JP2016151000A - 難燃性ポリエステル組成物、およびその製造方法 - Google Patents

難燃性ポリエステル組成物、およびその製造方法 Download PDF

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篤 宮田
啓尚 竹綱
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啓尚 竹綱
和紗 苅田
Kazusa Karita
和紗 苅田
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Abstract

【課題】反応型の有機リン化合物を使用する際の重合活性の低さを解決し、特定の組成によって、高分子量であり且つ難燃性に優れたポリエステル組成物とその製造方法を提供する。
【解決手段】エステル結合可能な官能基を有する特定構造の有機リン化合物を、得られたポリエステル組成物中にリン原子換算で1000〜20000ppm重合したポリエステル組成物であって、固体塩基100重量部に対してTiO換算で0.1〜50重量部のチタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子からなる重縮合触媒を、得られたポリエステル組成物中にチタン原子換算で5〜50ppm含有することを特徴とする難燃性ポリエステル組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性ポリエステル組成物およびその製造方法に関するものである。
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは、その機械的、物理的、化学的性能が優れているため、繊維、フィルム、ボトル、その他の成形物に広く利用されている。また、近年、火災に対する安全性を確保するためにポリエステル樹脂の難燃化の要望が高まっている。
ポリエステル樹脂を難燃化させるために、ポリエステル樹脂の成型時に難燃剤を添加する方法が知られている。このような添加型難燃剤としては、従来ハロゲン系難燃剤が用いられている。しかしながら、ハロゲン系難燃剤を含有するポリエステル樹脂は、燃焼時にハロゲン化水素などのガスを発生する等の理由で環境への影響が懸念されており、ハロゲンを含まない環境に配慮した難燃剤が望まれている。
ハロゲンを含まない添加型難燃剤として、リン酸エステル系化合物、ホスフィンオキシド、ホスファゼンなどの難燃剤が提案されている。しかし、十分な難燃性を発揮するためには、その添加量を多くする必要があるため、得られる成形品の機械的特性の低下を招いたり、ポリエステル樹脂中から難燃剤が経時で表面に浮き出したりする(以後、ブリードアウトともいう)問題があった。
一方、ポリエステル樹脂の重合時に分子中に化学的に結合させる反応型難燃剤も種々提案されており、リン系化合物の反応型難燃剤等が知られている。特に、カルボキシホスフィン酸や特定の化学構造を有する有機リン化合物はいずれも重合反応性が良好であることから、難燃性ポリエステルの原料として有用である(特許文献1、2)。一般的に、反応型難燃剤は、化学的結合によってポリエステル分子中に組み込めるため、ポリエステル樹脂成型品の特性を大きく低下させることなく、またブリードアウトなどの添加型難燃剤に見られる問題も解消できると期待されている。
しかしながら、特許文献1、2に示されているようなカルボキシホスフィン酸や特定の化学構造を有する有機リン化合物は、ポリエステル分子中に組み込むことは出来るが、分子量が大きく、分子中のリン原子含有率が小さいため、十分な難燃性を得るために添加量を多くする必要があり、ポリエステル樹脂成型品の特性を大きく低下させるという問題を解決するには不十分であった。
一方、特許文献3では比較的分子量の小さい有機リン化合物を難燃剤として利用する方法も知られている。該化合物は分子中のリン原子含有率が比較的大きいため、少ない添加量でも難燃性を発揮することが出来る。
特許文献3に記載されているような有機リン化合物をポリエステル分子中に重合する場合、重縮合触媒としては主に三酸化アンチモンが使用されている。しかしながら、このような有機リン化合物は、三酸化アンチモンをポリエステル樹脂に不溶な金属アンチモンに還元してしまい、黒ずんだ灰色の色調になるため、得られるポリエステル樹脂の品質が低下するという問題があった。また、三酸化アンチモンは還元されることにより重合活性が大きく低下するため、高分子量のポリエステル樹脂を得るためには重合時間が長くなるという問題もあった。
三酸化アンチモン以外の重縮合触媒として、ゲルマニウム化合物を用いる方法が提案されているが、ゲルマニウム化合物は非常に高価であり汎用的に用いることは難しい。一方、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネートのようなチタン化合物(特許文献4)、及び該チタン化合物と芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させた生成物を用いる方法(特許文献5)が提案されている。しかしながら、このようなチタン化合物を使用した場合、上記のような色調の問題は発生しないものの、重縮合触媒の活性が低いという問題があった。
特開昭50−56488号公報 特公昭55−41610号公報 US特許4,517,355 特開平6−287414号公報 特開2010−100773号公報
本発明は、上述の問題を解決し、上記のような反応型の有機リン化合物を使用する際の重縮合触媒の活性の低さを解決することを目的として、特定の組成で重合することによって、高分子量であり、且つ、難燃性に優れた難燃性ポリエステル組成物とその組成物の製造方法を提供するものである。
上記課題を解決するために本発明の難燃性ポリエステル組成物は、主として次の構成を有する。すなわち、エステル結合可能な官能基を有する下記一般式[1]で示される有機リン化合物を、得られたポリエステル組成物中にリン原子換算で1000〜20000ppm含むように重合したポリエステル組成物であって、固体塩基100重量部に対してTiO換算で0.1〜50重量部のチタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子からなる重縮合触媒を、得られたポリエステル組成物中にチタン原子換算で5〜50ppm含有することを特徴とする難燃性ポリエステル組成物である。
