JP2016157886A - 金属蒸気供給装置、金属/金属化合物製造装置、GaN単結晶の製造方法、及びナノ粒子の製造方法 - Google Patents

金属蒸気供給装置、金属/金属化合物製造装置、GaN単結晶の製造方法、及びナノ粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属蒸気を高い供給速度で発生させることが可能な金属蒸気供給装置、並びに、これを用いた金属/金属化合物製造装置、GaN単結晶の製造方法、及び、ナノ粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】金属蒸気供給装置は、溶融金属を保持するためのルツボと、金属蒸気の発生を促進させるためのエバポレーターとを備え、前記エバポレーターは、その一部が前記溶融金属と接触することが可能となるように前記ルツボ内に設置されている。金属/化合物製造装置は、金属蒸気供給装置と、前記金属蒸気供給装置から供給される前記金属の蒸気に反応ガスを供給するための反応ガス供給装置と、表面に前記金属又はその化合物を析出させる基板を保持するためのサセプタ部とを備えている。金属/化合物製造装置は、GaN単結晶の製造やナノ粒子の製造に用いることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属蒸気供給装置、金属/金属化合物製造装置、GaN単結晶の製造方法、及びナノ粒子の製造方法に関し、さらに詳しくは、金属蒸気を高い供給速度で供給することが可能な金属蒸気供給装置、並びに、これを用いた金属/金属化合物製造装置、GaN単結晶の製造方法、及びナノ粒子の製造方法に関する。
薄膜、単結晶、あるいはナノ粒子を合成する方法の1つとして、液体原料を気化させ、発生した原料の蒸気を熱分解させ、基板表面又は気相中に目的とする材料を生成させる方法が知られている。このような気相を用いた材料合成法は、膜厚、材料組成、結晶構造などを精密に制御できるという利点はあるが、原料蒸気の供給速度が律速となることが多い。そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、半導体ウェハ上にジルコニウム酸化膜を形成するための液体原料(トリ(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム)を蒸発させる方法であって、太さが20μm程度のステンレス鋼製の繊維が3次元的に組み合わされた繊維体の一端を液体原料に接触させる方法が開示されている。
同文献には、毛細管現象により液体原料が繊維体に吸い上げられ、液体表面からだけでなく繊維体表面からも液体原料が気化するため、熱的安定性の低い液体原料であっても、液体原料の気化量を増大させることができる点が記載されている。
また、GaN結晶を成長させる場合において、Ga源として水素化ガリウム(GaHx)を用いる方法が知られている。結晶成長速度を向上させるためには、水素化ガリウムの供給速度を向上させること、すなわち、GaとH2とを効率よく反応させることが必要となる。この問題を解決するために、非特許文献1には、表面が液体Gaで覆われたセラミックビーズをセラミックチューブ内に充填し、チューブ内にH2を供給する方法が開示されている。
同文献には、このような方法によりH2の流路が狭められると同時に、液体Gaの表面積が増大するため、反応効率が増大する点が記載されている。
特許文献1に記載の方法の場合、気化させる原料として液体金属化合物が用いられ、気化を促進するためのエバポレーターとしてステンレス鋼製の繊維体が用いられている。液体金属化合物は、有機物質であり、表面張力が小さいため、接触角が小さくなりやすく、繊維体に対して容易に濡れやすい。そのため、繊維体の材料、表面状態、毛細管径、相対密度等について考慮しなくとも、十分な量の毛細管現象を起こすことができる。実際、特許文献1には、最適な毛細管径、相対密度等については記載されていない。
一方、気化させる原料が溶融金属の場合、液体金属化合物に比べてはるかに表面張力が大きいため、接触角が90°に近くなりやすく、他の材料に対して濡れにくい。そのため、溶融金属に十分な量の毛細管現象を起こさせることは難しい。また、ステンレス鋼線は500℃以上での耐熱性に劣るため、ステンレス鋼製の繊維体を、500℃を超える温度域で使用することはできない。
さらに、液体金属化合物は、熱的安定性が低い有機物質であるため、加熱温度が高くなるほど分解しやすくなる。意図しない液体金属化合物の分解は、C(炭素)、H(水素)、N(窒素)などの有機物由来の不純物が生成物に混入する原因となる。そのため、液体有機金属化合物を気化させる際には、到達可能な気化速度に限界がある。
溶融金属の場合、熱的安定性が低いことが問題となることは少ないが、金属は、一般に蒸気圧が極めて低い。そのため、溶融金属の気化においても、到達可能な気化速度に限界がある。
非特許文献1に記載の方法の場合、セラミックビーズの表面が液体Gaで覆われているため、Gaの表面積が増大し、水素との反応が効率よく進行する。しかし、同文献の方法は、反応初期には表面積を向上させる効果はあるが、Gaの蒸発に伴い次第に気化速度が低下する。その結果、反応過程でGa(すなわち、水素化ガリウム)の供給量が変動し、高品質な結晶成長において必須である原料供給の制御性に乏しいという問題がある。
