JP2016169253A - 導電性高分子分散液及び導電性塗膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子(A1)及びポリアニオン(A2)を含む導電性複合体と、アクリルアミド基を2個以上有する多官能ビニル系化合物(B)と、分散媒(C)とを含有する。
【選択図】なし
Description
ITOを使用しない透明導電層として、導電性高分子を用いたものが知られ、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)等のπ共役系導電性高分子と、ポリスチレンスルホン酸等のポリアニオンとを含有するものが知られている。
しかし、π共役系導電性高分子とポリアニオンとからなる層は、通常、耐水性が低く、膜強度が不充分となる。
そこで、特許文献1では、単官能アクリルアミド化合物を含む導電性高分子分散液が提案され、特許文献2では、多官能アクリルアミド化合物を含む導電性高分子分散液が提案されている。単官能アクリルアミド化合物及び多官能アクリルアミド化合物は、各々、塗膜形成時に重合し、硬化して、膜強度を向上させるものである。
特許文献2に記載のように、導電性高分子分散液に多官能アクリルアミド化合物を含有させた場合には、多官能アクリルアミド化合物が水に難溶であるため、水系分散液への適用が困難であった。また、多官能アクリルアミド化合物を水に含有させるとしても、少量となるので、膜強度を向上させることができないことがあった。
本発明は、膜強度(特に耐水性)及び導電性が共に優れた導電性塗膜を容易に形成でき、また、容易に水系化できる導電性高分子分散液を提供することを目的とする。また、本発明は、膜強度及び導電性が共に優れた導電性塗膜を提供することを目的とする。
本発明の導電性高分子分散液においては、ビニル基を1つ有する単官能ビニル系化合物(D)をさらに含有することが好ましい。
本発明の導電性高分子分散液においては、重合開始剤(E)をさらに含有することが好ましい。
本発明の導電性高分子分散液においては、前記分散媒(C)の少なくとも一部が水であることが好ましい。
本発明の導電性塗膜は、膜強度及び導電性が共に優れている。
本発明の導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子(A1)及びポリアニオン(A2)を含む導電性複合体(A)と多官能ビニル系化合物(B)と分散媒(C)とを含有する。
[π共役系導電性高分子(A1)]
π共役系導電性高分子(A1)としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子(A1)の中でも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
前記π共役系導電性高分子(A1)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオン(A2)とは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子(A1)の導電性を向上させる。
ポリアニオン(A2)のアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオン(A2)の具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオン(A2)のなかでも、導電性をより高くできることから、スルホン酸基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオン(A2)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオン(A2)の質量平均分子量は2万〜100万であることが好ましく、10万〜50万であることがより好ましい。
ただし、ポリアニオン(A2)においては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子(A1)にドープせず、余剰のアニオン基を有している。この余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体(A)は水分散性を有する。
本発明における多官能ビニル系化合物(B)は、上記式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物である。該多官能ビニル系化合物(B)は、ビニル基を2個以上有するから、塗膜形成時には架橋するため、塗膜の強度を向上させることができる。多官能ビニル系化合物(B)のビニル基が3個以上であれば、三次元網目構造を形成でき、塗膜の強度をより向上させることができる。
また、多官能ビニル系化合物(B)は導電性を向上させる機能も有する。
多官能ビニル系化合物(B)は、容易に得られる点では、分子量が250以上であることが好ましい。
Raは水素原子又はアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又は無置換のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。
Raがアルキル基である場合、その炭素数は1〜8であることが好ましい。当該アルキル基は直鎖であっても分岐していてもよい。当該アルキル基として、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、2−エチルへキシルが挙げられる。
