JP2016155635A - 液体吐出装置、および、液体吐出装置の制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被着弾物の反りや浮きを抑制しつつ液体吐出装置の内部構成に対するミストによる汚染を低減することが可能な液体吐出装置、および、液体吐出装置の制御方法を提供する。【解決手段】吐出データに基づき記録用紙に着弾するインクの液量を算出し、算出した液量に基づき、記録用紙に対する吸着力が相対的に高い第1の領域A1と、記録用紙に対する吸着力が相対的に低い第2の領域A2と、の何れか1つ又は複数の領域を搬送ベルト11に対して設定し、搬送ベルトは、設定に応じた吸着力で記録用紙を吸着する。【選択図】図3
Description
本発明は、インクジェット式記録装置などの液体吐出装置、および、液体吐出装置の制御方法に関し、特に、液体の被着弾物を搬送ベルト等の搬送装置により搬送させつつ当該被着弾物に対して液体吐出ヘッドから液滴を吐出させる液体吐出装置、および、液体吐出装置の制御方法に関するものである。
液体吐出装置は、液体を液滴としてノズルから吐出可能な液体吐出ヘッドを備え、この液体吐出ヘッドから各種の液体を吐出する装置である。この液体吐出装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドのノズルから液体状のインクをインク滴として吐出させて記録を行うインクジェット式記録装置(プリンター)等の画像記録装置を挙げることができる。また、この他、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターに用いられる色材、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイに用いられる有機材料、電極形成に用いられる電極材等、様々な種類の液体の吐出に液体吐出装置が用いられている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを吐出し、ディスプレイ製造装置用の色材吐出ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を吐出する。また、電極形成装置用の電極材吐出ヘッドでは液状の電極材料を吐出し、チップ製造装置用の生体有機物吐出ヘッドでは生体有機物の溶液を吐出する。
液体吐出装置の一種であるプリンターには、搬送ベルトを帯電させ、記録用紙を搬送ベルトに静電気力により吸着させた状態で液体吐出ヘッドの一種である記録ヘッドに対して相対的に搬送させつつ当該記録ヘッドからインクを吐出させることで記録用紙に画像等を記録する構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。このような構成では、吐出の際に生じるインクミストのうち、帯電した搬送ベルトに反発したものが記録ヘッドに付着したり、帯電した搬送ベルトに吸引されたものが搬送ベルトに付着したりするという問題がある。この点に関し、特許文献1の構成では、搬送ベルトにおけるプラス帯電領域とマイナス帯電領域とが市松模様(チェッカー模様)になるように設定することで、記録用紙にインクミストが付着した場合であっても視認させにくくしている。
しかしながら、上記構成においても、例えば、記録用紙に対して単位面積あたりの着弾液量が比較的多く、かつその着弾範囲が広いような場合(高DUTY時)には、それだけ多くのミストが発生するため、仮にミストを回収する機構が備わっていたとしても、記録ヘッドや搬送ベルト等のプリンターの内部構成にミストが付着して汚染する問題も生じる。一方、インクミストの付着を防止するために、搬送ベルトに対する印加電圧を下げると、吸着力が低下するため、記録用紙が搬送ベルトから浮き上がったり反ったりする等して、当該記録用紙が記録ヘッドに擦れたり、所謂紙ジャムが生じる等の問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被着弾物の反りや浮きを抑制しつつ液体吐出装置の内部構成に対するミストによる汚染を低減することが可能な液体吐出装置、および、液体吐出装置の制御方法を提供することにある。
〔手段1〕
本発明の液体吐出装置は、吐出データに基づき、液体の被着弾物に対してノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記被着弾物を吸着する吸着手段と、
前記液体吐出ヘッドに対して前記吸着手段を相対的に移動させて前記被着弾物を搬送する搬送手段と、
前記吸着手段による前記被着弾物に対する吸着力を制御する吸着力制御手段と、
前記吐出データに基づき、前記被着弾物に着弾する液体の液量を算出する液量算出手段と、
を備え、
前記吸着力制御手段は、前記液量算出手段により算出された液量に基づき、前記被着弾物に対する吸着力が相対的に高い第1の領域と、前記被着弾物に対する吸着力が相対的に低い第2の領域と、の何れか1つ又は複数の領域を前記吸着手段に対して設定し、
前記吸着手段は、前記吸着力制御手段の設定に応じた吸着力で前記被着弾物を吸着することを特徴とする。
本発明の液体吐出装置は、吐出データに基づき、液体の被着弾物に対してノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記被着弾物を吸着する吸着手段と、
前記液体吐出ヘッドに対して前記吸着手段を相対的に移動させて前記被着弾物を搬送する搬送手段と、
前記吸着手段による前記被着弾物に対する吸着力を制御する吸着力制御手段と、
前記吐出データに基づき、前記被着弾物に着弾する液体の液量を算出する液量算出手段と、
を備え、
前記吸着力制御手段は、前記液量算出手段により算出された液量に基づき、前記被着弾物に対する吸着力が相対的に高い第1の領域と、前記被着弾物に対する吸着力が相対的に低い第2の領域と、の何れか1つ又は複数の領域を前記吸着手段に対して設定し、
前記吸着手段は、前記吸着力制御手段の設定に応じた吸着力で前記被着弾物を吸着することを特徴とする。
