JP2016157049A - サブ波長構造素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】サブ波長構造素子10は、基板12の厚さ方向の一方に設けられ入射波の入射面となる第1の面F1と、基板12の厚さ方向の他方に設けられ入射波が出射する第2の面F2とを備え、第1の面F1または第2の面F2の少なくとも一方に入射波の波長より小さい周期を有するサブ波長構造SBを有する。サブ波長構造SB1は、基板12から立設され基板12から離れるに従って断面の幅が狭くなる複数のテーパー形状部14を備える。
【選択図】図1
Description
サブ波長構造内では、その有効屈折率がサブ波長構造を形成する材料の屈折率と空気の屈折率との間の値となるため、従来から知られている誘電体膜を用いた反射防止膜(ARコート)のように機能する。
サブ波長構造は、ARコートの形成が困難な高周波帯(ミリ波やテラヘルツ波など)の電磁波の反射防止に特に有効である。また、誘電体膜による余分な透過損失がない、単一の材料でARコートを実現できる、などの利点がある。
図10は、従来技術にかかるサブ波長構造SB4の構成を模式的に示す断面図である。
従来技術にかかるサブ波長構造SB4は、基板42の表面に均等幅(W44)の溝を形成し、断面の幅W42が均一な等幅形状部44によって形成されている。
図10に示すサブ波長構造SB4の等幅形状部44の幅W42、等幅形状部44間の間隙幅をW44、等幅形状部44の高さをH42とする。
図11のグラフは等幅形状部44の幅W42を210μm、等幅形状部44間の間隙幅W44を65μm、等幅形状部44の高さH42を190μmとしており、実線はシミュレーション結果、点線は実際の測定結果を示す。
また、材料は酸化アルミニウム(アルミナ)を使用した。
図10に示すように、サブ波長構造SB4において透過率90%以上が継続する周波数帯、すなわち良好な反射防止効果を得られる周波数帯は、175GHz〜255GHz程度となっている。
すなわち、従来技術にかかるサブ波長構造には、反射防止効果を得られる周波数帯に関して改善の余地がある。
請求項2の発明にかかるサブ波長構造素子は、前記サブ波長構造は、前記テーパー形状部が最大幅となる底部と前記基板との間に設けられ、断面の幅が均一な等幅形状部を更に備える、ことを特徴とする。
請求項3の発明にかかるサブ波長構造素子は、前記テーパー形状部が最小幅となる先部は平坦面で形成されている、ことを特徴とする。
請求項4の発明にかかるサブ波長構造素子は、前記等幅形状部の幅は、前記テーパー形状部の最大幅以上の寸法で形成されている、ことを特徴とする。
請求項5の発明にかかるサブ波長構造素子は、前記入射波はテラヘルツ波帯の周波数であり、前記サブ波長構造が形成されている領域が、シリコンまたは酸化アルミニウムで形成されている、ことを特徴とする。
請求項2の発明によれば、テーパー形状部の効果により広帯域特性を維持しつつ、サブ波長構造の最深部が等幅形状部間の均一幅の間隙となるので、サブ波長構造の最深部を鋭角で形成する場合と比較して成形性が向上し、サブ波長構造素子の製造効率を向上させることができる。
請求項3の発明によれば、テーパー形状部の先部が平坦面を形成しているので、先部を鋭角で形成する場合と比較して成形性が向上し、サブ波長構造素子の製造効率を向上させることができる。
請求項4の発明によれば、等幅形状部の幅がテーパー形状部の最大幅以上の寸法で形成されているので、テーパー形状部を等幅形状部上に安定して配置することができる。
請求項5の発明によれば、サブ波長構造が入射波に対する透過損失が低い酸化アルミニウムまたはシリコンで形成されているので、サブ波長構造素子を透過することによる入射波への影響を抑制することができる。
図1は、実施の形態1にかかるサブ波長構造素子10の構造を示す説明図であり、より詳細には、板状のサブ波長構造素子10を厚さ方向で切断した断面図である。
実施の形態にかかるサブ波長構造素子10は、基板12の厚さ方向の一方に設けられ入射波L1の入射面となる第1の面F1と、基板12の厚さ方向の他方に設けられ第1の面F1から入射した入射波が出射波L2として出射する第2の面F2とを備え、第1の面F1に入射波L1の波長より小さい周期を有するサブ波長構造SB1を有する。
サブ波長構造素子10のうち、少なくともサブ波長構造SB1が形成されている領域は、例えばテラヘルツ波に対する透過損失の低い酸化アルミニウム(アルミナ)またはシリコンで形成されている。なお、サブ波長構造素子10の材料は、これに限らず、従来公知の様々な素材を使用可能である。
