以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、1台の室外機に3台の室内機が並列に接続され、全ての室内機で同時に冷房運転あるいは暖房運転が行えるマルチ型の空気調和装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
図1(A)に示すように、本実施形態における空気調和装置1は、1台の室外機2と、室外機2に第1液管8a、第2液管8b、第3液管8c、および、ガス管9で並列に接続された3台の室内機5a〜5cとを備えている。
上記各構成要素は次のように接続されている。第1液管8aの一端が室外機2の第1液側閉鎖弁28aに、他端が室内機5aの閉鎖弁53aにそれぞれ接続され、第2液管8bの一端が室外機2の第2液側閉鎖弁28bに、他端が室内機5bの閉鎖弁53bにそれぞれ接続され、第3液管8cの一端が室外機2の第3液側閉鎖弁28cに、他端が室内機5cの閉鎖弁53cにそれぞれ接続されている。また、ガス管9は一端が室外機2のガス側閉鎖弁29に、他端が分岐して室内機5a〜5cの各閉鎖弁54a〜54cにそれぞれ接続されている。このように、室外機2と室内機5a〜5cとが第1液管8a、第2液管8b、第3液管8c、および、ガス管9で接続されて、空気調和装置1の冷媒回路10が構成されている。尚、冷媒回路10のうち、後述するバイパス回路を除いた部分が、本発明における主冷媒回路である。
まず、図1(A)を用いて、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、第1過冷却熱交換器ユニット30aと、第2過冷却熱交換器ユニット30bと、第3過冷却熱交換器ユニット30cと、過冷却膨張弁26と、室外ファン27と、一端に第1液管8aが接続された第1閉鎖弁28aと、一端に第2液管8bが接続された第2閉鎖弁28bと、一端に第3液管8cが接続された第3閉鎖弁28cと、一端にガス管が接続されたガス側閉鎖弁29と、室外機制御手段200とを備えている。そして、室外ファン27および室外機制御手段200を除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路20を構成している。
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出側は、後述する四方弁22のポートaと吐出管41で接続されている。また、圧縮機21の冷媒吸入側は、後述する四方弁22のポートcと吸入管42で接続されている。
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、圧縮機21の冷媒吐出側と吐出管41で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管43で接続されている。ポートcは、圧縮機21の冷媒吸入側と吸入管42で接続されている。そして、ポートdは、ガス側閉鎖弁29と室外機ガス管44で接続されている。
室外熱交換器23は、後述する室外ファン27の回転により図示しない吸込口から室外機2の内部に取り込まれた外気と冷媒とを熱交換させるものである。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は上述したように冷媒配管43で四方弁22のポートbに接続され、他方の冷媒出入口には室外機液管45の一端が接続されている。室外熱交換器23は、冷媒回路10が冷房サイクルとなる場合は凝縮器として機能し、冷媒回路10が暖房サイクルとなる場合は蒸発器として機能する。
室外機液管45の他端には、第1液分管46aの一端と第2液分管46bの一端と第3液分管46cの一端が各々接続されている。また、第1液分管46aの他端は第1液側閉鎖弁28aと接続され、第2液分管46bの他端は第2液側閉鎖弁28bと接続され、第3液分管46cの他端は第3液側閉鎖弁28cと接続されている。
第1液分管46aには、室外熱交換器23から第1液側閉鎖弁28aに向かって、第1室外膨張弁24a、第1過冷却熱交換器25aが順に設けられている。これら第1液分管46aと第1室外膨張弁24aと第1過冷却熱交換器25aとで、第1過冷却熱交換器ユニット30aが構成される。また、第2液分管46bには、室外熱交換器23から第2液側閉鎖弁28bに向かって、第2室外膨張弁24b、第2過冷却熱交換器25bが順に設けられている。これら第2液分管46bと第2室外膨張弁24bと第2過冷却熱交換器25bとで、第2過冷却熱交換器ユニット30bが構成される。さらには、第3液分管46cには、室外熱交換器23から第3液側閉鎖弁28cに向かって、第3室外膨張弁24c、第3過冷却熱交換器25cが順に設けられている。これら第3液分管46cと第3室外膨張弁24cと第3過冷却熱交換器25cとで、第3過冷却熱交換器ユニット30cが構成される。
第1液分管46aにおける第1室外膨張弁24aと第1過冷却熱交換器25aとの間には、第1バイパス管47aの一端が接続されている。第2液分管46bにおける第2室外膨張弁24bと第2過冷却熱交換器25bとの間には、第2バイパス管47bの一端が接続されている。第3液分管46cにおける第3室外膨張弁24cと第3過冷却熱交換器25cとの間には、第3バイパス管47cの一端が接続されている。そして、第1バイパス管47aの他端と、第2バイパス管47bの他端と、第3バイパス管47cの他端とは、過冷却膨張弁26を備えた流入管48の一端に接続されている。
第1バイパス管47aには、過冷却膨張弁26に向かう方向にのみ冷媒を流す第1逆止弁11aが設けられている。第2バイパス管47bには、過冷却膨張弁26に向かう方向にのみ冷媒を流す第2逆止弁11bが設けられている。第3バイパス管47cには、過冷却膨張弁26に向かう方向にのみ冷媒を流す第3逆止弁11cが設けられている。
第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cの各々は、エッチング加工で形成した流路を有する金属箔を積層して形成されるマイクロ流路熱交換器である。一般的に、マイクロ流路熱交換器は、プレート型熱交換器や二重管熱交換器と比べて伝熱性能が高いため小型化が可能であり、本実施形態のように複数の過冷却熱交換器を設ける必要がある室外機2に採用すれば、室外機2の大型化を防ぐことができる。