Figure 2016151000
(式中、Rは水素、炭素数が1〜4の1価のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、または芳香族炭化水素基を表し、R及びRは水素、炭素数が1〜4のアルキル基、またはフェニル基を表す。nは1〜4の整数である。R及びRは同一であっても異なっていても良い。)
本発明の難燃性ポリエステル組成物は、その好ましい形態として、上記固体塩基が水酸化マグネシウムまたはハイドロタルサイトであるか、あるいは上記有機リン化合物が一般式[1]においてRが水素でもある。
また、本発明は上記難燃性ポリエステル組成物の製造方法であって、ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体、ジオール及び/又はそのエステル形成性誘導体、及び一般式[1]で示される有機リン化合物を、チタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子の共存下で重合させるか、あるいは、
ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体とジオール及び/又はそのエステル形成性誘導体とからなる低分子量オリゴマー、及び一般式[1]で示される有機リン化合物を、チタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子の共存下で重合させることを特徴とする製造方法でもある。
本発明の難燃性ポリエステル組成物は、重縮合触媒としてチタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子を使用し、難燃剤として上記一般式[1]で示される有機リン化合物を使用するので、少ない有機リン化合物添加量で、高分子量且つ難燃性に優れる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の難燃性ポリエステル組成物は、エステル結合可能な官能基を有する上記一般式[1]で示される有機リン化合物を、得られたポリエステル組成物中にリン原子換算で1000〜20000ppm含むように重合したポリエステル組成物であって、固体塩基100重量部に対してTiO換算で0.1〜50重量部のチタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子からなる重縮合触媒を、得られたポリエステル組成物中にチタン原子換算で5〜50ppm含有することを特徴とする。その製造方法は特に限定されるものではないが、後述の製造方法である事が望ましい。
本発明において、難燃剤として用いられる有機リン化合物は、エステル結合可能な官能基を有する上記一般式[1]で表される有機リン化合物であれば特に限定されないが、例えばヒドロキシメチルフェニルホスフィン酸、(1−ヒドロキシエチル)フェニルホスフィン酸、(1−ヒドロキシベンジル)フェニルホスフィン酸、ヒドロキシメチルフェニルホスフィン酸メチル、ヒドロキシメチルフェニルホスフィン酸エチル、ヒドロキシメチルフェニルホスフィン酸プロピル、ヒドロキシメチルフェニルホスフィン酸ブチル、ヒドロキシメチルフェニルホスフィン酸(2−ヒドロキシエチル)等を挙げることができる。これらの有機リン化合物は単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。有機リン化合物中のリン原子含有率が高くなると、より少ない添加量で優れた難燃性を示せる点で好ましいことから、特にヒドロキシメチルフェニルホスフィン酸やヒドロキシエチルフェニルホスフィン酸が好ましい。
本発明の難燃性ポリエステル組成物は、上記一般式[1]で示される有機リン化合物が、ポリエステル組成物中に、得られたポリエステル組成物中にリン原子換算として1000〜20000ppm、好ましくは5000〜10000ppm含むように重合されていることを特徴とする。上記有機リン化合物の重合割合が、リン原子の含有量として1000ppm未満の場合、十分な難燃性能が得られない。一方、20000ppmを超えると、経済面でのメリットを損なうだけでなく、重縮合触媒の活性が低下し、重合度を十分に上げることが困難になる可能性がある。また、有機リン化合物の添加量が少なく、得られるポリエステル樹脂成型品の特性が低下しにくいという本発明の反応型難燃剤の特徴を活かせない可能性もある。
本発明におけるポリエステル組成物は、ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール及び/又はそのエステル形成性誘導体とから製造される。前記ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体としては例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、エイコサン二酸、トリシクロデカンジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などの例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ジオール及び/又はそのエステル形成性誘導体としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられ、また、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコール、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
これらグリコール以外の多価アルコールとしては、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