また、図1では電磁波の入射面である第1の面F1にサブ波長構造SB1を形成した場合を図示しているが、出射面である第2の面F2、または第1の面F1および第2の2面F2の両面にサブ波長構造SB1を形成するようにしてもよい。
サブ波長構造素子10は、具体的には例えばテラヘルツ波等の高周波用レンズである。
すなわち、テーパー形状部14の幅W12のうち、テーパー形状部14の第1の面側F1の端部(先部1402)の幅をW12a、テーパー形状部14が最大幅となる底部1404の幅をW12bとすると、W12a<W12bとなっている。
本実施の形態では、特に先部1402が鋭角を形成し、先部1402の幅W12aが略0となっている。
なお、以下「幅」とは、板状のサブ波長構造素子10の表面が延在する方向に沿った長さとする。
すなわち、テーパー形状部14間の間隙幅W14のうち、テーパー形状部14の先部1402間の間隙幅をW14a、底部1404間の間隙幅をW14bとすると、W14a>W14bとなっている。
本実施の形態では、特に底部1404間の間隙が鋭角を形成し、底部1404間の間隙幅W14bが略0となっている。
なお、テーパー形状部14の先部1402間の間隙幅W14aが、サブ波長構造SB1の周期となる。
また、テーパー形状部14は、基板12に対して直交する方向に延在する高さH16を有している。
また、テーパー形状部14の表面1406は、滑らかな面で形成されている。滑らかな面とは、表面に微細な凹凸がない面である。
テーパー形状部14を高さと直交する平面で切断した形状が多角形である場合、滑らかな面は平面で形成され、円形である場合は、滑らかな面は円錐面で形成される。
ダイシングブレードBL1は、先部5202に近づくにつれて幅が狭くなるテーパー刃52である。このダイシングブレードBL1でテーパー形状部14の表面1406を削り出し、隣接するテーパー形状部14間の間隙を成形する。
テーパー形状部14の先部1402を鋭角とするため、ダイシングブレードBL1の位置合わせや切断作業には細心の注意を払う必要がある。
なお、サブ波長構造SB1の形成は、これに限らず従来公知の様々な形成方法を利用可能である。例えば、基材がシリコンである場合には、エッチングによりサブ波長構造SB1を形成するなどの方法が取り得る。
図2は、実施の形態2にかかるサブ波長構造素子20の構造を示す説明図である。
実施の形態2にかかるサブ波長構造素子20は、実施の形態1と同様のテーパー形状部24に加えて、テーパー形状部24が最大幅となる底部2404と基板22との間に、断面の幅W26が均一な等幅形状部26を更に備える。
等幅形状部26は、基板22に対して直交する方向に延在する高さH24を有している。
また、等幅形状部26の表面2602は、滑らかな面で形成されている。滑らかな面とは、表面に微細な凹凸がない面である。
等幅形状部26を高さと直交する平面で切断した形状が多角形である場合、滑らかな面は平面で形成され、円形である場合は、滑らかな面は円筒面で形成される。
また、テーパー形状部24と等幅形状部26とは同軸上に設けられている。
また、隣り合う等幅形状部26間の間隙幅W28も均一となっており、サブ波長構造SB2の最深部が等幅形状部26間の均一幅の間隙となるので、サブ波長構造SB1のように最深部を鋭角で形成する場合と比較して、成形性が向上し、サブ波長構造素子20の製造効率を向上させることができる。
なお、図2では電磁波の入射面である第1の面F1にサブ波長構造SB1を形成した場合を図示しているが、出射面である第2の面F2、または第1の面F1および第2の面F2の両面にサブ波長構造SB1を形成するようにしてもよい。
なお、ダイシングブレードBL2は、先部5402に近づくにつれて幅が狭くなるテーパー刃54であるが、先部5402が上記所定の曲率を有する曲面となっている。すなわち、ダイシングブレードBL2はダイシングブレードBL1の先部がなまった状態であると言える。
また、サブ波長構造SB2においては、テーパー形状部24の先部2402に平坦面を形成するため、ダイシングブレードBL1またはBL2で切断する位置同士の距離がサブ波長構造SB1よりも若干長くなる。
また、図8Dに示すように、先部5702に近づくにつれて幅が狭くなるテーパー刃57と、テーパー刃57の先部5702から突出し、均一な幅を有する等幅部58とを有するダイシングブレードBL4によって図示しない基材の表面(第1の面F1側)を切断してサブ波長構造SB2を形成することも可能である。
なお、サブ波長構造SB2の形成は、これに限らず従来公知の様々な形成方法を利用可能である。例えば、基材がシリコンである場合には、エッチングによりサブ波長構造SB1を形成するなどの方法が取り得る。
つぎに、実施の形態1にかかるサブ波長構造SB1および実施の形態2にかかるサブ波長構造SB2の特性について説明する。
