以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る加工装置を示す正面図である。図1(b)は、本発明の第1実施形態に係る加工装置を示す上面図である。なお、図1(a)において、紙面左右方向がX軸方向であり、紙面奥行方向が、X軸方向に直交するY軸方向であり、紙面上下方向が、X,Y軸方向に直交するZ軸方向である。
図1(a)及び図1(b)に示す加工装置100は、加工対象物であるワークWに対して加工(例えば切削加工)を施して部品(第1実施形態では、光学部品又は金型)を製造するものである。加工装置100は、加工装置本体200と、制御装置(上位コントローラ)300と、を備えている。加工装置本体200は、装置ベース201と、装置ベース201に対して互いに直交する3軸方向(X,Y,Z軸方向)に移動する移動機構である移動ステージ202と、を備えている。更に、加工装置本体200は、工具203、工具架台204、ワーク架台205、基準器206及び測定装置207を備えている。
移動ステージ202は、第1実施形態では、水平方向(X,Y軸方向)に移動する2軸のステージ211,212と垂直方向(Z軸方向)に移動する1軸のステージ213からなる。具体的には移動ステージ202は、装置ベース201に対して、X軸方向に移動するXステージ211と、Y軸方向に移動するYステージ212と、Z軸方向に移動するZステージ213と、を有する。
Yステージ212及びZステージ213は、装置ベース201に移動可能に支持されて、装置ベース201に対してY,Z軸方向に移動する。Xステージ211は、Zステージ213に移動可能に支持されて、Zステージ213(即ち、装置ベース201)に対してX軸方向に移動する。
工具203は、ワークWに加工(例えば切削加工)を施すための刃を有し、工具架台204に支持(固定)されている。工具架台204は、Yステージ212に固定されている。したがって、工具203は、Yステージ212の動作により、工具架台204と一体に装置ベース201に対してY軸方向に移動する。
ワーク架台205は、加工作業時及び移設時にワークWがワーク架台205に対して移動しないようにワークWを支持(固定)するものである。ワーク架台205は、Xステージ211上にX軸方向(及び/又はY軸方向)に移設可能に固定されている。ワーク架台205の移設時には、ワーク架台205に支持(固定)されているワークWがワーク架台205と一体に移設される。ワークWの移設により、工具203によって加工が可能な加工可能範囲(ワークWに対する工具203の相対的なX,Y軸方向の可動範囲)と重なるワークWの被加工領域を変更することができる。ワークWは、ワーク架台205に支持されているので、ワーク架台205と一体に、Xステージ211の動作により装置ベース201に対してX軸方向に移動し、Zステージ213の動作により装置ベース201に対してZ軸方向に移動する。
以上の移動ステージ202の構成で、移動ステージ202は、工具203及びワークWのうち少なくとも一方(第1実施形態では、工具203をY軸方向、ワークWをX,Z軸方向)を移動させて、工具203をワークWに対して相対的に移動させるものである。ここで、工具203をワークWに対して相対的に移動させるとは、ワークWを工具203に対して相対的に移動させることと同義である。
ワーク架台205及び工具架台204のうち一方(第1実施形態では、工具架台204)には、基準器206が固定され、ワーク架台205及び工具架台204のうち他方(第1実施形態では、ワーク架台205)には、測定装置207が固定されている。測定装置207については、測定が可能な測定可能領域(測定レンジ)が存在する。測定装置207は、測定可能領域内に位置する基準器206の位置及び姿勢を測定するものである。
ワーク架台205は、架台本体205Aと、架台本体205Aに設けられたアタッチメント205Bと、を有し、アタッチメント205Bに測定装置207が取り付けられている。
測定装置207がワーク架台205に固定されているので、ワーク架台205(ワークW)に対する測定装置207の相対的な位置及び姿勢が一定に保たれている。また、基準器206が工具架台204に固定されているので、工具架台204(工具203)に対する基準器206の相対的な位置及び姿勢が一定に保たれている。よって、測定装置207は、ワーク架台205(ワークW)と一体に移動し、また、基準器206は、工具架台204(工具203)と一体に移動する。
測定装置207の測定対象である基準器206は、直方体状の物体であり、X,Y,Z軸方向に垂直な3面を有するように工具架台204に固定されている。つまり、基準器206の3面は、X,Y,Z軸方向に向いている。
測定装置207は、複数(第1実施形態では6個)の変位計(変位センサ)208を有し、各変位計208が、アタッチメント205Bに取り付けられている。変位計208は、測定対象が測定レンジ(測定可能領域)外に移動しても、再び測定レンジ内に位置したときに引き続き測定が可能な方式である必要がある。第1実施形態では、変位計208は、接触式の変位計であり、変位計208のピンが接触により押し込まれる量を変位として測定する。なお、第1実施形態では、変位計208が接触式の変位計である場合について説明するが、変位計208が非接触式の変位計、例えば静電容量変位計やレーザー変位計、レーザー干渉計であってもよい。なお、測定精度の劣化を許容するのであれば、測定装置207として、プローブを有して、プローブに被測定物が接触したことを検知することができるタッチセンサーを用いても良い。タッチセンサーを用いる場合は、その数は一つである。また、タッチセンサーを用いる上でより高精度を求める場合にはプローブの接触時に、その押込み量を直交する3方向で測定できるものが望ましい。
各変位計208は、基準器206の3面のいずれかの変位を測定し得る位置(第1実施形態では接触式であるので、いずれかに接触し得る位置)に配置されている。これら6個の変位計208により、基準器206のX,Y,Z軸方向の変位と、各変位の測定結果を利用して計算することで求まるθX,θY,θZ方向の姿勢と、が測定可能となっている。ここで、θX方向とはX軸を中心とするX軸まわりの回転方向であり、θY方向とはY軸を中心とするY軸まわりの回転方向であり、θZ方向とはZ軸を中心とするZ軸まわりの回転方向である。
第1実施形態では、ワークWに対する工具203の1自由度の姿勢を測定する際、同じ面内に存在する2つの変位計208の測定値を差分して算出する。例えばθZ方向の姿勢を測定する場合は、同じXY平面内において、X軸方向或いはY軸方向を測定する2つの変位計208の位置関係と測定値から傾きを算出することによって行う。このようにすることで、位置の測定と姿勢の測定を同じ変位計208を用いて行うことができる。なお、姿勢の測定に関してオートコリメータ等の別の手段を用いてもよい。一方で測定装置207としてタッチセンサーを用いた場合では、タッチセンサーを基準器206に対して移動させながら複数回の測定を行い、各測定時の接触位置同士の相対位置関係から位置と姿勢を算出する。
