JP2016150502A - 液体吐出装置及び液体吐出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】液体吐出部の姿勢角が変化しても、液体の着弾位置のずれを小さく抑えることができる液体吐出装置及び液体吐出方法を提供する。【解決手段】液体吐出装置の一例であるプリンターは、インク滴を吐出する吐出ヘッドを有するキャリッジと、キャリッジの姿勢角を検出可能なジャイロセンサーと、吐出ヘッドの吐出タイミングを制御するコントローラーとを備える。コントローラーはキャリッジ走査方向に移動させて移動途中に吐出ヘッドからインク滴を吐出させることで媒体に印刷する。コントローラーは、ジャイロセンサーにより、キャリッジのX軸回りの第1姿勢角、Y軸回りの第2姿勢角及びZ軸回りの第3姿勢角を含む姿勢角θを取得する(S11)。検出されたキャリッジの姿勢角θに応じて吐出タイミングを決めるディレイ値Dpを演算する(S12)。そして、このディレイ値Dpに基づき吐出制御を行う(S13)。【選択図】図18
Description
本発明は、吐出ヘッドから液体を吐出して用紙等の吐出対象物に着弾させる液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
従来から、吐出ヘッドを有するキャリッジが走査方向に往復移動可能に設けられたシリアル式の印刷装置が広く知られている(例えば特許文献1〜4等)。シリアル式の印刷装置では、キャリッジを走査方向に移動(走査)させながら吐出ヘッドにより用紙等の媒体に記録(印刷)する印刷動作と、媒体を走査方向と交差する搬送方向へ次の印刷位置まで搬送する搬送動作とを略交互に繰り返しつつ、用紙に印刷を施す。例えば特許文献1〜4には、吐出ヘッドのノズルから吐出した液体を媒体上の適切な位置に着弾させるために吐出ヘッドの液体吐出タイミングを補正する技術が開示されている。
例えば特許文献1には、印刷媒体の厚さ、インク吐出速度、吐出ヘッドと印刷媒体との相対移動速度に応じて、吐出タイミングを補正する技術が開示されている。また、特許文献2には、吐出ヘッドの異なる移動速度の下で液体を吐出して形成されたドットの位置の差から推定される液体の吐出速度に応じて吐出タイミングを補正する技術が開示されている。また、特許文献3には、吐出ヘッドと媒体との間の距離に応じて記憶データから求まる液体の飛翔速度(吐出速度)に基づいて吐出タイミングを補正する技術が開示されている。さらに特許文献4には、媒体に液体を吐出して形成されるドットのサイズに応じて吐出タイミングを異ならせる制御を行う技術が開示されている。
ところで、印刷時の走査中にキャリッジの姿勢が変化する場合がある。通常、吐出ヘッドはノズル開口面が、媒体を支持する支持台の面と平行に対向する姿勢に保持されている。しかし、キャリッジが移動する過程では、加減速過程でキャリッジに加速過程で正の加速度、減速過程で負の加速度が加わるため、この種の加速度の変化等が原因になってキャリッジの姿勢角が変化する場合がある。
キャリッジの姿勢角が変化すると、吐出ヘッドも一緒に傾き、ノズルの位置及び向きが変化してしまい、ノズルからのインク滴の吐出方向が変化したり、吐出位置から着弾位置までの距離が変化したりする。この結果、インク滴の着弾位置が目標位置からずれてしまい、印刷画質が低下してしまうという課題がある。なお、シリアル式の印刷装置に限らず、ラインプリンターであっても、吐出ヘッドの組み付けのばらつきや長年使用するうちに姿勢角が変化した等の原因で吐出ヘッドの姿勢が傾いている場合は、ノズルの位置及び向きが変化するので、概ね同様の課題が存在する。
本発明の目的は、液体吐出部の姿勢角が変化しても、液体の着弾位置のずれを小さく抑えることができる液体吐出装置及び液体吐出方法を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する液体吐出装置は、液体を吐出する液体吐出部を備えた液体吐出装置であって、液体を吐出可能な液体吐出部と、前記液体吐出部から液体を吐出する吐出タイミングを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体吐出部の姿勢角に応じて吐出タイミングを補正する。
上記課題を解決する液体吐出装置は、液体を吐出する液体吐出部を備えた液体吐出装置であって、液体を吐出可能な液体吐出部と、前記液体吐出部から液体を吐出する吐出タイミングを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体吐出部の姿勢角に応じて吐出タイミングを補正する。
この構成によれば、液体吐出部の姿勢角に応じて吐出タイミングが補正される。よって、液体吐出部の姿勢角が正常な姿勢角からずれても、液体の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
上記液体吐出装置では、前記液体吐出部の姿勢角を検出する検出部を更に備え、前記制御部は、前記検出部が検出した姿勢角に応じて吐出タイミングを補正することが好ましい。
この構成によれば、検出部により検出された正確な姿勢角に応じて吐出タイミングが補正されるので、液体吐出部の姿勢角が正常な姿勢角からずれても、液体の着弾位置のずれを一層小さく抑えることができる。
上記液体吐出装置では、前記液体吐出部のノズルから吐出された液体が着弾する吐出対象物と前記液体吐出部とを相対移動方向に相対移動させる動力源を更に備えることが好ましい。
この構成によれば、吐出対象物と液体吐出部とを相対移動方向に相対移動させて、液体吐出部から吐出対象物に液体が吐出される構成でも、液体吐出部の姿勢角が正常な姿勢角からずれた場合に、液体の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
上記液体吐出装置では、前記動力源は、前記液体吐出部を前記相対移動方向として走査方向に移動させる構成であり、前記制御部は、前記動力源を制御して前記液体吐出部を速度制御するとともに、前記液体吐出部の加速度を取得し、当該加速度に基づいて前記液体吐出部の姿勢角を推定することが好ましい。