第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cは、2つの冷媒流路が平行に配置されており、これら2つの冷媒流路を流れる冷媒同士が熱交換を行う。各過冷却熱交換器25a〜25cの一方の流路はそれぞれ第1液分管46a、第2液分管46b、第3液分管46cの一部を構成している。また、各過冷却熱交換器25a〜25cの他方の流路は、各々の一端が流入管48に接続され、各々の他端が流出管49に接続されている。尚、流出管49の他端は、吸入管42に接続されている。
第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および過冷却膨張弁26は、各々電子膨張弁である。第1室外膨張弁24aの開度を調節することで、後述する室内機5aの室内熱交換器51aを流れる冷媒量および第1過冷却熱交換器25aを流れる冷媒量を調節する。第2室外膨張弁24bの開度を調節することで、後述する室内機5bの室内熱交換器51bを流れる冷媒量および第2過冷却熱交換器25bを流れる冷媒量を調節する。第3室外膨張弁24cの開度を調節することで、後述する室内機5cの室内熱交換器51cを流れる冷媒量および第3過冷却熱交換器25cを流れる冷媒量を調節する。
過冷却膨張弁26の開度を調節することで、第1液分管46a、第2液分管46bおよび第3液分管46cのそれぞれから分流して第1バイパス管47aおよび第1逆止弁11a、第2バイパス管47bおよび第2逆止弁11b、第3バイパス管47cおよび第3逆止弁11cをそれぞれ介して流入管48に流れ、流入管48から第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25bおよび第3過冷却熱交換器25cへそれぞれ流入し、各過冷却熱交換器で各液分管を流れる冷媒と熱交換を行った後、流出管49へ流出する冷媒量を調節する。尚、上述した第1バイパス管47aと、第2バイパス管47bと、第3バイパス管47cと、第1逆止弁11aと、第2逆止弁11bと、第3逆止弁11cと、流入管48と、流出管49と、過冷却膨張弁26と、流入管48と流出管49とに接続される各過冷却熱交換器の冷媒流路とで、本発明のバイパス回路が構成される。
室外ファン27は、樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン27は、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられている。図1(A)に示すように、吐出管41には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する高圧センサ31と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度である吐出温度を検出する吐出温度センサ33とが設けられている。吸入管42には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する低圧センサ32と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度である吸入温度を検出する吸入温度センサ34とが設けられている。
室外熱交換器23には、室外熱交換器23の温度を検出する室外熱交温度センサ35が設けられている。室外機液管45には、室外熱交換器23に流入あるいは室外熱交換器23から流出する冷媒の温度を検出する熱交液側センサ36が設けられている。
第1液分管46aにおける、第1過冷却熱交換器25aと第1液側閉鎖弁28aとの間には、この間の第1液分管46aを流れる冷媒の温度を検出する第1冷媒温度センサ37aが設けられている。第2液分管46bにおける、第2過冷却熱交換器25bと第2液側閉鎖弁28bとの間には、この間の第2液分管46bを流れる冷媒の温度を検出する第2冷媒温度センサ37bが設けられている。第3液分管46cにおける、第3過冷却熱交換器25cと第3液側閉鎖弁28cとの間には、この間の第3液分管46cを流れる冷媒の温度を検出する第3冷媒温度センサ37cが設けられている。
第1液分管46aにおける、第1室外膨張弁24aと第1過冷却熱交換器25aとの間には、この間の第1液分管46aを流れる冷媒の温度を検出する第1液温度センサ38aが設けられている。第2液分管46bにおける、第2室外膨張弁24bと第2過冷却熱交換器25bとの間には、この間の第2液分管46bを流れる冷媒の温度を検出する第2液温度センサ38bが設けられている。第3室外膨張弁24cと第3過冷却熱交換器25cとの間には、この間の第3液分管46cを流れる冷媒の温度を検出する第3液温度センサ38cが設けられている。
流入管48には、第1過冷却熱交換器25aに流入する冷媒の温度である過冷却熱交流入温度を検出する流入温度センサ39が設けられている。また、流出管49には、第1過冷却熱交換器25aから流出する冷媒の温度である過冷却熱交流出温度を検出する流出温度センサ40が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2内に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ100が備えられている。
また、室外機2には、室外機制御手段200が備えられている。室外機制御手段200は、室外機2の図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1(B)に示すように、CPU210と、記憶部220と、通信部230とを備えている。
記憶部220は、ROMやRAMで構成されており、室外機2の制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン27の制御状態、後述する各種テーブル等を記憶する。通信部230は、室内機5a〜5cとの通信を行うインターフェイスである。
