以下、図面を参照しながら、実施形態に係る光子計数型X線検出器及び光子計数型X線CT装置について説明する。なお、以下の実施形態では、重複する内容についての説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
まず、図1及び図2を参照しながら、第1の実施形態に係る光子計数型X線CT装置1の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る光子計数型X線CT装置の構成例を示す図である。図2は、第1の実施形態に係る光子計数型X線検出器の一例を示す図である。光子計数型X線CT装置1は、図1に示すように、架台装置2と、寝台装置20と、画像処理装置8とを備える。なお、光子計数型X線CT装置1の構成は、下記の構成に限定されるものではない。
架台装置2は、被検体PにX線を照射して後述する投影データを収集する。架台装置2は、図1に示すように、架台制御部3と、X線発生装置4と、光子計数型X線検出器5と、データ収集部6と、回転フレーム7とを備える。
架台制御部3は、後述するスキャン制御部83による制御のもと、X線発生装置4及び回転フレーム7の動作を制御する。架台制御部3は、高電圧発生部31と、コリメータ調整部32と、架台駆動部33とを備える。高電圧発生部31は、後述するX線管球41に管電圧を供給する。コリメータ調整部32は、コリメータ43の開口度及び位置を調整することにより、X線発生装置4が被検体Pに照射するX線の照射範囲を調整する。例えば、コリメータ調整部32は、コリメータ43の開口度を調整することにより、X線の照射範囲、すなわちX線のファン角及びコーン角を調整する。架台駆動部33は、回転フレーム7を回転駆動させることにより、被検体Pを中心とした円軌道上でX線発生装置4及び光子計数型X線検出器5を旋回させる。
X線発生装置4は、被検体Pに照射するX線を発生させる。X線発生装置4は、X線管球41と、ウェッジ42と、コリメータ43とを備える。X線管球41は、高電圧発生部31が供給する管電圧により、被検体Pに照射するビーム状のX線を発生させる。X線管球41は、被検体Pの体軸方向に沿った広がりを有するビーム状のX線を発生させる真空管である。このビーム状のX線は、コーンビームとも呼ばれる。X線管球41は、回転フレーム7の回転に伴って、コーンビームを被検体Pに対して照射する。ウェッジ42は、被検体Pに照射するX線の量を調節するためのX線フィルタである。コリメータ43は、コリメータ調整部32の制御により、ウェッジ42によってX線の量が調節されたX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。
光子計数型X線検出器5は、図2に示すように、複数の検出素子51が第1方向及び第1方向と交差する第2方向に規則的に配置された多列検出器である。例えば、図2において、第1方向はチャンネル方向、第2方向はスライス方向である。ここで、チャンネル方向は回転フレーム7の円周方向、スライス方向は被検体Pの体軸方向である。検出素子51は、入射したX線光子に基づく応答波形を出力する。具体的には、検出素子51は、入射したX線光子を検出し、応答波形を出力する。なお、応答波形は、例えば、後述する検出素子51が出力する電圧又は電流のAD値の時系列データである。また、以下の説明では、検出とは、X線光子が検出素子51に入射してから検出素子51が応答波形を出力するまでを意味するものとする。
検出素子51は、例えば、シンチレータ及びフォトダイオードを含む。また、検出素子51は、後述する検出回路に接続されている。検出素子51は、入射したX線の光子一つ一つをシンチレータにより光に変換し、この光をフォトダイオードにより電荷に変換する。この電荷は、後述する検出回路へ送られる。検出素子51としてシンチレータを備えている場合、光子計数型X線検出器5は、間接変換型の検出器と呼ばれる。
また、光子計数型X線検出器5は、直接変換型の検出器でもよい。直接変換型の検出器は、検出素子51としてテルル化カドミウム(CdTe)等の半導体素子を備える。直接変換型の検出器は、検出素子51に入射したX線光子を半導体素子により直接電荷に変換する。検出素子51から出力される電荷は、X線光子の入射によって発生する電子が正電位の集電電極に向かって走行すること及びX線光子の入射によって発生する正孔が負電位の集電電極に向かって走行することの少なくとも一方で出力される。この電荷は、後述する検出回路へ送られる。
検出素子51には、後述する検出回路が接続されている。検出回路は、算出部と、計数部と、観測部と、推定部とを備える。算出部は、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象を発生させたX線光子のエネルギーを算出する。計数部は、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象を発生させたX線光子の数(計数値)を計数する。或いは、計数部は、算出部が算出した結果に基づいて、X線管球41が照射するX線のエネルギー分布上に設定された1つ又は複数のエネルギー帯ごとに、検出素子へ所定の期間内に入射したX線光子の数(計数値)を計数する。ここで、計数値として、例えば、単位時間あたりの数を示す計数率を用いる。観測部は、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象を観測する。或いは、観測部は、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象を観測する。推定部は、観測部が観測した事象の所定の期間内における発生率を算出し、発生率に基づいて検出素子へ所定の期間内に入射したX線光子の数(推定値)を推定する。ここで、推定値として、例えば、単位時間あたりの数を示す入射率を用いる。なお、所定の期間とは、例えば、CT画像を生成するための投影データそれぞれが収集される期間である。検出回路の詳細及び投影データについては後述する。また、事象には、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象及び応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の二つがある。
データ収集部6は、図1に示すように、計数データ収集部61と、推定データ収集部62とを備える。計数データ収集部61は、計数部が出力するデータを収集し、このデータに基づいて投影データを生成する。推定データ収集部62は、推定部が出力するデータを収集し、このデータに基づいて投影データを生成する。計数データ収集部61が生成した投影データ及び推定データ収集部62が生成した投影データは、後述する前処理部84へ送られる。
回転フレーム7は、X線発生装置4と光子計数型X線検出器5とを被検体Pを挟んで対向するように支持する円環状のフレームである。回転フレーム7は、架台駆動部33によって駆動され、被検体Pを中心とした円軌道上を高速で回転する。
寝台装置20は、寝台駆動装置21と、天板22とを備える。寝台駆動装置21は、後述するスキャン制御部83による制御のもと、被検体Pが載置された天板22を体軸方向へ移動させることにより、被検体Pを回転フレーム7内で移動させる。なお、架台装置2は、例えば、天板22を移動させながら回転フレーム7を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンするヘリカルスキャンを実行する。或いは、架台装置2は、天板22を移動させた後に被検体Pの位置を固定したままで回転フレーム7を回転させて被検体Pをスキャンするコンベンショナルスキャンを実行する。或いは、架台装置2は、天板22の位置を一定間隔で移動させてコンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行うステップアンドシュート方式を実行する。
画像処理装置8は、ユーザによる光子計数型X線CT装置1の操作を受け付ける。また、画像処理装置8は、架台装置2によって収集された投影データに再構成等の処理を施す。画像処理装置8は、入力部81と、表示部82と、スキャン制御部83と、前処理部84と、データ記憶部85と、画像生成部86と、画像記憶部87と、制御部88とを備える。
入力部81は、光子計数型X線CT装置1のユーザが各種指示や各種設定の入力に用いるマウス、キーボード等である。入力部81は、ユーザから受け付けた指示や設定の情報を、制御部88に転送する。表示部82は、ユーザによって参照されるモニタである。表示部82には、各種画像処理の結果、入力部81を介してユーザから各種設定を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等が表示される。
スキャン制御部83は、制御部88による制御のもと、架台制御部3、データ収集部6及び寝台駆動装置21の動作を制御する。具体的には、スキャン制御部83は、架台制御部3を制御することにより、光子計数CT撮影を行う際に、回転フレーム7を回転させ、X線管球41からX線を照射させ、コリメータ43の開口度及び位置の調整を行う。また、スキャン制御部83は、制御部88による制御のもと、データ収集部6を制御する。また、スキャン制御部83は、制御部88による制御のもと、光子計数CT撮影を行う際、寝台駆動装置21を制御することにより、天板22を移動させる。
