JP2016161370A - 微粒子測定システム - Google Patents

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Abstract

【課題】微粒子測定システムにおける校正を実現する。
【解決手段】イオン発生部と、内燃機関の排ガス中の微粒子が流入し微粒子をイオンを用いて帯電させる帯電室と、ガスを供給してイオンを帯電室に送ると共に微粒子の流入を促すガス供給部と、ガス供給量を制御するガス供給制御部と、微粒子の帯電に使用されなかったイオンを補足するイオン補足部と、発生されたイオン量と補足されたイオン量との差分に相当する電流値に基づき微粒子量に相関する測定信号を出力する測定信号生成回路と、測定信号に基づき微粒子量を決定する微粒子量決定部と、を備える微粒子測定システムにおいて、微粒子量がゼロである場合の測定信号のずれと微粒子量のずれと、のうちのいずれかのずれの補正を実行する校正実行部をさらに備え、校正実行部は、ガス供給量が帯電室に微粒子が流入しない条件を満たす所定供給量である場合に、補正を実行する。
【選択図】図6

Description

本発明は、ガス中に含まれる煤などの微粒子量を測定する微粒子測定システムに関する。
従来から、ディーゼルエンジンなどの内燃機関の排ガスに含まれる煤などの微粒子の量を測定する微粒子測定システムが知られている(特許文献1)。特許文献1の微粒子測定システムは、コロナ放電によってイオンを生成し、生成したイオンによって排ガス中の微粒子を帯電させるとともに、微粒子の帯電に使用されなかったイオンを捕捉して、捕捉したイオン量に基づいて(逆に言えば、微粒子に帯電され、補足されなかったイオン量に基づいて)排ガス中の微粒子の量を測定する。捕捉したイオン量は、帯電に使用されたイオン量と相関しており、帯電に使用されたイオン量は、排ガス中の微粒子の量に相関しているため、この微粒子測定システムは、捕捉したイオン量から排ガス流の微粒子の量を測定することができる。このような微粒子測定システムでは、コロナ放電用の電極と帯電に使用されなかったイオンを補足するための電極との間には十分な絶縁が必要となる。そこで、それぞれの電極に接続される配線を樹脂製の絶縁部材で取り囲む等して電極間の絶縁性が確保されている。
特開2013−195069号公報
しかしながら、特許文献1の微粒子測定システムで用いられる絶縁部材は、例えば、被測定ガスに含まれる煤や水の付着等により経年劣化してその絶縁性が低下するため、それぞれの電極に接続されている配線間にリーク電流が発生するおそれがある。リーク電流が発生すると、イオンを補足するための電極に流れる電流値が変化するために微粒子量の測定精度が低下するという問題があった。このため、このような場合に測定値のずれを補正して校正を行うことが求められる。しかしながら、従来は、微粒子測定システムにおける校正に関して十分な工夫がなされていないのが実情であった。また、このような問題は、コロナ放電によってイオンを生成して微粒子に帯電させる場合に限らず、任意の方法により微粒子にイオンを帯電させる場合において共通する問題であった。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、イオンを発生させるイオン発生部と;内燃機関の排ガス中の少なくとも一部の微粒子が流入し、該流入した微粒子を前記イオンを用いて帯電させるための帯電室と;前記イオン発生部に所定種類のガスを供給して、前記イオン発生部から発生された前記イオンを前記帯電室に送ると共に前記帯電室への前記微粒子の流入を促すガス供給部と;前記ガス供給部による前記ガスの供給量を制御するガス供給制御部と;前記微粒子の帯電に使用されなかった前記イオンの少なくとも一部を補足するイオン補足部と;前記イオン発生部から発生された前記イオンの量と前記イオン補足部に補足された前記イオンの量との差分に相当する電流値に基づいて、前記排ガス中の微粒子量に相関する測定信号を出力する測定信号生成回路と;前記測定信号に基づき前記微粒子量を決定する微粒子量決定部と;を備える微粒子測定システムであって、前記微粒子量がゼロである場合の前記測定信号のずれと、前記微粒子量がゼロである場合の前記測定信号に基づき特定される前記微粒子量のずれと、のうちのいずれかのずれの補正を実行する校正実行部をさらに備え、前記校正実行部は、前記ガスの供給量が前記帯電室に前記微粒子が流入しない条件を満たす所定供給量である場合に、前記補正を実行する、ことを特徴とする微粒子測定システムが提供される。この形態の微粒子測定システムによれば、ガスの供給量が帯電室に微粒子が流入しない条件を満たす所定量である場合に、測定信号のずれと微粒子量のずれとのうちのいずれかのずれを補正するので、排ガス中の微粒子への帯電が抑制されている状態においてずれを補正できる。かかる状態において出力される測定信号は、本来、排ガス中の微粒子量がゼロである状態に相関する測定信号であるため、ゼロ以外の微粒子量に相関する測定信号は、絶縁部材の絶縁性の低下等に起因するリーク電流値と推測される。このため、上記形態の微粒子測定システムによれば、測定信号のずれまたは微粒子量のずれを正確に特定して、補正を精度良く行なうことができる。このため、微粒子測定システムの校正を実行して、微粒子量の測定精度の低下を抑制できる。
(2)上記形態の微粒子測定システムにおいて、前記所定供給量はゼロであってもよい。この形態の微粒子測定システムによれば、イオン発生部へのガスの供給量がゼロである場合に補正を実行するので、帯電室の内と外とで気圧差が無い状態において帯電室への微粒子の流入の可能性を低減できる。
(3)上記形態の微粒子測定システムにおいて、前記イオン発生部は、コロナ放電により、前記イオンを発生させてもよい。この形態の微粒子測定システムによれば、コロナ放電によりイオンを発生させるので、放電電極への給電回路と、イオン量の差分に相当する電流が流れる回路との間に非常に高い絶縁性が求められる。これは、コロナ放電を生じさせるために放電電極に給電(印加)される電圧が高電圧であるが故にリーク電流が生じやすく、その一方、イオン量の差分に相当する電流の大きさが非常に小さいため、この差分に相当する電流に対するリーク電流の影響が大きく、この影響が出ないようにする必要があるからである。このような構成において経年劣化等により回路間の絶縁性が低下した場合であっても、上述した補正を行なうことで微粒子の量の測定精度の低下を抑制できる。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、微粒子センサ、微粒子検出方法、微粒子測定システムを備える内燃機関、この内燃機関を備えた車両などの形態で実現することができる。