Raがアリール基である場合、その炭素数は6〜14であることが好ましい。当該アリール基として、例えば、フェニル、ナフチルが挙げられる。
Raが複素環基である場合、当該複素環は芳香族複素環でも非芳香族複素環でもよい。また、単環でも縮合環でもよい。好ましくは環構成原子に酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含むことが好ましく、5員環又は6員環であることが好ましい。当該複素環として、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、トリアジン環、インドール環、チオフェン環、フラン環、ピペラジン環、ピペリジン環、モルホリン環が挙げられる。
これらの基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基が好ましい。
上記のアリーレン基としては、フェニレン、ナフチレンが挙げられる。
L1がアルキレン基であるとき、その炭素数は1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
L1がアリーレン基であるとき、その炭素数が、6〜14であることが好ましく、6〜10であることがより好ましく、6であることが特に好ましい。当該アリーレン基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
L1はアルキレン基であることが好ましい。
(第一工程)アクリロニトリルとトリスヒドロキシメチルアミノメタンとの反応によりポリシアノ化合物を得る工程。この工程の反応は、3〜60℃で、2〜8時間行なうことが好ましい。
(第二工程)ポリシアノ化合物を、触媒存在下で水素と反応させ、還元反応によりポリアミン化合物を得る工程。この工程の反応は、20〜60℃で、5〜16時間行なうことが好ましい。
(第三工程)ポリアミン化合物とアクリル酸クロリド又はメタクリル酸クロリドとのアシル化反応により多官能アクリルアミド化合物を得る工程。この工程の反応は、3〜25℃で、1〜5時間行なうことが好ましい。なお、アシル化剤は、酸クロリドに換えてジアクリル酸無水物またはジメタクリル酸無水物を用いてもよい。なお、アシル化工程で、アクリル酸クロリドとメタクリル酸クロリドの両方を用いることで、最終生成物として同一分子内にアクリルアミド基とメタクリルアミド基とを有する化合物を得ることができる。
(第一工程)アミノアルコールの窒素原子に、ベンジル基(上記スキームのBz)、ベンジルオキシカルボニル基等による保護基導入反応により窒素保護アミノアルコール化合物を得る工程。この工程の反応は、3〜25℃で、3〜5時間行なうことが好ましい。
(第二工程)窒素保護アミノアルコール化合物のOH基に、メタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等の脱離基を導入し、スルホニル化合物を得る工程。この工程の反応は、3〜25℃で、2〜5時間行なうことが好ましい。
(第三工程)スルホニル化合物とトリスヒドロキシメチルニトロメタンとのSN2反応により、アミノアルコール付加化合物を得る工程。この工程の反応は、3〜70℃で、5〜10時間行なうことが好ましい。
(第四工程)アミノアルコール付加化合物を、触媒存在下で水素と反応させ、水素添加反応によりポリアミン化合物を得る工程。この工程の反応は、20〜60℃で、5〜16時間行なうことが好ましい。
(第五工程)ポリアミン化合物とアクリル酸クロリド又はメタクリル酸クロリドとのアシル化反応により多官能アクリルアミド化合物を得る工程。この工程の反応は、3〜25℃で、1〜5時間行なうことが好ましい。なお、アシル化剤は、酸クロリドに換えてジアクリル酸無水物又はジメタクリル酸無水物を用いてもよい。なお、アシル化工程で、アクリル酸クロリドとメタクリル酸クロリドの両方を用いることで、最終生成物として同一分子内にアクリルアミド基とメタクリルアミド基とを有する化合物を得ることができる。
l及びpは0又は1を示す。jは0〜8の整数を示す。
R2は好ましくは水素原子である。Lbは直鎖であっても分岐を有してもよい。Lbの炭素数は2〜5であることが好ましく、3〜4であることがさらに好ましい。
l及びpは1であることが好ましい。jは2〜6の整数であることが好ましく、より好ましくは2〜4の整数である。
・合成方法1
アミン化合物と酸ハライド化合物とを、塩基存在下で反応させる方法。
・合成方法2
アミン化合物カルボン酸化合物及び縮合剤を、塩基存在下で反応させる方法。
・合成方法3
アミン化合物とエステル化合物とを加熱し、エステル・アミド交換反応により合成する方法。
これらの反応は、新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応(V)11.6 アミノ基の保護 p.2555〜2569に記載されている。また、出発原料とするアミン化合物として市販品を用いてもよい。
R3は好ましくは水素原子である。また、tは1〜5の整数であることが好ましく、2〜4の整数であることがより好ましい。CtH2tで表される炭素鎖は直鎖でも分岐鎖でもよいが、直鎖であることがより好ましい。
uは0〜3の整数であることが好ましく、より好ましくは0〜2の整数であり、特に好ましくは0又は1である。
分散媒(C)は、水系分散媒又は有機溶剤系分散媒のいずれであってもよいが、前記多官能ビニル系化合物(B)は水溶性を有するため、水系分散媒とすることが好ましい。
水系分散媒は、少なくとも一部が水であり、具体的には、水、又は、水と水溶性有機溶媒との混合物である。水系分散媒における水の含有割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
