JP2016167443A - 非水電解液蓄電素子 - Google Patents

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栄子 日比野
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杏奈 広渡
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年宏 中坊
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Abstract

【課題】正極活物質あたりの放電容量が高く、高電流放電特性のみならず高電流充電特性に優れ、充放電効率の高い非水電解液蓄電素子を提供すること。
【解決手段】アニオンを挿入乃至脱離可能な正極活物質を含む正極と、カチオンを挿入乃至脱離可能な負極活物質を含む負極と、非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液とを備えた非水電解液蓄電素子であって、前記正極活物質が、X線回折法による(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以上0.360nm以下であり、比表面積が1m/gより大きく30m/gより小さい炭素材料を含み、前記負極活物質が、リチウムイオンを挿入乃至脱離可能な材料を含む非水電解液蓄電素子。
【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解液蓄電素子に関する。
近年、携帯機器の小型化、高性能化に伴い高いエネルギー密度を持つ非水電解液蓄電素子の特性が向上し、普及しており、より大容量で安全性に優れた非水電解液蓄電素子の開発も進められ、電気自動車等への搭載も始まっている。
このような非水電解液蓄電素子としては、リチウムコバルト複合酸化物等の正極と、炭素の負極と、非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる非水電解液とからなり、充電時には、正極中のリチウムが脱離して負極の炭素に挿入され、放電時には負極に挿入されたリチウムが脱離して正極の複合酸化物に戻ることにより充放電されるリチウムイオン二次電池が多く使用されている。
一方、蓄電素子がハイブリット自動車等に使用される場合には、瞬時に大電流の出力が可能であることが必須であり、さらには回生エネルギーで充電できることが望ましく、エネルギー密度よりも高電流充放電特性が重要となってくるため、化学反応を必要とせず高速で充放電可能な電気二重層キャパシタが使用されている。しかし、リチウムイオン蓄電素子と比較すると、エネルギー密度は数10分の1であり十分な容量を確保するためには重い蓄電素子が必要となり、自動車に積載した場合には燃費向上を妨げていた。
エネルギー密度が高く、高速充放電に適した蓄電素子として、導電性高分子、炭素材料等を正極に用い、炭素等の負極と、非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる非水電解液とからなり、充電時には、非水電解液中のアニオンが正極へ、カチオンが負極へ挿入し、放電時には、正極、および、負極に挿入されたアニオン、及び、カチオンが電解液中へ脱離することにより充放電が行われる、いわゆるデュアルインターカレーションタイプの非水電解液蓄電素子の実用化が期待されている。
リチウム塩としてLiPFを使用し、負極にも炭素を用いた場合には、下記反応式に示すように、非水電解液中から正極にPF が挿入され、負極にLiが挿入されることにより充電が行われ、正極からPF 、負極からLiが非水電解液へ脱離することにより放電が行われる。
アニオンを挿入乃至脱離する活物質としては、特許文献1〜3のように黒鉛を用いて層間へのアニオンの挿入脱離を利用する場合と特許文献4〜5のようにアルカリ賦活などにより比表面積をある程度大きくした炭素材料の表面へのアニオンの吸着・脱離を利用する場合、特許文献6のように比表面積の大きい活性炭へのアニオンの吸着・脱離を利用する場合が知られている。層間への挿入脱離を利用できる黒鉛を用いる場合が、活物質質量あたりの放電容量は大きくできる。
正極活物質として黒鉛を用いた場合には、特許文献1のように充電終止電圧リチウム参照極に対して5.3〜5.6Vとすることにより、エネルギー密度の高い二次電池が得られる。
特許文献2にはホウ素化黒鉛を用いることによりサイクル特性に優れた二次電池、特許文献3には高電流放電特性を得るための特に負極の構成が示されている。
また、特許文献4、5のように正極として黒鉛ではなく、アルカリ賦活処理により比表面積を少なくとも30m/gより大きく(ただし、活性炭の比表面積に比べると小さい)した炭素材料や、特許文献6のように比表面積が2000m/g程度と大きい活性炭を用いることが示されている。
従来技術におけるように正極に黒鉛を用いた場合、エネルギー密度をさらに大きくするために高電圧で充放電すると、通常は数回の充放電で高い値に落ち着く充放電効率が高くならず、サイクル劣化が大きい。また、本発明者らの検討によれば、正極に黒鉛を用いた場合、高電流放電特性は比較的良い特性が得られるが、高電流充電特性を満足することができない。
また、正極に比表面積が大きい炭素材料を用いた場合には高電流放電特性、高電流充電特性ともに優れているが、活物質当りの放電容量は大きくできず、エネルギー密度を高くすることができない。
本発明の目的は、正極活物質あたりの放電容量が高く、高電流放電特性のみならず高電流充電特性に優れ、充放電効率の高い非水電解液蓄電素子を提供することである。
前記課題を解決するための本発明は、下記(1)に記載する通りの非水電解液蓄電素子に係るものである。