CPU210は、各種センサでの検出値を取り込むとともに、室内機5a〜5cから送信される運転開始/停止信号や運転情報(設定温度や室内温度等)を含んだ運転情報信号が通信部230を介して入力される。CPU210は、これら取り込んだ各種検出値や入力された各種情報に基づいて、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および過冷却膨張弁26の開度制御や、圧縮機21や室外ファン27の駆動制御、四方弁22の切り換え制御を行う。
次に、3台の室内機5a〜5cについて説明する。3台の室内機5a〜5cは、室内熱交換器51a〜51cと、第1液管8aと第2液管8bと第3液管8cがそれぞれ接続された液側閉鎖弁53a〜53cおよび分岐したガス管9の他端がそれぞれ接続されたガス側閉鎖弁54a〜54cと、室内ファン55a〜55cと、室内機制御手段500a〜500cとを備えている。そして、室内ファン55a〜55cおよび室内機制御手段500a〜500cを除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路50a〜50cを構成している。
尚、室内機5a〜5cの構成は全て同じであるため、以下の説明では、室内機5aの構成についてのみ説明を行い、その他の室内機5b、5cについては説明を省略する。また、図1(A)では、室内機5aの構成装置に付与した番号の末尾をaからbおよびcにそれぞれ変更したものが、室外機5aの構成装置と対応する室内機5b、5cの構成装置となる。
室内熱交換器51aは、冷媒と後述する室内ファン55aの回転により室内機5aに備えられた図示しない吸込口から室内機5aの内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものであり、一方の冷媒出入口が液側閉鎖弁53aに室内機液管71aで接続され、他方の冷媒出入口がガス側閉鎖弁54aに室内機ガス管72aで接続されている。室内熱交換器51aは、室内機5aが冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機5aが暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。
室内ファン55aは、室内熱交換器51aの近傍に配置される樹脂材で形成されたクロスフローファンであり、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5aの内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器51aにおいて冷媒と熱交換した室内空気を室内機5aに備えられた図示しない吹出口から室内へ供給する。
以上説明した構成の他に、室内機5aには各種のセンサが設けられている。室内熱交換器51aには、室内熱交換器51aの温度を検出する室内熱交温度センサ61aが設けられている。また、室内機5aの図示しない吸込口付近には、室内機5a内に流入する室内空気の温度、すなわち室内温度を検出する室内温度センサ62aが備えられている。
また、室内機5aには、室内機制御手段500aが備えられている。制御手段500aは、室内機5aの図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1(B)に示すように、CPU510aと、記憶部520aと、通信部530aとを備えている。
記憶部520aは、ROMやRAMで構成されており、室内機5aの制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、使用者による空調運転に関する設定情報等を記憶する。通信部530aは、室外機2および他の室内機5b、5cとの通信を行うインターフェイスである。
CPU510aは、各種センサでの検出値を取り込むとともに、使用者が図示しないリモコンを操作して設定した運転条件やタイマー運転設定等を含んだ信号が図示しないリモコン受光部を介して入力される。CPU510aは、これら取り込んだ各種検出値や入力された各種情報に基づいて室内ファン55aの駆動制御を行う。また、CPU510aは、運転開始/停止信号や運転情報(設定温度や室内温度等)を含んだ運転情報信号を、通信部530aを介して室外機2に送信する。
次に、本実施形態における空気調和装置1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作について、図1(A)を用いて説明する。尚、以下の説明では、室内機5a〜5cが暖房運転を行う場合について説明し、冷房運転/除霜運転を行う場合については詳細な説明を省略する。また、図1(A)における矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示している。
図1(A)に示すように、室内機5a〜5cが暖房運転を行う場合、つまり、冷媒回路10が暖房サイクルとなる場合は、室外機2では、四方弁22が実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdとが連通するよう、また、ポートbとポートcとが連通するよう、切り換えられる。これにより、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに、室内熱交換器51a〜51cが凝縮器として機能する。
圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管41から四方弁22を介して室外機ガス管44に流入し、室外機ガス管44からガス側閉鎖弁29を介してガス管9に流入する。ガス管9に流入した冷媒は分岐して、ガス側閉鎖弁54a〜54cを介して室内機5a〜5cに流入する。
室内機5a〜5cに流入した冷媒は、室内機ガス管72a〜72cを流れて室内熱交換器51a〜51cに流入する。室内熱交換器51a〜51cに流入した冷媒は、室内ファン55a〜55cの回転により図示しない吸込口から室内機5a〜5cの内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。このように、室内熱交換器51a〜51cが凝縮器として機能し、室内熱交換器51a〜51cで冷媒と熱交換を行った室内空気が図示しない吹出口から室内機5a〜5cが設置されている部屋に吹き出されることによって、各部屋の暖房が行われる。
