工厚が異なり、市販のバーコーターでは、種類ごとに番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工できるものとなっている。
前記導電性高分子分散液のシート基材への塗工量は特に制限されないが、固形分として、0.1〜2.0g/m2の範囲であることが好ましい。
乾燥工程は、前記塗工シートを乾燥して成形用シートを得る工程である。
乾燥工程における乾燥法としては、例えば、熱風加熱による乾燥法や、赤外線加熱による乾燥法などの通常の方法を採用できる。
乾燥工程における乾燥温度は、110℃以下であり、40〜90℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましく、60〜75℃がさらに好ましい。乾燥温度を110℃以下とすることにより、シート基材の軟化を防いでシート形状を維持できる。また、シート基材が非晶性ポリエステルシートである場合には、乾燥温度を110℃以下とすることにより、ポリエステルの結晶化による白濁を抑制でき、成形品の透明性低下を防止できる。一方、乾燥温度が40℃以上であれば、シート送り速度が速くても充分に乾燥できる。
また、乾燥後には、養生することが好ましい。養生しない場合には、乾燥直後の導電性塗膜は耐水性を充分に発揮しないことがある。
養生の条件は、乾燥後の成形用シートを20〜50℃の屋内で20時間以上放置することが好ましい。この条件で養生すれば、導電性塗膜の耐水性をより高くできる。
成形工程は、前記成形用シートを成形して帯電防止性成形品を得る工程である。
成形方法としては、例えば、真空成形法、圧空成形法、プラグアシスト成形法、真空圧空成形法などの各種熱成形方法を適用できる。これらの成形法では、成形用シートを凸型または凹型に密着させて凹部または凸部を形成する、いわゆる絞り成形をすることができる。帯電防止性成形品を、電子部品の収納に用いるトレイとする場合には、成形によって、電子部品の収納部となる凹部を形成する。
上記成形方法の中でも、凹部または凸部を形成する成形の生産性が高いため、真空成形法が好ましい。
成形温度は、110℃超とし、120〜180℃とすることが好ましい。本発明における成形温度は、成形時の成形用シートの表面温度のことである。成形温度を110℃超とすることにより、成形用シートを容易に成形できる。一方、成形温度を前記上限値以下とすれば、成形用シートの成形時の熱劣化を防ぐことができる。
本発明の帯電防止性成形品の製造方法によれば、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性を有する塗膜をシート基材に容易に形成できる。
また、本発明の帯電防止性成形品の製造方法において使用するポリエステル樹脂(A)とグリシジル基含有アクリル系樹脂とは110℃超(具体的には120℃程度)で架橋して硬化する。そのため、乾燥工程において、塗工シートを110℃以下の温度で乾燥することで、ポリエステル樹脂(A)とグリシジル基含有アクリル系樹脂との架橋を防ぐことができる。ポリエステル樹脂(A)とグリシジル基含有アクリル系樹脂との架橋を防ぐことで、塗膜の延伸性を確保できるため、成形工程において成形用シートを成形しやすくなる。
乾燥時に架橋しなかったポリエステル樹脂(A)とグリシジル基含有アクリル系樹脂とは、110℃超で成形する成形工程において、成形用シートを成形すると同時に架橋させて硬化させることができる。したがって、耐水性が優れた導電性塗膜を容易に形成できる。
特に、本発明では、ポリエステル樹脂(A)及びグリシジル基含有アクリル系樹脂からなる自己架橋性樹脂をバインダ成分とすることで、帯電防止性を損なわずに、耐水性を充分に高めることができる。
したがって、本発明の帯電防止性成形品の製造方法によれば、耐水性に優れた導電性塗膜を容易に形成でき、充分な帯電防止性を有する帯電防止性成形品を容易に製造できる。
本発明における帯電防止性成形品は、シート基材と、該シート基材の少なくとも一方の面に形成された導電性塗膜とを備える。
帯電防止性成形品の形状としては特に限定されないが、帯電防止性成形品が、電子部品の収納に用いるトレイである場合には、電子部品の収納部となる凹部が複数形成された成形体とする。
表面抵抗値は、JIS K6911に従って測定した値である。
帯電圧は、表面電位測定器を用いて測定することができる。
透明なものである場合には、全光線透過率が65%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。全光線透過率が65%以上であれば、帯電防止性成形品を電子部品の収納に用いた場合、目視又はカメラによって電子部品の収納物の状態を検査できる。
全光線透過率は、JIS K 7136に準じて測定した値である。
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法によりポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られたろ液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散液(PEDOT−PSS水分散液)を得た。
