JP2010013993A - シリンダボア面加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ショットブラスを要せずに、ボア面の上死点を含む上側領域と下死点を含む下側領域に、それらの間の中間領域と異なる窪みを形成するためのボア面加工方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るシリンダボア面の加工方法は、シリンダブロックのシリンダ孔の内周面に多数の窪みが分布する表層を形成する表層形成工程と、表層が形成された内周面のうち上死点を含む上側領域と上側領域から離間しており下死点を含む下側領域に高圧の液体を噴射する粗面化工程を含んでいる。表層形成工程によって予め多数の窪みを形成しておき、その窪みに高圧の水を噴射することによって、窪みの周縁が集中的に削られて窪みが拡径される。この方法は、非機械加工による窪みの形成とウォータージェットによって、ショットブラストのように微粒子を用いることなく、ボア面の上側領域と下側領域に中間領域とは異なる窪みを形成することができる。
【選択図】図1
【解決手段】本発明に係るシリンダボア面の加工方法は、シリンダブロックのシリンダ孔の内周面に多数の窪みが分布する表層を形成する表層形成工程と、表層が形成された内周面のうち上死点を含む上側領域と上側領域から離間しており下死点を含む下側領域に高圧の液体を噴射する粗面化工程を含んでいる。表層形成工程によって予め多数の窪みを形成しておき、その窪みに高圧の水を噴射することによって、窪みの周縁が集中的に削られて窪みが拡径される。この方法は、非機械加工による窪みの形成とウォータージェットによって、ショットブラストのように微粒子を用いることなく、ボア面の上側領域と下側領域に中間領域とは異なる窪みを形成することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、エンジンのシリンダボア面の加工方法に関する。特に、シリンダボア面における潤滑剤の保持性を向上させることのできるシリンダボア面加工方法に関する。
ピストンが摺動するシリンダボア面には、潤滑剤が切れないように意図的に粗面化する表面加工が施される。近年の研究によると、ボア面のうち、上死点を含む上側領域と下死点を含む下側領域における粗面の形態を、それら2つの領域に挟まれた中間領域における粗面の形態に対して異ならせることが好ましいことが報告されている。
例えば、上側領域と下側領域を、中間領域よりも大きいクロスハッチ角度にてホーニング加工する技術が知られている。また特許文献1には、上側領域と下側領域には円形状の窪みを多数形成するとともに、中間領域には矩形状の窪みを多数形成する技術が開示されている。特許文献1によれば、ショットブラストによって円形状の窪みを形成する。
例えば、上側領域と下側領域を、中間領域よりも大きいクロスハッチ角度にてホーニング加工する技術が知られている。また特許文献1には、上側領域と下側領域には円形状の窪みを多数形成するとともに、中間領域には矩形状の窪みを多数形成する技術が開示されている。特許文献1によれば、ショットブラストによって円形状の窪みを形成する。
ボア面に窪みを形成する場合、ショットブラストでは、セラミックなどの微粒子をボア面に噴射する。従って、ショットブラストを採用する場合、ショットブラストを施した後に微粒子を除去するための洗浄工程が必要となる。
本願発明は、微粒子除去のための洗浄工程を要することなく、ボア面の上側領域と下側領域に、中間領域とは異なる窪みを形成することのできる加工方法を提供する。
本願発明は、微粒子除去のための洗浄工程を要することなく、ボア面の上側領域と下側領域に、中間領域とは異なる窪みを形成することのできる加工方法を提供する。