前処理部84は、データ収集部6によって生成された投影データ、すなわち計数データ収集部61が生成した投影データ及び推定データ収集部62が生成した投影データに対して、対数変換、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正、散乱線補正等の補正処理を施し、これをデータ記憶部85に格納する。なお、前処理部84により補正処理が施された投影データは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。データ記憶部85は、生データ、すなわち前処理部84によって補正処理が施された投影データを記憶する。
画像生成部86は、データ記憶部85に記憶された投影データを再構成し、CT画像を生成する。すなわち、画像生成部86は、計数データ収集部61が生成した投影データ及び推定データ収集部62が生成した投影データの少なくとも一方に基づいてCT画像を生成する。再構成方法としては、種々の方法があり、例えば、逆投影処理が挙げられる。また、逆投影処理としては、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法が挙げられる。なお、画像生成部86は、例えば、逐次近似法により再構成処理を行っても良い。また、画像生成部86は、計数データ収集部61が生成した投影データに基づいて、物質弁別によって弁別した物質ごとのCT画像を生成することもできる。画像記憶部87は、画像生成部86が生成したCT画像を記憶する。
制御部88は、架台装置2、寝台装置20及び画像処理装置8の動作を制御することによって、光子計数型X線CT装置1を制御する。制御部88は、スキャン制御部83を制御してスキャンを実行させ、架台装置2から投影データを収集する。制御部88は、前処理部84を制御して投影データに上述した補正処理を施す。制御部88は、データ記憶部85が記憶する投影データや画像記憶部87が記憶する画像データを表示部82に表示するように制御する。
なお、上述したデータ記憶部85及び画像記憶部87は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等で実現することができる。また、上述したスキャン制御部83、前処理部84、画像生成部86及び制御部88は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路又はCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路で実現することができる。
次に、図3を参照しながら、従来の光子計数型X線CT装置が備える検出回路520について説明する。図3は、従来の光子計数型X線CT装置が備える検出回路の一例を示す図である。
検出回路520は、図3に示すように、波形整形部5210と、出力部5220と、除去部5230と、算出部5240と、計数部5250とを備える。ここで、波形整形部5210は、例えば、波形整形アンプである。また、出力部5220は、例えば、比較器である。
まず、検出回路520の構成について説明する。波形整形部5210の入力端子は、検出素子51に接続されている。波形整形部5210の出力端子は、出力部5220の入力端子の一つに接続されている。除去部5230は、出力部5220の入力端子の一つに接続されている。出力部5220の出力端子は、算出部5240の入力端子に接続されている。算出部5240の出力端子は、計数部5250の入力端子に接続されている。計数部5250の出力端子は、計数データ収集部61に接続されている。計数部5250は、X線管球41が照射するX線のエネルギー分布上に設定された各エネルギー帯に属するエネルギーを有するX線光子のみを計数するカウンタを1つ又は複数備える。なお、カウンタが1つの場合には、計数するエネルギー帯が1つ設定され、設定されたエネルギー帯に属するエネルギーを有する全X線光子を計数する。設定される1つのエネルギー帯は、0以上の全エネルギーでも良いし、ノイズ除去等の目的に応じた特定の1つのエネルギー範囲であっても良い。
次に、検出回路520の動作について説明する。波形整形部5210は、ノイズの増加を抑えつつ、検出素子51が出力した応答波形を必要なレベルまで増幅する。除去部5230は、出力部5220に所定の電圧を供給し、検出素子51が出力する応答波形に含まれるノイズを除去するための閾値を設定する。出力部5220は、検出素子51に入射したX線光子により発生した応答波形のうち、除去部5230により設定された閾値を上回る応答波形のみを算出部5240へ出力する。算出部5240は、出力部5220が出力した応答波形の波高、波形面積等を算出する。計数部5250は、算出部5240が算出した波高、波形面積等をX線光子のエネルギーとみなし、X線管球41が照射するX線のエネルギー分布上に設定されたエネルギー帯ごとにX線光子を計数する。計数部5250は、計数した結果を計数データ収集部61へ出力する。
次に、図4及び図5を参照しながら、検出素子51に入射するX線光子の数に対する検出回路520の振る舞いについて説明する。
図4は、検出素子によって出力され、波形整形部によって処理された応答波形の一例を示す図である。図4(a)、図4(b)及び図4(c)は、いずれも縦軸が電圧又は電流、横軸が時間である。図4において、出力部5220が出力する応答波形は、実線で示されており、入射したX線光子に基づく応答波形のうち他の応答波形と重複しているものは、点線で示されている。また、応答波形に対する閾値は、直線Thにより示されている。なお、以下の説明では、応答波形の縦軸は、電圧とする。
図5は、入射率と計数率との関係を示す図である。図5は、縦軸が計数部5250が計数した計数率、横軸が入射率である。図5の点線Dは、計数部5250が計数した計数率が、入射率に比例すると仮定した場合における両者の関係を表している。図5の実線Sは、入射率に対する計数部5250が計数した計数率の振る舞いを表している。
図4(a)は、所定の期間内に入射したX線光子の数(例えば、入射率)が少ない場合に、検出素子51により出力され、波形整形部5210により処理された応答波形Waを示している。これは、例えば、図5において直線Aで示される場合に相当する。この場合、検出素子51にX線光子が入射する時間間隔は、検出素子51の応答時間より長くなる確率が高い。このため、パルスパイルアップが発生する確率は低くなる。
応答波形Waは、5個の波形、すなわち波形Pa1、波形Pa2、波形Pa3、波形Pa4及び波形Pa5を含んでいる。これらの応答波形は、いずれも直線Thにより示された応答波形に対する閾値を上回った後、この閾値を下回っている。つまり、これらの波形は、互いに重複していない。したがって、計数部5250は、応答波形Waに含まれる波形の数、すなわち検出素子51に入射したX線光子の数(例えば、入射率)をほぼ正確に計数することができる。これは、図5に示した直線A上において、計数部5250が計数した計数率と入射率に比例すると仮定した場合の計数率との差Daがゼロに近いことに相当する。
図4(b)は、所定の期間内に入射したX線光子の数が多い場合(例えば、入射率が大きい場合)に、検出素子51により出力され、波形整形部5210により処理された応答波形Wbを示している。これは、例えば、図5において直線Bで示される場合に相当する。この場合、検出素子51にX線光子が入射する時間間隔は、検出素子51の応答時間より短くなる確率が高い。このため、パルスパイルアップが発生する確率は高くなる。
応答波形Wbは、9個の波形、すなわち波形Pb1、波形Pb2、波形Pb3、…、波形Pb8及び波形Pb9を含んでいる。波形Pb1、波形Pb2、波形Pb3、波形Pb6及び波形Pb7は、いずれも直線Thにより示された応答波形に対する閾値を上回った後、この閾値を下回っている。つまり、これらの応答波形は、互いに重複していない。このため、計数部5250は、これらの波形を個々に計数することができる。
ところが、波形Pb4と波形Pb5は、互いに重複し、直線Thにより示された応答波形に対する閾値を上回った後、この閾値を下回る一つの波形P1を形成している。このため、計数部5250は、波形Pb4と波形Pb5を一つの波形として計数してしまう。また、波形Pb8と波形Pb9は、互いに重複し、直線Thにより示された応答波形に対する閾値を上回った後、この閾値を下回る一つの波形P2を形成している。このため、計数部5250は、波形Pb8と波形Pb9を一つの波形として計数してしまう。したがって、計数部5250は、応答波形Wbに含まれる波形の数、すなわち検出素子51に入射したX線光子の数(例えば、入射率)に応じたX線光子の数(計数率)を正確に計数することができない。これは、図5に示した直線B上において、計数部5250が計数した計数率と入射率に比例すると仮定した場合の計数率との差Dbが大きいことに相当する。図4(b)に示した応答波形Wbは、波形を9個含んでいる。しかし、計数部5250は、パルスパイルアップのため、波形の数を7個と計数してしまう。
