JP2016153449A - 多孔質セルロース粒子の製造方法 - Google Patents

多孔質セルロース粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、細孔径分布が狭く且つ機械的強度が高い多孔質セルロース粒子を簡便に効率良く製造する方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明に係る多孔質セルロース粒子の製造方法は、a)低温において、少なくとも、セルロース、水、強塩基化合物およびエーテル系界面活性剤を混合してセルロース分散液を作製する工程、b)少なくとも前記セルロース分散液および分散媒を混合してエマルションを作製する工程、および、c)前記エマルションを凝固溶媒に接触させる工程を含むことを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、細孔径分布が狭く且つ機械的強度が高い多孔質セルロース粒子を簡便に効率良く製造するための方法に関する。
多孔質セルロース粒子は、他の合成系高分子に比べて安全性が高く、非特異的吸着が少ないという利点があることから、クロマトグラフィー用吸着体などの基材として用いられている。クロマトグラフィーの中でもアフィニティークロマトグラフィーは、特異的吸着により目的物を効率良く精製でき且つ不要物濃度を低減できる。よって多孔質セルロース粒子は、医療用吸着体や抗体医薬品精製用吸着体の基材として利用されてきている。アフィニティークロマトグラフィーに関しては、特に、リウマチ、血友病、拡張型心筋症の治療用吸着体または医療用吸着体として、アフィニティーリガンドであるプロテインAを多孔質担体に固定化した吸着体が注目されている(例えば非特許文献1,非特許文献2)。
多孔質セルロース粒子の製造は、セルロースの溶解が困難であるとされていたことから、通常の合成ポリマーと比べて煩雑な工程を含むものが多い。例えば、チオシアン酸カルシウム水溶液など腐食性や毒性が高く、製造設備への要求が高い溶媒に溶解した上で凝固する方法が知られている(例えば特許文献1)。この方法で用いられるセルロース溶液は特異な挙動を示し、また、この方法で得られる多孔質セルロース粒子はかなり大きい細孔を有しており且つ細孔径分布も広いことが知られている(例えば非特許文献3)。よって、当該方法で得られた多孔質セルロース粒子を抗体などの吸着体用基材として用いる場合、比表面積が小さいことから、高い吸着性能を示すことは期待できない。
一方、セルロースの溶解性を高めるためにセルロースの水酸基に置換基を導入し、汎用の溶媒に溶解させて造粒を行い、造粒後に置換基を脱離させて多孔質セルロース系担体を得る方法が知られている(例えば特許文献2)。しかし、この方法は煩雑であり、また、置換基を導入したり脱離させたりする過程で分子量の低下が起こり、近年求められている高速処理や大スケールで使用するのに適切な機械的強度が得られ難い傾向がある。
また、セルロースを低温の水酸化ナトリウム水溶液に溶解するという方法が知られている(例えば特許文献3,特許文献4)。しかしながら、特許文献3に記載の方法では、セルロースと水素結合切断剤(a hydrogen bond-cleaving solution)の混合物を、加圧下、100〜350℃で加熱する工程を経てから、アルカリ水溶液に溶解している。また、特許文献4に記載の方法では、セルロースを強塩基溶液に分散させ、当該分散液をいったん凍結させた後に溶解するという工程が必要である。これらのような工程は、工業的に不利である。
さらに、特許文献5にはアルカリ溶液に溶解性を示すセルロースが開示されているが、当該セルロースはミクロフィブリルの繊維径が1μm以下、さらには500nm以下に微細化されたものである。このような微細化処理は、工業的製造には適さない。
ごく最近、特許文献6に示されるように、微生物セルロースをアルカリ溶液に溶解してセルロース溶液を作製し、分散媒を添加後に粒子化した後、微生物セルロース粒子を凍結させ、次に洗浄することによりセルロース粒子を得る方法が開示されているが、工程が煩雑で工業的な製法には適していない。
また、本発明者らは、低温のアルカリ水溶液を用い、セルロースを完全に溶解させることなく、分散液の状態からセルロースを簡便に粒子化する技術を開発している(特許文献7)。
特開2009−242770号公報 国際公開第2006/025371号パンフレット 米国特許第4634470号公報 米国特許第5410034号公報 特開平9−124702号公報 特開2010−236975号公報 国際公開第2012/121258号パンフレット
Annals of the New York Academy of Sciences,Vol.1051,(2005),p.635−646 American Heart Journal,Vol.152,Number 4,(2006),p.712e1−712e6 Journal of Chromatography,Vol.195,(1980),p.221−230
上述したように、本発明者らは、毒性や腐食性の高い溶媒を用いず、且つ工業的に不利である煩雑な工程を経ることなく、多孔質セルロース粒子をセルロース分散液から簡便に効率良く製造する方法を開発している。
しかし、多孔質セルロース粒子をアフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーに用いる吸着体基材として用いる場合には、多孔質セルロース粒子の細孔径はできるだけ均一であり、その分布は狭い方が好ましい。細孔径分布の狭い多孔質セルロース粒子を吸着体基材として用いれば、目的物をより均一に吸着できるようになり、所定条件での目的物の精製を再現性良く行うことが可能になる。
