JP2016169184A - 慢性疼痛の治療薬 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】分泌型ホスホリパーゼA2−12A(PLA2g12A)阻害物質を有効成分として含有してなる慢性疼痛の治療薬。PLA2g12A阻害物質は、PLA2g12Aに対するアンチセンス核酸、siRNAおよびアンタゴニスト抗体ならびにPLA2g12Aの酵素活性を阻害する低分子量化合物からなる群より選ばれる。慢性疼痛は、慢性期神経障害性疼痛、慢性期線維筋痛症、慢性疲労症候群、過敏性大腸炎(あるいは顎関節症)などである。
【選択図】なし
Description
1)坐骨神経傷害後7日経過し、慢性疼痛が形成した条件下において、
LPA1/3受容体拮抗薬Ki16425を1週間連続投与した時、この慢性疼痛が消失し正常疼痛閾値に回復すること(図1)、
2)LPA拮抗薬投与を終了してもその後の疼痛閾値は変化せず、正常閾値を保ち続けること(図1)、すなわち慢性疼痛が完治すること、
3)神経傷害後の脊髄におけるLPA産生は3時間をピークに最大に達するが、その後6−24時間後には一度低下するが、3日後以降LPA産生は再び増加しはじめ、10日以上持続する有意なLPA産生上昇が観察された(図2)。
4)神経傷害後1時間では脊髄cPLA2とiPLA2の酵素活性上昇は確認されたが、分泌型PLA2(sPLA2)酵素活性の上昇は観察されなかった(図3)。この事実はcPLA2阻害剤(AACOCF3/arachidonyltrifluoromethyl ketone)とiPLA2酵素阻害剤(BEL/bromoenol lactone)はいずれも初期のLPA産生と神経障害性疼痛を抑制したが、sPLA2阻害剤(Indoxam)は神経障害性疼痛に対して無効であった事実と一致する(図4)。
5)しかしながら、遅延型のLPA産生との関連でLPC合成酵素である様々なアイソフォームのcPLA2、iPLA2およびsPLA2の遺伝子発現を測定したとき、分泌型sPLA2のアイソフォームの一つであるPLA2g12Aのみ神経傷害後1週間以上持続する発現上昇が観察された(図5、6)。
6)この事実を受け、PLA2g12Aのアンチセンスオリゴヌクレオチドの脊髄くも膜下腔内投与障害後5日から9日まで5日間繰り返し処置したとき神経障害性疼痛の抑制が観察された(図7A)。
7)さらに、PLA2g12AのsiRNAの脊髄くも膜下腔投与を神経障害3日後に処置したときLPA産生と神経障害性疼痛の抑制が観察された(図7B)。
8)そこで、線維筋痛症モデルにおけるLPA産生との関連性を調べるため、線維筋痛症モデルとなる、ICSくり返しストレス後3−11日のマウス(特開2009-195200号公報、国際公開第2010/0169590号)の脳室内にPLA2g12Aのアンチセンスオリゴを毎日、あるいは3日にsiRNAの脳室内投与を1回行った時、この慢性疼痛は有意に抑制された(図8A、B)。
9)この事実から、PLA2g12Aの抗体を用いてマウス脳全領域について免疫組織化学を行った時、視床下部paraventricular nucleus(室傍核/PVN)とLocus Ceruleus(青斑核/LC)に特に強い免疫活性が見出された(図9)。
10)実際PLA2g12AのsiRNAをストレス負荷後3日にPVN内微量注入(0.1μg、1μL)を行ったところ、慢性疼痛の有意な抑制が観察された(図10)。一方、LC内に投与したとき、慢性疼痛の弱い抑制は観察されたが、PVN内投与と比べると弱いものであった(図11)。
11)くり返しストレスのモデルにおいて、後根神経節(DRG)でのPLA2g12Aの発現をwestern blot法と免疫組織化学法により蛋白質レベルで観察したとき、少なくともストレス後2から12日に至るまで発現上昇が観察された(図12)。
12)そこで、PLA2g12AのsiRNAをストレス負荷後3日に脊髄くも膜下腔に(i.t.)投与したとき、慢性疼痛の弱い抑制効果が観察された(図13)。
以上の事実から、PLA2g12Aは広く慢性疼痛維持に関する重要な責任分子となるLPA産生に重要な役割を果たすこと、またその機能阻害は神経障害性疼痛やストレス性の線維筋痛症治療薬としての可能性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本願発明は、以下に示す通りである。
〔2〕 PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aに対するアンチセンス核酸、siRNAおよびアンタゴニスト抗体ならびにPLA2g12Aの酵素活性を阻害する低分子量化合物からなる群より選ばれるものである、〔1〕記載の治療薬。