図4(c)は、所定の期間内に入射したX線光子の数(例えば、入射率)が図4(b)に示した場合より多い場合に、検出素子51により出力され、波形整形部5210により処理された応答波形Wcを示している。これは、例えば、図5において直線Cで示される場合に相当する。この場合、検出素子51にX線光子が入射する時間間隔は、検出素子51の応答時間より短くなる確率が図4(b)に示した場合より高い。このため、パルスパイルアップが発生する確率は、図4(b)に示した場合より高くなる。
応答波形Wcは、14個の波形、すなわち波形Pc1、波形Pc2、波形Pc3、…、波形Pc13及び波形Pc14を含んでいる。波形Pc1、波形Pc2及び波形Pc3は、互いに重複し、直線Thにより示された応答波形に対する閾値を上回った後、この閾値を下回る一つの波形P10を形成している。このため、計数部5250は、波形Pc1、波形Pc2及び波形Pc3を一つの波形として計数してしまう。同様に、波形Pc4、波形Pc5及び波形Pc6も、互いに重複し、直線Thにより示された応答波形に対する閾値を上回った後、この閾値を下回る一つの波形P20を形成している。このため、計数部5250は、波形Pc4、波形Pc5及び波形Pc6を一つの波形として計数してしまう。さらに、波形Pc7、波形Pc8、…、波形Pc13及び波形Pc14も、隣接する波形と重複し、直線Thにより示された応答波形に対する閾値を上回った後、この閾値を下回る一つの波形P30を形成している。このため、計数部5250は、波形Pc7、波形Pc8、…、波形Pc13及び波形Pc14を一つの波形として計数してしまう。
したがって、計数部5250は、応答波形Wcに含まれる波形の数、すなわち検出素子51に入射したX線光子の数(例えば、入射率)を正確に計数することができない。これは、図5に示した直線C上において、計数部5250が計数した計数率と入射率に比例すると仮定した場合の計数率との差Dcが、上述した差Dbより大きいことに相当する。図4(c)に示した応答波形Wcは、波形を14個含んでいる。しかし、計数部5250は、パルスパイルアップのため、波形の数を3個と計数してしまう。
図4及び図5を用いて説明した現象は、計数部5250によるエネルギー帯ごとの計数率及びこれらを全てのエネルギー帯又は複数のエネルギー帯に亘って合算した値のいずれについても成立する。
上記の説明より、計数部5250によるエネルギー帯ごとの計数率及びこれらを全てのエネルギー帯又は複数のエネルギー帯に亘って合算した値は、検出素子51に入射したX線光子の数が増加するにつれて点線D上の値から離れていくことが分かる。したがって、計数部5250は、検出素子51に入射したX線光子の数が多い場合、X線光子を正確に計数することができないことがある。
次に、図6〜図11を参照しながら、第1の実施形態に係る光子計数型X線CT装置1が備える検出回路について説明する。図6は、第1の実施形態に係る光子計数型X線CT装置が備える検出回路の一例を示す図である。図7は、図6に示した検出回路が備える観測部の一例を示す図である。図8は、検出素子の応答時間と応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率との関係を示す図である。図9は、入射率と応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率との関係を示す図である。図10は、応答波形に対する閾値と応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の数との関係を示す図である。図11は、推定部による推定結果又は計数部による計数結果と、信頼度との関係を示す図である。
検出回路52aは、図6に示すように、波形整形部521、出力部522、除去部523、算出部524、計数部525、処理部526a及び推定部527aを備える。ここで、波形整形部521は、例えば、波形整形アンプである。また、出力部522は、例えば、比較器である。
まず、検出回路52aの構成について説明する。波形整形部521の入力端子は、検出素子51に接続されている。波形整形部521の出力端子は、出力部522の入力端子の一つに接続されている。除去部523は、出力部522の入力端子の一つに接続されている。出力部522の出力端子は、算出部524の入力端子及び処理部526aの入力端子に接続されている。算出部524の出力端子は、計数部525の入力端子に接続されている。計数部525の出力端子は、計数データ収集部61に接続されている。また、計数部525は、X線管球41が照射するX線のエネルギー分布上に設定された各エネルギー帯に属するエネルギーを有するX線光子のみを計数するカウンタを1つ又は複数備える。なお、カウンタが1つの場合、計数するエネルギー帯が1つ設定され、設定されたエネルギー帯に属するエネルギーを有する全X線光子を計数する。設定される1つのエネルギー帯は、0以上の全エネルギーでも良いし、ノイズ除去等の目的に応じた特定の1つのエネルギー範囲であっても良い。処理部526aの出力端子は、推定部527aの入力端子に接続されている。推定部527aの出力端子は、推定データ収集部62に接続されている。
ここで、処理部526aは、例えば、図7に示すように、観測部5261aと、設定部5262aとを備える。この場合、観測部5261aの入力端子は、上述した処理部526aの入力端子に相当し、観測部5261aの出力端子は、上述した処理部526aの出力端子に相当する。
次に、検出回路52aの動作について説明する。波形整形部521は、ノイズの増加を抑えつつ、検出素子51が出力した応答波形を必要なレベルまで増幅する。除去部523は、出力部522に所定の電圧を供給し、検出素子51が出力する応答波形に含まれるノイズを除去するための閾値を設定する。出力部522は、検出素子51に入射したX線光子により発生した波形のうち、除去部523により設定された閾値を上回る波形のみを算出部524及び処理部526aへ出力する。算出部524は、出力部522が出力した波形の波高、波形面積等を算出する。計数部525は、算出部524が算出した波高、波形面積等をX線光子のエネルギーとみなし、X線管球41が照射するX線のエネルギー分布上に設定されたエネルギー帯ごとにX線光子を計数する。計数部525は、計数した結果を計数データ収集部61へ出力する。
観測部5261aは、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象を観測する。観測部5261aは、例えば、応答波形において所定の閾値を下回る現象及び応答波形において所定の閾値を上回る現象を観測することで、この事象を観測する。この場合、観測部5261aは、例えば、次のような方法により、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の数を観測する。
観測部5261aは、出力部522から受け取った応答波形の電圧と、閾値を設定するために設定部5262aから供給される電圧とを比較する。そして、観測部5261aは、出力部522から受け取った応答波形の電圧が、閾値を設定するために設定部5262aから供給される電圧より大きい期間中、推定部527aに負の電圧を出力する。また、観測部5261aは、出力部522から受け取った応答波形の電圧が、閾値を設定するために設定部5262aから供給される電圧より小さい期間中、推定部527aに正の電圧を出力する。
ここで、推定部527aへ出力される電圧が負から正へ切り替わる現象は、応答波形において所定の閾値を下回る現象に相当する。また、推定部527aへ出力される電圧が正から負へ切り替わる現象は、応答波形において所定の閾値を上回る現象に相当する。そこで、観測部5261aは、推定部527aに出力する電圧が、負から正へ切り替わり、続いて正から負へ切り替わる現象を観測する。したがって、観測部5261aは、この現象の数を観測することにより、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の数を観測することができる。
或いは、観測部5261aは、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する二つの事象の間に、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が一つ発生することを利用して応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象を観測してもよい。この場合、観測部5261aは、負の電圧を出力した回数から正の電圧を出力した回数を算出することにより、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の数を観測することができる。例えば、観測部5261aが負の電圧を5回出力し、これらの負の電圧の間に正の電圧を4回出力し、最初の負の電圧の前及び最後の負の電圧の後に正の電圧を出力している場合、観測部5261aは、負の電圧を出力した回数「5」に「1」を加えることにより、正の電圧を出力した回数「6」を算出することができる。また、観測部5261aは、単に正の電圧を出力した回数を計数することにより、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の数を観測し、その結果を推定部527aに送信することができる。