この構成によれば、走査方向に移動する液体吐出部の加速度に基づいて姿勢角を推定する。よって、検出部を設けなくても、液体吐出部の姿勢角が正常な姿勢角からずれた場合に、液体の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
上記液体吐出装置では、前記液体吐出部は、媒体に対して液体を吐出する複数のノズルを備え、前記制御部は、前記液体吐出部の姿勢角に応じて第1ノズルと第2ノズルとの前記媒体に対するギャップが異なる場合は、前記媒体とのギャップの小さい方の第1ノズルからの吐出タイミングに比べて、ギャップが大きい方の第2ノズルからの吐出タイミングを遅くすることが好ましい。
この構成によれば、液体吐出部の姿勢角に応じて第1ノズルと第2ノズルとの媒体に対するギャップが異なる場合は、媒体とのギャップの小さい方の第1ノズルからの吐出タイミングに比べて、ギャップが大きい方の第2ノズルからの吐出タイミングが遅くされる。よって、液体吐出部の姿勢角が正常な姿勢角からずれても、第1ノズルから吐出された液体の着弾位置と第2ノズルから吐出された液体の着弾位置との各ずれを共に小さく抑えることができる。
上記液体吐出装置では、前記液体吐出部は、媒体に対して液体を吐出する複数のノズルを備え、前記制御部は、前記液体吐出部の姿勢角に応じて第1ノズルと第2ノズルとの前記液体吐出部が正常な姿勢角にあるときの位置に対して前記相対移動方向に変位した量の小さい方の第1ノズルからの吐出タイミングに比べて、前記相対移動方向に変位した量の大きい方の第2ノズルからの吐出タイミングをより大きく補正することが好ましい。
この構成によれば、液体吐出部の姿勢角に応じて第1ノズルと第2ノズルとの液体吐出部が正常な姿勢角にあるときの位置に対して相対移動方向に変位した量の小さい方の第1ノズルからの吐出タイミングに比べて、相対移動方向に変位した量の大きい方の第2ノズルからの吐出タイミングがより大きく補正される。よって、液体吐出部の姿勢角が正常な姿勢角からずれたために第1ノズルの位置と第2ノズルとの位置とが相対移動方向に変位した場合に、第1ノズルから吐出された液体の着弾位置と第2ノズルから吐出された液体の着弾位置との各ずれを共に小さく抑えることができる。
上記液体吐出装置では、前記液体吐出部は、前記ノズルが一定のノズルピッチで配置されたノズル列を有し、前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、同じ前記ノズル列に属することが好ましい。
この構成によれば、同じノズル列に属する第1ノズル及び第2ノズルの各吐出タイミングが補正されるので、第1ノズル及び第2ノズルから吐出される液体の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
上記液体吐出装置では、前記液体吐出部は、前記ノズルが一定のノズルピッチで配置されたノズル列を複数有し、前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、異なる前記ノズル列に属することが好ましい。
この構成によれば、異なるノズル列にそれぞれ属する第1ノズル及び第2ノズルから吐出される液体の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
上記液体吐出装置では、前記姿勢角は、前記液体吐出部が前記相対移動方向と平行な第1仮想軸を中心に回動する第1姿勢角であることが好ましい。
上記液体吐出装置では、前記姿勢角は、前記液体吐出部が前記相対移動方向と平行な第1仮想軸を中心に回動する第1姿勢角であることが好ましい。
この構成によれば、液体吐出部が相対移動方向と平行な第1仮想軸を中心に回動する第1姿勢角に応じて吐出タイミングが補正される。よって、第1姿勢角が正常な姿勢角からずれた場合でも、液体の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
上記液体吐出装置では、前記姿勢角は、前記液体吐出部が前記相対移動方向と交差する第2仮想軸を中心に回動する第2姿勢角であることが好ましい。
この構成によれば、液体吐出部が相対移動方向と交差する第2仮想軸を中心に回動して第2姿勢角が正常な姿勢角から変化した場合でも、液体の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
この構成によれば、液体吐出部が相対移動方向と交差する第2仮想軸を中心に回動して第2姿勢角が正常な姿勢角から変化した場合でも、液体の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
上記液体吐出装置では、前記姿勢角は、前記相対移動方向と平行な第1仮想軸と前記相対移動方向と交差する第2仮想軸との両方に直交する第3仮想軸を中心に回動する第3姿勢角であることが好ましい。
この構成によれば、液体吐出部が相対移動方向と平行な第1仮想軸と相対移動方向と交差する第2仮想軸との両方に直交する第3仮想軸を中心に回動して第3姿勢角が正常な姿勢角から変化した場合でも、液体の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
上記課題を解決する液体吐出方法は、液体吐出部から液体を吐出する液体吐出方法であって、液体吐出部の姿勢角を取得する取得ステップと、前記液体吐出部の姿勢角に応じて吐出タイミングを補正する補正ステップとを備えている。
この方法によれば、上記液体吐出装置と同様の作用効果を得ることができる。