本発明によれば、吐出データから算出した液量に基づき、被着弾物に対する吸着力が相対的に高い第1の領域と、被着弾物に対する吸着力が相対的に低い第2の領域と、の何れか1つ又は複数の領域を吸着手段に対して設定するので、被着弾物の反りや浮きを抑制しつつ液体吐出装置の内部構成に対するミストによる汚染を低減することが可能となる。すなわち、液量が比較的多い場合には、吸着手段に対して第2の領域を設定することで、漂うミストのうち吸着手段に吸引されたり吸着手段と反発したりするミストが少なくなるので、液体吐出ヘッドや吸着手段等の液体吐出装置の内部構成にミストが付着することが抑制される。一方、液量が比較的少ない場合には、吸着手段に対して第1の領域を設定することで被着弾物を比較的強い吸着力で吸着手段に吸着されるので、当該被着弾物の反りや浮きが抑制される。
〔手段2〕
上記手段1の構成において、前記液量算出手段は、算出した液量に基づき前記第1の領域と前記第2の領域との設定の基準となる液量についての閾値を求め、
前記吸着力制御手段は、前記液量算出手段により算出された液量および閾値に基づき前記第1の領域または前記第2の領域の何れかを前記吸着手段に対して設定する構成を採用することが望ましい。
上記手段1の構成において、前記液量算出手段は、算出した液量に基づき前記第1の領域と前記第2の領域との設定の基準となる液量についての閾値を求め、
前記吸着力制御手段は、前記液量算出手段により算出された液量および閾値に基づき前記第1の領域または前記第2の領域の何れかを前記吸着手段に対して設定する構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、吐出データに基づき算出された液量に基づき第1の領域と第2の領域との設定の基準となる液量についての閾値がその都度求められ、この閾値に基づき第1の領域または第2の領域の何れかが吸着手段に対して設定されるので、ミストによる汚染の抑制と被着弾物の安定した搬送の両立がより適切に図られる。
〔手段3〕
上記手段1または手段2の構成において、前記被着弾物の大きさを検出する検出手段を備え、
前記吸着力制御手段は、前記検出手段により検出された被着弾物の大きさ及び前記算出された液量に基づき、前記第1の領域または前記第2の領域を前記吸着手段に対して設定する構成を採用することが望ましい。
上記手段1または手段2の構成において、前記被着弾物の大きさを検出する検出手段を備え、
前記吸着力制御手段は、前記検出手段により検出された被着弾物の大きさ及び前記算出された液量に基づき、前記第1の領域または前記第2の領域を前記吸着手段に対して設定する構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、被着弾物の大きさ及び算出された液量に基づき、第1の領域または第2の領域が吸着手段に対して設定されるので、被着弾物の多様なサイズに対応可能となる。
〔手段4〕
上記手段1から手段3の何れか一の構成において、前記液量算出手段は、前記液体吐出ヘッドにより時間的に連続して液体の吐出が行われる複数の被着弾物に着弾する液体の総量を、各被着弾物に対応する吐出データに基づき算出し、
前記吸着力制御手段は、算出された総量に基づき、前記各被着弾物に共通して前記第1の領域または前記第2の領域を前記吸着手段に対して設定する構成を採用することが望ましい。
上記手段1から手段3の何れか一の構成において、前記液量算出手段は、前記液体吐出ヘッドにより時間的に連続して液体の吐出が行われる複数の被着弾物に着弾する液体の総量を、各被着弾物に対応する吐出データに基づき算出し、
前記吸着力制御手段は、算出された総量に基づき、前記各被着弾物に共通して前記第1の領域または前記第2の領域を前記吸着手段に対して設定する構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、複数の被着弾物についての領域設定の処理を共通化できるので、処理の高速化が可能となる。
〔手段5〕
また、上記手段1から手段3の何れか一の構成において、前記液量算出手段は、前記液体吐出ヘッドにより時間的に連続して液体の吐出が順次行われる複数の被着弾物のうちの1の被着弾物に着弾する液量を、当該1の被着弾物に対応する吐出データに基づき算出し、
前記吸着力制御手段は、算出された液量に基づき、各被着弾物に共通して前記第1の領域または前記第2の領域を前記吸着手段に対して設定する構成を採用することもできる。
また、上記手段1から手段3の何れか一の構成において、前記液量算出手段は、前記液体吐出ヘッドにより時間的に連続して液体の吐出が順次行われる複数の被着弾物のうちの1の被着弾物に着弾する液量を、当該1の被着弾物に対応する吐出データに基づき算出し、
前記吸着力制御手段は、算出された液量に基づき、各被着弾物に共通して前記第1の領域または前記第2の領域を前記吸着手段に対して設定する構成を採用することもできる。
この構成においても、複数の被着弾物についての領域設定の処理を共通化できるので、処理の高速化が可能となる。
〔手段6〕
また、上記手段5の構成において、前記液量算出手段は、前記液体吐出ヘッドにより時間的に連続して液体の吐出が順次行われる複数の被着弾物のうち、着弾する液量が最も多いものを前記1の被着弾物とする構成を採用することができる。
また、上記手段5の構成において、前記液量算出手段は、前記液体吐出ヘッドにより時間的に連続して液体の吐出が順次行われる複数の被着弾物のうち、着弾する液量が最も多いものを前記1の被着弾物とする構成を採用することができる。
この構成によれば、液量が多いほどミストによる汚染リスクが高まるため、液量が最も多い被着弾物の液量に基づいて吸着手段に対する領域設定が行われることで、ミストによる不具合をより確実に抑制することが可能となる。
〔手段7〕
また、上記手段5の構成において、前記液量算出手段は、前記液体吐出ヘッドにより被着弾物の第1の面に対して液体を吐出した後、当該第1の面とは反対側の第2の面に液体を吐出する場合において、前記第1の面に対応する吐出データから液量を算出し、
前記吸着力制御手段は、算出された液量に基づき、前記第1の面側を吸着するときの前記吸着手段に対して前記第1の領域または前記第2の領域を設定する構成を採用することができる。
また、上記手段5の構成において、前記液量算出手段は、前記液体吐出ヘッドにより被着弾物の第1の面に対して液体を吐出した後、当該第1の面とは反対側の第2の面に液体を吐出する場合において、前記第1の面に対応する吐出データから液量を算出し、
前記吸着力制御手段は、算出された液量に基づき、前記第1の面側を吸着するときの前記吸着手段に対して前記第1の領域または前記第2の領域を設定する構成を採用することができる。