比較のため、図9に示す他のサブ波長構造SB3の特性についても検討した。
なお、図4から図7に示すグラフは、各サブ波長構造SB1〜SB3の特性のシミュレーション結果を示しており、第1の面F1および第2の面F2の両面にサブ波長構造SB1〜SB3を形成したシミュレーションモデルを用いている。また、特に断りがある場合を除いて、各サブ波長構造SB1〜SB3の材料は、酸化アルミニウム(アルミナ)であるものとした。
上述のように、ダイシングブレードBL2は、先部5402に近づくにつれて幅が狭くなるテーパー刃54であるが、先部5402が上記曲率半径Rに対応する曲率を有する曲面となっている。
すなわち、サブ波長構造SB3は、図1に示すサブ波長構造SB1の形成時にダイシングブレードBL2の先部のなまりによって隣り合うテーパー形状部34の底部3404間が曲率半径Rを有する曲面となるとともに、切断位置のずれによりテーパー形状部34の先部3402が平坦面となったサブ波長構造SB1の不良状態ともいえる。
また、図2に示すサブ波長構造SB2は、上記サブ波長構造SB3に対して、等幅刃56のダイシングブレードBL3で等幅溝を形成した状態ともいえる。
サブ波長構造SB1は、テーパー形状部14の先部1402の幅W12aを略0μm(鋭角)、底部1404の幅W12bを265μm、先部1402間の間隙幅W14a(サブ波長構造SB1の周期)を265μm、底部1404間の間隙幅W14b略0μm(鋭角)、テーパー形状部14の高さH16を700μmとした。
また、サブ波長構造SB2は、テーパー形状部24の先部2402の幅W22aを20μm、底部2404の幅W22bを215μm、先部2402間の間隙幅W24a(サブ波長構造SB2の周期)を265μm、底部2404間の間隙幅W24bを50μm、等幅形状部26の幅W26を235μm、等幅形状部26間の間隙幅W28を30μm、テーパー形状部24の高さH22を550μm、等幅形状部26の高さH24を150μmとした。
また、サブ波長構造SB3は、テーパー形状部34の先部3402の幅W32aを20μm、底部3404の幅W32bを略265μm、先部3402間の間隙幅W34aを265μm、底部3404間の間隙幅W34bを略0μm(曲率半径Rの曲面)、底部3404間の曲率半径Rを15μm、高さH36を700μmとした。
すなわち、サブ波長構造SB1〜SB3の基本構造は、サブ波長構造の周期(先部間の間隙幅)およびサブ波長構造の基板からの高さが、それぞれ265μm、700μmで統一されている。
図3において、縦軸は有効屈折率nであり、横軸はサブ波長構造SB1〜SB3の先部からの距離である。
図3に示すように、サブ波長構造SB1〜SB3の先部からの距離が0μmの位置はサブ波長構造SB1〜SB3が形成されていない空気層と同等のため、有効屈折率nは空気の屈折率であるn=1となる。また、サブ波長構造SB1〜SB3の先部からの距離が700μmの位置は、基板12,22,32が位置し、有効屈折率nは酸化アルミニウム(アルミナ、基板の素材)の屈折率であるn=3.1となる。
この間、各サブ波長構造SB1〜SB3の有効屈折率は連続的に変化する。なお、サブ波長構造SB2については、テーパー形状部24に対応する領域では有効屈折率が連続的に変化するが、等幅形状部26では一定値となる。
図4において、縦軸は透過率[%]であり、横軸は入射波L1の周波数[GHz]である。
サブ波長構造SB1について検討すると、透過率が90%を超える領域が周波数125GHz〜350GHzの帯域に形成され、この帯域において良好な反射防止効果が得られることがわかる。
これは、テーパー形状部14で連続的に有効屈折率が変化することにより、ARコートにおける多層膜と同等の効果が得られるためである。
これは、図3に示すように、サブ波長構造SB2では有効屈折率の変化がサブ波長構造SB1と近い値をとるためである。
すなわち、サブ波長構造素子にサブ波長構造SB1およびサブ波長構造SB2のようなテーパー形状部を形成することによって、サブ波長構造部分における有効屈折率が連続的に変化して、広い周波数帯において反射防止効果が得られるようになる。また、サブ波長構造SB2では等幅形状部を備えることによりサブ波長構造SB1に比べ成形性が向上することに加え、有効屈折率の変化をサブ波長構造SB1に近づけることでサブ波長構造SB1と遜色ない広帯域透過率特性が得られる。
図5は、サブ波長構造SB1およびSB3の透過率特性(シミュレーション)を示すグラフである。
サブ波長構造SB3では、透過率が連続的に90%を超え始める周波数が132GHz前後になるとともに、これより高い周波数においても断続的に透過率が90%を下回る領域が存在する。