留出管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた四つ口フラスコにテレフタル酸ジメチル854質量部、5−ソジウムスルホイソフタル酸355質量部、エチレングリコール186質量部、ジエチレングリコール742質量部及び、反応触媒として、酢酸亜鉛1質量部を仕込んだ。その後、フラスコ内を130℃から170℃まで2時間かけて昇温して、エステル交換反応させた後、イソフタル酸730質量部、三酸化アンチモン1質量部を添加し、170℃から200℃まで2時間かけて昇温してエステル化反応を行った。次いで、徐々に昇温、減圧し、最終的に反応温度を250℃、真空度5mmHg以下で1時間重縮合反応を行った。その後、冷却し、常圧下でイオン交換水を加えて、不揮発分が25質量%のポリエステル樹脂(A)を得た。
ビーカーにイオン交換水18質量部、界面活性剤としてエレミノールRS−3000(三洋化成工業株式会社製、アニオン系界面活性剤、有効成分50質量%)3質量部を仕込んだ。その後、ビーカー内を撹拌しつつ、メタクリル酸グリシジル40質量部を投入し、モノマー乳化液を作製した。
次に、コンデンサー、モノマー滴下用ロート、温度計、撹拌機を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水37.5質量部、界面活性剤(エレミノールRS−3000)1質量部、過硫酸カリウム0.5質量部を仕込んだ。その後、フラスコ内を撹拌しつつ窒素置換後、加熱を始め、75℃で前記モノマー乳化液を4時間かけて滴下した。滴下終了後も液温を75〜85℃に維持することで反応を進め、滴下終了後から4時間後に冷却した。冷却後、さらにイオン交換水を加えて、不揮発分25質量%のグリシジル基含有アクリル系樹脂(B−1)を得た。
メタクリル酸グリシジル40質量部をビーカー内に投入する代わりに、メタクリル酸グリシジル20質量部、メタクリル酸メチル13.6質量部及びアクリル酸ブチル6.4質量部を投入した以外は製造例4と同様にして、不揮発分25質量%のグリシジル基含有アクリル系樹脂(B−2)を得た。
製造例3で得たポリエステル樹脂(A)と製造例4で得たグリシジル基含有アクリル系樹脂(B−1)とを固形分質量比50/50で配合して、不揮発分25質量%の自己架橋性樹脂(C−1)を得た。
製造例3で得たポリエステル樹脂(A)と製造例5で得たグリシジル基含有アクリル系樹脂(B−2)とを固形分質量比50/50で配合して、不揮発分25質量%の自己架橋性樹脂(C−2)を得た。
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液60g、製造例6で得た自己架橋性樹脂(C−1)40gを混合して導電性高分子分散液を得た。ここで、自己架橋性樹脂(C−1)はバインダ樹脂である。該導電性高分子分散液に水を添加して2倍に希釈し、その希釈した導電性高分子水分散液を、No.4のバーコーターを用いて、非結晶性ポリエチレンテレフタレート(A−PET)のシート(厚さ0.7mm)の一方の面に塗工し、70℃で30秒間乾燥した。さらに、塗工後のシート基材の他方の面にも、希釈した導電性高分子水分散液を、#4のバーコーターを用いて塗工し、70℃で30秒間乾燥した。これにより、シート基材の両面に導電性塗膜が形成された成形用シートを得た。
その成形用シートを、上型と凹部を備える下型を備える真空成形機を用いて真空成形した。具体的には、上型と下型とを開いた状態にて、成形用シートを上型と下型との間に配置し、上型のヒーターによって、シート表面温度を測定しながら加熱した。シート表面温度が150℃に到達した後、下型を上型に向けて上昇させて成形用シートに押し当て、その状態のまま下型側から真空引きし、20秒間保持した。その後、40℃に冷却し、下型を下降させ、成形品を取り出した。
なお、成形品は、開口部の直径が90mmの円形で、深さが45mmの円筒状凹部を備えたものである。また、真空成形の際の成形倍率は3倍であった。
実施例1におけるPEDOT−PSS水分散液の量を25g、自己架橋性樹脂(C−1)の量を75gに変更したこと以外は実施例1と同様にして成形品を得た。
実施例1におけるPEDOT−PSS水分散液の量を75g、自己架橋性樹脂(C−1)の量を25gに変更したこと以外は実施例1と同様にして成形品を得た。
実施例1におけるバーコーターの種類をNo.4からNo.8に変更したこと以外は実施例1と同様にして成形品を得た。
実施例1においてバインダ樹脂である自己架橋性樹脂(C−1)を自己架橋性樹脂(C−2)に変更したこと以外は実施例1と同様にして同様にして成形品を得た。
実施例1において塗工後の乾燥温度を100℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして同様にして成形品を得た。
実施例1において成形温度120℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして同様にして成形品を得た。
実施例1においてPEDOT−PSS水分散液60g及び自己架橋性樹脂(C−1)40gに加えてガリック酸メチル1.25gを添加したこと以外は実施例1と同様にして同様にして成形品を得た。
実施例1においてPEDOT−PSS水分散液60g及び自己架橋性樹脂(C−2)40gに加えてプロピレングリコール20gを添加したこと以外は実施例1と同様にして同様にして成形品を得た。
実施例1におけるシート基材をポリスチレン(PS)のシート(厚さ0.7mm)に変更したこと以外は実施例1と同様にして同様にして成形品を得た。
実施例1におけるシート基材を耐衝撃性ポリスチレン(HIPS、ゴム強化ポリスチレン)のシート(厚さ0.7mm)に変更したこと以外は実施例1と同様にして同様にして成形品を得た。
