JP2016169725A - 溶射シリンダブロックの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ボア内面に金属材料を溶射し、その表面にホーニング加工を施して溶射皮膜としたシリンダブロックにおいて、実際の運転時に溶射皮膜から微小な溶射粒子が落下するのをなくし、溶射皮膜の鏡面化による低フリクション化と、オイルの消費量の低減の双方を実現可能とした溶射シリンダフロックの製造方法を提供する。【解決手段】ボア11の内面に溶射皮膜による摺動面を有する溶射シリンダブロック10の製造方法であって、ボア内面に金属材料を溶射する工程と、溶射によって形成された皮膜にホーニング加工を施す工程と、ホーニング加工後の皮膜面にストレスを付与して所定の密着強度未満の金属粒子である弱体粒子を脱落させる弱体粒子の除去工程(例えば、ホーニング加工後の皮膜面に流体を8〜38MPaにて供給する工程)と、を少なくとも含むことを特徴とする。所要の大きさのストレスの付与により、皮膜面に存在する強固には一体化していない微粒子(弱体粒子)が除去される。それにより、エンジンの運転時に微粒子が落下してくるのを確実に回避できる。【選択図】図3

Description

本発明は、ボア内面に溶射皮膜による摺動面を有する溶射シリンダブロックの製造方法に関する。
自動車等の内燃機関用シリンダブロックの製造方法として、シリンダボア内面に金属を溶射して皮膜を形成し、その後、この溶射皮膜に対し仕上げ加工としてのホーニング加工を行い、溶射皮膜による摺動面を形成するようにした製造方法が知られている(特許文献1等参照)。ホーニングには、砥粒としてダイヤ、アルミナ、炭化ケイ素などの材料が用いられ、最終仕上げ時には、コルクなどの軟質材に微小な砥粒を混ぜた研削工具を用いてプラトー化することも行われる。また、特許文献1に記載されるように、溶射工程とホーニング工程の間に突起物除去工程を設けることで、溶射皮膜表面に形成された突起部を予め除去しておき、その後のホーニング工程において周囲の溶射皮膜とともに突起部が脱落して不良品となるのを阻止することも行われている。
従来行われているホーニング法により、シリンダボア内面の面粗度を比較的容易に小さくすることができる。しかし、面粗度が小さくなっても、気孔の中にわずかに残っているバリやカエリを除去することは必ずしも容易でない。上記した軟質の工具を砥石の代わりに用い、溶射面に押し付けるように加工することで、気孔の中にわずかに沈んでいるバリやカエリをある程度は掘り起こすことができ、それらが実機としての運転中に落下するのを阻止できる可能性がある。
しかし、本発明者らの経験では、これらの方法も完全とはいえず、ごく少量ではあるが、微細な粒子が運転中にボア面である溶射面から脱落することがある。現在の内燃機関においては、ボア面に保持されている一定厚さの油膜によって脱落した微粒子は流れ出ること、および、例えピストンリングとの摺動で噛み込が起こっても、加工されているクロスハッチの不連続部によって噛みこんで粒子は外れてしまうことで、実機として格別の支障は生じない。
また、特許文献2には、シリンダボア内面に溶射皮膜を形成する際に、クランクケースの内面に溶射材料が付着して余剰溶射皮膜が形成されることがあり、この余剰溶射皮膜を水噴射ノズルからの水噴射によって除去することが記載されている。水噴射ノズルとして、低圧噴射の第1の噴射口と、高圧噴射の第2の噴射口とを備えたものを用い、第1の噴射口からの低圧噴射によりウオータカーテンを形成し、第2の噴射口からの高圧噴射により余剰溶射皮膜を除去するようになっている。低圧噴射のウオータカーテンは、高圧噴射の水が溶射皮膜に向かうのを阻止するように作用し、溶射皮膜の剥離を防止している。
特開2013−023762号公報 特開2008−303439号公報
近年、内燃機関、特に自動車用エンジンに対し、性能向上の観点から、より高い要求仕様が出されており、ボア内面に金属材料の溶射皮膜を持つシリンダブロックを備えたエンジンに対しても、ボア内面がさらに低フリクションであること、オイル消費をより少なくすること、が求められるようになってきている。