以下、液体吐出装置の一例としてのシリアル式のプリンターの一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、液体吐出装置の一例としてのシリアル式のプリンター11(シリアルプリンター)は、一例としてインクジェット式カラープリンターである。図1では、プリンター11は、外装ハウジングが取り外された状態にあり、上側と前側が開口する略四角箱状の本体フレーム12を有する。本体フレーム12の背面部には、複数枚の用紙等の記録媒体P(以下、単に「媒体P」ともいう)を幅方向に位置決め可能な一対のエッジガイド13を有する給送トレイ14を備えた自動給送装置15が設けられている。自動給送装置15は、給送トレイ14にセットされた媒体群のうち一枚ずつをプリンター11の本体内へ給送する。なお、自動給送装置15は、カセット給送方式やロール紙給送方式でもよい。
図1に示すように、液体吐出装置の一例としてのシリアル式のプリンター11(シリアルプリンター)は、一例としてインクジェット式カラープリンターである。図1では、プリンター11は、外装ハウジングが取り外された状態にあり、上側と前側が開口する略四角箱状の本体フレーム12を有する。本体フレーム12の背面部には、複数枚の用紙等の記録媒体P(以下、単に「媒体P」ともいう)を幅方向に位置決め可能な一対のエッジガイド13を有する給送トレイ14を備えた自動給送装置15が設けられている。自動給送装置15は、給送トレイ14にセットされた媒体群のうち一枚ずつをプリンター11の本体内へ給送する。なお、自動給送装置15は、カセット給送方式やロール紙給送方式でもよい。
図1に示すように、本体フレーム12の図1におけるその左右の側壁間には所定長さを有するガイド軸21が架設され、キャリッジ22はこのガイド軸21に沿って走査方向X1(主走査方向)に往復移動可能に案内される。キャリッジ22は、本体フレーム12の背板の内側に取着された一対のプーリー23,23に巻き掛けられた無端状のタイミングベルト24の一部に固定されている。図1における右側のプーリー23はキャリッジモーター25の駆動軸に連結されている。キャリッジモーター25が正逆転駆動されると、タイミングベルト24が正転・逆転し、これによりキャリッジ22は走査方向X1に往復移動する。なお、本実施形態では、キャリッジモーター25が、吐出対象物と液体吐出部とを相対移動方向に相対移動させる動力源の一例に相当する。
図1に示すように、キャリッジ22の上部のカートリッジホルダー22aには、液体供給源の一例としての複数個(図1の例では4個)のインクカートリッジ26が装着されている。各インクカートリッジ26には、液体の一例として、例えば黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)を含む複数色(図1の例では4色)のインクがそれぞれ1色ずつ収容されている。もちろん、インクの色数は4色に限らず、1色(一例として黒)、2色、3色、5〜8色でもよい。なお、インクカートリッジ26の装着方式は、図1のような所謂オンキャリッジタイプに替え、本体フレーム12側に設置された不図示のカートリッジホルダーにインクカートリッジを装着する所謂オフキャリッジタイプでもよい。また、液体供給源は、例えばプリンター11の側面等に取り付けられるインク補充式のインクタンクでもよい。
また、図1に示すように、キャリッジ22の下部には吐出ヘッド27が設けられている。吐出ヘッド27は、給送された媒体Pと対向する側の面が複数のノズル27bが開口するノズル開口面27aになっており、各インクカートリッジ26から供給されたインクを各ノズル27b(いずれも図2参照)から吐出する。吐出ヘッド27は、キャリッジ22に接続されたフレキシブルフラットケーブルFCを介してプリンター11内に設けられた制御部の一例としてのコントローラー50(図6参照)と通信可能に接続されている。そして、吐出ヘッド27は、コントローラー50から印刷時に転送される吐出データに基づいて吐出駆動される。
図1に示すように、吐出ヘッド27の移動領域(走査領域)と対向する下方位置には、長尺状の支持台28が、走査方向X1が長手方向となる状態で配置されている。支持台28は、吐出ヘッド27と媒体Pとの間隔(ギャップ)を規定する。支持台28は少なくとも吐出ヘッド27による印刷が行われる印刷領域の全域よりも少し広い領域に亘って走査方向X1に延びている。印刷中は、吐出対象物の一例である媒体Pのうち支持台28の上面(支持面)に支持された箇所に、吐出ヘッド27の各ノズル27bから吐出されたインク滴が着弾してドットが形成されることで、媒体Pに文書や画像等が印刷される。
また、キャリッジ22の背面側には、キャリッジ22の移動量に比例する数のパルスを含む検出信号(エンコーダーパルス信号)を出力するリニアエンコーダー29がガイド軸21に沿って延びるように設けられている。プリンター11は、リニアエンコーダー29の検出信号のパルスエッジの数を計数することで、キャリッジ22の走査方向X1の位置及び速度(単位時間当たりのパルス数)を把握し、これらの位置及び速度の情報に基づきキャリッジ22の位置制御及び速度制御を行う。また、リニアエンコーダー29が出力するエンコーダーパルス信号は、吐出ヘッド27がインク滴を吐出する吐出タイミングを決める吐出制御にも用いられる。つまり、吐出ヘッド27のインク吐出タイミングを決める吐出タイミング信号PTSは、リニアエンコーダー29が出力するエンコーダーパルス信号を基に生成される。
また、本体フレーム12の図1における右側下部には、給送モーター30及び搬送モーター31が配設されている。給送モーター30は、不図示の給送ローラーを駆動し、媒体Pを最上位のものから一枚ずつ給送する。給送された媒体Pはその先端部が搬送ローラー対32に到達するまで送り出される。
図1に示す搬送モーター31は、搬送方向F1に支持台28を挟んだその上流側と下流側の各位置にそれぞれ配置された搬送ローラー対32と排出ローラー対33を回転させる動力源である。各ローラー対32,33は、搬送モーター31の動力で回転駆動する駆動ローラー32a,33aと、駆動ローラー32a,33aに当接して連れ回りする従動ローラー32b,33bとから構成される。給送された媒体Pは支持台28に支持されつつ両ローラー対32,33に挟持(ニップ)された状態で搬送方向F1に間欠的に搬送される。なお、本実施形態では、給送モーター30及び給送ローラー等を備える給送機構と、搬送モーター31及び両ローラー対32,33等を備える搬送機構とにより、搬送部の一例が構成される。