本発明の一実施形態としての微粒子測定システムを適用した車両の概略構成を示す説明図である。 微粒子センサ100の先端部100eの概略構成を模式的に示す説明図である。 電気回路部700の概略構成を示すブロック図である。 測定信号生成回路740の構成を示すブロック図である。 本実施形態における微粒子量決定および校正処理の手順を示すフローチャートである。 本実施形態における微粒子量決定処理の手順を示すフローチャートである。
A.第1実施形態:
A1.システム構成:
図1は、本発明の一実施形態としての微粒子測定システムを適用した車両の概略構成を示す説明図である。図1(a)は、微粒子測定システム10を搭載した車両500の概略構成を例示した説明図である。図1(b)は、車両500に取り付けられた微粒子測定システム10の概略構成を例示した説明図である。微粒子測定システム10は、微粒子センサ100と、ケーブル200と、センサ駆動部300とを備えており、内燃機関400から排出される排ガスに含まれる煤などの微粒子の量を測定する。内燃機関400は、車両500の動力源であり、ディーゼルエンジン等によって構成されている。
車両500は、微粒子センサ100の他に、車両500内の種々の部位に設けられた各種のセンサ406を備えている。これらのセンサ406からは、内燃機関400の駆動に関するパラメータの測定値が車両制御部420に供給される。内燃機関400の駆動に関するパラメータとは、内燃機関400の運転条件パラメータ、および内燃機関400の運転により変化する環境パラメータを含む広い意味を有する。内燃機関400の運転条件パラメータとしては、例えば、内燃機関400の回転数や、燃料噴射量、車両500の速度、内燃機関400のトルク、内燃機関400の排気圧、内燃機関400の吸気圧、EGR開閉度(EGR弁(Exhaust Gas Recirculation valve)が設けられている場合)、内燃機関400への吸入空気量、点火時期、等が該当する。内燃機関400の運転により変化する環境パラメータとしては、例えば、内燃機関400の排ガス温度等が該当する。
微粒子センサ100は、内燃機関400から延びる排ガス配管402に取り付けられ、ケーブル200によってセンサ駆動部300と電気的に接続されている。本実施形態では、微粒子センサ100は、フィルタ装置410(例えば、DPF(Diesel particulate filter))よりも下流側の排ガス配管402に取り付けられている。微粒子センサ100は、排ガスに含まれる微粒子の量に相関する信号をセンサ駆動部300に出力する。
センサ駆動部300は、微粒子センサ100を駆動するとともに、微粒子センサ100から入力される信号に基づいて排ガスに含まれる微粒子量を測定する。本実施形態において、「微粒子量」は、排ガスの単位体積中に含まれる微粒子の質量に比例する「微粒子の質量濃度」および排ガスの単位体積中に含まれる微粒子の個数に比例する「微粒子の個数濃度」として測定される。なお、「微粒子の質量濃度」と「微粒子の個数濃度」とのうちのいずれか一方のみが測定されてもよい。また、これら以外に例えば、排ガスの単位体積中に含まれる微粒子の表面積に比例する値として測定されてもよい。センサ駆動部300は、排ガスに含まれる微粒子量を示す信号を車両制御部420に出力する。車両制御部420は、センサ駆動部300から入力される信号に応じて、内燃機関400の燃焼状態や、燃料配管405を介して燃料供給部430から内燃機関400に供給される燃料の供給量などを制御する。車両制御部420は、例えば、排ガスに含まれる微粒子量が所定の上限値(閾値)よりも多い場合には、フィルタ装置410の劣化や異常を車両500の運転手に警告するように構成されていてもよい。ここで、車両制御部420は、車両500が予め設定されている所定の距離(例えば、5000キロメートル)を走行する度に、校正開始信号をセンサ駆動部300に出力する。校正開始信号は、後述する微粒子量決定および校正処理において用いられる補正値の校正の実行を指示する信号である。センサ駆動部300と車両制御部420には、電源部440から電力が供給される。
図1(b)に示すように、微粒子センサ100は、円筒形状の先端部100eを備えており、この先端部100eが排ガス配管402の内側に挿入された状態で、排ガス配管402の外表面に固定されている。ここでは、微粒子センサ100の先端部100eは、排ガス配管402の延伸方向DLに対してほぼ垂直に挿入されている。先端部100eのケーシングCSの表面には、排ガスをケーシングCSの内部に取り込むための流入孔45と、取り込んだ排ガスをケーシングCSの外部に排出するための排出孔35と、が設けられている。排ガス配管402の内部を流通する排ガスの一部は、流入孔45を介して先端部100eのケーシングCSの内部に取り込まれる。取り込まれた排ガス中に含まれる微粒子は、微粒子センサ100が生成するイオン(ここでは、陽イオン)によって帯電される。帯電した微粒子を含む排ガスは、排出孔35を介してケーシングCSの外部に排出される。ケーシングCSの内部の構成や、微粒子センサ100の具体的な構成については後述する。
微粒子センサ100の後端部100rには、ケーブル200が取り付けられている。ケーブル200は、第1の配線221と、第2の配線222と、信号線223と、空気供給管224と、を束ねた構成を備えている。第1の配線221、第2の配線222、および、信号線223は、後述の電気回路部700に電気的に接続されている。空気供給管224は、後述の空気供給部800に接続されている。
センサ駆動部300は、センサ制御部600と、電気回路部700と、空気供給部800とを備えている。センサ制御部600と電気回路部700との間、および、センサ制御部600と空気供給部800との間は、それぞれ電気的に接続されている。