この構成によれば、所謂両面印刷の場合に、第1の面である表面に着弾した液量が、第2の面である裏面に対して液体を吐出させる際の吸着手段による被着弾物の吸着しやすさに影響を及ぼすため、第1の面に対応する吐出データから算出した液量に基づき、前記第1の面側を吸着するときの吸着手段に対する領域設定が行われることで、より確実に被着弾物の反りや浮きを抑制することが可能となる。
〔手段8〕
また、上記手段1から手段7の何れか一の構成において、湿度を検出する湿度検出手段を有し、
前記吸着力制御手段は、前記湿度検出手段により検出された湿度に基づき、前記第1の領域または前記第2の領域を前記吸着手段に対して設定する構成を採用することが望ましい。
また、上記手段1から手段7の何れか一の構成において、湿度を検出する湿度検出手段を有し、
前記吸着力制御手段は、前記湿度検出手段により検出された湿度に基づき、前記第1の領域または前記第2の領域を前記吸着手段に対して設定する構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、湿度に応じて被着弾物の反り等の生じやすさが変わるため、検出された湿度に応じて吸着手段に対する領域設定が行われることで、特に、より高湿下での被着弾物の反りや浮きをより確実に抑制して安定した搬送を行うことが可能となる。
〔手段9〕
また、上記手段1から手段8の何れか一の構成において、被着弾物の端部または当該被着弾物に着弾した液体の着弾パターンを検出するセンサーを有し、
前記吸着力制御手段は、前記吸着手段と前記センサーとの相対位置に応じて、当該吸着手段における前記センサーと対向する部分に対し前記第1の領域または前記第2の領域を設定する構成を採用することが望ましい。
また、上記手段1から手段8の何れか一の構成において、被着弾物の端部または当該被着弾物に着弾した液体の着弾パターンを検出するセンサーを有し、
前記吸着力制御手段は、前記吸着手段と前記センサーとの相対位置に応じて、当該吸着手段における前記センサーと対向する部分に対し前記第1の領域または前記第2の領域を設定する構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、吸着手段とセンサーとの相対位置に応じて、当該吸着手段におけるセンサーと対向する部分に対し領域設定が行われることで、センサーにミストが付着して検出に不具合が生じることを抑制することが可能となる。
〔手段10〕
また、本発明の液体吐出装置の制御方法は、吐出データに基づき液体の被着弾物に対してノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記被着弾物を吸着する吸着手段と、前記液体吐出ヘッドに対して前記吸着手段を相対的に移動させて前記被着弾物を搬送する搬送手段と、前記吸着手段による前記被着弾物に対する吸着力を制御する吸着力制御手段と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、
吐出データに基づき前記被着弾物に着弾する液体の液量を算出する工程と、
算出された液量に基づき、前記被着弾物に対する吸着力が相対的に高い第1の領域と、前記被着弾物に対する吸着力が相対的に低い第2の領域と、の何れか1つ又は複数の領域を前記吸着手段に対して設定する工程と、
を有することを特徴とする。
また、本発明の液体吐出装置の制御方法は、吐出データに基づき液体の被着弾物に対してノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記被着弾物を吸着する吸着手段と、前記液体吐出ヘッドに対して前記吸着手段を相対的に移動させて前記被着弾物を搬送する搬送手段と、前記吸着手段による前記被着弾物に対する吸着力を制御する吸着力制御手段と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、
吐出データに基づき前記被着弾物に着弾する液体の液量を算出する工程と、
算出された液量に基づき、前記被着弾物に対する吸着力が相対的に高い第1の領域と、前記被着弾物に対する吸着力が相対的に低い第2の領域と、の何れか1つ又は複数の領域を前記吸着手段に対して設定する工程と、
を有することを特徴とする。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体吐出装置として、液体吐出ヘッドの一種である記録ヘッド2を搭載したインクジェット式記録装置(以下、プリンター1)を例に挙げて説明する。
図1は、プリンター1の内部構成を模式的に表した図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。また、図2は、プリンター1の電気的な構成を示すブロック図である。本実施形態におけるプリンター1は、記録ヘッド2、給紙ローラー4、搬送機構5(本発明における搬送手段に相当)、ミスト回収機構8(ミスト回収手段)等を備えている。本実施形態における記録ヘッド2は、記録用紙6(被着弾物に相当)の紙幅方向、換言すると記録用紙6の搬送方向に対して交差する方向に沿って長尺な所謂ライン型記録ヘッドである。プリンター1にはインクが貯留された図示しないインクタンクが配置され、このインクタンク内のインクが供給チューブを介して記録ヘッド2に供給される。
給紙ローラー4は、搬送機構5の上流側に配設され、図示しない給紙部から給紙された記録用紙6を狭持した状態で回転可能な上下一対のローラー4a、4bにより構成されている。この給紙ローラー4は、給紙モーター9からの動力で駆動され、図示しないスキュー補正ローラーと共働して記録用紙6の搬送方向に対する傾き及び搬送方向に直交する方向の位置ずれを補正してから、この記録用紙6を搬送機構5の搬送ベルト11側に給紙する。
搬送機構5は、搬送ベルト11(本発明における吸着手段に相当)、搬送モーター12、駆動ローラー13、従動ローラー14、テンションローラー15、および、ベルト帯電部17(本発明における吸着力制御手段に相当)を備えている。搬送モーター12は、搬送機構5の駆動源であり、駆動ローラー13に動力を伝達している。搬送ベルト11は、無端状のベルトであり、駆動ローラー13及び従動ローラー14の間に張設されている。テンションローラー15は、駆動ローラー13と従動ローラー14との間において搬送ベルト11の内周面に当接し、ばね等の付勢部材の付勢力により搬送ベルト11に張力を付与している。この搬送ベルト11の回動量は、例えば、駆動ローラー13等に設けられたロータリーエンコーダー20(図2参照)によって検出され、検出信号がプリンター1のCPU35(図2参照)に出力される。したがって、CPU35は、ロータリーエンコーダー20からの検出信号に基づいて、搬送ベルト11による記録用紙6の搬送量および搬送速度を把握することができる。