図1に示すシリアル式のプリンター11は、キャリッジ22を走査方向X1に往復動させながら吐出ヘッド27のノズル27b(図2参照)から媒体Pに向けてインクを吐出する印字動作と、媒体Pを搬送方向F1に次の走査位置(印刷位置)まで搬送する送り動作とを略交互に繰り返すことで、媒体Pに文書や画像等を印刷する。印字動作時は、媒体Pの両ローラー対32,33にニップされた間の領域は支持台28の上面に支持されるため、吐出ヘッド27と媒体Pとの間隔が所定のギャップ(ペーパーギャップ)に保持される。印刷された媒体Pは、プリンター11の装置本体の前面に開口する不図示の排出口から不図示の排出スタッカー(排紙トレイ)上に排出される。
図1において、キャリッジ22の移動経路上の一端位置(図1では右端位置)が、キャリッジ22が非印刷時に待機するホーム位置HP(ホームポジション)となっている。ホーム位置HPにあるキャリッジ22の直下となる位置には、吐出ヘッド27に対してメンテナンスを行うメンテナンス装置34が配設されている。メンテナンス装置34は、キャップ35、ワイパー36及び吸引ポンプ37等を備えている。
印刷中にキャリッジ22はホーム位置HPへ移動し、吐出ヘッド27のノズルから印刷とは関係のないインク滴をキャップ35に向かって吐出(空吐出)するフラッシングを行う。フラッシングによりノズル内の増粘インク等を排出してノズルの目詰まりを防止する。また、キャリッジ22がホーム位置HPに待機するときは、上昇したキャップ35が吐出ヘッド27をキャッピングすることで、ノズル内のインクの増粘や乾燥が防止される。また、所定時期になると、メンテナンス装置34は、ホーム位置HPに配置された吐出ヘッド27をキャップ35でキャッピングした状態の下で吸引ポンプ37を駆動することで、ノズル27bからインクを強制的に吸引排出してノズル内の増粘インクや気泡を除去するクリーニングを行う。このクリーニング時に吸引排出された廃インクは、支持台28の下側に配置された廃液タンク38へ排出される。なお、吸引ポンプ37の動力源は、搬送モーター31又はそれ専用の電動モーターである。
このプリンター11では、吐出ヘッド27がホーム位置HPから離れる方向に移動する往動時と、ホーム位置HPに近づく方向に移動する復動時との両方(双方向)でインク滴を吐出する双方向印刷と、吐出ヘッド27の往動時のみインク滴を吐出し、復動時はキャリッジ22を戻すだけの一方向印刷とが行われる。本実施形態のプリンター11は、写真等の印刷に用いられて印刷速度よりも印刷品質を優先する高品質印刷モードと、文書等の印刷に用いられて印刷品質よりも印刷速度を優先する普通印刷モードとを含む複数の印刷モードを備える。例えば高品質印刷モードでは一方向印刷が行われ、普通印刷モードでは双方向印刷が行われる。
図2に示すように、吐出ヘッド27の底面であるノズル開口面27aには、搬送方向F1(副走査方向)(図2における上下方向)に一定のノズルピッチで一列に配列された計n個(一例として400個)のノズル♯1〜♯n(但しnは2以上の自然数)により構成された複数のノズル列Nが形成されている。吐出ヘッド27は、一例として、A列〜H列の合計8列のノズル列Nを備えている。左から奇数列(A,C,E,G列)のノズル列に対して偶数列(B,D,F,H列)のノズル列は、ノズルピッチの半ピッチ分だけ搬送方向F1下流側(図2における上側)へシフトして位置する。なお、本例では、ノズル列を構成する各ノズルに対して、搬送方向F1の上流側のものから順番に、符号「♯1〜♯n」を付している。本例では、合計8列のノズル列を用いて、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色で印刷を行う。同一インク色となる二つのノズル列の組み合わせは、一例として(A列、H列)、(B列,G列)、(C列,F列)(D列,E列)となっているが、奇数列と偶数列との組合せであれば、他の組合せでもよい。奇数列と偶数列の2つのノズル列で同一色を印刷することで、ノズルピッチの半分の分解能で高解像度の印刷が可能になる。
また、吐出ヘッド27には、各ノズル♯1〜♯nと対応する図2に示す吐出駆動素子39がノズル数と同数内蔵されている(但し、図2では吐出ヘッド27の外側に模式的に1ノズル列分のみ描いている)。吐出駆動素子39は、例えば圧電振動素子又は静電駆動素子からなり、所定駆動波形の電圧パルスが印加されると、電歪作用又は静電駆動作用によりノズルに連通するインク室を膨張・圧縮させることによりノズルからインク滴を吐出させる。なお、吐出ヘッド27は、吐出駆動素子39がヒーター素子で、ヒーター素子で加熱したインクの膜沸騰により発生した気泡の膨張圧を利用してノズルからインク滴を吐出させるサーマル方式でもよい。
図2に示すように、吐出ヘッド27は、ノズル27bと吐出駆動素子39とを有する吐出部40を、ノズル列A〜H毎にn個ずつ備えている。そして、ノズル一列毎に、n個の吐出駆動素子39からなる吐出駆動素子群41を備えている。吐出駆動素子39の電圧制御(吐出制御)は、コントローラー50(図6参照)によってヘッド駆動回路54を介して行われる。
図3に示すリニアエンコーダー29は、多数のスリット42aが一定ピッチで形成されたテープ状の符号板42(リニアスケール)と、符号板42を検知対象としてキャリッジ22と共に移動する光学式センサー43とを備える。光学式センサー43は、テープ状の符号板42を挟んで対向する発光素子44と受光素子45とを備える。発光素子44は走査方向X1に並ぶ一対の発光部44aを有し、受光素子45は一対の発光部44aと対向する一対の受光部45aを有している。光学式センサー43は、キャリッジ22の走査にしたがって、各スリット42aを通過する光の断続数に応じた数のパルスをもつエンコーダー信号(検出信号)を出力する。光学式センサー43らは、3/4周期だけ位相がずれたA相とB相の2種類のエンコーダー信号が出力される。エンコーダー信号のパルスの周期を「T」とおくと、その周期Tの逆数である1/T(1/秒)が、キャリッジ速度に比例する。