室内熱交換器51a〜51cから流出した冷媒は室内機液管71a〜71cを流れ、液側閉鎖弁53a〜53cを介して第1液管8a、第2液管8b、および第3液管8cに流入する。第1液管8a、第2液管8b、および第3液管8cから第1液側閉鎖弁28a、第2液側閉鎖弁28b、および第3液側閉鎖弁28cを介して室外機2に流入した冷媒は、第1液分管46a、第2液分管46b、および第3液分管46cを流れて第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cに流入し、過冷却膨張弁26を介して流入管48から流入する冷媒と熱交換を行って冷却される。尚、各過冷却熱交換器で熱交換を行って流出管49に流出した冷媒は、流出管49を流れて吸入管42に流入する。
第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cで冷却された冷媒は、一部が第1バイパス管47a、第2バイパス管47b、および第3バイパス管47cに分流し、残りが第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cを通過して減圧された後、室外機液管45に流入する。尚、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および過冷却膨張弁26の開度制御については後述する。
室外機液管45から室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から流出した冷媒は、冷媒配管43を流れて四方弁22に流入し四方弁22から吸入管42へと流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
尚、室内機5a〜5cが冷房運転あるいは除霜運転を行う場合、つまり、冷媒回路10が冷房サイクルとなる場合は、室外機2では、四方弁22が破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとが連通するよう、また、ポートcとポートdとが連通するよう、切り換えられる。これにより、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに、室内熱交換器51a〜51cが蒸発器として機能する。
次に、図1および図2を用いて、本実施形態の空気調和装置1が暖房運転を行っているときの、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および過冷却度膨張弁26の開度制御について詳細に説明する。
尚、以下の説明では、高圧センサ31で検出する圧縮機21の吐出圧力をPd、吐出圧力Pdを用いて算出する室内熱交換器51a〜51cでの凝縮温度をTc、室外熱交温度センサ35で検出する室外熱交換器23での蒸発温度をTe、吐出温度センサ33で検出する圧縮機21の吐出温度をTd、目標吐出温度をTdtg、吐出温度Tdと目標吐出温度Tdtgとの差(Td−Tdtg)である吐出温度差をΔTdとする。尚、目標吐出温度Tdtgは、圧縮機21への液バックを防止でき、かつ、吐出温度Tdの過昇を押さえることができる温度であり、本実施形態では、凝縮温度Tcと蒸発温度Teとを用いて算出する。
また、第1冷媒温度センサ37a/第2冷媒温度センサ37b/第3冷媒温度センサ37cで検出する過冷却熱交入口温度をそれぞれTv1/Tv2/Tv3、凝縮温度Tcと各過冷却熱交入口温度Tv1/Tv2/Tv3との差(Tc−Tv1、Tc−Tv2、Tc−Tv3)をそれぞれ過冷却度SCf1/SCf2/SCf3とする。
また、第1液温度センサ38a/第2液温度センサ38b/第3液温度センサ38cで検出する過冷却熱交出口温度をそれぞれTl1/Tl2/Tl3、過冷却熱交入口温度Tv1/Tv2/Tv3と過冷却熱交出口温度Tl1/Tl2/Tl3との温度差(Tv1−Tl1、Tv2−Tl2、Tv3−Tl3)をそれぞれ熱交出入口温度差ΔTc1/ΔTc2/ΔTc3とする。また、熱交出入口温度差ΔTc1/ΔTc2/ΔTc3のうち最も大きな値のものを熱交出入口温度差の最大値ΔTcmax、最も小さな値のものを熱交出入口温度差の最小値ΔTcmin、熱交出入口温度差ΔTc1/ΔTc2/ΔTc3の平均値をΔTcaとする。
さらには、流入温度センサ39で検出する過冷却熱交流入温度をTsi、流出温度センサ40で検出する過冷却熱交流出温度をTso、過冷却熱交流出温度Tsoと過冷却熱交流入温度Tsiとの差(Tso−Tsi)であるバイパス過熱度をSHbとする。
空気調和装置1が暖房運転を行っているとき、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cを通過する冷媒の状態が気液二相状態であれば、これら各室外膨張弁を冷媒が通過する際に冷媒の流動音が発生する虞があり、また、液相と気相との割合が不均一な状態の冷媒が各室外膨張弁を通過すれば、各室外膨張弁の冷媒流入側(各過冷却熱交換器側)における冷媒圧力と冷媒流出側(室外熱交換器23側)における冷媒圧力との圧力差が不安定となって暖房サイクルが安定しない虞がある。
従って、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cを通過する冷媒の状態は、上述した冷媒の流動音や圧力差が発生しづらい液相状態とすることが好ましい。しかし、各室外膨張弁を通過する冷媒を液相状態とするために、各室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側で過冷却度が大きくなるように制御した場合、冷媒回路10における各室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側から第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cまでの間、つまり、各室内機液管71a〜71cと、第1液管8aおよび第2液管8bおよび第3液管8cと、第1液分管46aにおける第1閉鎖弁28aから第1室外膨張弁24aの間と、第2液分管46bにおける第2閉鎖弁28bから第2室外膨張弁24bの間と、第3液分管46cにおける第3閉鎖弁28cから第3室外膨張弁24cの間での液冷媒量が多くなる虞がある。