また、近年、例えば抗体医薬品の実用化につれ、抗体などの目的物をアフィニティークロマトグラフィーにより大量かつ迅速に精製する必要が生じてきている。その場合、目的物を含む溶液を高線速で大量にカラムへ通液しなければならない。その際、吸着体基材の強度が十分でないと、このような高線速での大量精製に耐えることができない。
そこで本発明は、細孔径分布が狭く且つ機械的強度が高い多孔質セルロース粒子を簡便に効率良く製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた。その結果、エーテル系界面活性剤を用いてセルロース分散液を調製し、当該分散液を分散媒に分散させてエマルションを調製し、セルロース分散液の液滴を凝固させることによって多孔質セルロース粒子を簡便に効率良く製造でき、また、かかる多孔質セルロース粒子は細孔径分布が狭く且つ機械的強度が高いことを見出して、本発明を完成した。
本発明を以下に示す。
[1] 多孔質セルロース粒子を製造するための方法であって、
a)低温において、少なくとも、セルロース、水、強塩基化合物およびエーテル系界面活性剤を混合してセルロース分散液を作製する工程、
b)少なくとも前記セルロース分散液および分散媒を混合してエマルションを作製する工程、
c)前記エマルションを凝固溶媒に接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
[2] 前記セルロースに対して前記エーテル系界面活性剤を2質量倍以上用いる上記[1]に記載の方法。
[3] 前記エーテル系界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルまたはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーである上記[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記分散媒が、動植物油脂、水素添加動植物油脂、脂肪酸グリセリド、脂肪族炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される1以上の油溶性溶媒である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記凝固溶媒が、アルコール系溶媒、または水とアルコール系溶媒との混合溶媒であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
本発明方法では、原料セルロースを溶解することはせず、セルロースの分散液から多孔質セルロース粒子を簡便に効率良く製造することができる。よって、原料セルロースを溶解するための煩雑で工業的に不利な工程を経る必要がなく、また、特殊で危険な溶媒のために高度な設備を設置する必要もない。さらに、本発明方法により製造される多孔質セルロース粒子の細孔径分布は狭く、細孔径の均一度は高い。また、本発明に係る多孔質セルロース粒子の機械的強度は高い。よって、本発明の多孔質セルロース粒子をクロマトグラフィー用吸着体基材として用いれば、目的物をより均一に再現性良く吸着できるようになり、目的物の所定条件での精製を高線速で再現性良く行うことが可能である。
実施例1により得られた本発明の多孔質セルロース粒子のSEM写真である。 実施例1〜3および比較例1により得られた多孔質セルロース粒子の細孔径分布を示すグラフである。 実施例4〜6により得られた多孔質セルロース粒子の細孔径分布を示すグラフである。
以下、本発明方法を工程ごとに説明する。
工程a: セルロース分散液の作製工程
本工程では、低温において、少なくとも、セルロース、水、強塩基化合物およびエーテル系界面活性剤を混合してセルロース分散液を作製する。
なお、本発明において「分散」とは、溶媒である水中でセルロースが凝集せず、均一に分散していることが目視で確認できる状態をいうものとする。
本発明において「低温」とは、常温より低い温度を指す。即ち本工程では、少なくとも、セルロース、水、強塩基化合物およびエーテル系界面活性剤を常温より低い温度で混合してセルロース分散液を作製する。本発明の「低温」は、常温より低ければ大きな問題は無いが、得られる多孔質セルロース粒子の真球度が高くなるため、20℃以下が好ましく、15℃以下がより好ましい。当該温度が20℃以下であれば、セルロース分散液を効率的に調製することができる。また、低温である程、例えば10℃以下であれば、セルロース分散液の着色を抑制することができ、また、セルロースの分散性・膨潤性が高くなるため好ましい。当該温度としては、8℃以下がさらに好ましく、6℃以下がよりさらに好ましく、5℃以下が特に好ましい。一方、当該温度の下限は特に制限されないが、−20℃以上であれば温調設備が簡便でランニングコストも低くなるため好ましい。また、−10℃以上であればアルカリ水溶液の凍結を抑制することができるため好ましい。当該温度としては、−5℃以上がより好ましく、−2℃以上がさらに好ましく、−1℃以上がよりさらに好ましく、セルロース分散液に用いる水のハンドリング性や温度調整の簡便さから0℃以上であることが最も好ましい。
原料として用いるセルロースの種類には特に限定は無い。例えば、本発明方法ではセルロースを溶解させなくてもよいので、溶解性を改善するための置換基を導入したセルロースなど、置換セルロースを用いる必要はなく、通常の無置換セルロースを原料として用いることができる。但し、セルロースをアルカリ水溶液に効率的に分散させるために、セルロースとしてはセルロース粉末を用いることが好ましい。また、セルロース粉末は微細なものほど好ましい。例えば、体積基準や個数基準の粒度分布から求められる原料セルロースの体積平均粒子径や個数平均粒子径としては100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましい。原料セルロースは微細であるほど好ましいといえるが、過剰に微細な原料セルロースを用いようとするとかえって全体の製造効率が低下したりコスト高になるおそれがあり得るので、上記平均粒子径としては10nm以上が好ましい。