以上、測定装置207は、ワークWに対する工具203の相対的な位置及び姿勢を測定する測定装置(測定手段)である。ここで、ワークWに対する工具203の相対的な位置及び姿勢とは、工具203に対するワークWの相対的な位置及び姿勢と同義、即ち工具203とワークWとの相対的な位置及び姿勢である。
基準器206は、低熱膨張セラミックや低熱膨張ガラス等の低熱膨張材で形成されている。低熱膨張材とは、線膨張係数が5×10−6[1/K]以下のものとする。これによって、基準器206は、加工空間内の温度変化に伴う熱膨張による変形が低減する。基準器206の3面(変位計208によって測定可能な方向を向いている3つの面)については、λ/20以下の面精度まで研磨されている。
工具架台204は、一部又は全部(第1実施形態では全部)が低熱膨張鋳鉄等の低熱膨張材によって形成されている。これによって、加工空間内の温度変化に伴う工具架台204の熱膨張による変形が低減され、基準器206と工具203との一体性が担保される。
また、ワーク架台205の一部又は全部(第1実施形態では全部)は、低熱膨張鋳鉄等の低熱膨張材によって形成されている。これにより、加工空間内の温度変化に伴うワーク架台205の熱膨張による変形が低減され、ワークWと測定装置207(変位計208)の一体性が担保される。
以上、基準器206、工具架台204及びワーク架台205の少なくとも一つ(第1実施形態では全部)が、低熱膨張材で形成されているので、基準器206の測定による工具203の位置及び姿勢を高精度に測定可能としている。
ワーク架台205(ワークW)の移設の際、ワーク架台205は、Xステージ211上に別途搭載した追加のステージ(不図示)或いは手動によって、ワークWや測定装置207ごとXステージ211上を移動させられることになる。
また、移設する距離がXステージ211上だけでは確保できない場合、或いはワーク架台205の移動に必要な軸受けやステージを搭載する等の事情に対応するため、Xステージ211上にワーク架台205を搭載可能な追加の架台を搭載してもよい。
加工中においては、ワーク架台205はXステージ211上、或いは前述した追加の架台(不図示)に固定されている。固定の方法はボルト締結でもよいが、移設の際における脱着の利便性を考慮して磁石や真空吸引等を利用してもよい。
図2は、本発明の第1実施形態に係る加工装置の制御系を示すブロック図である。制御装置300は、制御部(演算部)としてのCPU(Central Processing Unit)301を備えている。また、制御装置300は、記憶部として、ROM(Read Only Memory)302、RAM(Random Access Memory)303、HDD(Hard Disk Drive)304を備えている。また、制御装置300は、記録ディスクドライブ305及び各種のインタフェース311〜316を備えている。
CPU301には、ROM302、RAM303、HDD304、記録ディスクドライブ305及び各種のインタフェース311〜316が、バス310を介して接続されている。ROM302には、BIOS等の基本プログラムが格納されている。RAM303は、CPU301の演算処理結果等、各種データを一時的に記憶する記憶装置である。
HDD304は、CPU301の演算処理結果や外部から取得した各種データ等を記憶する記憶装置であると共に、CPU301に、後述する各種演算処理を実行させるためのプログラム340を記録するものである。CPU301は、HDD304に記録(格納)されたプログラム340に基づいて部品を製造する際の各工程を実行する。
記録ディスクドライブ305は、記録ディスク341に記録された各種データやプログラム等を読み出すことができる。
インタフェース311には、Xステージ211が接続されている。インタフェース312には、Yステージ212が接続されている。インタフェース313には、Zステージ213が接続されている。Xステージ211、Yステージ212及びZステージ213は、不図示のリニアモータ等のアクチュエータをそれぞれ有しており、各アクチュエータの駆動により、テーブル(ステージ本体)が移動するよう構成されている。CPU301は、バス310及び各インタフェース311,312,313を介して各ステージ211,212,213に駆動指令を出力して、各ステージ211,212,213の動作を制御する。各ステージ211,212,213は、制御装置300からの駆動指令によって、それぞれが同期して同時に動作することが可能な構成になっている。
インタフェース314には、移動機構位置測定装置であるステージ位置測定装置221が接続されている。ステージ位置測定装置221は、図1(a)及び図1(b)では不図示であるが、レーザースケール等の測長センサで構成されており、装置ベース201に対する各ステージ211,212,213の各X,Y,Z軸方向の位置を測定する。CPU301は、各ステージ211,212,213の駆動方向の位置を測定しながら、測定位置が目標位置(プログラム350に記述されている位置)となるように各ステージ211,212,213の位置決め制御を行う。
インタフェース315には、測定装置207が接続されている。測定装置207による測定結果は、インタフェース315及びバス310を介してCPU301により取得される。インタフェース316には、作業者が操作可能な操作装置222が接続されている。なお、図示は省略するが、モニタや外部記憶装置が制御装置300の不図示のインタフェースに接続されていてもよい。
ここで、HDD304には、各ステージ211,212,213の動作を記述した加工用のプログラム350が格納されている。この加工用のプログラム350は、制御装置300の外部から読み込まれてHDD304に格納されたものである。
CPU301は、プログラム340を実行して部品の製造方法の各工程を実行する際に、加工用のプログラム350を読み込む。そして、CPU301は、加工用のプログラム350に規定された移動ステージ202の様々な動作を移動ステージ202に順次行わせることができる。
第1実施形態の加工装置100では、Xステージ211とZステージ213でワークWの位置を移動させ、工具203の刃先がワークWに切り込んだ状態でYステージ212を移動させることで、ワークWに切削加工を施す。
第1実施形態においては、ワークWの全被加工領域(工具203により加工する領域)が移動ステージ210の移動による工具203の加工可能範囲(可動範囲)よりも広い場合を想定している。そして、ワークWの全被加工領域が,前段被加工領域と、これに連続する後段被加工領域との2つの領域からなる場合を想定している。そして、作業者が、Xステージ211上或いは不図示の追加の架台上でワーク架台205を移設することで、工具203による加工可能範囲内に位置するワークWの領域を、前段被加工領域から後段被加工領域に変更することができる場合を想定している。