低フリクション化は溶射ボア面を鏡面加工することで解決できる。鋳鉄ライナーでは鏡面加工すると焼き付きが起こるが、溶射皮膜は気孔を有しており、そこがオイルビットとなるために、鏡面仕上げしても焼き付きは生じず、低フリクション化が図られる。鏡面加工に加えて、気孔を極限まで少なくすることでボアに保持されるオイル量をコントロールし、最少のオイル消費とすることができる。
しかし、溶射ボア面を上記のようにすると、油膜が薄くなるために、運転時に溶射皮膜から落下する微小な溶射粒子がボア面に噛みこんでボアに傷をつけることが起こりうる。ボアに傷がつくと、低下させたフリクションを悪化させることとなり、また傷の溝にオイルが入り込みせっかく向上させたオイル消費量を元に戻すこととなる。
すなわち、ボア内面に金属材料の溶射皮膜を持つシリンダブロックを備えたエンジンにおいて、ボア内面を低フリクション化することと、オイルの消費量を低減することは、両立しない問題であり、エンジンに対するより高い要求仕様に応えるためには、何らかの解決策が求められる。
本発明は、上記の要求に応えるべくなされたものであり、ボア内面に金属材料を溶射し、その表面にホーニング加工を施して溶射皮膜としたシリンダブロックにおいて、実際の運転時に溶射皮膜から微小な溶射粒子が落下するのをなくすことができ、それにより、溶射皮膜の鏡面化による低フリクション化と、オイル消費量の低減の双方を、同時に実現可能とした溶射シリンダフロックの製造方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決すべく本発明者らは多くの実験と研究を行うことにより、金属の溶射皮膜にホーニング加工を施した後、その加工面に、実機運転に相当するストレスを与える処理を行うことにより、エンジン運転時に脱落する恐れのある強固に一体化していない金属粒子(弱体粒子)を溶射面から脱落させることができるとともに、強固に一体化している金属粒子(健全粒子)を脱落させることがないことを知見し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明による溶射シリンダブロックの製造方法は、ボア内面に溶射皮膜による摺動面を有する溶射シリンダブロックの製造方法であって、ボア内面に金属材料を溶射する工程と、溶射によって形成された皮膜にホーニング加工を施す工程と、ホーニング加工後の皮膜面に所要のストレスを付与して所定の密着強度未満の金属粒子である弱体粒子を脱落させる弱体粒子の除去工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
ホーニング加工後の皮膜面に所要のストレスを与えるための手段に特に制限はないが、例として、流体(液体、気体)の照射によるストレス、ブラシ掛けによるストレス、磁石を用いた磁力によるストレス、真空ポンプによる吸引力によるストレス、ショットブラストの照射によるストレス、粘着テープを貼り付けた後の引き剥がし時に生じるストレス、等が挙げられる。
好ましい態様では、前記弱体粒子の除去工程が、ホーニング加工後の皮膜面に流体を8〜38MPaにて供給する工程であることを特徴とする。
本発明による製造方法によれば、ホーニング加工後の皮膜面に所要のストレスを付与して、所定の密着強度未満の金属粒子である弱体粒子を脱落させる弱体粒子の除去工程を行うことにより、エンジン運転時においてホーニング加工後の皮膜面から脱落する恐れのある密着強度の低い金属粒子、すなわち強固に一体化していない金属粒子(弱体粒子)を予め溶射面から脱落させることができる一方において、強固に一体化している金属粒子(健全粒子)が脱落することはない。その結果、弱体粒子の除去工程後の被膜面には弱体粒子が存在しないこととなり、実際の運転時に、微小な溶射粒子が落下するのを回避することができ、ボア面に脱落微粒子による傷がつくのを回避できる。ボア面に傷が形成されないことから、オイル消費量が増加することもなく、所期の低オイル消費がそのまま維持される。一方、強固に一体化している金属粒子(健全粒子)はそのまま残っているので、皮膜表面の気孔率が所期以上に増加することはなく、その点からも、所期の低オイル消費がそのまま維持される。
