JP2016163852A - テイラー反応装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ショートパスを抑制して所望の粒子径と粒度分布が得られるテイラー反応装置を提供する。【解決手段】外筒1と内筒2との間に形成された隙間空間10がテイラー渦発生領域であるテイラー反応装置Aであって、隙間空間10には、テイラー渦T,T間の流動を抑制する抑制通路7が設けられており、抑制通路7における通路長さは、1mm以上、10mm以下である。抑制通路7は、内筒2の外周面から外方に突出するように形成された環状の内側遮蔽板6bか、外筒1の内周面との間に形成されている外側環状通路7bである。抑制通路7の長さが1〜10mmであると、テイラー渦T,T間のショートパスが抑制されるので、滞留時間の短いまま流出する粒子の割合を低減することができ、同じテイラー渦の中で粒子が所望の粒子径まで成長してから、次のテイラー渦へ移るので、所望の粒子径の粒子と粒子径分布の小さい粒子が得られる。【選択図】図1
Description
本発明は、テイラー反応装置に関するものである。さらに詳しくは、微粒子を製造するためのテイラー反応装置に関する。
粒度分布に特徴を有するミクロンメートルスケールの微粒子を製造するためには、ガスや溶液の化学反応を利用する“成長法”が一般的に用いられる。この成長法は2段階の工程を踏むものであり、第1段階で微粒子の核を生成させ、第2段階で核を成長させ、所望の粒子径にするものである。この溶液同士の“成長法”では、供給液同士が化学反応を起こす局所的な場所での濃度変化を制御することが重要である。
しかるに、従来から成長法によく利用されている撹拌槽では、ア)撹拌槽内にデッドゾーンが生じる、イ)せん断が弱い、ウ)滞留時間が不均一等、の原因により化学反応の引き起こされる撹拌槽内部の領域において供給液の濃度が不均一となるという欠点があり、そのため所望の粒子径と粒度分布を有する微粒子が得られないことがあった。
このような欠点を解消するため、特許文献1の従来技術ではテイラー反応装置を2台用いることで粒子の成長を制御する方法が提案された。
上記従来技術は、供給液同士を反応させ、核を生成させる第1段目のテイラー反応装置と粒子の結晶成長を行う第2段目のテイラー反応装置の2台を備えている。第1段目のテイラー反応装置における流動状態は、やや斜めのドーナツ状の擬似管路が形成され、供給液は螺旋状に併走して化学反応が引き起こされる。この結果、化学反応の生成箇所における濃度変化を制御し、良好な微粒子の製造を可能としたと説明されている。
上記従来技術は、供給液同士を反応させ、核を生成させる第1段目のテイラー反応装置と粒子の結晶成長を行う第2段目のテイラー反応装置の2台を備えている。第1段目のテイラー反応装置における流動状態は、やや斜めのドーナツ状の擬似管路が形成され、供給液は螺旋状に併走して化学反応が引き起こされる。この結果、化学反応の生成箇所における濃度変化を制御し、良好な微粒子の製造を可能としたと説明されている。
しかしながら、特許文献1の従来技術では、テイラー反応装置を2台用いるので、設置スペースが大きくなるとか、2台のテイラー反応装置の間で順序よく化学反応させることが困難とかの問題があり、現実には所望の粒子径や粒度分布を得ることが困難であった。
さらに、上記従来技術に限らず、一般にテイラー反応装置では、つぎのような問題があった。
図9に示すように、一般的なテイラー反応装置は、静止させた外筒101と回転させる内筒102を有し、外筒101と内筒102との間の隙間空間である槽110の一端に供給管103を取付け、他端に排出口104を設けている。槽110に溶液を入れて内筒102を回転させると、回転数が一定の範囲内のとき槽110内にテイラー渦が発生する。図10(A)に示すように、テイラー渦Tはドーナツ状の旋回する流体であり、一つ一つのテイラー渦Tは独立した流動体である。そして、隣接するテイラー渦Tに対しては、内筒まわりの旋回方向も逆であり、同図(B)に示すように、各テイラー渦Tの断面内の流れも互いに逆向きである。
