以下、本発明の実施の形態における振動発生器について説明する。
振動発生器は、マグネットを保持する可動子が筐体に対して変位可能に、筐体に支持されている構造を有している。可動子の近くには、コイルが配置されている。可動子は、筐体に対する位置及び姿勢のうち少なくとも一方を変化させるための磁場を発生する。振動発生器は、固定子に配置されているコイルに通電して可動子が運動することにより振動を発生する、いわゆるリニアタイプのものである。
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける振動発生器1を示す斜視図である。
以下の説明において、振動発生器1について、図1で示される座標のX軸方向を左右方向(原点から見てX軸で正となる方向が右方向)、Y軸方向を前後方向(原点から見てY軸で正となる方向が後方向)、Z軸方向(XY平面に垂直な方向)を上下方向(原点から見てZ軸で正となる方向が上方向)ということがある。以降の各図においても同様である。
[振動発生器1の全体構造]
図1に示されるように、振動発生器1は、大まかに、上下の寸法が比較的小さい薄型の略直方体形状に形成されている。振動発生器1は、例えば、左右方向、前後方向のそれぞれの外形寸法が10ミリメートル〜20ミリメートル程度の小型のものである。振動発生器1は、前後左右の側面及び上面がカバー2により構成され、底面がベース板6により覆われた、箱形の筐体を有している。
本実施形態において、ベース板6は、筐体の外側に突出するように形成された接続部6aを有している。接続部6aの上部には、基板35が配置されている。基板35は、例えばフレキシブルプリント基板(FPC)である。基板35の上面には、接続端子35aが設けられている。接続部6a上の接続端子35aを介して振動発生器1に電力を供給することができる。
図2は、振動発生器1の分解斜視図である。
図2に示されるように、振動発生器1は、大まかに、カバー2と、固定子10と、可動子50及びそれを保持するホルダ(弾性体の一例)40とを有している。ホルダ40が固定子10に取り付けられた状態で、カバー2が固定子10の上方から取り付けられることで、振動発生器1が組み立てられる。
カバー2は、全体として、底面部が開口する直方体形状を有している。平面視で、カバー2の角部(各側面間の部位)は、R面状部分を挟んで繋がっている。カバー2は、ベース板6の上方からベース板6の上面を覆うように配置され、ベース板6に取り付けられている。カバー2の上面の略中央部には、孔部2aが形成されている。
図3は、固定子10の分解斜視図である。図4は、固定子10の斜視図である。
図3に示されるように、固定子10は、ベース板6と、シャフト15と、コイルベース20と、コイル30と、基板35とを有している。
ベース板6は、接続部6aを除いて、平面視で略正方形状に形成されている。ベース板6は、カバー2の底面部の略全面を覆うように構成されている。ベース板6は、例えば鋼板などの金属製である。
ベース板6の4箇所の隅部近傍部位には、それぞれ、ポール12(12a,12b,12c,12d)が立設されている。4つのポール12のそれぞれは、円柱形状を有するピンである。各ポール12は、ベース板6の上面に、上方に向けて突出するように設けられている。各ポール12は、後述するように、可動子50を保持するホルダ40を固定子10に固定するために用いられる。
シャフト15は、ベース板6の略中央に、上下方向が長手方向となるように配置されている。シャフト15は、ベース板6の上面に、上方に向けて突出するように設けられている。シャフト15は、その上端部がカバー2の孔部にはまり込むように、振動発生器1の上下方向の寸法(高さ寸法)と略等しい長手方向の寸法を有している。すなわち、シャフト15は、水平方向に加わる力に対して、ベース板6とカバー2との両持ちで支えられている。シャフト15は、後述するように、可動子50の運動方向を規制するために用いられる。
コイル30は、ベース板6の上方に配置されている。コイル30は、例えば導線を巻回してなる、全体として円筒型の空芯コイルである。なお、コイル30は、金属箔を巻回したものをスライスしてなるものであったり、シートコイルを積層したものであったりしてもよい。また、コイル30は、平面視で、円形や、四角形形状などの多角形形状を有していてもよい。