そして、空気調和装置1で必要とされる空調能力(冷房能力や暖房能力)を発揮するために必要な冷媒量に、各室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側から各室外膨張弁までの間の液冷媒量を加味して冷媒回路10に冷媒を充填すれば、充填する冷媒量が多くなってコストアップとなるとともに、充填する冷媒が可燃性冷媒であった場合に万が一各室内機5a〜5cが設置された空間に冷媒漏れが発生すれば、その漏洩量が冷媒が発火する虞がある濃度に相当する量となる虞がある。
そこで、空気調和装置1が暖房運転を行っているとき、各室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側での過冷却度SCfが所定値(本実施形態では、0℃)となるように、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cの開度調節を行うことで、各室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側から第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cの各冷媒入口側までの間における冷媒の状態を気液二相状態とし(後述する過冷却度調節ステップ)、過冷却膨張弁26の開度を調節することで、第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cのそれぞれに流入した気液二相状態の冷媒を冷却して液相状態とする(後述する温度差調節ステップ)。
以上のように第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および過冷却膨張弁26の各開度を調整することによって、前述した冷媒回路10における各室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側から第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cの各冷媒入口側までの間の液冷媒量が減少するので、各室内機5a〜5cで同時に必要とされる空調能力を発揮するために必要な量の冷媒のみ空気調和装置1に充填すればよい、つまり、余分な量の冷媒を空気調和装置1に充填しなくてもよいこととなる。
しかし、上述した第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cの開度調節により各液管に流入する冷媒を気液二相状態とした場合は、各液管を流れる冷媒の乾き度は判断できない。従って、ある室内機で大きい暖房能力が要求される場合、例えば、室内機5aで使用者により風量が大きく設定される(つまり、室内ファン55aの回転数が高くなる)場合では、他の室内機5b、5cに比べて乾き度が低い気液二相冷媒が室内機5aから第1液管8aに流出するので、第1液管8a内における液冷媒密度が第2液管8および第3液管8cにおける液冷媒密度より高くなる。これにより、第1液管8aにおける液冷媒量が第2液管8および第3液管8cにおける液冷媒量より多くなる、つまり、第1液管8aに冷媒が偏る。
上記のように、ある液管に冷媒が偏れば、空気調和装置1の冷媒回路10における冷媒循環量が低下する。特に、上述した方法を用いて各室内機5a〜5cで同時に必要とされる空調能力を発揮するために必要な量の冷媒のみ空気調和装置1に充填し余分な量の冷媒を充填していない場合は、冷媒回路10における冷媒循環量が低下することによって全ての室内機で暖房能力が低下する恐れがあった。
そこで、本発明では、過冷却度調節ステップを実行した後、第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cの各過冷却熱交入口温度Tv1/Tv2/Tv3と各過冷却熱交出口温度Tl1/Tl2/Tl3との温度差である熱交出入口温度差ΔTc1/ΔTc2/ΔTc3を求め、これらのうちの最大値ΔTcmaxと最小値ΔTcminの差が所定値(本実施形態では、1℃未満)となるように第1室外膨張弁24a〜第3室外膨張弁24cの開度を調節することで、いずれかの液管に冷媒が偏っている状態を解消する冷媒偏り解消ステップを実行する。
そして、冷媒偏り解消ステップを実行した後、第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、および第3過冷却熱交換器25cに流入した気液二相状態の冷媒を冷却して液相状態とするために、各熱交出入口温度差ΔTc1/ΔTc2/ΔTc3の平均値ΔTcaを求め、この平均値ΔTcaが所定範囲(本実施形態では、2.5℃以上3.5℃以下)となるように過冷却膨張弁26の開度を調節する温度差調節ステップを実行する。
次に、図2を用いて、空気調和装置1が暖房運転を行うときに、室外機制御手段200のCPU210が行う処理について説明する。暖房運転時、CPU210は、(1)暖房運転準備ステップ、(2)吐出温度調節ステップ、(3)過冷却度調節ステップ、(4)冷媒偏り解消ステップ、(5)温度差調節ステップ、の5つの処理を実行する。
以下、図2を用いて上記(1)〜(5)の各ステップに関わる処理について詳細に説明する。尚、図2に示すフローチャートでは、STは処理のステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。また、図2では、上記(1)〜(5)の各ステップに関わる処理を中心に説明しており、空気調和装置1が冷房運転や除霜運転を行うときの処理や、使用者の指示した設定温度や風量などの運転条件に対応した冷媒回路10の制御、等といった一般的な処理については説明を省略する。
(1)暖房運転準備ステップ