ボア面に多数の窪みを形成する方法として、ショットブラストによって窪みを形成する機械加工の他に、シリンダ孔の内周面に多数の窪みが分布する表層を形成する方法がある。例えば、Fe−1%C(重量比1%の炭素を含有する鉄)の鉄基材料をシリンダ孔の内周面に溶射して多数の窪みを有する表層(金属皮膜)を形成する方法や、多数の窪みが形成されたシリンダライナをシリンダ孔に焼結する方法がある。これらの方法では、シリンダ孔の内面にいわゆる巣穴を意図的に形成することによって、表面に露出した巣穴が窪みとなって現れる。ただし、それらの方法では、ボア面の全体に一様な窪みを形成することはできるが、中間領域の窪みと異なる窪みを上側領域と下側領域に形成することはできない。そこで本発明は、ライナ焼結あるいは溶射によってボア面に一様な窪みを形成しておき、その後に上側領域と下側領域に高圧の水を噴射することによって、前もって形成された窪みを拡径する。高圧の水を噴射することによって金属表面を粗面化する方法はウォータージェットとして知られているが、平坦な金属表面に高圧の水を噴射すると、表面の表面粗さが大きくなるのであって、多数の窪みが形成されるわけではない。予め多数の窪みを形成しておき、その窪みに高圧の水を噴射することによって、窪みの周縁が集中的に削られて窪みが拡径される。本発明は、非機械加工(ライナ焼結或いは溶射)による窪みの形成とウォータージェットによって、ショットブラストのように微粒子を用いることなく、上側領域と下側領域に中間領域とは異なる窪みを形成することを可能にする。
本発明に係るシリンダボア面の加工方法は、少なくとも次の2つの工程を含んでいればよい。即ち、シリンダブロックのシリンダ孔の内周面に、多数の窪みが分布する表層を形成する表層形成工程と、表層が形成された内周面のうち、上死点を含む上側領域と、上側領域から離間しており下死点を含む下側領域に高圧の液体を噴射する粗面化工程である。なお、粗面化工程における「粗面化」とは、表面粗さを単に拡大することを意味するのではなく、前もって形成された窪みを拡径することを意味する。噴射する液体は典型的には水でよい。
また前述したように、表層形成工程は、内面に窪みが形成されたライナをシリンダ孔の内周面に焼結する方法と、シリンダブロックの金属材料と異なる金属をシリンダ孔の内周面に溶射して皮膜を形成する方法のいずれでもよい。後者は、ライナを製造する工程が不要であるため低コストである。
また前述したように、表層形成工程は、内面に窪みが形成されたライナをシリンダ孔の内周面に焼結する方法と、シリンダブロックの金属材料と異なる金属をシリンダ孔の内周面に溶射して皮膜を形成する方法のいずれでもよい。後者は、ライナを製造する工程が不要であるため低コストである。
溶射によって表層を形成する場合、表層形成工程に先立って、上側領域と下側領域とそれらに挟まれた中間領域に高圧の液体を噴射する下地処理工程を含んでいることが好ましい。前述したように、平坦面にウォータージェットを施すと、金属表面の表面粗さが増大する。溶射前にシリンダ孔の内周面の粗さを増大しておくことによって、溶射によって形成される表層の密着性を向上させることができる。さらにこのとき、ウォータージェット装置を下地処理工程と粗面化工程で共用することができるので、ボア面の加工コストを増大することがない。
下地処理工程では金属皮膜を密着させやすくするために高圧の液体を噴射する。他方、粗面化工程では、前もって形成された窪みを拡径するために高圧の水を噴射する。それぞれの工程の目的に適した水噴射条件で水を噴射することが好ましい。即ち、下地処理工程における液体噴射条件と粗面化工程における液体噴射条件が異なることが好ましい。異ならせる液体噴射条件は、液体の圧力とシリンダ軸線方向のノズル移動速度のいずれかであればよい。
ボア面の中間領域には、ホーニング処理を施してハッチあるいはクロスハッチを形成しておくことが潤滑上好ましい場合がある。なお、ホーニングにおいて「ハッチ」とは溝を意味する。通常のホーニング処理の場合、ハッチ(溝)の縁にバリが残る可能性がある。バリが残っていると、ピストンリングとボア面の間の潤滑剤が切れてボア面に引っかき傷が生じる可能性がある。潤滑剤切れによって生じる引っかき傷はスカッフと呼ばれる。バリのないハッチやクロスハッチを形成するには、プラトーホーニングと呼ばれる方法があるがコストが嵩む。そこで、中間領域にハッチを形成する中間ホーニング工程は、表層形成工程と粗面化工程の間に実施されることが好ましい。中間ホーニングによってハッチ(溝)にバリが発生した場合でも、少なくとも中間領域と上側領域の境界、及び中間領域と下側領域の境界のバリを、その後の高圧液体の噴射で除去することができる。