以下、ワークWの前段被加工領域と後段被加工領域とがX軸方向で隣接しており、ワークWの前段被加工領域を加工する前段加工を行い、次いでワークWをX軸方向に移設してワークWの後段被加工領域を加工する後段加工を行う場合について説明する。即ち、ワークWがX軸方向に長く、X軸方向に繋ぎ加工を行う場合について説明する。
なお、加工前の準備として、ワークW及びワーク架台205、工具203及び工具架台204、並びに加工液供給や切り子の吸取り系等の加工装置への設置は完了している。加えて、制御装置300(CPU301)には、ワークW上の前段加工用の加工開始点(前段加工開始点)の位置が予め指令されている。また、加工用のプログラム350として、ワークWの前段被加工領域を加工するための移動ステージ202(ステージ211,212,213)の動作を規定する前段加工プログラム351が、記憶部であるHDD304に格納されている。また、加工用のプログラム350として、ワークWの後段被加工領域を加工するための移動ステージ202(ステージ211,212,213)の動作を規定する後段加工プログラム352が、記憶部であるHDD304に格納されている。よって、CPU301は、プログラム351,352に従って移動ステージ202(ステージ211,212,213)の動作を制御すれば、ワークW上の前段加工開始点から後段加工終了点までの領域に対して加工が実行されるようになっている。
図3は、本発明の第1実施形態に係る部品の製造方法において前段加工プログラムにより工具が移動する軌道を示す説明図である。図3にワークWが静止しているとして、前段加工プログラム351によって相対的に工具203が移動する軌道、即ち前段加工軌道420の例を示す。前段加工軌道420は、切削軌道421(421a〜421e)、退避軌道422(422a〜422d)、戻り・送り軌道423(423a〜423e)、切り込み軌道424(424a〜424d)からなる。図3では、切削軌道421に示されている直線軌道において工具203とワークWが接触し、切削が行われることによって平面が加工される様子を示している。したがって、切削軌道421が球面或いは自由曲面の断面の曲線で構成されていれば、ワークWが球面や自由曲面に加工されることとなる。これらの軌道420は、加工プログラムによって一定時間の間隔ごとに各移動ステージの存在すべき位置が記述され、同プログラムに従って各移動ステージが移動することによって実現する。なお、図3において、Ps1は前段加工開始点、Pe1は前段加工終了点である。
図4は、本発明の第1実施形態における加工装置100を用いた部品の製造方法を示すフローチャートである。また、図5(a)〜図5(f)は、図4の各ステップにおける工具203とワークWとの位置関係を示す模式図である。具体的には、図5(a)はステップS2、図5(b)はステップS3、図5(c)はステップS4、図5(d)はステップS6、図5(e)はステップS7、図5(f)はステップS13における工具203とワークWとの位置関係を示す模式図である。
以下、図4のフローチャートに沿って説明する。まず、工具203の加工可能範囲内にワークWの前段被加工領域が位置するようにXステージ211上にワーク架台205(ワークW)が設置固定されているものとする。
CPU301は、移動ステージ202の動作を記述した前段加工用のプログラム351を読み込む(S1)。
そして、CPU301は、図5(a)に示すように、工具203をワークWの前段被加工領域における前段加工開始点Ps1に接触させるよう、移動ステージ202の動作を制御する(S2)。工具203を前段被加工領域の前段加工開始点Ps1に移動させたとき、CPU301は、ステージ位置測定装置221による移動ステージ202の測定値(x1,y1,z1)を取得し、前段加工開始測定値として記憶部であるHDD304に記録する。
次に、CPU301は、前段加工プログラム351に従って移動ステージ202を動作させて、図5(b)に示すように、工具203の加工可能範囲内に位置するワークWの前段被加工領域を加工する(S3:前段加工工程,前段加工処理)。このステップS3により、各ステージ211〜213が駆動し、前段加工開始点Ps1から前段加工プログラム351に従う前段加工が行われる。
次に、CPU301は、図5(c)に示すように、前段加工の終了後であってワークWを移設する前に、測定装置207の測定可能領域内に基準器206が測定装置207に対して相対的に移動するように移動ステージ202を動作させる。つまり、CPU301は、各ステージ211〜213を駆動させ、ワーク架台205と工具架台204を、基準器206の各面が、対応した変位計208の測定レンジ内に位置するように移動させる。そして、CPU301は、このときの測定装置207による基準器206の位置及び姿勢の測定結果を取得する(S4:第1測定工程,第1測定処理)。このステップS4により、ワークWに対する工具203の相対的な位置及び姿勢を測定する。
なお、ステップS4では、前段加工の終了後に測定する場合について説明したが、これに限定するものではなく、後のステップでワークWを移設する前であればよく、例えば前段加工開始前でもよい。前段加工の終了後であれば、ワークWを移設する直前の工具203の相対的な位置及び姿勢を測定でき、後の後段加工の精度が高まる。
図6(a)は、本発明の第1実施形態に係る加工装置による部品の製造方法の第1測定工程における工具203とワークWとの相対的な位置及び姿勢の測定状態を示す模式図である。図6(a)に示す状態で、ワーク架台205上の変位計208によって、工具架台204上の基準器206を測定することで、ワークWに対する工具203の相対的な位置及び姿勢を測定する第1測定を行う。CPU301は、このステップS4に得られた測定結果(xa,ya,za,θxa,θya,θza)を、第1測定結果として記憶部であるHDD304に記録する。
この測定における基準器206の各面に対する各変位計208の測定値は、同時に得ることが望ましい。またこのステップS4において第1測定を行っている位置、即ち第1測定点(前段加工終了時測定点)Pm1での、各ステージ211〜213の測定値(x2,y2,z2)を記憶部であるHDD304に記録する。
図7(a)は、本発明の第1実施形態に係る加工装置による部品の製造方法の移動ベクトル計算工程における計算処理を説明するための図である。ここで、ワークWの後段被加工領域の後段加工開始点をPs2とし、ワークWに対する工具203の相対的な移動方向及び移動量を示す移動ベクトルをVとする。
CPU301は、ステップS4にて測定したときの第1測定点Pm1から後段加工開始点Ps2までの移動ベクトルVを計算する(S5:移動ベクトル計算工程,移動ベクトル計算処理)。