原料セルロースの分子量は特に制限されないが、重合度としては1000以下であることが好ましい。重合度が1000以下であれば、アルカリ水溶液への分散性・膨潤性が高くなり、好ましい。また重合度が10以上であれば、得られる多孔質セルロース粒子の機械的強度が大きくなるため好ましい。原料セルロースの重合度としては、50以上がより好ましく、100以上がさらに好ましく、200以上がよりさらに好ましく、250以上が特に好ましく、また、500以下がより好ましく、400以下がさらに好ましく、350以下がよりさらに好ましい。
セルロース分散液におけるセルロースの濃度は特に制限されず適宜調整すればよいが、例えば、1質量%以上、20質量%以下程度とすればよい。当該濃度としては、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
セルロース分散液の溶媒として用いる水の種類は特に制限されず、例えば、超純水、純水、蒸留水、精製水、水道水、井戸水などを用いることができる。特に、本発明に係る多孔質セルロース粒子を医薬品の精製に用いる場合には、超純水、純水、蒸留水、精製水など不純物の少ない水を用いることが好ましい。
セルロース分散液の調製に用いる強塩基化合物は、溶媒である水に溶解するものであり、且つ水に溶解して強塩基性を示すものであれば特に制限なく使用することができる。例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を用いることができ、特に製品安全性や価格の面から水酸化ナトリウムが最も好ましく使用できる。
強塩基化合物の使用量は特に制限されず、適宜調整すればよいが、例えば、強塩基化合物と水との合計量に対して3質量%以上、20質量%以下とすることができる。当該濃度がこの範囲に含まれていれば、セルロース分散液におけるセルロースの分散性と膨潤性が高くなるため好ましい。当該濃度としては、5質量%以上がより好ましく、6質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上がよりさらに好ましく、また、15質量%以下がより好ましく、12質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下がよりさらに好ましい。
本発明において「エーテル系界面活性剤」とは、親水性部分と疎水性部分とがエーテル基(−O−)で結合された非イオン界面活性剤をいう。本発明においては、その理由は必ずしも明らかではないが、セルロース分散液の液滴を含むエマルションを作製するに当たりエーテル系界面活性剤を用いることにより、得られる多孔質セルロース粒子の細孔径分布が狭くなり、また、その強度が高くなる。
本発明で用いるエーテル系界面活性剤における親水性部分としてはアルキレンオキシド鎖(−(CHR1CHR2O)n−H[式中、R1とR2は独立して水素原子またはC1-2アルキル基を示す])が一般的であり、本発明におけるアルキレンオキシド単位の重合数としては2以上が好ましく、4以上がより好ましく、また、20以下が好ましく、16以下がより好ましい。また、疎水性部分としてはC6-10アリール基やC8-20アルキル基が一般的である。なお、C6-10アリール基は、1以上、3以下のC6-10アリール基または(C6-10アリール)C1-6アルキル基でさらに置換されていてもよい。(C6-10アリール)C1-6アルキル基としては、例えば、1−フェニルエチル基を挙げることができる。
本発明で用いるエーテル系界面活性剤のHLBとしては、6以上、20以下が好ましい。当該HLB値が6以上であれば、エーテル系界面活性剤は水溶媒中に良好に分散し、エマルションを作製することがより確実に可能になる。当該HLB値としては8以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、12以上がよりさらに好ましく、15以上が特に好ましい。特にHLB値が15以上であれば、得られる多孔質セルロース粒子の細孔径分布がより一層狭くなる傾向がある。
具体的な界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを挙げることができる。ここで、水溶性部分であるポリオキシアルキレン鎖は、エチレン部分に1または2のアルキル基が置換していてもよい上記ポリオキシエチレン鎖を示し、当該アルキレンの炭素数としては2以上、5以下が好ましい。ポリオキシアルキレンとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシペンチレンを挙げることができ、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンが好ましく、ポリオキシエチレンがより好ましい。疎水性部分であるアルキル基の炭素数としては、例えば、8以上、20以下を挙げることができる。当該アルキル基としては、C8-18アルキル基がより好ましく、C8-16アルキル基がさらに好ましく、C10-14アルキル基がよりさらに好ましい。界面活性剤として、より具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどを挙げることができる。
エーテル系界面活性剤の使用量は特に制限されず、適宜調整すればよいが、例えば、前記セルロース分散液全体に対して0.1質量%以上、15質量%以下程度になるようにすればよい。
