JP2016160235A - オクタフルオロペンテンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】工業的に入手容易な含フッ素プロペン類と含フッ素ブテン類から、工業的に有用なオクタフルオロペンテンを、温和な条件下で簡便かつ効率的に製造する方法の提供。【解決手段】例えば、下式で示したオレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物であるGrubbs第二世代触媒の存在下、含フッ素プロペンと含フッ素ブテンとの特定の組み合わせを、クロスメタセシス反応で反応させるオクタフルオロペンテンの製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、オレフィンメタセシスによりオクタフルオロペンテンを製造する新規な方法に関する。
オレフィン中の水素原子の一部がフッ素原子で置換された化合物、すなわち含フッ素オレフィンには、産業上有用な化合物が知られている。中でも沸点が室温近傍である含フッ素オレフィンは次世代の低温熱媒や発泡剤として期待されている。具体的には、次世代の低温熱媒としてはHFO−1438mzz等のオクタフルオロペンテンが挙げられる。
しかしながら、これらの化合物を簡便かつ効率的に製造する方法は確立されていない。例えば、特許文献1には、オクタフルオロ−2−ペンチンをリンドラー触媒存在下、水素添加することで1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−ペンテンを得る方法が開示されている。しかしながら、この方法では有毒な鉛化合物を含むリンドラー触媒を用いる必要がある。また、原料となるオクタフルオロ−2−ペンチンをあらかじめ製造する必要がある。
一方、金属触媒による二重結合組み換え反応であるオレフィンメタセシス反応(以下、単に、「オレフィンメタセシス」又は「クロスメタセシス」ということもある。)は多彩な置換基を有するオレフィンの製造方法として広く利用されている。しかし、電子求引性置換基を有する電子不足オレフィンは反応性が低いため、オレフィンメタセシスに利用することは容易ではない。例えば非特許文献1では、種々の置換基を有するオレフィンの反応性が調べられており、電子不足オレフィンの反応性が低いと記載されている。実際、フッ素原子や塩素原子等、ハロゲン原子を有するオレフィンも電子不足オレフィンであるため、オレフィンメタセシスに用いた報告はほとんどない。例えば、非特許文献2において、ルテニウム錯体とフッ化ビニリデン(すなわち、1,1−ジフルオロエチレン)のオレフィンメタセシスが検討されたが、期待した生成物すなわちエチレン及びテトラフルオロエチレンは全く得られなかったと述べられている。
Chatterjee,A.K.et al.,J.Am.Chem.Soc.,2003,125,11360−11370.
Trnka,T.et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,2001,40,3441−3444.
このように、ハロゲン原子を有するオレフィンをオレフィンメタセシスに利用することは実用的ではない。中でも、トリフルオロプロペンやペンタフルオロ−1−ブテンは、工業的に入手容易で事業化の観点から有用な化合物であるが、極めて電子不足なオレフィンであるだけでなく、その取扱いの難しさ等のため、オレフィンメタセシスに利用した報告はこれまでなかった。
そこで本発明では、工業的に入手容易なトリフルオロプロペンやペンタフルオロ−1−ブテン等の含フッ素プロペン類と含フッ素ブテン類とから、工業的に有用なオクタフルオロペンテンを、温和な条件下で、簡便かつ効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意研鑽を積んだ結果、オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物触媒の存在下、含フッ素プロペン類と含フッ素ブテン類とをクロスメタセシスさせることで、温和な条件でオクタフルオロペンテンを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記<1>及び<2>に関するものである。
<1>オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の存在下、下記式(21)で表わされる化合物と下記式(31)で表わされる化合物との組み合わせを、クロスメタセシス反応で反応させる1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−ペンテンの製造方法。ただし下記式中、X11〜X14は、それぞれ独立に水素原子又はフッ素原子である。
<1>オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の存在下、下記式(21)で表わされる化合物と下記式(31)で表わされる化合物との組み合わせを、クロスメタセシス反応で反応させる1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−ペンテンの製造方法。ただし下記式中、X11〜X14は、それぞれ独立に水素原子又はフッ素原子である。
<2>オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の存在下、3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテンと3,3,3−トリフルオロプロペンとの組み合わせを、クロスメタセシス反応で反応させる<1>に記載の製造方法。