(1)アニオンを挿入乃至脱離可能な正極活物質を含む正極と、カチオンを挿入乃至脱離可能な負極活物質を含む負極と、非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液とを備えた非水電解液蓄電素子であって、
前記正極活物質が、X線回折法による(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以上0.360nm以下であり、比表面積が1m/gより大きく30m/gより小さい炭素材料を含み、
前記負極活物質が、リチウムイオンを挿入乃至脱離可能な材料を含むことを特徴とする非水電解液蓄電素子。
本発明によれば、正極活物質あたりの放電容量が高く、高電流充放電特性に優れ、充放電効率が高い非水電解液蓄電素子を提供できる。
実施例の非水電解液蓄電素子について、充放電サイクル1回目、2回目、10回目の充放電曲線を示す図である。 実施例の非水電解液蓄電素子について、正極活物質のX線回折によるピークの充放電による変化を示す図である。 正極の炭素材料の真密度と放電容量との関係を示す図である。
[非水電解液蓄電素子の構成]
1.正極
前記正極は、正極活物質を含んでいれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正極集電体上に正極活物質を有する正極材を備えた正極、などが挙げられる。
前記正極の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状、などが挙げられる。
1−1.正極材
前記正極材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正極活物質を少なくとも含み、更に必要に応じて導電助剤、バインダ、増粘剤、などを含んでなる。
(1)正極活物質
正極活物質としては、X線回折で測定した(002)面の面間隔がd(002)が0.340nm以上0.360nm以下であり、比表面積が1m/gより大きく30m/gより小さい炭素材料を主成分として用いる。d(002)が0.340nmより小さいと一般的に黒鉛の性質を示し、高容量であるが、負荷特性、特に大電流充電特性に乏しくなる。d(002)が0.360nmより大きいと、一般的には難黒鉛化炭素、もしくは活性炭の性質を示し、アニオンは表面吸着のみで層間への挿入は起こりにくく、容量が高いものが得られない。
また、比表面積は、1m/g以下であると反応面積が小さいために、負荷特性に不利であり、30m/g以上であると高電圧にしたときに電解液を分解しやすいため、充電電圧を高くできない。このため、アニオンの層間への挿入が十分には行われず、高容量化できない。比表面積は通常、窒素ガスを使用したガス吸着法からBETの式を用いて求めることができる。
このような性質を備えた炭素としては、コークスやメゾフェースピッチ等を2000℃以下程度の温度で焼成した炭素である易黒鉛化性炭素がある。
本発明における炭素材料を使用しているかどうかは、電極層を形成する前の粉末状態の活物質であればその比表面積を計測すればよい。また、電極層を形成した後においては、放電状態の正極活物質のX線回折による計測から、d(002)が0.340〜0.360nmの範囲にあるかどうかと、正極を取り出して対極をリチウムとした電池を作製し、充放電曲線を調べることによりわかる。詳細は実施例でも説明するが、正極活物質の単位質量あたり0.1A/gより小さい電流値で充電すると、本発明で使用した炭素を用いている場合、炭素材料の面間へのアニオンの挿入・脱離を利用して充放電を行っているので、4Vまでの充電容量より、4V以上で得られる充電容量の方が大きい。
特許文献4の比較例である活性炭を用いた場合の正極電位は4V(vs.Li/Li)以下で動作しているので4V以下で充電される容量が全てであるし、実施例であるアルカリ賦活易黒鉛化性炭素も4V以下での充電容量が全体の充電容量の半分以上と大きい。ここで、特許文献4では正極電位をV(vs.Li/Li)で示しているが、対極をLiとしたセルの電位はこれとほぼ同じとみなしてよい。
さらに、真密度は2.03g/cm以上で2.20g/cmより小さいことが好ましい。本発明者らの検討により、真密度と容量に正の相関が見られる事が判明し、真密度が小さいと容量が高いものが得られない。図3に、炭素材料を正極とし、負極をLi金属、電解液を2.0mol/L LiPFのDMC溶液とし、3.0V−5.2Vのカットオフ電圧で充放電したときの10サイクル目の放電容量と炭素の真密度の関係を示した。真密度が2.03以上であれば、放電容量は40mAh/g以上と実用的な値が得られる。2.20g/cm以上でも大きな容量が得られるが、2.20g/cm以上では黒鉛の性質を示し、高容量であるが、負荷特性、特に大電流充電特性に乏しくなるため、好ましくない。
(2)バインダおよび増粘剤
前記バインダおよび増粘剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液、印加される電位に対して安定な材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系バインダ、エチレン−プロピレン−ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、アクリレート系ラテックス、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、アルギン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系バインダ、アクリレート系ラテックス、カルボキシメチルセルロース(CMC)が好ましい。
(3)導電助剤
前記導電助剤としては、例えば、銅、アルミニウム等の金属材料、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素質材料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