図4に示されるように、コイル30は、巻回軸方向が上下方向となるようにして、ベース板6の上面に配置されている。コイル30は、平面視で、ベース板6の略中央部に配置されている。コイル30とベース板6との間には、コイルベース20が配置されている。コイルベース20は、例えば絶縁体であり、コイル30とベース板6とは絶縁されている。
コイル30の2つの端線(巻き始め線及び巻き終わり線)33は、共に基板35の上面側に接続されている。これにより、接続端子35aとコイル30とが導通している。2つの端線33は、共に、コイル30のうち基板35に近い部位の近傍からコイル30の外部に引き出されている。
コイルベース20は、例えば樹脂製である。図3に示されるように、コイルベース20は、全体として円環形状を有している。コイルベース20は、ベース板6に、例えば接着により取り付けられている。絶縁性を有する樹脂製のコイルベース20を用いてコイル30がベース板6に取り付けられていることにより、金属を用いてベース板6を構成することができる。したがって、固定子10の強度や剛性を高く確保することができる。
コイルベース20の上面には、コイル30が載せられる座面21が設けられている。座面21は、コイル30の下端面に対応するように略環状に形成されている。換言すると、座面21は、コイル30の端線33に対応する位置を除く位置に設けられている。具体的には、コイルベース20には、座面21の一部を切り欠くように形成された凹部23が設けられている。図4に示されるように、コイル30の端線33は、コイル30の下側から、凹部23を通して、コイル30の側方に引き出されている。すなわち、端線33は、コイル30の下側から、コイルベース20のうち座面21が設けられていない部分を通してコイル30の側方に引き出されている。
図3に示されるように、本実施の形態において、コイルベース20は、4つの柱状凸部25を有している。各柱状凸部25は、座面21よりも上方に突出している。図4に示されるように、各柱状凸部25は、コイル30の内径部に接するように形成されている。すなわち、4つの柱状凸部25のそれぞれの外周面は、平面視で、コイル30の内径を直径とする円周上に位置している。各柱状凸部25の上端部には、コイル30を容易にコイルベース20に装着できるようにするための面取り部が設けられているが、これに限られるものではない。
図5は、ホルダ40及び可動子50の分解斜視図である。
図5に示されるように、可動子50は、軸受52と、マグネット56と、内ヨーク60と、外ヨーク70と、錘80と、ホルダ40とを有している。可動子50は、ホルダ40が固定子10に取り付けられることで、固定子10に支持されている。
可動子50の中央部最下方には、内ヨーク60が配置されている。内ヨーク60は、例えば、外ヨーク70よりも厚い平板状に形成された、鉄などの強磁性体である。本実施の形態において、内ヨーク60は、大まかに、円盤形状を有している。
マグネット56は、内ヨーク60の上方に配置されている。マグネット56は、その磁気吸引力により、内ヨーク60に固定されている。マグネット56は、平面視で円盤形状を有する永久磁石である。
外ヨーク70は、下方に開口する有底円筒形状を有している。外ヨーク70の側周部の下端部には、側方に広がるフランジ部74が形成されている。外ヨーク70の側周部には、4つの切り欠き部76が設けられている。各切り欠き部76は、下方に向けて開放されている。外ヨーク70は、鉄などの強磁性体である板部材をプレス加工等により加工することで構成されている。
外ヨーク70は、その下面部とマグネット56との間でホルダ40の一部を挟むようにして、マグネット56の上方に配置されている。外ヨーク70は、マグネット56の磁気吸引力により、マグネット56に固定されている。ホルダ40の中央部には、水平板状の保持部44が設けられている。保持部44は、外ヨーク70の下面部とマグネット56との間で挟まれている。
保持部44の中央部には、平面視で円形の孔部44aが形成されている。外ヨーク70の上面部の中央部には、平面視で円形の、下方に突出する突出部72が形成されている。また、突出部72の直径は、孔部44aの内径よりわずかに小さくなっている。外ヨーク70は、突出部72が孔部44aにはまり込むようにして、ホルダ40に対して容易に位置決めされる。
