JP2016160382A - ポリオレフィン系構造体 - Google Patents

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健太郎 石井
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智則 加藤
尚史 小田
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尚史 小田
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憲治 河野
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Abstract

【課題】バリア性及び耐環境応力亀裂性に優れるポリオレフィン系構造体を提供する。【解決手段】ポリオレフィン(A)60〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)5〜35質量%、及びポリアミドからなるガスバリア樹脂(C)5〜35質量%を含有する樹脂組成物からなるポリオレフィン系構造体であって、該構造体中において前記ガスバリア樹脂(C)が層状に分散しており、かつ、所定の耐環境応力亀裂性改善率が50%以上である、ポリオレフィン系構造体。【選択図】なし

Description

本発明は、耐環境応力亀裂性を有するポリオレフィン系構造体に関する。
炭化水素類や各種薬品を保存するための容器としては、薬品瓶、自動車や小型エンジンの燃料タンク等が挙げられる。その素材として従来利用されていた金属やガラスは、その多くがプラスチックへ代替されつつある。プラスチックは金属やガラスと比較して、軽量、防錆処理が不要、割れにくい、形状の自由度が高い等の特長がある。
ところで、各種化学薬品の運搬用や燃料タンクに使用される容器は、安全性確保の観点から、耐環境応力亀裂性(以下、「ESCR」と略する場合がある)に優れることが要求される。一般に、樹脂成形品は、部位により圧力、成形収縮率、金型内流動時の分子配向等に差異があるため、部材の中に引張、圧縮等の残留応力が存在している。残留応力が残っている状態で、ある種の外部環境物質(特に有機溶媒分子)が存在すると、樹脂の分子間力が低下し、クラックが発生し伝播して残留応力を開放させる現象が起こり、破壊に至ることがある。そのような亀裂が生じるまでの耐久性を示す指標としてESCRが用いられる。また、薬品を充填した容器においては、応力を受けたときに亀裂が生じるまでの時間が短くなることから、ESCRは耐薬品性の指標としても用いられることがある。
従来、上述の炭化水素類や各種薬品を保存するための容器の多くは、プラスチックとして高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」と略する場合がある)を利用したポリエチレン系容器が使用されている。しかし、ポリエチレン系容器は耐環境応力亀裂性が低いため、エチレンに特定のα−オレフィンを共重合することで、耐環境応力亀裂性を改善することが行われてきた(例えば、特許文献1及び2を参照)。
さらに、HDPEは、機械強度、成形加工性及び経済性に優れるものの、容器内部に保存される物品がHDPE壁を通して大気中に飛散しやすいという欠点がある。そのため、HDPE等のポリエチレンからなる容器においてバリア性能を高めるための技術が望まれている。バリア性能が高められたポリエチレン系容器としては、ポリエチレン60〜90質量%と、メタキシリレン基含有ポリアミド5〜35質量%と、酸変性ポリエチレン5〜35質量%を含有する混合樹脂から形成された単層容器が知られている(例えば、特許文献3を参照)。
特開2003−128032号公報 特開2003−49027号公報 国際公開第2012/121295号
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、バリア性及びESCRに優れるポリオレフィン系構造体を提供することにある。
本発明は、以下の<1>〜<10>に関する。
<1>ポリオレフィン(A)60〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)5〜35質量%、及びポリアミドからなるガスバリア樹脂(C)5〜35質量%を含有する樹脂組成物からなるポリオレフィン系構造体であって、該構造体中において前記ガスバリア樹脂(C)が層状に分散しており、かつ、下式(I)により算出される耐環境応力亀裂性改善率が50%以上である、ポリオレフィン系構造体。
耐環境応力亀裂性改善率=(X−Y)/Y×100 (I)
[式中、Xは、ポリオレフィン系構造体についての耐環境応力亀裂性試験において構造体に亀裂が生じるまでの耐久時間を表し、Yは、ポリオレフィン(A)100質量%からなる構造体についての耐環境応力亀裂性試験において構造体に亀裂が生じるまでの耐久時間を表す。]
<2>前記ポリオレフィン系構造体が、シリンダー内部にスクリューが挿通してなる単軸押出機と、ダイヘッドと、前記単軸押出機から前記樹脂組成物を前記ダイヘッドに送る連通部とを備える成形機を用いて、下式(1)〜(4)を満足する温度条件で前記樹脂組成物を前記成形機から押し出すことにより得られる、上記<1>に記載のポリオレフィン系構造体。
Am+10℃≦T1≦Cm−10℃ (1)
Cm−30℃≦T2≦Cm+30℃ (2)
Cm−10℃≦T3≦Cm+50℃ (3)
Cm−30℃≦T4≦Cm+30℃ (4)
[式中、T1は、前記単軸押出機において、スクリューの供給部及び圧縮部に対応する部分のシリンダー温度を表し;T2は、前記単軸押出機において、スクリューの計量部に対応する部分のシリンダー温度を表し;T3は前記連通部の温度を表し;T4はダイヘッドの温度を表し;Amはポリオレフィン(A)の融点を表し;Cmはガスバリア樹脂(C)の融点を表す。]
<3>前記ポリオレフィン(A)のメルトフローレートが0.01〜10(g/10分)である、上記<1>又は<2>に記載のポリオレフィン系構造体。
<4>前記酸変性ポリオレフィン(B)のメルトフローレートが0.1〜10(g/10分)である、上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のポリオレフィン系構造体。
<5>前記酸変性ポリオレフィン(B)の酸価が2〜30mg/gである、上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のポリオレフィン系構造体。
<6>前記ガスバリア樹脂(C)がメタキシリレン基含有ポリアミドである、上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のポリオレフィン系構造体。
<7>前記メタキシリレン基含有ポリアミドの相対粘度が1.5〜4.5である、上記<6>に記載のポリオレフィン系構造体。
<8>前記樹脂組成物が、ポリオレフィン系構造体の製造過程で発生した樹脂固形物より得た再使用樹脂を1〜60質量%含む、上記<1>〜<7>のいずれか1項に記載のポリオレフィン系構造体。
<9>前記ポリオレフィン系構造体が、中空成形体、シート成形体又はシート成形体を更に熱成形して得られる熱成形体である、上記<1>〜<8>のいずれか1項に記載のポリオレフィン系構造体。
<10>上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載のポリオレフィン系構造体の製造方法であって、
シリンダー内部にスクリューが挿通してなる単軸押出機と、ダイヘッドと、前記単軸押出機から前記樹脂組成物を前記ダイヘッドに送る連通部とを備える成形機を用いて、
ポリオレフィン(A)60〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)5〜35質量%、及びポリアミドからなるガスバリア樹脂(C)5〜35質量%を含有する樹脂組成物を、下式(1)〜(4)を満足する温度条件で前記成形機から押し出すことによりポリオレフィン系構造体を得る、ポリオレフィン系構造体の製造方法。
Am+10℃≦T1≦Cm−10℃ (1)
Cm−30℃≦T2≦Cm+30℃ (2)
Cm−10℃≦T3≦Cm+50℃ (3)