1−2.正極集電体
前記正極集電体の材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
正極集電体の材質としては、導電性材料で形成されたもので、印加される電位に対して安定であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、チタン、タンタル、などが挙げられる。これらの中でも、ステンレススチール、アルミニウムが特に好ましい。
正極集電体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記正極集電体の大きさとしては、非水電解液蓄電素子に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
1−3.正極の作製方法
前記正極は、前記正極活物質に、必要に応じて前記バインダ、前記増粘剤、前記導電剤、溶媒等を加えてスラリー状とした正極材を、前記正極集電体上に塗布し、乾燥することで製造することができる。前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水系溶媒、有機系溶媒、などが挙げられる。前記水系溶媒としては、例えば、水、アルコール、などが挙げられる。前記有機系溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、トルエン、などが挙げられる。
なお、前記正極活物質をそのままロール成形してシート電極としたり、圧縮成形によりペレット電極としたりすることもできる。
2.負極
前記負極は、負極活物質を含んでいれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、負極集電体上に負極活物質を有する負極材を備えた負極、などが挙げられる。
前記負極の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状、などが挙げられる。
2−1.負極材
前記負極材としては負極活物質を少なくとも含み、更に必要に応じて導電助剤、バインダ、増粘剤、などを含んでなる。
(1)負極活物質
前記負極活物質としては、少なくとも非水溶媒系でリチウムイオンを挿入乃至脱離可能な物質であれば特に制限はない。具体的には、炭素質材料の他、チタン酸リチウム、酸化チタン、酸化アンチモン錫、一酸化珪素等のリチウムを挿入乃至脱離可能な金属酸化物、アルミニウム、錫、珪素、亜鉛等のリチウムと合金化可能な金属又は金属合金、リチウムと合金化可能な金属と該金属を含む合金とリチウムとの複合合金化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、安全性が高く、高電流入出力に適した材料として炭素質材料やチタン酸リチウムが特に好ましい。
前記炭素質材料としては、例えば、活性炭、黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛)、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化炭素、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物、などが挙げられる。
チタン酸リチウムとしては、LiTi12が挙げられる。
(2)バインダおよび増粘剤
前記バインダおよび増粘剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液、印加される電位に対して安定な材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系バインダ、エチレン−プロピレン−ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、アクリレート系ラテックス、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、アルギン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系バインダ、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)が好ましい。
(3)導電助剤
前記導電助剤としては、例えば、銅、アルミニウム等の金属材料、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素質材料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2−2.負極集電体
前記負極集電体の材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記負極集電体の材質としては、導電性材料で形成されたもので、印加される電位に対して安定であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅、などが挙げられる。これらの中でもステンレススチール、銅、アルミニウムが特に好ましい。
前記集電体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記集電体の大きさとしては、非水電解液蓄電素子に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
2−3.負極の作製方法
負極は、負極活物質に、必要に応じて前記バインダおよび増粘剤、導電剤、溶媒等を加えてスラリー状とした負極材を、負極集電体上に塗布し、乾燥することで製造することができる。溶媒としては、正極の作製方法と同様の溶媒を用いることができる。