ベルト帯電部17は、帯電ローラー18および帯電用電源19を備え、搬送ベルト11を帯電させて当該搬送ベルト11の記録用紙6に対する吸着力を制御する。帯電ローラー18は、搬送ベルト11を挟んで従動ローラー14の下方に、搬送ベルト11の幅方向に沿って配設され、当該搬送ベルト11に当接している。駆動ローラー13が駆動することにより搬送ベルト11が回動すると、帯電ローラー18も搬送ベルト11に接触した状態で回転する。この帯電ローラー18は、導電性を有するゴム等の素材から構成されており、帯電用電源19によって正極性の電圧と負極性の電圧とが交互に付与される。帯電ローラー18の軸方向の全長は、搬送ベルト11の幅方向の寸法と同程度かあるいは少し長く設定されている。本実施形態における、帯電ローラー18は、軸方向に複数の部分ローラーに分割されており、帯電用電源19によって部分ローラー毎に印加電圧および印加周期の設定が可能に構成されている。帯電用電源19は、帯電ローラー18に交流電圧を印加する。なお、帯電ローラー18に印加する電圧は、交流電圧に限られず、直流電圧とすることもできる。この場合、所定の周期で電圧の極性が交互に切り替えられるように構成される。
上記の従動ローラー14は、接地されており、搬送ベルト11を挟んで対向する帯電ローラー18に対する対向電極となっている。そして、帯電用電源19は、極性を交互に変えつつ帯電ローラー18を介して電圧を印加して搬送ベルト11を帯電させる。これにより、搬送ベルト11には、正極性に帯電した帯状のプラス帯電領域と、負極性に帯電した帯状のマイナス帯電領域とが、ベルト回動方向に沿って交互に発生する(図3参照)。搬送ベルト11が帯電することにより、記録用紙6が静電気力によって当該搬送ベルト11に吸着する。本発明に係るプリンター1では、記録用紙6に記録する画像等に係る吐出データ等に基づき、記録用紙6に対する吸着力が相対的に高い第1の領域と、前記被着弾物に対する吸着力が相対的に低い第2の領域と、の何れか1つ又は複数の領域を搬送ベルト11に対して設定するように構成されている。この点の詳細については後述する。
記録ヘッド2は、インクタンクから供給されたインクを内部のインク流路に導入し、例えば圧電素子や発熱素子等のアクチュエーター23を駆動させることにより、ノズル22から液体の一種であるインクを、搬送ベルト11上の記録用紙6に向けて吐出する。本実施形態における記録ヘッド2には、搬送ベルト11により搬送されてくる記録用紙6の端部、すなわち、搬送方向の前端、後端、用紙幅方向の両端を検出する紙端センサー21が設けられている。紙端センサー21は、例えば一対の発光素子および受光素子から構成され、搬送ベルト11上の記録用紙6に対して発光素子から光を照射すると共にその反射光を受光素子で受光し、この受光素子における受光状態に基づいて記録用紙6の端部を検出する。本実施形態においては、サイズの異なる複数種類の記録用紙6に対応するため、複数の紙端センサー21が、紙幅方向に沿って記録ヘッド2のケース表面、すなわち、搬送ベルト11に対向する位置に設けられている。また、記録ヘッド2の近傍には、ミスト回収機構8が配設されている。このミスト回収機構8は、ファン24を回転させることで、記録ヘッド2のノズル22からインクが吐出された際に発生するミスト、特に、記録用紙6、記録ヘッド2や搬送ベルト11に到達することなく記録ヘッド2の周囲を漂っているものを吸引して回収する。
図2は、プリンター1の電気的な構成を示すブロック図である。本実施形態におけるプリンター1は、プリンターコントローラー31とプリントエンジン32とで概略構成されている。プリンターコントローラー31は、コンピューター等の外部装置からの印刷データ等が入力される外部インタフェース(外部I/F)33と、各種制御のための制御プログラム等や各種データ等を記憶したメモリー34と、メモリー34に記憶されている制御プログラムに従って各部の統括的な制御を行うCPU35と、アクチュエーター23を駆動してノズル22からインクを吐出させるための駆動信号を発生する駆動信号発生回路36と、を備えている。また、プリントエンジン32は、記録ヘッド2、搬送機構5、ベルト帯電部17、ロータリーエンコーダー20、ミスト回収機構8、紙端センサー21、および湿度センサー25等を有している。
メモリー34は、CPU35のプログラムや各種制御に用いられるデータを記憶する素子であり、ROM、RAM、NVRAM(不揮発性記憶素子)を含む。CPU35は、メモリー34に記憶されているプログラムに従って、プリンター1を構成する各ユニットを制御する。また、CPU35は、外部機器から有線又は無線を通じて受信した印刷データに基づき、RGB表色系からCMY表色系への色変換処理、多階調のデータを所定階調まで減少させるハーフトーン処理、ハーフトーニングされたデータを、所定の配列で並べてドットパターンデータに展開するドットパターン展開処理等を経て吐出データを生成し、当該吐出データを記録ヘッド2のヘッドコントローラー40に送信する。さらに、本実施形態におけるCPU35は、上記の吐出データに基づいて記録用紙6に着弾するインクの液量を算出する液量算出手段として機能し、また、ベルト帯電部17と共に搬送ベルト11の帯電を制御する吸着力制御手段としても機能する。
図3、図4、および図5は、搬送ベルト11に対する吸着領域の基本的な設定処理について説明する模式図である。なお、各図中、搬送ベルト11においてハッチングで示す領域がプラス帯電領域であり、それ以外の領域はマイナス帯電領域である。また、図6は、搬送ベルト11に対する吸着領域の基本的な設定処理を説明するフローチャートである。まず、CPU35は、記録用紙6に対して吐出され着弾されるインクの液量を吐出データに基づき算出する(ステップS1)。具体的には、例えば、記録用紙6を複数の仮想的な領域に分割し、印刷対象である記録用紙6の印刷開始から終了までに対応する吐出データに基づき、各ノズル22から吐出される液量の設計値(目標値)と総吐出回数とにより、領域ごとに液量が算出される。次に、CPU35は、ベルト帯電部17を制御して、搬送ベルト11に対して記録用紙6に対する吸着力が相対的に高い第1の領域A1と、吸着力が相対的に低い第2の領域A2と、の何れか1つ又は複数の領域を設定する(ステップS2)。
