以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について説明する。図1は本発明の実施例に係る建設機械としてのショベルの構成例を示す図である。図1のショベルはクローラ式の下部走行体1の上に旋回機構2を備える。また、旋回機構2は上部旋回体3をX軸周りに旋回自在に搭載する。
また、上部旋回体3は前方中央部にアタッチメントの一例である掘削アタッチメントを備える。掘削アタッチメントは、ブーム4、アーム5、及びバケット6を含み、且つ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9を含む。
姿勢検出装置M1は、ブーム角度センサ、アーム角度センサ、バケット角度センサ、及び車体傾斜センサを含む。ブーム角度センサは、ブーム角度を取得するセンサであり、例えば、ブームフートピンの回転角度を検出する回転角度センサ、ブームシリンダ7のストローク量を検出するストロークセンサ、ブーム4の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。アーム角度センサは、アーム角度を取得するセンサであり、例えば、アーム連結ピンの回転角度を検出する回転角度センサ、アームシリンダ8のストローク量を検出するストロークセンサ、アーム5の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。バケット角度センサは、バケット角度を取得するセンサであり、例えば、バケット連結ピンの回転角度を検出する回転角度センサ、バケットシリンダ9のストローク量を検出するストロークセンサ、バケット6の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。車体傾斜センサは、機体傾斜角度を取得するセンサであり、例えば2軸傾斜(加速度)センサ等を含む。
図2は、図1のショベルに搭載される油圧システム100の構成例を示す回路図である。油圧システム100は、エンジン、電動モータ等の駆動源(図示せず。)によって駆動される油圧ポンプ14L、14Rを有する。以下では、油圧ポンプ14L、14Rを集合的に「油圧ポンプ14」と称する場合がある。左右一対で構成される他の構成要素についても同様である。油圧ポンプ14は、1回転当たりの押し退け容積(cc/rev)を可変とする可変容量式の油圧ポンプである。また、油圧ポンプ14Lは、制御弁171、173、175、及び177を連通するセンターバイパス管路50Lを経て作動油タンク22まで作動油を循環させる。同様に、油圧ポンプ14Rは、制御弁170、172、174、176、及び178を連通するセンターバイパス管路50Rを経て作動油タンク22まで作動油を循環させる。
制御弁170は、走行直進弁としてのスプール弁である。本実施例では、制御弁170は、油圧ポンプ14Lが吐出する作動油で走行用油圧モータ42L、42Rの双方を作動させるモードと、油圧ポンプ14Lが吐出する作動油で走行用油圧モータ42Lを作動させ、且つ、油圧ポンプ14Rが吐出する作動油で走行用油圧モータ42Rを作動させるモードとを切り替える。
制御弁171は、油圧ポンプ14Lが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしての走行用油圧モータ42Lに供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。
制御弁172は、油圧ポンプ14Rが吐出する作動油を走行用油圧モータ42Rに供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。
制御弁173は、油圧ポンプ14Lが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしての旋回用油圧モータ21に供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。
制御弁174は、油圧ポンプ14Rが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしてのバケットシリンダ9へ供給し、また、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンク22へ排出するためのスプール弁である。