上述した中では、例えば、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が好適に用いられ、また、ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコールが好適に用いられる。
従って、本発明において、ポリエステル組成物の具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ(1,4‐シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)などが挙げられる。
しかし、本発明において、用いることができるジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体や、ジオール及び/又はそのエステル形成性誘導体は、上記例示に限定されるものではなく、また、得られるポリエステル組成物も上記例示に限定されるものではない。
本発明の難燃性ポリエステル組成物は、重縮合触媒として、固体塩基100重量部に対してTiO換算で0.1〜50重量部のチタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子を、得られたポリエステル組成物中にチタン原子換算で5〜50ppm含有する。本願における重縮合触媒とは、ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体とジオール及び/又はそのエステル形成性誘導体とのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル組成物製造用触媒である。
前記チタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子の固体塩基としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛、ランタン、ジルコニウム、トリウム等の酸化物や水酸化物、これらの複合水酸化物を挙げることができる。これらは、一部が炭酸塩等の塩類によって置換されていてもよい。従って、より具体的には、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛等の酸化物や水酸化物、ハイドロタルサイト等の複合水酸化物を例示することができる。なかでも、本発明によれば、水酸化マグネシウム又はハイドロタルサイトが好ましく用いられる。
前記チタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子のチタン酸とは、一般式
TiO・nH
(式中、nは0<n≦2を満たす整数である。)
で表される含水酸化チタンであって、このようなチタン酸は、例えば、後述するように、ある種のチタン化合物をアルカリ加水分解することによって得ることができる。
前記チタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子の被覆層は、固体塩基100重量部に対してTiO換算で0.1〜50重量部であることを特徴とする。前記チタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子の固体塩基100重量部に対して、チタン酸からなる被覆層の割合がTiO換算で0.1重量部より少ないときは、得られる重縮合触媒の重合活性が低く、高分子量のポリエステル組成物を生産性よく得ることができず、他方、固体塩基100重量部に対して、チタン酸からなる被覆層の割合がTiO換算で50重量部より多いときは、ポリエステル組成物の製造に際して、ポリエステル組成物の分解が起こりやすく、また、得られたポリエステル組成物の溶融成形時に熱劣化による着色が生じやすい。
上記のような重縮合触媒は、市販のものを用いても良いし、例えば後述する製法で製造したものを用いても良い。市販のものとしては例えばSATICA SPC‐124(堺化学工業製)等が挙げられる。
本発明の難燃性ポリエステル組成物は、固体塩基100重量部に対してTiO換算で0.1〜50重量部のチタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子からなる重縮合触媒を、得られたポリエステル組成物中にチタン原子換算で5〜50ppm、好ましくは10〜30ppm含有することを特徴とする。生成する難燃性ポリエステル組成物中に50ppmを超えて添加されると、添加量が多すぎるため透明性が悪く、黄味が強くなる。また、5ppmよりも少ない量であると、重合活性が低いため、高分子量のポリエステル組成物を生産性よく得られない可能性がある。
さらに、本発明の難燃性ポリエステル組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、抗酸化剤、色調改良剤、顔料、耐候性改良剤等の添加剤が添加されていてもよい。
抗酸化剤としては、フェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、及びチオエーテル系化合物等が挙げられる。
フェノール系化合物としては、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
ホスファイト系化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。他のホスファイト系化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものが挙げられる。
ホスホナイト系化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、及びビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。
チオエーテル系化合物として、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、及びペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