Cm−30℃≦T4≦Cm+30℃ (4)
[式中、T1は、前記単軸押出機において、スクリューの供給部及び圧縮部に対応する部分のシリンダー温度を表し;T2は、前記単軸押出機において、スクリューの計量部に対応する部分のシリンダー温度を表し;T3は前記連通部の温度を表し;T4はダイヘッドの温度を表し;Amはポリオレフィン(A)の融点を表し;Cmはガスバリア樹脂(C)の融点を表す。]
本発明のポリオレフィン系構造体は、バリア性に優れるとともに、従来のポリオレフィンのみからなる構造体の耐環境応力亀裂性を大幅に改善することができる。
本発明の一実施形態で使用される成形機を示す模式的な断面図である。 図2(a)は本発明の一実施形態で使用されるダイヘッドを示す垂直断面図である。図2(b)は、b2−b2における水平断面図を示す。 図3(a)は本発明の一実施形態で使用されるダイヘッドを示す垂直断面図である。図3(b)は、b3−b3における水平断面図を示す。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本発明のポリオレフィン系構造体は、ポリオレフィン(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、及びガスバリア樹脂(C)を含有する樹脂組成物からなり、ガスバリア樹脂(C)が、ポリオレフィン(A)中において層状に分散してなるものである。以下、樹脂組成物に含有されるこれら各成分について詳細に説明する。
(ポリオレフィン(A))
ポリオレフィン(A)は、ポリオレフィン系構造体を構成する主要材料である。ポリオレフィン(A)としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等に代表されるポリエチレン、プロピレンホモポリマー、エチレン−プロピレンブロックコポリマー、エチレン−プロピレンランダムコポリマー等に代表されるポリプロピレン、1−ポリブテン、1−ポリメチルペンテン等の炭素数2以上のエチレン系炭化水素の単独重合体、炭素数3〜20のα−オレフィンの単独重合体、炭素数3〜20のα−オレフィンの共重合体、炭素数3〜20のα−オレフィンと環状オレフィンの共重合体等が例示される。
ポリオレフィンの溶融粘度及び分子量の指標となるものとしては、メルトフローレート(MFR)が代表的なものである。本発明で使用されるポリオレフィン(A)は、例えばメルトフローレート(MFR)が0.01〜10(g/10分)である。また、ポリオレフィン(A)のMFRは構造体の製造法に応じて最適な範囲が異なり、例えば、構造体がダイレクトブロー法により製造される中空容器の場合は、MFRは0.01〜1(g/10分)であること好ましく、より好ましくは0.02〜0.9(g/10分)、更に好ましくは0.05〜0.9(g/10分)である。また、構造体がTダイ法により製造されるシート成形体の場合は、MFRは0.01〜10(g/10分)であること好ましく、より好ましくは0.5〜5(g/10分)、更に好ましくは1〜3(g/10分)である。構造体がダイレクトブロー法により製造される中空容器である場合、ポリオレフィン(A)のMFRを1以下とすることで、成形加工時のドローダウン等の発生を抑制することができ、容器の厚み精度が優れたものとなる。また、ポリオレフィン(A)のMFRが0.01以上であれば、溶融粘度が成形に適した粘度となるうえに、得られる容器を構成する樹脂組成物中でガスバリア樹脂(C)の分散状態が良好となり、その結果、バリア性能に優れた容器とすることが可能である。
なお、ポリオレフィン(A)及び後述する酸変性ポリオレフィン(B)のMFRは、JIS K7210に準拠して測定した値であり、ポリエチレンの場合は190℃、2.16kgfの条件で、ポリプロピレンの場合は230℃、2.16kgfの条件で測定したものである。
ポリオレフィン(A)は、特に限定されないが、例えばその融点(Am)が100〜180℃となるものであり、好ましくは125〜170℃程度となるものである。
ポリオレフィン(A)は、好ましくは上述のうちのポリエチレンやポリプロピレンであり、更に好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)が使用される。
高密度ポリエチレン(HDPE)は、密度が0.942g/cm以上のポリエチレンであり、好ましくはその密度が、0.97g/cm以下、より好ましくは0.945〜0.965g/cmである。ポリエチレンは、密度が高くなることで結晶性が十分なものとなり、容器の強度や耐薬品性等を高めることが可能となる。また密度が0.97g/cm以下であれば、ポリオレフィン(A)がガラスのように脆くなることはなく、構造体として実用的な強度を発揮することができる。
上記のポリオレフィンは、ポリオレフィン系構造体を構成するポリオレフィン(A)として単独で用いることもできるし、2種類以上の混合物として使用することもできるが、高密度ポリエチレン単体であることが最も好ましい。
(酸変性ポリオレフィン(B))
酸変性ポリオレフィン(B)は、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性したもので、一般に接着性樹脂として用いられているものである。ポリオレフィンは、上記したポリオレフィン(A)で列挙したものと同様のものが使用され、好ましくはポリプロピレン、ポリエチレンが使用され、より好ましくはポリエチレンが使用される。また、酸変性ポリオレフィン(B)は、使用されるポリオレフィン(A)と同種のポリオレフィンを変性したものが好ましい。すなわち、ポリオレフィン(A)がポリエチレンならば、酸変性ポリオレフィン(B)は、ポリエチレンを変性したものが好ましく、ポリオレフィン(A)がポリプロピレンならば酸変性ポリオレフィン(B)としてはポリプロピレンを変性したものが使用される。
不飽和カルボン酸又はその無水物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、クロロマレイン酸、ブテニルコハク酸、及びこれらの酸無水物が挙げられる。中でも、マレイン酸及び無水マレイン酸が好ましく用いられる。上記不飽和カルボン酸又はその無水物をポリオレフィンにグラフト共重合して酸変性ポリオレフィンを得る方法としては、従来公知の種々の方法を用いることができる。例えば、ポリオレフィンを押出機等で溶融させ、グラフトモノマーを添加して共重合させる方法、あるいはポリオレフィンを溶媒に溶解させてグラフトモノマーを添加して共重合させる方法、ポリオレフィンを水懸濁液とした後グラフトモノマーを添加して共重合させる方法等を挙げることができる。
酸変性ポリオレフィン(B)は、ポリオレフィン(A)と該ポリオレフィン(A)中に分散したガスバリア樹脂(C)とを接着させて容器としての強度を保つようにするものである。そして、ポリオレフィン系構造体を構成する樹脂組成物中では、酸変性ポリオレフィン(B)の酸変性された置換基は、ガスバリア樹脂(C)と化学結合状態をとると考えられる。その結果、ガスバリア樹脂(C)が酸変性ポリオレフィン(B)の近傍に存在することとなり、酸変性率の違いによって接着力が変わることになる。
酸変性ポリオレフィン(B)の酸変性率の指標となるものとしては酸価が挙げられ、本発明における酸価は、JIS K0070に記載の方法に準拠して測定される。本発明において、酸変性ポリオレフィン(B)の酸価は2〜30mg/gであることが好ましい。
酸変性ポリオレフィン(B)の酸価が2mg/g以上となると、樹脂組成物中のポリオレフィン(A)とガスバリア樹脂(C)との接着性が良好となり、両者の接着界面に空隙等が生じにくくなる。そのため、得られるポリオレフィン系構造体のバリア性能や機械的強度が良好になりやすく、落下させた際の容器割れが発生しにくくなる。
また、酸変性ポリオレフィン(B)の酸価が30mg/g以下となることで、酸変性ポリオレフィン(B)及びガスバリア樹脂(C)が局在化しにくくなり、ダイレクトブロー法により成形される容器の場合、内面に凹凸が生じたり、厚みムラが生じたりすることが防止され、バリア性能や機械的強度が良好になりやすい。
以上の観点から、酸変性ポリオレフィン(B)の酸価は、2〜20mg/gであることがより好ましく、3〜15mg/gであることが更に好ましい。