さらに、金属蒸気を高い供給速度で供給することが可能であり、かつ、供給速度を長期間に渡ってほぼ一定に制御することが可能な装置が提案された例は、従来にはない。
特許第5589873号公報
M. Imade et al., Physica Status Solidi(c), Colume 5, Issure 6, pp. 1719-1722, 2008
本発明が解決しようとする課題は、金属蒸気を高い供給速度で供給することが可能であり、かつ、供給速度を長期間に渡ってほぼ一定に制御することが可能な金属蒸気供給装置を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような金属蒸気供給装置を用いて金属又はその化合物からなる単結晶、ナノ粒子、薄膜等を製造するための金属/金属化合物製造装置を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、このような金属/金属化合物製造装置を用いたGaN単結晶の製造方法、及び、ナノ粒子の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る金属蒸気供給装置は、
溶融金属を保持するためのルツボと、
金属蒸気の発生を促進させるためのエバポレーターと
を備え、
前記エバポレータは、その一部が前記溶融金属と接触することが可能となるように前記ルツボ内に設置されていることを要旨とする。
前記エバポレーターは、
相対密度が40%以上99%以下であり、
平均細孔径が10nm以上200μm以下であり、かつ、
前記溶融金属の接触角が90°未満である材料からなる
ものが好ましい。
本発明に係る金属/化合物製造装置は、
本発明に係る金属蒸気供給装置と、
前記金属蒸気供給装置から供給される前記金属蒸気に反応ガスを供給するための反応ガス供給装置と、
表面に前記金属又はその化合物を析出させる基板を保持するためのサセプタ部と
を備えていることを要旨とする。
本発明に係るGaN単結晶の製造方法は、本発明に係る金属/金属化合物製造装置を用いて、窒化ガス共存下においてGa蒸気を発生させ、前記基板上にGaN単結晶を成長させることを要旨とする。
さらに、本発明に係るナノ粒子の製造方法は、本発明に係る金属/金属化合物製造装置を用いて、不活性ガス又は活性ガス共存下において前記金属蒸気を発生させ、前記基板上に金属ナノ粒子又は金属化合物ナノ粒子を析出させることを要旨とする。
エバポレーターの一部を溶融金属に接触させると、溶融金属がエバポレーターの表面を這い上がり、エバポレーターの表面が溶融金属で濡れる。エバポレーター表面が溶融金属で濡れると、溶融金属の見かけの表面積が増大する。その結果、エバポレーターを用いない場合に比べて、金属蒸気の供給速度が増大する。
特に、エバポレーターの平均細孔径、相対密度、材料等を最適化すると、金属蒸気の供給速度を従来の数倍から数十倍程度まで増加させることができる。このような金属蒸気供給装置を、例えばGaN単結晶の成長に適用すると、従来の方法に比べてGaN単結晶の成長速度を約3〜5倍以上に向上させることができる。
図1(a)は、TaC(炭化タンタル)で作製されたエバポレーターの外観写真である。図1(b)は、溶融Ga(ガリウム)により全面濡れを起こした後のエバポレーターの外観写真である。 エバポレーターの構造例の模式図である。 エバポレーターがTaCであり、溶融金属がGaである場合の這い上がり高さの相対密度依存性を示す図である。 エバポレーターがTaCであり、溶融金属がGaである場合の這い上がり高さの平均細孔径依存性を示す図である。
エバポレーターが各種材料からなり、溶融金属がGaである場合の這い上がり高さを示す図である。 這い上がり試験後の炭化珪素セラミックス及びアルミナセラミックスの外観写真である。 エバポレータの面積比(=見なし表面積/溶湯面積)とGaNの成長速度との関係を示す図である。 本発明に係る装置で作製したGaN単結晶の光学顕微鏡写真である。 本発明に係る装置で作製したGaN単結晶のXRDパターンである。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 金属蒸気供給装置]
本発明に係る金属蒸気供給装置は、
溶融金属を保持するためのルツボと、
金属蒸気の発生を促進させるためのエバポレーターと
を備え、
前記エバポレータは、その一部が前記溶融金属と接触することが可能となるように前記ルツボ内に設置されている。
金属蒸気供給装置は、前記ルツボ内にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部をさらに備えていても良い。
[1.1. 金属]
本発明において、金属の種類は特に限定されるものではなく、気化が可能な限りにおいて、あらゆる金属に対して本発明を適用することができる。
その中でも、特に有用な金属元素は、Gaである。Gaの窒化物であるGaNは、ワイドバンドギャップ半導体であり、LED照明等への応用が進んでいる上に、今後、青色レーザーやパワーデバイス、高周波デバイスなど様々な産業応用が期待されている。
