JP2016152580A - 超音波探触子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】超音波探触子において、個々の振動素子と配線シートとを強固に接着する。【解決手段】配線シート12におけるコンタクトエリア58は導電層を有し、そこには露出孔群70が形成されている。個々の露出孔40はベース層を露出させるものである。各接合面66に対して各振動素子を接着すると、個々の露出孔40の中に接着剤が入り込む。これにより、ベース層が導電層を介することなく個々の振動素子の下面に直接的に接着される。露出孔群70に代えて複数の露出溝を形成することも可能である。【選択図】図2
Description
本発明は超音波探触子及びその製造方法に関し、特に、超音波振動子に対して配線シートを接着するための技術に関する。
超音波探触子は、生体を超音波診断するための送受波器である。超音波探触子は、一般に、アレイ振動子を含む積層体(振動子ユニット)を有している。アレイ振動子は例えば直線状に配列された複数の振動素子を備える。個々の振動素子は、例えば、圧電材料あるいはそれを含む複合材料により構成され、通常、それらの上面及び下面には金メッキ層が形成されている。それらの層は表面層として機能する。なお、アレイ振動子の上面側(生体側)には1又は複数の整合層が設けられる。アレイ振動子の下面側(非生体側)には背面側に放射された不要超音波を吸収するバッキング層が設けられる。
特許文献1に開示された構成では、アレイ振動子とバッキング層との間に、配線シートとしてのフレキシブル回路基板(FPC)が設けられている。アレイ振動子と整合層との間には銅箔としてのグランドシート(グランド電極)が設けられる。FPCは、個々の振動素子に対してシグナルラインを接続するための電極パターンを備えている。実際には、未切断状態の板状の振動子材料(母材)に対して接着剤によってFPCが貼付された上で、ダイシングソーを利用して、振動子材料がFPCと共に素子単位で切断される。なお、FPCを生体側に配置し、グランド電極を非生体側に配置することも可能である。
FPCの電極パターンは通常、銅によって構成され、その表面には電気的接続を良好にするために、また、化学的な保護を図るために、表面層として金メッキ層が形成されている。つまり、銅パターンに対して金によるコーティングが施されている。
以上のように、個々の振動素子の一面(上記の例では下面)がFPCの電極面に完全に密着した状態で接着剤により両者が接合される。各振動素子の接合面には金メッキが施され、FPC側の電極面にも金メッキが施されている。金属面同士を接着剤を介して接着した場合、十分な接着状態を形成できない場合がある。その場合、ダイシング工程において、振動素子からFPCが剥がれてしまうおそれがある。そのような剥がれが生じると(非接着状態が生じると)、振動素子における機械的振動が弱くなったり、電気的な特性が不安定になったりする。そこで、個々の振動素子と配線シートとの間の接着力を高めることが求められる。
本発明は、個々の振動素子と配線シートとの間の接着力を高めることにある。
本発明に係る超音波探触子は、複数の振動素子からなるアレイ振動子と、前記アレイ振動子の下面に設けられる部材であって、ベース層と、前記ベース層上に形成され複数の振動素子に接続される複数のコンタクト層と、を有する配線シートと、を有し、前記各コンタクト層は、電極部分と、前記ベース層を剥き出しにする露出部分と、を含み、前記各露出部分に充填された接着剤を介して前記各振動素子と前記ベース層とが接着された、ことを特徴とするものである。
上記構成によれば、個々のコンタクト層が電極部分以外に露出部分を有しており、その露出部分に入り込む接着剤によって、ベース層の表面と各振動素子の下面とが接着される。例えば、金属メッキ層同士を接着する場合、どうしても接着力が低下しやすいが、上記構成によれば、剥き出しとなったベース層への接着を利用できるので、コンタクト層での接着力を高められる。ベース層は、通常、非金属材料で構成され、それは例えば樹脂により構成される。この分野で一般的に利用されている接着剤の場合、樹脂の方が金属よりも接着強度が高い。なお、露出部分を形成しても、振動素子側の電極層(表面層)をそのまま維持すれば、電界の乱れや電気的特性の劣化を回避又は軽減できる。露出部分に合わせて振動素子側の電極層の一部を除去し、ベース層と振動素子本体とが直接的に接着されるように構成することも可能である。
望ましくは、前記各コンタクト層における前記露出部分は複数の露出要素により構成される。電気的な特性をできるだけ維持するには、一般に、1つの大きな露出部分を形成するよりも複数の漏出要素を形成する方が望ましい。
望ましくは、前記複数の露出要素は複数の露出孔である。望ましくは、前記複数の露出要素は複数の露出溝である。望ましくは、前記複数の露出溝は前記電極部分の両側に設けられた一対の露出溝であり、前記各コンタクト層において前記電極部分が前記一対の露出溝を介して両側のダイシング経路から隔てられている。この構成によれば、ダイシングソーを利用したダイシング(カッティング)時に、ダイシングソーが電極部分に触れないので、あるいは、触れる量を低減できるので、電極部分を構成する金属材料粉の生成を回避又は軽減でき、また、電極部分の端部におけるバリ、反りといった問題を回避又は軽減できる。