制御弁175、176はそれぞれ、油圧ポンプ14L、14Rが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7へ供給し、また、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンク22へ排出するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。具体的には、制御弁176は、操作装置としてのブーム操作レバーが操作された場合に、油圧ポンプ14Rからの作動油がブームシリンダ7に供給されるようにする。また、制御弁175は、ブーム操作レバーが所定のレバー操作量以上で操作された場合に、油圧ポンプ14Lからの作動油が追加的にブームシリンダ7に供給されるようにする。
制御弁177、178はそれぞれ、油圧ポンプ14L、14Rが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしてのアームシリンダ8へ供給し、また、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンク22へ排出するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。具体的には、制御弁177は、操作装置としてのアーム操作レバーが操作された場合に、油圧ポンプ14Lからの作動油がアームシリンダ8に供給されるようにする。また、制御弁178は、アーム操作レバーが所定のレバー操作量以上で操作された場合に、油圧ポンプ14Rからの作動油が追加的にアームシリンダ8に供給されるようにする。
センターバイパス管路50L、50Rは、それぞれ、最も下流にある制御弁177、178と作動油タンク22との間にネガティブコントロール絞り20L、20Rを備える。以下では、ネガティブコントロールを「ネガコン」と略称する。ネガコン絞り20L、20Rは、油圧ポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れを制限することにより、ネガコン絞り20L、20Rの上流でネガコン圧を発生させる。
リリーフ弁19L、19Rは、ネガコン圧を所定のリリーフ圧以下に制限する弁である。本実施例では、リリーフ弁19L、19Rのそれぞれは、センターバイパス管路50L、50Rにおいてネガコン絞り20L、20Rに並列に接続される。
圧力センサS1、S2は、ネガコン絞り20L、20Rの上流で発生したネガコン圧を検出し、検出した値を電気的なネガコン圧信号としてコントローラ30に対して出力する。圧力センサS3、S4は、油圧ポンプ14L、14Rの吐出圧を検出し、検出した値を電気的な吐出圧信号としてコントローラ30に対して出力する。
コントローラ30は、油圧システム100を制御する機能要素であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non Volatile RAM)等を備えたコンピュータである。
本実施例では、コントローラ30は、パイロット圧センサの出力に基づいて各種操作装置の操作内容を電気的に検出する。パイロット圧センサは、操作内容検出部の一例であり、アーム操作レバー、ブーム操作レバー等の各種操作装置を操作した場合に発生するパイロット圧を測定する。また、各種操作装置の操作内容は、例えば、レバー操作の有無、レバー操作方向、レバー操作量等である。なお、操作内容検出部は、各種操作レバーの傾きを検出する傾きセンサ等、パイロット圧センサ以外のセンサを用いて構成されてもよい。
また、コントローラ30は、各種操作装置の操作内容に応じて電磁弁55L、55R等を動作させる各種機能要素に対応するプログラムをCPUに実行させる。
電磁弁55L、55Rは、コントローラ30が出力する指令に応じて動作する弁である。本実施例では、電磁弁55L、55Rは、コントローラ30が出力する電流指令に応じてコントロールポンプ15から吐出量制御部61L、61Rの受圧室612L、612Rに導入される制御圧を調整する電磁減圧弁である。
ポンプレギュレータ40Lは、油圧ポンプ14Lの吐出量を制御する駆動機構であり、主に、傾転アクチュエータ41L、スプール弁機構60L、吐出量制御部61L、及び、フィードバックレバー62Lを含む。
傾転アクチュエータ41Lは、油圧ポンプ14Lの押し退け容積(ポンプ容量)を変化させるための斜板(ヨーク)を傾転駆動する機能要素である。具体的には、傾転アクチュエータ41Lは、一端に大径受圧部PR1を有すると共に他端に小径受圧部PR2を有する作動ピストン410Lと、大径受圧部PR1に対応する受圧室411Lと、小径受圧部PR2に対応する受圧室412Lとを含む。受圧室411Lにはスプール弁600Lを介して油圧ポンプ14Lの吐出圧が導入され、或いは、受圧室411Lからスプール弁600Lを介して作動油が排出される。また、受圧室412Lには油圧ポンプ14Lの吐出圧が導入される。作動ピストン410Lは、受圧室411Lに作動油が導入されて受圧室412L側に変位すると油圧ポンプ14Lの斜板(ヨーク)を小流量側に傾転駆動する。また、作動ピストン410Lは、受圧室411Lから作動油が排出されて受圧室411L側に変位すると油圧ポンプ14Lの斜板(ヨーク)を大流量側に傾転駆動する。