また、負極活物質にバインダおよび増粘剤、導電剤等を加えたものをそのままロール成形してシート電極としたり、圧縮成形によりペレット電極としたりすることができる。また、蒸着、スパッタ、メッキ等の手法で前記負極集電体上に前記負極活物質の薄膜を形成することもできる。
3.非水電解液
前記非水電解液は、非水溶媒に電解質塩を溶解してなる電解液である。
3−1.非水溶媒
前記非水溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非プロトン性有機溶媒が好適である。
前記非プロトン性有機溶媒としては、鎖状カーボネート、環状カーボネート等のカーボネート系有機溶媒が用いられ、低粘度な溶媒が好ましい。これらの中でも、電解質塩の溶解力が高い点から、鎖状カーボネートが好ましい。
前記鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、などが挙げられる。これらの中でも、ジメチルカーボネート(DMC)を使用すると活物質当りの放電容量を大きくすることができ、また、充放電効率も良くサイクル特性に優れる傾向がある。
前記DMCの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記非水溶媒に対して70質量%以上が好ましい。前記DMCの含有量が、70質量%以上とすることにより、残りの溶媒が誘電率の高い環状物質(環状カーボネートや環状エステル等)である場合であっても、誘電率が高い環状物質の量が多くなることがないため、3.0mol/L以上の高濃度の非水電解液を作製した場合でも粘度が高くなることがなく、非水電解液の電極へのしみ込みや、イオン拡散の点で不具合を生じることがない。
鎖状カーボネートの比率を100%とすることにより電解液の粘度を低下することができ電解液の高濃度化が可能となり、高い充放電容量を得ることができるが、充放電効率が低下してしまう。
高い充放電効率を達成するには電極を保護する皮膜を形成し、非水電解液と電極の活性点が直接接触しないようにして電解液の分解を防止する。保護被膜形成には環状カーボネートが有効である。また、特に正極側にも保護皮膜形成が期待できるものとして、環状カーボネートの中でも特にフッ素化環状カーボネート挙げられ、その他にも環状スルホン、環状スルホン酸エステルなども挙げられる。
前記環状カーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、などが挙げられる。前記フッ素化環状カーボネートとしては4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5ジフルオロカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネートなどが挙げられる。フッ素化環状カーボネートの含有割合としては、非水溶媒に対して0.1−10.0質量%が好ましい。フッ素化環状カーボネートの含有割合が10.0質量%以下であることにより溶媒の粘度が高くなりすぎることがない。また、フッ素化環状カーボネートの含有割合が0.1%以上であることにより十分な充放電効率向上効果が得られる。
前記環状スルホンとしては、スルホラン、3−メチルスルホランなどが挙げられ、前記環状スルホン酸エステルとしては1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンなどが挙げられる。環状スルホン、環状スルホン酸エステルの含有割合は、非水溶媒に対して0.1−5.0質量%が好ましい。環状スルホン、環状スルホン酸エステルの含有割合が5.0質量%以下であることにより正極の抵抗が高くなりすぎることがない。また、環状スルホン、環状スルホン酸エステルの含有割合が0.1質量%以上であることにより十分な充放電効率向上効果が得られる。
前記鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネート(DMC)を用い、前記環状カーボネートとしてエチレンカーボネート(EC)を用いる場合には、ジメチルカーボネート(DMC)とエチレンカーボネート(EC)との混合割合は、質量比(DMC:EC)で、85.0:15.0〜99.0:1.0が好ましく、90.0:10.0〜99.0:1.0がより好ましい。
なお、前記非水溶媒としては、必要に応じて、環状エステル、鎖状エステル等のエステル系有機溶媒、環状エーテル、鎖状エーテル等のエーテル系有機溶媒、などを用いることができる。
前記環状エステルとしては、例えば、γ−ブチロラクトン(γBL)、2−メチル−γ−ブチロラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、などが挙げられる。
前記鎖状エステルとしては、例えば、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル(酢酸メチル(MA)、酢酸エチル等)、ギ酸アルキルエステル(ギ酸メチル(MF)、ギ酸エチル等)、などが挙げられる。
前記環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソラン、などが挙げられる。
前記鎖状エーテルとしては、例えば、1,2−ジメトシキエタン(DME)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、などが挙げられる。
3−2.電解質塩