一方、Gaの蒸気圧は1000℃の高温領域でも0.5Pa程度と非常に小さいため、通常、GaNの成長にGa蒸気が用いられることはない。現在、高品質なGaN薄膜結晶を得る方法として、有機金属であるトリメチルガリウム等をGa源に用いた有機金属気相成長法が知られている(参考文献1)。但し、トリメチルガリウムは、反応性が高い、高コストであるなどの点から、バルクGaN結晶を成長させるためのGa源として用いることは困難である。
[参考文献1] H. Amano et al., APL. 48, 353, 1986
また、HClガスを用いてガリウムを塩化ガリウムとして供給し、アンモニアと反応させる手法は、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法と呼ばれており、バルクGaN結晶を作製する方法として報告されている。しかし、塩化ガリウムを用いると、副生成物である塩化アンモニウムが配管等に詰まるといった課題がある(参考文献2)。
これに対し、本発明は、相対的に多量のGa蒸気を種結晶表面に直接供給することができる。そのため、これをGaN単結晶の成長に適用すれば、取扱いが簡便で、不純物混入がなく、かつ低コストなバルクGaN結晶の成長が可能となる。
[参考文献2]特開2007−201147号公報
[1.2. ルツボ]
ルツボは、溶融金属を保持するためのものである。ルツボの形状は、所定量の溶融金属を保持することができ、かつ、エバポレーターの一部が溶融金属に接触するようにエバポレーターをルツボ内に配置することが可能なものであれば良い。
ルツボの材料は、溶融金属と反応しないものであればよい。最適なルツボの材料は、溶融金属の種類により異なる。例えば、金属がGaである場合、ルツボの材料は、BN、TaC、カーボン、SiC、サファイア、白金などが好ましい。
[1.3. エバポレーター]
エバポレーターは、金属蒸気の発生を促進させるためのものである。エバポレーターは、その一部が溶融金属と接触することが可能となるように、ルツボ内に設置される。
エバポレーターは、ルツボの何れかの部分に固定されていても良く、あるいは、ルツボの底面に単に載置されているだけでも良い。エバポレーターがルツボに固定されていない場合において、溶融金属の比重に比べてエバポレーターの比重が小さいときには、エバポレーターは、溶融金属の表面に浮いた状態となる。このような状態であっても、エバポレーターにより金属蒸気の発生を促進することができる。
[1.3.1. エバポレーターの材料]
エバポレーターを用いて金属蒸気を発生させるためには、エバポレーターの材料は、少なくとも融点が高く、かつ、溶融金属との反応性が低いものである必要がある。エバポレーターの材料としては、例えば、金属酸化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属窒化物、炭素系材料などがある。
最適なエバポレーターの材料は、溶融金属の種類により異なる。例えば、Gaを気化させる場合、エバポレーターの材料としては、TaC、SiC、Al23などが好ましい。
その中でもTaCは、他の材料に比べてGaに濡れやすい。また、TaCは、融点が約4000℃であり、非常に安定であるため、広い温度領域で使用することができる。そのため、TaCは、Ga蒸気だけでなく、他の金属蒸気を発生させるためのエバポレーターの材料として好適である。
[1.3.2. エバポレーターの融点]
溶融金属は、その材料と温度に応じた飽和蒸気圧が存在する。一般に、飽和蒸気圧は、温度が高くなるほど大きくなるため、金属蒸気の発生を促進させるためには、より高い温度領域でエバポレーターを使用する方が効率的である。しかし、エバポレーターの融点が使用温度より低い場合は、エバポレーターの形状を保てなくなり、金属蒸気の供給が困難となる。従って、エバポレーターの材料の融点は、使用温度より高いことが好ましい。エバポレーターの材料の融点は、さらに好ましくは、使用温度+100℃以上である。
エバポレーターの材料の融点は、具体的には、1500℃以上、2000℃以上、2500℃以上、あるいは、3000℃以上が好ましい。
[1.3.3. エバポレーターの相対密度、平均細孔径、及び接触角]
エバポレーターを用いて金属蒸気の発生を促進させるためには、エバポレーターの表面において毛細管現象を起こさせ、できるだけ多くのエバポレーター表面を溶融金属で濡れさせる必要がある。そのためには、エバポレーターの相対密度、平均細孔径(毛細管の内径)、及び溶融金属に対する接触角が重要となる。
溶融金属にエバポレーターの一部を接触させると、溶融金属がエバポレーターの表面を這い上がり、エバポレーターの表面が溶融金属で濡れる。この時のエバポレータの下端から溶融金属の先端までの高さ(這い上がり高さ)hは、次の(1)式で表される。
h=2γLcosθ/ρgr
=2γLcosθ/{ρg(1−(R/100)1/3)AC} ・・・(1)
但し、
h:這い上がり高さ、ρ:溶融金属の密度、g:重力加速度、r:毛細管の内径、
γL:溶融金属の表面張力、θ:接触角、R:エバポレーターの相対密度、
A:エバポレーターの平均結晶粒子径、C:細孔密度補正係数。
[A. 相対密度]