図5に示すキャリッジ22は基本的に姿勢が水平に保持されている。しかし、組み付けばらつき、ガイド軸の変形や偏心、共振、加速度の変化、摺動抵抗の変化などに起因し、走査中にキャリッジ22の姿勢が変化する。図5に示すように、キャリッジ22の姿勢の変化には、大きく分けて3種類がある。すなわち、図5に示すように、キャリッジ22又は吐出ヘッド27のX軸回りの傾き角を第1姿勢角θ1(おじぎ角)と呼び、Y軸回りの傾き角を第2姿勢角θ2(ウィリー角)と呼び、Z軸回りの傾き角を第3姿勢角θ3(首振り角)と呼ぶ。加減速印刷が行われる加減速過程では、キャリッジ22に加速度が加わる。この加速度による外力が加わる。例えば加速印刷時の加速領域では、キャリッジ22及び吐出ヘッド27にプラスの加速度が働き、減速印刷時の減速領域では、キャリッジ22及び吐出ヘッド27にマイナスの加速度(減速度)が働く。そして、これらのプラスの加速度やマイナスの加速度が加わることで、キャリッジ及び吐出ヘッド27の姿勢角が変化する。このとき、キャリッジ及び吐出ヘッド27の第1〜第3姿勢角θ1〜θ3のうち少なくとも一つが変化する。
図6は、プリンター11の電気的構成を示す。図6に示すように、プリンター11は、コントローラー50、モーター駆動回路51〜53及びヘッド駆動回路54を備えている。また、プリンター11は、入力系として、前述のリニアエンコーダー29及び吐出ヘッド27又はキャリッジ22の姿勢角を検出可能な少なくとも一つのジャイロセンサー55を備えている。本実施形態のジャイロセンサー55は、吐出ヘッド27又はキャリッジ22の3方向の軸回転回りの角度、つまりX軸、Y軸、Z軸の軸回転方向の角度である姿勢角を検出する。
コントローラー50は、モーター駆動回路51を介してキャリッジモーター25を駆動制御し、キャリッジ22及び吐出ヘッド27を走査方向X1に所定の速度プロファイルに従って加速・定速・減速を伴って移動させることで、キャリッジ22の1回の走査を行う。また、コントローラー50は、モーター駆動回路52を介して給送モーター30を駆動制御して給送ローラーを回転させることで媒体Pを給送し、媒体Pが所定位置まで給送された以後、モーター駆動回路53を介して搬送モーター31を駆動制御することで、印刷中の媒体Pを間欠的に搬送する。また、コントローラー50は、例えばホスト装置(図示せず)から入力した印刷データPDに基づいてヘッド駆動回路54を介して吐出ヘッド27(詳しくはノズル毎に内蔵された吐出駆動素子39)を駆動制御する。なお、ホスト装置としては、パーソナルコンピューター、スマートフォンや携帯電話、タブレットPC、携帯情報端末(PDA(Personal Digital Assistants))等の携帯端末等が挙げられる。
コントローラー50は、CPU60(中央処理装置)、カスタムLSIとしてのASIC61(Application Specific Integrated Circuit)(特定用途向け集積回路)、ROM62、RAM63、不揮発性メモリー64(例えばフラッシュROM)、入力インターフェイス65、入出力インターフェイス66及びクロック回路67などから構成されている。CPU60、ASIC61、ROM62、RAM63、不揮発性メモリー64、入力インターフェイス65及び入出力インターフェイス66はバス68を介して互いに接続されている。
ROM62には、各種制御プログラム及び各種データが記憶されている。不揮発性メモリー64には、印刷制御プログラム(ファームウェアプログラム)をはじめとする各種プログラム及び印刷処理に必要な各種データ等が記憶されている。不揮発性メモリー64には、吐出ヘッド27の吐出タイミング制御用のプログラムPR、キャリッジ用の速度制御データVD、ジャイロセンサー55が取り外された状態で、キャリッジ22の走査方向X1の加速度からキャリッジ22の姿勢角を取得可能な参照データADなどが記憶されている。
RAM63には、CPU60が実行するプログラム及びCPU60による演算結果及び処理結果である各種データ、さらにASIC61で処理された各種データ等が一時記憶される。また、RAM63は、受信した印刷データPDが格納される受信バッファー63aと、印刷データPDから吐出データを生成する過程で生成される分版データやハーフトーンデータ等の中間データが格納される中間バッファー63bと、ヘッド駆動回路54へ出力される前の吐出データが一時的に格納される出力バッファー63cとを備えている。吐出データは、吐出ヘッド27が1走査の過程でノズルからインク滴を吐出する1パス分のデータである。
次に、図4を参照して、キャリッジ用の速度制御データVDを用いて行われるキャリッジ22の速度制御について説明する。図4のグラフに示されるように、この速度制御データVDは、キャリッジ位置とキャリッジ速度との関係が示されたデータである。CPU60は、エンコーダー信号を基に取得したキャリッジ位置から、速度制御データVDを参照してその位置に応じた目標速度を求め、実速度と目標速度との差分を小さくするフィードバック制御を行う。但し、キャリッジ移動範囲のうち少なくとも一部の範囲(例えば加減速領域)についてはフィードフォワード制御を行ってもよい。本例では、キャリッジ22が原点位置P0〜位置P2までの区間が、停止状態(速度「0」)から定速度Vcに到達するまでの加速領域であり、位置P2から位置P3までの範囲が定速度Vcで速度制御される定速領域、位置P3から停止位置P5までの範囲が定速度Vcから停止(速度「0」)まで減速される減速領域となっている。そして、本実施形態では、キャリッジ22の定速領域で印刷する定速印刷を行うだけではなく、定速領域の両側において加速領域の一部で印刷する加速印刷と減速領域の一部で印刷する減速印刷とを行う加減速印刷を採用している。すなわち、走査方向X1(キャリッジ移動方向)における印刷可能範囲が、定速領域で行われる定速印刷の他、加速領域のうち位置P1〜P2間の区間で行われる加速印刷と、減速領域のうち位置P3〜P4間の区間で行われる減速印刷が設定されている。なお、以下の説明では、加速印刷が行われる加速領域と、減速印刷が行われる減速領域とをまとめて、「加減速領域」と総称する。