粗面化工程の後に、上側領域と下側領域と中間領域をプラトーホーニングする後ホーニング工程を含むことも好適である。プラトーホーニングは、溝と溝の間を平面仕上げするホーニングを意味する。プラトーホーニングによって、バリを除去し、ハッチの溝と窪み以外の表面の平面度を向上させることができる。
本発明によれば、微粒子が残るショットブラストによらずに、上死点を含む上側領域と下死点を含む下側領域に、それらの領域に挟まれた中間領域とは異なる窪みを形成したボア面を実現することができる。
実施例における表面処理技術の特徴を以下に列記する。
(1)粗面化工程において噴射する液体(水)の圧力は40MPa〜100MPaの範囲が好ましい。粗面化工程では、ボア面全体には凹凸を形成することなく、前もって形成された窪みの周縁を集中的に削ることが目的である。噴射する水の圧力が100MPaを超えるとボア面全体に微小な凹凸ができ易く、また圧力が40MPaを下回ると前もって形成された窪みを拡径し難い。
(2)下地処理工程において噴射する液体(水)の圧力は200MPa〜350MPaの範囲が好ましい。この範囲で液体を噴射することによって、シリンダ孔内面(溶射前のボア面)の表面粗さを増大することができる。
(1)粗面化工程において噴射する液体(水)の圧力は40MPa〜100MPaの範囲が好ましい。粗面化工程では、ボア面全体には凹凸を形成することなく、前もって形成された窪みの周縁を集中的に削ることが目的である。噴射する水の圧力が100MPaを超えるとボア面全体に微小な凹凸ができ易く、また圧力が40MPaを下回ると前もって形成された窪みを拡径し難い。
(2)下地処理工程において噴射する液体(水)の圧力は200MPa〜350MPaの範囲が好ましい。この範囲で液体を噴射することによって、シリンダ孔内面(溶射前のボア面)の表面粗さを増大することができる。
図1に、シリンダボア面の加工工程のフローチャートを示す。この工程の対象となるシリンダブロックは、鋳造により形成される。シリンダブロックは、アルミニウム合金でできている。鋳造工程では、シリンダ孔が形成されていない。まず、鋳造されたシリンダブロックに、円筒状の孔(シリンダ孔)を形成する(S2)。シリンダ孔はボーリングによって形成する。シリンダ孔を形成する工程をボーリング工程と称する。
次に、下地処理工程を実施する(S4)。下地処理工程は、シリンダ孔の内面全体に高圧の水を噴射して表面粗さを増大する表面処理工程である。高圧の水を噴射する処理はウォータージェットと呼ばれる。
図2に、下地処理工程の概略図を示す。シリンダブロック100には、複数のシリンダ孔102がボーリング工程により形成されている。
下地処理工程で用いるウォータージェット装置10について説明する。図2では、ウォータージェット装置10の一部の図示を省略している。ウォータージェット装置10は、上下動する支持プレート12を備えている。支持プレート12からシャフト16が下方に伸びている。シャフト16は、モータ14の回転軸に連結されており、軸線の周りに回転することができる。シャフト16の下端に、ノズルボディ18が固定されている。ノズルボディ18は、モータ14によってシャフト16の軸線周りに回転することができるとともに、支持プレート12によって上下動することができる。
ノズルボディ18の側面に複数のノズル20が設けられている。ノズル20には多数の微小孔が形成されており、夫々の微小孔の内径は0.30mm〜0.44mm程度である。ノズル20の微小孔はノズルボディ18の半径方向外側を向いている。
ウォータージェット装置10は、高圧ポンプ(不図示)を備えている。また、シャフト16の内部には、高圧ポンプからノズル20へ高圧の水を導く導管(不図示)が配置されている。高圧ポンプを作動させることによって、ノズル20の微小孔から高圧の水をシャワー状に噴射することができる。