(1)式より、エバポレーターの相対密度Rが小さくなるほど、這い上がり高さhが小さくなることがわかる。これは、相対密度Rが小さくなるほど、毛細管の内径rが大きくなるためである。また、相対密度Rが小さい場合、強度低下も課題となる。従って、這い上がり高さhを高くするためには、エバポレーターの相対密度Rは、40%以上が好ましい。相対密度Rは、さらに好ましくは、60%以上、さらに好ましくは、80%以上である。
一方、(1)式によれば、相対密度Rが大きくなるほど、這い上がり高さhが大きくなる。しかし、実際には、相対密度Rが過度に大きくなると、開気孔が存在しなくなり、エバポレーターの表面において毛細管現象を起こさせるのが困難となる。従って、相対密度Rは、99%以下が好ましい。相対密度Rは、さらに好ましくは、98%以下、さらに好ましくは、97%以下である。
[B. 平均細孔径]
同様に、平均細孔径についても、最適な領域が存在する。毛細管現象を起こすためには、溶融金属の連続体近似が成り立つ必要がある。従って、平均細孔径(=r)は、10nm以上が好ましい。平均細孔径は、さらに好ましくは、20nm以上、さらに好ましくは、30nm以上である。
一方、平均細孔径が過度に大きくなると、エバポレーター表面において毛細管現象を起こさせるのがのが困難となる。這い上がり高さhを高くするためには、平均細孔径は、200μm以下が好ましい。平均細孔径は、さらに好ましくは、100μm以下、さらに好ましくは、50μm以下である。
なお、「平均細孔径」とは、水銀圧入法により測定されるメディアン径をいう。
[C. 接触角]
(1)式より、毛細管現象を起こさせるためには、接触角θが0°以上90°未満である必要があることがわかる。
[1.3.4. エバポレーターの見なし表面積]
上述したエバポレーターの材料や表面状態などを最適化すると、エバポレーターの表面全面を溶融金属で濡らすことができる。そのため、溶湯面積に比べてエバポレーターの見なし表面積が大きくなるほど、金属蒸気の供給速度を増大させることができる。
ここで、「見なし表面積」とは、エバポレーターに細孔が無いと見なして計算されるエバポレータの表面積(底面の面積を除く)をいう。
「溶湯面積」とは、ルツボ内に溶融金属のみを入れた時の溶湯表面の面積をいう。
高い供給速度を得るためには、エバポレータの見なし表面積は、ルツボ内の溶湯面積の2倍以上が好ましい。見なし表面積は、さらに好ましくは、溶湯面積の3倍以上、さらに好ましくは、5倍以上である。
なお、エバポレーターが溶融金属表面に浮いた状態にある場合、エバポレータ表面が溶融金属に濡れることで生じる溶湯面積の増分は、ルツボ内の溶融金属の残量にかかわらず、ほぼ一定に保たれる。
一方、エバポレーターの底面近傍が溶融金属の中に沈んだ状態にある場合、厳密には、ルツボ内の溶融金属の残量によって、溶湯面積の増分が変化する。しかしながら、エバポレーターの断面形状を最適化すると、溶融金属の残量の変動に起因する溶湯面積の増分の変動を最小限に抑制することができる。
[1.3.5. エバポレーターの形状]
エバポレーターの形状は、特に限定されるものではなく、目的とする金属蒸気の供給速度が得られるように、最適な形状を選択することができる。
図1(a)に、TaC(炭化タンタル)で作製されたエバポレーターの外観写真を示す。図1(b)に、溶融Ga(ガリウム)により全面濡れを起こした後のエバポレーターの外観写真を示す。
図1において、エバポレーターは、台座と、台座の上に放射状に立設された複数のフィンとを備えている。台座は円板状であり、フィンは、長方形のフィン(フィンA)と、長方形の角の1箇所が切り落とされた形状のフィン(フィンB)の2種類からなる。また、フィンA及びBの個数は、それぞれ、4個であり、フィンAとフィンBが交互に立設されている。なお、台座の形状、あるいは各フィンの形状、個数、取り付け順序などは、これに限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。
図2に、エバポレーターの他の構造例の模式図を示す。
図2(a)に示すエバポレーターは、単なる円柱からなる。このような大きな一つの塊からなるエバポレーターであっても、見なし表面積が増大するため、金属蒸気の供給速度を増大させることができる。
図2(b)に示すエバポレーターは、細長い複数の円柱や角柱などの柱状部材を並べた構造からなる。ルツボ内で柱状部材を安定させるために、複数の柱状部材を台座に固定しても良い。
図2(c)に示すエバポレーターは、ツリー型の構造を呈しており、複数個の円板と、これらの円板の中央部を繋ぐ柱状部材とを備えている。ツリー型のエバポレーターであっても、エバポレーターの表面状態を最適化すると、溶融金属は、円板の下面から上面に向かって這い上がることができる。
図2(d)に示すエバポレーターは、円柱状を呈し、かつ、軸方向に複数個の貫通穴が設けられている。貫通穴を形成することによって、図2(a)に比べてエバポレーターの見なし表面積をさらに増大させることができる。
その他、エバポレーターは、メッシュ状に加工した部材や、このような部材をフィン型やツリー型に並べた部材でも良い。
このようなエバポレーターを溶融金属に接触させると、溶融金属がエバポレーターの表面を這い上がり、やがてエバポレーターの表面全面が溶融金属で濡れた状態となる。そのため、見なし表面積が大きくなるほど、金属蒸気の供給速度が増大する。具体的には、金属蒸気の供給量を、エバポレーター無しの場合に比べて、数倍〜数十倍程度まで増加させることが可能となる。