従来のホーニング加工では、強固に一体化していない微粒子(弱体粒子)が溶射皮膜の表面に残ってしまう状態を説明するための図。 ホーニング加工後の溶射皮膜の表面に残存する弱体粒子数の一例を示すグラフ。 本発明による溶射シリンダブロックの製造方法に用いる処理装置の一例を説明する模式的図。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
最初に、従来のホーニング法では、溶射皮膜の表面に存在する強固には一体化していない微粒子(弱体粒子)あるいはその一部を完全には除去できない理由を説明する。図1(a)は金属材料の溶射皮膜1の一例を模式的断面図として示している。複数の微粒子aが気孔bを囲むようにして位置しており、微粒子a1はその一部を気孔bの上にバリあるいはカエリのような形で張り出している。また、その上には微粒子a2が乗っている。なお、図でLは、ホーニング砥石の加工面である。
図1(b)に示すように、ホーリング砥石2が溶射皮膜の表面を移動する。それにより、図1(c)に示すように、微粒子a1における前記ホーニング砥石の加工面Lより上位の部分a11と、微粒子a2の全体と、微粒子a3における前記加工面Lより上位の部分a33は除去される。しかし、微粒子a1の気孔bの上に張り出している部分a12は除去されずに残存する。このa12の部分が、ホーニング加工時に、溶射皮膜の表面に存在する強固には一体化していない微粒子(弱体粒子)として残ってしまい、この弱体粒子は、エンジンの運転時(吸気→爆発→排気)に脱落する恐れがある。
図1(d)は、他の例を示している。この例は、ホーニング加工時に、粒子同士の界面に亀裂cが入ることで形成された、粒子間強度が弱体化した微粒子a4の例である。この微粒子a4も、ホーニング砥石2の移動によっては除去されず、そのまま残ることとなる。しかしエンジン運転時には、振動により取れてしまう恐れがある。
上記のような弱体粒子a12、a4は、ホーニング加工後の溶射皮膜面に粘着テープを貼り付けた後、それを剥がすことで、粘着テープ表面へ付着した付着物として取り出すことができる。
図2は、本発明者らが行った実験結果の一例を示している。この例において、ホーニング工程は、溶射表面の凹凸のみを除去するボーリング加工後に、荒荒ホーニング→荒ホーニング→中仕上げホーニング→仕上げホーニング→プラトーホーニングで行った。図2には、その中のボーリング(Bo)、荒ホーニング(荒Ho)、中仕上げホーニング(中仕上Ho)、プラトーホーニング(プラトーHo)の工程で、100×50mmの粘着テープに付着した弱体粒子の数を示している(なお、同じ個所に8回テープを貼って数えた)。この例では、荒ホーニングにおいて恐らく粒子と粒子の間にクラック(亀裂)が入り、それに起因して粒子間強度が低下した弱体粒子が、後工程でも取り切れておらず、最終仕上げであるプラトーホーニング後も残っていたと考えられる。
本発明によれば、このように例えば最終仕上げであるプラトーホーニング後も残っている弱体粒子を溶着皮膜の表面から除去することが可能となる。以下に、本発明による溶射シリンダブロックの製造方法について、本発明者らが行った試験例とともに説明する。
図3は、本発明による溶射シリンダブロックの製造方法に用いる処理装置の一例を説明する模式的図である。10は処理対象となるシリンダブロックであり、ボア11が適数だけ形成されている。シリンダブロック10は基台20に定着されている。30はボア内面回転式処理装置であり、ファンジェットノズルを2個備えたノズルヘッド31を備える。ノズルヘッド31には適宜の駆動部32により回転が付与されるとともに、高圧ポンプ33と洗浄用ポンプ34から流体が選択的に圧送される。この例において、高圧ポンプ33はMax400MPa〜Min40MPaの範囲で液体の供給が可能であり、洗浄用ポンプ34は最大40MPaでの液体の供給が可能である。
[試験例1]
<前処理工程>
1.ADC12ダイカストブロック素材のボア面をボーリング加工で表面粗さRz6.3μmに仕上げた。
2.金属溶射の前処理として高圧ポンプ33から圧送水により300MPaにてウォータージェット処理を施した。処理後の表面粗さはRa5μmであった。
3.引き続き、シリンダブロックの予熱を行うことなく、同じボア面に2線式ワイヤーアーク溶射にて有効肉厚部が0.5mm厚さになるように溶射施工した。そのとき用いた溶射材料・条件を表1に示す。