本実施形態における搬送ベルト11に対する吸着領域設定に関し、CPU35は、第1の領域A1と第2の領域A2の設定の基準となる閾値を予めメモリー34等に保持しておき、この閾値と領域ごとの液量とに基づいて吸着領域を設定する。この閾値は、記録用紙6の種類が例えば普通紙であれ写真用紙であれ、一定の値としてもよい。なお、閾値に関し、記録用紙6の種類が例えば写真用紙の場合には普通紙の場合よりも1の記録用紙6に対する総液量が多くなり得るので、写真用紙に対する閾値を普通紙に対する閾値よりも小さくすることで、ミストが記録ヘッド2や搬送ベルト11に付着するのを低減してもよい。
そして、CPU35は、上記の閾値に基づいて、対象となる記録用紙6において着弾インクの液量が特に多い高DUTY領域Hdとそれ以外の低DUTY領域Ldを特定する。例えば、個々の領域に着弾するインクの液量と閾値とを比較して、液量が閾値に満たない領域を低DUTY領域Ldと特定する一方、液量が閾値以上となる領域を高DUTY領域Hdと特定する。
そして、CPU35は、上記の閾値に基づいて、対象となる記録用紙6において着弾インクの液量が特に多い高DUTY領域Hdとそれ以外の低DUTY領域Ldを特定する。例えば、個々の領域に着弾するインクの液量と閾値とを比較して、液量が閾値に満たない領域を低DUTY領域Ldと特定する一方、液量が閾値以上となる領域を高DUTY領域Hdと特定する。
そして、CPU35は、ベルト帯電部17を制御して、搬送ベルト11に対し記録用紙6の高DUTY領域Hdに対応する部分を吸着する領域を第2の領域A2として設定し、それ以外の領域を第1の領域A1として設定する。ここで、着弾インクの液量の算出や高DUTY領域あるいは低DUTY領域の特定に関し、記録用紙6毎の吐出データに基づき個別に算出・特定される構成とすることもできるし、又は、一つのまとまった印刷ジョブにおいて時間的に連続する、つまり、時間的に連続して印刷処理(インクの吐出処理)が行われる複数の記録用紙6の吐出データに基づいて算出・特定される構成とすることもできる。また、時間的に連続する記録用紙6のうち、代表する1の記録用紙6に対応する吐出データに基づいて液量および領域を算出・特定し、これに基づいて搬送ベルト11の領域設定について各記録用紙6で共通の設定とされる構成とすることもできる。これにより、記録用紙6毎に設定を行わなくてもよいので、処理速度の向上が図られる。さらに、時間的に連続して印刷処理が行われる複数の記録用紙6のうち、インクが着弾する液量が最も多いものを代表する1の記録用紙6とすることもできる。すなわち、液量が多いほどミストによる汚染リスクが高まるため、液量が最も多い記録用紙6に対応する液量に基づいて搬送ベルト11に対する領域設定が行われることで、ミストによる不具合をより確実に抑制することが可能となる。
なお、「時間的に連続して印刷処理が行われる複数の記録用紙6」には、所謂両面印刷における一の記録用紙6の表面(第1面)および裏面(第2面)も含まれる。すなわち、一の記録用紙6の裏面(第2面)側を吸着して表面(第1面)側にインクを吐出した後、表面(第1面)側を吸着して裏面(第2面)側にインクを吐出する際に、搬送ベルト11に接する表面(第1面)側についての吐出データに基づいて、裏面(第2面)側にインクを吐出する時の搬送ベルト11に対する領域設定を行ってもよい。なお、具体例については後述する。
なお、「時間的に連続して印刷処理が行われる複数の記録用紙6」には、所謂両面印刷における一の記録用紙6の表面(第1面)および裏面(第2面)も含まれる。すなわち、一の記録用紙6の裏面(第2面)側を吸着して表面(第1面)側にインクを吐出した後、表面(第1面)側を吸着して裏面(第2面)側にインクを吐出する際に、搬送ベルト11に接する表面(第1面)側についての吐出データに基づいて、裏面(第2面)側にインクを吐出する時の搬送ベルト11に対する領域設定を行ってもよい。なお、具体例については後述する。
図3は、第1の領域A1と第2の領域A2とで電圧の印加周期を異ならせることで、これらの領域における吸着力(本実施形態においては静電吸着力)を変える構成を例示している。より具体的には、第2の領域A2における帯電周期が、第1の領域A1における帯電周期よりも短く設定される。すなわち、第1の領域A1におけるプラス帯電領域とマイナス帯電領域の帯電幅W1に対して、第2の領域A2におけるプラス帯電領域およびマイナス領域の帯電幅W2が狭く設定される。ここで、帯電用電源19から帯電ローラー18を介して搬送ベルト11に電圧が付与されてから搬送ベルト11が帯電するまでに多少のタイムラグが生じる。このため、搬送ベルト11の第2の領域A2に対する電圧の印加周期が第1の領域A1に対する電圧の印加周期よりも短く設定されることで、第2の領域A2におけるプラス帯電領域およびマイナス領域の帯電量が低下する。このため、第2の領域A2における静電吸着力が、第1の領域における静電吸着力よりも低下する。
図4は、第1の領域A1と第2の領域A2とで印加電圧を異ならせることで、これらの領域における吸着力を変える構成を例示している。より具体的には、第1の領域A1と第2の領域A2とで電圧の印加周期が揃えられているのに対し、第2の領域A2における印加電圧が、第1の領域A1における印加電圧より低く設定される。このように搬送ベルト11において第2の領域A2に対する印加電圧が第1の領域A1に対する印加電圧よりも低く設定されることで、第2の領域A2における静電吸着力が、第1の領域における静電吸着力よりも低下する。
図5は、第1の領域A1と第2の領域A2とで印加電圧および電圧印加周期の両方を異ならせることで、これらの領域における吸着力を変える構成を例示している。より具体的には、第2の領域A2における帯電周期が、第1の領域A1における帯電周期が短く設定され、さらに、第2の領域A2における印加電圧が、第1の領域A1における印加電圧より低く設定される。この構成によれば、第2の領域A2における静電吸着力が、第1の領域A1における静電吸着力よりも一層大きく低下する。