ところで、加減速領域では、加速度や減速度がキャリッジ22に加わるため、キャリッジの姿勢が変化し易い。キャリッジ22の姿勢の変化には、X軸の軸回りの姿勢角変化、Y軸の軸回りの姿勢角変化、Z軸の軸回りの姿勢角変化がある。通常は、これら3種類の姿勢角のうち1つが顕著に現れたり、2種類以上が複合して現れたりする。本実施形態では、加減速領域の吐出ヘッド27又はキャリッジ22の姿勢角を検出又は推定し、検出又は推定した姿勢角に基づいて、吐出ヘッド27の各ノズルからインク滴を吐出する吐出タイミングをノズル毎又はノズル列毎に制御する。この吐出制御の詳細については後述する。
図6に戻って、入力インターフェイス65は、ホストコンピュータと有線又は無線で通信可能に接続され、ホストコンピュータから例えば通信ケーブル(いずれも図示せず)を介して転送されてきた印刷データPDを受信してプリンター11に入力する。プリンター11が入力(受信)した印刷データPDは、入力インターフェイス65からRAM63の受信バッファー63aに格納される。ASIC61は、印刷データPDに含まれる印刷言語で記述されたコマンドを解析(解釈)して中間コードを生成するコマンド解析部71と、中間バッファー63b内の中間コードを印刷ドットに対応する画素が所定の階調で示されたビットマップデータに変換してRAM63上に展開する画像展開処理部72とを備えている。画像展開処理部72は1走査分ずつデータの展開処理を行い、出力バッファー63cには1走査分ずつ吐出データ(階調値データ)が格納される。そして、出力バッファー63cから読み出された1走査分の吐出データ(階調値データ)が、入出力インターフェイス66からフレキシブルフラットケーブルFCを介してキャリッジ22側のヘッド駆動回路54に出力される。ヘッド駆動回路54は、受信した吐出データに基づき吐出ヘッド27内の吐出駆動素子39を駆動制御し、ノズルからのインク滴の吐出を制御する。
また、CPU60が印刷制御プログラムを実行することにより、速度制御データVDを参照してその時々のキャリッジ位置に応じて決まるキャリッジ速度を目標とする走査系のモーター指令値が入出力インターフェイス66を介してモーター駆動回路51に出力されることで、モーター駆動回路51によりキャリッジモーター25が駆動制御される。このキャリッジモーター25の駆動制御により、例えば印刷中のキャリッジ22は、図4のグラフで示される速度プロファイルに従って速度制御される。
また、CPU60が印刷制御プログラムを実行することにより生成された搬送系のモーター指令値が入出力インターフェイス66を介して各モーター駆動回路52,53に出力されることで、給送モーター30及び搬送モーター31がそれぞれ駆動制御される。これら各モーター30,31の駆動制御により、給送機構及び搬送機構が駆動され、媒体Pの給送、媒体Pの次の印刷位置までの間欠的な搬送、及び印刷終了後の媒体Pの排出が行われる。コントローラー50には、入力系として、搬送モーター31の回転量に比例する数のパルスを有するエンコーダー信号を出力する不図示のエンコーダー(ロータリーエンコーダー)及び紙検出器が電気的に接続されている。コントローラー50は、このエンコーダーから入力したエンコーダー信号のパルスエッジを計数して把握した媒体Pの搬送位置に従って、各モーター30,31による媒体Pの搬送制御を行う。なお、CPU60が出力するモーター指令値は、例えばPWM(pulse width modulation)指令値であり、各モーター25,30,31の電流を各指令値に応じて制御し、各モーター25,30,31を、指令した回転速度かつ指令した駆動量だけ駆動させることが可能である。
また、図6に示すASIC61は、画像展開処理等の他、吐出ヘッド27のノズルから吐出されるインク滴の吐出タイミングを決定する吐出タイミング信号PTSを生成する処理を行う。このため、ASIC61には、吐出タイミング信号PTSの生成に用いられるエッジ検出回路73及び印刷タイミング発生回路74を備えている。エッジ検出回路73は、リニアエンコーダー29の光学式センサー43からエンコーダー信号を入力してその立ち上がりエッジを検出すると共に、立ち上がりエッジを検出する度にパルスを発生させてエンコーダー信号の周期(エンコーダー周期)と同じ周期の基準パルス信号RSを出力する。
印刷タイミング発生回路74は、エッジ検出回路73から入力した基準パルス信号RS及びクロック回路67から入力したクロック信号CK等を用いた信号生成処理を行って吐出タイミング信号PTSを生成する。印刷タイミング発生回路74が行う信号生成処理には、基準パルス信号RSの1周期を分割(逓倍)してパルス信号を発生させる周期分割処理(逓倍処理)と、得られたパルス信号をキャリッジ22の速度及び移動方向(往動と復動の違い)等に応じたディレイ時間だけ遅延させて吐出タイミング信号PTSを生成する遅延処理とが含まれる。印刷タイミング発生回路74が生成した吐出タイミング信号PTSは、ヘッド駆動回路54に出力される。
吐出ヘッド27にノズル毎に設けられた吐出駆動素子39には、吐出データに基づき選択された駆動パルスが印加される。この駆動パルスの印加により吐出駆動素子39が駆動されると、ノズル毎に設けられたインク室が膨張・圧縮することで、ノズルからインク滴が吐出される。ヘッド駆動回路54は、吐出ヘッド27内の各吐出駆動素子39に駆動パルスが印加される印加タイミングを、吐出タイミング信号PTSに基づいて決定する。