Figure 2016169725
次に、後仕上げを以下の工程で実施した。
4.溶射膜表面凹凸を除去するための切削加工(だ肉取り) 取り代φ800μm
5.荒荒ホーニング加工 ダイヤ砥石#100 取り代φ150μm
6.荒ホーニング加工 ダイヤ砥石#320 取り代φ50μm
7.中仕上げホーニング加工 ダイヤ砥石#600 取り代φ30μm
8.仕上げホーニング加工 ダイヤ砥石#1500 取り代φ10μm
9.プラトー加工 コルク#1500 取り代 ほぼφ0μm
上記のホーニングが終了した時点で、表面粗さは、Rk+Rpk=0.25であった。
次に、水による圧力洗浄を実施した。なお、この圧力洗浄は、ホーニング加工後の皮膜面にストレスを付与するための一手段である。圧力洗浄は図3に示した装置30の低圧用ポンプ34を用い、ノズルヘッド31として、オリフィス径φ0.4mmのファンジェットノズルを2個備えたものを用いた。圧力洗浄の処理条件を表2に示した。
Figure 2016169725
上記で得られたブロックについて、次の項目での評価を行った。結果を表3に示した。
a.断面観察:溶射したブロックからのこぎりで切り出した試験片の断面をCross−section−polisher(CP加工)で面出しを行い、光学顕微鏡、およびSEM観察を実施した(×200、×400)。なお、観察面は3mm×4=12mmである。そして、視野の中にボア傷および弱体粒子部があればそれを数えた。
b.粘着テープ:100mm×50mmに切り出した粘着力3.8N/10mmのテープを貼って、指先で強く押した後に剥がした。そのときにテープに付着した100μm以上の脱落粒子の個数を数えた。N=1で実施した。
c.エンジン試験:耐久試験(S1(30分)→1/2S1(30分)→S1(30分)→1/2S1(30分)→7時間冷却→S1(30分)→1/2S1(30分)→S1(30分)→1/2S1(30分)(ただしS1は最高出力回転数):この試験でボアとピストンリングやピストンとの焼き付け状態を目視で確認する)を4気筒エンジンにて実施した。#1に未処理、#2に5Mpa、#3に8Mpa、#4に18Mpaの圧力で処理したボアを仕込み、テストを行った。そして耐久評価後、幅80μm以上の縦傷の有無を判定した。
d.気孔率:処理表面のスンプをとり、それを×50のレーザ顕微鏡で画像取得し、2値化処理を行って気孔率を測定した。
e:面粗さ:処理表面の粗さを測定した。なお、圧力が大きめの場合、半健全な粒子も脱落する場合があり、そのときに塑性変形によるバリが生じてそれがRpkを大きくする場合がある。
表3に示すように、エンジン試験の結果、8MPa、18MPaのものは傷が発生しなかった。これは、ポンプ圧力8MPa以上の流体を被膜面に施すことで、被膜面に所要のストレスが付加され、図1(c)、(d)に示したような溶射皮膜の表面に存在する強固には一体化していない微粒子(弱体粒子)が除去された結果である。なお、それ以上の圧力のものも、断面観察や粘着テープテストの結果より弱体粒子は除去されており、傷は発生しないと推察される。一方で、圧力が45MPaの場合、気孔率が2倍以上になっている。これは、健全な粒子も脱落してしまった結果である。エンジンのオイル消費の観点から気孔率は1.5%以下であることが望ましく、判定としては、ポンプ圧力、すなわち流体圧力が8〜38MPaにてホーニング加工後の皮膜面に供給されることが有効であることがわかる。
なお、表3での「判定」は、エンジン試験でボア損傷がないこと、および圧力洗浄後の気孔率が1.5%以下であることの双方を満足したものを○とした。
Figure 2016169725
[試験例2]
溶射前にシリンダブロックを150℃に予熱して溶射を行った以外は、試験例1と同じにブロックを作り、試験例1と同じようにして評価を行った。その結果を表4に示した。
Figure 2016169725
試験例2では、溶射前にシリンダブロックの予熱を行ったことで、付着した粒子は冷えにくくなり、次に飛来した粒子との濡れ性が向上し、粒子間強度がアップする傾向にある。したがって、表4に示したように、38MPaでの気孔率は洗浄後でも1.2%であった。また、5MPaのポンプ圧力でもボアの縦傷は生じてない。このことから、本発明において、溶射前にシリンダブロックの予熱を行うことは有効な手段であることがわかる。