また、ガスバリア樹脂(C)は比較的硬い材料であるため、構造体に衝撃等が加わると界面でクラックや剥離が起きやすくなり、構造体の強度やバリア性能を損なうおそれがある。そのため、本発明で用いられる酸変性ポリオレフィン(B)として、密度が比較的低く、比較的柔らかい性質を有するものを利用することで、ガスバリア樹脂(C)に起因する衝撃強度低下を緩和し、構造体の実用的な強度を保つ上で有効である。
このような観点から、本発明に用いられる酸変性ポリオレフィン(B)の密度は、好ましくは0.89〜0.96g/cmであり、より好ましくは0.90〜0.945g/cm、特に好ましくは0.91〜0.93g/cmである。酸変性ポリオレフィン(B)の密度が0.89g/cm以上であれば、本発明の好適なポリオレフィン(A)と酸変性ポリオレフィン(B)との相溶性が良好なものとなり、さらにガスバリア樹脂(C)の接着性が向上して構造体の強度やバリア性能が優れたものとなる。また、酸変性ポリオレフィン(B)の密度が0.96g/cm以下であれば、酸変性ポリオレフィン(B)が適度な柔らかさを有するため、構造体に衝撃等が加わった場合でも強度やバリア性能の低下を招くことを抑制できる。
また、本発明で用いられる酸変性ポリオレフィン(B)のMFRは、成形加工安定性、構造体の強度保持の観点から、溶融粘度が高めのものを用いることが好ましく、JIS K7210に記載の方法に準拠して測定される値として、好ましくは0.1〜10(g/10分)、より好ましくは0.1〜8(g/10分)、さらに好ましくは0.2〜3(g/10分)である。
酸変性ポリオレフィン(B)は、特に限定されないが、例えばその融点(Bm)は110〜180℃となるものであり、好ましくは115〜170℃程度となるものである。
(ガスバリア樹脂(C))
本発明に用いられるガスバリア樹脂(C)は、ポリオレフィン(A)よりもガスバリア性に優れる樹脂であり、具体的には、ポリアミドが挙げられる。
ポリアミドとしては、例えばメタキシリレン基含有ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン666、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。これらの中では、メタキシリレン基含有ポリアミド、ナイロン6、ナイロン666等が好ましく、バリア性能を向上させやすい観点等から、メタキシリレン基含有ポリアミドが特に好ましい。
メタキシリレン基含有ポリアミドは、例えば、ジアミン単位及びジカルボン酸単位からなり、ジアミン単位はメタキシリレンジアミンに由来する構成単位を有するものである。メタキシリレン基含有ポリアミドを構成するジアミン単位は、ガスバリア性の観点から、メタキシリレンジアミン単位を好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上含む。
メタキシリレン基含有ポリアミドにおいて、メタキシリレンジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物としては、パラキシリレンジアミン等の芳香環を有するジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式構造を有するジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、ポリオキシアルキレンアミン、ポリエーテルジアミン等の脂肪族ジアミンが例示できるが、これらに限定されるものではない。
メタキシリレン基含有ポリアミドを構成するジカルボン酸単位は、結晶性の観点から、α,ω−脂肪族ジカルボン酸単位を好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上含む。
α,ω−脂肪族ジカルボン酸単位を構成する化合物としてはスベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸等が挙げられるが、ガスバリア性及び結晶性の観点から、アジピン酸やセバシン酸が好ましく用いられる。
α,ω−脂肪族ジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸や1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、イソフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸は、メタキシリレン基含有ポリアミドの製造時における重縮合反応を阻害することなく、バリア性能に優れるポリアミドを容易に得ることができるので好ましい。メタキシリレン基含有ポリアミドがイソフタル酸及び/又は2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位を有する場合、ポリオレフィン系構造体中のメタキシリレン基含有ポリアミドの分散性及び構造体のバリア性能の観点から、イソフタル酸及び/又は2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位の含有量は、全ジカルボン酸単位の好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下である。
また前記のジアミン単位及びジカルボン酸単位以外にも、メタキシリレン基含有ポリアミドを構成する共重合体単位として、本発明の効果を損なわない範囲で、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類、p−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等の化合物に由来する単位を使用できる。
メタキシリレン基含有ポリアミドは溶融重縮合法(溶融重合法)により製造される。例えばジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩を水の存在下に、加圧下で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法がある。また、ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて、重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を均一な液状状態に保つために、ジアミンをジカルボン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
メタキシリレン基含有ポリアミドの重縮合系内にはアミド化反応を促進する効果や、重縮合時の着色を防止する効果を得るために、リン原子含有化合物を添加してもよい。
リン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸エチル、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等が挙げられる。これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩がアミド化反応を促進する効果が高く、かつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましいが、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
メタキシリレン基含有ポリアミドの重縮合系内に添加するリン原子含有化合物の添加量は、重縮合中のメタキシリレン基含有ポリアミドの着色を防止する観点から、メタキシリレン基含有ポリアミド中のリン原子濃度換算で好ましくは1〜500ppm、より好ましくは5〜450ppm、さらに好ましくは10〜400ppmである。
メタキシリレン基含有ポリアミドの重縮合系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加することが好ましい。重縮合中のメタキシリレン基含有ポリアミドの着色を防止するためにはリン原子含有化合物を十分な量存在させる必要があるが、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を共存させることが好ましい。