具体的に説明すると、CPU301は、測定値(x1,y1,z1)から測定値(x2,y2,z2)を減算する。これによって、第1測定を行っている場所である点Pm1を起点とした、前段加工開始点Ps1までの各ステージ211〜213の移動量、即ち前段加工開始点移動量(x2−x1,y2−y1,z2−z1)を求める。更に、CPU301は、プログラム350上の前段加工開始点Ps1から後段加工開始点Ps2までの移動量(lx,ly,lz)を、前段加工開始点移動量(x2−x1,y2−y1,z2−z1)に加算する。これにより、第1測定を行っている場所(第1測定点)Pm1を起点とした、後段加工開始点Ps2までの各ステージ211〜213の移動量、即ち移動ベクトルVとして(x2−x1+lx,y2−y1+ly,z2−z1+lz)を求める。
次に、作業者は、図5(d)に示すように、ワークWの後段被加工領域が工具203の加工可能範囲内に位置するようにワークWを移設する(S6:移設工程)。第1実施形態では、ワークWは、ワーク架台205に支持されているので、作業者は、ワーク架台205を移設することで、ワークWを移設する。具体的には、作業者は、ワーク架台205をXステージ211上でX軸方向に移動させる。ワークWを移設後、ワーク架台205をXステージ211に固定する。作業者は、移設完了後、図2に示す操作装置222を操作して移設完了した旨をCPU301に通知する。
次に、CPU301は、ステップS6の後、図5(e)に示すように、測定装置207の測定可能領域内に基準器206が測定装置207に対して相対的に移動するように移動ステージ202を動作させる。つまり、CPU301は、各ステージ211〜213を駆動させ、ワーク架台205と工具架台204を、基準器206の各面が、対応した変位計208の測定レンジ内に位置するように移動させる。そして、CPU301は、このときの測定装置207による基準器206の位置及び姿勢の測定結果を取得する(S7:第2測定工程,第2測定処理)。このステップS7により、ワークWに対する工具203の相対的な位置及び姿勢を測定する。
図6(b)は、本発明の第1実施形態に係る加工装置による部品の製造方法の第2測定工程における工具203とワークWとの相対的な位置及び姿勢の測定状態を示す模式図である。図6(b)に示す状態で、ワーク架台205上の変位計208によって、工具架台204上の基準器206を測定することで、ワークWに対する工具203の相対的な位置及び姿勢を測定する第2測定を行う。CPU301は、このステップS7に得られた測定結果(xb,yb,zb,θxb,θyb,θzb)を、第2測定結果として記憶部であるHDD304に記録する。
この測定における基準器206の各面に対する各変位計208の測定値は、同時に得ることが望ましい。またこのステップS7において第2測定を行っている位置、即ち第2測定点(後段加工開始時測定点)Pm2での、各ステージ211〜213の測定値(x3,y3,z3)を記憶部であるHDD304に記録し、加工プログラムに入力しておく。
CPU301は、ステップS4にて測定した測定結果(xa,ya,za,θxa,θya,θza)と、ステップS7にて測定した測定結果(xb,yb,zb,θxb,θyb,θzb)との差分を算出する(S8)。つまり、CPU301は、差分(xb−xa,yb−ya,zb−za,θxb−θxa,θyb−θya,θzb−θza)を算出する。この差分は、第1測定時の位置及び姿勢に対する第2測定時の位置及び姿勢の変化量を示している。
次に、CPU301は、ステップS8にて求めた差分(xb−xa,yb−ya,zb−za,θxb−θxa,θyb−θya,θzb−θza)により後段加工プログラム352を補正する(S9:補正工程,補正処理)。つまり、CPU301は、後段加工プログラム352に記述されている各ステージ211〜213の動作指令を補正する。
図8(a)は、補正前の後段加工プログラム352に基づくワークに対する工具203の相対的な軌道を説明するための図、図8(b)は、補正後の後段加工プログラム352に基づくワークに対する工具203の相対的な軌道を説明するための図である。図8(a)及び図8(b)において、後段加工開始点をPs2、後段加工終了点をPe2とする。
図8(a)にワークWが理想的に移設、即ち所望の移設距離だけ併進移動されたワークW’が静止しているとして、補正前の後段加工プログラム352によって相対的に工具203が移動する軌道、即ち後段加工軌道430の様子を示す。しかしながら実際には、ワークWは移設に伴って、ワークW’に対して異なる位置、姿勢に配置されることになる。後段加工プログラム352に前述の補正を施すことによって図8(b)に示すように、後段加工軌道430は移設後且つ理想位置からずれたワークWの位置、姿勢に沿うように起動の方向を変更することができる。
例えば、移設後のワークWにθZ方向の姿勢に変化が表れた場合は、加工の際にXステージ211とYステージ212の移動量が適切な比を保つよう同時に動作するように後段加工プログラム352を補正する。即ち、工具203がワークWに対して、姿勢の変化と同量のθZ方向の動きを行うように後段加工プログラム352を補正する。このように、ワークWの姿勢変化量(θxb−θxa,θyb−θya,θzb−θza)から、後段加工プログラム352における加工軌道の向きについて補正する。このことによって、後段加工時のワークWに対する工具203の相対的な位置関係を保つことができる。
次に、CPU301は、差分(xb−xa,yb−ya,zb−za,θxb−θxa,θyb−θya,θzb−θza)により移動ベクトルVを補正する(S11:移動ベクトル補正工程,移動ベクトル補正処理)。
図7(b)は、本発明の第1実施形態に係る加工装置による部品の製造方法の移動ベクトル補正工程における計算処理を説明するための図である。ステップS11において、CPU301は、具体的には、差分(xb−xa,yb−ya,zb−za,θxb−θxa,θyb−θya,θzb−θza)を、ステップS5にて求めた移動ベクトルVに加算する補正を行う。これにより、補正した移動ベクトル(xb−xa+lx,yb−ya+ly,zb−za+lz,θxb−θxa,θyb−θya,θzb−θza)が算出される。
次に、CPU301は、HDD304に格納されている、補正された後段加工プログラム352を読み込む(S10)。
CPU301は、次のステップS13(後段加工工程)に先立ち、第2測定点Pm2から、補正した移動ベクトルの分、工具203がワークWに対して相対的に移動するよう移動ステージ202を動作させる(S12:移動工程,移動処理)。第2測定点Pm2を起点として補正した移動ベクトル分だけ工具203がワークWに対して移動するよう各ステージ211〜213を移動させることによって、工具203を後段加工開始点P2sにより正確に到達させることができる。