[1.4. キャリアガス供給部]
本発明に係る金属蒸気発生装置は、前記ルツボ内にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部をさらに備えていても良い。
ルツボとエバポレーターのみからなる装置であっても、ルツボの開口部から金属蒸気を供給することができる。しかし、自然対流のみでは、金属蒸気の供給速度に限界がある。このような場合には、ルツボ内にキャリアガスを供給し、金属蒸気をルツボから強制的に排出させるのが好ましい。
キャリアガスの種類は、特に限定されるものではなく、金属蒸気の種類に応じて最適なガスを選択する。キャリアガスとしては、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、水素ガス、ヘリウムガス、ゼノンガスなどがある。
キャリアガスの供給方法は、特に限定されない。
例えば、ルツボの上部にキャリアガスを吹き込むためのノズルを設けても良い。ルツボの上方からルツボの開口部に向かってキャリアガスを吹き込むと、ルツボ内でキャリアガスの流れが反転し、金属蒸気を含むキャリアガスをルツボの開口部から強制的に排出することができる。
あるいは、ルツボの側面にキャリアガスを吹き込むためのノズルを設けても良い。ルツボの側面から水平方向にキャリアガスを吹き込むと、ルツボ内でキャリアガスの流れが水平方向から上方向に変わり、金属蒸気を含むキャリアガスをルツボの開口部から強制的に排出することができる。
[2. 金属/金属化合物製造装置]
本発明に係る金属/金属化合物製造装置は、
本発明に係る金属蒸気供給装置と、
前記金属蒸気供給装置から供給される前記金属蒸気に反応ガスを供給するための反応ガス供給装置と、
表面に前記金属又はその化合物を析出させる基板を保持するためのサセプタ部と
を備えている。
[2.1. 金属化合物]
本発明に係る装置は、金属だけでなく、金属化合物の単結晶、薄膜、ナノ粒子などを製造することができる。製造可能な金属化合物としては、例えば、
(1)Ga23、ZnO、TiO2、V23、MgO、Al23、CaO、Cr23、Mn23、Co23、NiO、CuO、Nb23、Mo23、Ag23、In23、Pd23、Pt23、Ta23、Ge23、Fe23、Y23、ランタノイド酸化物などの金属酸化物(その組成比が異なるものを含む)、
(2)GaN、InN、AlN、BN、TiN、NbN、TaN、MoN、WN、MgN、Ca32、Fe162、AgNなどの金属窒化物、
(3)MgB2、LaB6、CaB6、YB6、YbB12、ZrB12、NaB15、Mn4B、V3B、FeB、CrB2などの金属ホウ化物(その組成比が異なるもの(例えば、YB2、YB25など)を含む)、
(4)NaC2、CaC2、LaC2、Li43、TiC、Mg2C、Al43、Be2C、NbC、NbC2、Nb43、HfC、TaC、Ta43、Mo32、WC、VC、Cr236、Cr3C、Cr73、Cr32、MnC2、FeC、ZrCなどの金属炭化物(その組成比が異なるものを含む)、
(5)GaAs、Na3As、Mg3As2、FeAs2、CoAs2、NiAs、InAs、PtAs2などの金属砒化物(その組成比が異なるものを含む)、
などがある。
[2.2. 金属蒸気供給装置]
金属蒸気供給装置は、金属の蒸気を発生させるための装置である。金属蒸気供給装置の詳細については上述した通りであるので、説明を省略する。
[2.3. 反応ガス供給装置]
反応ガス供給装置は、金属蒸気供給装置から供給される金属蒸気に反応ガスを供給するための装置である。
[2.3.1. 反応ガス]
本発明において、「反応ガス」とは、金属蒸気から目的とする特性(例えば、組成、結晶構造、形状など)を有する金属又は金属化合物を生成させるガスをいう。本発明において、「反応」には、化学的な反応だけでなく、相変態のような物理的な反応も含まれる。すなわち、反応ガスには、
(a)金属蒸気と化学反応することによって金属化合物を生成させる活性ガス、及び、
(b)金属蒸気を急冷することによって金属ナノ粒子を生成させる不活性ガス、
が含まれる。
使用する反応ガスの種類は、金属蒸気の組成及び目的とする反応に応じて、最適なガスを選択する。
例えば、金属蒸気から金属窒化物を生成させる反応ガス(活性ガス)としては、例えば、アンモニアガス、窒素ガスなどがある。
金属蒸気から金属酸化物を生成させる反応ガス(活性ガス)としては、例えば、酸素ガス、一酸化窒素ガス、一酸化二窒素ガス、オゾンガス、二酸化炭素などがある。
金属蒸気から金属炭化物を生成させる反応ガス(活性ガス)としては、例えば、メタンガスなどがある。
金属蒸気から金属ホウ化物を生成させる反応ガス(活性ガス)としては、例えば、ボラジン、ジボランガス、アンモニアボランガスなどがある。
金属蒸気から金属砒化物を生成させる反応ガス(活性ガス)としては、例えば、アルシンなどがある。
金属蒸気から金属ナノ粒子を生成させる反応ガス(不活性ガス)として、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス、ゼノンガスなどがある。