色調改良剤としては例えば、染料が挙げられる。染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、硫化染料、トリフェニルメタン染料、ピラゾロン染料、スチルベン染料、ジフェニルメタン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料、キノンイミン染料(アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料)、チアゾール染料、メチン染料、ニトロ染料、及びニトロソ染料等が挙げられる。
顔料としては、無機顔料や有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等が挙げられる。その他にも金属粉末顔料として、アルミニウム粉末、銅粉末、ステンレス粉末、金属コロイド、干渉作用があるものとして透明パールマイカ、着色マイカ、干渉マイカ、干渉アルミナ、干渉シリカ(干渉ガラス)等が挙げられる。
有機顔料としては、アゾ系顔料モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー等)、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンレッド、ジケトピロロピロールレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルトバイオレット、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニン系顔料(フタロシアニンブルー等)、スレンブルー等の青色顔料;フタロシアニングリーン等の緑色顔料、アゾ系分散染料、アントラキノン系分散染料等の有機染料等を挙げることができる。
耐候性改良剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、シンナミル系化合物などの様々な種類の化合物が挙げられ、これらの耐候性改良剤は、単独で使用しても二種以上を混合して使用してもよい。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸三水和物、ビス(2−ヒドロキシ−3−ベンゾイル−6−メトキシフェニル)メタン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−オクチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−ラウリル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)メタン、ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−クミルフェニル)メタン、ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−オクチルフェニル)メタン、1,1−ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)オクタン、1,1−ビス(3−(2H−5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)オクタン、1,2−エタンジイルビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシベンゾエート)、1,12−ドデカンジイルビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシベンゾエート)、1,3−シクロヘキサンジイルビス(3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシベンゾエート)、1,4−ブタンジイルビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルエタノエート)、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイルビス(3−(5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニルエタノエート)、1,6−ヘキサンジイルビス(3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロピオネート)、p−キシレンジイルビス(3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシトルイル)マロネート、ビス(2−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−オクチルフェニル)エチル)テレフタレート、ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−プロピルトルイル)オクタジオエート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−フタルイミドメチル−4−メチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−フタルイミドエチル−4−メチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−フタルイミドオクチル−4−メチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−フタルイミドメチル−4−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−フタルイミドメチル−4−クミルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(フタルイミドメチル)フェノール等が挙げられる。
サリチル酸エステル系化合物としては、例えば、フェニルサルチレート、2,4−ジターシャリーブチルフェニル−3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