本発明に係るオクタフルオロペンテンの製造方法によれば、オレフィンメタセシスによってトリフルオロプロペン、ペンタフルオロ−1−ブテン等の工業的に入手容易な含フッ素プロペン類と含フッ素ブテン類から工業的に有用なオクタフルオロペンテンを簡便かつ効率的に製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。また、本発明は金属触媒によるオレフィンメタセシスに関するものであり、従来技術と共通する一般的特徴については記載を省略することがある。
なお本明細書において、「式(X)で表される化合物」のことを、単に「化合物(X)」と称する場合がある。また化合物の構造式中での波線は、E/Zの異性体のうち、いずれか一方又は両方の混合物であることを意味する。
なお本明細書において、「式(X)で表される化合物」のことを、単に「化合物(X)」と称する場合がある。また化合物の構造式中での波線は、E/Zの異性体のうち、いずれか一方又は両方の混合物であることを意味する。
本発明はオレフィンメタセシスによるオクタフルオロペンテンの製造方法に関するものである。例えば含フッ素ブテン類として下記式(21)で表される化合物と含フッ素プロペン類として下記式(31)で表される化合物とを、オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物存在下で反応させた場合、下記スキーム(a)に表すような反応機構により下記式(51)で表されるオクタフルオロペンテンが得られる。
また下記スキーム(a)に示される中間体である化合物(11)及び化合物(12)は、オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の代表例として記載する。特定の金属−カルベン錯体化合物(10)としては、ルテニウム−カルベン錯体、モリブデン−カルベン錯体、又はタングステン−カルベン錯体(以下、「金属−カルベン錯体」とも総称する。)が例示できる。
また下記スキーム(a)に示される中間体である化合物(11)及び化合物(12)は、オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の代表例として記載する。特定の金属−カルベン錯体化合物(10)としては、ルテニウム−カルベン錯体、モリブデン−カルベン錯体、又はタングステン−カルベン錯体(以下、「金属−カルベン錯体」とも総称する。)が例示できる。
上記スキーム(a)において、[L]は配位子であり、Mはルテニウム、モリブデン又はタングステンである。またX11〜X14はそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子である。
またオレフィンメタセシスは反応が可逆である。すなわちスキーム(a)において逆向きの反応(逆向きの方向の矢印で表わされる反応)が存在する。しかしこの点についての詳細は説明を省略する。また生成するオレフィンについては幾何異性体が存在する可能性がある。しかしこの点の詳細については、個々の反応に強く依存するので、説明を省略する。
<金属−カルベン錯体化合物(10)>
金属−カルベン錯体化合物(10)として、上記スキーム(a)では化合物(11)及び化合物(12)を例に示したが、金属と二重結合を形成している炭素原子に結合する2つの官能基は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基であればよく、これらは互いに結合して環を形成してもよい。
化合物(10)は本発明に係る製造方法において触媒としての役割を果たすが、試薬として投入するもの及び反応中で生成するもの(触媒活性種)の両方を意味する。ここで、化合物(10)は反応条件下、配位子のいくつかが解離することで触媒活性を示すようになるものと、配位子の解離なしで触媒活性を示すものが知られているが、本発明ではいずれでもよく限定されない。また一般に、オレフィンメタセシスは触媒へのオレフィンの配位と解離を繰り返しながら進行するため、反応中、触媒上にオレフィン以外の配位子がいくつ配位しているかは必ずしも明確でない。したがって本明細書中、[L]は配位子の数や種類を特定するものではない。
金属−カルベン錯体化合物(10)として、上記スキーム(a)では化合物(11)及び化合物(12)を例に示したが、金属と二重結合を形成している炭素原子に結合する2つの官能基は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、又は、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基であればよく、これらは互いに結合して環を形成してもよい。
化合物(10)は本発明に係る製造方法において触媒としての役割を果たすが、試薬として投入するもの及び反応中で生成するもの(触媒活性種)の両方を意味する。ここで、化合物(10)は反応条件下、配位子のいくつかが解離することで触媒活性を示すようになるものと、配位子の解離なしで触媒活性を示すものが知られているが、本発明ではいずれでもよく限定されない。また一般に、オレフィンメタセシスは触媒へのオレフィンの配位と解離を繰り返しながら進行するため、反応中、触媒上にオレフィン以外の配位子がいくつ配位しているかは必ずしも明確でない。したがって本明細書中、[L]は配位子の数や種類を特定するものではない。
上記触媒のうち金属がルテニウムである化合物は一般的に「ルテニウム−カルベン錯体」と称されるものであり、例えばVougioukalakis,G.C.et al.Chem.Rev.,2010,110,1746−1787.に記載されているルテニウム−カルベン錯体を利用することができる。また、例えばAldrich社やUmicore社から市販されているルテニウム−カルベン錯体を利用することができる。