また、セルロースに対するエーテル系界面活性剤の使用量としては、1質量倍以上、5質量倍以下とすることができる。当該割合が1質量倍以上であれば、得られる多孔質セルロース粒子の細孔径分布をより確実に狭くすることができ、また、その強度をより確実に高めることが可能になる。一方、当該割合が高過ぎると、多孔質セルロース粒子の製造効率が低下するおそれがあり得るため、当該割合としては5質量倍以下が好ましい。当該割合としては1.5質量倍以上がより好ましく、1.7質量倍以上がさらに好ましく、2質量倍以上が特に好ましく、また、4質量倍以下がより好ましく、3質量倍以下がさらに好ましい。特に当該割合が2質量倍以上である場合、得られる多孔質セルロース粒子の強度が顕著に向上する。
前記エーテル系界面活性剤が液体であれ、固体であれ、水などへそのまま添加してもよいし、溶媒に溶解させて溶液として添加してもよい。エーテル系界面活性剤の添加時の温度条件に特に限定は無いが、25℃以下であることが粒子の着色を防ぐ観点から好ましい。また、エーテル系界面活性剤の添加後に常温、より具体的には25℃まで昇温してもよい。また、エーテル系界面活性剤はセルロース分散液中で均一分散または溶解している必要は必ずしも無いが、均一分散または溶解させたい場合は、自然拡散や攪拌、振盪といった操作を実施することができる。
セルロース、水、強塩基化合物およびエーテル系界面活性剤の添加順序は、特に制限されない。例えば、セルロースを水に分散させておき、そこへ強塩基化合物またはその水溶液とエーテル系界面活性剤を添加してもよいし、強塩基化合物とエーテル系界面活性剤を含む水溶液へ、セルロースを添加してもよい。本発明では、エマルションの調製前、セルロース分散液にエーテル系界面活性剤を配合することにより、得られる多孔質セルロース粒子の細孔径分布が特に狭くなる。
本発明では、低温下でセルロース分散液を調製する。具体的には、水、強塩基化合物水溶液、エーテル系界面活性剤水溶液、強塩基化合物とエーテル系界面活性剤を含む水溶液、セルロースと水との混合物などを事前に冷却しておいたり、添加速度を調整するなどして、セルロース分散液の作製時を通じて低温を維持することが重要である。また、セルロース、水、強塩基化合物およびエーテル系界面活性剤を混合した後は、低温を維持しつつ当該混合物を攪拌することにより、セルロースを分散させることが好ましい。
本工程においては、特に、セルロースや強塩基化合物を混合する前に水を低温に冷却しておくことが好ましい。また、水とセルロースまたは強塩基化合物との混合の際には、混合物を低温に維持しておくことが好ましい。さらに、少なくともセルロースと水を含む混合物に強塩基化合物またはその水溶液を添加する場合には、混合物の温度が上がらないよう強塩基化合物またはその水溶液を少量ずつ添加することが好ましい。
工程b: エマルションの作製工程
本工程では、少なくとも、前記工程aで得られたセルロース分散液と分散媒を混合してエマルションを作製する。
エマルションを構成する分散媒は、セルロース分散液の溶媒である水と混和することなく、セルロース分散液の液滴が分散媒中に分散しているw/o型エマルションを形成できるものであれば特に制限されない。分散媒としては、例えば、動植物油脂、水素添加動植物油脂、脂肪酸グリセリド、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒を挙げることができる。
動植物油脂としては、例えば、パーム油、シア脂、サル脂、イリッペ脂、豚脂、牛脂、ナタネ油、米油、落花生油、オリーブ油、コーン油、大豆油、シソ油、綿実油、ヒマワリ油、月見草油、ゴマ油、サフラワー油、ヤシ油、カカオ脂、パーム核油、魚油、ワカメ油、コンブ油などを挙げることができる。水素添加動植物油脂としては、例えば、パーム硬化油、パーム極度硬化油、ナタネ硬化油、ナタネ極度硬化油、大豆硬化油、豚脂硬化油、魚油硬化油などを挙げることができる。脂肪酸グリセリドとしては、トリ−、ジ−、モノ−グリセリドのいずれでもよく、例えば、ステアリン酸グリセリド、パルミチン酸グリセリド、ラウリン酸グリセリドなどを挙げることができる。脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、米ぬかロウなどを挙げることができる。芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどを挙げることができる。
分散媒の使用量は、前記セルロース分散液の液滴を十分に分散できる量とすればよい。例えば、前記セルロース分散液に対して1質量倍以上とすることができる。一方、分散媒の量が多過ぎると廃液量が過剰に増えるおそれがあり得るので、当該割合としては10質量倍以下が好ましい。当該割合としては、2質量倍以上がより好ましく、4質量倍以上がより好ましく、また、8質量倍以下がより好ましく、7質量倍以下がさらに好ましく、6質量倍以下が特に好ましい。
エマルション作製のために、さらに界面活性剤を分散媒に適量添加してもよい。界面活性剤としては、ソルビタンラウレート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
加えて、エマルション中のセルロース液滴を小さくするために、分散媒に増粘剤を適量添加してもよい。増粘剤としてはエチルセルロースが挙げられる。
エマルションは、常法により調製すればよい。例えば、少なくとも前記セルロース分散液および分散媒を含む混合液を激しく攪拌することにより調製することができる。
工程c: 凝固工程
本工程では、前記工程bで得られたエマルションを凝固溶媒に接触させることにより、エマルション中のセルロース液滴に含まれる水溶媒を抽出してセルロース液滴を凝固させ、セルロース粒子を沈殿させる。