また、保持部44の下面側には、下方に突出するリブ状の位置決め突起44bが形成されている。位置決め突起44bは、マグネット56が保持部44の中央部に配置されるように、マグネット56の外周形状に合わせて形成されている。これにより、マグネット56及び内ヨーク60は、ホルダ40に対して容易に位置決めされる。
なお、外ヨーク70の上面部からの突出部72の突出量は、保持部44の厚みよりも若干小さい。また、突出部72は、マグネット56の上面に近接しており、より強い吸引力でマグネット56に固定されている。そのため、保持部44のうち孔部44aの近傍部分が若干圧縮されている状態で、外ヨーク70がマグネット56に取り付けられ、外ヨーク70とマグネット56とにより保持部44が強固に保持される。したがって、ホルダ40により可動子50が確実に保持される。また、突出部72とマグネット56とが近接して配置されているため、マグネット56から外ヨーク70に流れる磁束の密度を高くすることができる。
錘80は、円環形状を有している。錘80は、外ヨーク70の側周部の外側に、外ヨーク70を囲むようにして配置されている。錘80は、外ヨーク70のフランジ部74の上面に載るようにして外ヨーク70に固定されている。
錘80には、4つの凹部84が形成されている。各凹部84は、錘80の下側端面から上方に凹む、窪みである。換言すると、各凹部84は、下方に開放されている。各凹部84は、外ヨーク70のフランジ部74に対応する位置に形成されている。錘80が外ヨーク70に取り付けられている状態で、各凹部84とフランジ部74とは嵌合している。なお、外ヨーク80と錘80とは、接着剤を用いて強固に固定することが可能である。例えば、外ヨーク70の側周面と錘80の内周面とを接着剤を用いて固定してもよいし、フランジ部74と凹部84とを接着剤を用いて固定してもよい。錘80の内周面と凹部84部分との両方の部位を外ヨーク70と接着剤を用いて固定してもよい。また、フランジ部74と錘80とを溶接で接合することも可能である。
錘80には、4つの切り欠き86が形成されている。各切り欠き86は、錘80の上側端面から下方に凹む、窪みである。換言すると、各切り欠き86は、上方に開放されている。各切り欠き86は、外ヨーク70の切り欠き部76に対応する位置に形成されている。各切り欠き86と切り欠き部76とは、錘80が外ヨーク70に取り付けられている状態で側方から見て一部分同士が重なるように形成されている。切り欠き86は、凹部84をフランジ部74に嵌合することで、切り欠き86と切り欠き部76とが側方から見て重なるように形成されている。これにより、外ヨーク70と錘80との位置合わせを、凹部84をフランジ部74に嵌合させることにより、容易に行うことができる。
本実施の形態において、内ヨーク60の中央部には、貫通孔60aが形成されている。同様に、マグネット56の中央部には、貫通孔56aが形成されている。外ヨーク70の中央部には、貫通孔70aが形成されている。貫通孔70aは、突出部72に形成されている。各貫通孔60a,56a,70aは、互いに略同寸法の内径を有している。これにより、内ヨーク60、マグネット56、及び外ヨーク70を上下に貫く孔部が構成されている。
軸受52は、大まかに、円筒形状を有している。軸受52は、貫通孔60a,56a,70aにより構成された孔部にはめ込まれる。軸受52の胴部分は、貫通孔60a,56a,70aの内径よりわずかに小さい外径を有している。
軸受52の上方の端部にはフランジ部53が形成されている。フランジ部53は、軸受52の胴部分よりも大径を有している。フランジ部53の外径は、貫通孔60a,56a,70aの内径よりも大きくなっている。
軸受52の中央部には、シャフト孔54が形成されている。シャフト孔54は、軸受52を上下に貫通するように形成されているが、これに限られるものではない。例えば、シャフト孔54は上部が貫通していなくてもよい。
図6は、ホルダ40及び可動子50の斜視図である。図7は、ホルダ40及び可動子50を下方から見た斜視図である。