上述の説明では、観測部5261aは、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象を観測する場合を例に挙げた。しかし、観測部5261aは、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象を観測してもよい。観測部5261aは、例えば、応答波形において所定の閾値を上回る現象及び応答波形において所定の閾値を下回る現象を観測することで、この事象を観測する。この場合、観測部5261aは、例えば、次のような方法により、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の数を観測する。
観測部5261aは、第1の実施形態と同様、推定部527aに正の電圧又は負の電圧を出力する。観測部5261aは、推定部527aに出力する電圧が、正から負へ切り替わり、続いて負から正へ切り替わる現象を観測する。したがって、観測部5261aは、この現象の数を観測することにより、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の数を観測することができる。
或いは、観測部5261aは、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する二つの事象の間に、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が一つ発生することを利用して、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象を観測してもよい。この場合、観測部5261aは、正の電圧を出力した回数から負の電圧を出力した回数を算出することにより、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の数を観測することができる。例えば、観測部5261aが正の電圧を5回出力し、これらの正の電圧の間に負の電圧を4回出力し、最初の正の電圧の前及び最後の正の電圧の後に負の電圧を出力している場合、観測部5261aは、正の電圧を出力した回数「5」に「1」を加えることにより、負の電圧を出力した回数「6」を算出することができる。また、観測部5261aは、単に負の電圧を出力した回数を計数することにより、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の数を観測し、その結果を推定部527aに送信することができる。
推定部527aは、観測部5261aが観測した事象の所定の期間内における発生率を算出する。すなわち、推定部527aは、観測部5261aが観測した数に基づいて、観測した事象の所定の期間内における発生率を算出する。具体的には、推定部527aは、所定の期間における応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の数を応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率として算出する。或いは、推定部527aは、所定の期間における応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の数を応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の発生率として算出する。なお、これらの発生率は、正規化されてもよい。また、観測部5261aが算出する発生率は、観測部5261aが観測した数の、観測部5261aが観測した応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の数と、観測部5261aが観測した応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の数との和に対する割合である。
また、所定の期間における、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率と、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の発生率との和は100%となる。このため、推定部527aは、観測部5261aが、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象を観測した場合でも、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率を算出することができる。
なお、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が発生する頻度は、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が発生する頻度より低い。このため、観測部5261aは、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象よりも、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象を観測することが好ましい。これにより、推定部527aは、少ない負荷で発生率を算出することができる。
さらに、推定部527aは、算出した事象の発生率に基づいて検出素子51へ所定の期間内に入射したX線光子の数を推定する。具体的には、推定部527aは、次に説明する方法により、検出素子51へ所定の期間内に入射したX線光子の数(例えば、入射率)を推定する。以下の説明では、検出素子51に単色X線が入射する場合を例に挙げて説明する。
X線光子が検出素子51に入射する現象は、ポアソン過程に従う。そして、ポアソン過程に従う現象が起こる時間間隔は指数分布に従う。したがって、X線光子が検出素子51に入射する時間間隔は指数分布に従う。つまり、X線光子が検出素子51に入射する時間間隔tの確率密度関数f(t;λ)は、次の式(1)で表される。ここで、λは、入射率である。
ここで、検出素子51の応答時間をt0とする。検出素子51の応答時間t0とは、一つの波形が応答波形に対する閾値を上回った時点から当該閾値を下回る時点までの時間である。X線光子が検出素子51に入射する時間間隔tが検出素子51の応答時間t0より大きい場合、応答波形上で隣接する波形が重複することはない。つまり、X線光子が検出素子51に入射する時間間隔tが検出素子51の応答時間t0より大きい場合、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が発生する。したがって、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率F(t>t0;λ)は、式(1)をt0から無限大まで積分することで得られる。これは、次の式(2)で表される。なお、式(2)は、累積分布関数とも呼ばれる。
図8は、式(2)の両辺の自然対数をとった式に基づいて作成されたグラフである。ここで、応答時間t0の単位はnsec、計数率の単位はMcps(106 count per second)である。図8に示すように、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率F(t>t0;λ)の自然対数は、検出素子51の応答時間t0に比例する。この場合の比例定数は、−λとなる。したがって、図8に示す通り、入射率λが大きい程、発生率F(t>t0;λ)は小さくなる。
ここで、検出素子51の応答時間t0は、例えば、シンチレータの光減衰特性といった検出素子の性能に依存することに加え、設定部5262aが観測部5261aに供給する電圧により設定される応答波形に対する閾値に依存する。後者は、上述した検出素子51の応答時間t0の定義より明らかである。したがって、図8より、ある応答時間t0における入射率λの発生率F(t>t0;λ)の自然対数に対する振る舞いは、図9に示すようになることがわかる。図9には、直線ThS、直線ThM及び直線ThLが示されている。直線ThSは、閾値が小さい場合における入射率λと発生率F(t>t0;λ)との関係を表している。直線ThLは、閾値が大きい場合における入射率λと発生率F(t>t0;λ)との関係を表している。直線ThMは、閾値が、直線ThSの場合より大きく、直線ThLの場合より小さい場合における入射率λと発生率F(t>t0;λ)との関係を表している。
上述した通り、推定部527aは、所定の期間における応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の数を発生率F(t>t0;λ)として算出している。このため、推定部527aは、図9を使用して検出素子51に入射したX線の入射率を推定することができる。