〔3〕 慢性疼痛が慢性期神経障害性疼痛、慢性期線維筋痛症、慢性疲労症候群、過敏性大腸炎または顎関節症である、〔1〕または〔2〕に記載の治療薬。
〔4〕 PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aに対するsiRNAであり、脊髄くも膜下腔内または全身に投与されるものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の治療薬。
〔5〕 PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aに対するsiRNAであり、脳室内または全身に投与されるものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の治療薬。
〔6〕 PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aの酵素活性を阻害する低分子量化合物であり、脳室内または全身に投与されるものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の治療薬。
〔7〕 有効量のPLA2g12A阻害物質をそれを必要とする対象に投与する工程を含む、慢性疼痛の治療方法。
〔8〕 PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aに対するアンチセンス核酸、siRNAおよびアンタゴニスト抗体、ならびにPLA2g12Aの酵素活性を阻害する低分子量化合物からなる群より選ばれるものである、〔7〕記載の治療方法。
〔9〕 慢性疼痛が慢性期神経障害性疼痛、慢性期線維筋痛症、慢性疲労症候群、過敏性大腸炎または顎関節症である、〔7〕または〔8〕に記載の治療方法。
〔10〕 PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aに対するsiRNAであり、脊髄くも膜下腔内または全身に投与される〔7〕〜〔9〕のいずれかに記載の治療方法。
〔11〕 PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aに対するsiRNAであり、脳室内または全身に投与される〔7〕〜〔9〕のいずれかに記載の治療方法。
〔12〕 PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aの酵素活性を阻害する低分子量化合物であり、脳室内または全身に投与される〔7〕〜〔9〕のいずれかに記載の治療方法。
〔13〕 〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の慢性疼痛の治療薬を製造するための、PLA2g12A阻害物質の使用。
常温と寒冷環境を反復負荷させる(ICS)ストレスモデルは、自律神経失調症のモデルとして一般に知られており、持続的低血圧、免疫バランスの異常、痛覚過敏など多種の異常が報告されている。一方で、ICSストレスモデルは線維筋痛症をはじめとした全身性疼痛症候群の動物モデルとしても有用であると言われている。ICSストレスによるモデルの作出方法は、マウス等の動物の飼育環境を室温(24℃前後)と冷温(4℃前後)下に反復して変化させる方法であるが、慢性疼痛を示さない対照ストレスとして室温に戻さない冷温ストレスのみの条件、constant cold stress(CCSストレス)と対比させるためintermittent cold stress(ICS)と呼ぶことが望ましい。実施例に記載されているように、ICSストレスは従来報告されてきたSARTストレスに比べて、より厳密に定義している。
神経障害性疼痛モデルマウスの作出
ペントバルビタール(Nacalai Tesque Kyoto、 Japan)50 mg/kgで麻酔後、右側後肢部分の皮膚を切開し坐骨神経を露出させ縫合針(松吉医科器械、Tokyo、 Japan、マイスコ縫合針眼科弯弾0000)を通してすくい上げ、縫合糸(夏目製作所、 Tokyo、 Japan、絹製縫合糸軟質No1)で坐骨神経の半分を一回強く縛り結紮させた。その後開いた皮膚を同様に縫合糸で2回縛り傷口を閉じ、5倍希釈ポピヨンヨードにて消毒した。対照群としては坐骨神経を露出させるが縫合糸で神経を結紮しないモデル(control群)を用いた。
繰り返し酸筋注モデルの作成