軸受52は、外ヨーク70の上方から、貫通孔60a,56a,70aにより構成された孔部にはめ込まれる。これにより、図6に示されるように、フランジ部53が外ヨーク70に当接した状態になる。この状態で、軸受52の下端部は、内ヨーク60の下面から下方に突出する。図7に示されるように、軸受52の下端部は、フランジ部53が外ヨーク70に当接した状態で内ヨーク60にかしめられ(塑性変形の一例)、固定される。これにより、内ヨーク60、マグネット56、及び外ヨーク70が、ホルダ40に保持された状態で、軸受52と共に一体に固定される。
なお、フランジ部53を軸受52の下端部に設け、フランジ部53が内ヨーク60に当接した状態で軸受52の上端部を塑性変形させて軸受52が外ヨーク70に固定されるようにしてもよい。また、軸受52の端部は、例えばかしめなどの塑性変形による方法に限られず、溶着や溶接等、他の方法を用いて内ヨーク60又は外ヨーク70に固定されるようにしてもよい。軸受52の下端部は、内ヨーク60の下面に溶着されず、フランジ部53と下端部との間で内ヨーク60、マグネット56、及び外ヨーク70を挟み込むように加工されるようにしてもよい。さらに、内ヨーク60とマグネット56と外ヨーク70のいずれか一つ以上と軸受52とを接着により固定してもよい。
図5に示されるように、ホルダ40は、上述のように外ヨーク70の下面部とマグネット56との間で挟持される保持部44と、4つの固定部41(41a,41b,41c,41d)と、4つの腕部46(46a,46b,46c,46d)とを有している。ホルダ40は、例えばゴム等の弾性体である樹脂を用いて一体成形により形成されている。
4つの固定部41は、振動発生器1の四隅に対応する位置に配置されている。各固定部41は、振動発生器1の隅部の形状(例えば、カバー2のR面状部分の形状)に合わせた柱状に形成されている。各固定部41には、ポール12が貫入するポール孔42(42a,42b,42c,42d)が設けられている。
4つの腕部46は、それぞれ、固定部41のそれぞれと保持部44とを接続する。各腕部46は、略水平な短冊形状すなわち略一定の幅を有する板形状を有している。4つの腕部46は、平面視で、振動発生器1の中央部から四隅の固定部41に向けて放射状に延びるように形成されている。腕部46は略水平な短冊形状を有しているので、上下方向に撓みやすくなっている。したがって、可動子50は、腕部46を撓ませながら、固定部41に対して上下方向に揺動しやすくなっている。
ここで、保持部44は、外ヨーク70の側周部の内側に配置されている。これにより、腕部46の長さが長く確保されている。各腕部46は、外ヨーク70の切り欠き部76のそれぞれを通して、保持部44と固定部41とを接続している。また、各腕部46は、錘80の切り欠き86のそれぞれを通して、保持部44と固定部41とを接続している。換言すると、切り欠き部76や切り欠き86は、腕部46を通すことができるように形成されている。切り欠き部76や切り欠き86は、平面視で振動発生器1の中央部と隅部とを結ぶ線上にある。
外ヨーク70にフランジ部74が形成されている構造において、錘80の取り付けは、外ヨーク70、ホルダ40、マグネット56、及び内ヨーク60を組み立てた後で、次のように行うことができる。すなわち、ホルダ40の4つの腕部(46a,46b,46c,46d)を上方に撓ませるとともに、ホルダ40の4つの固定部(41a,41b,41c,41d)を外ヨーク70の円筒を上方向に延長した範囲内に寄せる。そして、その状態で、錘80を外ヨーク70の上方から挿入し、錘80と外ヨーク70とを接着で固定することで、錘80を取り付けることができる。なお、外ヨーク70にフランジ部74が形成されていない構造であれば、外ヨーク70、ホルダ40、マグネット56、及び内ヨーク60を組み立てた後で、錘80を外ヨーク70の下側(開放端側)から挿入し、接着剤で錘80を外ヨーク70に固定すればよい。
図2に示されるように、各固定部41は、対応するポール12がそのポール孔42に貫入するようにして、固定子10上に配置される。これにより、各固定部41が、固定子10上に取り付けられる。可動子50は、ホルダ40によって、固定子10に対して運動可能に支持される。このとき、シャフト15は、軸受52のシャフト孔54にはめ込まれており、可動子50はシャフト15に沿って遊動可能になっている。したがって、可動子50の運動方向は、可動子50がシャフト15に沿って上下方向に移動するように規制される。