このように、吐出データに基づき算出されたインクの液量に基づき、記録用紙6に対する吸着力が相対的に高い第1の領域A1と吸着力が相対的に低い第2の領域A2が設定される。もちろん、独立した高DUTY領域Hdが複数ある場合には、これに応じて第2の領域A2が複数設定される(詳細については後述する)。そして、搬送ベルト11は、設定された吸着力で記録用紙6を吸着しつつ搬送する(ステップS3)。すなわち、記録用紙6における低DUTY領域Ldは搬送ベルト11の第1の領域で支持され、高DUTY領域Hdは搬送ベルト11の第2の領域で支持される。記録ヘッド2の下方まで記録用紙6が搬送ベルト11により搬送されると、記録ヘッド2のヘッドコントローラー40は、吐出データに基づき各ノズル22に対応するアクチュエーター23に対して駆動信号を選択的に印加し、ノズル22からインクを吐出させる制御を行う。高DUTY領域Hdに対するインクの吐出時には、低DUTY領域Ldの場合を比較してより多くのミストが生じるが、高DUTY領域Hdを支持している第2の領域A2の吸着力が第1の領域A1の吸着力よりも低く設定されているので、漂うミストが帯電したとしても、これらのミストのうち、搬送ベルト11側に引き寄せられたり搬送ベルト11に対して反発したりするミストが少なくなるので、記録用紙6側もしくは記録ヘッド2側には向かいにくく、これらのミストはミスト回収機構8によって回収される。一方、記録用紙6における低DUTY領域Ldを支持している第1の領域A1の吸着力が第2の領域A2の吸着力よりも高く設定されているので、記録用紙6が搬送ベルト11から浮いたり反ったりすることが抑制される。これにより、記録用紙6が記録ヘッド2に接触する等の不具合を抑制しつつ、ミストにより搬送ベルト11や記録ヘッド2等が汚染されることが低減される。
図7は、着弾液量に加えて記録用紙6の種類(カールのしやすさ)を考慮した場合の吸着力強度の設定例を示す表である。上述した例は、記録用紙6に対する着弾インクの液量に基づいて相対的に吸着力が高い第1の領域A1と相対的に吸着力が低い第2の領域A2を搬送ベルト11に設定する構成であったが、液量だけでなく記録用紙6の反りやすさ(カールのしやすさ)を考慮して吸着力を設定してもよいし、また、吸着力も3つ以上のレベルで設定してもよい。すなわち、図7に示すように、記録用紙6に対する着弾インクの液量が多く、且つ、記録用紙6がカールしやすい場合、中程度の吸着力に設定される。同様に、記録用紙6に対する着弾インクの液量が少なく、且つ、記録用紙6がカールしにくい場合、吸着力は中に設定される。また、着弾インクの液量が少なく、且つ、記録用紙6がカールしやすい場合、吸着力は強に設定される。これに対し、着弾インクの液量が多く、且つ、記録用紙6がカールしにくい場合、吸着力は弱に設定される。なお、記録用紙6のカールしやすさについては、例えば、プリンタードライバーを介したユーザーによる用紙設定に基づき判定することができる。
次に、種々の条件を考慮した場合の搬送ベルト11に対する吸着領域の応用的な設定処理の一例について図8のフローチャートを参照しつつ説明する。
吸着領域の設定処理では、まず、ステップS11において、湿度センサー25により検出された湿度が、予め定められた閾値以下であるか否かが判定される。湿度が閾値(例えば、60%)を超えたと判定された場合(S11でNo)、記録用紙6が水分を含んで反りや浮きが生じやすくなるため、この場合、吐出データに基づく液量の多少に拘わらず、用紙の反りや浮きの防止が優先される。具体的には、ステップS12において、搬送ベルト11において記録用紙6を載置する領域全体が1つの領域として第1の領域A1が設定される。これにより、比較的強い吸着力で記録用紙6全体が搬送ベルト11に吸着されるので、特により高湿下での記録用紙6の反りや浮きをより確実に抑制して安定した搬送を行うことが可能となる。
吸着領域の設定処理では、まず、ステップS11において、湿度センサー25により検出された湿度が、予め定められた閾値以下であるか否かが判定される。湿度が閾値(例えば、60%)を超えたと判定された場合(S11でNo)、記録用紙6が水分を含んで反りや浮きが生じやすくなるため、この場合、吐出データに基づく液量の多少に拘わらず、用紙の反りや浮きの防止が優先される。具体的には、ステップS12において、搬送ベルト11において記録用紙6を載置する領域全体が1つの領域として第1の領域A1が設定される。これにより、比較的強い吸着力で記録用紙6全体が搬送ベルト11に吸着されるので、特により高湿下での記録用紙6の反りや浮きをより確実に抑制して安定した搬送を行うことが可能となる。
一方、ステップS11において湿度が閾値以下であると判定された場合(S11でYes)、すなわち、大気中の湿度による記録用紙6の反り等の発生の虞が少ないと判定された場合、続いてステップS13において、記録用紙6のサイズが所定サイズ以上であるか否かが判定される。記録用紙6のサイズ(搬送方向の前端から後端までの寸法、あるいは、幅方向の一端から他端までの寸法)は、例えば、プリンタードライバーを介した用紙サイズ設定や、紙端センサー21による検出に基づいてCPU35が把握することが可能である。記録用紙6のサイズが所定サイズ(例えばA4)に満たないと判定された場合(S13でNo)と判定された場合、記録用紙6が比較的小さいため、複数の領域設定は行われない。具体的には、ステップS12において吐出データに基づく液量に基づいて、搬送ベルト11の記録用紙6を載置する領域全体が1つの領域として第1の領域A1または第2の領域A2の何れかに設定される。すなわち、吐出データから算出される液量が閾値未満である場合には第1の領域A1に設定され、算出される液量が閾値以上である場合には第2の領域A2に設定される。