[2.3.2. 反応ガスの供給方法]
反応ガスの供給方法は、特に限定されるものではなく、目的とする金属又は金属化合物が効率よく得られるように、最適な方法を選択する。
反応ガスの供給方法としては、例えば、以下のような方法がある。
(1)ルツボの外側にノズルを設け、ルツボの開口部から放出される金属蒸気に反応ガスを吹き付け、金属蒸気と反応ガスとを混合する方法。
(2)ルツボ内にキャリアガスと共に反応ガスを流し込み、金属蒸気と反応ガスを混合する方法。
(3)サセプタ部にノズル等を用いて、ルツボ部から放出される金属蒸気に反応ガスを吹き付け、混合する方法。
[2.4. サセプタ部]
サセプタ部は、その表面に前記金属又はその化合物を析出させる基板を保持するためのものである。また、サセプタ部は、基板を所定の温度に保持するためのものでもある。
金属蒸気供給装置から供給される金属蒸気、及び反応ガス供給装置から供給される反応ガスを混合し、適切な温度に加熱された基板を混合ガスに曝すと、基板表面に単結晶が成長し、あるいは、基板表面に薄膜やナノ粒子が析出する。
サセプタ部の構造、設置位置などは、基板を確実に保持することができ、基板を所定の温度に維持することができ、かつ、目的とする金属又は金属化合物が効率よく得られるように選択するのが好ましい。
基板の材料は、目的とする物質が効率よく得られるように、最適な材料を選択する。基板の材料としては、例えば、以下のようなものがある。
(1)目的とする物質と同一組成を有する単結晶基板(種結晶)。
(2)目的とする物質と異なる組成を有するが、格子整合性を有する材料からなる単結晶基板(種結晶)。
(3)目的とする物質に対して濡れ性の悪い材料からなる単結晶基板又は多結晶基板。
(4)目的とする物質と格子整合性はないが、基板表面に未結合手を持たない基板。例えば、グラフェン、HOPG、BNなどの基板。
[3. GaN単結晶の製造方法]
本発明に係るGaN単結晶の製造方法は、本発明に係る金属/金属化合物製造装置を用いて、窒化ガス共存下においてGa蒸気を発生させ、前記基板上にGaN単結晶を成長させることを特徴とする。窒化ガスとしては、例えば、アンモニアガス、窒素ガスなどがある。
サセプタ部に基板(種結晶)を保持し、金属蒸気供給装置を用いてGa蒸気を発生させ、かつ、反応ガス供給装置を用いて窒化ガスを供給すると、基板表面にGaN単結晶が成長する。本発明に係る金属蒸気供給装置は、Ga蒸気の供給量が多いため、エバポレーターの形状や微構造を最適化すると、従来の方法に比べてGaNの成長速度が約3〜5倍以上となる。
[4. ナノ粒子の製造方法]
本発明に係るナノ粒子の製造方法は、本発明に係る金属/金属化合物製造装置を用いて、活性ガス又は不活性ガス共存下において前記金属蒸気を発生させ、前記基板上に金属ナノ粒子又は金属化合物ナノ粒子を析出させることを特徴とする。
サセプタ部に、目的とする物質に対して濡れ性の悪い材料からなる基板を保持し、金属蒸気供給装置を用いて金属蒸気を発生させ、かつ、反応ガス供給装置を用いて活性ガスを供給すると、基板表面に金属化合物ナノ粒子が析出する。
一方、反応ガス供給装置を用いて不活性ガスを供給すると、基板表面に金属ナノ粒子が析出する。
[5. 作用]
ルツボ内に保持された溶融金属にエバポレーターの一部分を接触させると、毛細管現象により溶融金属がエバポレーターの先端に向かってエバポレーター表面を這い上がり、エバポレーターの表面の少なくとも一部が溶融金属で濡れる。また、エバポレーターの材料、形状及び微構造を最適化すると、溶融金属の這い上がり高さが高くなり、エバポレーターの表面全面を溶融金属で濡らすことができる。その結果、溶融金属の液面の総面積が、エバポレーターの見なし表面積に応じた分だけ増大し、金属蒸気の供給速度が増大する。エバポレーターの微構造等を最適化すると、金属源の供給量を従来の方法の数倍から数十倍程度まで増加させることができる。
また、本発明では毛細管現象を用いているため、エバポレーター表面の溶融金属が蒸発しても、ルツボ内に溶融金属が残っている間は、エバポレーター表面への溶融金属の供給が継続して起こる。そのため、エバポレーターの表面が常に溶融金属で濡れた状態となり、金属蒸気の供給量をほぼ一定に保つことができる。このような金属蒸気供給装置を、例えばGaN単結晶の成長に適用すると、従来の方法に比べてGaN単結晶の成長速度を約3〜5倍以上に向上させることができる。
このような高い成長速度は、溶融金属がエバポレーター表面に這い上がりを起こすことで実現される。このような這い上がり現象は、毛細管現象により発生するが、その這い上がり高さhは、上述した(1)式で表される。(1)式より、毛細管現象は、接触角θ、溶融金属の表面張力γL、毛細管の内径r、及び、溶融金属の密度ρに依存することがわかる。
これらの内、表面張力γLと密度ρは、溶融金属の種類によって決定される。一方、接触角θは溶融金属とエバポレーターの界面張力で決定され、毛細管の内径rはエバポレーターの表面及び内部の細孔構造で決定される。従って、これらを最適化すれば、エバポレーターの表面全面を濡らすのに十分な這い上がり高さhが得られる。