図8は、振動発生器1の平面断面図である。図9は、図8のA−A線断面図である。
図8においては、可動子50のうち、錘80、外ヨーク70、及び内ヨーク60を通る平面における断面が示されている。
図8に示されるように、ホルダ40を介して可動子50が固定子10に取り付けられている状態で、外ヨーク70の側周部と内ヨーク60との間には、コイル30が位置している。換言すると、外ヨーク70の側周部の内周面と内ヨーク60の外周面との間に形成されている空隙に、固定子10のコイル30が挿入されている。互いに対向する外ヨーク70と内ヨーク60との間には、コイル30の巻き線と直交する方向にマグネット56の磁力に基づく磁界が発生している。したがって、コイル30への通電に伴って、可動子50を上方又は下方に変位させるローレンツ力が発生する。
コイル30に通電すると、可動子50は、各腕部46を撓ませながら変位する。そして、コイル30の通電が停止されたり通電方向が逆方向になったりすると、可動子50は、ローレンツ力や各腕部46の復元力に伴って逆方向に変位する。このような動作を繰り返すことで、振動発生器1が振動する。
ここで、可動子50にはシャフト15が貫通しているので、重力やその他の外力等にかかわらず、可動子50はシャフト15に沿って上下方向に運動する。可動子50と固定子10とが干渉しないようにしつつ、部材間の間隔を狭くすることができる。したがって、小型であって、効率良く大きな振動量を発生することができる振動発生器1を得ることができる。
本実施の形態において、外ヨーク70の側周部に4箇所の切り欠き部76が設けられていることにより、側周部のうち残された前後左右の部位(切り欠き部76を除く部位)が突極77として機能する。内ヨーク60には、コイル30を挟んで外ヨーク70の側周部に対向するようにコイル30に向けて突出する突出部67が設けられている。突出部67は、内ヨーク60の外径部のうち前後左右の4箇所に位置している。すなわち、突出部67は、切り欠き部76に対応する部位を除く部位(突極77に対応する部位)に形成されている。内ヨーク60に4つの突出部67が設けられていることにより、内ヨーク内を流れる磁束は突出部67に集中するため、突出部67から外ヨーク70の突極77への磁束密度が高くなる。したがって、コイル30への通電に伴って、可動子50を上方又は下方に変位させるローレンツ力が大きくなり、可動子50の加振力を大きくすることができる。
内ヨーク60に4つの突出部67が設けられていることにより、隣り合う突出部67同士の間には凹部66が形成されている。換言すると、凹部66は、4つの突出部67で構成される内ヨーク60の最外径部から内側に窪んでいる。凹部66は、切り欠き部76に対応する部位に形成されている。このように凹部66が設けられていることにより生まれている内ヨーク60とコイル30の内面との間の空間に、コイルベース20の柱状凸部25が位置している。換言すると、凹部66は柱状凸部25に対向する部位に形成されており、突出部67は柱状凸部25に対向する部位を除く部位に形成されている。
図9に示されるように、本実施の形態において、シャフト孔54の上下略中央の部分には、他の部分よりも内径(径寸法)が小さい小径部54aが設けられている。小径部54aの内径は、シャフト15の径よりもわずかに大きい。小径部54aの内径とシャフト15の径との差は、内ヨーク60とコイル30との間隔よりも小さく、かつ、コイル30と外ヨーク70との間隔よりも小さくなっている。シャフト15に接触しうる軸受52の部分が小さくなるので、シャフト15と軸受52との間に生じる摩擦抵抗が小さくなり、可動子50がスムーズに運動可能になる。
小径部54aは、可動子50の重心付近に配置されることが好ましい。可動子50や振動発生器1の姿勢が変化しても小径部54aを中心としたモーメントが小さくなり、振動発生器1を安定して動作させることができる。
小径部54aの位置や大きさはこれに限られるものではない。小径部54aは、シャフト孔54の上下方向の一部分に設けられていればよい。シャフト孔54や小径部54aは、丸孔に限られるものではない。
[実施の形態における効果]
以上のように構成された振動発生器1では、次のような効果が得られる。