設定部5262aが観測部5261aに、直線ThMに対応する電圧を供給している場合を例に挙げて説明する。ここでは、直線ThMに対応する閾値は、検出素子51の応答時間t0が60nsecとなるような閾値であるものとする。発生率F(t>t0;λ)が0.1である場合、図9の直線ThMより、入射率λは約40Mcpsと推定される。発生率F(t>t0;λ)が0.01である場合、図9の直線ThMより、入射率λは約80Mcpsと推定される。なお、推定部527aは、直線ThS又は直線ThLを使用して検出素子51に入射したX線の入射率を推定することもできる。
なお、観測部5261aが、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象を観測する場合、閾値は、観測部5261aが観測する応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の数が所定の数以上となるように設定されることが好ましい。観測部5261aが、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象を観測する場合、或いは、閾値は、観測部5261aが観測する応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の数が所定の数以上となるように設定されることが好ましい。これらの場合、設定部5262aは、例えば、ユーザが入力部81を使用して入力した指示に基づいて閾値を設定する。また、設定部5262aは、推定する入射率の範囲に基づいて閾値を設定する。なお、推定する入射率の範囲は、ダイナミックレンジとも呼ばれる。
図10に示すように、応答波形Wに対して直線Th1で表される閾値が設定された場合、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する二つの事象E11及びE12が発生する。閾値が小さくなると観測部5261aが観測する応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の数が減少するため、推定部527aが、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率として算出する所定の期間における応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の数の信頼性が低下する。このため、推定部527aが推定した所定の期間内に入射したX線光子の数の信頼性が低下してしまう。
しかし、応答波形Wに対して直線Th2で表される閾値が設定された場合、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する六つの事象E21、E22、E23、E24、E25及びE26が発生する。閾値が大きくなると観測部5261aが観測する応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の数が増加する。このため、推定部527aが、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率として算出する所定の期間における応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の数の信頼性が向上する。このため、推定部527aが推定した所定の期間内に入射したX線光子の数の信頼性が向上する。
なお、図10を使用して説明した内容と同趣旨の内容は、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象についても成立する。
なお、光子計数型X線検出器5は、推定部527aが推定した結果及び計数部525が計数した結果の両方を出力することが好ましい。すなわち、推定部527aによるX線光子の数(例えば、入射率)の推定と、計数部525によるX線光子の計数(例えば、計数率)とは、並行して行われることが好ましい。これは、検出素子51の位置並びにスキャン中のX線管球41及び光子計数型X線検出器5の位置によって、推定部527aが推定した結果の方がCT画像の生成に適している場合と、計数部525が計数した結果の方がCT画像の生成に適している場合とが頻繁に変化することがあるからである。
或いは、光子計数型X線検出器5は、検出素子51の位置並びにスキャン中のX線管球41及び光子計数型X線検出器5の位置ごとに、推定部527aが推定した結果を出力する場合と計数部525が計数した結果を出力する場合とを切り替えることもできる。この場合、検出素子51の位置並びにスキャン中のX線管球41及び光子計数型X線検出器5の位置ごとに、推定部527aが推定した結果と計数部525が計数した結果のどちらを出力したかを記録しておくことが好ましい。
推定部527aが推定した結果を出力する場合と、計数部525が計数した結果を出力する場合とを切り替える方法としては、例えば、図12に示すように、X線光子の入射率又は計数率に応じて、各方法の結果の信頼度を事前に求めておき、信頼度が入れ替わる入射率又は計数率(図12における交点Ctに対応する入射率又は計数率)で切り替えてもよい。すなわち、推定結果又は計数結果が交点に対応する入射率又は計数率よりも小さい場合には計数部525が計数した結果を出力し、大きい場合には推定部527aが推定した結果を出力する。ここで、信頼度とは、実際に入射したX線光子の入射率又は計数率と、推定部527aの推定結果又は計数部525の計数結果との乖離を示す指標であり、乖離が少なければ少ないほど高い値をとり、乖離が多ければ多いほど低い値をとる。信頼度は、例えば実際に入射したX線光子の入射率又は計数率と、推定部527aの推定結果又は計数部525の計数結果との差分である。
また、観測部5261aは、検出素子51にX線管球41が照射するX線が入射した場合において、計数部525が計数した結果の合計値が、検出素子51に入射したX線光子の数に比例すると仮定した場合の値を含む所定の範囲から逸脱した場合に、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象を観測する上で必要なデータ容量を有していればよい。これは、計数率の合計が、検出素子51に入射したX線光子の数(例えば、入射率)を含む所定の範囲内である場合、推定部527aにより所定の期間内に入射したX線光子の数(例えば、入射率)を推定する必要が無いからである。
上述したように、第1の実施形態に係る光子計数型X線検出器5は、観測部5261a、設定部5262a及び推定部527aを備えているため、パルスパイルアップが発生しても検出素子51に入射したX線光子の数を推定することができる。つまり、第1の実施形態に係る光子計数型X線CT装置1は、観測部5261a、設定部5262a及び推定部527aを備えているため、パルスパイルアップが発生してもX線光子の数を適切に推定することができる。
また、第1の実施形態に係る光子計数型X線検出器5は、観測部5261a、設定部5262a及び推定部527aを備えている。このため、画像生成部86は、検出素子51にX線が入射した場合において、計数部525が計数した結果の合計が、検出素子51に入射したX線光子の数に比例すると仮定した場合の値を含む所定の範囲から逸脱した場合、推定部527aが推定した結果に基づいてCT画像を生成することができる。
また、観測部5261a、設定部5262a及び推定部527aは、小規模な回路で実現することができる。このため、検出回路52aは高集積化される。したがって、第1の実施形態に係る光子計数型X線検出器5は、製品のコストの増大を抑制することができる。また、第1の実施形態に係る光子計数型X線検出器5は、さらに、光子計数型X線CT装置1をコンパクトにすることができる。
(第2の実施形態)
図12〜図14を参照しながら、第2の実施形態に係る光子計数型X線CT装置が備える検出回路について説明する。図12は、第2の実施形態に係る光子計数型X線CT装置が備える検出回路の一例を示す図である。図13は、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間又は応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が続いている時間を観測する方法の一例を示す図である。図14は、応答波形に対する閾値と応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間又は応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が続いている時間との関係を示す図である。
検出回路52bは、図12に示すように、波形整形部521、出力部522、除去部523、算出部524、計数部525、処理部526b、推定部527b及び供給部528bを備える。また、処理部526bは、図12に示すように、観測部5261bと、設定部5262bとを備える。
検出回路52bの構成について説明する。検出回路52bは、第1の実施形態に係る検出回路52aが備える処理部526a及び推定部527aの代わりに、処理部526b、推定部527b及び供給部528bを備える。そこで、処理部526b、推定部527b及び供給部528bについて説明する。