ベンゾエート系化合物としては、例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
トリアジン系化合物としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシロキシフェノール等が挙げられる。
ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ((6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
その他の耐候性改良剤としては、例えば、2−エトキシ−2’−エチル−オキサリック酸ビスアニリド、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
本発明の難燃性ポリエステル組成物は、前述の通り、特定の組成で重合することによって、高分子量であり、且つ難燃性に優れる。有機リン化合物の添加量が少ないので、ポリエステル樹脂成型品の特性を大きく低下させることがない。また、本発明の難燃性ポリエステル組成物は、着色やくすみがなく、透明性が良好で、難燃性も良好なので、難燃性能が要求されるフィルム、成形容器等、各種用途に用いることができる。
次に、本発明の難燃性ポリエステル組成物の製造方法について説明する。
本発明の難燃性ポリエステル組成物の製造方法は、ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体、ジオール及び/又はそのエステル形成性誘導体、及び一般式[1]で示される有機リン化合物を、チタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子の共存下で重合させるか、あるいは、
ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体とジオール及び/又はそのエステル形成性誘導体とからなる低分子量オリゴマー、及び一般式[1]で示される有機リン化合物を、チタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子の共存下で重合させることを特徴とする。
難燃性ポリエステル組成物の製造方法は、下記に説明する(1)オリゴマー化工程及び(2)重合工程を含む。また、使用する原料によって(1)オリゴマー化工程を省略することもできる。
(1)オリゴマー化工程
ポリエチレンテレフタレートの製造を例にとって説明すれば、公知の方法に従って、ジカルボン酸であるテレフタル酸とジオールであるエチレングリコールを仕込み、生成する水を留去しながら、必要に応じて加圧下に加熱すれば、直接エステル化反応によって低分子量のオリゴマーを得ることができる。このような直接エステル化反応によるときは、予め製造した低分子量のオリゴマーを原料と共に加え、この低分子量のオリゴマーの存在下に直接エステル化を行ってもよい。
(2)重合工程
次いで、(1)オリゴマー化工程で得られた低分子量のオリゴマーをポリエチレンテレフタレートの融点(通常、240〜280℃である。)以上の温度に減圧下で加熱し、未反応のエチレングリコールと反応によって生成したエチレングリコールを反応系外に留去しつつ、同時に、溶融反応物の粘度をモニタリングしながら、上記オリゴマーを溶融重合させる。この重合反応は、必要に応じて、複数に分け、反応温度と圧力を最適に変更させながら行ってもよい。反応混合物の粘度が所要値に達すれば、減圧を止め、例えば、窒素ガスにて常圧に戻して、得られたポリエステル組成物を、例えば、ストランド状に吐出させ、水冷し、切断してペレットとする。本発明によれば、このようにして固有粘度[η]が0.5〜1.0dL/gのポリエステル組成物を得ることができる。このような重合工程においては、(1)オリゴマー化工程で得られた低分子量のオリゴマーの代わりに、市販の低分子量オリゴマーや別の方法で調製した低分子量オリゴマーを用いてもよい。
本発明において用いる一般式[1]に示される有機リン化合物は、上記(1)オリゴマー化工程、及び/又は(2)重合工程の任意の段階で添加することが出来る。好ましくは(1)オリゴマー化工程で得られた低分子量のオリゴマーに添加して、(2)の重合工程を行う。
前記一般式[1]で示される有機リン化合物は、得られたポリエステル組成物中にリン原子換算で1000〜20000ppm含むように添加することが望ましい。
本発明において重縮合触媒として用いるチタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子は、前記(1)オリゴマー化工程に加えてもよく、また(2)重合工程に加えてもよい。また、本発明において用いる重縮合触媒は、粉末状で加えてもよく、また原料として用いるジオールに分散させて加えてもよい。
前記重縮合触媒は、得られたポリエステル組成物中にチタン原子換算で5〜50ppm含むように添加することが望ましい。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、得られた難燃ポリエステル組成物の評価方法について説明する。
[固有粘度]
ISO1628−1によって測定した。
[難燃性]
JIS K7201に準拠してL.O.I値(限界酸素指数)を測定した。
[結晶化温度]
示差走査熱量計(リガク性Thermo plus EVO/DSC−8230)を用いて、以下の手順によって測定した。
昇温時結晶化温度:Thcの測定
昇温速度10℃/minで270℃まで昇温した後、急冷したポリエステル樹脂ペレットを調製し、その後再び昇温速度10℃/minで270℃まで昇温したときの発熱ピークを昇温時結晶化温度:Thcとした。
降温時結晶化温度:Tccの測定
昇温速度10℃/minで270℃まで昇温した後、急冷したポリエステル樹脂ペレットを調製し、その後再び昇温速度10℃/minで270℃まで昇温し、270℃で10分間保持した後、降温速度10℃/minで30℃まで降温したときの発熱ピークを降温時結晶化温度:Tccとした。
以下の実施例及び比較例において、用いる有機リン化合物の評価方法について説明する。
[構造式の同定および純度]