ルテニウム−カルベン錯体の具体例としては、ビス(トリフェニルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)−3−メチル−2−ブテニリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス(2−メチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ジシクロヘキシル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)[ビス(3−ブロモピリジン)]ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(2−イソプロポキシフェニルメチリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)[(トリシクロヘキシルホスホラニル)メチリデン]ジクロロルテニウムテトラフルオロボラート、UmicoreM2、UmicoreM51、UmicoreM52、UmicoreM71SIMes、UmicoreM71SIPr、UmicoreM73SIMes、UmicoreM73SIPr等が挙げられ、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(2−イソプロポキシフェニルメチリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)[(トリシクロヘキシルホスホラニル)メチリデン]ジクロロルテニウムテトラフルオロボラート、UmicoreM2、UmicoreM51、UmicoreM52、UmicoreM71SIMes、UmicoreM71SIPr、UmicoreM73SIMes、UmicoreM73SIPrが特に好ましい。なお上記錯体のうち、「Umicore」で始まる名称は、Umicore社の製品の商品名である。
なお、上記ルテニウム−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
なお、上記ルテニウム−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
上記触媒のうち金属がモリブデン又はタングステンである化合物は一般的に「モリブデン−カルベン錯体」「タングステン−カルベン錯体」と称されるものであり、例えばGrela,K.(Ed) Olefin Metathesis:Theory and Practice,Wiley,2014.に記載されているモリブデン−カルベン錯体又はタングステン−カルベン錯体を利用することができる。また、例えばAldrich社やStrem社から市販されているモリブデン−カルベン錯体又はタングステン−カルベン錯体を利用することができる。
なお、上記モリブデン−カルベン錯体又はタングステン−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
なお、上記モリブデン−カルベン錯体又はタングステン−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
モリブデン−カルベン錯体の具体例を下記に示す。なお、Meとはメチル基を、i−Prとはイソプロピル基を、t−Buとはターシャリーブチル基を、Phとはフェニル基を、それぞれ意味する。
タングステン−カルベン錯体の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
<原料化合物>
本発明に係る製造方法においては、含フッ素ブテン類(20)と含フッ素プロペン類(30)との特定の組み合わせを、クロスメタセシス反応を利用して反応させて、オクタフルオロペンテン(50)を得る。すなわち本発明に係る製造方法においては、以下に示すように、[01]化合物(21)と化合物(31)との組み合わせを、クロスメタセシス反応で反応させることにより、オクタフルオロペンテン(51)を製造することができる。
本発明に係る製造方法においては、含フッ素ブテン類(20)と含フッ素プロペン類(30)との特定の組み合わせを、クロスメタセシス反応を利用して反応させて、オクタフルオロペンテン(50)を得る。すなわち本発明に係る製造方法においては、以下に示すように、[01]化合物(21)と化合物(31)との組み合わせを、クロスメタセシス反応で反応させることにより、オクタフルオロペンテン(51)を製造することができる。
本明細書において、式中のX11〜X14は、それぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子である。
上記[01]の組み合わせのうち、化合物(21)としては、3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、1,3,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブテン、又は、1,1,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブテンが例示できる。
化合物(31)としては、3,3,3−トリフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、又は、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペンが例示できる。
化合物(21)と化合物(31)との組み合わせとしては、3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテンと3,3,3−トリフルオロプロペンとの組み合わせが好ましい。
化合物(31)としては、3,3,3−トリフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、又は、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペンが例示できる。