前記電解質塩としては、リチウム塩を使用する。リチウム塩としては非水溶媒に溶解し、高いイオン伝導度を示すものであれば特に制限はない。例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、塩化リチウム(LiCl)、ホウ弗化リチウム(LiBF)、六弗化砒素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド(LiN(CSO)、リチウムビスファーフルオロエチルスルホニルイミド(LiN(CFSO)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、LiPFは、炭素電極中へのアニオンの吸蔵量が大きく、充放電効率が高く、サイクル特性に優れるので好ましい。
前記電解質塩の濃度は2.0mol/L以上とする。2.0mol/L以上とすると活物質あたりの放電容量が高く、充放電効率も高い電池が得られる。高電流充放電特性や低温動作特性の観点からは4.0mol/L以下とすることが好ましい。
4.セパレータ
前記セパレータは、正極と負極の短絡を防ぐために正極と負極の間に設けられる。
前記セパレータの材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記セパレータの材質としては、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙等の紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトブロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、マイクロポア膜などが挙げられる。
これらの中で好ましいものとしては、電解液保持の観点より気孔率50%以上のものが好ましい。形状としては微多孔(マイクロポア)を有する薄膜タイプよりも、不織布系が気孔率が高いため好ましい。厚みとしては短絡防止と電解液保持の観点から20μm以上が好ましい。
前記セパレータの大きさとしては、非水電解液蓄電素子に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記セパレータの構造は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
5.非水電解液蓄電素子の製造方法
本発明の非水電解液蓄電素子は、前記正極、前記負極、及び前記非水電解液と、必要に応じて用いられるセパレータとを、適切な形状に組み立てることにより製造される。更に、必要に応じて電池外装缶等の他の構成部材を用いることも可能である。前記非水電解液蓄電素子を組み立てる方法としては、特に制限はなく、通常採用されている方法の中から適宜選択することができる。
本発明の非水電解液蓄電素子の形状については、特に制限はなく、一般的に採用されているシ円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、各種形状の中から、その用途に応じて適宜選択することができる。
6.用途
本発明の非水電解液蓄電素子の用途としては、特に制限はなく、各種用途に用いることができ、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ、などが挙げられる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
正極活物質として粉砕した生コークスを1200℃の不活性雰囲気中でか焼して得られた易黒鉛化性炭素Aを用いた。本実施例で用いた易黒鉛化性炭素のレーザー光回折法による平均粒径D50、X線回折法による面間隔d(002)、BET法比表面積、ピクノメーターによる真密度の値は下記表2に示した。
これに、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカブラック粉状:電気化学工業)、バインダとしてアクリレート系ラテックス(TRD202A:JSR)、増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース(ダイセル2200:ダイセル化学工業)を、各々、固形分の質量比で100.0:7.5:3.8:3.0になるように混合した。次いで水を加えて適切な粘度に調整したスラリーを、厚さ20μmのアルミニウム箔にドクターブレードを用いて片面に塗布した。乾燥後の合材の目付け量の平均は11mg/cmであった。これをφ16mmに打ち抜いて正極とした。
セパレータとしては、ガラス濾紙(GA100:ADVANTEC)をφ16mmに打ち抜いたものを2枚重ねたものを用い、負極にはφ16mmのリチウム金属箔を用いた。
電解液は2.0mol/LのLiPFのEMC溶液を用いた。
<電池の作製、測定>
上記、正極、および、セパレータを真空加熱乾燥後、乾燥アルゴングローブボックス中で、2032型コインセルを組み立てた。
作製した蓄電素子を25℃の恒温槽中に保持し、以下の表1に示す条件1〜条件8の条件で東洋システム製充放電試験機TOSCAT3100を用いて充放電試験を実施した。基準電流値を2mAとし、条件2及び条件6ではそれぞれ放電のみ基準電流値の5倍及び10倍の値とし、条件4及び条件8はそれぞれ充電のみ基準電流値の5倍及び10倍の値とした。また、全て、充電はカットオフ電圧5.2Vで定電流、放電はカットオフ電圧3.0Vで定電流とし、充電と放電、放電と充電の間には5分間の休止を入れた。
[実施例2]
実施例1において、電解液の溶媒を質量比で50:50のEMC:DMCの混合溶媒とした他は実施例1と同じ電池を作製し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
[実施例3]
実施例1において、電解液の溶媒をDMCとした他は実施例1と同じ電池を作製し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
[実施例4]
実施例1において、電解液の溶媒を質量比で10:90のEC:DMCの混合溶媒とした他は実施例1と同じ電池を作製し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