水溶性有機溶媒としては、溶解度パラメータが10以上の溶剤が挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の窒素原子含有極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール溶媒、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価脂肪族アルコール溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル溶媒、ジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル溶媒、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよい。このうち、安定性の観点から、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びジメチルスルホキシドからなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
本発明の導電性高分子分散液は、塗膜の形成性を向上させるために、単官能ビニル系化合物(D)を含有してもよい。本発明における単官能ビニル系化合物(D)は、ビニル基を1つ有する化合物である。
単官能ビニル系化合物(D)としては、(メタ)アクリルアミド系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系化合物、スチレン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、前記多官能ビニル系化合物(B)との反応性の点から、(メタ)アクリルアミド系化合物が好ましく、式(5)で表される化合物がより好ましい。
単官能ビニル系化合物(D)の含有割合は、導電性複合体(A)100質量部に対して10〜10000質量部であることが好ましく、100〜2000質量部であることがより好ましい。単官能ビニル系化合物(D)の含有割合が前記下限値以上であれば、導電性塗膜をより形成しやすくなる。しかし、単官能ビニル系化合物(D)の含有割合が前記上限値を超えると、導電性塗膜の耐水性が低下するおそれがある。
重合開始剤(E)は、加熱又は光照射によってラジカルを生成して、ビニル系化合物をラジカル重合させることが可能なラジカル重合開始剤である。
重合開始剤(E)としては、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤であってもよいが、前記多官能ビニル系化合物(B)の重合に対してはアゾ系重合開始剤が適しており、特に水溶性アゾ系重合開始剤が好ましい。
水溶性アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド]n−ハイドレート、2,2’−アゾビス[2−メチルプロピオンアミド]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド等が挙げられる。これら水溶性アゾ系重合開始剤の中でも、水溶性及び反応性の点から、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]が好ましい。
有機過酸化物としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。
導電性高分子分散液には、公知の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、ポリアニオン(A2)、多官能ビニル系化合物(B)、分散媒(C)、単官能ビニル系化合物(D)及び重合開始剤(E)以外の化合物からなる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよいが、これらは導電性低下を招くことがあるから、添加しないことが好ましい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンレジン等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、ビタミン類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
上記導電性高分子分散液は、例えば、下記方法で製造される。
まず、ポリアニオン(A2)と分散媒の存在下でπ共役系導電性高分子(A1)の前駆体モノマーを化学酸化重合して、π共役系導電性高分子(A1)がポリアニオン(A2)によって分散媒に可溶化した導電性高分子含有液を得る。その導電性高分子含有液に多官能ビニル系化合物(B)、必要に応じて、単官能ビニル系化合物(D)、重合開始剤(E)、その他添加物を添加して、導電性高分子分散液を得る。
また、導電性高分子含有液は市販のものを使用しても構わない。
塗膜の膜強度を向上させるために導電性高分子分散液に添加した硬化性化合物は非導電性化合物であるから、硬化性化合物の添加によって導電性を低下させる傾向にある。
しかし、前記多官能ビニル系化合物(B)を含む導電性高分子分散液は、導電性を損ねずに、膜強度(特に耐水性)に優れた導電性塗膜を容易に形成できる。
また、前記多官能ビニル系化合物(B)は水溶性の化合物であり、水と分離しにくいため、容易に水系化できる。有機溶剤を含まない又は有機溶剤の含有量が少量の水系分散液は、有機溶剤を使用しにくい環境下でも使用できる。