凝固溶媒は、前記セルロース分散液の溶媒である水に親和性を示すものであれば特に制限されないが、例えば、アルコール系溶媒、および、水とアルコール系溶媒との混合溶媒を挙げることができる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールなどのC1-4アルコールを挙げることができる。アルコール水溶液における水とアルコール系溶媒の割合は、例えば、水に対するアルコール系溶媒の割合を、体積比で0.25倍以上、19倍以下とすることができる。
凝固溶媒の使用量は特に制限されず適宜調整すればよいが、例えば、前記セルロース分散液の量に対して20v/w%以上、150v/w%以下程度とすることができる。
凝固方法は特に制限されないが、エマルションは不安定である場合があるので、液滴同士が結合しないよう激しく攪拌した状態で凝固溶媒を添加することが好ましい。
凝固溶媒を添加した後は、凝固した多孔質セルロース粒子を濾過や遠心分離などにより分離し、水やアルコールなどで洗浄すればよい。得られた多孔質セルロース粒子は、粒径を揃えるため、篩などを用いて分級してもよい。
本発明では、多孔質セルロース粒子をカラムクロマトグラフィーのための吸着体基材として利用することを志向しているため、多孔質セルロース粒子を架橋することにより、その強度を高めることが好ましい。以下、架橋工程につき説明する。
工程d: 架橋工程
本工程では、溶媒中、多孔質セルロース粒子に架橋剤を作用させることにより、架橋多孔質セルロース粒子を得る。
架橋剤は、セルロース上の水酸基と共有結合を形成できる反応性基を2以上有し、セルロース分子間を架橋できるものをいう。本発明で用いることができる架橋多孔質セルロース粒子の架橋の条件や架橋剤に特に限定は無い。例えばWO2008/146906に記載の方法を用いることができる。この国際公報の全内容が、本願に参考のため援用される。 架橋剤としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ジクロロヒドリンなどのハロヒドリン;2官能性ビスエポキシド(ビスオキシラン);3以上のエポキシ基を有する多官能性ポリエポキシド(ポリオキシラン)を挙げることができる。架橋剤は、一種のみを単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
多孔質セルロース粒子を架橋剤により架橋する反応の溶媒は適宜選択すればよいが、例えば、水の他、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒や、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒などの水混和性有機溶媒を挙げることができる。また、架橋反応溶媒は、2以上を混合して用いてもよい。
架橋反応を促進するために、反応液には塩基を添加してもよい。かかる塩基としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウムなどアルカリ金属の炭酸水素塩;炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどアルカリ金属の炭酸塩;トリエチルアミンやピリジンなどの有機塩基を挙げることができる。
架橋反応は、複数回実施してもよく、各回で反応溶媒や架橋剤を変更してもよい。例えば、1回目の架橋反応を水混和性有機溶媒中で行い、最終回の架橋反応を水中で行ってもよい。この場合、途中の溶媒組成は、1回目と最終回のどちらかと同じであっても異なっていてもよく、それらの中間組成であってもよい。さらには全ての回を水溶媒中で実施してもよい。架橋剤についても同様である。
架橋反応を複数回繰り返す場合、各架橋反応の間では、架橋多孔質セルロースを水などで洗浄して架橋剤を除去することが好ましい。また、架橋反応後は、架橋多孔質セルロース粒子は不溶性であることから、水などの溶媒で洗浄すればよい。
なお、前記セルロース分散液から多孔質セルロース粒子を得るための一般的な方法や、多孔質セルロース粒子の架橋方法などは、WO2012/121258(特許文献7)等に記載されている。この国際公報の全内容が、本願に参考のため援用される。
以上で得られた本発明に係る多孔質セルロース粒子または架橋多孔質セルロース粒子は、細孔径分布が狭い上に高強度であることから、クロマトグラフィーのカラム充填剤として好適に用いることができる。特に、目的吸着物質へ特異的に結合するリガンドを結合させ、アフィニティークロマトグラフィーの吸着体として利用することが好ましい。
本発明における「リガンド」とは、目的吸着物質に対して特異的な親和力を有し、目的吸着物質と相互作用するアフィニティーリガンドをいう。例えば、目的吸着物質が抗体である場合、抗体に特異的に相互作用する抗原、タンパク質、ペプチド断片などを挙げることができる。本発明に係る吸着体のために用いることができるリガンドは、本発明に係る吸着体を用いて精製すべき目的吸着物質に特異的な親和性を有するものであれば特に制限されない。
本発明に係る多孔質セルロース粒子または架橋多孔質セルロース粒子にリガンドを固定化する方法は特に制限されず、常法を用いることができる。
本発明に係る多孔質セルロース粒子または架橋多孔質セルロース粒子にリガンドを結合させた吸着体を使って目的吸着物質を精製するには、当該吸着体と、当該目的吸着物質を含む溶液とを接触させればよい。接触方法は特に制限されず、目的吸着物質を含む溶液中に本発明に係る吸着体を添加してもよいし、カラムに本発明の吸着体を充填し、目的吸着物質を含む溶液を通液することにより、本発明の吸着体に目的吸着物質を選択的に吸着させればよい。本発明に係る吸着体は強度が高いため、特にカラムに充填する場合、高速度での大量の通液が可能になり、目的吸着物質を効率的に精製することができる。また、細孔径分布が狭いため、目的吸着物質をより均一に吸着でき、目的吸着物質の所定条件での精製を再現性良く行うことが可能である。