[実施例5]
実施例1において、電解液の溶媒を質量比で2:98のスルホラン(SL):DMCの混合溶媒とした他は実施例1と同じ電池を作製し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
[実施例6]
実施例1において、負極の活物質を黒鉛とし、以下のようにして作製した負極を用い、電解液の溶媒としてDMCを用いた他は実施例1と同様の電池を作製し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
負極は活物質として人造黒鉛(MAGD:日立化成工業)、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカブラック粉状:電気化学工業)、バインダとしてスチレンブタジエンゴム(TRD102A:JSR)、増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース(ダイセル2200:ダイセル化学工業)を、各々、固形分の質量比で100:5:2:1になるように混合し、水を加えて適切な粘度に調整したスラリーを、厚さ18μmの銅箔にドクターブレードを用いて片面に塗布した。乾燥後の目付け量の平均は11.0mg/cmであった。
[実施例7]
実施例1において、負極の活物質をチタン酸リチウムとし、以下のようにして作製した負極を用い、電解液の溶媒としてDMCを用いた他は実施例1と同様の電池を作製し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
負極は活物質としてチタン酸リチウム(石原産業)、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカブラック粉状:電気化学工業)、バインダとしてスチレンブタジエンゴム(TRD102A:JSR)、増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース(ダイセル2200:ダイセル化学工業)を用いた。それぞれの成分を、固形分の質量比で100:7:3:1になるように混合し、水を加えて適切な粘度に調整したスラリーを、厚さ18μmの銅箔にドクターブレードを用いて片面に塗布した。乾燥後の目付け量の平均は7.0mg/cmであった。
チタン酸リチウムは作動電位が1.5V(vsLi/Li+)であるため、充電のカットオフ電圧は3.7V、放電のカットオフ電圧は1.5Vとして充放電試験を実施した。
[実施例8]
実施例1において、負極として実施例7で用いたと同様のチタン酸リチウム負極を用い、電解液として2.0mol/LのLiBFを含む質量比で25:25:50のFEC:EMC:DMCの混合溶媒とした他は実施例1と同様の電池を作成し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
[実施例9]
実施例1において、負極として実施例6で用いたと同様の黒鉛負極を用い、電解液として3.0mol/LのLiPFを含むDMC溶液を用いた他は実施例1と同様の電池を作製し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
[実施例10]
実施例1において、負極として実施例6で用いたと同様の黒鉛負極を用い、電解液の溶媒を質量比で2:2:96のEC:FEC:DMCの混合溶媒とした他は実施例1と同じ電池を作製し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
[実施例11]
実施例1において、電解液のリチウム塩を1.0mol/LのLiBFと1.0mol/LのLiPFの混合塩とし、溶媒を質量比で2:2:96のEC:FEC:DMCの混合溶媒とした他は実施例1と同じ電池を作製し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
[実施例12]
実施例1において、電解液のリチウム塩を2.0mol/LのLiBF、溶媒を質量比で2:2:96のEC:FEC:DMCの混合溶媒とした他は実施例1と同じ電池を作製し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
[実施例13]
実施例1において、正極活物質として、実施例1におけるよりも細かく粉砕した生コークスを1200℃の不活性雰囲気でか焼して得られた易黒鉛化性炭素Bを用い、溶媒を質量比で2:2:96のEC:FEC:DMCの混合溶媒としたこと以外はて実施例1と同様にして電池を作製し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
易黒鉛化成炭素Bの平均粒径D50、面間隔d(002)、BET法比表面積、真密度の値は表2に示した。
[実施例14]
実施例1において、正極活物質として、実施例1とは種類の異なる生コークスを1500℃の不活性雰囲気でか焼して得られた易黒鉛化性炭素Cを用い、溶媒を質量比で2:2:96のEC:FEC:DMCの混合溶媒としたこと以外は実施例1と同様にして電池を作製し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
易黒鉛化成炭素Cの平均粒径D50、面間隔d(002)、BET法比表面積、真密度の値は表2に示した。
[比較例1〜3]
正極活物質としては、比較例1では人造黒鉛(KS6:TIMCAL製)、比較例2では人造黒鉛(MAGD:日立化成工業製)、比較例3では難黒鉛化性炭素(LBV−1001:住友ベークライト製)を用いた。これら炭素材料のレーザー光回折法による平均粒径D50、X線回折法によるd002面間隔、BET法比表面積、真密度の値は表2に示した。
正極活物質以外は実施例3と同じ方法で電極、および、電池を作製し、評価した。