例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属/アルカリ土類金属の水酸化物や、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム等のアルカリ金属/アルカリ土類金属の酢酸塩等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。
メタキシリレン基含有ポリアミドの重縮合系内にアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加する場合、該化合物のモル数をリン原子含有化合物のモル数で除した値が、好ましくは0.5〜2.0、より好ましくは0.6〜1.8、さらに好ましくは0.7〜1.5である。アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の添加量を上述の範囲とすることでリン原子含有化合物によるアミド化反応促進効果を得つつゲルの生成を抑制することが可能となる。
溶融重縮合で得られたメタキシリレン基含有ポリアミドは一旦取り出され、ペレット化される。得られたペレットは、乾燥したり、更に重合度を高めるために固相重合したりしてもよい。乾燥乃至固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置及びナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特にポリアミドの固相重合を行う場合は、上述の装置の中で回転ドラム式の加熱装置が、系内を密閉化でき、かつ着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
ガスバリア樹脂(C)の重合度の指標としてはいくつかあるが、相対粘度が一般的に使われるものである。本発明に用いられるガスバリア樹脂(C)の相対粘度は好ましくは1.5〜4.5であり、より好ましくは2.0〜4.2、より好ましくは2.5〜4.0である。ガスバリア樹脂(C)は相対粘度が高くなるにつれてポリオレフィン(A)と相溶化しにくくなり、層状分散状態を形成しやすくなる。しかし、ガスバリア樹脂(C)の相対粘度を高くしようとすると重合時間が長くなり、製造コストが増大する。ガスバリア樹脂(C)の相対粘度を上述の範囲に設定することで良好な層状分散状態を形成させることができ、かつ製造コストを低く抑えることができる。
なお、相対粘度は、ポリアミド0.2gを96質量%硫酸20mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t0)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t0
本発明で使用されるガスバリア樹脂(C)は、その融点(Cm)が、通常165〜245℃となるものであるが、好ましくは175〜240℃となるものである。
また、ガスバリア樹脂(C)は、その融点(Cm)がポリオレフィン(A)の融点(Am)より高くなるものであり、その融点差(Cm−Am)は、好ましくは20〜150℃、より好ましくは50〜120℃である。本発明では、このように、成分(C)と成分(A)との融点差を大きくすることで、ポリアミド容器を構成する樹脂組成物中でガスバリア樹脂(C)が層状分散しやすくなり、バリア性が向上する。さらに、後述する製造方法により適切に製造することが可能である。
同様に、ガスバリア樹脂(C)の融点(Cm)は、酸変性ポリオレフィン(B)の融点(Bm)より高くなるものであり、その融点差(Cm−Bm)は、好ましくは20〜150℃、より好ましくは50〜120℃である。
(各材料の配合比率)
本発明の構造体を構成する各材料の配合比率は、樹脂組成物全量に対して、ポリオレフィン(A)が60〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)が5〜35質量%、ガスバリア樹脂(C)が5〜35質量%である。好ましくはポリオレフィン(A)が65〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)が5〜30質量%、ガスバリア樹脂(C)が5〜30質量%であり、より好ましくはポリオレフィン(A)が70〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)が5〜25質量%、ガスバリア樹脂(C)が5〜25質量%である。ただし、(A)〜(C)の3成分の合計が100質量%を超えることはない。
上述の範囲に各材料の配合比率を設定することによって、構造体のバリア性能を効率的に高めることができ、かつ構造体の強度低下を最小限にすることができる。本発明の構造体は、ポリオレフィン(A)、酸変性ポリオレフィン(B)及びガスバリア樹脂(C)の3成分からなることが好ましい。
(その他の成分)
その他、樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で上述した材料以外にも、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)やエチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)等の各種共重合ポリオレフィン;アイオノマー;ポリスチレン;ポリエチレンテレフタレート等の各種ポリエステル;スチレン−ブタジエン共重合体やその水添化物;各種熱可塑性エラストマー等を添加することができ、これらに限定されることなく様々な材料を配合することができる。
また、樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、滑剤等の添加剤等を加えることができ、以上に示したものに限定されることなく種々の材料を混合してもよい。なお、これら各添加剤は、ポリオレフィン系構造体を製造する際には、通常、(A)、(B)及び(C)成分の1つ以上に予め混合された状態で成形機に投入される。
さらに、樹脂組成物は、ポリオレフィン系構造体の製造過程において発生したパージくずやバリ、得られたポリオレフィン系構造体のうち不良品等になった樹脂固形物を粉砕して得た再使用樹脂を含んでいてもよい。なお再使用樹脂の混合率は、バリア性能の低下やポリオレフィン系構造体の強度低下、色調の悪化を最小限とするため、樹脂組成物における含有量として、60質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは50質量%以下であり、更に好ましくは40質量%以下である。また、その下限値は特に限定されないが、1質量%以上であることが好ましい。使用するポリエチレンの一部代替として再使用樹脂を混合するとポリオレフィン系構造体に占めるガスバリア樹脂(C)の含有率が増加することがある。その際も、成形加工品の強度が大きく低下することを防止するために、上記した(A)、(B)及び(C)成分の配合比率となるように再使用樹脂の配合を行う。
[ポリオレフィン系構造体]
本発明のポリオレフィン系構造体は、ダイヘッドの吐出口から押し出して成形できるものであれば限定されないが、中空成形体、シート成形体、又はシート成形体を熱成形により二次加工した熱成形体であることが好ましい。また、ポリオレフィン系構造体は、その厚さが、特に限定されないが、0.5〜5mm程度となるもので、好ましくは1〜3mmとなるものである。構造体の厚さを0.5mm以上とすることで、構造体のバリア性や強度を高いものとすることができる。また、5mm以下とすることで、構造体の軽量化、低コスト化が図れるとともに、本発明においてバリア性能を向上させる効果を発揮させやすくなる。
また、ガスバリア樹脂(C)は、構造体中において、層状に分散しており、その分散したガスバリア樹脂(C)は、一部連続して連続相を形成してもよい。層状に分散したガスバリア樹脂(C)は、構造体の厚さ方向において他の樹脂成分と交互に存在するような分散状態となることが好ましい。なお、ポリオレフィン系構造体は、通常、上記成分(A)〜(C)を含む樹脂組成物から形成された単層構造からなるものである。
本発明のポリオレフィン系構造体は、下式(I)により算出される耐環境応力亀裂性改善率が50%以上である。
