JP2016160228A - 含フッ素対称オレフィンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の存在下、炭素数が3以上の1種類の非対称含フッ素オレフィン同士をオレフィンメタセシス反応させることにより、炭素数が4以上の1種類の対称含フッ素オレフィンを製造する方法。
〔2〕
金属−カルベン錯体化合物(10)における金属が、ルテニウム、モリブデンまたはタングステンである、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕
非対称含フッ素オレフィンが下記式(21)で表される化合物であり、対称含フッ素オレフィンが下記式(51)で表される化合物である、〔1〕または〔2〕に記載の製造方法。
X1は、下記官能基(iia)及び官能基Rfからなる群から選ばれる官能基であり、X2及びX3はそれぞれ独立に、下記官能基(i)、官能基(ii)、官能基(iii)及び官能基(iv)からなる群から選ばれる官能基であり、X1とX2は互いに結合して環を形成してもよい。
官能基(i):水素原子。
官能基(ii):ハロゲン原子。
官能基(iia):フッ素原子。
官能基(iii):炭素数1〜20の一価炭化水素基。
官能基(iv):ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基。
官能基Rf:炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基、または、炭素数5〜20の(ペル)フルオロアリール基。
〔4〕
非対称含フッ素オレフィンが3,3,3−トリフルオロプロペンであり、かつ対称含フッ素オレフィンが1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンである、または、非対称含フッ素オレフィンが2,3,3−トリフルオロプロペンであり、かつ対称含フッ素オレフィンが1,1,2,3,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンである、〔1〕〜〔3〕のいずれか1に記載の製造方法。
なお本明細書において、「式(X)で表される化合物」のことを、単に「化合物(X)」と称する場合がある。また化合物の構造式中での波線は、E/Zの異性体のうち、いずれか一方または両方の混合物であることを意味する。
「非対称オレフィン」とは、対称オレフィンではないオレフィンを意味する。「対称オレフィン」とは、オレフィンを構成する2個の炭素原子に結合する置換基がそれぞれ同じであることを意味する。例えばある示性式R1R2C=CR3R4で示されるオレフィンおいて、R1とR3とが等しくかつR2とR4とが等しい場合、または、R1とR4とが等しくかつR2とR3とが等しい場合に、該オレフィンを対称オレフィンと呼ぶ。本明細書においては、オレフィンにおけるE体とZ体とが区別できる場合であっても、上記対称性の考慮はしない。
「ペルハロゲン化アルキル基」とは、アルキル基の水素原子が全てハロゲン原子で置換された基を意味する。ペルハロゲン化アルコキシ基とは、アルコキシ基の水素原子が全てハロゲン原子で置換された基を意味する。「ペルハロゲン化アルコキシ基」及び「ペルハロゲン化アリール基」についても同様である。
「(ペル)ハロゲン化アルキル基」とは、ハロゲン化アルキル基とペルハロゲン化アルキル基とを合わせた総称で用いる。すなわち該基は1個以上のハロゲン原子を有するアルキル基である。「(ペル)ハロゲン化アルコキシ基」、「(ペル)ハロゲン化アリール基」、及び「(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基」についても同様である。
「アリール基」とは、芳香族化合物において芳香環を形成する炭素原子の内いずれか1つの炭素原子に結合した1つの水素原子を取り去った残基に相当する一価の基を意味し、炭素環化合物から誘導されるアリール基と、ヘテロ環化合物から誘導されるヘテロアリール基とを合わせた総称で用いる。
炭化水素基の炭素数とは、ある炭化水素基全体に含まれる炭素原子の総数を意味し、該基が置換基を有さない場合は炭化水素基骨格を形成する炭素原子の数を、該基が置換基を有する場合は炭化水素基骨格を形成する炭素原子の数に置換基中の炭素原子の数を加えた総数を表す。
本発明はオレフィンメタセシスによる対称含フッ素オレフィンの製造方法に関する。例えば、下記式(21)で表わされる非対称オレフィンを金属−カルベン錯体存在下で反応させた場合、下記スキーム(I)に表わすような反応機構により、下記式(51)で表わされる対称含フッ素オレフィンが得られる。
また下記スキーム(I)に示される中間体である化合物(11)及び化合物(12)は、オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の代表例として記載する。特定の金属−カルベン錯体化合物(10)としては、ルテニウム−カルベン錯体、モリブデン−カルベン錯体、又はタングステン−カルベン錯体(以下、「金属−カルベン錯体」とも総称する。)が例示できる。
X1は、下記官能基(iia)及び官能基Rfからなる群から選ばれる官能基であり、X2及びX3はそれぞれ独立に、下記官能基(i)、官能基(ii)、官能基(iii)及び官能基(iv)からなる群から選ばれる官能基であり、X1とX2は互いに結合して環を形成してもよい。
官能基(i):水素原子。
官能基(ii):ハロゲン原子。
官能基(iia):フッ素原子。
官能基(iii):炭素数1〜20の一価炭化水素基。