センサ制御部600は、マイクロコンピュータおよびメモリを含んでおり、電気回路部700と、空気供給部800とを制御する。また、センサ制御部600は、微粒子量決定部610と、校正実行部620と、マップ格納部630と、電流値格納部640と、微粒子量格納部650と、補正値格納部660と、空気供給制御部670とを備える。
微粒子量決定部610は、電気回路部700から入力される信号(後述の測定信号Sesc)に基づき、マップ格納部630に格納されている微粒子量マップmp1を参照して微粒子量を決定する。図1(b)では、微粒子量マップmp1の設定内容を模式的に示している。微粒子量マップmp1には、予め、電気回路部700から入力される信号と微粒子量との対応関係が設定されている。なお、微粒子量マップmp1の詳細および微粒子量の決定方法の詳細については後述する。また、微粒子量決定部610は、排ガスに含まれる微粒子量を表す信号を車両制御部420に出力する。
校正実行部620は、後述の校正処理を実行することにより、電気回路部700から入力される信号のずれを補正する。かかる信号のずれの詳細については後述する。電流値格納部640には、後述の微粒子量決定処理において、電気回路部700から入力される信号から導出される電流値が格納される。微粒子量格納部650には、後述の微粒子量決定処理において決定された微粒子量が格納される。補正値格納部660には、後述の微粒子量決定処理において用いられる補正値が格納される。なお、補正値格納部660には、予め、補正値の初期値としてゼロが格納されている。この補正値は、後述の校正処理により変更され得る。空気供給制御部670は、空気供給部800による高圧空気の供給量を制御する。
電気回路部700は、第1の配線221および第2の配線222を介して、微粒子センサ100を駆動するための電力を供給する。また、電気回路部700には、信号線223を介して、排ガスに含まれる微粒子量に相関する信号が微粒子センサ100から入力される。電気回路部700は、信号線223から入力される信号を用いて、排ガスに含まれる微粒子量に応じた信号をセンサ制御部600に出力する。これらの信号の具体的な内容については後述する。
空気供給部800は、ポンプ(図示しない)を含んでおり、センサ制御部600(空気供給制御部670)からの指示に基づいて、空気供給管224を介して、高圧空気を微粒子センサ100に供給する。空気供給部800から供給される高圧空気は、微粒子センサ100による微粒子量測定の際に用いられる。なお、空気供給部800によって空気を供給する代わりに、窒素ガス等の他の種類のガスを微粒子センサ100に供給してもよい。また、ポンプに代えて、コンプレッサーを用いてもよい。この場合、例えば、ブレーキ用の圧縮空気を供給するためのコンプレッサーと兼用してもよい。
図2は、微粒子センサ100の先端部100eの概略構成を模式的に示す説明図である。この先端部100eは、ケーシングCSの中に、イオン発生部110と、排ガス帯電部120と、イオン捕捉部130と、を設けた構成を有する。すなわち、ケーシングCS中に、これらの3つの処理部110,120,130がこの順に先端部100eの基端側(図2の上方)から先端側(図2の下方)に向かって、微粒子センサ100の軸線方向に沿って並んでいる。ケーシングCSは、導電性部材によって形成され、信号線223(図1)を介して二次側グランドSGL(図3)に接続されている。
イオン発生部110は、排ガス帯電部120に供給するイオン(ここでは陽イオン)を発生させるための処理部であり、イオン発生室111と、第1の電極112とを含んでいる。イオン発生室111は、ケーシングCSの内側に形成された小空間であり、内周面には空気供給孔55とノズル41とが設けられ、内部には第1の電極112が突出した状態で取り付けられている。空気供給孔55は、空気供給管224(図1)と連通しており、空気供給部800(図1)から供給される高圧空気をイオン発生室111に供給する。ノズル41は、排ガス帯電部120との間を区画する隔壁42の中心部付近に設けられた微小孔(オリフィス)であり、イオン発生室111で発生したイオンを排ガス帯電部120の帯電室121に供給する。第1の電極112は、棒状の外形を有し、先端部が隔壁42と近接した状態で、その基端部がセラミックパイプ25を介してケーシングCSに固定されている。第1の電極112は、第1の配線221(図1)を介して電気回路部700(図1)に接続されている。
イオン発生部110は、電気回路部700から供給される電力を用いて、第1の電極112を陽極とし、隔壁42を陰極として、直流電圧(例えば、2〜3kV)を印加する。イオン発生部110は、この電圧の印加によって、第1の電極112の先端部と、隔壁42との間にコロナ放電を生じさせることによって、陽イオンPIを発生させる。イオン発生部110において発生した陽イオンPIは、空気供給部800(図1)から供給される高圧空気とともに、ノズル41を介して排ガス帯電部120の帯電室121に噴射される。ノズル41から噴射される空気の噴射速度は音速程度とすることが好ましい。
排ガス帯電部120は、排ガスに含まれる微粒子Sを陽イオンPIによって帯電させるための部位であり、帯電室121を備えている。帯電室121は、イオン発生室111と隣接する小空間であり、ノズル41を介してイオン発生室111と連通している。また、帯電室121は、流入孔45を介して、ケーシングCSの外部と連通し、ガス流路31を介してイオン捕捉部130の捕捉室131と連通している。帯電室121は、ノズル41から陽イオンPIを含む空気が噴射されたときに内部が負圧になり、流入孔45を介してケーシングCSの外部の排ガスが流入するように構成されている。ノズル41から噴射された陽イオンPIを含む空気と、流入孔45から流入した排ガスとは、帯電室121の内部において混合される。このとき、流入孔45から流入した排ガスに含まれる微粒子Sの少なくとも一部には、ノズル41から供給される陽イオンPIが帯電される。帯電した微粒子Sと帯電に供されなかった陽イオンPIとを含む空気は、ガス流路31を介してイオン捕捉部130の捕捉室131に供給される。