図9に示すように、一般的なテイラー反応装置は、静止させた外筒101と回転させる内筒102を有し、外筒101と内筒102との間の隙間空間である槽110の一端に供給管103を取付け、他端に排出口104を設けている。槽110に溶液を入れて内筒102を回転させると、回転数が一定の範囲内のとき槽110内にテイラー渦が発生する。図10(A)に示すように、テイラー渦Tはドーナツ状の旋回する流体であり、一つ一つのテイラー渦Tは独立した流動体である。そして、隣接するテイラー渦Tに対しては、内筒まわりの旋回方向も逆であり、同図(B)に示すように、各テイラー渦Tの断面内の流れも互いに逆向きである。
こうしたテイラー渦が槽110内で隣接して何本も発生し、溶液自体は少しづつ隣のテイラー渦に移っていって、溶液同士が撹拌され少しづつ粒子が成長していって最終的には所望の粒径の粒子が排出される。
しかしながら、なかには充分に成長しきらない粒子が次々と隣接するテイラー渦に移っていく、いわゆるショートパスが発生し、所望の粒径に至らない粒子が発生することがあった。
この結果、粒度分布が広がり均一な粒子が得られない等の問題が生じていた。
この結果、粒度分布が広がり均一な粒子が得られない等の問題が生じていた。
本発明は上記事情に鑑みショートパスを抑制して、所望の粒子径と粒度分布が得られるテイラー反応装置を提供することを目的とする。
第1発明のテイラー反応装置は、外筒と、該外筒内で回転する内筒とを備え、前記外筒と前記内筒との間に形成された隙間空間が複数本のテイラー渦が発生するテイラー渦発生領域であるテイラー反応装置であって、前記隙間空間には、テイラー渦間の流動を抑制する抑制通路が設けられており、該抑制通路における通路長さは、1mm以上、10mm以下であることを特徴とする。
第2発明のテイラー反応装置は、第1発明において、前記抑制通路は、前記外筒の内周面から内方に突出するように形成された環状の外側遮蔽板と前記内筒の外周面との間に形成されている内側環状通路であることを特徴とする。
第3発明のテイラー反応装置は、第1発明において、前記抑制通路は、前記内筒の外周面から外方に突出するように形成された環状の内側遮蔽板と前記外筒の内周面との間に形成されている外側環状通路であることを特徴とする。
第4発明のテイラー反応装置は、第1発明において、前記抑制通路は、前記外筒の内周面から内方に突出するように形成された環状の外側遮蔽板と前記内筒の外周面との間の内側環状通路、前記内筒の外周面から外方に突出するように形成された環状の内側遮蔽板と前記外筒の内周面との間の外側環状通路、および前記外側遮蔽板と前記内側遮蔽板との間の縦通路とによって形成されている屈曲通路であることを特徴とする。
第2発明のテイラー反応装置は、第1発明において、前記抑制通路は、前記外筒の内周面から内方に突出するように形成された環状の外側遮蔽板と前記内筒の外周面との間に形成されている内側環状通路であることを特徴とする。
第3発明のテイラー反応装置は、第1発明において、前記抑制通路は、前記内筒の外周面から外方に突出するように形成された環状の内側遮蔽板と前記外筒の内周面との間に形成されている外側環状通路であることを特徴とする。
第4発明のテイラー反応装置は、第1発明において、前記抑制通路は、前記外筒の内周面から内方に突出するように形成された環状の外側遮蔽板と前記内筒の外周面との間の内側環状通路、前記内筒の外周面から外方に突出するように形成された環状の内側遮蔽板と前記外筒の内周面との間の外側環状通路、および前記外側遮蔽板と前記内側遮蔽板との間の縦通路とによって形成されている屈曲通路であることを特徴とする。
第1発明によれば、抑制通路の長さが1〜10mmであると、テイラー渦同士間のショートパスが抑制されるので、滞留時間の短いまま流出する粒子の割合を低減することができる。このため同じテイラー渦の中で粒子が所望の粒子径まで成長してから、次のテイラー渦へ移るので、最終的には所望の粒子径の粒子と粒子径分布の小さい粒子が得られる。