化合物(21)と化合物(31)との組み合わせとしては、3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテンと3,3,3−トリフルオロプロペンとの組み合わせが好ましい。
<オクタフルオロペンテン>
本発明のオレフィンメタセシスにより、オクタフルオロペンテンが得られる。例えば(E)−1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−ペンテンは沸点が29℃であり、低温熱媒や発泡剤として有用な化合物である。製造される1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−ペンテンは「HFO−1438mzz」と呼ばれる化合物である。
本発明のオレフィンメタセシスにより、オクタフルオロペンテンが得られる。例えば(E)−1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−ペンテンは沸点が29℃であり、低温熱媒や発泡剤として有用な化合物である。製造される1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−ペンテンは「HFO−1438mzz」と呼ばれる化合物である。
<製造方法>
本発明は含フッ素プロペン類と含フッ素ブテン類とのオレフィンメタセシスによるオクタフルオロペンテンの製造方法に関するものである。
本発明は含フッ素プロペン類と含フッ素ブテン類とのオレフィンメタセシスによるオクタフルオロペンテンの製造方法に関するものである。
目的物収率向上の点で、原料となる含フッ素プロペン類、含フッ素ブテン類は共に脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。原料となる含フッ素プロペン類及び含フッ素ブテン類について、前記脱気及び脱水操作は通常金属−カルベン錯体と接触させる前に行う。
また原料となる含フッ素プロペン類、含フッ素ブテン類は共に微量の不純物(例えば過酸化物等)を含むことがあるので、目的物収率向上の点で精製してもよい。精製方法については特に制限はない。例えば文献(Armarego,W.L.F.et al.,Purification of Laboratory Chemicals(Sixth Edition),2009,Elsevier)記載の方法に従って行うことができる。
また原料となる含フッ素プロペン類、含フッ素ブテン類は共に微量の不純物(例えば過酸化物等)を含むことがあるので、目的物収率向上の点で精製してもよい。精製方法については特に制限はない。例えば文献(Armarego,W.L.F.et al.,Purification of Laboratory Chemicals(Sixth Edition),2009,Elsevier)記載の方法に従って行うことができる。
原料となる含フッ素プロペン類及び含フッ素ブテン類は、反応容器にあらかじめ混合してから投入しても、別々に投入しても構わない。含フッ素プロペン類又は含フッ素ブテン類を金属−カルベン錯体と接触させて得られた混合物に、他方の含フッ素ブテン類又は含フッ素プロペン類を接触させる場合もある。
原料となる含フッ素プロペン類と含フッ素ブテン類のモル比に特に限定はないが、通常基準となる含フッ素プロペン類1モルに対して、含フッ素ブテン類を0.01〜100モル程度用い、好ましくは0.1〜10モル程度用いる。
原料となる含フッ素プロペン類と含フッ素ブテン類のモル比に特に限定はないが、通常基準となる含フッ素プロペン類1モルに対して、含フッ素ブテン類を0.01〜100モル程度用い、好ましくは0.1〜10モル程度用いる。
金属−カルベン錯体は試薬として投入しても、系内で発生させてもよい。試薬として投入する場合、市販の金属−カルベン錯体をそのまま用いてもよく、あるいは市販試薬から公知の方法で合成した市販されていない金属−カルベン錯体を用いてもよい。系内で発生させる場合、公知の方法で前駆体となる金属錯体から調製した金属−カルベン錯体を本発明に用いることができる。
用いる金属−カルベン錯体の量としては、特に制限はないが、基準となる含フッ素プロペン類1モルに対して、通常0.0001〜1モル程度用い、好ましくは0.001〜0.2モル程度用いる。
用いる金属−カルベン錯体は、通常固体のまま反応容器に投入するが、溶媒に溶解又は懸濁させて投入してもよい。この時用いる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない範囲で特に制限はなく、有機溶媒、含フッ素有機溶媒、イオン液体、水等を単独又は混合して用いることができる。なお、これらの溶媒分子中、一部又はすべての水素原子が重水素原子で置換されていてもよい。
有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−,m−,p−キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、グライム、ジグライム等のエーテル系溶媒等を使用することができる。含フッ素有機溶媒としては、例えば、ヘキサフルオロベンゼン、m−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン等を使用することができる。イオン液体としては、例えば、各種ピリジニウム塩、各種イミダゾリウム塩等を用いることができる。上記溶媒の中でも、金属−カルベン錯体の溶解性等の点で、ベンゼン、トルエン、o−,m−,p−キシレン、メシチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ジエチルエーテル、ジオキサン、THF(テトラヒドロフラン)、ヘキサフルオロベンゼン、m−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン等、及びこれらの混合物が好ましい。