ペントバルビタール(Nacalai Tesque Kyoto、 Japan)50 mg/kgもしくはイソフルラン吸入麻酔下のもと、20 μl のacidic saline (pH 4)を0日目および5日目にマウスの左腓腹筋に繰り返し投与した。acidic salineは生理食塩水に塩酸(Nacalai Tesque Kyoto、 Japan)を用いてpH Meter (BECKMAN)の値がpH 4.0±0.1になるよう調整した。対照群には生理食塩水(大塚生食注)を同様に投与した。
神経障害性疼痛の慢性期のモデル動物にPLA2g12AのsiRNAを投与した実施例を図7Bに示す。Sigma-aldrich社から購入したPLA2g12AのsiRNA(下記表1参照)を神経障害後5日後において、脊髄クモ膜下腔内(0.5μg,5μl)に投与すると、その投与3日後に治療効果が見いだされた。
SASI_Mm02_00326922
Sense: ccuaauguugccuuaguuuTT (Tはdeoxythymidine) (SEQ ID NO: 7)
Antisense: aaacuaaggcaacauuaggTT (Tはdeoxythymidine) (SEQ ID NO: 8)
Sense: gugugacuugguguucauaTT (Tはdeoxythymidine) (SEQ ID NO: 9)
Antisense: uaugaacaccaagucacacTT (Tはdeoxythymidine) (SEQ ID NO: 10)
Sense: guguucauaguuguacuuaTT (Tはdeoxythymidine) (SEQ ID NO: 11)
Antisense: uaaguacaacuaugaacacTT (Tはdeoxythymidine) (SEQ ID NO: 12)
Sigma-aldrich社から購入したpla2g12aのsiRNA(上記実施例1と同一試薬)をICSストレス3日後において、脳室内投与(0.5μg,5μl)行うと、投与3日後以降から治療効果が見いだされた(図8B)。
リゾホスファチジン酸(以下、LPAと記載)受容体1および3に対するアンタゴニスト(Ki-16425)を用いて、参考例1で作出した神経障害性疼痛の慢性期のモデル動物に対する効果を調べた。
坐骨神経傷害後数日経過し、慢性疼痛が形成した条件下において、Ki-16425を1週間連続で全身投与した場合、慢性疼痛が消失し正常疼痛閾値に回復した(図1)。LPAアンタゴニスト投与を終了しても、その後の疼痛閾値は変化せず、正常閾値を保ち続けること、すなわち、慢性疼痛が完治することがわかった(図1)。
神経傷害後の脊髄におけるLPA産生は3時間をピークに最大に達するが、その後6時間後には一度低下するが、3日後以降LPA産生は再び増加しはじめ、10日目に最大に達し、10日以上有意なLPA産生上昇が観察された(図2)。LPAの分子種については、脂肪鎖アルキルの数と不飽和の数によって、複数種知られているが、特に16:0-、18:0-、18:1-LPAが主に増加していた(図2)。
LPAの前駆体のLPCの合成酵素には、cPLA2、iPLA2、分泌型PLA2(sPLA2)等が知られている。神経傷害後の脊髄において、経時的にこれらの酵素活性について活性化測定キット(Cayman Chemicals社)を用いて測定した。神経傷害後1時間ではcPLA2とiPLA2の酵素活性上昇は確認されたが、sPLA2酵素活性の上昇は観察されなかった(図3)。
cPLA2阻害剤(AACOCF3/arachidonyltrifluoromethyl ketone)とiPLA2酵素阻害剤(BEL/bromoenol lactone)の前投与により、神経障害疼痛およびLPA産生は抑制されるが、sPLA2阻害剤(Indoxam)は神経障害性疼痛に対して無効であった事実と一致する(図4)。
慢性疼痛の維持期(遅延型)のLPA産生との関連で様々なアイソフォームのcPLA2、iPLA2およびsPLA2の遺伝子発現を測定したとき、PLA2g12Aのみ神経傷害後1週間以上持続する発現上昇が観察された(図5、6)。
PLA2g12Aのアンチセンスオリゴヌクレオチドの脊髄くも膜下腔投与を障害後3日に処置したとき、神経障害性疼痛の抑制が観察された(図7A)。
線維筋痛症モデルにおけるPLA2g12Aとの関連性を調べるため、線維筋痛症モデルとなる、ICSくり返しストレス後3−11日のマウス(特開2009-195200号公報、国際公開第2010/0169590号)の脳室内にPLA2g12Aのアンチセンスオリゴヌクレオチドを連日投与行ったとき、ICSストレスモデルによる慢性疼痛の治療効果が観察された(図8A)。また、ICSくり返しストレス3日にsiRNAの脳室内投与を1回行った時においても、この慢性疼痛は有意に抑制された(図8B)。