第2発明によれば、外側遮蔽板と内筒外周面との間の内側環状通路の経路長さが1〜10mmであると、隣接するテイラー渦間での接触を抑制しつつ、その通路を通じて粒子移動を可能にもするので、ショートパスを抑制しつつ複数本のテイラー渦による連続撹拌を実施できる。
第3発明によれば、内側遮蔽板と外筒内周面との間の外側環状通路の経路長さが1〜10mmであると、隣接するテイラー渦間での接触を抑制しつつ、その通路を通じて粒子移動を可能にもするので、ショートパスを抑制しつつ複数本のテイラー渦による連続撹拌を実施できる。
第4発明によれば、外側遮蔽板と内側遮蔽板により形成された屈曲通路によって隣接するテイラー渦間での接触を抑制しつつ、その通路を通じて粒子移動を可能にもするので、ショートパスを抑制しつつ複数本のテイラー渦による連続撹拌を実施できる。
第2発明によれば、外側遮蔽板と内筒外周面との間の内側環状通路の経路長さが1〜10mmであると、隣接するテイラー渦間での接触を抑制しつつ、その通路を通じて粒子移動を可能にもするので、ショートパスを抑制しつつ複数本のテイラー渦による連続撹拌を実施できる。
第3発明によれば、内側遮蔽板と外筒内周面との間の外側環状通路の経路長さが1〜10mmであると、隣接するテイラー渦間での接触を抑制しつつ、その通路を通じて粒子移動を可能にもするので、ショートパスを抑制しつつ複数本のテイラー渦による連続撹拌を実施できる。
第4発明によれば、外側遮蔽板と内側遮蔽板により形成された屈曲通路によって隣接するテイラー渦間での接触を抑制しつつ、その通路を通じて粒子移動を可能にもするので、ショートパスを抑制しつつ複数本のテイラー渦による連続撹拌を実施できる。
つぎに、本発明の実施形態を説明する。
まず、図1に基づき、本発明の各実施形態に共通するテイラー反応装置Aの基本構造を説明する。
1は外筒で、2は内筒である。外筒1は外板1aと内板1bとから二重筒に構成されており、空洞1cは加温媒体を通すために利用される。また、この外筒1は静止状態で用いられる。
まず、図1に基づき、本発明の各実施形態に共通するテイラー反応装置Aの基本構造を説明する。
1は外筒で、2は内筒である。外筒1は外板1aと内板1bとから二重筒に構成されており、空洞1cは加温媒体を通すために利用される。また、この外筒1は静止状態で用いられる。
内筒2は中実または中空の軸状物であって外筒1内に同心状で挿入されている。そして、モータ等の駆動源に接続されて、回転可能となっている。外筒1の内周面と内筒2の外表面との間には隙間空間10が形成されており、その隙間空間10は筒軸方向に延びている。すなわちドーナツ状の隙間空間10が長く延びた形状となっている。そして、この隙間空間10がテイラー渦発生領域であり撹拌槽として機能する。
外筒1の長手方向一端部(図面中の右端部)には供給口3が設けられている。図示のように、フランジ5に形成してもよく、外筒1に設けてもよい。供給口3は外部から隙間空間10に反応前溶液を供給する導入口である。
外筒1の長手方向他端部(図面中の左端部)には、排出口4が設けられている。排出口4からは隙間空間10内の反応後溶液が排出される。
外筒1の長手方向他端部(図面中の左端部)には、排出口4が設けられている。排出口4からは隙間空間10内の反応後溶液が排出される。
このテイラー反応装置Aでは、隙間空間10内に反応溶液を充填した状態で内筒2を適当な回転数で回転させることにより、隙間空間10内の溶液にテイラー渦Tを生成させ撹拌することができる。
テイラー渦Tは、図9に基づき既述したように、隙間空間10内において生ずるドーナツ状の流動体であって、内筒2のまわりで周方向に流動し、周方向の流れの向きが隣接するテイラー渦T間で逆向きである。また、各テイラー渦T,Tの断面内でも渦状に流動しているが、その向きも隣接するテイラー渦T,T間で逆向きである。