なお、目的物収率向上の点で、前記溶媒は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。前記脱気及び脱水操作は通常金属−カルベン錯体と接触させる前に行う。
なお、目的物収率向上の点で、前記溶媒は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。前記脱気及び脱水操作は通常金属−カルベン錯体と接触させる前に行う。
原料となる含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類と金属−カルベン錯体を接触させる雰囲気としては、特に限定はないが、触媒の長寿命化の点で、不活性気体雰囲気下が好ましく、中でも窒素又はアルゴン雰囲気下が好ましい。ただし、反応条件において気体となる含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類を原料として用いる場合、これらの気体雰囲気下で行うことができる。
含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類と金属−カルベン錯体を接触させる相としては、特に制限はないが、反応速度の点で、通常は液相が用いられる。原料となる含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類が反応条件下で気体の場合、液相で実施するのが難しいため、気−液二相で実施することもできる。なお、液相で実施する場合には溶媒を用いることができる。このとき用いる溶媒としては、上記、金属−カルベン錯体の溶解又は懸濁に用いた溶媒と同様のものを利用することができる。なお、原料となる含フッ素プロペン類及び含フッ素ブテン類のうち少なくとも一方が反応条件下で液体の場合、無溶媒で実施できることがある。
含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類と金属−カルベン錯体を接触させる相としては、特に制限はないが、反応速度の点で、通常は液相が用いられる。原料となる含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類が反応条件下で気体の場合、液相で実施するのが難しいため、気−液二相で実施することもできる。なお、液相で実施する場合には溶媒を用いることができる。このとき用いる溶媒としては、上記、金属−カルベン錯体の溶解又は懸濁に用いた溶媒と同様のものを利用することができる。なお、原料となる含フッ素プロペン類及び含フッ素ブテン類のうち少なくとも一方が反応条件下で液体の場合、無溶媒で実施できることがある。
含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類と金属−カルベン錯体を接触させる容器としては、反応に悪影響を与えない範囲で特に制限はなく、例えば金属製容器又はガラス製容器等を用いることができる。なお、本発明にかかるオレフィンメタセシスは反応条件下、気体状態の含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類を扱うことがあるので、高気密が可能な耐圧容器が好ましい。
含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類と金属−カルベン錯体を接触させる温度としては、特に制限はないが、通常−100〜200℃の範囲で実施することができ、反応速度の点で、0〜150℃が好ましい。なお、低温では反応が開始せず、高温では錯体の速やかな分解が生じることがあるので適宜温度の下限と上限を設定する必要がある。通常、用いる溶媒の沸点以下の温度で実施される。
含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類と金属−カルベン錯体を接触させる時間としては、特に制限はないが、通常1分〜48時間の範囲で実施される。
含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類と金属−カルベン錯体を接触させる圧力としては、特に制限はないが、加圧下でも、常圧下でもよいし、減圧下でもよい。通常0.001〜10MPa程度、好ましくは0.01〜1MPa程度である。
含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類と金属−カルベン錯体を接触させる時間としては、特に制限はないが、通常1分〜48時間の範囲で実施される。
含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類と金属−カルベン錯体を接触させる圧力としては、特に制限はないが、加圧下でも、常圧下でもよいし、減圧下でもよい。通常0.001〜10MPa程度、好ましくは0.01〜1MPa程度である。
含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類と金属−カルベン錯体を接触させる際に、反応に悪影響を及ぼさない範囲で無機塩や有機化合物、金属錯体等を共存させてもよい。また、反応に悪影響を及ぼさない範囲で、含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類と金属−カルベン錯体の混合物を攪拌してもよい。このとき、攪拌の方法としては、メカニカルスターラーやマグネティックスターラー等を用いることができる。