次に、目的吸着物質が選択的に吸着した本発明の吸着体を洗浄する。さらに、溶出液を用い、目的吸着物質を本発明吸着体から分離することにより、目的吸着物質を精製することができる。溶出液としては、例えば、pHが2.5以上、4.5以下程度の酸性緩衝液を用いることができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1: 架橋多孔質セルロース粒子の作製
(1) 多孔質セルロース粒子の作製
粉末状のセルロース(旭化成ケミカルズ社製「局方セルロースPH−F20JP」)7.3gを92gの冷却水に分散させ、4℃で保持した。そこに35.6wt%水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社)水溶液34.2gを温度が上がらないようゆっくり添加し20分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王社製「エマルゲン105」,HLB9.7)を13g、水を9g添加することによりセルロース分散液を得た。当該セルロース分散液における水酸化ナトリウム濃度は7.8wt%、セルロース濃度は4.7wt%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル濃度は8.3wt%であった。その後、得られたセルロース液滴分散液を15℃まで昇温した。翼径45mm、翼間隔75mmの2段タービン翼を備えた内径85mmの円筒型容器に、当該セルロース液滴分散液と、ソルビタンモノオレエートを8.0g含有した15℃の1,2−ジクロロベンゼン890gを入れ、600rpmで10分間撹拌することによりエマルションを形成した。次いで、メタノールを150mL添加し、セルロース粒子を得た。得られたセルロース粒子をエタノールで洗浄した後、さらに水で洗浄した。回収したセルロース粒子に含まれる溶媒などを2−メチル−2−プロパノールで置換し、凍結乾燥後、走査型電子顕微鏡(日立製作所「S−800」,以下「SEM」と称する)で撮影した。その結果、セルロース粒子は図1に示したような球状多孔質粒子であることが確認された。
(2) 多孔質粒子の分級
得られたセルロース粒子を櫛目開き38μmメッシュと櫛目開き90μmメッシュを用いて篩分けし、38μmから90μmの範囲の粒子を集めた。
(3) 多孔質粒子の架橋
分級後の多孔質セルロース粒子に含まれる液体部100mLをエタノールで置換した後、反応容器に移し、セルロース粒子とエタノールの合計量が125gとなるようにし、そこにエピクロロヒドリン80mLを添加した。溶液温度を40℃に調整し、1.8N NaOH水溶液(ナカライテスク社製水酸化ナトリウムと蒸留水で調製)を96mL添加し、架橋反応を開始させた。反応開始から1.5時間後に17.0N NaOH水溶液を9.6mL添加し、反応開始から3時間後と4.5時間後にも17.0N NaOH水溶液を9.6mL添加した。反応開始から6時間後にゲルを回収し、得られた粒子を20倍体積量以上の蒸留水で洗浄した。
前記架橋反応で得られた架橋多孔質セルロース粒子を反応容器に移し、セルロース粒子と蒸留水の合計量が116.7gとなるようにした。そこに硫酸ナトリウムを37.8g添加、溶解させた後、エピクロロヒドリンを33mL添加し、40℃で保持した。17.0N NaOH水溶液を21mL添加し、さらなる架橋反応を開始させ、反応開始から2.5時間後に17.0N NaOH水溶液を5mL添加した。反応開始から5時間後に粒子を回収し、20倍体積量以上の蒸留水で洗浄した。
試験例1: 20%圧縮応力測定による粒子強度評価
(1) 試料調製
試料粒子に純水を加え、濃度約50体積%のスラリーを調製した。当該スラリーを攪拌よることにより均質化し、それに続いて30分間以上減圧することにより脱泡した。かかる均質・脱泡操作を3回繰り返し、脱泡スラリーを得た。別途、処理対象を純水に変えて、前記均質・脱法操作を90分以上実施することにより脱泡水を得た。
(2) 粒子のシリンジへの充填
2.5mLのルアロック付ディスポーザブルシリンジ(HANKE SASS WOLF社製「NORM−JECT(商標)」の先端にディスポーザブルフィルター(孔径5.00μm,親水性)を取り付けた。シリンジのピストンを外し、シリンジ後端側から脱泡水を約2mL投入し、この脱泡水が0mLの標線を下回らないうちに、脱泡スラリーを投入した。ディスポーザブルフィルターの2次側にアスピレーターを接続し、液面が粒子面を下まわらない様に注意しながら、前記脱泡スラリーを吸引した。粒子面の約0.5mL上まで液面が下がったところで吸引を停止した。以降の作業は、液面が粒子面を下回らないよう、前記脱泡水を適宜追加しながら実施した。振動を与えながら前記脱泡スラリーを追加または粒子を除去し、粒子面を1.5mLの標線に合わせ、振動を与えても粒子面が低下しないことを確認した。粒子が舞わないようゆっくり脱泡水を溢れるまで追加し、気泡が入らないように注意しながらピストンを挿入した。以下、このシリンジを「粒子充填シリンジ」という。
(3) 測定
物性測定器(レオテック社製「FUDOH RHEO METER」)に10Kのロードセルを取り付け、変位速度のダイヤルを2cm/minに合わせ、上記(2)の粒子充填シリンジをセットし、ピストンの変位を開始した。変位と応力との関係を記録し、下記式に基づき、20%圧縮応力を求めた。
20%圧縮応力=(充填粒子が20%圧縮された時の応力)−(ピストンが粒子面に達する直前の応力)