以下に、本発明のテイラー反応装置における抑制通路の各実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1および図2に基づき、第1実施形態に係る抑制通路を説明する。
符号6aは外側遮蔽板であって、外筒1の内板1bから内方に突出するように形成された環状のリブにより構成されている。この外側遮蔽板6aの先端面は平坦となっており、内筒2の平坦な外表面に向き合っている。この外側遮蔽板6a先端面と内筒2外表面との間は環状の通路となっており、この通路が内側環状通路7aである。
(第1実施形態)
図1および図2に基づき、第1実施形態に係る抑制通路を説明する。
符号6aは外側遮蔽板であって、外筒1の内板1bから内方に突出するように形成された環状のリブにより構成されている。この外側遮蔽板6aの先端面は平坦となっており、内筒2の平坦な外表面に向き合っている。この外側遮蔽板6a先端面と内筒2外表面との間は環状の通路となっており、この通路が内側環状通路7aである。
この内側環状通路7aの通路長さd1(内外筒の軸方向に沿う長さ)は外側遮蔽板6aの厚みwによって決定されるが、その寸法は、1mm以上であり10mm以下とされる。
また、内側環状通路7aの半径方向寸法d2(内外筒の半径方向に沿う長さ)は0.5mm〜2mmが好ましく、約1mmとするのが好ましい。
上記半径方向寸法d2を前提とすると、通路長さd1が1mm未満であると、通過抵抗が小さくなって隣接するテイラー渦T,T間のショートパスが発生しやすくなり、均一な粒子が得られなくなるという不都合が生ずる。一方、10mmより長いと、通過抵抗が大きくなって隣接するテイラー渦Tからの溶液の流動が過小になり、粒子成長に時間がかかるという不都合が発生する。
また、内側環状通路7aの半径方向寸法d2(内外筒の半径方向に沿う長さ)は0.5mm〜2mmが好ましく、約1mmとするのが好ましい。
上記半径方向寸法d2を前提とすると、通路長さd1が1mm未満であると、通過抵抗が小さくなって隣接するテイラー渦T,T間のショートパスが発生しやすくなり、均一な粒子が得られなくなるという不都合が生ずる。一方、10mmより長いと、通過抵抗が大きくなって隣接するテイラー渦Tからの溶液の流動が過小になり、粒子成長に時間がかかるという不都合が発生する。
内側環状通路7aが上記範囲内であると上述した不都合は生じず、図2に示すように、隣接するテイラー渦T,T間で適量の溶液流動が許容され、連続的なテイラー反応を生じさせることができる。
(第2実施形態)
図3に基づき、第2実施形態に係る抑制通路を説明する。
符号6bは内側遮蔽板であって、外筒1の内板1bから内方に突出するように形成された環状のリブにより構成されている。この内側遮蔽板6bの先端面は平坦となっており、内筒2の平坦な外表面に向き合っている。この内側遮蔽板6b先端面と内筒2外表面との間は環状の通路となっており、この通路が外側環状通路7bである。
図3に基づき、第2実施形態に係る抑制通路を説明する。
符号6bは内側遮蔽板であって、外筒1の内板1bから内方に突出するように形成された環状のリブにより構成されている。この内側遮蔽板6bの先端面は平坦となっており、内筒2の平坦な外表面に向き合っている。この内側遮蔽板6b先端面と内筒2外表面との間は環状の通路となっており、この通路が外側環状通路7bである。
この外側環状通路7bの通路長さd1(内外筒の軸方向に沿う長さ)は内側遮蔽板6bの厚みwによって決定されるが、その寸法は、1mm以上であり10mm以下とされる。
また、外側環状通路7bの半径方向寸法d2(内外筒の半径方向に沿う長さ)は0.5mm〜2mmが好ましく、約1mmとするのが好ましい。
また、外側環状通路7bの半径方向寸法d2(内外筒の半径方向に沿う長さ)は0.5mm〜2mmが好ましく、約1mmとするのが好ましい。