耐環境応力亀裂性改善率=(X−Y)/Y×100 (I)
式中、Xは、ポリオレフィン系構造体についての耐環境応力亀裂性試験において構造体に亀裂が生じるまでの耐久時間を表し、Yは、ポリオレフィン(A)100質量%からなる構造体についての耐環境応力亀裂性試験において構造体に亀裂が生じるまでの耐久時間を表す。
本発明における耐環境応力亀裂性改善率は、好ましくは80%以上、より好ましくは100%以上、更に好ましくは120%以上、更に好ましくは150%以上である。改善率は高いほど好ましいので上限値は特に限定されないが、200%であれば有益である。
従来のポリオレフィン(特にHDPE)100質量%からなる構造体では、ポリオレフィンの種類によっては耐環境応力亀裂性が不十分な場合があるが、本発明のポリオレフィン系構造体では、構造体中にガスバリア樹脂(C)が層状に分散しているため機械的強度が向上して耐環境応力亀裂性が改善されると推定される。そのため、構造体中にガスバリア樹脂(C)が層状に十分に分散できるような方法で構造体を製造することにより、構造体の耐環境応力亀裂性を大幅に改善することができる。具体的には、後述する方法で構造体を製造することにより、構造体の耐環境応力亀裂性を大幅に改善することができる。
耐環境応力亀裂性試験としては、ベントストリップ法やボトル法を適用することができ、例えばASTM D1693に準拠して行うことができる。耐環境応力亀裂性試験では、ノニオン系界面活性剤、特にポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(例えば、シグマ−アルドリッチ社製、商品名:「Igepal CO−630」や、日油(株)製、商品名:「ノニオンNS−210」)の10質量%水溶液が用いられる。
ボトル法として好ましくは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの10質量%水溶液を容器の内容積の四分の一程度まで充填し、容器の内圧を100kPaに保持して60℃の恒温槽に容器を保管し、容器に亀裂が生じるまでの耐久時間を測定する。
本発明のポリオレフィン系構造体は、より具体的には、ボトル形状、タンク形状、ドラム形状、カップ形状、トレイ形状、パイプ形状、シート形状等の成形体であり、後述する製造方法で成形されるものである。ポリオレフィン系構造体がボトル形状、タンク形状、ドラム形状等の容器である場合、ダイレクトブロー法により製造されることが好ましい。また、シート形状からなるシート成形体である場合には、Tダイ法により製造されることが好ましい。得られたシート成形体は、さらに、真空成形、圧空成形等の熱成形により容器等に二次成形されてもよい。
[ポリオレフィン系構造体の製造方法]
以下、本発明のポリオレフィン系構造体の製造方法の好ましい一実施形態について説明する。以下の方法によって得られる本発明のポリオレフィン系構造体は、構造体の耐環境応力亀裂性を大幅に改善することができる。
本製造方法は、上記した(A)、(B)及び(C)成分を含む樹脂組成物を成形機から押し出してポリオレフィン系構造体を得ており、そのポリオレフィン系構造体において、ポリオレフィン(A)中にガスバリア樹脂(C)を層状に分散させるものである。本方法で使用される成形機は、単軸押出機と、ダイヘッドと、単軸押出機から樹脂組成物をダイヘッドに送る連通部とを備えるものである。
本製造方法では、特に限定されないが、ダイレクトブロー法、Tダイ法等の公知の方法が採用されるが、ダイレクトブロー法が好ましい。また、ダイヘッドは、Tダイ、ストレートダイ、クロスヘッドダイのいずれから構成されてもよいが、クロスヘッドダイから構成されることが好ましい。
なお、成形機から押出されるポリエチレン系構造体は、通常、容器となるものであるが、シート成形体等の容器以外の構造体に成形し、その後の二次成形により容器に成形してもよい。
以下、図1を用いて製造方法の一実施形態を更に詳細に説明する。なお、以下の説明では、クロスヘッドダイを用いて、ダイレクトブロー法により容器が成形される際の例を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る成形機10は、単軸押出機11と、ダイヘッド12と、ダイヘッド12を単軸押出機11の先端に取り付けるためのアダプター13を備える。アダプター13は、単軸押出機11から樹脂組成物をダイヘッド12に送るための連通部となる。単軸押出機11は、シリンダー20と、シリンダー20の内部に挿通されるスクリュー21と、シリンダー20の上流側の端部に取り付けられるホッパー22と、スクリュー21を回転させるスクリュー駆動装置23とを備える。
スクリュー21は、スクリュー軸の側面に螺旋状に形成されたねじ切り部25が形成されたものである。ねじ切り部25の外径Dは、シリンダーの内周面の内径よりも若干小さく、かつ一定に設定されている。
スクリュー21は、その基端部から先端部に向けて、供給部21Aと、供給部21Aに続く圧縮部21Bと、圧縮部21Bに続く計量部21Cとを有する。供給部21Aは、スクリューのねじ切り部25が施された、ねじの切り始めから溝深さ(高さ、又はねじ深さとも言う)が一定となっている範囲をいう。圧縮部21Bは、溝深さが徐々に浅くなる範囲をいう。計量部21Cは、スクリュー先端部の溝深さが浅く一定となっている範囲をいう。
供給部、圧縮部、計量部の長さL1、L2、L3は、これらの合計を1としたとき、それぞれ0.2〜0.5程度となるものであり、より好ましくはそれぞれ0.25〜0.40程度となるものである。
本成形機におけるスクリュー形状は、圧縮比(C/R)が1.5〜3.5であるものが好ましく、1.8〜3.0がより好ましい。なお、圧縮比(C/R)とは、供給部21Aの1ピッチ分の樹脂容量(体積)と計量部21Cの1ピッチ分の樹脂容量(体積)の比で表される。スクリューの圧縮比が1.5以上であれば、樹脂組成物に効果的に剪断効果を与えることができ、ガスバリア樹脂(C)以外の成分を後述する温度条件で十分に可塑化することができる。また、圧縮比が3.5以下であると、樹脂組成物中のガスバリア樹脂(C)が、単軸押出機11内部で微細な粒状に分散されることが防止される。
ダイヘッド12は、内部に中空部を有するダイボディ31と、中空部内部に配置され、ダイボディ31との間に、円筒状のダイ孔32を形成するマンドレル33とを備える。
円筒状のダイ孔32は、下側が開口して吐出口32Aとなるとともに、上側には導入路35が接続される。導入路35は、ダイヘッド12からアダプター(連通部)13の内部を通って、単軸押出機11の排出口11Aに接続される。なお、ダイ孔32は、筒状形状であれば、円筒状に限定されない。
なお、図1では、マンドレル33は、ダイボディ31の上部からはめ込まれるタイプのものを示すが、本発明では使用するマンドレルの種類に制限はなく、図2、3に示すように、マンドレル33は、ダイボディ31の内壁とサポート38(又は38A,38B)で連結されるタイプのものであってもよい。
一般的に、いずれのマンドレルを使用してもウェルドと呼ばれる樹脂の合流部が発生し、本発明の容器においてはウェルド周辺にガスバリア樹脂(C)がほとんど存在しないため、これによりバリア性が低下することがある。したがって、容器中のウェルドが占める面積は小さい方が好ましく、このような観点から、図2、3に示すように、ダイボディ31の内壁とサポート38(又は38A,38B)で連結されるタイプのマンドレルを使用することが好ましい。
さらには、図3に示すように、ダイボディ31とマンドレル33の間に円筒部39を配置し、円筒部39、及び円筒部39の内側、外側それぞれに配置されたサポート38A,38Bを介して、ダイボディ31の内壁とマンドレル33とを連結し、かつ円筒部39の内側と外側とでサポート38A,38Bの位置を円周方向においてずらしたものがより好ましい。この構成により、得られる容器の壁面をウェルドが貫通しない構造とすることができ、バリア性を良好にできる。
サポート38、38Aおよび38Bの本数は、それぞれ2〜4本であることが好ましく、この範囲内であればウェルドによるバリア性の低下を最小限にすることができ、かつダイボディ31とマンドレル33の連結に必要な強度を確保することができる。また、サポート38、38Aおよび38Bの形状は、ウェルド抑制の観点から、薄板状であることが好ましく、その上下部分が鋭角状になっていることがより好ましい。