イオン捕捉部130は、微粒子Sの帯電に使用されなかったイオンを捕捉するための部位であり、捕捉室131と、第2の電極132とを含んでいる。捕捉室131は、帯電室121と隣接する小空間であり、ガス流路31を介して帯電室121と連通している。また、捕捉室131は、排出孔35を介して、ケーシングCSの外部と連通している。第2の電極132は、上端がテーパー状となった略棒状の外形を備え、長手方向がガス流路31を流通する空気の流通方向(ケーシングCSの延伸方向)に沿うようにしてケーシングCSに固定されている。第2の電極132は、第2の配線222(図1)を介して電気回路部700(図1)に接続されている。第2の電極132には、100V程度の電圧が印加されて、微粒子Sの帯電に供されなかった陽イオンの捕捉を補助する補助電極として機能する。具体的には、イオン捕捉部130には、第2の電極132を陽極とし、帯電室121及び捕捉室131を構成するケーシングCSを陰極とした電圧が印加されている。これにより、微粒子Sの帯電に用いられなかった陽イオンPIは、第2の電極132から斥力を受けて、その進行方向が第2の電極132から離れる方向へと偏向される。進行方向が偏向された陽イオンPIは、陰極として機能する捕捉室131やガス流路31の内周壁に捕捉される。一方、陽イオンPIが帯電された微粒子Sは、陽イオンPIの単体と同様に第2の電極132から斥力を受けるが、質量が陽イオンPIと比べて大きいため、斥力による偏向の度合いが、単体の陽イオンPIに比べて小さい。そのため、帯電した微粒子Sは、排ガスの流れに従って、排出孔35からケーシングCSの外部へと排出される。
微粒子センサ100は、イオン捕捉部130における陽イオンPIの捕捉量に応じた電流の変化を示す信号を出力する。センサ制御部600(図1)は、微粒子センサ100から出力された信号に基づいて、排ガス中に含まれる微粒子量を決定する。
図3は、電気回路部700の概略構成を示すブロック図である。電気回路部700は、一次側電源回路710と、絶縁トランス720と、コロナ電流測定回路730と、測定信号生成回路740と、第1の整流回路751と、第2の整流回路752と、を備えている。
一次側電源回路710は、電源部440から供給される直流電圧を昇圧して絶縁トランス720に供給するとともに、絶縁トランス720を駆動する。一次側電源回路710は、放電電圧制御回路711と、トランス駆動回路712とを備えている。放電電圧制御回路711は、DC/DCコンバータを含んでおり、センサ制御部600の制御によって、絶縁トランス720への供給電圧を任意に変更可能である。この供給電圧の制御は、例えば、第1の配線221を介して微粒子センサ100の第1の電極112に供給される入力電流Iinの電流値が、目標電流値(例えば、5μA)となるように実質的に行われる。この制御の方法については後述する。これにより、イオン発生部110において、コロナ放電によって発生する陽イオンPIの発生量を一定にすることができる。
トランス駆動回路712は、絶縁トランス720の一次側のコイルに流れる電流の方向を切り換え可能なスイッチ回路を含んでおり、このスイッチ回路の切り換えによって絶縁トランス720を駆動する。本実施形態では、トランス駆動回路712は、例えばプッシュプル方式の回路として構成されているが、ハーフブリッジ方式やフルブリッジ方式などの他の方式の回路として構成されていてもよい。
絶縁トランス720は、一次側電源回路710から供給される電力に対して電圧変換をおこない、変換後の電力(ここでは、交流電力)を二次側の整流回路751、752に供給する。絶縁トランス720は、2次側のコイル構成によって、第1の整流回路751に供給される電力と、第2の整流回路752に供給される電力とに対して、異なる増幅率を設定することが可能である。本実施形態の絶縁トランス720は、一次側のコイルと二次側のコイルとが物理的に接触しておらず、磁気によって結合するように構成されている。絶縁トランス720の一次側の回路としては、一次側電源回路710のほか、センサ制御部600や電源部440が含まれる。絶縁トランス720の二次側の回路としては、微粒子センサ100や整流回路751、752が含まれる。コロナ電流測定回路730と測定信号生成回路740は、絶縁トランス720の一次側の回路と二次側の回路との間に跨がる回路であり、両方の回路にそれぞれ電気的に接続されている。コロナ電流測定回路730は、後述するように、絶縁トランス720の一次側の回路に電気的に接続される回路部分と、二次側の回路に電気的に接続されている回路部分との間が物理的に絶縁されている。ここでは、一次側の回路の基準電位を示すグランド(接地電位)を「一次側グランドPGL」とも呼び、二次側の回路の基準電位を示すグランドを「二次側グランドSGL」とも呼ぶ。絶縁トランス720の一次側のコイルの端部は一次側グランドPGLに接続され、二次側のコイルの端部は二次側グランドSGLに接続されている。微粒子センサ100のケーシングCSは、信号線223及びシャント抵抗230を介して二次側グランドSGLに接続されている。微粒子測定システム10において、一次側グランドPGLと二次側グランドSGLとの間は、絶縁部材により電気的に絶縁されている。かかる絶縁部材は、例えば、セラミックや樹脂を材料として構成され、高い絶縁性(例えば、1テラオーム程度)を有する。
整流回路751、752は、絶縁トランス720から出力された交流電力を直流電力に変換する。第1の整流回路751は、第1の配線221及びショート保護用抵抗753を介して、微粒子センサ100の第1の電極112に接続されている。第2の整流回路752は、第2の配線222及びショート保護用抵抗754を介して、微粒子センサ100の第2の電極132に接続されている。
コロナ電流測定回路730は、配線761,762を介して信号線223上のシャント抵抗230の両端に接続されており、また、配線763を介してセンサ制御部600に接続されている。コロナ電流測定回路730は、信号線223上をケーシングCSから二次側グランドSGLに向けて流れる電流(Idc+Itrp)の電流値を示す信号Sdc+trpをセンサ制御部600に出力する。ここで「電流値を示す信号」とは、電流値を直接的に示す信号に限定されず、電流値を間接的に示す信号も該当する。例えば、信号から得られる情報に演算式やマップを適用することによって電流値を特定できる信号も「電流値を示す信号」に含まれる。