次に、CPU301は、ステップS9にて補正した後段加工プログラム352に従って移動ステージ202を動作させる。これにより、図5(f)に示すように、工具203の加工可能範囲内に位置するワークWの後段被加工領域を後段加工開始点P2sから加工する(S13:後段加工工程,後段加工処理)。これにより、光学部品又は金型等の部品が製造される。このステップS13により、各ステージ211〜213が駆動し、後段加工開始点から後段加工が行われる。以上で、前段被加工領域と後段被加工領域との繋ぎ加工が可能となる。
以上、第1実施形態によれば、ワークWの後段被加工領域を加工する前に、ワーク移設前のワークWに対する工具203の相対的な位置及び姿勢の測定結果とワーク移設後のワークWに対する工具203の相対的な位置及び姿勢の測定結果との差分を求めている。そして、差分により、後段加工プログラム352を補正している。この補正後の後段加工プログラム352に従って後段被加工領域を加工することで、ワークWにおける前段被加工領域と後段被加工領域との繋ぎ目における段差を低減することができ、部品の加工精度を向上させることができる。
即ち、ワークWに対する工具203の相対的な位置及び姿勢の測定が前段加工の終了直後と後段加工の開始直前に行われ、その結果により補正量が算出される。このため、繋ぎ加工を行う上で生じうる移設時の温度変化等の影響により段差が生じる誤差を低減することができる。よって、試し加工を行わずにワークWの加工中断直前の状態をワークWの移設後に再現することができる。したがって、ワークWの移設を伴う繋ぎ加工であっても、ワークWを移設する際の温度変化に伴う変形によって生じる段差状誤差の大きさを従来技術に比して抑えることが可能となる。よって、ワークWを移設しながら断続加工を実施することで、移動ステージ202のストロークの制約を受けずに加工精度を向上させることができる。
[第2実施形態]
図9は、本発明の第2実施形態における加工装置100を用いた部品の製造方法を示すフローチャートである。また、図10(a)〜図10(d)は、本発明の第2実施形態に係る部品の製造方法において特徴的なステップの工具203とワークWとの位置関係とを示す模式図である。具体的には、図10(a)はステップS24、図10(b)はステップS27、図10(c)はステップS29、図10(d)はステップS31における工具203とワークWとの位置関係を示す模式図である。
第2実施形態は、第1実施形態の第1測定工程と第2測定工程に、後述する処理を追加することで前段加工と後段加工との繋ぎ目部分で加工面の傾きが不連続となる誤差の発生量を低減するものである。
つまり、ワークの後段加工領域を加工する前に、ワーク移設前と移設後との相対移動ベクトルの測定を行い、移設前と移設後との相対移動ベクトルの差分を用いて後段加工プログラムを補正する。これにより、ワークにおける前段被加工領域と後段被加工領域との加工面の繋ぎ目部分で加工面の傾きが不連続となる傾きの差を低減することができ、部品の加工精度を向上させることができる。
なお、加工前の準備として、ワークW及びワーク架台205、工具203及び工具架台204、並びに加工液供給や切り子の吸取り系等の加工装置への設置は完了している。
以下、図9のフローチャートに沿って説明する。まず、工具203の加工可能範囲内にワークWの前段被加工領域が位置するようにXステージ211上にワーク架台205(ワークW)が設置固定されているものとする。図9のステップS21,S22,S23,S25,S28,S36,S37,S38,S39は、それぞれ図4のステップS1,S2,S3,S5,S6,S10,S11,S12,S13に対応する。
CPU301は、移動ステージ202の動作を記述した前段加工用のプログラム351を読み込む(S21)。
そして、CPU301は、工具203をワークWの前段被加工領域における前段加工開始点Ps1に接触させるよう、移動ステージ202の動作を制御する(S22)。工具203を前段被加工領域の前段加工開始点Ps1に移動させたとき、CPU301は、ステージ位置測定装置221による移動ステージ202の測定値(x1,y1,z1)を取得し、前段加工開始測定値として記憶部であるHDD304に記録する。
次に、CPU301は、前段加工プログラム351に従って移動ステージ202を動作させて、工具203の加工可能範囲内に位置するワークWの前段被加工領域を加工する(S23:前段加工工程,前段加工処理)。このステップS23により、各ステージ211〜213aが駆動し、前段加工開始点Ps1から前段加工プログラム351に従う前段加工が行われる。
次に、CPU301は、図10(a)に示すように、前段加工の終了後であってワークWを移設する前に、測定装置207の測定可能領域内に基準器206が測定装置207に対して相対的に移動するように移動ステージ202を動作させる。つまり、CPU301は、各ステージ211〜213aを駆動させ、ワーク架台205と工具架台204を、基準器206の各面が、対応した変位計208の測定レンジ内に位置するように移動させる。そして、CPU301は、このときの測定装置207による基準器206の位置及び姿勢の測定結果を取得する(S24:第1位置・姿勢測定)。このステップS24により、工具203に対するワークWの相対的な位置及び姿勢を測定する。
図10(a)に示すような状態で、ワーク架台205上の変位計208によって、工具架台204上の基準器206を測定することで、ワークWに対する工具203の相対的な位置及び姿勢を測定する第1測定を行う。CPU301は、このステップS24に得られた測定結果(xa,ya,za,θxa,θya,θza)を、第1位置・姿勢測定の結果として記憶部であるHDD304に記録する。
この測定における基準器206の各面に対する各変位計208の測定値は、同時に得ることが望ましい。またこのステップS24において第1測定を行っている位置、即ち第1測定点(前段加工終了時測定点)Pm1での、各ステージ211〜213aの測定値(x2,y2,z2)を記憶部であるHDD304に記録する。
ステップS26は第1測定移動のステップである。このステップS26は移設前に相対移動ベクトルの測定を行うためにワークWと工具203の相対位置を変更する。このステップS26では、予め定めた方向を可動方向とする移動機構を予め定めた距離だけ工具203とワークWとの相対距離を変更するように移動機構を動かすステップである。具体的にはCPU301はXステージ211に指令しXステージ211を規定距離(例えば10mm)移動する。