なお、通常、マンドレル33は径の大きい部分が設けられることで、ダイヘッド12のダイ孔32は、幅が最も狭くなった最狭部40が設けられるが、円筒部39、サポート38、38A、38Bは、通常、その最狭部40の上流側に配置される。
単軸押出機11には、スクリュー21の基端部からスクリュー先端部に向けて、例えば、順にヒーターC1、C2、C3が設けられる。ヒーターC1、C2、C3は、それぞれスクリューの供給部21A、圧縮部21B、計量部21Cに対応する部分のシリンダーを加熱し、その温度(シリンダー温度)を調整する。
なお、ヒーターC1、C2、C3それぞれは、供給部21A、圧縮部21B,計量部21Cに対応するシリンダー全体を後述する温度(T1,T2)に維持できるように加熱するものであってもよいが、例えば、ヒーターC1、C2は、供給部21A、圧縮部21Bに対応するシリンダーの大半の部分(例えば、80%以上の部分)を後述する温度(T1)に維持できるように加熱するものであればよい。同様に、ヒーターC3は、例えば、計量部21Cに対応するシリンダーの大半の部分を後述する温度(T2)に維持できるように加熱するものであればよい。このような温度調整を行うために、単軸押出機には少なくとも3つのヒーターを設置することが好ましい。
また、アダプター13を取り巻くようにヒーターADが設けられ、アダプター13はヒーターADによって後述する温度T3に維持される。また、ダイヘッド12には、不図示のヒーターが設けられ、ダイヘッド12は、そのヒーターによって、その全体が後述する温度T4に維持される。
単軸押出機11は、ホッパー22からスクリュー21の基端側に投入された各種原料((A),(B),(C)成分及びその他の任意成分)を、スクリュー21によって移動させながら可塑化しつつ混練し、その排出口11Aから上記原料の混合物を樹脂組成物として排出させる。単軸押出機11の排出口11Aから排出された樹脂組成物は、導入路35を介してダイ孔32に導入され、吐出口32Aから円筒状のパリソンとして押出される。パリソンは、その後、公知の方法で容器に成形される。具体的には、パリソンは、適当な長さに押し出されたタイミングで不図示の金型で挟み、空気をパリソン内に送り込んで膨らませ冷却された金型内に密着させ、それにより金型内で容器を成形し、その成形した容器は、金型を開いて取り出す。
なお、ホッパー22から投入される各原料は、粉体、ペレット等の固体であればいかなる形状でもよいが、ペレットであることが好ましい。
本製造方法では、以下の式(1)〜(4)を満足する条件で、樹脂組成物を成形機から押出することにより、ポリエチレン系構造体を得ることが好ましい。
Am+10℃≦T1≦Cm−10℃ (1)
Cm−30℃≦T2≦Cm+30℃ (2)
Cm−10℃≦T3≦Cm+50℃ (3)
Cm−30℃≦T4≦Cm+40℃ (4)
上記式(1)〜(4)において、T1は、単軸押出機において、スクリューの供給部および圧縮部に対応する部分のシリンダー温度(℃)である。T2は、単軸押出機において、スクリューの計量部に対応する部分のシリンダー温度(℃)である。T3は連通部の温度、T4はダイヘッドの温度(℃)である。また、Amはポリオレフィン(A)の融点、Cmはガスバリア樹脂(C)の融点である。
すなわち、単軸押出機11において、温度T1は、ヒーターC1、C2により加熱される部分のシリンダー温度である。また温度T2は、ヒーターC3によって加熱される部分のシリンダー温度(℃)である。さらに、温度T3はヒーターADによって加熱されるアダプター13の温度、温度T4はダイヘッドに設けられたヒーター(不図示)によって加熱されるダイヘッド12の温度である。
本発明では、温度T1が(Am+10℃)以上に制御され、そのため、ホッパー22から投入された原料のうち、ポリオレフィン(A)が、シリンダー20内部の供給部21A及び圧縮部21Bに対応する領域で溶融された状態となる。一方で、温度T1は、ガスバリア樹脂(C)の融点Cmより十分に低いため、ガスバリア樹脂(C)は、これら領域では十分に軟化されず、ほとんど微細化されない。したがって、ガスバリア樹脂(C)は、供給部21A、圧縮部21Bに対応する領域では、ペレットで投入された場合にはペレット状態がある程度保持される。
また、ポリオレフィン(A)を供給部21A及び圧縮部21Bに対応する領域で溶融させつつ、ガスバリア樹脂(C)を十分に軟化させないために、温度T1は、Am+20℃≦T1≦Cm−20℃であることがより好ましい。
また、ポリオレフィン(A)とともに、酸変性ポリオレフィン(B)も溶融させるために、温度T1は、酸変性ポリオレフィン(B)の融点Bmよりも高いことが好ましく、より好ましくは(Bm+5℃)以上、さらに好ましくは(Bm+10℃)以上である。
なお、本発明では、供給部21A及び圧縮部21Bに対応する部分のシリンダー温度は、互いに同じ温度であってもよいし、異なっていてもよい。なお、互いに異なる場合には、圧縮部21Bに対応する部分のシリンダー温度は、供給部21Aに対応する部分のシリンダー温度よりも高いことが好ましい。
次いで、本製造方法では、シリンダー温度T2が上記のように制御され、ガスバリア樹脂(C)は、シリンダー20内部の計量部21Cに対応する領域では、軟化状態がさらに進行する。ただし、ガスバリア樹脂(C)は、計量部21Cに対応する領域で必要以上に軟化されず、供給部21A及び圧縮部21Bと同様に、十分に微細化されない。そのため、単軸押出機11から排出される樹脂組成物は、溶融したポリオレフィン(A)及び酸変性ポリオレフィン(B)の混合物中に、十分に微細化されない固体状のガスバリア樹脂(C)が散りばめられた状態となる。ただし、シリンダー温度T2は(Cm−30℃)以上であり、ガスバリア樹脂(C)が十分に加熱されることとなるため、ガスバリア樹脂(C)は後述するようにアダプター13(連通部)で十分に軟化することが可能になる。
なお、シリンダー温度T2は、通常、シリンダー温度T1よりも高くなる。また、シリンダー温度T2は、ガスバリア樹脂(C)の融点Cmよりも低いことが好ましく、(Cm−20℃)≦T2<Cmであることがより好ましい。このように、シリンダー温度T2を上記温度範囲で制御することで、計量部21Cに対応する領域において、ガスバリア樹脂(C)が溶融したり、微細化したりすることを防止し、適度に軟化させることができる。
次いで、本製造方法では、アダプター(連通部)13の温度T3が、上記したように、ガスバリア樹脂(C)の融点Cm−10℃以上の温度に設定されるため、ガスバリア樹脂(C)は、アダプター13で十分な軟化状態になる。ここで、ガスバリア樹脂(C)は、上記したように、溶融した成分(A)(B)中に十分に微細化されない状態で単軸押出機11から供給される。そのため、ガスバリア樹脂(C)は、アダプター13内部で、十分に微細化されない状態のまま軟化させられ、その状態でダイ孔32に送られることになる。
本製造方法では、各原料に余計な熱履歴を与えず、また成分(C)の分散を必要以上に起こさせないために、Cm−10℃≦T3≦Cm+40℃であることがより好ましい。なお、温度T3は、温度T2よりも高いことが好ましい。
次に、アダプター13で十分に微細化されない状態で軟化されたガスバリア樹脂(C)は、導入路35よりも幅が狭められたダイ孔32を通ることでせん断が加えられて薄層化され、ポリオレフィン(A)中に層状に分散されることとなる。一般的にダイ孔32の幅は一定ではないが、最狭部の幅が小さいほどガスバリア樹脂(C)は層状に分散しやすくなる。最狭部の幅は0.1〜2mmが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5mm、更に好ましくは0.3〜1.2mmである。
本製造方法では、ダイヘッドの温度T4が(Cm−30℃)以上であるため、ガスバリア樹脂(C)はダイヘッド内部にて固化等することがないため、押出不良等が生じない。また、ダイヘッドの温度T4は(Cm+40℃)以下であるため、各原料に必要以上に熱履歴が与られず、ポリオレフィン系構造体の品質が悪化したり、各原料の溶融粘度が低下してドローダウンが発生したりすることも防止される。