FT−NMR(ブルカーバイオスピン製AVANCEIII400)を用いて、以下の手順によって測定した。
有機リン化合物0.05gを重メタノール溶媒0.7mLに溶かし、測定用サンプルを調製した。FT−NMRにてH−NMRと31P−NMRを測定し、化合物の同定と純度を測定した。
[有機リン化合物中のリン元素含有量]
ICP発光分光装置(SII製SPS3100)を用いて、以下の手順によって測定した。
有機リン化合物0.2gを硝酸と硫酸の混合液中に加え、300℃で酸分解を行った。得られた分解液を100mLメスフラスコでメスアップし、測定用サンプルを調製した。ICP測定装置にて有機リン化合物中のリン元素含有量を測定した。
調製例1
(重縮合触媒Aの調整)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で69.4g/L)1.44Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で100g/L)1.44Lを調製した。ハイドロタルサイト様化合物[Mg0.7Al0.3(OH)(CO0.15・0.48HO]の水スラリー(100g/L)5.0Lを25L容量の反応器に仕込んだ後、このハイドロタルサイトのスラリーにそのpHが9.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成して、ハイドロタルサイト粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するハイドロタルサイトの水スラリーを濾過し、水洗、乾燥した後、粉砕して重縮合触媒Aを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、TiO換算で20重量部であった。
調製例2
(重縮合触媒Bの調整)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で69.2g/L)3.2Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で99.6g/L)3.2Lを調製した。水酸化マグネシウムの水スラリー(123g/L)9.0Lを25L容量の反応器に仕込んだ後、この水酸化マグネシウムのスラリーにそのpHが10.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に4時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成して、水酸化マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する水酸化マグネシウムの水スラリーを濾過し、水洗、乾燥した後、粉砕して重縮合触媒Bを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、TiO換算で20重量部であった。
調製例3
(リン系難燃剤Cの合成)
窒素導入管、温度計及び還流装置を装着した500mLフラスコにイオン交換水200g、フェニルホスフィン酸142.1g(1.00mol)、パラホルムアルデヒド30.6g(1.02mol)を加え、窒素を導入しながら加熱還流を24時間かけて行った。得られた白色スラリーを真空乾燥機で減圧乾燥し、白色固形物を得た。この白色固形物にアセトン200gを添加し、1時間撹拌した後、ろ過し、アセトン洗浄、乾燥して下式[2]に示すような有機リン化合物Cを得た。この有機リン化合物の純度は31P−NMR分析で98.5%であり、化合物中のリン原子含有量をICP分析で測定したところ18.0%であった。
Figure 2016151000
実施例1
(ポリエステル組成物aの製造)
(1)オリゴマー化工程
テレフタル酸43g(0.26mol)とエチレングリコール19g(0.31mol)を反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌して、スラリーとした。この反応槽の温度を250℃、大気圧に対する相対圧力を1.2×10Paに保ちながら、4時間かけてエステル化反応を行って、低分子オリゴマーを得た。
(2)重合工程
前記(1)オリゴマー化工程で得られた低分子量オリゴマーのうち、50gを窒素ガス雰囲気下、常圧に保持した重合反応槽に移した。上記重合反応槽にリン系難燃剤Cを2.21g(得られたポリエステル組成物中にリン原子換算で10000ppm含有)添加して、250℃まで2時間かけて昇温した。重縮合触媒A 0.0040g(7.09×10−5mol、得られたポリエステル組成物中にチタン原子換算で10ppm含有)を予めエチレングリコールに分散させてスラリーとし、このスラリーを重合槽に加えた。この後、重合槽内を3時間かけて250℃から280℃まで昇温し、この温度を保持すると同時に、1時間かけて常圧から絶対圧力40Paに減圧して、この圧力を維持しながら、更に、2時間加熱を続けて重合反応を行った。重合反応の終了後、重合槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステル組成物を重合槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して本発明のポリエステル組成物のペレットを得た。このようにして得られたポリエステル組成物の固有粘度、難燃性、結晶化温度を表1に示す。
実施例2
(ポリエステル組成物bの製造)
実施例1において、重縮合触媒Aに代えて、重縮合触媒Bを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリエステル組成物を得た。このようにして得られたポリエステル組成物の固有粘度、難燃性、結晶化温度を表1に示す。
比較例1
(ポリエステル組成物cの製造)
実施例1において、重縮合触媒Aに代えて、三酸化アンチモン0.02064g(7.08×10−5mol、得られたポリエステル組成物中にアンチモン原子換算で430ppm含有)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル組成物を得た。このようにして得られたポリエステル組成物の固有粘度、難燃性、結晶化温度を表1に示す。