処理部526bの入力端子は、出力部522の出力端子に接続されている。処理部526bの出力端子は、推定部527bの入力端子に接続されている。推定部527bの出力端子は、推定データ収集部62による接続されている。また、供給部528bは、処理部526bに接続されている。
次に、検出回路52bの動作について説明する。なお、波形整形部521、出力部522、除去部523、算出部524及び計数部525の動作は、第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
観測部5261bは、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象を観測する。観測部5261bは、例えば、応答波形において所定の閾値を下回る現象及び応答波形において所定の閾値を上回る現象を観測することで事象を観測する。
観測部5261bは、例えば、次のような方法により、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間を観測する。具体的には、観測部5261bは、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間におけるクロックを計数することで、所定の期間において発生する応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間を観測する。
まず、供給部528bが、観測部5261bにクロックを供給する。例えば、供給部528bは、観測部5261bにクロックCRを供給する。クロックCRは、図13(a)に示すように、クロックCd及びクロックCsを含む。クロックCdは、クロックCRのうち、応答波形Waの電圧が直線Thで表される閾値を上回っている場合、すなわち応答波形Waにおいて所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が続いている場合におけるクロックである。クロックCsは、クロックCRのうち、応答波形Waの電圧が直線Thで表される閾値を下回っている場合、すなわち応答波形Waにおいて所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている場合におけるクロックである。なお、クロックCdとクロックCsとは、同一の信号である。
観測部5261bは、出力部522から受け取った応答波形Waの電圧と、閾値を設定するために設定部5262bから供給される電圧とを比較する。そして、観測部5261bは、出力部522から受け取った応答波形Waの電圧が、閾値を設定するために設定部5262bから供給される電圧より大きい場合、推定部527bに負の電圧を出力する。また、観測部5261bは、出力部522から受け取った応答波形Waの電圧が、閾値を設定するために設定部5262bから供給される電圧より小さい場合、推定部527bに正の電圧を出力する。
また、推定部527bへ出力される電圧が負から正へ切り替わる現象は、応答波形Waにおいて所定の閾値を下回る現象に相当する。また、推定部527bへ出力される電圧が正から負へ切り替わる現象は、応答波形Waにおいて所定の閾値を上回る現象に相当する。したがって、観測部5261bは、これらの現象を観測することにより、上述したクロックCdとクロックCsとを判別することができる。
観測部5261bは、クロックCsを計数することにより正の電圧を出力した時間を観測する。これにより、観測部5261bは、応答波形Waにおいて所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間を観測し、その結果を推定部527bに送信することができる。
また、観測部5261bは、応答波形Waにおいて所定の閾値を上回っている状態が継続する二つの事象の間に、応答波形Waにおいて所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が一つ発生することを利用して応答波形Waにおいて所定の閾値を下回っている状態が継続する事象を観測してもよい。
この場合、観測部5261bは、クロックCdを計数することにより負の電圧を出力した時間を観測する。そして、観測部5261bは、所定の期間から観測した時間を差し引く。これにより、観測部5261bは、応答波形Waにおいて所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間を算出し、その結果を推定部527bに送信することができる。
上述の説明では、観測部5261bは、応答波形Waにおいて所定の閾値を下回っている状態が継続する事象を観測する場合を例に挙げた。しかし、或いは、観測部5261bは、応答波形Waにおいて所定の閾値を上回っている状態が継続する事象を観測してもよい。観測部5261bは、例えば、応答波形Waにおいて所定の閾値を下回る現象及び応答波形において所定の閾値を上回る現象を観測することで事象を観測する。
観測部5261bは、例えば、次のような方法により、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が続いている時間を観測する。具体的には、観測部5261bは、応答波形Waにおいて所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が続いている時間におけるクロックを計数することで、所定の期間において発生する応答波形Waにおいて所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が続いている時間を観測する。
この場合、観測部5261bは、上述した場合とは逆に、クロックCdを計数することにより負の電圧を出力した時間を観測する。これにより、観測部5261bは、応答波形Waにおいて所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が続いている時間を観測し、その結果を推定部527bに送信することができる。
或いは、観測部5261bは、応答波形Waにおいて所定の閾値を下回っている状態が継続する二つの事象の間に、応答波形Waにおいて所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が一つ発生することを利用して、応答波形Waにおいて所定の閾値を上回っている状態が継続する事象を観測してもよい。
この場合、観測部5261bは、クロックCsを計数することにより正の電圧を出力した時間を観測する。そして、観測部5261bは、所定の期間から観測した時間を差し引く。これにより、観測部5261bは、応答波形Waにおいて所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が続いている時間を算出し、その結果を推定部527bに送信することができる。
推定部527bは、観測部5261bが観測した時間に基づいて、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の所定の期間内における発生率を算出する。この場合、推定部527bが算出した発生率は、例えば、所定の期間に対する観測した時間の割合である。また、所定の期間とは、例えば、ビューである。なお、ビューとは、被検体P内の点を中心とした円軌道上におけるX線管球41の位置である。
例えば、推定部527bは、所定の期間において発生する応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間から応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率を算出する。具体的には、推定部527bは、所定の期間に対する応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間の割合を事象の発生率として算出する。この場合、推定部527bは、上述した図9を使用して検出素子51に入射したX線の入射率を推定する。
或いは、推定部527bは、所定の期間において発生する応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が続いている時間から応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の発生率を算出する。具体的には、推定部527bは、所定の期間に対する応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が続いている時間の割合を事象の発生率として算出する。この場合、推定部527bは、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率と、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の発生率との和は100%となることを利用して、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率を算出する。そして、推定部527bは、上述した図9を使用して検出素子51に入射したX線の入射率を推定する。