本製造方法では、混合原料に余計な熱履歴を与えず、また、押し出し性、成形加工性をより良好にする観点から、ダイヘッドの温度T4は、Cm≦T4≦Cm+40℃であることがより好ましい。
また、本製造方法において、吐出口32Aから押し出される樹脂組成物の温度T5(出口樹脂温度T5)は、以下の式(5)を満足することが好ましく、式(5’)を満足することがより好ましい。
Cm−30℃≦T5≦Cm+30℃ (5)
Cm−20℃≦T5≦Cm (5’)
樹脂出口温度が以上の温度範囲であると、ガスバリア樹脂(C)は、ポリエチレン容器において層状に分散しやすくなり、また、非溶融の軟化状態で層状に引き伸ばされやすくなるため、バリア性能を高めやすくなる。
なお、以上の説明では、クロスヘッドダイを用いて、ダイレクトブロー法により容器を成形する例を説明したが、Tダイ等の他のダイヘッドや成形方法を利用する場合も同様である。例えば、Tダイを使用する場合、アダプターからTダイに送られた樹脂組成物が、リップ隙間により構成されたダイ孔の吐出口から押し出されて、シート状に成形される。シート状のポリエチレン系構造体は、その後、真空成形、圧空成形等の熱成形により容器に二次成形される。
また、ダイヘッドとしては、1つのダイヘッドに2つ以上のダイ孔を有するものを使用してもよい。ダイ孔を2つ以上有することで、一度に複数のポリオレフィン系構造体が製造でき、生産性を向上させることができる。また、以上説明した製造方法では、上記したように主にダイ孔の内部でガスバリア樹脂(C)が層状に分散される。そのため、導入路35を分岐させてもガスバリア樹脂(C)の層が2つに分離しないので、バリア性能の高いポリエチレン容器を得ることが可能になる。
なお、ダイヘッドがダイ孔を2つ以上有する場合、例えば導入路35が2つ以上に分岐され、それぞれの分岐路が各ダイ孔に接続する態様にすることができる。
なお、以上の説明では、単軸押出機は、ミキシング部が設けられないフルフライトと呼ばれるスクリューが使用される例を説明したが、本発明では、例えば、圧縮部21Bがダブルフライト構造となっているスクリューや、計量部21Cにミキシング部が設けられるミキシングスクリューが使用されてもよい。ミキシング部としては、例えば、ピン形状の突起が設けられたものや、バリアタイプのものが使用されるが、これらに限定されるものではない。バリアタイプのものとしては、具体的にはマドックが挙げられる。バリアタイプのものを使用する場合、計量部21Cに対応する部分のシリンダー温度T2は、以下の(2’)で示す条件としたほうがよい。
Cm−30℃≦T2≦Cm−5℃ (2’)
計量部21Cにバリアタイプのミキシング部が設けられると、計量部21Cで各原料が大きなせん断を受けることになる。せん断発熱により計量部21Cの温度が上昇するため、計量部21Cに対応する部分のシリンダー温度T2を上記のように低くすることで、計量部21Cでガスバリア樹脂(C)が必要以上に軟化したり、溶融したりすることが防止される。なお、ミキシング部が設けられる場合、計量部の長さL3はミキシング部の長さも含めた長さをいう。
以上説明した製造方法では、成形機10を上記(1)〜(4)の条件で温度制御することで、得られるポリエチレン系構造体において、ポリオレフィン(A)中にガスバリア樹脂(C)を適切に層状に分散させることができる。そのため、ポリオレフィン系構造体のバリア性を高めることができるとともに、耐環境応力亀裂性を大幅に改善することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例等における各種評価は下記の方法により行った。
(1)ポリオレフィン(A)及び酸変性ポリオレフィン(B)のMFR(g/10分)
東洋精機製作所製メルトインデクサーを使用し、JIS K7210に準拠して、190℃、2.16kgfの条件にて測定を行った。
(2)ポリオレフィン(A)及び酸変性ポリオレフィン(B)の密度(g/cm
押出機、Tダイ、冷却ロール、引き取り機等からなるシート成形装置を用い、厚さが約1mmの単層シートを成形した。次いでシートから縦50mm×横50mmの試験片を切削して真比重計により真比重を求めた。
(3)酸変性ポリオレフィン(B)の酸価(mg/g)
JIS K0070に準拠して、中和滴定により測定を行った。酸変性ポリエチレン1gを精秤し、キシレン100mLに約120℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、フェノールフタレイン溶液を加え、予め正確な濃度を求めた0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を用いて中和滴定を行った。滴下量(T)、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター(f)、水酸化カリウムの式量56.11の1/10(5.611)、酸変性ポリエチレンの質量(S)から下式(6)により酸価を算出した。
酸価=T×f×5.611/S (6)
(4)ガスバリア樹脂(C)の相対粘度
ポリアミド0.2gを精秤し、96質量%硫酸20mLに20〜30℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温層中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また同様の条件で96質量%硫酸そのものの落下時間(t0)を測定した。t及びt0から下式(7)により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0 (7)
(5)ポリオレフィン(A)、酸変性ポリオレフィン(B)及びガスバリア樹脂(C)の融点
示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:「DSC−60」)を用い、窒素気流下にて、室温から260℃まで10℃/分の昇温速度で試料を融解させた後、液体窒素を用いて測定試料を急冷し、再度室温から260℃まで10℃/分の速度で昇温して測定を行った。次いで、得られたチャートから融解ピーク頂点の温度を読みとった。
(6)容器のバリア性能(トルエン透過率)
実施例及び比較例で作製した容器に、トルエン200mlを入れた後、口栓開口部をアルミ蒸着フィルムでヒートシールし、更にキャップをつけて総質量を測定した。次いで、トルエンを封入した容器を40℃の恒温槽に保管して、24時間毎に総質量を測定し、質量減少量が安定するまで測定を継続した。このときの1日あたりの質量減少量をトルエン透過率(g/bottle・day)とした。
(7)容器の耐環境応力亀裂性
実施例及び比較例で作製した容器に、非イオン性界面活性剤(日油(株)製、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、商品名:「ノニオンNS−210」)を10%に希釈した水溶液100mlを入れ、容器の内圧を100kPaに保持して60℃の恒温槽に保管し、容器に亀裂が生じるまでの耐久時間を測定した。なお、下式(8)により耐環境応力亀裂性の改善率を算出した。
耐環境応力亀裂性改善率=(X−Y)/Y×100 (8)
[式中、Xは、ポリオレフィン系構造体についての耐環境応力亀裂性試験において構造体に亀裂が生じるまでの耐久時間を表し、Yは、ポリオレフィン(A)100質量%からなる構造体についての耐環境応力亀裂性試験において構造体に亀裂が生じるまでの耐久時間を表す。]
<使用したポリオレフィン(A)>
HDPE−1:
京葉ポリエチレン(株)製、高密度ポリエチレン、商品名:「京葉ポリエチ B5203」、MFR=0.3(190℃、2.16kgf)、密度=0.948g/cm、融点=131℃
HDPE−2:
京葉ポリエチレン(株)製、高密度ポリエチレン、商品名:「京葉ポリエチ B5803」、MFR=0.3(190℃、2.16kgf)、密度=0.957g/cm、融点=133℃
HDPE−3:
日本ポリエチレン(株)製、高密度ポリエチレン、商品名:「ノバテックHD HB420R」、MFR=0.2(190℃、2.16kgf)、密度=0.956g/cm、融点=133℃
<使用した酸変性ポリオレフィン(B)>
AD−1:
日本ポリエチレン(株)製、マレイン酸変性ポリエチレン、商品名:「アドテックス L6100M」、MFR=1.1(190℃、2.16kgf)、密度=0.92g/cm、酸価=9.8mg/g、融点=123℃