スプール弁機構60Lは、傾転アクチュエータ41Lに作動油の給排を行うための機能要素であり、スプール弁600L及びばね601Lを含む。スプール弁600Lは、油圧ポンプ14Lの吐出圧が導入される第一ポート、作動油タンク22に連通する第二ポート、及び受圧室411Lに連通する出力ポートを有する。また、スプール弁600Lは、第一ポートと出力ポートとを連通する第一位置、第二ポートと出力ポートとを連通する第二位置、又は第一ポート及び第二ポートの何れをも出力ポートに連通しない中立位置に選択的に切り替えられる。ばね601Lは、スプール弁600Lを第二位置に変位させる方向に作用する力を付与する。
吐出量制御部61Lは、スプール弁600Lを変位させるための機能要素である。具体的には、吐出量制御部61Lは、サーボピストン610L、ばね611L、及び受圧室612Lを含む。サーボピストン610Lは、電磁弁55Lが生成する制御圧に応じて、スプール弁600Lを第一位置に変位させる方向に移動する。ばね611Lは、電磁弁55Lが生成する制御圧に抗して、サーボピストン610Lを復帰させる方向に作用する力を付与する。受圧室612Lは、サーボピストン610Lに設けられた受圧部PR3に対応し、コントロールポンプ15から電磁弁55Lを通じて作動油が導入される。
フィードバックレバー62Lは、傾転アクチュエータ41Lの変位をスプール弁600Lにフィードバックするためのリンク機構である。具体的には、フィードバックレバー62Lは、作動ピストン410Lが移動したときにその移動量を物理的にスプール弁600Lにフィードバックしてスプール弁600Lを中立位置に復帰させるようにする。
なお、上述の説明は、ポンプレギュレータ40Lに関するものであるが、ポンプレギュレータ40Rに対しても同様に適用される。
以上の構成により、ポンプレギュレータ40L、40Rは、吐出量制御部61L、61Rに導入される制御圧が大きいほど油圧ポンプ14L、14Rの吐出量を低減させる。また、ポンプレギュレータ40L、40Rは、吐出量制御部61L、61Rに導入される制御圧が小さいほど油圧ポンプ14L、14Rの吐出量を増大させる。
なお、図2は、ショベルにおける油圧アクチュエータが何れも利用されていない状態を示す。以下、この状態を「待機モード」と称する。待機モードでは、油圧ポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、センターバイパス管路50L、50Rを通ってネガコン絞り20L、20Rに至り、ネガコン絞り20L、20Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。
その結果、ポンプレギュレータ40L、40Rは、ネガコン圧信号に基づいてコントローラ30が生成する指令に応じてスプール弁600L、600Rを第一位置に変位させる。スプール弁600L、600Rは、傾転アクチュエータ41L、41Rを駆動して、油圧ポンプ14L、14Rの吐出量を低減させる。その結果、油圧ポンプ14L、14Rが吐出する作動油がセンターバイパス管路50L、50Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)が抑制される。
一方、ショベルにおける何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、油圧ポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、その油圧アクチュエータに対応する制御弁を介してその油圧アクチュエータに流れ込む。そのため、ネガコン絞り20L、20Rに至る量は減少或いは消滅し、ネガコン絞り20L、20Rの上流で発生するネガコン圧は低下する。
その結果、ポンプレギュレータ40L、40Rは、油圧ポンプ14L、14Rの吐出量を増大させ、各油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、各アクチュエータの駆動を確かなものとする。
図3は、油圧ポンプ14の吐出量(以下、「ポンプ流量」とする。)とネガコン圧との関係を示すネガコン制御線図であり、縦軸にポンプ流量を配し、横軸にネガコン圧を配する。上述の通り、実線で表されるポンプ制御線は、ネガコン圧が減少するにつれてポンプ流量が増大する傾向を示す。なお、図3は、待機モードにおけるネガコン圧とポンプ流量との関係の図示を省略するが、実際には、待機モードにおいてネガコン圧が所定圧を下回る場合、ポンプ流量は最小流量に制限される。