外側環状通路7bが上記範囲内であると、第1実施形態の内側環状通路7aと同様に、上述した不都合は生じず、隣接するテイラー渦T,T間で適量の溶液流動が許容され、連続的なテイラー反応を生じさせることができる。
(第3実施形態)
図4に基づき、第3実施形態に係る抑制通路を説明する。
本実施形態の抑制通路は、外側遮蔽板6aと内側遮蔽板6bとで屈曲通路に形成されたものである。
図4に基づき、第3実施形態に係る抑制通路を説明する。
本実施形態の抑制通路は、外側遮蔽板6aと内側遮蔽板6bとで屈曲通路に形成されたものである。
外側遮蔽板6aは外筒1(1b)の内周面から内方に突出するように形成された環状のリブで構成されており、内側遮蔽板6bは内筒2の外周面から外方に突出するように形成された環状のリブで構成されている。
そして、屈曲通路7cは、外筒1の内周面から内方に突出するように形成された環状の外側遮蔽板6aと内筒2の外周面との間の内側環状通路、内筒2の外周面から外方に突出するように形成された環状の内側遮蔽板6bと外筒1の内周面との間の外側環状通路、および外側遮蔽板6aと内側遮蔽板6bとの間の縦通路とによって形成されている。
そして、屈曲通路7cは、外筒1の内周面から内方に突出するように形成された環状の外側遮蔽板6aと内筒2の外周面との間の内側環状通路、内筒2の外周面から外方に突出するように形成された環状の内側遮蔽板6bと外筒1の内周面との間の外側環状通路、および外側遮蔽板6aと内側遮蔽板6bとの間の縦通路とによって形成されている。
本実施形態における屈曲通路7cも、その経路長さが1mm〜10mmとされる。経路長さが1mm未満であると、通過抵抗が小さくなって隣接するテイラー渦T,Tからの溶液の流動が過小になって、粒子成長に時間がかかるという不都合が発生する。一方、10mmより長いと、通過抵抗が大きくなって隣接するテイラー渦T,T間のショートパスが発生しやすくなって、均一な粒子が得られなくなるという不都合が生ずる。これに対し上記範囲だと、上述した不都合は生じず、適量の溶液流動が許容され、連続的なテイラー反応を生じさせることができる。
(各実施形態の適用範囲)
上記各実施形態における抑制通路7a,7b,7cの上記寸法は、内筒2の外径が80〜90mm、外筒1の内径が90〜100mmの装置において、最も望ましい数値であるが、内筒2外径が90〜100mm位、外筒1内径が100〜110mm位までの大型の装置にも適用でき、さらに、内筒2外径が70〜80mm位、外筒1内径が80〜90mm位までの小型の装置にも適用できる。
すなわち、大きさに極端な違いがない限り、前記寸法を好適範囲として適用することができる。
上記各実施形態における抑制通路7a,7b,7cの上記寸法は、内筒2の外径が80〜90mm、外筒1の内径が90〜100mmの装置において、最も望ましい数値であるが、内筒2外径が90〜100mm位、外筒1内径が100〜110mm位までの大型の装置にも適用でき、さらに、内筒2外径が70〜80mm位、外筒1内径が80〜90mm位までの小型の装置にも適用できる。
すなわち、大きさに極端な違いがない限り、前記寸法を好適範囲として適用することができる。
(各実施形態の抑制通路7の効果)
上記した各実施形態の抑制通路7を設けておくと、テイラー渦Tを構成している大部分の流体が抑制通路7によって隣接するテイラー渦T間の接触を抑制しながら、わずかの流体は抑制通路7を通って隣接するテイラー渦Tに流れ込むので、溶液が供給口3から排出口4に至る複数段のテイラー渦Tを順々に移っていくことが可能となる。この移動によって、粒子が順々に成長していくことが可能となる。
上記した各実施形態の抑制通路7を設けておくと、テイラー渦Tを構成している大部分の流体が抑制通路7によって隣接するテイラー渦T間の接触を抑制しながら、わずかの流体は抑制通路7を通って隣接するテイラー渦Tに流れ込むので、溶液が供給口3から排出口4に至る複数段のテイラー渦Tを順々に移っていくことが可能となる。この移動によって、粒子が順々に成長していくことが可能となる。