充放電特性を評価するときの基準電流は、比較例2のみ0.6mAとし、他は2mAとした。
[比較例4]
正極活物質としてアセチレンブラック(デンカブラック粉状、電気化学工業)を用いた電極を作製した。アセチレンブラックのレーザー光回折法による平均粒径D50、X線回折法によるd002面間隔、BET法比表面積の値は表2に示した。
アセチレンブラックは実施例1と同じ方法では良好なスラリーを作製できなかったため、人造黒鉛(MAGD:日立化成工業製)を加え、バインダ兼増粘剤としてCMCを用い、固形分質量比はアセチレンブラック:人造黒鉛:CMC=50:20:5とした。また、目付けは2.9mg/cmであった。充放電条件は目付けが小さい分、基準電流値は0.5mAとして評価した。
[比較例5]
実施例1において、正極活物質として、実施例1と同じ生コークスを1800℃の不活性雰囲気でか焼して得られた易黒鉛化性炭素Dを用い、溶媒を質量比で2:2:96のEC:FEC:DMCの混合溶媒としたこと以外は実施例1と同様にして電池を作製し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
易黒鉛化成炭素Dの平均粒径D50、面間隔d(002)、BET法比表面積、真密度の値は表2に示した。
[比較例6]
実施例14において、正極活物質として、実施例14と同じ生コークスを1500℃の不活性雰囲気でか焼し、3μmのメッシュで篩にかけて得られた易黒鉛化性炭素Eを用いた。易黒鉛化性炭素Eは比表面積が大きいため、導電助剤、バインダ、増粘材の量は実施例14と同じでは良好なスラリーが作成できなかったので、活物質:導電助剤:バインダ:増粘材の固形分の質量比は100.0:15.0:5.0:8.0としたて電極を作成し、溶媒を質量比で2:2:96のEC:FEC:DMCの混合溶媒としたこと以外は実施例1と同様にして電池を作製し、実施例1と同様の充放電試験を実施した。
易黒鉛化成炭素Eの平均粒径D50、面間隔d(002)、BET法比表面積、真密度の値は表2に示した。
表2に実施例及び比較例で用いた正極活物質の材料及び物性について示す。
表3に実施例及び比較例の電池について正極活物質、負極の種類、電解液組成を示す。
(充放電試験)
実施例及び比較例で作製した電池について表1に示す充放電試験を行った。充放電試験の結果を表4に示す。基準電流10サイクル目の4Vまでの充電容量(mAh/g)の値も示した。負極がLiではなく、黒鉛やチタン酸リチウムを使用した場合は黒鉛の電位を0.3V(vs.Li/Li)、チタン酸リチウムの電位を1.5V(vs.Li/Li+)として正極電位が4V(vs.Li/Li)となるようにセルの電圧が各々3.7V、2.5Vまでの充電容量を示した。実施例の場合は全体の容量に対する4Vまでの充電容量は2〜12%と小さく、特許文献4等に示されているものとは異なるメカニズムで充電容量を発現していることがわかる。
以下では、充放電試験の結果について検討する。
(充放電過程のX線回折)
図1に実施例3の基準電流での充放電サイクル1回目、2回目、10回目の充放電曲線を示す。1回目は電圧は4.8Vまで急激に上昇した後60mAh/gまで上昇がほとんどみられず、60mAh/g以上では緩やかに上昇している。2サイクル目以降の充電では電圧がほとんど上昇しない領域は見られず、4.2V付近から電圧の上昇が緩やかになる。サイクル毎に曲線の形状は徐々に変化し、充放電効率も高くなっていくが、10サイクル目でほぼ安定し、それ以降の充放電曲線の変化は小さい。ここで、放電容量は正極活物質の単位質量あたりの容量である。
Be窓を通して電極のX線回折を計測できるセルを使用し、CuKα線を用いて2θ=26°を中心としたピークの計測を実施した結果を図2に示す。図1にaで示した充電前から4.8Vまでの間は2θ=26°を中心とした位置にピークがあったが、4.8Vを超えたbの領域では2θ=23°を中心としたブロードなピークが出現した。放電時には3.5V以下で充電前の位置に戻った。2θ=26°付近のピークは黒鉛構造の面間隔d(002)に相当し、低角側にシフトしたということは面間隔が広がったと解釈できる。充電前の面間隔d(002)はピーク位置から0.345nmと算出できる。
2回目の充放電過程のX線回折も計測したところ、図2でaからbのピーク位置になる電圧が4.3V以降で起こるといった違いが見られたが、変化後のピーク位置は同じで、放電時には3.5V以下で充電前の位置に戻った。これらのことから、充電過程ではPF が易黒鉛化性炭素の面間に挿入してd(002)が大きくなり、放電時にはPF が面間から脱離し、d(002)が充電前に戻っていると推測され、易黒鉛化性炭素でも黒鉛と同様に層間へのアニオンの挿入脱離により大きな容量が発現することができていることが確認できた。
活性炭やアルカリ賦活した易黒鉛化性炭素の場合は、層間への挿入を利用していないため、特許文献4の図7や図6に示されているように、比較的低電位から容量を持つが、電位を上げても層間への挿入が起こらないため最終的な容量は小さい。
実施例1〜3はいずれも10サイクル目の放電容量が大きく、基準電流の5倍、10倍といった電流値における放電試験、充電試験での容量維持率も大よそ80%以上と良好な値を示している。ここで、容量維持率とは、基準電流10サイクル目に得られた放電容量に対して、各条件で得られた放電容量の割合を示しており、100%に近いほど高電流の放電や充電に対しても良好な特性が得られていることを示すものである。
10サイクル目の充放電効率は実施例1、2、3の順番、すなわち、電解液溶媒としてEMCのみのときよりもDMCと混合、もしくは、DMCのみとした方が高くなっており、好ましい結果となっている。充放電効率は、充電容量に対する放電容量の割合であり、この値が小さいと放電に寄与できていない充電容量の一部は電解液の分解等何らかの副反応に使用されていると考えられ、サイクル劣化を招きやすい。