以下では、上述のようなネガコン圧に基づくポンプ流量の制御を「ネガコン制御」と称する。ネガコン制御により、油圧システム100は、待機モードにおいては、無駄なエネルギ消費を抑制できる。油圧ポンプ14L、14Rの吐出する作動油がセンターバイパス管路50L、50Rで発生させるポンピングロスを抑制できるためである。また、油圧システム100は、各種油圧アクチュエータを作動させる場合には、油圧ポンプ14L、14Rから必要十分な作動油を各種油圧アクチュエータに供給できる。
また、油圧システム100は、ネガコン制御と並行して馬力制御を実行する。馬力制御は、油圧ポンプ14の吸収馬力がエンジンの出力馬力を超えないよう、油圧ポンプ14の吐出圧(以下、「ポンプ吐出圧」とする。)の上昇に応じてポンプ流量を低減させる制御である。
図4は、ポンプ流量とポンプ吐出圧との関係を示す馬力制御線図(PQ線図)であり、縦軸にポンプ流量を配し、横軸にポンプ吐出圧を配する。実線で表される馬力制御線は、ポンプ吐出圧が減少するにつれてポンプ流量が増大する傾向を示す。
次に、図5を参照しながら、図1のショベルに搭載される油圧システム100の一部を構成する旋回油圧回路200について説明する。なお、図5は、旋回油圧回路200の構成例を示す概略図である。
図5に示すように、旋回油圧回路200は、主に、旋回用油圧モータ21、旋回リリーフ弁71L、71R、及びチェック弁72L、72Rを含む。
旋回用油圧モータ21は、メカニカルブレーキ80及び減速機81を含む旋回機構を介して上部旋回体3を旋回させる。本実施例では、旋回用油圧モータ21の出力トルクは、2段階のプラネタリギア機構で構成される減速機81によって増幅される。また、旋回用油圧モータ21の出力軸の回転は、複数枚のブレーキディスクと各ブレーキディスクを挟む複数枚のブレーキプレートとで構成されるメカニカルブレーキ80によって制動される。
また、旋回用油圧モータ21の第1ポート21Lは、管路70Lを介して、制御弁173の第1ポートP1に接続され、旋回用油圧モータ21の第2ポート21Rは、管路70Rを介して、制御弁173の第2ポートP2に接続される。
旋回リリーフ弁71L、71Rは、管路70L、70R内の作動油の圧力(以下、「旋回油圧回路内圧」とする。)を所定の旋回リリーフ圧以下に制限する弁である。本実施例では、旋回リリーフ弁71L、71Rは、バネ等によって旋回リリーフ圧が固定的に設定される固定リリーフ弁であってもよい。
具体的には、旋回リリーフ弁71Lは、管路70Lの旋回油圧回路内圧がクラッキング圧に達した場合に部分的開状態となり、管路70L内の作動油の、管路73を介した作動油タンク22への流出を開始させる。さらに、旋回リリーフ弁71Lは、管路70Lの旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧に達した場合に全開状態となり、旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧を過度に上回らないように管路70L内の作動油を作動油タンク22へ流出させる。同様に、旋回リリーフ弁71Rは、管路70Rの旋回油圧回路内圧がクラッキング圧に達した場合に部分的開状態となり、管路70R内の作動油の、管路73を介した作動油タンク22への流出を開始させる。さらに、旋回リリーフ弁71Rは、管路70Rの旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧に達した場合に全開状態となり、旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧を過度に上回らないように管路70R内の作動油を作動油タンク22へ流出させる。
圧力センサS7L、S7Rは、旋回油圧回路内圧を検出し、検出した値を電気的な旋回油圧回路内圧信号としてコントローラ30に対して出力する。具体的には、圧力センサS7Lは、旋回用油圧モータ21の第1ポート21Lに作動油を流入させて旋回用油圧モータ21を駆動させる場合に管路70L内の作動油の圧力を旋回油圧回路内圧として検出する。また、圧力センサS7Rは、旋回用油圧モータ21の第2ポート21Rに作動油を流入させて旋回用油圧モータ21を駆動させる場合に管路70R内の作動油の圧力を旋回油圧回路内圧として検出する。