空気調和装置1が暖房運転を開始するとき、CPU210は、四方弁22を、ポートaとdとが、また、ポートbとcとが各々連通するように切り替えるとともに、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および過冷却膨張弁26を、それぞれ予め定められた初期開度とする(ST1)。ここで、各膨張弁の初期開度は、予め試験等で求められて記憶部22に記憶されているものであり、圧縮機21への液バックを防止できる開度である。そして、CPU210は、圧縮機21と室外ファン27とを起動するとともに、室内機5a〜5cに対し通信部230を介して運転開始信号を送信する。この信号を通信部530a〜530cを介して受信した各室外機制御手段500a〜500cのCPU510a〜510cは、室内ファン55a〜55cを起動する。
以上のように室外機2や室内機5a〜5cが運転を開始し、冷媒回路1に冷媒が循環して暖房運転が開始される。
ST1の処理を終えたCPU210は、タイマー計測を開始し(ST2)、ST3に処理を進める。
(2)吐出温度調節ステップ
次に、CPU210は、高圧センサ31で検出した吐出圧力Pdと、室外熱交温度センサ35で検出した蒸発温度Teとを取り込み、取り込んだ吐出圧力Pdを用いて凝縮温度Tcを算出する(ST3)。尚、CPU210は、吐出圧力Pdや蒸発温度Teを定期的に(例えば、30秒に1回)取り込んで記憶部220に記憶しており、また、算出した凝縮温度Tcも記憶部220に記憶している。
次に、CPU210は、算出した凝縮温度Tcと取り込んだ蒸発温度Teとを用いて、目標吐出温度Tdtgを算出し(ST4)、吐出温度センサ33で検出した吐出温度Tdを取り込んで吐出温度差ΔTd=Td−Tdtgを算出する(ST5)。尚、CPU210は、吐出温度Tdを定期的に取り込んで記憶部220に記憶しており、また、算出した吐出温度差もΔTdも記憶部220に記憶している。
次に、CPU210は、算出した吐出温度差ΔTdが−1℃以上1℃以下であるか否かを判断する(ST6)。吐出温度差ΔTdが−1℃以上1℃以下であれば(ST6−Yes)、CPU210は、ST10に処理を進める。吐出温度差ΔTdが−1℃以上1℃以下でなければ(ST6−No)、CPU210は、吐出温度差ΔTdが−1℃未満であるか否かを判断する(ST7)。
吐出温度差ΔTdが−1℃未満であれば(ST7−Yes)、CPU210は、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cの開度をそれぞれ所定開度減じる(ST8)。吐出温度差ΔTdが−1℃未満でなければ(ST7−No)、CPU210は、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cの開度をそれぞれ所定開度増す(ST9)。ここで、所定開度減じるあるいは増すとは、各室外膨張弁に備えられた図示しないステッピングモータに与えるパルス数を減じるあるいは加えることを指し、例えば、ST7の判断を1回行う毎にパルス数を1減じるあるいは加える。このように各室外膨張弁24a〜24cの開度を調節することで、吐出温度Tdを目標吐出温度Tdtgに近づける。
ST8あるいはST9の処理を終えたCPU210は、ST10に処理を進める。
(3)過冷却度調節ステップ
ST10において、CPU210は、第1冷媒温度センサ37aで検出した過冷却熱交入口温度Tv1を取り込み、ST3で算出した凝縮温度Tcから過冷却熱交入口温度Tv1を減じて第1過冷却熱交換器25aの冷媒入口側における過冷却度SCf1を算出する。また、CPU210は、第2冷媒温度センサ37bで検出した過冷却熱交入口温度Tv2を取り込み、ST3で算出した凝縮温度Tcから過冷却熱交入口温度Tv2を減じて第2過冷却熱交換器25bの冷媒入口側における過冷却度SCf2を算出する。さらには、CPU210は、第3冷媒温度センサ37cで検出した過冷却熱交入口温度Tv3を取り込み、ST3で算出した凝縮温度Tcから過冷却熱交入口温度Tv3を減じて第3過冷却熱交換器25cの冷媒入口側における過冷却度SCf3を算出する。尚、CPU210は、算出した各過冷却度SCf1〜SCf3を記憶部220に記憶している。
次に、CPU210は、算出した過冷却度SCf1〜SCf3の全てが0℃であるか否かを判断する(ST11)。全ての過冷却度SCfが0℃であれば(ST11−Yes)、CPU210は、ST13に処理を進める。いずれか1つまたは2つの過冷却度SCfが0℃でなければ(ST11−No)、CPU210は、過冷却度SCfが0℃となっていない第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、第3過冷却熱交換器25cに夫々対応する第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24cの開度をそれぞれ所定開度増す(ST12)。ここで、所定開度増すとは、ST9と同様に各室外膨張弁に備えられた図示しないステッピングモータに与えるパルス数を加えることを指し、例えば、ST11の判断を1回行う毎にパルス数を1加える。このように各室外膨張弁24a〜24cの開度を調節することで、各室内機5a〜5cから各液管8a〜8cに流出する冷媒を気液二相状態の冷媒とする。
ST12の処理を終えたCPU210は、ST13に処理を進める。
(4)冷媒偏り解消ステップ
ST13において、CPU210は、第1冷媒温度センサ37aで検出した過冷却熱交入口温度Tv1と第1液温度センサ38aで検出した過冷却熱交出口温度Tl1を取り込み、過冷却熱交入口温度Tv1から過冷却熱交出口温度Tl1を減じて第1過冷却熱交換器25aにおける熱交出入口温度差ΔTc1を算出する。また、CPU210は、第2冷媒温度センサ37bで検出した過冷却熱交入口温度Tv2と第2液温度センサ38bで検出した過冷却熱交出口温度Tl2を取り込み、過冷却熱交入口温度Tv2から過冷却熱交出口温度Tl2を減じて第2過冷却熱交換器25bにおける熱交出入口温度差ΔTc2を算出する。さらには、CPU210は、第3冷媒温度センサ37cで検出した過冷却熱交入口温度Tv3と第3液温度センサ38cで検出した過冷却熱交出口温度Tl3を取り込み、過冷却熱交入口温度Tv3から過冷却熱交出口温度Tl3を減じて第3過冷却熱交換器25cにおける熱交出入口温度差ΔTc3を算出する。