参考例9の事実から、PLA2g12Aの抗体を用いてマウス脳全領域について免疫組織化学を行った時、視床下部paraventricular nucleus(室傍核/PVN)とLocus Coeruleus(青斑核/LC)に特に強い免疫活性が見出された(図9)。
PLA2g12AのsiRNAをICSストレス負荷後3日にPVN内微量注入(0.1μg、1μL)を行ったところ、慢性疼痛の有意な抑制が観察された(図10)。一方、PLA2g12AのsiRNAをICSストレス負荷後3日にLC内微量注入(0.1μg、1μL)処置しても、その治療効果はPVNより弱かった(図11)。
ICSストレスのモデルにおいて、後根神経節(DRG)でのPLA2g12Aの発現をwestern blot法と免疫組織化学法により蛋白質レベルで観察したとき、少なくともストレス後2から12日に至るまで発現上昇が観察された(図11)。
PLA2g12AのsiRNAをICSストレス負荷後3日に脊髄くも膜下腔 (i.t.)投与したとき、慢性疼痛の弱い抑制は観察されたが、いずれも脳室内投与やPVN内投与と比べると弱いものであった(図12)。
実施例4では、実施例5および参考例1に基づき作出した線維筋痛症モデルマウスおよび神経障害性疼痛モデルマウスについて、慢性疼痛を評価した。慢性疼痛の評価方法としては、熱性刺激疼痛試験法により経日的な疼痛閾値を評価した。
使用するマウスを、ガラス板の上に置いたプラスチックのケージの中に置き、30分以上同じ環境下において適応化させた。測定にはPlantar Test Analgesia Meter Model 390(IITC Inc.)を用いた。熱刺激をガラス板の下から後肢足蹠の中心に投射し、マウスが後肢の逃避反応を示すまでの潜時(Paw Withdrawal Latency : PWL)を測定し評価した。
ICSモデルの作出
線維筋痛症モデルマウスの作出のため、ICS(Intermittent Cold Stress)を負荷した。マウスの飼育環境温度を昼間は30分毎に室温(24±2℃)と低温(4±2℃)を繰り返し、夜間は低温下で飼育した。飼育環境は、湿気をさけるためケージを上下反転させたものをケージの網の上に置き、ケージと網の間には一般実験用の固形飼料(MF, オリエンタル酵母, 東京)のかけらを使用して隙間をつくった。また、固形飼料および水分として水道水を寒天で固め約1cm角に切ったものを自由に摂取させ恒湿(55±5%)で昼夜自然条件下にて飼育した。ひとつのケージで2匹または1匹ずつマウスを飼育した。
初日に、16時30分に低温条件下(4℃)である冷蔵庫内へ使用するマウスを移動し、翌日の10時まで飼育した。10時に室温に移し、以後16時30分まで30分ごとに低温条件下と室温条件下で交互に飼育した。この日を繰り返しストレス開始日とし、ストレス1日目とした。16時30分からストレス2日目の10時までは、ストレス前日と同様に4℃で飼育した。2日目も1日目と同様に繰り返しストレスを与えた。3日目の10時に室温に移し終了とした。また、終了日をP1(Post Stress day 1)とした。
対照群(Control)は、同様の時間(ストレス負荷前日の16時30分から3日目の10時まで)を3日間終始室温で飼育した。
疼痛関連行動評価法
下記1)〜2)の試験法は、10分程度の間隔をあけて測定した。連続測定による組織障害を防ぐためである。
1) Thermal paw-withdrawal 試験 (熱性刺激疼痛試験法)
実験前にマウスをガラス板の上に置き、上からケージをかぶせ1時間以上実験と同じ環境に慣れさせた。マウスの後肢足蹠に熱刺激を与え、マウスが刺激からの逃避行動を示したときに、自動的に測定された値を読み取った。刺激となるビームは、正常マウスにおいて10秒前後の測定になるように設定した。組織損傷を避けるためにカットオフ時間は20秒とした。測定は3回以上行ない、平均値を採用した。
2) 自動デジタル式von Frey試験:機械的侵害試験法
実験前にマウスを網目上のラックの上に置き、上からケージをかぶせ1時間以上実験と同じ環境に慣れさせた。プラスチックのチップの先端をラックの下からマウスの後肢足蹠の中心に対して垂直に押し付け、該マウスが後肢の逃避行動を示したときに、自動的に測定された値を読み取った。刺激の強さは、正常マウスにおいて10g前後になるように設定した。測定は3回以上行ない、平均値を採用した。
ICSの負荷終了日をP1とし、P3、P5、P12およびP19に疼痛閾値を測定した。
低分子量化合物の治療薬候補物質の選定