ステップS27は第1移動方向測定のステップであり、移設前に相対移動ベクトルを測定するステップである。ステップS26での移動後に、工具203に対するワークWの相対位置を、基準器206を基準に測定装置207で測定する。この測定結果(xA,yA,zA,θxA,θyA,θzA)からステップS24での測定結果(xa,ya,za,θxa,θya,θza)を差し引くことで相対移動ベクトルを求める。この時、差分の内姿勢の成分(θxA−θxa,θyA−θya,θzA−θza)は精密な加工装置では値が小さく影響度が小さいので無視し、移動方向を(xA−xa,yA−ya,zA−za)の値で第1相対移動ベクトルとして求める。
この時のワークWと工具203及びXステージ211の位置関係を図10で説明する。図10(a)は、ステップS24での測定時の位置関係であり、図10(b)はステップS27での測定時の位置関係である。図10(a)から図10(b)の位置関係に遷移させる動作がステップS26である。
ここで、図10(a)の位置関係からXステージ211がそのガイドを兼ねるZステージ213aに沿って図10(b)の位置関係に遷移している。図10(a)及び図10(b)では、Xステージ211のガイドであるZステージ213aの上面が例えば右上がりの形状である状態を想定する。Zステージ213aは、例えば、ワーク架台205、ワークW及びXステージ211等の重量によってZステージ213a(ガイド)が変形することがあり、そのような場合を想定する。この様な状態のガイドでXステージ211が図10(a)から図10(b)へ位置関係を変えるとXステージ211は図10(a)の状態よりも図10(b)の状態の場合が上、即ちZ方向でプラス方向へ移動する。測定した第1相対移動ベクトル401を図10(b)に工具203を基点として図示する。
第2実施形態においては、ステップS24からステップS27までを第1測定工程または第1測定処理とする。
ここで、CPU301は、ステップS24にて測定したときの第1測定点Pm1から後段加工開始点Ps2までの移動ベクトルVを計算する(S25:移動ベクトル計算工程,移動ベクトル計算処理)。このステップS25の工程は、ステップS24の後であって、後述するステップS28の移設工程の前であれば、いつ計算を実行してもかまわない。図9に示すフローチャートでは、ステップS25の工程は、ステップS24とステップS26との間で実行するように図示されている。
次に、作業者は、ワークWの後段被加工領域が工具203の加工可能範囲内に位置するようにワークWを移設する(S28:移設工程)。作業者は、移設完了後、操作装置222を操作して移設完了した旨をCPU301に通知する。
次に、CPU301は、ステップS28の後、図10(c)に示すように、測定装置207の測定可能領域内に基準器206が測定装置207に対して相対的に移動するように移動ステージ202を動作させる。そして、CPU301は、このときの測定装置207による基準器206の位置及び姿勢の測定結果を取得する(S29:第2位置・姿勢測定)。このステップS29により、ワークWに対する工具203の相対的な位置及び姿勢を測定する。
CPU301は、このステップS29に得られた測定結果(xb,yb,zb,θxb,θyb,θzb)を、第2測定結果として記憶部であるHDD304に記録する。
次にステップS30は第2測定移動を行うステップである。このステップS30は移設後に相対移動ベクトルの測定を行う為にワークWと工具203の相対位置を変更する。このステップS30では、移設前のステップS26と同じ可動方向を持つ移動機構を同じ距離だけ工具203とワークWとの相対距離を変更するように移動機構を動かすステップである。具体的にはCPU301を用いてXステージ211に指令しXステージ211を規定距離(10mm)移動する。
ステップS31は第2移動方向測定で移設後に相対移動ベクトルを測定するステップである。ステップS30での移動後に、工具203に対するワークWの相対位置を、基準器206を基準に測定装置207で測定する。この測定結果(xB,yB,zB,θxB,θyB,θzB)からステップS29での測定結果(xb,yb,zb,θxb,θyb,θzb)を差し引くことで相対移動ベクトルを求める。この時、差分の内姿勢の成分(θxB−θxb,θyB−θyb,θzB−θzb)は精密な加工装置では値が小さく影響度が小さいので無視し、移動方向を(xB−xb,yB−yb,zB−zb)の値で第2相対移動ベクトルとして求める。
この時のワークWと工具203及びXステージ211の位置関係を図10で説明する。図10(c)がステップS29での測定時のステップでの位置関係であり、図10(d)がステップS31での測定時の位置関係である。図10(c)から図10(d)の位置関係に遷移させる動作がステップS30である。ここで、図10(c)の位置関係からXステージ211がそのガイドを兼ねるZステージ213aに沿って図10(d)の位置関係に遷移している。図10(c)及び図10(d)では、Xステージ211のガイドであるZステージ213aの上面が例えば右下がりの形状である状態を想定する。つまり、ワーク架台205(ワークW)を移設したことにより重心位置が変わるので、Zステージ213a(ガイド)が移設前とは異なる形状に変形をすることがあり、そのような場合を想定する。このような状態のガイドでXステージ211が図10(c)から図10(d)へ位置関係を変えるとXステージ211は図10(c)の状態よりも図10(d)の状態の場合が下、即ちZ方向でマイナス方向へ移動する。測定した第2相対移動ベクトル402を図10(d)に工具203を基点として図示する。
第2実施形態においては、ステップS29からステップS31までを、第2測定工程または第2測定処理とする。
CPU301は、ステップS24にて測定した測定結果(xa,ya,za,θxa,θya,θza)と、ステップS29にて測定した測定結果(xb,yb,zb,θxb,θyb,θzb)との差分を算出する(S32)。つまり、CPU301は、差分(xb−xa,yb−ya,zb−za,θxb−θxa,θyb−θya,θzb−θza)を算出する。この差分は、第1測定時の位置及び姿勢に対する第2測定時の位置及び姿勢の変化量を示している。
次に、CPU301は、ステップS32にて求めた差分(xb−xa,yb−ya,zb−za,θxb−θxa,θyb−θya,θzb−θza)により後段加工プログラム352を補正する(S33:第1補正工程,第1補正処理)。
次にCPU301はステップS34では、ステップS27にて測定した測定結果(xA−xa,yA−ya,zA−za)と、ステップS31にて測定した測定結果(xB−xb,yB−yb,zB−zb)との差分を算出する。更に、第1相対移動ベクトルと第2相対移動ベクトルの差から補正のための係数を求める。係数は後段加工において後段加工の開始点からXステージ211を動かす距離に合わせてYステージ212及びZステージ213aを動かすことで量を求めるためのものである。具体的にはXステージ211が後段加工開始点から動く距離ΔXに比例してYステージ212とZステージ213aを動かす係数を決める。Yステージ212を動かす量を決める係数はKy=((yB−yb)/(xB−xb)−(yA−ya)/(xA−xa))である。また、Zステージ213aを動かす量を決める係数Kz=((zB−zb)/(xB−xb)−(zA−za)/(xA−xa))として補正係数を得る。