すなわち、サブ波長構造SB3のように、単にテーパー形状部34の先部3402を平面で形成したり、テーパー形状部34の底部3404間の間隙を曲面で形成した場合、図3に示す通り有効屈折率の変化に差が生じるため、サブ波長構造SB1よりも全体として透過率が低くなり、反射防止性能の向上は図ることができない。
実線は酸化アルミニウムでサブ波長構造SB2を形成した場合の透過率特性であり、図4の実線と同じグラフである。また、一点破線はシリコンでサブ波長構造SB2を形成した場合の透過率特性である。
シリコンで形成したサブ波長構造SB2は、回折の影響により340GHz前後で透過率が低下する領域があるものの、105GHz前後から連続的に透過率が90%を超えており、良好な反射防止効果が得られることがわかる。
特に、周波数119GHz以上322GHz以下の領域では、酸化アルミニウムおよびシリコンの両方で高い透過率を得られる。具体的には、この周波数帯では酸化アルミニウムで透過率93%を、シリコンで透過率94%を、それぞれ超える高い透過率を得られる。
図7の縦軸は反射損失(リターンロス)[dB]を示し、横軸は入射波の周波数[GHz]を示す。また、実線は酸化アルミニウムで形成したサブ波長構造SB2、一点破線はシリコンで形成したサブ波長構造SB2の特性を示す。
酸化アルミニウムおよびシリコンのいずれも、周波数120GHz前後以上の帯域で反射損失が低減する傾向があり、良好な透過特性(反射防止効果)を得られることがわかる。
例えば、本発明のサブ波長構造SB1,SB2を誘電損失が大きい誘電体上に形成することにより、入射波の表面反射がなくなり、誘電体内で終端される。すなわち、誘電体にサブ波長構造SB1,SB2を形成したサブ波長構造素子10,20を電磁波吸収体として用いることができる。
また、サブ波長構造SB1,SB2を誘電体上に形成した場合、波長λがサブ波長構造SB1,SB2の周期p×誘電体の屈折率nより小さくなる電磁波では、回折によりエネルギーを失う。よって、誘電体にサブ波長構造SB1,SB2を形成したサブ波長構造素子10,20を、高周波を遮断するローパスフィルタとして用いることができる。
また、サブ波長構造SB2のように等幅形状部26を設けた場合、サブ波長構造SB2の最深部は等幅形状部26間の均一幅の間隙となるので、最深部を鋭角で形成する場合と比較して、成形性が向上し、サブ波長構造素子の製造効率を向上させることができる。更に、等幅形状部26を設けた場合でも、有効屈折率の変化をサブ波長構造素子10と近い値にすることで、サブ波長構造素子10と遜色ない広帯域透過率特性を得ることができる。
また、サブ波長構造SB2においてテーパー形状部24の先部2402を平坦面に形成するようにすれば、先部2402を鋭角で形成する場合と比較して成形性が向上し、サブ波長構造素子の製造効率を向上させることができる。
また、サブ波長構造SB2においてテーパー形状部24の底部の幅が等幅形状部26の幅以下とすれば、テーパー形状部24を等幅形状部26上に安定して配置することができる。
また、サブ波長構造素子10,20を入射波L1に対する透過損失が低い酸化アルミニウムまたはシリコンで形成されているので、サブ波長構造素子10を透過することによる入射波への影響を抑制することができる。
Claims (5)
- 基板の厚さ方向の一方に設けられ入射波の入射面となる第1の面と、
前記基板の厚さ方向の他方に設けられ前記入射波が出射する第2の面とを備え、
前記第1の面または前記2の面の少なくとも一方に前記入射波の波長より小さい周期を有するサブ波長構造を有するサブ波長構造素子であって、
前記サブ波長構造は、前記基板から立設され前記基板から離れるに従って断面の幅が狭くなる複数のテーパー形状部を備える、
ことを特徴とするサブ波長構造素子。 - 前記サブ波長構造は、
前記テーパー形状部が最大幅となる底部と前記基板との間に設けられ、断面の幅が均一な等幅形状部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1記載のサブ波長構造素子。 - 前記テーパー形状部が最小幅となる先部は平坦面で形成されている、
ことを特徴とする請求項2記載のサブ波長構造素子。 - 前記等幅形状部の幅は、前記テーパー形状部の最大幅以上の寸法で形成されている、
ことを特徴とする請求項2または3記載のサブ波長構造素子。 - 前記入射波はテラヘルツ波帯の周波数であり、
前記サブ波長構造が形成されている領域が、シリコンまたは酸化アルミニウムで形成されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のサブ波長構造素子。
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