次に、CPU210は、算出した熱交出入口温度差ΔTc1〜ΔTc3のうち、最も大きい値のものを熱交出入口温度差の最大値ΔTcmax、最も小さい値のものを熱交出入口温度差の最小値ΔTcminとするとともに、熱交出入口温度差ΔTc1〜ΔTc3の平均値ΔTcaを算出する(ST14)。尚、CPU210は、最大値ΔTcmax、最小値ΔTcmin、および算出した平均値ΔTcaを記憶部220に記憶している。
次に、CPU210は、最大値ΔTcmaxと最小値ΔTcminとの差(ΔTcmax−ΔTcmin)が1℃未満であるか否かを判断する(ST15)。この条件(ΔTcmax−ΔTcmin<1℃)は、予め試験等を行って求められて記憶部220に記憶されているものであり、第1液管8a〜第3液管8cのいずれにも冷媒が偏っていないと判断できる条件である。
最大値ΔTcmaxと最小値ΔTcminとの差が1℃未満であれば(ST15−Yes)、CPU210は、ST18に処理を進める。最大値ΔTcmaxと最小値ΔTcminとの差が1℃未満でなければ(ST15−No)、CPU210は、第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、第3過冷却熱交換器25cのうち熱交出入口温度差ΔTcが最大値ΔTcmaxとなっている過冷却熱交換器に対応する第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24cのうちいずれかの室外膨張弁の開度をそれぞれ所定開度増す(ST16)。また、第1過冷却熱交換器25a、第2過冷却熱交換器25b、第3過冷却熱交換器25cのうち熱交出入口温度差ΔTcが最小値ΔTcminとなっている過冷却熱交換器に対応する第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24cのうちいずれかの室外膨張弁の開度をそれぞれ所定開度減じる(ST17)。ここで、所定開度増すあるいは減じるとは、ST8やST9と同様に各室外膨張弁に備えられた図示しないステッピングモータに与えるパルス数を加えるあるいは減じることを指し、例えば、ST15の判断を1回行う毎にパルス数を1加える。このように各室外膨張弁24a〜24cの開度を調節することで、第1液管8a〜第3液管8cのいずれかに冷媒が偏った場合にその偏りを解消する。
ST17の処理を終えたCPU210は、ST18に処理を進める。
次に、CPU210は、ST2でタイマー計測を開始してから、つまり、暖房運転を開始してから所定時間が経過したか否かを判断する(ST18)。所定時間が経過していなければ(ST18−No)、CPU210は、ST3に処理を戻し、所定時間が経過していれば(ST18−Yes)、CPU210は、タイマーをリセットし(ST19)、ST20に処理を進める。
ここで、暖房運転を開始してから所定時間が経過したか否かに応じて、次のステップに進むかST3に処理を戻すかを判断している理由は以下の通りである。ST20以降で行う(5)の温度差調節ステップでは、過冷却膨張弁26の開度調節を行う。このとき、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24cの開度が大きいと、過冷却膨張弁26の開度調節を行っても第2過冷却度SCs1〜SCs3が所定範囲内の値になりづらい。よって、第2過冷却度SCs1〜SCs3を所定範囲内の値とするために必要以上に過冷却膨張弁26の開度が大きくされる恐れがある。そして、過冷却膨張弁26の開度が必要以上に大きくされると、第2過冷却度SCs1〜SCs3が所定範囲の上限値を超える恐れがある。
一方、暖房運転を開始した直後は吐出温度が低いために吐出温度差ΔTdが−1℃未満であるため、(2)の吐出温度調節ステップにおいて、吐出温度差ΔTdが−1℃以上1℃以下となるまで各室外膨張弁の開度を減じる(前述したST6〜ST8を参照)。
従って、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24cの開度が、過冷却膨張弁26の開度調節に影響を及ぼさない開度となるまでの所定時間(例えば、10分。試験等により予め求めて記憶部220に記憶される)の間は、ST3〜ST18の処理を繰り返すことによって、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24cの開度を小さくし、過冷却膨張弁26の開度調節を行って第2過冷却度SCs1〜SCs3が所定範囲内の値になりやすい状態とする。
(5)温度差調節ステップ
ST20において、CPU210は、ST14で算出した熱交出入口温度差ΔTcの平均値ΔTcaが2.5℃以上3.5℃以下であるか否かを判断する。この条件(2.5℃≦ΔTca≦3.5℃)は、予め試験等を行って求められて記憶部220に記憶されているものであり、(3)の冷媒偏り解消ステップの実行によって最大値ΔTcmaxと最小値ΔTcminの差が1℃未満となっている状態において、各室外膨張弁24a〜24cを通過する冷媒の状態が確実に液相状態となっていると判断される条件である。
熱交出入口温度差ΔTcの平均値ΔTcaが2.5℃以上3.5℃以下であれば(ST20−Yes)、CPU210は、ST26に処理を進める。熱交出入口温度差ΔTcの平均値ΔTcaが2.5℃以上3.5℃以下でなければ(ST20−No)、CPU210は、熱交出入口温度差ΔTcの平均値ΔTcaが2.5℃未満であるか否かを判断する(ST21)。
熱交出入口温度差ΔTcの平均値ΔTcaが2.5℃未満であれば(ST21−Yes)、CPU210は、流入温度センサ39で検出した過冷却熱交流入温度Tsiと、流出温度センサ40で検出した過冷却熱交流出温度Tsoを取り込み、過冷却熱交流出温度Tsoから過冷却熱交流入温度Tsiを減じてバイパス過熱度SHbを算出する(ST22)。尚、CPU210は、過冷却熱交流入温度Tsiおよび過冷却熱交流出温度Tsoを定期的に取り込んで記憶部220に記憶しており、また、算出したバイパス過熱度SHbを記憶部220に記憶している。