比較例2
(ポリエステル組成物dの製造)
実施例1において、重縮合触媒Aに代えて、チタンテトライソプロポキシド0.0024g(8.44×10−6mol、得られたポリエステル組成物中にチタン原子換算で10ppm含有)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル組成物を得た。このようにして得られたポリエステル組成物の固有粘度、難燃性、結晶化温度を表1に示す。
比較例3
(ポリエステル組成物eの製造)
実施例1において、有機リン化合物Cに代えて、下式[3]に示すような有機リン化合物D(三光株式会社製M−ester、リン原子含有量4.7%)を10.1g用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル組成物を得た。このようにして得られたポリエステル組成物の固有粘度、難燃性、結晶化温度を表1に示す。
Figure 2016151000
比較例4
(ポリエステル組成物fの製造)
実施例1において、有機リン化合物を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル組成物を得た。このようにして得られたポリエステル組成物の固有粘度、難燃性、結晶化温度を表1に示す。
比較例5
(ポリエステル組成物gの製造)
実施例1の(1)オリゴマー化工程で得られた低分子量オリゴマーのうち、50gを窒素ガス雰囲気下、常圧に保持した重合槽に移した。上記重合槽にリン系難燃剤Cを2.21g(得られたポリエステル組成物中にリン原子換算で10000ppm含有)添加して、250℃まで2時間かけて昇温した。重縮合触媒を添加せずに、重合槽内を3時間かけて250℃から280℃まで昇温し、この温度を保持すると同時に、1時間かけて常圧から絶対圧力40Paに減圧して、この圧力を維持しながら、重合反応を行った。重合反応の終了後、重合槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステル組成物を重合槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して本発明のポリエステル組成物のペレットを得た。同様に、時間を変えて重合反応を行い、得られたポリエステル組成物の固有粘度を測定し、実施例1で得られたポリエステル組成物と同等の固有粘度に到達するまでに4時間を要することが判明した。重合反応時間を4時間として得られたポリエステル組成物の固有粘度、難燃性、結晶化温度を表1に示す。
Figure 2016151000
表1に示す結果から明らかなように、実施例1及び2では、チタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子からなる重縮合触媒を用いることで、固有粘度が高く即ち高分子量であり且つ難燃性に優れたポリエステル組成物を得ることが出来た。
これに対して、比較例1及び2に示すように、従来のアンチモン触媒や有機チタン触媒を用いた場合は、得られたポリエステル組成物の固有粘度が低く、実施例1及び2と同じ重合時間では十分な重合度に達することができなかった。
また、比較例3では、有機リン化合物Dの分子量が大きく、有機リン化合物分子中のリン含有率が低いため、実施例1及び2で得られたポリエステル組成物と同程度の難燃性を得るのに有機リン化合物Dの添加量を多くしなければならなかった。
比較例4では、実施例1及び2と同程度の重合活性を示したが、有機リン化合物を含まないために、得られたポリエステル組成物の難燃性が低かった。
比較例5は、重縮合触媒を含まないために実施例1で得られたポリエステル組成物と同等の固有粘度に到達するまでに2倍の時間を要した。

Claims (4)

  1. エステル結合可能な官能基を有する下記一般式[1]で示される有機リン化合物を、得られたポリエステル組成物中にリン原子換算で1000〜20000ppm重合したポリエステル組成物であって、固体塩基100重量部に対してTiO換算で0.1〜50重量部のチタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子からなる重縮合触媒を、得られたポリエステル組成物中にチタン原子換算で5〜50ppm含有することを特徴とする難燃性ポリエステル組成物。
    Figure 2016151000
    (式中、Rは水素、炭素数が1〜4の1価のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、または芳香族炭化水素基を表し、R及びRは水素、炭素数が1〜4のアルキル基、またはフェニル基を表す。nは1〜4の整数である。R及びRは同一であっても異なっていても良い。)
  2. 固体塩基が水酸化マグネシウムまたはハイドロタルサイトである請求項1に記載の難燃性ポリエステル組成物。
  3. 有機リン化合物が一般式[1]においてRが水素であることを特徴とする請求項1、請求項2に記載の難燃性ポリエステル組成物。
  4. 請求項1〜3に記載の難燃性ポリエステル組成物の製造方法であって、ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体、ジオール及び/又はそのエステル形成性誘導体、及び一般式[1]で示される有機リン化合物を、チタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子の共存下で重合させるか、あるいは、
    ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体とジオール及び/又はそのエステル形成性誘導体とからなる低分子量オリゴマー、及び一般式[1]で示される有機リン化合物を、チタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子の共存下で重合させることを特徴とする製造方法でもある。


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