また、エッジ検出回路73から出力された基準パルス信号RSは位置検出用パルスとしてCPU60に入力される。CPU60は、リニアエンコーダー29からのエンコーダーパルス信号に含まれるA相とB相の位相差に基づきキャリッジ22の移動方向を取得する。そして、CPU60は基準パルス信号RSの立ち上がりエッジをCRカウンター75で計数し、その計数値をキャリッジ往動時にインクリメント、キャリッジ復動時にデクリメントして、その得られたカウント値からキャリッジ22の例えばホーム位置HPを原点とする走査方向X1の位置(以下、「キャリッジ位置」ともいう。)を検出するようにしている。このキャリッジ位置は、速度制御データVD(図4)を参照して実行されるキャリッジモーター25の速度制御に用いられる。
また、印刷タイミング発生回路74は、速度データをCPU60に出力する。詳しくは、印刷タイミング発生回路74は、エッジ検出回路73から入力した基準パルス信号RSの1周期の期間に、クロック回路67からのクロック信号CKのパルスエッジ数を計数することで、現在のキャリッジ速度Vcrに反比例する基準パルス信号RSの周期Tprtを計数する。さらに印刷タイミング発生回路74は、その周期Tprtの逆数を演算した値を現在の速度データVcr(=1/Tprt)としてCPU60に出力する。また、印刷タイミング発生回路74には、吐出タイミング信号PTSの出力タイミングを決める後述するディレイ値Dpの決定に必要な基準値及び補正値などの設定値をCPU60から入力する。なお、ASIC61は、搬送モーター31の回転を検出する不図示のエンコーダーから入力したエンコーダーパルス信号のパルスエッジの数を計数する不図示のPFカウンターを備える。そして、ASIC61は、給送途中の媒体Pを不図示の検出器が検知すると、PFカウンターに計数を開始させる。これにより、CPU60は、PFカウンターの計数値から取得される媒体Pの搬送位置に基づいて、搬送モーター31による媒体Pの位置制御及び速度制御を行う。
図7に示すように、プリンター11は、コントローラー50内のコンピューターが、プログラムPRを実行することで構築される、各種の機能部を有する印刷制御部81を備えている。印刷制御部81は、機能部として、主制御部82、キャリッジ制御部83、ヘッド制御部84、姿勢角検出部85及び駆動パルス生成部86を備えている。
主制御部82は、各部83〜86に指示を出してキャリッジの走査制御及び吐出ヘッドの吐出タイミング制御等の各種の制御を司る。
キャリッジ制御部83は、キャリッジモーター25を駆動制御することで、キャリッジ22を走査方向X1に移動させる際の速度制御を行う。このとき、キャリッジ制御部83は、印刷中のキャリッジ22の実速度(現在のキャリッジ速度Vcr)を取得し、実速度Vcrをその時のキャリッジ位置を基に速度制御データVD(図4参照)を参照して取得される目標速度に近づけるフィードバック制御を行う。これによりキャリッジ制御部83は、キャリッジ22を図4に示す速度プロファイルに沿って加速・定速・減速させることで、キャリッジ22を一走査(1パス分の移動)させる。
キャリッジ制御部83は、キャリッジモーター25を駆動制御することで、キャリッジ22を走査方向X1に移動させる際の速度制御を行う。このとき、キャリッジ制御部83は、印刷中のキャリッジ22の実速度(現在のキャリッジ速度Vcr)を取得し、実速度Vcrをその時のキャリッジ位置を基に速度制御データVD(図4参照)を参照して取得される目標速度に近づけるフィードバック制御を行う。これによりキャリッジ制御部83は、キャリッジ22を図4に示す速度プロファイルに沿って加速・定速・減速させることで、キャリッジ22を一走査(1パス分の移動)させる。
ヘッド制御部84は、吐出ヘッド27が備える複数の吐出部40のノズル27bからインク滴を吐出する吐出制御を行う。ヘッド制御部84は、画像展開処理部72(図6参照)を有し、画像展開処理部72により印刷データPDから吐出データを生成してヘッド駆動回路54へ出力する。また、ヘッド制御部84は、吐出タイミングを補正する際の基準となる基準値(ディレイ基準値)を印刷タイミング発生回路74に出力する。基準値とは、キャリッジ速度Vcrが定速度Vcのときに適正な吐出タイミングとなるように設定された基準となるディレイ値である。この基準値は印刷モードに応じた定速度Vc毎に設定されている。また、双方向印刷が行われる印刷モードの場合、キャリッジ22の往動過程と復動過程で適正な吐出タイミングが異なるため、往動過程と復動過程で異なる基準値が用いられる。
姿勢角検出部85は、ジャイロセンサー55の検出値に基づくキャリッジ22(つまり吐出ヘッド27)の姿勢角θ、又は速度データを基に参照データADを参照してキャリッジ22の姿勢角θを取得する。そして、姿勢角検出部85は、検出した姿勢角θを印刷タイミング発生回路74へ出力する。
駆動パルス生成部86は、ノズル27bから1ドットを吐出する吐出周期(1周期)毎に複数種(例えば2種又は3種)の吐出波形を含む駆動パルスを生成してヘッド駆動回路54へ出力する。本実施形態の吐出ヘッド27は、複数サイズのインク滴、一例として大中小3種類のインク滴を吐出可能である。
ヘッド駆動回路54は、吐出データと駆動パルスを入力する。ヘッド駆動回路54は、入力した駆動パルスのうち、入力される吐出データの画素の階調値に応じた1種又は2種の吐出波形を選択し、その選択した吐出波形の駆動パルスを吐出タイミング信号PTSに基づくタイミングで、吐出駆動素子群41を構成する吐出駆動素子39に印加することで、インク滴のサイズを制御する。吐出データは、一例として画素の階調値を2ビットで表したデータであり、階調値が「00」のときは非吐出、「01」のときは小ドット、「10」のときは中ドット、「11」のときは大ドットを表わす。そして、吐出駆動素子39に吐出データの階調値に応じた吐出波形の駆動パルスが印加されることで、例えば電歪作用によってインク室が膨張・圧縮することにより、ノズル27bから吐出データに応じたサイズのインク滴が吐出される。なお、吐出ヘッド27から吐出されるインク滴のサイズは、複数種でなく1種類でもよい。