下地処理工程で用いるウォータージェット装置10について説明する。図2では、ウォータージェット装置10の一部の図示を省略している。ウォータージェット装置10は、上下動する支持プレート12を備えている。支持プレート12からシャフト16が下方に伸びている。シャフト16は、モータ14の回転軸に連結されており、軸線の周りに回転することができる。シャフト16の下端に、ノズルボディ18が固定されている。ノズルボディ18は、モータ14によってシャフト16の軸線周りに回転することができるとともに、支持プレート12によって上下動することができる。
ノズルボディ18の側面に複数のノズル20が設けられている。ノズル20には多数の微小孔が形成されており、夫々の微小孔の内径は0.30mm〜0.44mm程度である。ノズル20の微小孔はノズルボディ18の半径方向外側を向いている。
ウォータージェット装置10は、高圧ポンプ(不図示)を備えている。また、シャフト16の内部には、高圧ポンプからノズル20へ高圧の水を導く導管(不図示)が配置されている。高圧ポンプを作動させることによって、ノズル20の微小孔から高圧の水をシャワー状に噴射することができる。
下地処理工程では、シャフト16の軸線とシリンダ孔102の軸線が同軸となるようにシリンダブロック100を配置する。次いでウォータージェット装置10が、ノズルボディ18を回転させながらシリンダ孔102の軸線に沿って上下動させる。このとき、ノズル20の微小孔から高圧の水をシャワー状に噴射する。シャフト16の軸線に沿った方向のノズルボディ18の移動速度は約6mm/秒である。また、噴射される水の圧力は200MPa〜350MPaである。ノズル20から噴射される水の量は、2.0〜4.0リットル/分程度である。下地処理工程については、例えば特開2003−117502号公報に詳しく開示されているので参照されたい。
ウォータージェット装置10は、シリンダ孔102の内面104に均等に高圧(200MPa〜350MPa)の水を噴射する。高圧の水をシャワー状に噴射することによって、内面104は粗面化され、微小な凹凸が形成される。高圧の水を噴射して微細な凹凸を形成したのち、ノズル20から空気を噴射して内面104を乾燥させる。
ウォータージェット装置10は、シリンダ孔102の内面104に均等に高圧(200MPa〜350MPa)の水を噴射する。高圧の水をシャワー状に噴射することによって、内面104は粗面化され、微小な凹凸が形成される。高圧の水を噴射して微細な凹凸を形成したのち、ノズル20から空気を噴射して内面104を乾燥させる。
下地処理工程(S4)に続いて、表層形成工程を実施する(S6)。表層形成工程は、シリンダ孔の内面104に金属を溶射して皮膜を形成する処理である。表層形成工程では、Fe−1%Cの鉄基材料を内面104にプラズマ溶射して皮膜を形成する。下地処理工程によって内面104が粗面化されているので、皮膜が良く内面104に密着する。この工程よって形成される皮膜には、多数の空隙(巣穴)が発生する。表面に露出した巣穴が窪みとして現れる。巣穴が表面に現れたものであるので、窪みの形状は様々である。なお、以下では、表層形成後のシリンダ内面をボア面104aと称する。
皮膜に形成される窪みはその直径が、最大で概ね50μm以下である。窪みの形状は様々であるので、ここでいう直径の最大値は、窪みの差し渡しの長さの最大値を意味する。また、ボア面104aの全体の面積に対する窪みの面積の比率は概ね3%である。
皮膜に形成される窪みはその直径が、最大で概ね50μm以下である。窪みの形状は様々であるので、ここでいう直径の最大値は、窪みの差し渡しの長さの最大値を意味する。また、ボア面104aの全体の面積に対する窪みの面積の比率は概ね3%である。
表層形成工程に続いて、ボア面104aに中間ホーニング工程を2回実施する(S8及びS10)。ステップS8で粗目のハッチ(溝)を形成する荒ホーニング(中間ホーニング工程1)を実施したのち、荒ホーニングよりもハッチ目の細かい仕上げホーニング(中間ホーニング工程2)を実施する(S10)。2種類のホーニングを実施することで、潤滑剤の保持能力の高いホーニング面を形成することができる。中間ホーニングは、ボア面104aの全面に施される。2回のホーニング工程によってクロスハッチを形成してもよい。中間ホーニングは、ボア面104aの上側領域Aと下側領域Bに挟まれた中間領域Cのみに施してもよいし、上側領域A、下側領域B、及び中間領域Cの全てに施しても良い。上側領域A、下側領域B、及び中間領域Cについては後述する。