ステップS35はステップS34で求めた係数を基に後段加工の加工プログラムに対して補正を行うものである。具体的には後段加工を行うプログラムで加工開始点からXステージを移動させる距離がΔXであった場合には、Yステージ212はΔy=ΔX×Ky、Zステージ213aはΔz=ΔX×K位置を変更する補正を行う。
次に、CPU301は、差分(xb−xa,yb−ya,zb−za,θxb−θxa,θyb−θya,θzb−θza)により移動ベクトルVを補正する(S37:移動ベクトル補正工程,移動ベクトル補正処理)。
CPU301は、HDD304に格納されている、補正された後段加工プログラム352を読み込む(S36)。
CPU301は、次のステップS39(後段加工工程)に先立ち、第2測定点Pm2から、補正した移動ベクトルの分、工具203がワークWに対して相対的に移動するよう移動ステージ202を動作させる(S38:移動工程,移動処理)。
次に、CPU301は、ステップS33及びS35にて補正した後段加工プログラム352に従って移動ステージ202を動作させる。これにより、工具203の加工可能範囲内に位置するワークWの後段被加工領域を後段加工開始点P2sから加工する(S39:後段加工工程,後段加工処理)。これにより、光学部品又は金型等の部品が製造される。このステップS39により、各ステージ211〜213aが駆動し、後段加工開始点から後段加工が行われる。この際、第2実施形態ではステップS35の補正を適用しているのでXステージ211のガイドの精度誤差を考慮しXステージに移動距離によりY方向及びZ方向にもステージで補正する動作も含まれる。以上で、前段被加工領域と後段被加工領域との繋ぎ加工が可能となる。
以上、第2実施形態によれば、第1実施形態に追加して移設前にステップS27の第1移動方向測定を行うことで、図10(b)に図示した第1相対移動ベクトル401を求めて、ガイドの形状誤差の影響を測定する。また移設後にステップS31の第2移動方向測定を行うことで、図10(d)に図示した第2相対移動ベクトル402を求めて、ガイドの形状誤差の影響を測定する。ここで得た第1及び第2相対ベクトル(401、402)を用いて後段加工する加工プログラムに対してステップS35の第2補正を行う。この補正を行うことで、前段加工と後段加工との繋ぎ目部分で加工面の傾きが不連続となる誤差の発生量を低減するものである。また、第1実施形態と同様の工程も行っているので、繋ぎ目におい段差や位置ずれも発生しない高精度な繋ぎ加工で部品の加工精度を向上することができる。
まず、図11(a)及び図11(b)は、比較例として本発明の第1及び第2実施形態を実施せずに前段加工と後段加工で平面加工を行った場合に発生する誤差形状の例を示す模式図である。図11(a)及び図11(b)の例共に第1実施形態も含めて第2実施形態を実施していないので、前段加工403と後段加工404との繋ぎ目405で、段差や未加工となる誤差が発生する。この際に発生する誤差の量は全長300mm(ミリメートル)を加工した場合で、形状誤差は、数μm(マイクロメートル)から場合より数mm(ミリメートル)の大きな誤差が発生する。
次に第2実施形態が問題とする誤差形状について説明する。図12(a)及び図12(b)は、本発明の第1実施形態の部品の製造方法を実施して平面を前段加工と後段加工で加工した場合に発生する誤差形状の例を示す模式図である。図12(a)及び図12(b)の二つの例共に第1実施形態の実行により繋ぎ目405の部分で段差等が発生しないため、加工面403,404は線で繋がっている。しかしながら平面を加工しているにもかかわらず、図12(a)の例では加工面の繋ぎ目405の部分を境に、サブマイクロラジアン〜数十マイクロラジアンの傾きの差が生じる。また図12(b)の例でも前段加工403と後段加工404の繋ぎ目405は線で繋がっているが、加工形状全体がふたこぶ状の山形状の誤差を生じ繋ぎ目近傍が幅数mm(ミリメートル)で数nm(ナノメートル)の谷形状で平面からずれた形状となっている。但し、両図とも模式図の為形状誤差を大きく見せているが、実際の誤差形状は加工面の全長が300mm(ミリメートル)に対し数十から数百nm(ナノメートル)で平面形状から誤差を図示している。また図12(a)及び図12(b)の例では前段加工と後段加工の繋ぎ目で生じる傾きの不連続を谷形状で示したが、山形状の不連続となる場合もある。
次に第2実施形態を実施した結果の誤差形状を模式図で説明する。図13(a)及び図13(b)は、本発明の第2実施形態の部品の製造方法を実施して平面を前段加工と後段加工で加工した場合に発生する誤差形状の例を示す模式図である。図13(a)及び図13(b)はそれぞれに図12(a)及び図12(b)の様な誤差が生じる加工条件に対して第2実施形態を実施した際、繋ぎ目における加工面403,404の不連続が低減されることを説明するものである。図13(a)及び図13(b)の例共に繋ぎ目部分で加工面の傾きの不連続が無くなったため、面は連続面とすることが可能となる。但し、図13(b)の例では光学面に大きなひと山の形状誤差が残差として残る。しかしながら、光学部品の加工形状の誤差成分としては、図12(a)及び図12(b)の例の様に部分的に急峻な変化を持つ形状誤差は問題となるが、逆にひと山の連続的な変化であれば許容誤差となる。
次に、第1実施形態を実施した場合でも段加工と後段加工の繋ぎ目で生じる傾きの不連続が生じる要因について説明する。図14(a)は、ワーク移設前のワークと工具の位置関係を示す模式図、図14(b)はワーク移設後のワークと工具との位置関係を示す模式図である。繋ぎ目で傾きの不連続が生じるのは、移設前後の前段加工と後段加工とで工具とワークと間で動く方向が異なるためである。工具とワークと間で動く方向が移設前と移設後とで異なる原因は、例えば図10におけるZステージ213aのような歪みや、図14(a)及び図14(b)に示すようにXステージ211のガイドを兼ねるZステージ213cのような歪みが原因と想定される。このような歪みが生じた場合に、図14(a)で示す移設前と図14(b)で示す移設後のステージ位置からXステージ211を同じ方向に同じ距離だけ移動させる場合を想定する。この場合、Xステージ211を同じ方向に移動させた場合でも、図14(a)の場合と図14(b)の場合とでは、工具とワークとの相対距離の変化が異なることは容易に想像できる。つまり図14(a)と図14(b)とではXステージ211のガイドの状態が異なるためにXステージ211は実際にはX方向にのみ動くわけではないからである。この様に移動方向が異なると、繋ぎ目で加工面の傾きが不連続となる。