<使用したガスバリア樹脂(C)>
PA−1:
三菱ガス化学(株)製、ポリメタキシリレンアジパミド、商品名:「MXナイロン S6121」、相対粘度=3.5、融点=238℃
PA−2
宇部興産(株)製、ポリアミド6、商品名:「UBEナイロン 1022B」、相対粘度=3.35、融点=220℃
実施例1
直径=50mm、L/D=25、供給部/圧縮部/計量部の長さ比率=33/33/33%、圧縮比=2.5のフルフライトスクリューを挿入した単軸押出機、アダプター、パリソンコントローラー付き円筒ダイ(ダイヘッド;ダイ孔の最狭部の幅:1mm)、金型、型締め機、冷却器等を備えた単層ダイレクトブロー容器成形機を使用して、以下のようにボトルを成形した。押出機ホッパーから、HDPE−1/AD−1/PA−1=80/10/10(質量%)の割合でドライブレンドした混合ペレットを、単軸押出機内に投入し、スクリュー回転数を30rpmとしてパリソンを円筒ダイから押し出し、ダイレクトブロー法によって内容積400ml、厚さ1mmのネジ口栓付きボトルの成形を行った。その際、押出機のシリンダー温度を、C1/C2/C3=180/190/230℃、アダプターの温度を240℃、ダイヘッドの温度を240℃に設定した。なお、C1、C2、C3は、それぞれスクリューの供給部、圧縮部、計量部に対応する部分のシリンダー温度である。
実施例2〜4
ポリオレフィン(A)及びガスバリア樹脂(C)の種類、並びに各設定温度を表1に示したように変更したこと以外は実施例1と同様にしてネジ口栓付きボトルの成形を行った。
比較例1〜3
酸変性ポリオレフィン(B)、ガスバリア樹脂(C)を使用せず、ポリオレフィン(A)として表1に示す高密度ポリエチレンのみを使用したこと以外は実施例1と同様にしてネジ口栓付きボトルの成形を行った。
参考例1
押出機シリンダー温度をC1/C2/C3=210/235/235℃、アダプター温度を230℃、ダイヘッドの温度を230℃に設定したこと以外は実施例1と同様にしてネジ口栓付きボトルの成形を行った。
得られた各ボトルについて、トルエン透過率測定及び耐環境応力亀裂性試験を実施した。結果を表1に示す。
本発明のポリオレフィン系構造体は、全ての実施例において優れたトルエンバリア性を示した。また、ポリオレフィン(A)のみからなる比較例1〜3と比べて耐環境応力亀裂性を大幅に改善することができた。
なお、参考例1では、実施例1と同じ樹脂組成物を用いたが、実施例1と比べるとトルエンバリア性が不十分であり、耐環境応力亀裂性の改善率も小さいものであった。参考例1では、圧縮部に対応する部分のシリンダー温度C2(すなわち、温度T1)を条件(1)より高く設定したため、ガスバリア樹脂(C)が必要以上に軟化し一部微細化してしまい、十分な層状分散とならなかったものと推定される。
本発明のポリオレフィン系構造体は、燃料や薬品のバリア性能及び酸素等の各種ガスのバリア性能に優れ、耐環境応力亀裂性にも優れる。本発明のポリオレフィン系構造体は、草刈り機やチェーンソー等の作業機械、オートバイや船外機、自動車等の燃料タンク、ガソリン移送用パイプや燃料タンクに取り付けられるパイプ形状の部品、農薬やトイレタリー、サニタリー用洗剤、各種化学薬品の容器、食品や飲料等の容器等に好適に利用することができる。

Claims (10)

  1. ポリオレフィン(A)60〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)5〜35質量%、及びポリアミドからなるガスバリア樹脂(C)5〜35質量%を含有する樹脂組成物からなるポリオレフィン系構造体であって、該構造体中において前記ガスバリア樹脂(C)が層状に分散しており、かつ、下式(I)により算出される耐環境応力亀裂性改善率が50%以上である、ポリオレフィン系構造体。
    耐環境応力亀裂性改善率=(X−Y)/Y×100 (I)
    [式中、Xは、ポリオレフィン系構造体についての耐環境応力亀裂性試験において構造体に亀裂が生じるまでの耐久時間を表し、Yは、ポリオレフィン(A)100質量%からなる構造体についての耐環境応力亀裂性試験において構造体に亀裂が生じるまでの耐久時間を表す。]
  2. 前記ポリオレフィン系構造体が、シリンダー内部にスクリューが挿通してなる単軸押出機と、ダイヘッドと、前記単軸押出機から前記樹脂組成物を前記ダイヘッドに送る連通部とを備える成形機を用いて、下式(1)〜(4)を満足する温度条件で前記樹脂組成物を前記成形機から押し出すことにより得られる、請求項1に記載のポリオレフィン系構造体。
    Am+10℃≦T1≦Cm−10℃ (1)
    Cm−30℃≦T2≦Cm+30℃ (2)
    Cm−10℃≦T3≦Cm+50℃ (3)
    Cm−30℃≦T4≦Cm+30℃ (4)
    [式中、T1は、前記単軸押出機において、スクリューの供給部及び圧縮部に対応する部分のシリンダー温度を表し;T2は、前記単軸押出機において、スクリューの計量部に対応する部分のシリンダー温度を表し;T3は前記連通部の温度を表し;T4はダイヘッドの温度を表し;Amはポリオレフィン(A)の融点を表し;Cmはガスバリア樹脂(C)の融点を表す。]
  3. 前記ポリオレフィン(A)のメルトフローレートが0.01〜10(g/10分)である、請求項1又は2に記載のポリオレフィン系構造体。
  4. 前記酸変性ポリオレフィン(B)のメルトフローレートが0.1〜10(g/10分)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系構造体。
  5. 前記酸変性ポリオレフィン(B)の酸価が2〜30mg/gである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系構造体。
  6. 前記ガスバリア樹脂(C)がメタキシリレン基含有ポリアミドである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオレフィン系構造体。
  7. 前記メタキシリレン基含有ポリアミドの相対粘度が1.5〜4.5である、請求項6に記載のポリオレフィン系構造体。
  8. 前記樹脂組成物が、ポリオレフィン系構造体の製造過程で発生した樹脂固形物より得た再使用樹脂を1〜60質量%含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオレフィン系構造体。
  9. 前記ポリオレフィン系構造体が、中空成形体、シート成形体又はシート成形体を更に熱成形して得られる熱成形体である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリオレフィン系構造体。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリオレフィン系構造体の製造方法であって、
    シリンダー内部にスクリューが挿通してなる単軸押出機と、ダイヘッドと、前記単軸押出機から前記樹脂組成物を前記ダイヘッドに送る連通部とを備える成形機を用いて、
    ポリオレフィン(A)60〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)5〜35質量%、及びポリアミドからなるガスバリア樹脂(C)5〜35質量%を含有する樹脂組成物を、下式(1)〜(4)を満足する温度条件で前記成形機から押し出すことによりポリオレフィン系構造体を得る、ポリオレフィン系構造体の製造方法。
    Am+10℃≦T1≦Cm−10℃ (1)
    Cm−30℃≦T2≦Cm+30℃ (2)
    Cm−10℃≦T3≦Cm+50℃ (3)
    Cm−30℃≦T4≦Cm+30℃ (4)
    [式中、T1は、前記単軸押出機において、スクリューの供給部及び圧縮部に対応する部分のシリンダー温度を表し;T2は、前記単軸押出機において、スクリューの計量部に対応する部分のシリンダー温度を表し;T3は前記連通部の温度を表し;T4はダイヘッドの温度を表し;Amはポリオレフィン(A)の融点を表し;Cmはガスバリア樹脂(C)の融点を表す。]
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