従来、振動発生器において、薄型化や小型化の達成と、発生する振動量を大きくすることとは、トレードオフの関係にあった。薄型化や小型化のためには、可動子から錘を省く必要がある場合があるが、可動子の質量が小さいと、発生する振動量が小さくなる。しかしながら、例えば携帯電話やPDAなどの携帯端末において振動により通知する用途や、自動車等の操作パネルや各種スイッチとして用いられる場合の触覚フィードバック用途など、様々な用途において振動発生器の振動量を大きくすることが求められている。
このような問題に関し、以上のように構成された振動発生器1では、腕部46が外ヨーク70の内側から外側にわたって設けられているので、腕部46の有効長さを確保しつつ、外ヨーク70の外側への腕部46の突出量を小さくすることができる。
さらに、従来では、可動子を支持するためのばねと、このばねと可動子とを連結するための保持部とが、可動子の外周に取り付けられていた。そのため、可動子の外周に錘を取り付けると、ばねが錘の外周に取り付けられることになり、振動発生器が大型化するという問題があった。これに対し、本実施の形態の構造によれば、可動子の外周にある、従来はばねが設けられていた空間を、錘80を取り付ける空間とすることができる。したがって、振動発生器1の全体を大きくすることなく、錘80の容積を確保することができ、振動量の大きな振動発生器1を提供することが可能となる。また、錘80がフランジ部74に配置されているので、錘80と外ヨーク70との接着面積が広くなる。したがって、質量の大きな錘80を搭載することが可能となり、振動量がより大きな振動発生器1を提供することが可能となる。
ホルダ40の保持部44は、外ヨーク70とマグネット56との2部品で上下方向から挟持される。接着や溶接などを用いることなく、可動子50にホルダ40を容易に結合することが可能となる。
腕部46を通すために外ヨーク70に切り欠き部76を設けたことに伴って、外ヨーク70に突極77が形成されている。内ヨーク60には、突極77にコイル30を挟んで対向するように、突出部67が形成されている。外ヨーク70と内ヨーク60との間の磁束は、突出部67と突極77との間に集中して発生する。すなわち、外ヨーク70と内ヨーク60との間の磁束は、コイル30に直交する成分(図8に矢印で示す)を多く有するものになる。したがって、可動子50を振動させるローレンツ力が大きくなり、振動量を大きくすることができる。
また、上述のような効果のほか、次のような効果が得られる。
従来の振動発生器では、可動子と軸受との嵌合隙間を厳密に管理する必要があるという問題があった。例えば、振動発生器を携帯端末などの携帯機器に取り付けた場合、使用中や保管中に様々な方向で保持されるなど、携帯機器の保持姿勢は必ずしも水平にはならない。すなわち、振動発生器が斜めに傾いた状態になることも多く、このような場合であっても、振動発生器が円滑に動作することが求められる。また、従来の振動発生器は、可動子を竹の子ばねで片側から支持する構造を有するものなど、軸方向の厚みを薄くすることが困難な構造を有するものもある。
このような問題に関し、以上のように構成された振動発生器1では、軸受52にシャフト15が挿入されている状態で可動子50が運動するように構成されている。そのため、振動発生器1が取り付けられた筐体の姿勢にかかわらず、可動子50の径方向の振れが抑制される。したがって、振動発生器1を、姿勢にかかわらず円滑に安定して動作させることができる。シャフト孔54には小径部54aが設けられているので、シャフト15と軸受52との間に生じる摩擦抵抗が小さくなる。これにより、可動子50をスムーズに運動可能にしつつ、可動子50の径方向の変位をより小さく抑えることが可能となる。
小径部54aの内径とシャフト15の径との差は、内ヨーク60とコイル30との間隔よりも小さく、かつ、コイル30と外ヨーク70との間隔よりも小さい。したがって、可動子50が上下方向に運動しているとき、可動子50を水平方向に変位させようとするような力が振動発生器1に作用した場合であっても、内ヨーク60とコイル30とが接触したり、外ヨーク70とコイル30とが接触したりすることが防止される。
軸受52の一端には外向きのフランジ部53が形成され、他端を塑性変形することで外ヨーク70とマグネット56と内ヨーク60とが一体に固定される。したがって、振動発生器1の組み立てを容易に行うことが可能となる。
さらにまた、上述のような効果のほか、次のような効果が得られる。