上記実施例1の架橋多孔質セルロース粒子の20%圧縮応力は0.20MPaを示した。
試験例2: 細孔径分布の測定
(1) Kav:ゲル分配係数の測定
試料粒子22.8mLを蒸留水に分散させ、30分間脱気した。脱気した試料粒子をカラム(GEヘルスケア・ジャパン社製「Tricorn 10/300」)に充填した。サイズ排除クロマトグラフィーシステム(島津製作所社製「DGU−20A3」、「SPD−20A」、「LC−20AD」、「SIL−20AC」、「CTO−20AC」を含み、ソフトウェアとしては「LCSolution」を使用)を用いて測定を行った。
マーカーとしては以下のタンパク質を用い、1M NaClを含む50mMリン酸バッファ(pH7.5)に溶解して用いた。マーカー濃度は5mg/mL、マーカー注入量は40μLとした。
カラムに1M NaClを含む50mMリン酸バッファ(pH7.5)を流速0.33mL/minで通液しながら、先ず、カラム中の粒子部分以外の体積を求めるために、ブルーテキストランの溶液を注入し、注入からUVモニターでピークが観測されるまでの通液量を求めた。ブルーテキストラン溶液の濃度は5mg/mL、注入量は40μLとした。次いで、各マーカーの溶液でも同様に通液量を求めた。測定値を下記式に代入し、Kavの値を算出した。
av=(VR−V0)/(Vt−V0
[式中、VRは各マーカー溶液を注入してからピークが観測されるまでの通液量(mL)を示し、V0はブルーテキストラン溶液を注入してからピークが観測されるまでの通液量(mL)を示し、Vtはカラム内の粒子の体積(mL)を示す]
結果を表2に示す。
(2) 細孔径分布の計算
各マーカーの粘度半径と上記で求めたKavの値を下記式に代入し、各マーカーが多孔質セルロース粒子に侵入する細孔の半径を求めた。
av=(1−rm/rp2
[式中、rmは各マーカーのストークス半径(nm)を示し、rpは各マーカーが多孔質セルロース粒子に侵入する細孔の半径(nm)を示す]
算出された多孔質セルロース粒子の細孔半径を横軸に、Bacitracinマーカーが粒子内に侵入した細孔体積(VR−V0)を100%とした場合の累積細孔体積分布(%)を縦軸にプロットしたグラフを図2に示す。
実施例2: 架橋多孔質セルロース粒子の作製
粉末状のセルロース7.3gを102gの冷却水に分散させ、4℃で保持した。そこに35.6wt%水酸化ナトリウム水溶液34.2gを温度が上がらないようゆっくり添加し、20分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王社製「エマルゲン105」)を3.1g、水を9g添加することによりセルロース分散液を得た。当該セルロース分散液における水酸化ナトリウム濃度は7.8wt%、セルロース濃度は4.7wt%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル濃度は2.0wt%であった。それ以外は上記実施例1と同様の方法で架橋多孔質セルロース粒子を得た。
得られた架橋多孔質セルロース粒子について、上記試験例1と同様に20%圧縮応力を測定したところ、20%圧縮応力は0.17MPaを示した。
また上記試験例2と同様にゲル分配係数を測定して細孔径分布を計算した。ゲル分配係数Kavの測定結果を表3に、細孔径分布を図2に示す。
実施例3: 架橋多孔質セルロース粒子の作製
粉末状のセルロース7.3gを102gの冷却水に分散させ、4℃で保持した。そこに35.6wt%水酸化ナトリウム水溶液34.2gを温度が上がらないようゆっくり添加し、20分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王社製「エマルゲン105」)を1.5g、水を9g添加することによりセルロース分散液を得た。当該セルロース分散液における水酸化ナトリウム濃度を7.8wt%、セルロース濃度は4.7wt%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル濃度は1.0wt%であった。それ以外は上記実施例1と同様の方法で架橋多孔質セルロース粒子を得た。
得られた架橋多孔質セルロース粒子について、上記試験例1と同様に20%圧縮応力を測定したところ、20%圧縮応力は0.18MPaを示した。
また上記試験例2と同様にゲル分配係数を測定して細孔径分布を計算した。ゲル分配係数Kavの測定結果を表4に、細孔径分布を図2に示す。
比較例1: エーテル系界面活性剤を用いない架橋多孔質セルロース粒子の作製
粉末状のセルロース7.3gを92gの冷却水に分散させ、4℃で保持した。そこに35.6wt%水酸化ナトリウム水溶液34.2gを温度が上がらないようゆっくり添加し、20分間撹拌した。次いで、水を22g添加することによりセルロース分散液を得た。当該セルロース分散液における水酸化ナトリウム濃度は7.8wt%、セルロース濃度は4.7wt%であった。それ以外は上記実施例1と同様の方法で架橋多孔質セルロース粒子を得た。
得られた架橋多孔質セルロース粒子について、上記試験例1と同様に20%圧縮応力を測定したところ、20%圧縮応力は0.12MPaを示した。
また上記試験例2と同様にゲル分配係数を測定して細孔径分布を計算した。ゲル分配係数Kavの測定結果を表5に、細孔径分布を図2に示す。
図2に示される結果のとおり、エーテル系界面活性剤を用いずに作製された架橋多孔質セルロース粒子(比較例1)に比べ、エーテル系界面活性剤を用いて作製された架橋多孔質セルロース粒子(実施例1〜3)の細孔径分布はより狭いものであった。
実施例4: 架橋多孔質セルロース粒子の作製
上記実施例1(1)と同様の方法で多孔質セルロース粒子を得て、分級を行い38μmから90μmの範囲の粒子を集めた。