センサ制御部600は、コロナ電流測定回路730から入力される信号Sdc+trpに応じて、放電電圧制御回路711を制御する。センサ制御部600による放電電圧制御回路711の制御の概要は後述する。
測定信号生成回路740は、イオン捕捉部130において捕捉されずに外部に流出した陽イオンPIの電流Iesc(以下、「漏洩電流Iesc」と呼ぶ)に相当する電流Icを測定する。測定信号生成回路740は、配線771を介して二次側の信号線223に接続されるとともに、配線772を介して一次側のセンサ制御部600に接続される。また、測定信号生成回路740は、配線773を介して一次側グランドPGLに接続されている。測定信号生成回路740は、測定信号Sescをセンサ制御部600に出力する。なお、測定信号生成回路740は、低感度測定信号および高感度測定信号を生成して、それぞれセンサ制御部600に出力してもよい。この場合、低感度測定信号および高感度測定信号のうちのいずれか一方は、測定信号Sescであってもよい。
微粒子センサ100の先端部100eを流れる電流相互には、下記(1)式の関係が成り立つ。
Iin=Idc+Itrp+Iesc ・・・(1)
ここで、Iinは第1の電極112の入力電流であり、Idcは隔壁42を介してケーシングCSに流れる放電電流であり、ItrpはケーシングCSに捕捉された陽イオンPIの電荷量に相当する捕捉電流であり、Iescはイオン捕捉部130において捕捉されずに外部に流出した陽イオンPIの電荷量に相当する漏洩電流である。
放電電流Idcと捕捉電流Itrpは、ケーシングCSから信号線223を介して二次側グランドSGLに流れるため、信号線223上のシャント抵抗230にはそれらの合計の電流(Idc+Itrp)が流れる。ここで、(Idc+Itrp)の電流値は、入力電流Iinの電流値とほぼ等しい。式(1)の漏洩電流IIescは、信号線223を流れる電流(Idc+Itrp)のおよそ1/10倍程度の大きさであり、入力電流Iinの変動を監視するにあたっては実質的に無視できるためである。入力電流Iinの電流値とイオン発生部110のコロナ放電の電流値とは等しいことから、信号線223を流れる電流(Idc+Itrp)の電流値は、コロナ放電の電流値とほぼ等しいといえる。このことから、コロナ電流測定回路730は、イオン発生部110のコロナ放電の電流値を示す信号Sdc+trpをセンサ制御部600に出力しているといえる。これを受けて、センサ制御部600は、コロナ電流測定回路730から入力される信号Sdc+trpに応じて、入力電流Iinの電流値が目標電流になるように、放電電圧制御回路711を制御する。
漏洩電流Iescは、入力電流Iinと、シャント抵抗230を流れる電流(Idc+Itrp)との差分に等しい。
Iesc=Iin−(Idc+Itrp) ・・・(2)
測定信号生成回路740には、この漏洩電流Iescに相当する電流Icが流れる。測定信号生成回路740は、この電流Icに応じた測定信号Sescを生成してセンサ制御部600に出力する。センサ制御部600の微粒子量決定部610は、測定信号Sescに基づいて排ガスに含まれる微粒子量を決定する。
A2.測定信号生成回路の構成例:
図4は、測定信号生成回路740の構成を示すブロック図である。測定信号生成回路740は、増幅回路741と、負帰還抵抗742と、抵抗743とを含む。増幅回路741としてはオペアンプを利用可能である。増幅回路741の反転入力端子は、抵抗743、配線771、および信号線223を介して二次側グランドSGLに接続されている。信号線223は、図3に示すように、微粒子センサのケーシングCSに接続されている。増幅回路741の非反転入力端子には、一次側グランドPGLに対して一定の基準電圧(例えば、0.5V)を与える電源Vrefが配線773を介して接続されている。以下の説明では、この電源Vrefの基準電圧を表す際にも同じ符号「Vref」を用いる。増幅回路741の非反転入力端子に基準電圧Vrefを入力すれば、増幅回路741の2つの入力端子間の電位差を、誤差(バイアス電流やオフセット電圧による誤差等)の生じにくい電位差範囲に近づけるように調整することができる。増幅回路741の反転入力端子には、後に詳述するように、微粒子センサ100の漏洩電流Iesc(図3)に相当する電流Icが流れる。この電流Icは、増幅回路741によって電圧E1に変換される。電圧E1を示す信号Sescは、測定信号として、配線772を介してセンサ制御部600に供給される。
増幅回路741の反転入力端子に流れる電流Icが、微粒子センサ100の漏洩電流Iescに相当する電流となる理由は、以下の通りである。漏洩電流Iescが発生すると、二次側グランドSGLの基準電位は、漏洩電流Iescの大きさに応じて、一次側グランドPGLの基準電位よりも低下する。これは、一次側電源回路710(図3)を含む一次側回路から、微粒子センサ100に供給されるエネルギー(電力)と、信号線223を介して微粒子センサ100から出力されるエネルギー(電力)との間に、漏洩電流Iescに対応するエネルギーの差異が生じるためである。漏洩電流Iescの発生により、二次側グランドSGLの基準電位と一次側グランドPGLの基準電位との間に差異が生じると、増幅回路741の反転入力端子には、この差異に応じた補償電流Icが流れる。この補償電流Icは、漏洩電流Iescと電流値が等しく、二次側グランドSGLの基準電位と一次側グランドPGLの基準電位との間の差異を補償する電流である。従って、測定信号生成回路740は、この補償電流IcをI−V変換することによって、漏洩電流Iescを表す電圧E1(及び測定信号Sesc)を生成することができる。
増幅回路741の出力電圧E1は、以下の式(3)で与えられる。
E1=Ic×R1+Vref ・・・(3)
ここで、Icは補償電流、R1は負帰還抵抗742の抵抗値、Vrefは増幅回路741の基準電圧である。