従来の振動発生器においては、コイルの内径側端線をコイル外径側に引き出す際、端線がコイル端面と底部ケースとの間に挟まり、コイルが傾いた状態で固定されてしまう可能性や、端線が断線するおそれがあった。内ヨークとコイルとの間に円筒状の起立部が設けられる構造を用いることでコイルの傾斜を防止することができるが、このような構造では、内ヨークとコイルとの空隙を近づけることが困難であるため、大きな振動量が得られないという問題がある。
このような問題に関し、以上のように構成された振動発生器1は、コイル30の端線33が凹部23を通して、コイル30の側方に引き出され、端線33がコイルベース20とコイル30との間に挟まれない構造を有している。したがって、端線33の断線が防止される。また、コイル30の下側端面をコイルベース20の座面21に密着させることが可能となり、コイル30を傾斜させずに取り付けることができる。
コイルベース20にコイル30の内径部に接する4つの柱状凸部25が設けられているので、コイルベース20に対してコイル30の中心位置を合わせることが容易となる。内ヨーク60の各柱状凸部25に対応する部位には、凹部66が設けられている。内ヨーク60のその他の部位には突出部67が設けられており、突出部67と外ヨーク70との空隙が狭くなっている。これにより、外ヨーク70と内ヨーク60との間の漏れ磁束が小さくなる。また、可動子50の質量を大きくすることができる。したがって、大きな振動量を得ることができる。
外ヨーク70の円筒部には、腕部46を通すための切り欠き部76が設けられている。これにより突極77が形成されている。内ヨーク60の突出部67は、突極77に向き合うように配置されている。これにより、内ヨーク60に突出部67が設けられていない場合や突出部67と突極77とが向き合っていない場合と比較して、内ヨーク60と外ヨーク70との間の磁束の、コイル30に直交する成分が多くなる。したがって、より効率良く大きな振動量を得られる振動発生器1を提供することが可能となる。
[その他]
上述の実施の形態における構成要素のうちいくつかを適宜組み合わせたり他の構成要素と組み合わせたりして振動発生器を構成してもよい。例えば、フレキシブルプリント基板に代えて、ガラスエポキシ基板などの両面基板が用いられていてもよい。この場合、両面基板を筐体の一部とすることができる。
各部材は、上述したものとは異なる素材を用いて構成されていてもよい。シャフトがカバー側に立設されており、そのシャフトとベース板とコイル等とで固定子が構成されていてもよい。
ホルダの固定部の数や腕部の数、それらの形状などは、上述したものに限られるものではない。ホルダは、一体成形されたものではなく、複数の部材を組み付けて構成されたものであってもよい。ホルダの保持部は、外ヨークとマグネットとで挟持されるものに限られない。ホルダの保持部は、内ヨークとマグネットとで挟持されていてもよいし、外ヨークと内ヨークとで挟持されていてもよい。保持部は、内ヨーク、マグネット、及び外ヨークのうちいずれか2つの部品間で挟持されていればよい。
マグネット、内ヨーク、及びコイル等は、必ずしも平面視で円形を有していなくてもよい。
ホルダの固定子への取付構造は、ポールを用いたものに限られるものではない。例えば、ホルダの固定部をベース板などにかしめることなどによりホルダが固定子に取り付けられていてもよい。
錘は、可動子の上部や下部など、上述とは異なる位置に配置されていてもよい。錘は、設けられていなくてもよい。
コイルベースは、柱状凸部を有していなくてもよいし、環状でなくてもよい。コイルベースは、設けられていなくてもよい。
コイルを含む固定子が、振動を利用する機器のメイン基板などに取り付けられており、そのコイル実装済みのメイン基板に、ホルダを介して可動子を取り付けることで、可動子が駆動可能な振動発生器が構成されるようにしてもよい。換言すると、他の機器の基板上に搭載されているコイルを用いて、振動発生器が構成されていてもよい。
振動発生器は、上記で例示したような小型のものに限られない。基本的構成を同一とする大型な振動発生器を構成してもよく、その場合であっても、上述と同様の効果を得られる。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。