なお、図13(b)及び図13(c)に示すように、所定の期間内に検出素子51に入射するX線光子の数(例えば、入射率)が増加すると、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間が減少する。すると、推定部527bが算出する応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率の信頼性が低下してしまう。これを抑制するため、閾値は、所定の期間において発生する観測部5261bが観測する応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間が所定の時間以上となるように設定されることが好ましい。これについて、図14を参照しながら説明する。
クロックCRは、図14に示すように、クロックCd、クロックCa及びクロックCsを含む。クロックCsは、クロックCRのうち、応答波形Wの電圧が直線Th1で表される閾値を下回っている場合におけるクロックである。クロックCaは、クロックCRのうち、応答波形Wの電圧が、直線Th1で表される閾値を上回っており、かつ、直線Th2で表される閾値を下回っている場合におけるクロックである。クロックCdは、クロックCRのうち、応答波形Wの電圧が直線Th2で表される閾値を上回っている場合におけるクロックである。なお、クロックCd、クロックCa及びクロックCsは、同一の信号である。
応答波形Wに対して直線Th1で表される閾値が設定された場合、クロックCRのうち応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている場合のクロックは、クロックCsのみである。閾値が小さくなると応答波形Wの電圧が閾値を下回っている場合のクロックの数が減少するため、推定部527bが、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率として算出する所定の期間に対する応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間の割合の信頼性が低下する。このため、推定部527bが推定した所定の期間内に入射したX線光子の数の信頼性が低下してしまう。
しかし、応答波形Wに対して直線Th2で表される閾値が設定された場合、クロックCRのうち応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている場合のクロックは、クロックCs及びクロックCaとなる。閾値が大きくなると応答波形Wの電圧が閾値を下回っている場合のクロックの数が増加するため、推定部527bが応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率として算出する所定の期間に対する応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間の割合の信頼性が向上する。このため、推定部527bが推定した所定の期間内に入射したX線光子の数の信頼性が向上する。
或いは、閾値は、所定の期間において発生する前記観測部が観測する前記応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が続いている時間が所定の時間以上となるように設定されることが好ましい。
この場合、閾値は、上述した場合とは逆に、応答波形Wにおいて所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている場合のクロックの数が増加するように設定される。これにより、観測部5261bが、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の発生率として算出する所定の期間に対する応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が続いている時間の割合の信頼性が向上する。このため、推定部527bが推定した所定の期間内に入射したX線光子の数の信頼性が向上する。
上述したように、第2の実施形態に係る光子計数型X線検出器は、観測部5261b、設定部5262b及び推定部527bを備えているため、パルスパイルアップが発生しても検出素子51に入射したX線光子の数を推定することができる。つまり、第2の実施形態に係る光子計数型X線CT装置は、観測部5261b、設定部5262b及び推定部527bを備えているため、パルスパイルアップが発生してもX線光子の数を適切に推定することができる。
また、第2の実施形態に係る光子計数型X線検出器は、観測部5261b、設定部5262b及び推定部527bを備えている。このため、画像生成部86は、検出素子51にX線が入射した場合において、計数部525が計数した結果の合計が、検出素子51に入射したX線光子の数に比例すると仮定した場合の値を含む所定の範囲から逸脱した場合、推定部527bが推定した結果に基づいてCT画像を生成することができる。
また、観測部5261b、設定部5262b及び推定部527bは、小規模な回路で実現することができる。このため、検出回路52bは高集積化される。したがって、第2の実施形態に係る光子計数型X線検出器は、製品のコストの増大を抑制することができる。また、第2の実施形態に係る光子計数型X線検出器は、さらに、光子計数型X線CT装置をコンパクトにすることができる。
さらに、第2の実施形態に係る光子計数型X線検出器では、観測部5261bが所定の期間において発生する応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間を観測し、又は所定の期間において発生する応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が続いている時間を観測する。また、推定部527bは、所定の期間において発生する応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が続いている時間から応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象の発生率を算出し、又は所定の期間において発生する応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が続いている時間から応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の発生率を算出する。このため、第2の実施形態に係る光子計数型X線検出器は、発生する応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象、又は応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象の数が少ない場合でも、これらの事象が続いている時間がある程度長ければ、検出素子51に入射したX線光子の数を正確に推定することができる。
(第3の実施形態)
上述した図9に示すように、観測する事象の発生率が低い場合又は観測する事象が続いている時間が短い場合、観測する事象の発生率がわずかに変動しただけで、計数率が大きく変動してしまう。そこで、第3の実施形態に係る光子計数型X線検出器は、複数の閾値それぞれに対して観測した結果に基づいて、X線光子の数を推定する。
図15を参照しながら、第3の実施形態に係る光子計数型X線CT装置が備える検出回路について説明する。図15は、第3の実施形態に係る光子計数型X線CT装置が備える検出回路の一例を示す図である。
検出回路52cは、図15に示すように、波形整形部521、出力部522、除去部523、算出部524、計数部525、処理部526c及び推定部527cを備える。
検出回路52cの構成について説明する。検出回路52cは、第1の実施形態に係る検出回路52aが備える処理部526a及び推定部527aの代わりに、処理部526c及び推定部527cを備える。そこで、処理部526c及び推定部527cについて説明する。
処理部526cは、観測部5261cと、設定部5262cとを備える。観測部5261cは、応答波形観測部5261xと、応答波形観測部5261yと、応答波形観測部5261zとを備える。設定部5262cは、電圧供給部5262xと、電圧供給部5262yと、電圧供給部5262zとを備える。
応答波形観測部5261xの入力端子は、出力部522の出力端子と接続されている。応答波形観測部5261xの出力端子は、推定部527cの入力端子に接続されている。電圧供給部5262xは、応答波形観測部5261xの入力端子に接続されている。応答波形観測部5261yの入力端子は、出力部522の出力端子と接続されている。応答波形観測部5261yの出力端子は、推定部527cの入力端子に接続されている。電圧供給部5262yは、応答波形観測部5261yの入力端子に接続されている。応答波形観測部5261zの入力端子は、出力部522の出力端子と接続されている。応答波形観測部5261zの出力端子は、推定部527cの入力端子に接続されている。電圧供給部5262zは、応答波形観測部5261zの入力端子に接続されている。推定部527cの出力端子は、推定データ収集部62に接続されている。