得られた多孔質セルロース粒子の液体部100mLをエタノールで置換した後、反応容器に移し、セルロース粒子とエタノールの合計量が97gとなるようにし、そこに蒸留水28gとエピクロロヒドリン80mLを添加して1回目の架橋反応を行った以外は上記実施例1(3)と同様に架橋した。
得られた架橋多孔質セルロース粒子について、上記試験例1と同様に20%圧縮応力を測定したところ、20%圧縮応力は0.11MPaを示した。
また、上記試験例2(1)においてマーカータンパク質として表6のデキストランまたはグルコースを用い、ブルーデキストランの代わりに分子量4×107のデキストランの10mg/mL水溶液を用いた以外は同様にして、Kav:ゲル分配係数を測定した。
結果を表7に示す。
さらに、上記試験例2(2)と同様にして、測定されたゲル分配係数(Kav)から多孔質セルロース粒子の細孔半径を算出した。算出された細孔半径を横軸に、分子量180のマーカーが粒子内に侵入した細孔体積(VR−V0)を100%とした場合の累積細孔体積分布を縦軸にプロットしたグラフを図3に示す。
実施例5: 架橋多孔質セルロース粒子の作製
粉末状のセルロース7.3gを92gの冷却水に分散させ、4℃で保持した。そこに35.6wt%水酸化ナトリウム水溶液34.2gを温度が上がらないようゆっくり添加し、20分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレントリデシルエーテル(第一工業製薬製「ノイゲンTDS−200D」,HLB16.3)を13g、水を9g添加することによりセルロース分散液を得た。当該セルロース分散液における水酸化ナトリウム濃度は7.8wt%、セルロース濃度は4.7wt%、ポリオキシエチレントリデシルエーテル濃度は8.3wt%であった。それ以外は実施例4と同様の方法で架橋多孔質セルロース粒子を得た。
得られた架橋多孔質セルロース粒子について、上記試験例1と同様に20%圧縮応力を測定したところ、20%圧縮応力は0.14MPaを示した。実施例4と比較して、界面活性剤としてHLB値がより高いポリオキシエチレントリデシルエーテルを使用することでセルロース粒子強度が上昇した。
また上記実施例4と同様にゲル分配係数を測定し、細孔径分布を計算した。ゲル分配係数Kavの測定結果を表8に示す。
また、細孔径分布のグラフを上記実施例4の結果と共に図3に示す。図3に示す結果のとおり、界面活性剤としてHLB値が9.7のポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた場合(実施例4)と比較して、HLB値が16.3のポリオキシエチレントリデシルエーテルを用いた場合(実施例5)、細孔径分布がより狭くなった。
実施例6: 架橋多孔質セルロース粒子の作製
粉末状のセルロース7.3gを92gの冷却水に分散させ、4℃で保持した。そこに35.6wt%水酸化ナトリウム水溶液34.2gを温度が上がらないようゆっくり添加し、20分間撹拌した。次いで、ポリオキシエチレントリデシルエーテル(第一工業製薬製「ノイゲンTDS−200D」)を16g、水を6g添加することによりセルロース分散液を得た。当該セルロース分散液における水酸化ナトリウム濃度は7.8wt%、セルロース濃度は4.7wt%、ポリオキシエチレントリデシルエーテル濃度は10.3wt%であった。それ以外は実施例4と同様の方法で架橋多孔質セルロース粒子を得た。
得られた架橋多孔質セルロースビーズについて、上記試験例1と同様に20%圧縮応力を測定したところ、20%圧縮応力は0.18MPaを示した。このように、界面活性剤であるポリオキシエチレントリデシルエーテルの濃度を高めることにより、粒子強度をより一層改善できることが明らかとなった。
また上記実施例4と同様にゲル分配係数を測定し、細孔径分布を計算した。ゲル分配係数Kavの測定結果を表9に示す。
また、細孔径分布のグラフを上記実施例4および実施例5の結果と共に図3に示す。図3に示す結果のとおり、HLB値が16.3のエーテル系界面活性剤を用いることにより細孔径分布がより狭くなることが分かった。

Claims (5)

  1. 多孔質セルロース粒子を製造するための方法であって、
    a)低温において、少なくとも、セルロース、水、強塩基化合物およびエーテル系界面活性剤を混合してセルロース分散液を作製する工程、
    b)少なくとも前記セルロース分散液および分散媒を混合してエマルションを作製する工程、
    c)前記エマルションを凝固溶媒に接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記セルロースに対して前記エーテル系界面活性剤を2質量倍以上用いる請求項1に記載の方法。
  3. 前記エーテル系界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルまたはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーである請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記分散媒が、動植物油脂、水素添加動植物油脂、脂肪酸グリセリド、脂肪族炭化水素系溶媒および芳香族炭化水素系溶媒からなる群から選択される1以上の油溶性溶媒である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記凝固溶媒が、アルコール系溶媒、または水とアルコール系溶媒との混合溶媒であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
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