中間ホーニング工程に続いて、粗面化工程を実施する(S12)。この粗面化工程では、下地処理工程で用いたウォータージェット装置10を再び用いる。
粗面化処理では、ボア面104aの全体に高圧の水を噴射するのではなく、上死点を含む上側領域と下死点を含む下側領域のみに水を噴射し、上側領域と下側領域の間の中間領域には水を噴射しない。図3に、ボア面104aを展開した図を示す。図3において符号Aが上側領域を示し、符号Bが下側領域を示し、符号Cが中間領域を示す。
前述した表層形成工程によって、ボア面104aには多数の窪みが形成されている。粗面化工程では、表層形成工程によって形成された窪みに高圧の水を噴射することによって、窪みを拡径する。粗面化工程では、窪みを除くボア面104aの表面粗さを増大しないように、この工程における水圧を下地処理工程における水圧よりも低く設定する。他方、水圧が低すぎても窪みを拡径できない。発明者らの検討によると、粗面化工程における水圧は40MPa〜100MPaの間であることが好ましいことが判明した。水圧をこの範囲に設定すると、周縁が削られて窪みは拡径するが、窪み以外の平面の表面粗さが増大することを抑制できる。窪み以外のボア面104aの平面度を損なうことなく、窪みを拡径することができる。
またこのとき、シャフト16の軸線に沿った方向のノズルボディ18の移動速度は約8mm/秒である。
上記の範囲で水を噴射すると、表層形成工程によって形成された最大概ね10μm以下の直径の窪みが、最大概ね100μm以下に拡径される。また、ボア面104aの全体の面積に対する窪みの面積の比率は概ね5%〜7%程度に増加する。他方、この範囲の水圧の水を噴射しても、窪み以外の平面部に凹凸が形成され難い。
また、粗面化工程で高圧の水を噴射することによって、少なくとも上側領域と中間領域の境界、及び、下側領域と中間領域の境界において中間ホーニングによってハッチを形成した際に生じるハッチの縁のバリが除去される。
粗面化処理では、ボア面104aの全体に高圧の水を噴射するのではなく、上死点を含む上側領域と下死点を含む下側領域のみに水を噴射し、上側領域と下側領域の間の中間領域には水を噴射しない。図3に、ボア面104aを展開した図を示す。図3において符号Aが上側領域を示し、符号Bが下側領域を示し、符号Cが中間領域を示す。
前述した表層形成工程によって、ボア面104aには多数の窪みが形成されている。粗面化工程では、表層形成工程によって形成された窪みに高圧の水を噴射することによって、窪みを拡径する。粗面化工程では、窪みを除くボア面104aの表面粗さを増大しないように、この工程における水圧を下地処理工程における水圧よりも低く設定する。他方、水圧が低すぎても窪みを拡径できない。発明者らの検討によると、粗面化工程における水圧は40MPa〜100MPaの間であることが好ましいことが判明した。水圧をこの範囲に設定すると、周縁が削られて窪みは拡径するが、窪み以外の平面の表面粗さが増大することを抑制できる。窪み以外のボア面104aの平面度を損なうことなく、窪みを拡径することができる。
またこのとき、シャフト16の軸線に沿った方向のノズルボディ18の移動速度は約8mm/秒である。
上記の範囲で水を噴射すると、表層形成工程によって形成された最大概ね10μm以下の直径の窪みが、最大概ね100μm以下に拡径される。また、ボア面104aの全体の面積に対する窪みの面積の比率は概ね5%〜7%程度に増加する。他方、この範囲の水圧の水を噴射しても、窪み以外の平面部に凹凸が形成され難い。
また、粗面化工程で高圧の水を噴射することによって、少なくとも上側領域と中間領域の境界、及び、下側領域と中間領域の境界において中間ホーニングによってハッチを形成した際に生じるハッチの縁のバリが除去される。