センサ制御部600において、微粒子量決定部610は、測定信号生成回路740から供給される測定信号Sescに基づいて、微粒子量マップmp1を参照して排ガス中に含まれる微粒子量を決定する。図1(b)に示すように、微粒子量マップmp1は、測定信号Sescと微粒子量との対応関係を示す二次元マップである。なお、図1(b)では、横軸は微粒子量を示し、縦軸は測定信号Sescを示している。より正確には、縦軸は、測定信号Sescの電圧レベルに対応する電流Icの電流値を示している。微粒子量マップmp1に示すように、測定信号Sescと微粒子量とは互いに比例している。そして、微粒子量がゼロである場合に測定信号Sescの電流値はゼロとなる。微粒子量決定部610は、供給される測定信号Sescに対応する電流値を特定し、かかる電流値に基づき微粒子量マップmp1を参照することにより、微粒子量を決定できる。
しかしながら、経年劣化等の理由により一次側グランドPGLと二次側グランドSGLとの間に配置されている絶縁部材の絶縁性が低下すると、一次側グランドPGLと二次側グランドSGLとの間にリーク電流が発生し得る。リーク電流が発生すると、二次側グランドSGLの基準電位と一次側グランドPGLの基準電位との間の差異が初期値から変化するので、漏洩電流Iescの値が変化する。その結果、測定信号Sescの大きさ(電圧)が本来の値がからずれてしまい、決定される微粒子量に誤差が生じることとなる。例えば、排ガス中に微粒子が存在しないにもかからず、漏洩電流Iescがゼロではない値として検出され、検出される微粒子量がゼロにならないことが起こり得る。また、絶縁部材の絶縁性は経年変化するので、漏洩電流Iescの値も経年変化し、その結果、測定信号Sescの大きさのずれの量も経年変化する。それゆえ、微粒子量の測定誤差が次第に増加するおそれがある。そこで、本実施形態の微粒子測定システム10では、後述の微粒子量決定および校正処理を実行して測定信号Sescに基づき導出される電流値を用いて補正すると共に、かかる補正に用いられる補正値を更新することにより、微粒子量の測定精度の低下を抑制する。
上述の空気供給制御部670は、請求項におけるガス供給制御部に相当する。また、空気供給部800は、請求項におけるガス供給部に相当する。
A3.微粒子量決定および校正処理:
図5は、本実施形態における微粒子量決定および校正処理の手順を示すフローチャートである。図6は、本実施形態における微粒子量決定処理の手順を示すフローチャートである。微粒子量決定および校正処理は、内燃機関400から排出される排ガスに含まれる煤などの微粒子の量を決定する処理と、その決定の際に用いられる補正値を適切な値に設定(更新)するための処理とから成る。補正値を適切な値に設定するために、本実施形態では、排ガス中の微粒子量が本来ゼロである場合の測定信号Sescのずれを特定し、このずれをキャンセルするような補正値を決定する。微粒子測定システム10では、車両制御部420からイグニッションオンの信号を受信すると、微粒子量決定および校正処理が実行される。
微粒子量決定部610は、微粒子量決定処理を実行する(ステップS105)。具体的には、図6に示すように、微粒子量決定部610は、測定信号Sescの電圧レベルに対応する電流Icの電流値を特定して電流値格納部640に記憶させる(ステップS205)。微粒子量決定部610は、補正値格納部660に格納されている補正値を用いてステップS205で特定された電流値を補正する(ステップS210)。上述のように、この補正値の初期値はゼロであり、また、補正値は微粒子量決定および校正処理により更新され得る。この補正値を適切な値に設定することにより、絶縁部材の絶縁性の低下等に起因して測定信号Sescのずれが生じても、本来の微粒子量に対応する信号を得ることができる。
微粒子量決定部610は、微粒子量マップmp1を参照して、補正後の電流値に基づき微粒子量を決定する(ステップS215)。微粒子量決定部610は、ステップS215で決定された微粒子量を、微粒子量格納部650に記憶させる(ステップS220)。
図5に示すように、微粒子量決定処理(ステップS110)が完了した後、空気供給制御部670は、車両制御部420から校正開始指示信号を受信するまで待機しており(ステップS110)、校正開始指示信号を受信すると(ステップS110:YES)、空気供給部800が有するポンプの駆動を停止させる(ステップS115)。上述のように、車両制御部420は、車両500が予め設定されている所定の距離を走行するたびに校正開始信号を出力するので、ステップS115以降の手順は、車両500が予め設定されている所定の距離を走行するたびに実行される。ステップS115におけるポンプの駆動の停止によってイオン発生室111への高圧空気の供給が停止する。このため、イオン発生室111において発生した陽イオンPIが帯電室121に送られることが抑制される。加えて、陽イオンPIを含む空気がノズル41から帯電室121内に噴射されないため、帯電室121内が負圧となることが抑制される。このため、流入孔45を介した帯電室121内への排ガスの流入が抑制される。これらのことから、ステップS115が実行されることにより排ガス中の微粒子の帯電が抑制され、測定信号Sescはゼロであるとみなし得る状態となる。
微粒子量決定部610は、ステップS115が完了した後に、測定信号Sescの電圧レベルに対応する電流Icの電流値を特定して電流値格納部640に記憶させることを所定回数(N回)だけ連続して実行し、校正実行部620は、かかる格納された所定連続回数分の電流値を取得する(ステップS120)。ステップS120における所定の連続回数は、任意の回数に設定できる。また、所定の連続回数をより多くの回数に設定することによって校正の精度を向上できる。
校正実行部620は、ステップS120で取得したN回分の電流値の平均値を算出する(ステップS125)。ステップS125が実行される際にはポンプは停止されたままであるため、排ガス中の微粒子への帯電が抑制され、微粒子量がゼロであるとみなし得る状態のままである。このため、本来、電流値はゼロとなる。しかしながら、絶縁部材の絶縁性低下に伴いリーク電流が発生すると、そのリーク電流に相当する電流が検出される。なお、N回の平均値を求めることにより、誤差を排してリーク電流に相当する電流値を精度良く特定できる。