次に、検出回路52cの動作について説明する。設定部5262cは、閾値を複数設定する。すなわち、電圧供給部5262xは、応答波形観測部5261xに第1電圧を供給する。第1電圧は、第1閾値に対応している。電圧供給部5262yは、応答波形観測部5261yに第2電圧を供給する。第2電圧は、第2閾値に対応している。電圧供給部5262zは、応答波形観測部5261zに第3電圧を供給する。第3電圧は、第3閾値に対応している。
観測部5261cは、複数の閾値それぞれに対して応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象を観測する。すなわち、応答波形観測部5261xは、電圧供給部5262xが供給する第1電圧により設定される閾値に対して、応答波形において閾値を下回っている状態が継続する事象を観測する。応答波形観測部5261yは、電圧供給部5262yが供給する第2電圧により設定される閾値に対して、応答波形において閾値を下回っている状態が継続する事象を観測する。応答波形観測部5261zは、電圧供給部5262zが供給する第3電圧により設定される閾値に対して、応答波形において閾値を下回っている状態が継続する事象を観測する。
例えば、応答波形観測部5261x、応答波形観測部5261y及び応答波形観測部5261zは、応答波形において設定された閾値を下回る現象及び応答波形において設定された閾値を上回る現象を観測することで事象を観測する。或いは、応答波形観測部5261x、応答波形観測部5261y及び応答波形観測部5261zは、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する二つの事象の間に、前記応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象が一つ発生することを利用して前記応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象を観測する。これらの具体的な方法は、上述した通りである。
観測部5261cは、複数の前記閾値それぞれに対して前記応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象を観測する。すなわち、応答波形観測部5261xは、電圧供給部5262xが供給する第1電圧により設定される閾値に対して、応答波形において閾値を上回っている状態が継続する事象を観測する。応答波形観測部5261yは、電圧供給部5262yが供給する第2電圧により設定される閾値に対して、応答波形において閾値を上回っている状態が継続する事象を観測する。応答波形観測部5261zは、電圧供給部5262zが供給する第3電圧により設定される閾値に対して、応答波形において閾値を上回っている状態が継続する事象を観測する。
例えば、応答波形観測部5261x、応答波形観測部5261y及び応答波形観測部5261zは、応答波形において設定された閾値を下回る現象及び応答波形において設定された閾値を上回る現象を観測することで事象を観測する。或いは、応答波形観測部5261x、応答波形観測部5261y及び応答波形観測部5261zは、応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する二つの事象の間に、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象が一つ発生することを利用して、応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象を観測する。これらの具体的な方法は、上述した通りである。
推定部527cは、複数の閾値それぞれに対して観測部5261cが観測した結果に基づいて、検出素子51へ所定の期間内に入射したX線光子の数を推定する。具体的には、まず、推定部527cは、第1の実施形態又は第2の実施形態と同様の方法により、応答波形観測部5261x、応答波形観測部5261y及び応答波形観測部5261zが観測した結果それぞれについて検出素子51へ所定の期間内に入射したX線光子の数(例えば、入射率)を推定する。そして、推定部527cは、推定したX線光子の数の平均値、中央値等の統計値を最終的な結果として、推定データ収集部62に出力する。
なお、第3の実施形態では、観測部5261cが応答波形観測部5261x、応答波形観測部5261y及び応答波形観測部5261zの三つを備える場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。検出回路52cが備える応答波形観測部の数は、特に限定されない。また、推定部527cは、最終的な結果として統計値ではなく、予め作成されているテーブルを使用して得られる結果を推定データ収集部62に出力してもよい。或いは、推定部527cは、最終的な結果として統計値ではなく、予め作成されている計算式を使用して得られる結果を推定データ収集部62に出力してもよい。例えば、推定部527cは、応答波形観測部5261xが観測した結果に基づいて推定した結果、応答波形観測部5261yが観測した結果に基づいて推定した結果及び応答波形観測部5261zが観測した結果に基づいて推定した結果に重みを掛けて総和をとったものを最終的な結果として出力してもよい。
上述したように、第3の実施形態に係る光子計数型X線検出器は、観測部5261c、設定部5262c及び推定部527cを備えているため、パルスパイルアップが発生しても検出素子51に入射したX線光子の数を推定することができる。つまり、第3の実施形態に係る光子計数型X線CT装置は、観測部5261c、設定部5262c及び推定部527cを備えているため、パルスパイルアップが発生してもCT画像を生成することができる。
また、観測部5261c、設定部5262c及び推定部527cは、小規模な回路で実現することができる。このため、検出回路52cは高集積化される。したがって、第3の実施形態に係る光子計数型X線検出器は、製品のコストの増大を抑制することができる。また、第3の実施形態に係る光子計数型X線検出器は、さらに、光子計数型X線CT装置をコンパクトにすることができる。
さらに、第3の実施形態に係る光子計数型X線検出器では、設定部5262cが閾値を複数設定し、観測部5261cが複数の閾値それぞれに対して応答波形において所定の閾値を下回っている状態が継続する事象、又は応答波形において所定の閾値を上回っている状態が継続する事象を観測し、推定部527cが複数の閾値それぞれに対して観測部5261cが観測した結果に基づいて、検出素子51へ所定の期間内に入射したX線光子の数を推定する。このため、第3の実施形態に係る光子計数型X線検出器は、これらの事象の数が少ない場合又はこれらの事象が続いている時間が短い場合、すなわち、これらの事象の発生率が低い場合でも、検出素子51へ所定の期間内に入射したX線光子の数を正確に推定することができる。
なお、上述した実施形態では、検出回路が検出素子51が出力した応答波形を処理する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、検出素子51が出力した応答波形を記憶しておき、記憶されている応答波形に対して上述した処理を施してもよい。
上述した実施形態で説明した画像処理方法は、光子計数型X線CT装置とは独立に設置された画像処理装置により行われる場合であってもよい。例えば、図1に示した制御部88と同様の機能を有する画像処理装置が、光子計数型X線CT装置1又はPACSのデータベースや、電子カルテシステムのデータベースから取得した応答波形を用いて、上述した画像処理方法を行う場合であってもよい。
上述した各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示した通りに構成されていることを要しない。すなわち、各構成要素の分散又は統合の具体的な形態は図示したものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成することができる。さらに、各構成要素の各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及びこのCPUにおいて実行されるプログラムによって実現される。或いは、各構成要素の各処理機能は、その全部又は任意の一部が、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現される。
また、上述した実施形態で説明した方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータ、ワークステーション等のコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることにより実行することもできる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、検出回路の高集積化を実現しつつ、所定の期間内に入射したX線光子の数が多い場合でもX線光子を正確に計数することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。