傾転角センサS8は、油圧ポンプ14Lの斜板傾転角を検出するセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。また、旋回角速度センサS9は、上部旋回体3の旋回角速度を検出するセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
図6は、旋回油圧回路内圧と、旋回リリーフ弁71を通過する作動油の流量(以下、「旋回リリーフ流量」とする。)との関係を示す図である。
図6に示すように、旋回リリーフ流量は、旋回油圧回路内圧がクラッキング圧Pc未満の場合にゼロである。また、旋回リリーフ流量は、旋回油圧回路内圧がクラッキング圧Pc以上で且つ旋回リリーフ圧Pr未満の場合には、旋回油圧回路内圧が増大するにつれて比較的緩やかに増加する。また、旋回リリーフ流量は、旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧Pr以上の場合には、旋回油圧回路内圧が増大するにつれて比較的急激に増加する。
チェック弁72L、72Rは、管路70L、70R内の作動油の圧力が作動油タンク22の作動油の圧力(以下、「タンク圧」とする。)を下回らないようにする弁である。
具体的には、チェック弁72Lは、管路70Lの作動油が作動油タンク22へ流出するのを禁止しながら、管路70Lの旋回油圧回路内圧がタンク圧未満となった場合に開状態となり、作動油タンク22(管路73)の作動油を管路70L内に流入させる。同様に、チェック弁72Rは、管路70Rの作動油が作動油タンク22へ流出するのを禁止しながら、管路70Rの旋回油圧回路内圧がタンク圧未満となった場合に開状態となり、作動油タンク22(管路73)の作動油を管路70R内に流入させる。
メインリリーフ弁83は、油圧システム100内の作動油の圧力を所定のメインリリーフ圧以下に制限する弁である。本実施例では、メインリリーフ弁83は、バネ等によってメインリリーフ圧が固定的に設定される固定リリーフ弁である。なお、メインリリーフ圧は旋回リリーフ圧より高くなるように設定される。
本実施例では、旋回操作の有無等を含む旋回操作内容は、圧力センサS5、S6の出力に基づいて導き出される。なお、圧力センサS5、S6は、旋回操作レバー82のレバー操作量(以下、「旋回レバー操作量」とする。)に対応するパイロット圧を検出するパイロット圧センサである。また、油圧ポンプ14Lのポンプ吐出圧は、吐出圧センサとしての圧力センサS3の出力に基づいて導き出される。
例えば、旋回操作レバー82が右旋回方向に操作され、圧力センサS6が検出するパイロット圧が上昇すると、制御弁173が左方向に移動させられる。このとき、制御弁173は、第1ポートP1を通じて、油圧ポンプ14Lと旋回用油圧モータ21の第1ポート21Lとを連通させ、第2ポートP2を通じて、旋回用油圧モータ21の第2ポート21Rと作動油タンク22とを連通させる。また、制御弁173は、センターバイパス管路50Lを通ってネガコン絞り20L(図2参照。)に至る作動油の流量を低減させ或いは消失させる。その結果ネガコン圧が低下し、油圧ポンプ14Lは、図3のネガコン制御線図に示すように、そのポンプ流量を増大させる。
一方で、旋回用油圧モータ21の駆動に消費される作動油の量(以下、「旋回消費流量」とする。)は、油圧ポンプ14Lのポンプ流量より低いまま、緩やかに増加する。ショベルの上部旋回体3が大きな慣性モーメントを有するためである。このとき、油圧ポンプ14Lが吐出する作動油の少なくとも一部は旋回リリーフ弁71Lを介して作動油タンク22に排出される。そのため、油圧ポンプ14Lが生成する油圧エネルギの一部は利用されることがないまま無駄に捨てられてしまう。
そこで、コントローラ30は、この無駄に捨てられてしまう油圧エネルギを最小限に抑えながら旋回トルクを制御するために、旋回操作が行われた場合に旋回油圧回路内圧を旋回リリーフ弁71のクラッキング圧未満の所定圧に調整する処理(以下、「旋回油圧回路内圧調整処理」とする。)を実行する。本実施例では、コントローラ30は油圧ポンプ14Lの押し退け容積を増減させることで旋回油圧回路内圧をクラッキング圧未満の所定圧に調整して旋回トルクを制御する。
ここで図7を参照して旋回油圧回路内圧調整処理を実行する際に採用される制御システムの構成例について説明する。なお、図7は、制御システムの構成例を示す機能ブロック図である。
具体的には、図7の制御システムは、コントローラ30、姿勢検出部E30、押し退け容積検出部E31、旋回油圧回路内圧検出部E32、及び旋回角速度検出部E33を含む。また、コントローラ30は、モデル予測制御部34及び馬力制御部35を含む。