[試験例3]
アトマイズガスとして窒素を用い、さらに溶射時のシリンダブロックの予熱を150℃で実施した以外は、試験例1と同じにブロックを作り、試験例1と同じようにして評価を行った。ただし、ここでは実機評価は行わなかった。その結果を表5に示した。
Figure 2016169725
溶射前にシリンダブロックの予熱を行い、さらにエアーではなく窒素でアトマイズを行うと、粒子界面の酸化物が大幅に減少し、粒子間強度はさらにアップする傾向にある。そのために、試験例3では、試験例1、2に比べて、さらに洗浄後の気孔率が小さくなると同時に面粗さも小さくなっている。このことから、本発明において、溶射前にシリンダブロックの予熱を行うことに加え、窒素のような不活性ガスでアトマイズを行うことは有効な手段であることがわかる。
また、試験例1〜3によれば、圧力洗浄後の面粗度は、洗浄圧が高くなると、バリが発生して大きくなる。この場合には、圧力洗浄後に再びプラトーホーニングを行うことが推奨される。またその場合、圧力洗浄前のプラトーホーニングを省略してもよい。
[試験例4]
試験例1において、後仕上げを以下の工程を、以下の表6〜9に記載されるホーニング条件A〜Dに変更して実施し、表面粗さの影響を確認した。なお、圧力洗浄をプラトー加工の前に入れ、その圧力を18MPaとした。
Figure 2016169725
Figure 2016169725
Figure 2016169725
Figure 2016169725
試験例4の結果を表10に示した。
Figure 2016169725
比較の観点から、上記試験例4と同じであるが圧力洗浄は行わないホーニング条件A1〜D1で、試験を実施し、表面粗さの影響を確認した。その試験結果を表11に示した。
Figure 2016169725
表10と表11を比較すればわかるように、圧力洗浄を行わないものは、面粗度を小さくすると(ホーニング条件C1、D1)、エンジン試験によるボアの傷が現れたが、本発明のように圧力洗浄したものは、面粗度を小さくしても、エンジン試験によるボアの傷は見られなかった。これは、ホーニング仕上げ後の溶射表面に流体を吹き付けることによって粒子と粒子の間の隙間に流体が流れ込み、弱体粒子を強制的に浮かび上がらせて、脱落させた結果であり、そのために、エンジン試験時に、微細粒子の脱落現象が起こることがなく、ボアに傷が生じないこととなる。また、ボア傷が生じないことで、面粗さの小さなボアであっても、フリクション効果が顕著に表れるようになったことがわかる。
これにより、本発明による溶射シリンダブロックの製造方法、すなわち、ホーニング加工後の皮膜面に流体を8〜38MPaにて供給する工程を含めるようにすることにより、ボア内面の低フリクション化と、オイルの消費量の低減の双方を同時に満足するシリンダブロックが得られることがわかる。
なお、上記の試験例では、流体として水を用いたが、流体としては、油やエアーを用いることもできる。
1…金属材料の溶射皮膜、
2…ホーニング砥石、
10…シリンダブロック、
11…ボア、
20…基台、
30…ボア内面回転式処理装置、
31…ノズルヘッド、
32…駆動部、
33…高圧ポンプ、
34…洗浄用ポンプ、
a、a1〜a4…溶射皮膜を構成する微粒子、
a12、a4…強固には一体化していない微粒子(弱体粒子)
b…気孔、
c…微粒子と微粒子の界面に生じた亀裂

Claims (2)

  1. ボア内面に溶射皮膜による摺動面を有する溶射シリンダブロックの製造方法であって、
    ボア内面に金属材料を溶射する工程と、溶射によって形成された皮膜にホーニング加工を施す工程と、ホーニング加工後の皮膜面にストレスを付与して所定の密着強度未満の金属粒子である弱体粒子を脱落させる弱体粒子の除去工程と、を少なくとも含むことを特徴とする溶射シリンダブロックの製造方法。
  2. 前記弱体粒子の除去工程がホーニング加工後の皮膜面に流体を8〜38MPaにて供給する工程であることを特徴とする請求項1に記載の溶射シリンダブロックの製造方法。
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