官能基(iv):ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基。
官能基Rf:炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基、または、炭素数5〜20の(ペル)フルオロアリール基。
金属−カルベン錯体化合物(10)として、上記スキーム(I)では化合物(11)及び化合物(12)を例に示したが、金属と二重結合を形成している炭素原子に結合する2つの官能基は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、または、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基であればよく、これらは互いに結合して環を形成してもよい。
化合物(10)は本発明に係る製造方法において触媒としての役割を果たすが、試薬として投入するもの及び反応中で生成するもの(触媒活性種)の両方を意味する。ここで、化合物(10)は反応条件下、配位子のいくつかが解離することで触媒活性を示すようになるものと、配位子の解離なしで触媒活性を示すものが知られているが、本発明ではいずれでもよく限定されない。また一般に、オレフィンメタセシスは触媒へのオレフィンの配位と解離を繰り返しながら進行するため、反応中、触媒上にオレフィン以外の配位子がいくつ配位しているかは必ずしも明確でない。したがって本明細書中、[L]は配位子の数や種類を特定するものではない。
なお、上記ルテニウム−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
なお、上記モリブデン−カルベン錯体又はタングステン−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
本発明においては、炭素数が3以上の1種類の非対称含フッ素オレフィン同士をオレフィンメタセシス反応(セルフメタセシス反応)させる。この非対称含フッ素オレフィンとしては化合物(21)が好ましい。
化合物(21)におけるX1〜X3は、前記定義と同様である。
すなわち化合物(21)におけるX1はフッ素原子、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基、及び、炭素数5〜20の(ペル)フルオロアリール基からなる群から選ばれる官能基;X2およびX3はそれぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1〜20の一価炭化水素基;並びに、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基;からなる群から選ばれる官能基である。X1とX2は互いに結合して環を形成してもよい。
上記基のうち炭素原子を有する基は、後述するように炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有していてもよい。
また、化合物(21)はモノオレフィンであることが好ましい。すなわち、X1〜X3はアルケン構造及びアルキン構造を含まないことが好ましい。
より好ましくはX1が、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロオクチル基;X2が水素原子またはフッ素原子;X3が水素原子;の組み合わせである。
本発明においては、目的化合物として炭素数が4以上の1種類の対称含フッ素オレフィンを得る。この対称含フッ素オレフィンとしては化合物(51)が好ましい。化合物(51)は原則として内部オレフィンである。含フッ素化合物(51)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
本発明はオレフィンメタセシスによる含フッ素オレフィンの製造方法に関するものであり、典型的には、同一種類の非対称含フッ素オレフィンと金属−カルベン錯体を接触させることによってオレフィンメタセシスを行い、原料とは異なる対称含フッ素オレフィンを得るものである。
また原料となるオレフィンは微量の不純物(例えば過酸化物、フッ化水素等)を含むことがあるので、目的物収率向上の点で精製してもよい。精製方法については特に制限はない。例えば文献(Armarego,W.L.F.et al.,Purification of Laboratory Chemicals(Sixth Edition),2009,Elsevier)記載の方法に従って行うことができる。
試薬として投入する場合、市販の金属−カルベン錯体をそのまま用いてもよく、あるいは市販試薬から公知の方法で合成した市販されていない金属−カルベン錯体を用いてもよい。
系内で発生させる場合、公知の方法で前駆体となる金属錯体から調製した金属−カルベン錯体を本発明に用いることができる。
なお、目的物収率向上の点で、前記溶媒は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。前記脱気及び脱水操作は通常金属−カルベン錯体と接触させる前に行う。
オレフィンと金属−カルベン錯体を接触させる相としては、特に制限はないが、反応速度の点で、通常は液相が用いられる。原料となるオレフィンが反応条件下で気体の場合、液相で実施するのが難しいため、気−液二相で実施することもできる。なお、液相で実施する場合には溶媒を用いることができる。このとき用いる溶媒としては、上記、金属−カルベン錯体の溶解又は懸濁に用いた溶媒と同様のものを利用することができる。なお、原料となるオレフィンのうち少なくとも一方が反応条件下で液体の場合、無溶媒で実施できることがある。