ステップS13において、記録用紙6のサイズが所定サイズ以上であると判定された場合(S13でYes)と判定された場合、記録用紙6が比較的大きいため、以下においては複数の領域設定が行われる。まず、ステップ14において、設定対象の領域が、上記の紙端センサー21等のセンサーに対向するか否かが判定される。本実施形態においては、紙端センサー21の直下を通過するか領域であるか否かが判定される。そして、紙端センサー21等のセンサーに対向する領域であると判定された場合(S14でYes)、ステップS15において、当該領域として、第2の領域A2が設定される。これにより、インクの吐出に伴ってミストが生じたとしても、漂うミストのうち、搬送ベルト11に対して反発して記録ヘッド2に付着するミストや、搬送ベルト11に引き寄せられて搬送ベルト2に付着するミストが、第1の領域A1が設定される場合よりも低減し、結果的に紙端センサー21にミストが付着することが抑制される。領域が設定された後、ステップS19の処理が行われる(後述)。これにより、センサーにミストが付着して検出に不具合が生じることを抑制することが可能となる。センサーとしては、ミストが付着すると不具合が生じやすいもの、特に光学センサーが挙げられる。光学センサーとしては、本実施形態における紙端センサー21の他、記録用紙6に印刷された内容(インクの着弾パターン)を読み取るスキャナー等が挙げられる。
上記ステップS14において、設定対象の領域が紙端センサー21等のセンサーに対向しないと判定された場合(S14でNo)と判定された場合、続いて、ステップS16において、設定対象の領域が、記録用紙6の端部(搬送方向の両端部または用紙幅方向の両端部の何れか)に対応する領域であるか否かが判定される。記録用紙6の端部に対応する領域であると判定された場合(S16でYes)、ステップS17において、当該領域として、第1の領域A1が設定される。これにより、記録用紙6において反りの生じやすい端部に対応する領域の吸着力が比較的高く設定されるので、記録用紙6のサイズが相対的に大きくインクの着弾による膨張収縮の影響が相対的に大きくても、記録用紙6の端部の反りを抑制することができる。これに対し、ステップS16において、設定対象の領域が記録用紙6の端部に対応する領域ではない(記録用紙6の中央部分の領域である)と判定された場合(S16でNo)、ステップS18において、吐出データに基づく液量に応じて、第1の領域A1または第2の領域A2が設定され、続いてステップS19の処理が行われる。ステップS19では、搬送ベルト11における記録用紙6を吸着する領域の中で未設定の領域があるか否かが判定され、未設定の領域があると判定された場合(S19でYes)、ステップS14に戻り、全ての領域の設定が完了するまで以降の処理が行われる。そして、未設定の領域は無い(全ての領域について吸着力の設定が完了した)と判定された場合(S19でNo)、吸着領域設定処理は終了する。
図9は、両面印刷の場合における表面(第1面)を印刷した後の裏面(第2面)を印刷する際の搬送ベルト11に対する吸着力強度の設定例を示す表である。CPU35は、第1面に対応する吐出データと第2面に対応する吐出データに基づき、第2面にインクを吐出する時の搬送ベルト11に対する領域設定を行う。すなわち、図9に示すように、第1面に対する着弾インクの液量が比較的多い場合(高DUTY)、水分が多く第1面側が吸着されにくくなっているため、第2面に対する着弾インクの多少に拘わらず第1面側を吸着する領域が第1の領域(帯電幅広・高電圧)に設定される。これにより、記録用紙6が搬送ベルト11から浮いたり反ったりすることが抑制される。また、第1面に対する着弾インクの液量が比較的少なく(低DUTY)、且つ、第2面に対する着弾インクの液量が比較的少ない(低DUTY)場合、ミストによる汚染のおそれが少ないため、第1面側を吸着する領域が第1の領域に設定される。これにより、記録用紙6が搬送ベルト11から浮いたり反ったりすることなく安定して搬送される。一方、第1面に対する着弾インクの液量が比較的少なく(低DUTY)、且つ、第2面に対する着弾インクの液量が比較的多い(高DUTY)場合、第2面に対する印刷時にミストが発生しやすいため、第1面側を吸着する領域が第2の領域(帯電幅狭い・低電圧)に設定される。これにより、ミストによる汚染が抑制される。
なお、必ずしも例示した全ての条件に応じて吸着領域の設定が行わなくてもよく、基本的な吸着領域の設定処理に対し、任意の条件を採用して設定処理を行うようにすることができる。また、どの条件を優先させるかについても任意に選択することが可能である。また、ステップS18の結果、全ての領域が第1の領域A1に設定されてもよいし、あるいは第2の領域A2にされてもよい。
また、吸着手段に関し、上記実施形態では搬送ベルト11を例示したが、これには限られず、ドラム状の吸着手段を採用することもできる。さらに、記録用紙6を静電吸着力により吸着させる構成を例示したが、これには限られず、例えば、吸引ポンプにより負圧を与えることで記録用紙6を吸着する構成を採用することもできる。この場合、吸着する領域ごとに吸引力を変更することで、第1の領域A1や第2の領域A2を設定することができる。
また、閾値に関し、上記実施形態では予め定められたものをメモリー等に保持しておく構成を例示したが、CPU35は、吐出データから算出した液量、例えば、記録用紙6に着弾するインクの総液量に基づき閾値を求めてもよい。例えば、算出された総液量を分割した領域の数で除した値の例えば50%とされる。これにより、吐出データに基づき算出された液量に基づき吸着領域設定の基準となる閾値がその都度求められ、この閾値に基づき第1の領域または第2の領域の何れかが吸着手段に対して設定されるので、ミストによる汚染の抑制と記録用紙6の安定した搬送の両立がより適切に図られる。
また、上記実施形態では、記録ヘッド2の位置を固定した状態で、当該記録ヘッド2に対して記録用紙6を相対的に移動させつつインクの吐出を行う所謂ライン型のプリンター1を例示したが、これには限られず、記録ヘッド2を記録用紙6の搬送方向に交差する方向(用紙幅方向)に移動させつつインクの吐出を行う所謂シリアル型のプリンターにも本発明を適用することが可能である。
また、本発明は、ノズルからインク等の液体を吐出させる液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置であれば、プリンターに限らず、プロッター、ファクシミリ装置、コピー機等、各種のインクジェット式記録装置や、記録装置以外の液体吐出装置、例えば、ディスプレイ製造装置、電極製造装置、チップ製造装置等にも適用することができる。
1…プリンター,2…記録ヘッド,5…搬送機構,6…記録用紙,8…ミスト回収機構,11…搬送ベルト,17…ベルト帯電部,18…帯電ローラー,19…帯電用電源,20…ロータリーエンコーダー,21…紙端センサー,22…ノズル,23…アクチュエーター,25…湿度センサー,31…プリンターコントローラー,32…プリントエンジン,35…CPU,36…駆動信号発生回路,40…ヘッドコントローラー