実施例4は電解液にDMCに加えて環状カーボネートの1種であるECを添加したものであり、実施例5はスルホラン(SL)を添加したものである。どちらの場合も充放電効率がDMCだけの場合よりも向上している。
実施例6は負極に黒鉛を用いたもの、実施例7及び実施例8は負極にチタン酸リチウムを用いたものであるが、いずれの場合も良好な特性を示している。特に負極にチタン酸リチウムを用いた実施例7及び実施例8では充放電効率が高くなっている。
実施例9、10は負極に黒鉛を用い、電解液を実施例9では塩濃度を高くし、実施例10では、ECとFECを添加したものである。どちらも良好な特性を示し、充放電効率も高い。
実施例11はリチウム塩の半分をLiBFにした場合であり、実施例12はリチウム塩を全てLiBFにした場合である。LiBFを用いると、LiPFを単独で用いた場合よりも充放電効率がやや悪くなる傾向があるものの、概ね良好な特性を示している。
実施例13、14は10サイクル目の放電容量が大きく、基準電流の5倍、10倍の電流値における放電試験、充電試験での容量維持率も80%以上と良好な値を示している。
比較例1〜4は電解液を実施例3と同じものとし、正極の活物質の種類を変えたものである。
比較例1、2はどちらも黒鉛を用いたもので、充放電効率は易黒鉛化性炭素を用いたものより高くなっている。しかし、基準電流値の5倍、10倍といった高電流での放電試験、充電試験での容量維持率をみると、特に充電試験では大きな低下が見られる。また比較例2では基準電流10サイクル目での放電容量も小さい。
比較例3はd(002)が実施例よりも大きい、いわゆる難黒鉛化性炭素を用いた場合であるが、ほとんど充放電ができなかった。
比較例4はアセチレンブラックとMAGDの混合品であるが、表1に示した炭素材料物性値はアセチレンブラックの値であり、表4の放電容量の計算に用いた質量はアセチレンブラックとMAGDを合わせた値である。d(002)は実施例1に近く、充電可能であり、基準電流の5倍、10倍といった電流値の放電試験、充電試験の容量維持率も高い。しかし、基準電流10サイクル目の放電容量、及び、充放電効率が著しく低い。これは、アセチレンブラックの比表面積が大きいため、電解液の分解等を多く引き起こしているためと考えられる。
比較例5は10サイクル目の放電容量、及び、基準電流の5倍、10倍の電流値における放電試験の容量維持率は大きいが、基準電流の5倍、10倍の電流値における充電試験の容量維持率が小さい。
比較例6は10サイクル目の放電容量が小さく、充放電効率も悪い。比表面積が大きいため、電解液の分解等を多く引き起こしている可能性がある。
(ボルタンメトリー)
表5に示すように、作用極をSUSとし、対極をリチウムとし,電解液溶媒をDMCとして、LiPF濃度を1.0mol/L、4.0mol/L、5.0mol/Lと変化させた場合、及び、作用極を白金とし、対極をリチウムとし、電解液溶媒をEC:FEC:DMC=2:2:96の質量比として、LiPF濃度を2.0mol/L、3mol/Lと変化させた場合のボルタンメトリーを25℃で行い、電流の立ち上がりから酸化開始電位を求めた。その結果を表5に示した。
この結果から、電解液のリチウム塩濃度は2.0mol/L以上とした方がよく、3.0mol/Lなどさらに高濃度にすると酸化分解が抑制され、充放電効率が向上することがわかる。
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 電池外装缶
5 負極引き出し線
6 正極引き出し線
10 非水電解液蓄電素子
特許第4569126号公報 特許第4392169号公報 特許第4314087号公報 特許第5042754号公報 特許第5399185号公報 特開2012−195563号公報

Claims (7)

  1. アニオンを挿入乃至脱離可能な正極活物質を含む正極と、カチオンを挿入乃至脱離可能な負極活物質を含む負極と、非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液とを備えた非水電解液蓄電素子であって、
    前記正極活物質が、X線回折法による(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以上0.360nm以下であり、比表面積が1m/gより大きく30m/gより小さい炭素材料を含み、
    前記負極活物質が、リチウムイオンを挿入乃至脱離可能な材料を含む
    ことを特徴とする非水電解液蓄電素子。
  2. 前記正極活物質は真密度が2.03g/cm以上、2.20/cmより小さい炭素材料であることを特徴とする請求項1記載の非水電解液蓄電素子。
  3. 前記負極は、炭素、乃至は、チタン酸リチウムを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解液蓄電素子。
  4. 前記非水電解液はリチウム塩を含み、リチウム塩濃度が2.0mol/L以上、4.0mol/L以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解液蓄電素子。
  5. 前記電解液は、非水溶媒としてジメチルカーボネートを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解液蓄電素子。
  6. 前記電解液は、非水溶媒として環状カーボネート、および/または環状スルホンを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解液蓄電素子。
  7. 前記環状カーボネートはフッ素化環状カーボネートを含むことを特徴とする請求項6に記載の非水電解液蓄電素子。
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