(他の実施形態)
上記各実施形態における抑制通路7は1ヵ所に設けたものであるが、2ヵ所以上に設けてもよい。また、その形成位置は隙間空間10における軸方向において実験上あるいは計算上好適とされる位置を選択することでよい。
上記各実施形態における抑制通路7は1ヵ所に設けたものであるが、2ヵ所以上に設けてもよい。また、その形成位置は隙間空間10における軸方向において実験上あるいは計算上好適とされる位置を選択することでよい。
つぎに、実施例に基づき、本発明の効果の実証実験を説明する。
(実施例1)
Microsoft社製の表計算ソフトExcelとAnsys社製の流体解析ソフトCFXを用いて、外筒1に厚み2mmの外側遮蔽板6aを設けたときの滞留時間分布を計算した。Ansys社製の流体解析ソフトCFXを用いて図5に示す4分の一短縮モデルを作成した。この4分の一短縮モデルは図1に示す外側遮蔽板6aを有するテイラー管における円断面(つまり360°断面)の4分の一、つまり90°断面を取り出したモデルである。
4分の一短縮モデルの寸法は、長さ60mm,容量は100ml、外筒1の内径は96mm、内筒2の外径は84mmである。また、内側環状通路d2の寸法(図4中で仕切りと表示している物が外側遮蔽板6aである)は1mm。外側遮蔽板6aの厚さw、つまり抑制通路7の長さは2mmである。
(実施例1)
Microsoft社製の表計算ソフトExcelとAnsys社製の流体解析ソフトCFXを用いて、外筒1に厚み2mmの外側遮蔽板6aを設けたときの滞留時間分布を計算した。Ansys社製の流体解析ソフトCFXを用いて図5に示す4分の一短縮モデルを作成した。この4分の一短縮モデルは図1に示す外側遮蔽板6aを有するテイラー管における円断面(つまり360°断面)の4分の一、つまり90°断面を取り出したモデルである。
4分の一短縮モデルの寸法は、長さ60mm,容量は100ml、外筒1の内径は96mm、内筒2の外径は84mmである。また、内側環状通路d2の寸法(図4中で仕切りと表示している物が外側遮蔽板6aである)は1mm。外側遮蔽板6aの厚さw、つまり抑制通路7の長さは2mmである。
この短縮モデルを用いて流入口にトレーサー粒子を投入して4箇所の測定点(測定個所1〜4)におけるトレーサー濃度を10秒間、測定した。4個所の測定点は流入口3と摺出口4との間で略均等間隔で配置され、外側遮蔽板6aの前後で、入側2カ所(測定点1,2)、出側2カ所(測定点3,4)とされている。次にMicrosoft社製の表計算ソフトExcelを用いて、テイラー反応装置A内部の濃度推移を計算できるモデルを構築した。各々のテイラー渦T内部での混合は急激に進行するため、各々のテイラー渦Tを完全混合状態とした。このモデルにより計算負荷を抑えて滞留時間分布を計算することが可能となる。このモデルを用いて10秒間のトレーサー濃度推移を説明するテイラー渦T間の拡散流量Q、外側遮蔽板6a導入箇所での拡散流量Q‘を調査した。
テイラー渦間の拡散流量Q=7[L/min]、外側遮蔽板6a導入箇所でのテイラー渦T,T間の拡散流量Q’=0.2[L/min]とすると測定点における濃度推移は図6に示すように、測定点1,2がほぼ一致し、また測定点3,4がほぼ一致するが、測定点1,2の濃度と測定点3,4との間の濃度は明確に異なることがわかった。これらのパラメーターを用いて、外筒1と内筒2の間の空間体積V=100ml,長さ60mmでの滞留時間分布の計算した結果を実施例1として図7に示す。容積を流入量で除した平均滞留時間τは、4.19minとなった。初期流出の割合として、0〜1minまでの滞留時間割合を算出すると、15.1%となる。
(実施例2)