非特許文献1には、セラミックビーズの表面を液体Gaで覆う方法が開示されている。しかし、同文献に記載の方法では、気化の進行に伴いセラミックビーズ表面の液体Ga量が減少し、セラミックビーズ表面への液体Gaの補給が行われない。そのため、同文献に記載の方法では、一時的に金属蒸気の供給量は増大するが、高い供給速度を長時間維持することができない。
これに対し、本発明に係る装置によれば、金属蒸気の供給量が増大するだけでなく、長時間に渡って高い供給速度を維持することができる。
エバポレーターを用いて金属蒸気を発生させると、キャリアガス中の金属蒸気の分圧を飽和蒸気圧近傍まで高めることができる。そのため、金属蒸気を含んだガスと、酸素やアンモニアなどの活性ガスとを反応させると、金属酸化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属炭化物、金属砒化物などを作製することができる。この時、生成物質と濡れ性の悪い材料からなる基板(例えば、サファイア基板、SiC基板など)が共存していると、基板表面にこれらの物質からなるナノ粒子が析出する。
一方、活性ガスに代えて窒素やアルゴンなどの不活性ガスを用いて、金属蒸気の急速冷却や加圧を行うと、金属蒸気の飽和蒸気圧近傍のガス中に核が発生し、金属ナノ粒子を容易に作製することができる。ナノ粒子の直径2rは、次の(2)式の臨界核半径r*におおよそ従う。そのため、過飽和度を冷却温度や加圧圧力などによって調整することにより、ナノ粒子径の制御も可能となる。
2r*=4σvl/Δμ ・・・(2)
但し、σ:溶融金属の表面エネルギー、vl:溶融金属液体原子(分子)の体積、
Δμ:過飽和度。
(実施例1〜3、比較例1〜2: 這い上がり高さの評価)
[1. 試験方法]
溶融Gaの入ったルツボ内に、エバポレーターを模擬した棒材(5mm角×長さ200mm)を立て、Gaの這い上がり高さを測定した。溶湯温度は1250℃とした。
棒材には、
(1)相対密度:95%、平均細孔径:14.5μmのTaC(実施例1)、
(2)相対密度:95%程度、平均細孔径:10〜20μmのSiC(実施例2)、
(3)相対密度:90〜95%程度、平均細孔径:10〜20μmのAl23(実施例3)、
(4)相対密度:90〜95%程度、平均細孔径:10μm程度のBN(比較例1)、及び
(5)相対密度:88〜90%程度、平均細孔径:10μm程度のカーボン(比較例2)
を用いた。
[2. 結果]
[2.1. 相対密度依存性]
図3に、エバポレーターがTaCであり、溶融金属がGaである場合の這い上がり高さの相対密度依存性を示す。なお、図3には、相対密度依存性の理論曲線も併せて示した。図3より、以下のことがわかる。
(1)相対密度が大きくなるほど、這い上がり高さが大きくなる。
(2)這い上がり高さを1cm以上にするためには、相対密度を40%以上にする必要がある。
(3)相対密度が高すぎる場合、毛細管現象を起こす細孔がなくなるため、這い上がりが起きなくなる。
[2.2. 平均細孔径依存性]
図4に、エバポレーターがTaCであり、溶融金属がGaである場合の這い上がり高さの平均細孔径依存性を示す。なお、図4には、平均細孔径依存性の理論曲線も併せて示した。図4より、以下のことがわかる。
(1)平均細孔径が大きくなるほど、這い上がり高さが小さくなる。
(2)這い上がり高さを1cm以上にするためには、平均細孔径を200μm以下にする必要がある。
[2.3. 材料依存性]
図5に、エバポレーターが各種材料からなり、溶融金属がGaである場合の這い上がり高さを示す。図6に、這い上がり試験後の炭化珪素セラミックス及びアルミナセラミックスの外観写真を示す。
BN及びカーボンは、Gaに対して濡れ性が低く、這い上がり高さはゼロであった。一方、図6に示すように、炭化珪素セラミックス及びアルミナセラミックスはGaの這い上がりを確認できた。しかし、それらの這い上がり高さは、TaCに比べて低かった。図5及び図6より、溶融Ga用のエバポレーター材料として、TaCが特に優れていることがわかる。
(実施例4: GaN単結晶の作製)
[1. 試験方法]
本発明に係る装置を用いて、基板上にGaN単結晶を成長させた。基板には、GaNと格子整合性の良いサファイア基板を用いた。サファイア基板は、不純物を取り除くために、予めキャロス洗浄を行った。エバポレーターには、面積比(=見なし表面積/溶湯面積)の異なるTaC製エバポレーターを用いた。
ルツボ内にエバポレーターを配置し、所定量の金属Gaを入れた。サファイア基板をサセプタ台座に固定し、装置内を1100℃程度まで昇温した。ルツボの温度は、1250℃とし、装置内の圧力は1〜100kPaとした。Ga蒸気のキャリアガスには窒素を用い、窒素流量は、1〜20slmとした。反応ガスには、アンモニア及び水素の混合ガスを用いた。アンモニア流量は1〜20slmとし、水素流量は0〜20slmとした。
[2. 結果]
本発明に係る装置を用いて、サファイア基板上にGaN単結晶を成長させることができた。図7に、エバポレータの面積比(=見なし表面積/溶湯面積)とGaNの成長速度との関係を示す。なお、図7は、キャリアガス流量:2slm、装置内圧:1.3kPaの条件下での結果である。また、GaN基板製造として最も用いられているHVPE法での平均的な成長速度は、100μm/hである(参考文献3)。