姿勢検出部E30は、アタッチメントの姿勢を検出する機能要素である。本実施例では、姿勢検出部E30は掘削アタッチメントの姿勢を検出する姿勢検出装置M1である。姿勢検出装置M1は、検出したブーム角度、アーム角度、バケット角度、及び機体傾斜角度に基づいてエンドアタッチメントとしてのバケット6の位置(バケット位置)Bpを取得し、その値を電気的なエンドアタッチメント位置信号としてモデル予測制御部34に対して出力する。
押し退け容積検出部E31は、油圧ポンプ14Lの押し退け容積Vdを検出する機能要素である。本実施例では、押し退け容積検出部E31は油圧ポンプ14Lの斜板傾転角を検出する傾転角センサS8である。傾転角センサS8は、検出した斜板傾転角に基づいて押し退け容積を取得し、その値を電気的な押し退け容積信号としてモデル予測制御部34に対して出力する。なお、押し退け容積検出部E31は、前回の押し退け容積指令値Vtから押し退け容積を算出し、その値を電気的な押し退け容積信号としてモデル予測制御部34に対して出力してもよい。
旋回油圧回路内圧検出部E32は旋回油圧回路内圧を検出する機能要素である。本実施例では、旋回油圧回路内圧検出部E32は旋回油圧回路内圧Pmを検出する圧力センサS7L、S7Rであり、検出した値をモデル予測制御部34に対して出力する。
旋回油圧回路内圧Pmは管路70L、70R内の作動油の圧力である。本実施例では、コントローラ30は、左旋回操作が行われた場合に圧力センサS7Rの出力を旋回油圧回路内圧Pmとして取得し、右旋回操作が行われた場合に圧力センサS7Lの出力を旋回油圧回路内圧Pmとして取得する。
旋回角速度検出部E33は旋回角速度を検出する機能要素である。本実施例では、旋回角速度検出部E33は上部旋回体3の旋回角速度ωを検出する旋回角速度センサS9である。旋回角速度センサS9は、例えばロータリエンコーダ等であり、検出した値を電気的な旋回角速度信号としてモデル予測制御部34に対して出力する。
モデル予測制御部34は、油圧ポンプ14L及び旋回用油圧モータ21を含む旋回油圧回路の挙動を予測するモデルを用いてリアルタイムで最適制御理論に基づく制御(モデル予測制御)を行う機能要素である。旋回油圧回路のモデル予測制御は、旋回油圧回路のプラントモデルを用いた制御である。また、旋回油圧回路のプラントモデルは、旋回油圧回路に対する入力から旋回油圧回路の出力を導き出せるようにするモデルである。本実施例では、モデル予測制御部34は、旋回角速度ωと、旋回油圧回路内圧Pmと、油圧ポンプ14Lの押し退け容積Vdと、目標旋回油圧回路内圧Ptと、前回の押し退け容積指令値Vtとから、有限時間内の未来における旋回油圧回路内圧の予測値を導き出すことができる。
目標旋回油圧回路内圧Ptはクラッキング圧Pc未満の圧力値であり、NVRAM等に予め記憶される。本実施例では目標旋回油圧回路内圧Ptは旋回レバー操作量に対応付けて記憶される。具体的には、目標旋回油圧回路内圧Ptは旋回レバー操作量が大きいほど大きい値となるように設定される。コントローラ30は、旋回操作レバー82が操作された場合に旋回レバー操作量に応じた目標旋回油圧回路内圧PtをNVRAMから読み出す。また、コントローラ30は、姿勢検出部E30からのバケット位置Bpに応じて目標旋回油圧回路内圧Ptを調整してもよい。
具体的には、モデル予測制御部34は、旋回油圧回路の状態を表す以下の行列方程式を用いて旋回油圧回路内圧の予測値を導き出す。なお、A、Bは、旋回油圧回路の構造的特徴を表す係数行列である。
具体的には、モデル予測制御部34は、現時点における旋回角速度ω、旋回油圧回路内圧Pm、及び押し退け容積Vdと前回の押し退け容積指令値Vtとに基づいて旋回角速度ω、旋回油圧回路内圧Pm、及び押し退け容積Vdのそれぞれの微分値を導き出す。そして、現時点における旋回角速度ωにその微分値を加算して算出対象である所定時間後の旋回角速度の予測値ω'を導き出す。旋回油圧回路内圧Pm及び押し退け容積Vdについても同様にして所定時間後の旋回油圧回路内圧の予測値Pm'及び所定時間後の押し退け容積の予測値Vd'を導き出す。
同様にして、モデル予測制御部34は、前回の押し退け容積指令値Vtを基準として設定される複数の押し退け容積指令値のそれぞれを継続的に使用した場合の所定時間後の旋回角速度、旋回油圧回路内圧、及び押し退け容積の予測値を上述の方法で導き出す。
その上で、モデル予測制御部34は、目標旋回油圧回路内圧Ptと算出対象である所定時間後の旋回油圧回路内圧の予測値との差を最小とする押し退け容積指令値Vtcを選択する。具体的には、前回の押し退け容積指令値Vtを含む複数の押し退け容積指令値のうちの1つを今回採用すべき押し退け容積指令値Vtcとして選択する。
そして、モデル予測制御部34は、選択した押し退け容積指令値Vtcを馬力制御部35に対して出力する。