本発明に係る製造方法は、上面コーティング層及び下面コーティング層を有する振動板からなる母材を製作する工程と、前記母材の下面に配線シートを接着する工程と、を含み、前記配線シートは、導電層と、ベース層を露出させる露出部分と、を有し、前記母材に対して配線シートを接着する際に前記露出部分の中に接着剤が入り込み、前記露出部分において前記下面コーティング層と前記ベース層とが前記導電層を介在させることなく接着される、ことを特徴とするものである。
本発明によれば、個々の振動素子と配線シートとの間の接着力を高められる。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明に係る超音波探触子の第1実施形態が示されている。
この超音波探触子は、生体の超音波診断を行う場合において用いられ、超音波診断装置本体に接続されるものである。超音波探触子は、一般に、生体の表面上に当接して用いられるものであるが、それが体腔内に挿入されてもよい。
図1において、超音波探触子は、アレイ振動子10、配線シート12、グランドシート14等を有している。グランドシート14は例えば銅からなるシート状の部材(銅箔)である。その生体側には第1整合層16及び第2整合層18が設けられている。配線シート12の下面側(非生体側)にはバッキング20が設けられている。第1整合層16及び第2整合層18は音響整合のために設けられており、バッキング20は背面へ放射された不要な超音波を吸収等するために設けられている。
アレイ振動子10は、本実施形態において直線状に配列された複数の振動素子22からなるものである。個々の振動素子22は、振動素子本体24と、その下面側及び上面側に形成された一対の金メッキ層26,28と、有している。一対の金メッキ層26,28はそれぞれ表面層として機能するものである。振動素子本体24はPZT、それを含む複合材料、等により構成されるものである。個々の振動素子22においては、送信時に電気信号が超音波に変換され、また、受信時に超音波(反射波)が電気信号に変換される。
配線シート12は、個々の振動素子22に対してシグナルを供給するための部材であり、本実施形態においては、例えばFPCにより構成される。具体的には、配線シート12は、樹脂層としてのベース層32と、その上に設けられた所定のパターンを有する導電層34と、を有している。導電層34は、下層としての銅層36と、その上面側を覆う表面層としての金メッキ層38と、を有している。金メッキ層38はコーティング層である。
本実施形態においては、導電層34の中に複数の露出孔40が形成されている。各露出孔40の内部には接着時において接着剤が入り込む。その入り込んだ接着剤によりベース層32の表面と個々の振動素子22の下面とが強固に接着される。これについては後に詳述する。
グランドシート14は、全面電極としてのグランド電極を形成するものであり、それは銅箔によって構成される。グランドシート14が個々の振動素子22における金メッキ層28に接着される。なお、グランドシート14を樹脂層と電極層とで構成し、電極層に複数の露出孔等を形成することにより、グランドシート14と個々の振動素子22との間での接着性を高めるようにしてもよい。
隣接する2つの振動素子22の間には分離溝30が形成されている。グランドシート14の上部においては複数の分離溝50が形成されている。各分離溝30,50は例えば、ダイシングソー(カッター)を利用して形成される。その場合においては、板状の母材と一緒に配線シート12がカッティングされる。そのカッティング後に複数の振動素子22が構成される。
図2には、配線シート12の展開図が示されている。配線シート12は、中央部分12Aと、中央部分12Aの一方側に設けられた一方側部分12Bと、中央部分12Aの他方側に設けられた他方側部分12Cと、有している。中央部分12Aは、アレイ振動子10を搭載する部分である。これに対し、一方側部分12B及び他方側部分12Cは折れ曲がり部分として機能する。
配線シート12には、導電パターン56が形成されている。導電パターン56は中央部分12Aに相当するコンタクトエリア58を有する。コンタクトエリア58の一方側にはリード部分60が形成され、コンタクトエリア58の他方側にはリード部分62が形成されている。それぞれのリード部分60,62は複数のリード64を有している。図2において、符号66は振動素子の接合面あるいは接合エリアを表している。コンタクトエリア58には、複数の振動素子に対応して複数の接合面が存在する。接合面66毎に1つのリード64が接続されている。リードを用いてシグナルが振動素子に対して供給され、また、シグナルが振動素子から出力される。コンタクトエリア58を上下方向に横切るようにX方向に並んで複数のダイシング部分68が形成されている。個々のダイシング部分68においてカッティングが実施される。これにより素子分割すなわち素子分離が実行される。