実施例2として、外側遮蔽板6aの代わりに厚み10mmの遮蔽板を置いた。つまり抑制通路7の長さは10mmとなる。実施例1と同様の解析を行い、拡散流量Q’を算出すると0.14[L/min]となった。厚み2mmの実施例よりも遮蔽板と内筒2間の流れ方向の長さを10mmと延長したために拡散流量が低減したと考えられる。平均滞留時間τは、3.58minとなった。初期流出の割合として、0〜1minまでの滞留時間割合を算出すると、16.8%となった。
実施例2として、外側遮蔽板6aの代わりに厚み10mmの遮蔽板を置いた。つまり抑制通路7の長さは10mmとなる。実施例1と同様の解析を行い、拡散流量Q’を算出すると0.14[L/min]となった。厚み2mmの実施例よりも遮蔽板と内筒2間の流れ方向の長さを10mmと延長したために拡散流量が低減したと考えられる。平均滞留時間τは、3.58minとなった。初期流出の割合として、0〜1minまでの滞留時間割合を算出すると、16.8%となった。
(比較例1)
比較例1として、外側遮蔽板6aの代わりに厚み0.1mmの遮蔽板を置いて抑制通路とした。同様の計算を行った。比較例1におけるテイラー渦T間の拡散流量Q’テイラー渦T間の接触面積比によって決定すると考えられる。外筒1と内筒2の断面積をSm2、ラビリンス通路6導入箇所の軸方向の断面積をS’m2とする。断面積比S’/Sは0.18とする。拡散流量Q’はQ’=(S’/S)Q より1.3[L/min]となる。平均滞留時間は4.34minとなった。初期流出の割合として、0〜1minまでの滞留時間割合を算出すると、19.2%となった。
比較例1として、外側遮蔽板6aの代わりに厚み0.1mmの遮蔽板を置いて抑制通路とした。同様の計算を行った。比較例1におけるテイラー渦T間の拡散流量Q’テイラー渦T間の接触面積比によって決定すると考えられる。外筒1と内筒2の断面積をSm2、ラビリンス通路6導入箇所の軸方向の断面積をS’m2とする。断面積比S’/Sは0.18とする。拡散流量Q’はQ’=(S’/S)Q より1.3[L/min]となる。平均滞留時間は4.34minとなった。初期流出の割合として、0〜1minまでの滞留時間割合を算出すると、19.2%となった。
平均滞留時間τを比較すると、実施例1、実施例2、比較例1の順に、4.19min、3.58min、4.34minである。比較例1は、容積の減少が少ないため、平均滞留時間が最も長い。
初期流出の割合として、0〜1minまでの滞留時間割合で比較する。図7に示すように、比較例1ではこの領域で早い時間に高いピークが来るので、初期に流出する量が多いことが分かる。一方、外側遮蔽板6aを導入した実施例1、実施例2では、ピークが遅い時間に来るので、初期に流出する量が少ないことが分かる。
初期流出の割合として、0〜1minまでの滞留時間割合で比較する。図7に示すように、比較例1ではこの領域で早い時間に高いピークが来るので、初期に流出する量が多いことが分かる。一方、外側遮蔽板6aを導入した実施例1、実施例2では、ピークが遅い時間に来るので、初期に流出する量が少ないことが分かる。
図8に示すように、具体的に1minまでの初期割合を比較すると、実施例1では15.1%、実施例2では16.8%であったのに対して比較例1では19.2%ではまで増加した。つまり、厚み2mmの外側遮蔽板6aの導入により、1minまでの初期流出を4%程度低減できたことになる。そして、このことはショートパスの抑制に効果があることを示している。外側遮蔽板6aの軸方向の厚みを厚くするとテイラー渦T間の拡散流量Q’を抑制する効果で初期流出を低減することができるが、厚みを11mmまで厚くすると容積の減少により平均滞留時間が減少することで初期流出が増加することがわかった。
A テイラー反応装置
T テイラー渦
1 外筒
2 内筒
3 供給口
4 排出口
7 抑制通路
6a 外側遮蔽板
6b 内側遮蔽板
10 隙間空間
T テイラー渦
1 外筒
2 内筒
3 供給口
4 排出口
7 抑制通路
6a 外側遮蔽板
6b 内側遮蔽板
10 隙間空間
Claims (4)