馬力制御部35は、モデル予測制御部34が選択した押し退け容積指令値Vtcを用いて油圧ポンプ14Lの押し退け容積を制御する。
次に、図8を参照して旋回操作レバー82が操作されたときの旋回油圧回路内圧Pmの時間的推移について説明する。なお、図8は旋回油圧回路内圧及び旋回レバー操作量の時間的推移を示す図である。また、図8の破線はフィードバック制御システムが採用された場合の時間的推移を示し、図8の実線は図7の制御システムが採用された場合の時間的推移を示す。なお、比較対象としてのフィードバック制御システムは、目標旋回油圧回路内圧Ptと現在の旋回油圧回路内圧Pmとの偏差をゼロに近づけるように押し退け容積指令値Vtを生成し、その押し退け容積指令値Vtに応じて油圧ポンプ14Lの押し退け容積Vdを制御するシステムである。
フィードバック制御システムが採用された場合、時刻t1において旋回操作レバー82のフルレバー操作が行われると、旋回油圧回路内圧Pmは増大し始める。油圧ポンプ14Lが吐出する作動油が旋回油圧回路内に流入するためである。なお、フルレバー操作は、例えば、旋回操作レバー82の中立状態を操作量0%とし、最大操作状態を操作量100%とした場合の80%以上の操作量で操作された状態をいう。
具体的には、旋回油圧回路内圧Pmは、目標旋回油圧回路内圧Ptを超えて増加した後で時刻t2において減少に転じ、その後、目標旋回油圧回路内圧Ptを下回るまで減少した後で時刻t3において再び増加に転じる。その後、旋回油圧回路内圧Pmは、フルレバー操作が継続される間、目標旋回油圧回路内圧Ptを挟んで増減を繰り返しながら目標旋回油圧回路内圧Ptを中央値とする所定の圧力範囲内で推移する。
このように、コントローラ30は、押し退け容積指令値を増減させ、旋回リリーフ弁71のクラッキング圧Pc未満の目標旋回油圧回路内圧Ptとなるように旋回油圧回路内圧Pmをフィードバック制御で制御する。そのため、旋回油圧回路内圧Pmと旋回消費流量との積で表される旋回トルクの大きさの利用可能範囲を拡大できる。具体的には、クラッキング圧Pc以上の圧力を有する作動油を用いた場合に得られる旋回トルクよりも小さい旋回トルクを利用できるようになる。
図7の制御システムが採用された場合、時刻t1において旋回操作レバー82のフルレバー操作が行われると、フィードバック制御システムが採用された場合と同様、旋回油圧回路内圧Pmは増大し始める。油圧ポンプ14Lが吐出する作動油が旋回油圧回路内に流入するためである。
しかし、図7の制御システムが採用された場合には、フィードバック制御システムが採用された場合と異なり、旋回油圧回路内圧Pmは目標旋回油圧回路内圧Ptを大きく超えることなく時刻t10において目標旋回油圧回路内圧Ptに達する。そして、目標旋回油圧回路内圧Ptに達した後は目標旋回油圧回路内圧Ptを維持したまま推移する。モデル予測制御により旋回油圧回路内圧Pmが目標旋回油圧回路内圧Ptを超える前に押し退け容積指令値が変更されて旋回油圧回路内圧Pmの増大が予防的に抑制されるためである。また、旋回油圧回路内圧Pmが目標旋回油圧回路内圧Ptに達した後は、モデル予測制御により旋回油圧回路内圧Pmが目標旋回油圧回路内圧Ptから逸脱する前に押し退け容積指令値が変更されて旋回油圧回路内圧Pmの逸脱が予防的に抑制されるためである。
このように、コントローラ30は、押し退け容積指令値を増減させ、旋回リリーフ弁71のクラッキング圧Pc未満の目標旋回油圧回路内圧Ptとなるように旋回油圧回路内圧Pmをモデル予測制御で制御する。そのため、旋回油圧回路内圧Pmと旋回消費流量との積で表される旋回トルクの大きさの利用可能範囲を拡大できる。具体的には、クラッキング圧Pc以上の圧力を有する作動油を用いた場合に得られる旋回トルクよりも小さい旋回トルクを利用できるようになる。
また、図7の制御システムは、フィードバック制御システムに比べ、負荷変動に対する油圧ポンプ14Lの応答遅れの影響を小さくできる。そのため、旋回油圧回路内圧Pmをより安定的に目標旋回油圧回路内圧Ptで維持することで旋回トルクをより安定的に制御できる。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
例えば、上述の実施例において、コントローラ30又はモデル予測制御部34は、圧力センサS7L、S7Rの出力を旋回油圧回路内圧Pmとして採用するが、圧力センサS3の出力である油圧ポンプ14Lのポンプ吐出圧を旋回油圧回路内圧Pmとして採用してもよい。
また、上述の実施例において、モデル予測制御部34はコントローラ30に統合されたものとして説明されたがコントローラ30とは別体であってもよい。