市販の低分子量化合物を収容したデータベース(Zinc化合物ライブラリー、University of California, San Francisco)の中から、PLA2g12A酵素阻害活性を有すると思われる5個の化合物候補を見出し、天然物を除く4個の化合物を、キシダ化学から購入した。化合物の詳細は、以下の通りである。
本測定系では、化合物3のみがPLA2g12Aの阻害活性を示すことがわかった。
ICS線維筋痛症モデルにおける化合物1〜4の効果
実施例5で作出したICSモデル(線維筋痛症モデル)マウスに、化合物1を、ICSの負荷終了日をP1とし、P5〜P11に、3、10または30mg/kgの用量で腹腔内に投与した。P5〜P19に疼痛閾値を測定した。その結果、化合物1は、腹腔内投与により線維筋痛症に対する治療効果を示した。化合物1に関する結果を図15に示す。
図15より、化合物1は用量依存的に線維筋痛症に対する治療効果を示し、10または30mg/kgの投与で優れた治療効果を有することがわかった。
線維筋痛症モデルにおける化合物1の効果
別の線維筋痛症モデルであるSlukaモデルラット(Sluka KA et al., Muscle Nerve 2001, 24: 37-46)に、化合物1を酸性食塩水の2回目投与後をP1とし、P7〜P13に、30mg/kgの用量で腹腔内に投与した。P7〜P20まで疼痛閾値を測定した。結果を図16に示す。
図16より、化合物1は別の線維筋痛症モデルにおいても治療効果を示すことがわかった。
ICS線維筋痛症モデルにおける化合物2〜4の効果
実施例5で作出したICSモデルマウスに、化合物2〜4を、ICSの負荷終了日をP1とし、P5〜P11に、1nmol/5μl(化合物2のみ0.1nmol/5μl)の用量で連日脳室内に投与し、P12に疼痛閾値を測定した。結果を図17に示す。
図17より、化合物3のみが脳室内投与により、線維筋痛症に対する治療効果を示すことがわかった。
ICS線維筋痛症モデルにおける化合物3の全身投与による効果
実施例5で作出したICSモデルマウスに、化合物3を、ICSの負荷終了日をP1とし、P5〜P11に、10mg/kgの用量で腹腔内内に投与し、P5、P12およびP19に疼痛閾値を測定した。結果を図18に示す。
図18より、化合物3は7日間の連日腹腔内投与により、線維筋痛症に対する治療効果を示すことがわかった。
化合物3および類似化合物の酵素阻害活性
化合物3と化学構造が類似する化合物を、Zinc化合物ライブラリーから選択し、インビトロにおける酵素阻害活性について活性化測定キット(Cayman Chemicals社)に基づいて測定した。化合物3の類似化合物(NULSc-005〜NULSc-022)のリストおよび酵素阻害率を表3および図19に示す。
化合物3および類似化合物のICS線維筋痛症モデルにおける効果
化合物3の類似化合物の中から、実施例12において酵素阻害活性を示した化合物を選択し、実施例5で作出したICSモデルマウスに、ICSの負荷終了日をP1とし、P5〜P11に、10mg/kgの用量で腹腔内に投与し、投与前(Pre)、P12およびP19に疼痛閾値を測定した。NULSc-005(1nmol)をP5〜P11の間、連日投与(合計7回)で脳室内投与(5μl)した。化合物は、粉末を10mMのDMSOに溶かしたものをa-CSFで投与量 1 nmol/5 μl になるように調整した。結果を図20に示す。
図20より、化合物7(NULSc-007)、化合物11(NULSc-011)および化合物13(NULSc-013)は、ICS線維筋痛症モデルにおける治療効果が観察された。
Bis-BODIPY(登録商標:1,2-bis-(4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacene-3-undecanoyl)-sn-glycero-3-phosphocholine)を用いた高感度の酵素阻害活性の測定系による化合物の酵素阻害活性の測定
蛍光ホスホリパーゼAの基質Bis-BODIPY(Invitrogen、登録商標:1,2-bis-(4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacene-3-undecanoyl)-sn-glycero-3-phosphocholine)を購入し、製造業者の指示書に従って、高感度のPLA2g12A酵素活性の測定系を確立し、化合物1〜23のPLA2g12Aの酵素阻害活性を再度検討した。測定条件は、基質(Bis-BODIPY:10nM)、酵素(ヒトPLA2g12A:15ng/ml)および化合物10μMの濃度で、37℃で測定した。