- 外筒と、該外筒内で回転する内筒とを備え、前記外筒と前記内筒との間に形成された隙間空間が複数本のテイラー渦が発生するテイラー渦発生領域であるテイラー反応装置であって、
前記隙間空間には、テイラー渦間の流動を抑制する抑制通路が設けられており、該抑制通路における通路長さは、1mm以上、10mm以下である
ことを特徴とするテイラー反応装置。 - 前記抑制通路は、前記外筒の内周面から内方に突出するように形成された環状の外側遮蔽板と前記内筒の外周面との間に形成されている内側環状通路である
ことを特徴とする請求項1記載のテイラー反応装置。 - 前記抑制通路は、前記内筒の外周面から外方に突出するように形成された環状の内側遮蔽板と前記外筒の内周面との間に形成されている外側環状通路である
ことを特徴とする請求項1記載のテイラー反応装置。 - 前記抑制通路は、前記外筒の内周面から内方に突出するように形成された環状の外側遮蔽板と前記内筒の外周面との間の内側環状通路、前記内筒の外周面から外方に突出するように形成された環状の内側遮蔽板と前記外筒の内周面との間の外側環状通路、および前記外側遮蔽板と前記内側遮蔽板との間の縦通路とによって形成されている屈曲通路である
ことを特徴とする請求項1記載のテイラー反応装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015044322A JP2016163852A (ja) | 2015-03-06 | 2015-03-06 | テイラー反応装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015044322A JP2016163852A (ja) | 2015-03-06 | 2015-03-06 | テイラー反応装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2016163852A true JP2016163852A (ja) | 2016-09-08 |
Family
ID=56876082
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015044322A Pending JP2016163852A (ja) | 2015-03-06 | 2015-03-06 | テイラー反応装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2016163852A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE102017119078A1 (de) | 2016-08-24 | 2018-03-01 | Mazda Motor Corporation | Hydrauliksteuersystem für Motor |
JP7213513B1 (ja) * | 2021-08-11 | 2023-01-27 | 国立大学法人神戸大学 | 流体の制御方法、及びテイラー渦流反応装置 |
WO2023017819A1 (ja) * | 2021-08-11 | 2023-02-16 | 国立大学法人神戸大学 | 流体の制御方法、及びテイラー渦流反応装置 |
-
2015
- 2015-03-06 JP JP2015044322A patent/JP2016163852A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP7213513B1 (ja) * | 2021-08-11 | 2023-01-27 | 国立大学法人神戸大学 | 流体の制御方法、及びテイラー渦流反応装置 |
WO2023017819A1 (ja) * | 2021-08-11 | 2023-02-16 | 国立大学法人神戸大学 | 流体の制御方法、及びテイラー渦流反応装置 |
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