含フッ素プロペン類及び/又は含フッ素ブテン類と金属−カルベン錯体を接触させた後、目的物は通常複数の(ペル)フルオロプロペン類の混合物として得られるため、公知の方法で単離してもよい。単離方法としては、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィー、リサイクル分取HPLC等が挙げられ、必要に応じてこれらを単独又は複数組み合わせて用いることができる。
本反応で得られた目的物は通常の有機化合物と同様の公知の方法で同定することができる。例えば、1H−、19F−、13C−NMRやGC−MS等が挙げられ、必要に応じてこれらを単独又は複数組み合わせて用いることができる。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<市販試薬>
本実施例において、触媒は、特に記載しない場合においては、市販品をそのまま反応に用いる。溶媒は、市販品をあらかじめ凍結脱気したあと、モレキュラーシーブ4Aで乾燥してから反応に用いた。
<評価方法>
本実施例において、合成した化合物の構造は日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置(JNM−AL300)により1H−NMR、19F−NMR測定を行うことで同定した。また、分子量は株式会社島津製作所製のガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS−QP2010Ultra)を用いて、電子イオン化法(EI)により求めた。
<市販試薬>
本実施例において、触媒は、特に記載しない場合においては、市販品をそのまま反応に用いる。溶媒は、市販品をあらかじめ凍結脱気したあと、モレキュラーシーブ4Aで乾燥してから反応に用いた。
<評価方法>
本実施例において、合成した化合物の構造は日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置(JNM−AL300)により1H−NMR、19F−NMR測定を行うことで同定した。また、分子量は株式会社島津製作所製のガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS−QP2010Ultra)を用いて、電子イオン化法(EI)により求めた。
<実施例1>
3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテンと3,3,3−トリフルオロプロペンのクロスメタセシスによる1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−ペンテンの製造
窒素雰囲気下、Grubbs第二世代触媒(20mol%、0.024mmol)及びo−ジクロロベンゼン−d4(0.6mL)を耐圧NMR測定管に量り入れる。その後、NMR測定管の気相部を3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン(CF3CF2CH=CH2)/3,3,3−トリフルオロプロペン(CF3−CH=CH2)=1/1混合ガス(v/v、1.0atm、2.7mL、0.12mmol)で置換する。
NMR測定管を加熱し、クロスメタセシスを進行させる。反応終了後、内容液のNMRとGC−MSを測定して、1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−ペンテンの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテンと3,3,3−トリフルオロプロペンのクロスメタセシスによる1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−ペンテンの製造
窒素雰囲気下、Grubbs第二世代触媒(20mol%、0.024mmol)及びo−ジクロロベンゼン−d4(0.6mL)を耐圧NMR測定管に量り入れる。その後、NMR測定管の気相部を3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン(CF3CF2CH=CH2)/3,3,3−トリフルオロプロペン(CF3−CH=CH2)=1/1混合ガス(v/v、1.0atm、2.7mL、0.12mmol)で置換する。
NMR測定管を加熱し、クロスメタセシスを進行させる。反応終了後、内容液のNMRとGC−MSを測定して、1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−ペンテンの生成を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
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---|---|---|---|---|
JP2004510699A (ja) * | 2000-06-23 | 2004-04-08 | カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー | クロスメタセシスおよび閉環メタセシスによる、官能性および非官能性オレフィンの合成 |
WO2009003085A1 (en) * | 2007-06-27 | 2008-12-31 | Arkema Inc. | Process for the manufacture of hydrofluoroolefins via metathesis |
JP2014005418A (ja) * | 2012-06-27 | 2014-01-16 | Central Glass Co Ltd | フッ素化不飽和炭化水素を含む熱伝達媒体 |
-
2015
- 2015-03-03 JP JP2015041647A patent/JP2016160235A/ja not_active Withdrawn
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