実施例1におけるシート基材をポリプロピレン(PP)のシート(厚さ0.7mm)に変更したこと以外は実施例1と同様にして同様にして成形品を得た。
実施例1における乾燥温度を120℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして同様にして成形品を得た。
実施例1における成形温度を100℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして同様にして成形品を得た。
実施例1におけるバインダ樹脂である自己架橋性樹脂(C−1)を製造例3のポリエステル樹脂(A)のみに変更したこと以外は実施例1と同様にして同様にして成形品を得た。
実施例1におけるPEDOT−PSS水分散液を単なる水に変更したこと以外は実施例1と同様にして成形品を得た。
[表面抵抗値]
各例における成形用シートの導電性塗膜の表面抵抗値を、三菱化学社製ハイレスタを用い、JIS K6911に従って測定した。測定結果を表1に示す。表面抵抗値が小さい程、帯電防止性に優れる。なお、表中の「OVER」は、表面抵抗値が大きすぎて、測定可能範囲を超えたことを意味する。
[耐水性]
導電性塗膜を、脱イオン水を含ませた不織布を用いて、押し付け圧1kPaの荷重を付与しながら得られた成形品の下面(凹部が形成された面)を10往復擦り、擦った後の塗膜の状態を目視により下記の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
○:導電性塗膜に変化が見られなかった。
△:導電性塗膜に傷が見られた。
×:導電性塗膜の一部が擦り取られた。
[帯電圧]
得られた成形品の下面を、不織布を用いて10回強くこすり、デジタル低電位測定器(春日電機社製、KSD−3000)を用いて帯電圧を測定した。その帯電圧を以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。帯電圧が低い程、帯電防止性に優れる。
○:帯電圧50V未満
△:帯電圧50〜100V
×:帯電圧100V超
バインダ樹脂として自己架橋性樹脂(C−1)を用い、成形温度を110℃超としたが、乾燥温度を120℃とした比較例1では、導電性塗膜の帯電圧が高く、帯電防止性が不充分であった。
バインダ樹脂として自己架橋性樹脂(C−1)を用い、乾燥温度を110℃以下としたが、成形温度を100℃とした比較例2では、導電性塗膜の耐水性が不充分であった。
乾燥温度を110℃以下、成形温度を110℃超としたが、バインダ樹脂として製造例3のポリエステル樹脂(A)を用いた比較例3では、導電性塗膜の耐水性が不充分であった。
PEDOT−PSS水分散液を使用しなかった比較例4では、導電性が得られなかった。
なお、各実施例及び各比較例における分散媒は水の割合が90質量%以上であり、引火点を有するものではなかった。
Claims (8)
- π共役系導電性高分子及びポリアニオンの導電性複合体と、酸基のアルカリ金属塩を有するポリエステル樹脂と、グリシジル基含有アクリル系樹脂と、分散媒とを含有する導電性高分子分散液を、シート基材の少なくとも一方の面に塗工して塗工シートを得る塗工工程と、
該塗工シートを110℃以下の温度で乾燥して成形用シートを得る乾燥工程と、
前記成形用シートを成形温度110℃超で成形する成形工程とを有する、帯電防止性成形品の製造方法。 - 前記ポリエステル樹脂が、ジカルボン酸成分とジグリコール成分との重縮合物であり、前記ジカルボン酸成分は、スルホン酸アルカリ金属塩型の置換基(−SO3 −X+、ただし、X+はアルカリ金属イオンである。)を有するジカルボン酸を含み、前記ジグリコール成分は、ジエチレングリコールを含む、請求項1に記載の帯電防止性成形品の製造方法。
- 前記塗工工程では、前記シート基材の両面に前記導電性高分子分散液を同時に塗工する、請求項1又は2に記載の帯電防止性成形品の製造方法。
- 前記塗工工程では、前記シート基材の一方に前記導電性高分子分散液を塗工した後、巻き取ることなく、前記シート基材の他方の面に前記導電性高分子分散液を塗工する、請求項1又は2に記載の帯電防止性成形品の製造方法。
- 前記シート基材が、非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ゴム強化ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムのいずれかである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の帯電防止性成形品の製造方法。
- 前記分散媒における水の含有割合を80質量%以上とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の帯電防止性成形品の製造方法。
- 前記導電性高分子分散液に導電性向上剤をさらに添加する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の帯電防止性成形品の製造方法。
- 前記塗工工程では、押出成形により前記シート基材を連続作製しながら、そのシート基材に導電性高分子分散液を連続塗工する、請求項6に記載の帯電防止性成形品の製造方法。
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