本実施形態においては、コンタクトエリア58内に露出孔群70が形成されている。すなわち、導電パターン56が露出孔群70を有する。露出孔群70はランダム的に配置された複数の露出孔40により構成されるものである。個々の露出孔40は、導電層が除去されている部分であり、すなわち配線シート12におけるベース層表面を剥き出しにする部分である。したがって、コンタクトエリア58に対して後述する母材を接着すると、個々の露出孔40内に接着剤が入り込み、母材の下面とベース層の表面とが接着剤を介して直接的に接着される。すなわち、導電層を介在させた接着とは別に、ベース層への直接的な接着が実現される。これにより、配線シートと個々の振動素子との間での接着力を高めることが可能である。この分野において、一般的に使用されている接着剤の特性として、樹脂への接着力の方が金属への接着力よりも非常に大きく、そのような性質を利用して、配線シート12上に個々の振動素子を部分的に直接的に接着させるものである。これによれば、個々の振動素子の倒れ込みや、剥がれといった問題を未然に形成できる。特に、ダイシングソーによって個々の素子を分割する際において、素子の破損や素子の剥がれを効果的に防止できるという利点が得られる。
本実施形態においては、個々の接合面66毎に複数の露出孔40が形成されており、すなわち個々の接合面66の全体にわたって複数の露出孔40が分散形成されている。このような構成によれば電場の乱れを軽減できるという利点が得られる。ちなみに、絶縁性の接着剤を利用するようにしてもよいし、導電性の接着剤を利用するようにしてもよい。但し振動素子間において電気的短絡が生じないように構成する必要がある。なお、図2に示す露出孔群70は複数のダイシング部分68を格別考慮することなく全体的に均一的に形成されるものであったが、個々のダイシング部分68を避けて複数の露出孔40を形成するようにしてもよい。
図3には、振動素子単位で構成されるコンタクト層108が拡大断面図として示されている。コンタクト層108は、大別して、電極部分114と露出部分112とからなる。電極部分114は、図3の断面図上、複数の要素110の集合として観念される。露出部分112は複数の露出孔40の集合である。個々の露出孔40の内部には接着剤が充填されている。ちなみに、電極部分114は銅層と表面層とからなるものである。図示されるように、個々の露出孔40を介してベース層32の表面と振動素子における金メッキ層(下側表面層)26とが直接的に接着されている。
図4には、第1実施形態の変形例が示されている。配線シート74は導電パターン76を有し、その導電パターン76は、中央部分74Aに相当するコンタクトエリア78を有している。ちなみに、中央部分74Aの一方側及び他方側が符号74B及び74Cで示されている。コンタクトエリア78には露出孔アレイ80が構成されている。露出孔アレイ80は、比較的大きな複数の露出孔82からなるものであり、図においては、2つの露出孔列が形成されている。このような規則性をもったパターンによって露出孔アレイ80を構成することも可能である。
次に、第2実施形態を図5乃至図8を用いて説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付しその説明を省略する。
図5に示す第2実施形態において、配線シート84はベース層94と導電層86とで構成される。導電層86は銅層88と金メッキ層90とからなる。導電層86には露出部分92a,92bが形成されている。それらは溝状の形態を有している。各露出部分92a,92b内には接着剤が入り込んでいる。
図6には、第2実施形態に係る配線シート84が示されている。配線シート84は導電パターン96を有している。それは複数のコンタクト部分98を有する。各コンタクト部分98の素子配列方向(X方向)の幅は、各接合面66のX方向の幅よりも狭い。したがって接着工程を実施すると、各コンタクト部分98の両側に露出部分92a,92bが生じる。つまり、振動素子単位で、振動素子下面とベース層とに挟まれた一対の溝状空間が生じる。そこにおいてベース層の表面が剥き出しになっているため、その表面と各振動素子の下面とを接着部材により直接的に接合することが可能である。
図7には、第2実施形態に係る配線シートが斜視図として示されている。そこにおいてはコンタクト部分98が模式的に示されている。また振動素子22も模式的に示されている。コンタクト部分98のX方向の幅W1は振動素子22のX方向の幅W2よりも小さく、コンタクト部分98の両側に上述したように一対の露出部分が生じる。
図8には、コンタクト部分の拡大図が示されている。ベース層94の上側にはコンタクト部分120が形成され、それは電極部分122と露出部分92a,92bとからなる。電極部分122は銅層124と表面層126とからなる。各露出部分92a,92bの中には接着剤100が充填される。電極部分122の幅がW1で示され、素子の幅がW2で示され、個々の露出部分92a,92bの幅がW3で示されている。各幅の比率は適宜設定することが可能である。