校正実行部620は、ステップS125において算出された平均値により、補正値格納部660に格納されている補正値を上書きする(ステップS130)。したがって、ステップS130の実行後に、微粒子量決定および校正処理が実行される際には、ステップS210において、最新の補正値を用いて電流値を補正することができる。つまり、最新のリーク電流分をキャンセルして、排ガス中の微粒子に起因する電流値を精度よく導出することができる。ステップS130の完了後、空気供給制御部670は、停止させていた空気供給部800のポンプを起動させ(ステップS135)、微粒子量決定および校正処理は終了する。
以上説明した第1実施形態の微粒子測定システム10によれば、空気供給部800によるイオン発生部110(イオン発生室111)への高圧空気の供給が停止している最中に得られた電流値に基づき補正値を求め、かかる補正値を用いて測定信号Sescの電圧レベルに対応する電流Icの電流値を補正する。イオン発生部110への高圧空気の供給が停止することにより排ガス中の微粒子への帯電が抑制されるので、このような状態で得られる電流値は、本来ゼロとなる。しかしながら、かかる電流値がゼロ以外の値である場合、この電流値は、排ガス中の微粒子に起因する電流値ではなく、絶縁部材の絶縁性の低下等に起因するリーク電流値と推測される。微粒子測定システム10では、かかるリーク電流値に基づき測定信号Sescの電圧レベルに対応する電流Icの電流値を補正するので、リーク電流値をキャンセルして排ガス中の微粒子に起因する電流値を精度よく導出することができる。このため、排ガス中の微粒子量の検出精度が低下することを抑制できる。また、N回分の電流値の平均値を求めることにより、誤差を排してリーク電流に相当する電流値を精度良く特定できる。
また、微粒子測定システム10では、コロナ放電によりイオンを発生させるので、一次側グランドPGLと二次側グランドSGLとの間の絶縁部材として非常に高い絶縁性(抵抗値)を有する部材が求められる。このように絶縁部材において経年劣化等により絶縁性が低下した場合であっても、本実施形態の微粒子測定システム10によれば、排ガス中の微粒子量を精度良く求めることができる。
また、微粒子量決定および校正処理では、ステップS115以降の手順は、車両制御部420から校正開始信号を受信する度に、換言すると、車両500が予め設定されている所定の距離(例えば、5000キロメートル)を走行する度に実行されて、補正値が更新される。車両500が所定の距離を走行した場合、一次側グランドPGLと二次側グランドSGLとの間に配置されている絶縁部材が経年劣化し、その絶縁性が低下している可能性が高い。したがって、上記実施形態の構成とすることにより、補正値が変化している可能性が高い適切なタイミングで補正値を更新できる。
B.変形例:
B1.変形例1:
実施形態では、コロナ放電によって陽イオンPIを発生させ、かかる陽イオンPIを帯電室に流入した排ガスと混合させることにより微粒子Sを帯電させていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、電極の表面上に粒子を付着させて、電極に高電圧を印加することにより、微粒子Sを帯電した帯電粒子とする帯電部をセンサ本体に有する微粒子測定システム10に、本発明を適用してもよい(例えば、米国特許公開公報US2012/0312074A1および米国特許公開公報US2013/0219990A1参照)。
B2.変形例2:
実施形態では、微粒子量決定および校正処理は、センサ制御部600において実行されていたが、かかる処理のうち、少なくとも一部を、車両制御部420において実行される構成としてもよい。例えば、ステップS105(微粒子量決定処理)はセンサ制御部600(微粒子量決定部610)が実行し、ステップS110〜S135は車両制御部420が実行する構成としてもよい。この構成では、ステップS120において、車両制御部420は、センサ制御部600からN回分の電流値を取得すればよい。また、ステップS130において、車両制御部420は、ステップS125で算出された平均値をセンサ制御部600に送信し、センサ制御部600は受信した平均値を補正値格納部660に上書きして記憶すればよい。この構成においては、車両制御部420は、請求項における校正実行部に相当する。
B3.変形例3:
実施形態では、校正開始指示信号は、車両500が予め設定されている所定の距離(例えば、5000キロメートル)を走行する度に出力されていたが、本発明はこれに限定されない。5000キロメートルに限らず、任意の距離を走行する度に出力されてもよい。また、例えば、車両500においてインストルメントパネル等に配置されている所定のスイッチが運転者等によりオンされた場合に出力されてもよい。このような構成により、運転者は、希望する任意のタイミングで補正値を校正できる。また、例えば、運転時間の積算値が所定の閾値に達したことを契機として出力されてもよい。この構成においても、上述した走行距離が所定の閾値に達したことを契機とする構成と同様な効果を有する。また、例えば、図示しないタイマーで計時し、所定期間(例えば、30日間)経過を契機として定期的に出力する構成としてもよい。
B4.変形例4:
実施形態では、微粒子量決定および校正処理において測定信号Sescの電流値の補正と、かかる補正に用いられる補正値の更新とを実行していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、微粒子量決定処理において、測定信号Sescの電流値に基づき微粒子量を決定すると共に決定された微粒子量を補正し、また、微粒子量を補正するために用いられる補正値を更新してもよい。この構成においては、例えば、ポンプを停止させた状態で得られた電流値に基づき微粒子量を求め、かかる微粒子量を補正値として決定する。本来、この状態において得られる微粒子量はゼロであるので、ゼロ以外の値として得られる微粒子量は、リーク電流等の原因により求められる誤差分の微粒子量に相当する。したがって、微粒子量決定処理では、かかる誤差分の微粒子量を、測定信号Sescの電流値に基づき決定された微粒子量から差し引くことで、微粒子量を精度良く求めることができる。
B5.変形例5:
実施形態の微粒子量決定処理のステップS215では、微粒子量マップを参照して微粒子量を決定していたが、かかるマップに代えて、測定信号Sescの電圧値と微粒子量との関係を示す関係式を用いて演算することにより、微粒子量を決定してもよい。
B6.変形例6:
実施形態では、微粒子量決定および校正処理のステップS115において、ポンプを停止させてイオン発生部110への高圧空気の供給を停止させていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、空気供給部800による高圧空気の供給を停止させている状態において、帯電室121内の気圧が排ガス配管402内の気圧よりも高い場合には、空気供給部800により高圧空気を供給しても、帯電室121内の気圧が相対的に高い状態となり得る。このような場合においては、空気供給部800を駆動させてイオン発生部110に高圧空気を供給してもよい。但し、この場合、排ガス配管402内の排ガス(微粒子)が帯電室121内に流入しない程度に空気を供給することが求められる。すなわち、一般には、校正実行部620は、イオン発生部110への高圧空気の供給量が帯電室121に微粒子が流入しない条件を満たす所定供給量である場合に、校正処理を実行することが好ましい。
B7.変形例7:
実施形態では、ステップS115(ポンプの駆動停止)が完了すると、所定回数分の電流値の取得(ステップS120)が実行されていたが、これら2つのステップS115,S120の間に、所定期間だけ待機するステップを設けてもよい。ポンプを停止させた時点で帯電室121内に、微粒子Sに帯電されておらず且つケーシングCSに補足されていない陽イオンPIが存在する場合、その後、かかる陽イオンPIが帯電室121内において微粒子Sに帯電することで、微粒子への帯電に起因する測定信号Sesc(漏洩電流Iesc)が生じ得る。この場合、絶縁性低下に起因するリーク電流を正確に特定できないおそれがある。これに対して、ステップS115の後に所定期間だけ待機することにより、微粒子Sに帯電されておらず且つケーシングCSに補足されていない陽イオンPIの量が低減した状態で、校正処理を実行できる。このため、リーク電流を精度良く特定できる。
B8.変形例8:
実施形態では、微粒子測定システム10は車両500に搭載され、内燃機関400の排ガスに含まれる微粒子量を測定していたが、本発明はこれに限定されない。船等の任意の移動体に搭載された内燃機関や、定置型の内燃機関等、他の任意の内燃機関の排ガスに含まれる微粒子を測定してもよい。
本発明は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
10…微粒子測定システム
25…セラミックパイプ
31…ガス流路
35…排出孔
41…ノズル
42…隔壁
45…流入孔
55…空気供給孔
100…微粒子センサ
100e…先端部
100r…後端部
110…イオン発生部
111…イオン発生室
112…第1の電極
120…排ガス帯電部
121…帯電室
130…イオン捕捉部
131…捕捉室
132…第2の電極
200…ケーブル
221…第1の配線
222…第2の配線
223…信号線
224…空気供給管
230…シャント抵抗
300…センサ駆動部
400…内燃機関
402…排ガス配管
405…燃料配管
406…センサ
410…フィルタ装置
420…車両制御部
430…燃料供給部
440…電源部
500…車両
600…センサ制御部
610…微粒子量決定部
620…校正実行部
630…マップ格納部
640…電流値格納部
650…微粒子量格納部
660…補正値格納部
670…空気供給制御部
700…電気回路部
710…一次側電源回路
711…放電電圧制御回路
712…トランス駆動回路
720…絶縁トランス
730…コロナ電流測定回路
740…測定信号生成回路
741…増幅回路
742…負帰還抵抗
743…抵抗
751…第1の整流回路
752…第2の整流回路
753…ショート保護用抵抗
754…ショート保護用抵抗
761,763…配線
771〜773…配線
800…空気供給部
CS…ケーシング
DL…延伸方向
E1…電圧
F…矢印
Ic…電流、補償電流
Idc…放電電流
Iin…入力電流
Iesc…電流、漏洩電流
Itrp…捕捉電流
PI…陽イオン
PGL…一次側グランド
S…微粒子
Sesc…測定信号
Sdc+trp…信号
SGL…二次側グランド
Vref…電源、基準電圧

Claims (3)

  1. イオンを発生させるイオン発生部と、
    内燃機関の排ガス中の少なくとも一部の微粒子が流入し、該流入した微粒子を前記イオンを用いて帯電させるための帯電室と、
    前記イオン発生部に所定種類のガスを供給して、前記イオン発生部から発生された前記イオンを前記帯電室に送ると共に前記帯電室への前記微粒子の流入を促すガス供給部と、
    前記ガス供給部による前記ガスの供給量を制御するガス供給制御部と、
    前記微粒子の帯電に使用されなかった前記イオンの少なくとも一部を補足するイオン補足部と、
    前記イオン発生部から発生された前記イオンの量と前記イオン補足部に補足された前記イオンの量との差分に相当する電流値に基づいて、前記排ガス中の微粒子量に相関する測定信号を出力する測定信号生成回路と、
    前記測定信号に基づき前記微粒子量を決定する微粒子量決定部と、
    を備える微粒子測定システムであって、
    前記微粒子量がゼロである場合の前記測定信号のずれと、前記微粒子量がゼロである場合の前記測定信号に基づき特定される前記微粒子量のずれと、のうちのいずれかのずれの補正を実行する校正実行部をさらに備え、
    前記校正実行部は、前記ガスの供給量が前記帯電室に前記微粒子が流入しない条件を満たす所定供給量である場合に、前記補正を実行する、
    ことを特徴とする微粒子測定システム。
  2. 請求項1に記載の微粒子測定システムにおいて、
    前記所定供給量はゼロである、
    ことを特徴とする微粒子測定システム。
  3. 請求項1または請求項2に記載の微粒子測定システムにおいて、
    前記イオン発生部は、コロナ放電により、前記イオンを発生させる、
    ことを特徴とする微粒子測定システム。
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