オレフィンと金属−カルベン錯体を接触させる時間としては、特に制限はないが、通常1分〜48時間の範囲で実施される。
オレフィンと金属−カルベン錯体を接触させる圧力としては、特に制限はないが、加圧下でも、常圧下でもよいし、減圧下でもよい。通常0.001〜10MPa程度、好ましくは0.01〜1MPa程度である。
<市販試薬>
本実施例において、触媒は、特に記載しない場合においては、市販品をそのまま反応に用いる。溶媒(o−ジクロロベンゼン−d4)は、市販品をあらかじめ凍結脱気したあと、モレキュラーシーブ4Aで乾燥してから反応に用いた。
<評価方法>
本実施例において、合成した化合物の構造は日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置(JNM−AL300)により1H−NMR、19F−NMR測定を行うことで同定した。また、分子量は株式会社島津製作所製のガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS−QP2010Ultra)を用いて、電子イオン化法(EI)により求めた。
Grubbs第二世代触媒による3,3,3−トリフルオロプロペンのメタセシスによる1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの合成
窒素雰囲気下、Grubbs第二世代触媒(20mol%、0.024mmol)及びo−ジクロロベンゼン−d4(0.6mL)を耐圧NMR測定管に量り入れた。その後、NMR測定管の気相部を3,3,3−トリフルオロプロペン(1.0atm、2.7mL、0.12mmol)で置換した。
NMR測定管を180℃で加熱し、その温度で1時間反応させた。反応終了後、内容液のNMR及びGC−MSを測定して、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの生成を確認した。
これら一連の反応を以下に示す。
GC−MS(EI):M+=164
Hoveyda−Grubbs第二世代触媒による3,3,3−トリフルオロプロペンのメタセシスによる1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの合成
窒素雰囲気下、Hoveyda−Grubbs第二世代触媒(20mol%、0.024mmol)及びo−ジクロロベンゼン−d4(0.6mL)を耐圧NMR測定管に量り入れた。その後、NMR測定管の気相部を3,3,3−トリフルオロプロペン(1.0atm、2.7mL、0.12mmol)で置換した。
NMR測定管を180℃で加熱し、その温度で1時間反応させた。反応終了後、内容液のNMR及びGC−MSを測定して、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの生成を確認した。
これら一連の反応を以下に示す。
GC−MS(EI):M+=164
Claims (4)
- オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の存在下、炭素数が3以上の1種類の非対称含フッ素オレフィン同士をオレフィンメタセシス反応させることにより、炭素数が4以上の1種類の対称含フッ素オレフィンを製造する方法。
- 金属−カルベン錯体化合物(10)における金属が、ルテニウム、モリブデンまたはタングステンである、請求項1に記載の製造方法。
- 非対称含フッ素オレフィンが下記式(21)で表される化合物であり、対称含フッ素オレフィンが下記式(51)で表される化合物である、請求項1または2に記載の製造方法。
X1は、下記官能基(iia)及び官能基Rfからなる群から選ばれる官能基であり、X2及びX3はそれぞれ独立に、下記官能基(i)、官能基(ii)、官能基(iii)及び官能基(iv)からなる群から選ばれる官能基であり、X1とX2は互いに結合して環を形成してもよい。
官能基(i):水素原子。
官能基(ii):ハロゲン原子。
官能基(iia):フッ素原子。
官能基(iii):炭素数1〜20の一価炭化水素基。
官能基(iv):ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基。
官能基Rf:炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基、または、炭素数5〜20の(ペル)フルオロアリール基。 - 非対称含フッ素オレフィンが3,3,3−トリフルオロプロペンであり、かつ対称含フッ素オレフィンが1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンである、または、非対称含フッ素オレフィンが2,3,3−トリフルオロプロペンであり、かつ対称含フッ素オレフィンが1,1,2,3,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
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JPH04330024A (ja) * | 1990-10-17 | 1992-11-18 | Hoechst Ag | 部分的にフッ素化された炭化水素を複分解する方法 |
JP2011520957A (ja) * | 2008-05-23 | 2011-07-21 | イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー | ジヒドロフルオロアルケンを製造するための高選択性方法 |
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