更に歪みが発生する理由として再現性のある動きをするガイド製作時の製作誤差以外にもある。重量のあるステージの移動で更に繋ぎ加工ではるワークの移設があるために移設前後のステージ上での重心の変化生じて移設前後で影響度が異なる。更に大きなワークを加工するために長時間の加工時間が必要となるが、長時間での外気温の変化で数時間〜1日サイクルで加工装置本体やガイドへ影響し再現性にたよる補正は困難である。よって繋ぎ目での傾きの不連続となる要因を直接測定し補正する第2実施形態の効果は大きい。
ここで、第2実施形態では、前述したステップS27及びステップS31で相対移動ベクトルを測定するものである。測定する相対移動ベクトルは前段加工と後段加工の繋ぎ目部分の加工点に工具203がある状態に近い物を測定する必要がある。また、相対移動ベクトルを測定する基点となるステップS21及びステップS29〜ステップS31の測定においても、前段加工と後段加工の繋ぎ目部分の加工点に工具203に近い位置がよい。しかしながら、工具203をワークWに接触させた状態では測定が困難であるため、工具203がワークを加工しない程度に離れた距離で数十μm(マイクロメータ)〜数mm(ミリメータ)程度までが望ましい。また、離れる方向についても、相対移動ベクトルを測定するためにステップS26及びステップS30において移動機構を用いてワークWと工具203との相対位置を変更する方向は避けることが望ましい。繋ぎ目から離れずにステップS21及びステップS24の測定を行うこととするように、加工形状に合わせて前段加工と後段加工の範囲やワークW及びワーク架台205の加工装置上での配置を考慮することが望ましい。この様に配置することで更に高精度に繋ぎ目で生じる加工面の傾きの不連続となる誤差量を低減することが可能となる。
また、第2実施形態では、移動方向測定をXステージ211にのみを説明した。しかし装置の校正や、ワークWを移設で移動させる方向を変えた場合には、Xステージ211、Yステージ212、Zステージ213の可動方向の内1〜3軸方向まで複数の軸に対して行うことも可能である。
更に、第2実施形態ではステップS27とステップS31において測定する相対移動ベクトルで(θx、θy、θz)の姿勢の成分は精密加工機では影響度が少ないとして無視するとした。しかしながら姿勢の差が大きく且つ再現性があって、繋ぎ目での加工面の不連続となる成分に影響する場合には、この成分もステップS35の第2補正で後段加工プログラムへ補正することも可能である。ただし、この場合には補正する量に対してθを直接変更する回転軸を移動機構として加工装置に追加して補正を行う必要が生じる場合がある。
また、第1及び第2実施形態では、ワークWに対する工具203の相対的な位置及び姿勢の測定は、複数の変位計208によって基準器206を測定することによって行われる。精度の高い変位計208を利用できれば、加工対象形状に因らず高精度な測定が可能となる。また、変位計208として、例えば静電容量変位計等の、ナノメートルのオーダの精度を有する変位計を用いることで、ナノメートルのオーダで移動前と移動後の相対位置姿勢の差分も得ることも可能である。したがって、ワークWを移動する前のワークWと工具203との相対的な位置及び姿勢を、ワークWの移動後にナノメートルのオーダで再現させ、加工を再開することも可能となる。
また、上記製造方法により、部品として光学部品を製造することで、高精度な光学部品を得ることができる。また、上記製造方法により、部品として金型を製造することで、高精度な金型を得ることができ、この金型により高精度な部品を製造することができる。
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
上記第1及び第2実施形態では、ワークの被加工領域を2つに分けたが、3つ以上の箇所に被加工領域を分割し、分割した複数の被加工領域のうち互いに隣接する前段被加工領域と後段被加工領域について、同様の手順で繋ぎ加工を行うことも可能である。
また、上記第1及び第2実施形態では、X,Zステージでワーク(ワーク架台)を移動させ、Yステージで工具(工具架台)を移動させる場合について説明したが、これに限定するものではなく、工具がワークに対して相対的に移動できればよい。即ち、Xステージ、Yステージ及びZステージそれぞれの移動対象は、工具及びワークのうちいずれか一方であればよい。
また、上記第1及び第2実施形態では、移動機構がXYZステージで構成される場合について説明したが、これに限定するものではない。移動機構が更にC軸テーブル及びB軸テーブルを有する場合であってもよい。この場合であっても、C軸テーブル及びB軸テーブルそれぞれの移動対象は、工具及びワークのうちいずれか一方であればよい。更に、工具架台がスピンドルを有し、同スピンドルに固定した刃物である工具が回転してフライカット加工であっても本発明は適用可能である。
更に、上記第1及び第2実施形態では、変位計208が計6個搭載されており、6自由度の位置及び姿勢が測定可能となっている。しかしながら、加工目標形状によっては、繋ぎ加工において必ずしも6自由度の位置姿勢の測定が必須ではない場合がある。そのような場合には、必要に応じて変位計208の搭載個数を減じてもよい。
また、上記第1及び第2実施形態では、ワーク架台205のアタッチメント205Bに測定装置207が設けられ、工具架台204に基準器206が設けられている場合について説明したが、これに限定するものではない。測定や加工における都合によって逆の配置、即ちワーク架台205に基準器206を、工具架台204に測定装置207を設ける構成であってもよく、このような場合であっても、図4に示される手順を変更する必要はない。即ち、上記実施形態では、測定装置207は、ワーク架台205に固定されているので、工具203の位置及び姿勢を測定していることになるが、逆の配置の場合、測定装置207はワークWの位置及び姿勢を測定することとなる。つまり、測定装置207が工具架台204及びワーク架台205の一方に固定され、基準器206が工具架台204及びワーク架台205の他方に固定されることで、測定装置207は、ワークWと工具203との相対的な位置及び姿勢を測定することとなる。
また、ワークW或いは工具203の形状が許せば、変位計208或いは基準器206を直接取り付ける構成であってもよい。この場合、ワーク架台205や工具架台204の変形が、ワークWに対する工具203の相対的な位置及び姿勢を測定する上で誤差が介在するおそれが小さくなり、精度上有利である。
また、上記第1及び第2実施形態では、ワーク架台205(ワークW)を移設するのを作業者が行う場合について説明したが、これに限定するものではない。ワーク架台205(ワークW)及び工具架台204(工具203)が同一軸方向に移動する2つのステージにそれぞれ支持されている場合であってもよい。この場合、上述した移設工程では、CPU301がワーク側のステージの動作を制御してワークWを移設すればよい。