[参考文献3]K. Fujito et al., Journal of Crystal Growth, 311, 3011-3014, 2009
図7より、以下のことがわかる。
(1)面積比が2以上になると、成長速度がHVPE法と同等以上となる。
(2)面積比が3以上になると、成長速度は約200μm/h以上となる。
(3)面積比が4以上になると、成長速度は約300μm/h以上となる。
(4)面積比が5以上になると、成長速度は約400μm/h以上となる。
(5)面積比が6以上になると、成長速度は約500μm/h以上となる。
(6)面積比が7以上になると、成長速度は約600μm/h以上となり、面積比を最適化すると、成長速度は700μm/hを超える。
図8に、本発明に係る装置で作製したGaN単結晶の光学顕微鏡写真を示す。図9に、本発明に係る装置で作製したGaN単結晶のXRDパターンを示す。図8及び図9より、本発明に係る装置により品質の高いGaN単結晶が得られることがわかる。本発明によれば、原料の供給効率が向上するため、バルク単結晶を高速に作製することができる。
(実施例5: 酸化ガリウムナノ粒子の作製)
[1. 試験方法]
本発明に係る装置を用いて、酸化ガリウムナノ粒子を作製した。基板には、酸化ガリウムに対する濡れ性の低いサファイア基板を用いた。サファイア基板は、不純物を取り除くために、予めキャロス洗浄を行った。エバポレーターには、所定の面積比(=見なし表面積/溶湯面積)を有するTaC製エバポレーターを用いた。
ルツボ内にエバポレーターを配置し、所定量の金属Gaを入れた。サファイア基板をサセプタ台座に固定し、サセプタ部を1000℃まで昇温した。ルツボの温度は、1250℃とし、装置内の圧力は4kPaとした。Ga蒸気のキャリアガスには窒素を用い、窒素流量は、0.1slmとした。反応ガスには、酸素及び窒素の混合ガスを用いた。酸素流量は1.0slmとし、窒素流量は4.0slmとした。なお、装置の構造上、反応ガスは、ルツボ等の加熱部を通過しないため、キャリアガスと比べて100℃以上温度が低くなっている。
[2. 結果]
本発明に係る装置により、100nm程度の大きさの酸化ガリウム粒子が得られた。これは、ルツボ出口でGa蒸気を含んだキャリアガスと酸素ガスとが反応し、かつ、急速に冷却されることにより、ガス中において核が発生し、基板上においてナノ粒子が形成されたためと考えられる。なお、本実施例では、100nm程度の比較的大きなサイズの粒子が形成されたが、ルツボ出口での急冷温度や加圧条件を制御することで、任意の大きさのナノ粒子を形成することができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明に係る金属/金属化合物製造装置は、各種の金属又は金属化合物からなる単結晶、薄膜、又はナノ粒子を製造するために用いることができる。

Claims (10)

  1. 溶融金属を保持するためのルツボと、
    金属蒸気の発生を促進させるためのエバポレーターと
    を備え、
    前記エバポレータは、その一部が前記溶融金属と接触することが可能となるように前記ルツボ内に設置されている
    金属蒸気供給装置。
  2. 前記エバポレーターは、
    相対密度が40%以上99%以下であり、
    平均細孔径が10nm以上200μm以下であり、かつ、
    前記溶融金属の接触角が90°未満である材料からなる
    請求項1に記載の金属蒸気供給装置。
  3. 前記エバポレータの見なし表面積は、前記ルツボ内の溶湯面積の2倍以上である請求項1又は2に記載の金属蒸気供給装置。
  4. 前記エバポレーターの材料の融点は、使用温度+100℃以上である請求項1から3までのいずれか1項に記載の金属蒸気供給装置。
  5. 前記金属は、Gaであり、
    前記エバポレーターの材料は、TaCである
    請求項1から4までのいずれか1項に記載の金属蒸気供給装置。
  6. 前記エバポレーターは、
    台座と、
    前記台座の上に放射状に立設された複数のフィンと
    を備えている請求項1から5までのいずれか1項に記載の金属蒸気供給装置。
  7. 前記ルツボ内にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部をさらに備えた請求項1から6までのいずれか1項に記載の金属蒸気発生装置。
  8. 請求項1から7までのいずれか1項に記載の金属蒸気供給装置と、
    前記金属蒸気供給装置から供給される前記金属蒸気に反応ガスを供給するための反応ガス供給装置と、
    表面に前記金属又はその化合物を析出させる基板を保持するためのサセプタ部と
    を備えた金属/金属化合物製造装置。
  9. 請求項8に記載の金属/金属化合物製造装置を用いて、窒化ガス共存下においてGa蒸気を発生させ、前記基板上にGaN単結晶を成長させるGaN単結晶の製造方法。
  10. 請求項8に記載の金属/金属化合物製造装置を用いて、不活性ガス又は活性ガス共存下において前記金属蒸気を発生させ、前記基板上に金属ナノ粒子又は金属化合物ナノ粒子を析出させるナノ粒子の製造方法。
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