Claims (10)
- 吐出データに基づき、液体の被着弾物に対してノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記被着弾物を吸着する吸着手段と、
前記液体吐出ヘッドに対して前記吸着手段を相対的に移動させて前記被着弾物を搬送する搬送手段と、
前記吸着手段による前記被着弾物に対する吸着力を制御する吸着力制御手段と、
前記吐出データに基づき、前記被着弾物に着弾する液体の液量を算出する液量算出手段と、
を備え、
前記吸着力制御手段は、前記液量算出手段により算出された液量に基づき、前記被着弾物に対する吸着力が相対的に高い第1の領域と、前記被着弾物に対する吸着力が相対的に低い第2の領域と、の何れか1つ又は複数の領域を前記吸着手段に対して設定し、
前記吸着手段は、前記吸着力制御手段の設定に応じた吸着力で前記被着弾物を吸着することを特徴とする液体吐出装置。 - 前記液量算出手段は、算出した液量に基づき前記第1の領域と前記第2の領域との設定の基準となる液量についての閾値を求め、
前記吸着力制御手段は、前記液量算出手段により算出された液量および閾値に基づき前記第1の領域または前記第2の領域の何れかを前記吸着手段に対して設定することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。 - 前記被着弾物の大きさを検出する検出手段を備え、
前記吸着力制御手段は、前記検出手段により検出された被着弾物の大きさ及び前記算出された液量に基づき、前記第1の領域または前記第2の領域を前記吸着手段に対して設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体吐出装置。 - 前記液量算出手段は、前記液体吐出ヘッドにより時間的に連続して液体の吐出が行われる複数の被着弾物に着弾する液体の総量を、各被着弾物に対応する吐出データに基づき算出し、
前記吸着力制御手段は、算出された総量に基づき、前記各被着弾物に共通して前記第1の領域または前記第2の領域を前記吸着手段に対して設定することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液体吐出装置。 - 前記液量算出手段は、前記液体吐出ヘッドにより時間的に連続して液体の吐出が順次行われる複数の被着弾物のうちの1の被着弾物に着弾する液量を、当該1の被着弾物に対応する吐出データに基づき算出し、
前記吸着力制御手段は、算出された液量に基づき、各被着弾物に共通して前記第1の領域または前記第2の領域を前記吸着手段に対して設定することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液体吐出装置。 - 前記液量算出手段は、前記液体吐出ヘッドにより時間的に連続して液体の吐出が順次行われる複数の被着弾物のうち、着弾する液量が最も多いものを前記1の被着弾物とすることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
- 前記液量算出手段は、前記液体吐出ヘッドにより被着弾物の第1の面に対して液体を吐出した後、当該第1の面とは反対側の第2の面に液体を吐出する場合において、前記第1の面に対応する吐出データから液量を算出し、
前記吸着力制御手段は、算出された液量に基づき、前記第1の面側を吸着するときの前記吸着手段に対して前記第1の領域または前記第2の領域を設定することを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。 - 湿度を検出する湿度検出手段を有し、
前記吸着力制御手段は、前記湿度検出手段により検出された湿度に基づき、前記第1の領域または前記第2の領域を前記吸着手段に対して設定することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載の液体吐出装置。 - 被着弾物の端部または当該被着弾物に着弾した液体の着弾パターンを検出するセンサーを有し、
前記吸着力制御手段は、前記吸着手段と前記センサーとの相対位置に応じて、当該吸着手段における前記センサーと対向する部分に対し前記第1の領域または前記第2の領域を設定することを特徴とする請求項1から請求項8の何れか一項に記載の液体吐出装置。 - 吐出データに基づき液体の被着弾物に対してノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記被着弾物を吸着する吸着手段と、前記液体吐出ヘッドに対して前記吸着手段を相対的に移動させて前記被着弾物を搬送する搬送手段と、前記吸着手段による前記被着弾物に対する吸着力を制御する吸着力制御手段と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、
吐出データに基づき前記被着弾物に着弾する液体の液量を算出する工程と、
算出された液量に基づき、前記被着弾物に対する吸着力が相対的に高い第1の領域と、前記被着弾物に対する吸着力が相対的に低い第2の領域と、の何れか1つ又は複数の領域を前記吸着手段に対して設定する工程と、
を有することを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
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JP2015033738A JP2016155635A (ja) | 2015-02-24 | 2015-02-24 | 液体吐出装置、および、液体吐出装置の制御方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018192645A (ja) * | 2017-05-12 | 2018-12-06 | ブラザー工業株式会社 | 記録装置 |
-
2015
- 2015-02-24 JP JP2015033738A patent/JP2016155635A/ja active Pending
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