最後に、最終ホーニング工程を実施する(S14)。このホーニング処理は、表面に平面を残すプラトーホーニング方法が採用される。最終ホーニングは、ボア面104aの全面、即ち、図3に示す上側領域A、下側領域B、及び、中間領域Cの全てに対して実施される。最終ホーニング工程により、ハッチと窪みを除くボア面104aが高精度の平面に仕上がる。
上記の加工方法によって、ショットブラストを要することなく、上死点を含む上側領域Aと、上側領域から離間しており下死点を含む下側領域Bに、中間領域Cよりも径の大きい多数の窪みが形成されたボア面104aが完成する。
粗面化工程に先立って形成される窪みは、表層形成時に巣穴が露出したものであるので、その形状は均一ではなくランダムな形状をしている。粗面化工程では、ランダムな窪みの夫々が拡径されるので、最終的にボア面104aに現れる窪みもランダムな形状をなしている。他方、上側領域Aと下側領域Bでは、シリンダの摺動速度が大きく変化する。即ち、上側領域Aと下側領域Bではシリンダの摺動条件が一定でない。上側領域Aと下側領域Bにランダムな形状の窪みを形成することによって、摺動条件の変化に伴う潤滑剤保持性能の変化を抑制することができる。
上記の加工方法では、表層形成工程においてプラズマ溶射によって多数の窪みが形成された表層をシリンダ内面104に形成した。溶射の代わりに、ライナ焼結によって表層を形成してもよい。その場合、内側面に多数の窪みが形成されているライナをシリンダ孔内面に焼結する。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
10:ウォータージェット装置
12:支持プレート
14:モータ
16:シャフト
18:ノズルボディ
20:ノズル
100:シリンダブロック
102:シリンダ孔
104:シリンダ孔の内面
104a:ボア面
12:支持プレート
14:モータ
16:シャフト
18:ノズルボディ
20:ノズル
100:シリンダブロック
102:シリンダ孔
104:シリンダ孔の内面
104a:ボア面
Claims (6)
- エンジンのシリンダボア面の加工方法であり、
シリンダブロックのシリンダ孔の内周面に、多数の窪みが分布する表層を形成する表層形成工程と、
表層が形成された内周面のうち、上死点を含む上側領域と、上側領域から離間しており下死点を含む下側領域に高圧の液体を噴射する粗面化工程と、
を含むことを特徴とするシリンダボア面加工方法。 - 前記表層形成工程は、シリンダブロックの金属材料と異なる金属をシリンダ孔の内周面に溶射して表層を形成することを特徴とする請求項1に記載のシリンダボア面加工方法。
- 前記表層形成工程に先立って、上側領域と下側領域とそれらに挟まれた中間領域に高圧の液体を噴射する下地処理工程を含むことを特徴とする請求項2に記載のシリンダボア面加工方法。
- 前記下地処理工程における液体噴射条件と前記粗面化工程における液体噴射条件が異なることを特徴とする請求項3に記載のシリンダボア面加工方法。
- 前記表層形成工程と前記粗面化工程の間に、中間領域をホーニングする中間ホーニング工程を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシリンダボア面形成方法。
- 前記粗面化工程の後に、上側領域と下側領域と中間領域をプラトーホーニングする後ホーニング工程を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシリンダボア面加工方法。
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JP2016169725A (ja) * | 2015-03-09 | 2016-09-23 | トヨタ自動車株式会社 | 溶射シリンダブロックの製造方法 |
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2008
- 2008-07-02 JP JP2008173786A patent/JP2010013993A/ja active Pending
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