本発明の導電性塗膜は、上記導電性高分子分散液が塗布されて形成された塗膜である。したがって、導電性塗膜は、少なくとも、導電性複合体(A)と、多官能ビニル系化合物(B)が硬化した硬化物とを含有する。導電性高分子分散液が単官能ビニル系化合物(D)を含有する場合には、導電層は、単官能ビニル系化合物の硬化物、あるいは、多官能ビニル系化合物(B)と単官能ビニル系化合物(D)とが共重合して硬化した硬化物を含有する。導電性高分子分散液が重合開始剤(E)を含有する場合には、導電層は、重合開始剤(E)の残渣を含有し、導電性高分子分散液が添加剤を含有する場合には、導電層は、添加剤を含有する。
透明基材を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等が挙げられる。透明基材としては、ガラスも使用できる。
また、基材として、上質紙、クラフト紙、コート紙等の紙を用いることができる。
導電性高分子分散液の塗布後には、硬化処理を施すことが好ましい。
硬化方法としては、重合開始剤(E)が熱によりラジカルを発生する場合には、加熱が適用され、重合開始剤(E)が光によりラジカルを発生する場合には、光照射が適用される。加熱方法としては、例えば、熱風加熱や赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。また、光照射により硬化する場合には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源から紫外光を照射する方法を採用できる。
紫外光照射における照度は100mW/cm2以上が好ましい。照度が100mW/cm2未満であると、充分に架橋しないことがある。また、積算光量は50mJ/cm2以上が好ましい。積算光量が50mJ/cm2未満であると、充分に架橋しないことがある。なお、本発明における照度、積算光量は、トプコン社製UVR−T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD−T36、測定波長範囲;300〜390nm、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸の複合体を含む導電性高分子含有液100g(ヘレウス社製クレビオスPH1000、固形分濃度1.2質量%)に、前記式(1−1−a)で表される多官能ビニル系化合物B1(和光純薬工業社製、40質量%水溶液)と、水溶性アゾ系重合開始剤である2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](和光純薬工業社製)とを表1に示す量(固形分の量)で添加し、さらに、メタノールを添加して固形分濃度が2倍になるように希釈して、導電性高分子分散液を得た。
この導電性高分子分散液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300)に#8のバーコーターで塗布し、120℃、10分間、加熱して、導電性塗膜を形成した。
多官能ビニル系化合物B1を添加せず、その代わりに、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド3gを添加した以外は実施例3と同様にして、導電性高分子分散液を得た後、導電性塗膜を形成した。
多官能ビニル系化合物B1を添加せず、その代わりに、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド(表中では「ジアクリルアミド」と表記する。)3gを添加した以外は実施例3と同様にして、導電性高分子分散液を得ようとしたが、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドが沈殿し、分散液を得ることができなかった。そのため、後述の評価をおこなうことはできなかった。
得られた導電性塗膜の表面抵抗値及び耐水性を、以下のように評価した。評価結果を表1に示す。
得られた導電性塗膜の表面抵抗値(Ω)を、三菱化学社製ロレスタMCP−T600を用い、JIS K7194に準じて測定した。
水を染み込ませた布(エリエールプロワイプ コットンRクロス M100)に10gf/cm2の荷重をかけながら、導電性塗膜の表面を10往復拭いた後、目視で評価を行った。
多官能ビニル系化合物B1を含まず、2−ヒドロキシエチルアクリルアミドを含む導電性高分子分散液より形成した比較例1の導電性塗膜は、耐水性が低かった。
Claims (6)
- π共役系導電性高分子(A1)及びポリアニオン(A2)を含む導電性複合体と、下記式(1)〜(3)のいずれかで表される多官能ビニル系化合物(B)と、分散媒(C)とを含有する、導電性高分子分散液。
- 前記多官能ビニル系化合物(B)の質量平均分子量が250以上である、請求項1に記載の導電性高分子分散液。
- ビニル基を1つ有する単官能ビニル系化合物(D)をさらに含有する、請求項1又は2に記載の導電性高分子分散液。
- 重合開始剤(E)をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
- 前記分散媒(C)の少なくとも一部が水である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液が塗布されて形成された導電性塗膜。
Priority Applications (1)
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