次に、CPU210は、算出したバイパス過熱度SHbが2℃未満であるか否かを判断する(ST23)。バイパス過熱度SHbが2℃未満であれば(ST23−Yes)、CPU210は、過冷却膨張弁26の開度を調節せずST26に処理を進める。バイパス過熱度SHbが2℃未満でなければ(ST23−No)、CPU210は、過冷却膨張弁26の開度を所定開度増す(ST24)。尚、所定開度増すとは、過冷却膨張弁26に備えられた図示しないステッピングモータに与えるパルス数を加えることを指し、例えば、ST23の判断を1回行う毎にパルス数を1加える。
上述した温度差調節ステップにおいて、バイパス過熱度SHbの値によって過冷却膨張弁26の開度を増すか否かを判断する理由は、次の通りである。第1過冷却熱交換器25a〜第3過冷却熱交換器25cにおいて、過冷却膨張弁26の開度を大きくしてバイパス回路を流れる冷媒量を増やせば、第1過冷却熱交換器25a〜第3過冷却熱交換器25cにおいて第1液分管46a〜第3液分管46cを流れる冷媒との熱交換量が増加する。しかし、バイパス過熱度SHbが所定値(本実施形態では2℃)未満となれば、これ以上過冷却膨張弁26の開度を大きくしてバイパス回路を流れる冷媒量を増やしても熱交換量が増加しなくなる。また、バイパス回路を流れる冷媒量を増やしてバイパス過熱度SHbが2℃未満となれば、圧縮機21に乾き度の低い冷媒が吸入されて圧縮機21で液圧縮が発生する恐れがある。
以上の問題点を考慮して、上述したように、第2過冷却度の平均値SCsaが2.5℃以上3.5℃以下でないときにバイパス過熱度SHbが2℃未満である場合は、過冷却膨張弁26の開度を大きくせず、第2過冷却度の平均値SCsaが2.5℃以上3.5℃以下でないときにバイパス過熱度SHbが2℃未満でない場合のみ、過冷却膨張弁26の開度を大きくして第2過冷却度の平均値SCsaが2.5℃以上3.5℃以下となるように調節している。
ST21において、熱交出入口温度差ΔTcの平均値ΔTcaが2.5℃未満でなければ(ST21−Yes)、CPU210は、過冷却膨張弁26の開度を所定開度減じ(ST25)、ST26に処理を進める。尚、所定開度減じるとは、過冷却膨張弁26に備えられた図示しないステッピングモータに与えるパルス数を減じることを指し、例えば、ST23の判断を1回行う毎にパルス数を1減じる。このように過冷却膨張弁26の開度を調節し第2過冷却度の平均値SCsaを2.5℃以上3.5℃以下の値とすることで、各室外膨張弁24a〜24cを通過する冷媒の状態を液相状態とする。
ST20、ST23、ST24、ST25の各処理を終えたCPU210は、ST26に処理を進める。
ST26において、CPU210は、空気調和装置1に対し運転停止指示があったか否かを判断する。ここで、運転停止とは、全ての室内機5a〜5cにおいて使用者により運転停止が指示された場合である。運転停止が指示されていれば(ST26−Yes)、CPU210は、圧縮機21および室外ファン27を停止するとともに、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および過冷却膨張弁26を全閉として、室外機2を停止する。また、CPU210は、室内機5a〜5cに対し通信部230を介して運転停止信号を送信する。この信号を通信部530a〜530cを介して受信した各室外機制御手段500a〜500cのCPU510a〜510cは、室内ファン55a〜55cを停止する。
運転停止が指示されていなければ(ST26−No)、CPU210は、ST3に処理を戻す。
以上説明した実施形態では、ST11〜ST12の処理において、全ての過冷却度SCfが0℃となるように、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cの開度を調節したが、第1液管8a、第2液管8b、および第3液管8cにおける圧力損失によって冷媒の状態が各液管内で気液二相状態となるような過冷却度SCfであれば、全ての過冷却度SCfが0℃超の値、例えば、1℃や2℃となるように、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、および第3室外膨張弁24cの開度を調節してもよい。
また、第1〜第3過冷却熱交換器として、2本の冷媒流路が平行に配置されたマイクロ流路熱交換器を用いた場合について説明したが、2本の冷媒流路が直交するように配置され、流入管48から各過冷却熱交換器に冷媒が分岐して流入するようにしてもよい。また、マイクロ流路熱交換器に代えて、プレート型熱交換器や二重管熱交換器等を用いても、本発明の効果を得ることができるが、これらはマイクロ流路熱交換器と比べて大きいため、マイクロ流路熱交換器を過冷却熱交換器に用いる場合に比べて室外機2が大型化する。
また、本実施形態では、熱交出入口温度差ΔTcの平均値ΔTcaが所定範囲内の値(2.5℃以上3.5℃以下)となるように、過冷却膨張弁26の開度調節を行う場合を説明したが、これに限るものではなく、図2のST14で抽出した熱交出入口温度差ΔTcの最大値ΔTcmaxあるいは最小値ΔTcminのいずれかに各熱交出入口温度差ΔTcがなるように、過冷却膨張弁26の開度調節を行ってもよく、また、各熱交出入口温度差ΔTcが全て所定値(例えば、3℃)となるように、過冷却膨張弁26の開度調節を行ってもよい。但し、上記実施形態以外の方法を採用する場合は、各熱交出入口温度差ΔTcを最大値ΔTcmaxあるいは最小値ΔTcminあるいは所定値以上とすれば、各室外膨張弁24a〜24cを通過する冷媒の状態が確実に液相状態となることがわかっていることが条件となる。
さらには、本発明には、CFC冷媒やHCFC冷媒、HFC冷媒といったフロン類の冷媒や、混合系の冷媒等、様々な冷媒を用いても、本発明の奏する効果が得られるが、例えば、R32冷媒のように、凝縮過程におけるエンタルピ差(冷凍能力に相当)が大きい冷媒を用いることが好ましい。実施形態で説明したように、本発明では、暖房運転時に室内熱交換器で過冷却度を取らないようにして気液二相状態の冷媒を室内機から流出させるようにしているため室内機でのエンタルピ差が小さくなり、過冷却度を取る場合と比べて暖房能力が低下する。しかし、元々凝縮過程におけるエンタルピ差が大きい冷媒を使用すれば、室内機が設置される空間で必要とされる暖房能力を満たすことが容易となり、本発明による効果を得つつ暖房能力も確保できる。