結果を図21〜図24に示す。
図21より、化合物3、7、11、12、13および18において酵素活性の阻害効果が観察された。
図22より、化合物3、7、11、12、13および18のIC50は、それぞれ、0.54μM、4.80μM、0.37μM、0.91μM、0.94μMおよび3.25μMであった。
図23より、ヒトPLA2g12Aの代わりにハチ毒(Bee Venom)由来の酵素を用いて酵素活性の阻害効果を調べた結果、化合物3、7、11、12、13は、10μMの濃度で阻害効果を有するものの、活性は弱かった。化合物18については、酵素特異性がなかった。
ヒトPLA2g12Aの代わりにヒトPLA2g10を用いて化合物3、7、11、12、13および18の酵素活性の阻害効果を調べた結果、10μMの濃度で阻害効果を有するものの、活性は弱かった(図24)。化合物11、12および13のIC50は、数μM程度であった。
上記を総合して、化合物1、3、7、11、12、13の結果を下記表5に示す。
統計処理
全てのデータの統計学上の分析に関して、有意差検定は、等分散性を確認して、Student’s t-testもしくは重複分散分析処理後にTurkey-Kramer testを行った。*または♯印1つが危険率5%以下、2つが危険率1%以下と定めた。すべての結果は(平均値)±S.E.M.で表した。
Claims (13)
- 分泌型ホスホリパーゼA2−12A(PLA2g12A)阻害物質を有効成分として含有してなる慢性疼痛の治療薬。
- PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aに対するアンチセンス核酸、siRNAおよびアンタゴニスト抗体ならびにPLA2g12Aの酵素活性を阻害する低分子量化合物からなる群より選ばれるものである、請求項1記載の治療薬。
- 慢性疼痛が慢性期神経障害性疼痛、慢性期線維筋痛症、慢性疲労症候群、過敏性大腸炎または顎関節症である、請求項1または2に記載の治療薬。
- PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aに対するsiRNAであり、脊髄くも膜下腔内または全身に投与されるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の治療薬。
- PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aに対するsiRNAであり、脳室内または全身に投与されるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の治療薬。
- PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aの酵素活性を阻害する低分子量化合物であり、脳室内または全身に投与されるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の治療薬。
- 有効量のPLA2g12A阻害物質をそれを必要とする対象に投与する工程を含む、慢性疼痛の治療方法。
- PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aに対するアンチセンス核酸、siRNAおよびアンタゴニスト抗体、ならびにPLA2g12Aの酵素活性を阻害する低分子量化合物からなる群より選ばれるものである、請求項7記載の治療方法。
- 慢性疼痛が慢性期神経障害性疼痛、慢性期線維筋痛症、慢性疲労症候群、過敏性大腸炎または顎関節症である、請求項7または8に記載の治療方法。
- PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aに対するsiRNAであり、脊髄くも膜下腔内または全身に投与される請求項7〜9のいずれか1項に記載の治療方法。
- PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aに対するsiRNAであり、脳室内または全身に投与される請求項7〜9のいずれか1項に記載の治療方法。
- PLA2g12A阻害物質がPLA2g12Aの酵素活性を阻害する低分子量化合物であり、脳室内または全身に投与される請求項7〜9のいずれか1項に記載の治療方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の慢性疼痛の治療薬を製造するための、PLA2g12A阻害物質の使用。
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