この第2実施形態の構成を採用すると、ダイシングソーによるカッティングの際に、ダイシングソーが電極部分に触れないので、金属粉が発生しないあるいはその発生を軽減できるという利点が得られる。また同様の理由からバリや反りといった現象が生じることを効果的に防止することが可能である。複数の露出部分による電解の乱れは振動素子側に形成された金メッキ層により緩和され得る。
なお、第1及び第2実施形態において、配線シートの全体の厚みは例えば0.006〜0.01mmであり、望ましくは0.006mmである。ベース層32の厚みは例えば0.005〜0.025mmであり、望ましくは0.005mmである。導電層34の厚みは例えば0.001〜0.012mmであり、望ましくは0.001mmである。銅層の厚みは例えば0.001〜0.012mmであり、望ましくは0.001mmである。各金メッキ層の厚みは例えば0.0001〜0.001mmであり、望ましくは0.0005mmである。第1実施形態における個々の露出孔の直径は例えば0.05〜0.2mmであり、望ましくは0.05mmである。個々の振動素子のX方向の幅は例えば0.07〜0.3mmであり、望ましくは0.1mmである。それを前提とした場合、上述した露出部分それぞれの横幅W3は例えば0.03〜0.15mmであり、望ましくは0.05mmである。
次に、図9を用いて本実施形態に係る製造方法について説明する。S10においては配線シートが製作される。具体的には、各接合面内において複数の露出部分が生じるように配線パターンが形成される。その際、コンタクト部分ごとに、複数の露出孔が形成され、あるいは、複数の露出溝が形成される。S12においては、配線シートに接着する母材が製作される。その母材は圧電作用をもったプレート状材料の上面及び下面に対して金メッキを施すことにより製作される。
S14においては、配線シート上に母材が接着される。その際、個々の露出孔あるいは個々の露出溝内に接着剤が入り込み、ベース層の上面と個々の振動素子の下面とが強固に接着される。S14において、バッキングの接着が行われてもよい。接着にあたっては、熱硬化性の接着剤を用い、加圧接着を行うようにしてもよい。S16においては、ダイシングソーが利用され、上述のように接着処理された積層体が素子単位でカッティングされる。そのような工程においても本実施形態においては個々の振動素子が強固に接着されているため、ダイシングによる素子破損あるいは素子倒れといった問題を未然に回避することが可能である。
10 アレイ振動子、12 配線シート、32 ベース層、34 導電層、36 銅層、38 金メッキ層、40 露出孔、56導電パターン、58 コンタクトエリア、70 露出孔群。
Claims (6)
- 複数の振動素子からなるアレイ振動子と、
前記アレイ振動子の下面に設けられる部材であって、ベース層と、前記ベース層上に形成され複数の振動素子に接続される複数のコンタクト層と、を有する配線シートと、
を有し、
前記各コンタクト層は、電極部分と、前記ベース層を剥き出しにする露出部分と、を含み、
前記各露出部分に充填された接着剤を介して前記各振動素子と前記ベース層とが接着された、
ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項1記載の超音波探触子において、
前記各コンタクト層における前記露出部分は複数の露出要素により構成された、
ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項2記載の超音波探触子において、
前記複数の露出要素は複数の露出孔である、
ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項2記載の超音波探触子において、
前記複数の露出要素は複数の露出溝である、
ことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項4記載の超音波探触子において、
前記複数の露出溝は前記電極部分の両側に設けられた一対の露出溝であり、
前記各コンタクト層において前記電極部分が前記一対の露出溝を介して両側のダイシング経路から隔てられている、
ことを特徴とする超音波探触子。 - 上面コーティング層及び下面コーティング層を有する振動板からなる母材を製作する工程と、
前記母材の下面に配線シートを接着する工程と、
を含み、
前記配線シートは、導電層と、ベース層を露出させる露出部分と、を有し、
前記母材に対して配線シートを接着する際に前記露出部分の中に接着剤が入り込み、
前記露出部分において前記下面コーティング層と前記ベース層とが前記導電層を介在させることなく接着される、
ことを特徴とする超音波探触子の製造方法。
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