図8は、加速度αと姿勢角θとの関係を示す参照データADである。参照データADは、例えばマップデータ又は計算式として不揮発性メモリー64に記憶されている。キャリッジ22の加速過程と減速過程では加速度の大きさ(絶対値)が0(零)より大きくなる。加速度が加わると、加速度に基づく力をキャリッジ22が受けることになるので、その受けた力によってキャリッジ22の姿勢が変化する。本例では、キャリッジ22が正常な姿勢角にあるときを、姿勢角θ=0としている。図8の例では、1つの軸回りの姿勢角について姿勢角θと加速度αとの関係を示す参照データADを示している。他の軸回りの姿勢角についても、同様の参照データADが不揮発性メモリー64に記憶されている。
図8に示すように、加速度αが大きくなるほど姿勢角θは大きくなる。この参照データADは、予め予備実験を行って得た計測値に基づいて作成されている。1種類の姿勢角につき、キャリッジ22の往動用と復動用の各参照データADが用意されている。これは、キャリッジ22の往動時はタイミングベルト24をキャリッジモーター25の力で押し出すに対して、その復動時はタイミングベルト24をキャリッジモーター25の力で引き込むので、往動時と復動時でタイミングベルト24の張力や弛みの差などを含む種々の要因で、加速度αと姿勢角θとの関係が異なることに起因する。なお、参照データADは、シミュレーション解析を行って得た数値に基づいて作成されてもよい。
ここで、特にウィリー角θ2は、加減速過程で加速度αが決まると姿勢角がほぼ決まる傾向がある。また、首振りは加速度に対する依存性が相対的に低い。これは、首振り方向がどちらになるかは特定が困難だからである。このため、第1姿勢角θ1(おじぎ角)と第2姿勢角θ2(ウィリー角)については参照データADを用意して、参照データADに基づいて姿勢角θ1,θ2を推定するようにしている。
次に、図9を参照して、吐出ヘッド27が姿勢角のずれがなく正しい姿勢にあるときの吐出制御について説明する。図9(a)に示すように、ヘッド速度Vhが定速度Vcであるとき(Vh=Vc)、吐出ヘッド27のノズル27bからはノズル開口面27aと垂直な方向、すなわち鉛直方向下向きに速度Vm(初速)でインク滴は吐出される。吐出されたインク滴は、鉛直方向下向きの速度Vmと、ヘッド進行方向のヘッド速度Vh=Vcとの合成速度ベクトルの方向及び速度で飛行して、媒体P上の目標着弾位置に着弾する。このとき、目標着弾位置Poよりも第1距離だけ手前の所定位置に達した時点を吐出タイミングとする。
一方、図9(b)に示すように、加減速過程では、ヘッド速度Vhが定速度Vc未満の速度Va(<Vc)で移動する。このとき、定速過程のときと同様に目標着弾位置に対して、図9(b)に二点鎖線で示す位置からインク滴を吐出すると、吐出されたインク滴は、鉛直方向下向きの速度Vmと、ヘッド進行方向のヘッド速度Vh=Va(Vc)との合成速度ベクトルの方向及び速度で飛行して、媒体P上の目標着弾位置Poに着弾する。図9(b)に二点鎖線で示すように、目標着弾位置よりもかなり手前の位置に着弾してしまう。そのため、加減速過程では、目標着弾位置に対して定速過程に比べて吐出タイミングを遅延時間Δtだけ遅らせて吐出することで、インク滴を目標着弾位置に着弾させるようにしている。このとき、目標着弾位置Poよりも第2距離だけ手前の位置に達した時点を吐出タイミングとする。
ディレイ値Dp(PTSディレイ段数)は、ギャップPG、吐出速度Vmを用いて、次式で表わされる。
Dp=(PG/Vm)・(1/Tref−1/Tprt) …(1)
ここで、Trefはキャリッジ22が定速度Vcで移動するときの基準周期(基準パルス周期)、Tprtはキャリッジ22の現在速度Vcrに対応する現在周期(現在パルス周期)である。なお、上記(1)式は、姿勢角θ1〜θ3が全て0(零)である場合の計算式となる。
Dp=(PG/Vm)・(1/Tref−1/Tprt) …(1)
ここで、Trefはキャリッジ22が定速度Vcで移動するときの基準周期(基準パルス周期)、Tprtはキャリッジ22の現在速度Vcrに対応する現在周期(現在パルス周期)である。なお、上記(1)式は、姿勢角θ1〜θ3が全て0(零)である場合の計算式となる。
次に、図10〜図16を参照して、第1姿勢角θ1〜第3姿勢角θ3の角度ずれがあるときに、吐出タイミングを調整する処理について説明する。まず図10及び図11を参照して、第1姿勢角θ1のずれ(X軸回りの角度ずれ)が存在する場合における吐出タイミングの調整処理について説明する。
まず、図10〜図12を参照して、第1姿勢角θ1の吐出タイミングの補正について説明する。キャリッジ22が走査方向X1と平行なX軸回りに回動して正常時の姿勢角からずれて第1姿勢角θ1(おじぎ角)にあるとき、同一ノズル列内の最上流ノズル♯1と最下流ノズル♯400との間でギャップPG1が変動するため、着弾誤差が生じてしまう。
そこで、以下の(2)式に基づいて、第1姿勢角θ1をディレイ値Dpに反映させることで、着弾位置を改善する。
Dp={PG+ΔPG1+f(θ1)}/(Vm・cosθ1)
・(1/Tref−1/Tprt) …(2)
ここで、上記(2)式において、項{PG+ΔPG1+f(θ1)}は、第1姿勢角θ1のときのギャップを示し、ΔPG1+f(θ1)は、第1姿勢角θ1の角度ずれに起因するギャップのずれを表わし、このずれ分を補正することで、第1姿勢角θ1のときの同一ノズル列に属するノズル毎の正しいギャップPGが求められる。このため、ΔPG1+f(θ1)は、ギャップPGを補正するためのギャップ補正値になる。
Dp={PG+ΔPG1+f(θ1)}/(Vm・cosθ1)
・(1/Tref−1/Tprt) …(2)
ここで、上記(2)式において、項{PG+ΔPG1+f(θ1)}は、第1姿勢角θ1のときのギャップを示し、ΔPG1+f(θ1)は、第1姿勢角θ1の角度ずれに起因するギャップのずれを表わし、このずれ分を補正することで、第1姿勢角θ1のときの同一ノズル列に属するノズル毎の正しいギャップPGが求められる。このため、ΔPG1+f(θ1)は、ギャップPGを補正するためのギャップ補正値になる。
また、上記(2)式において、項(Vm・cosθ1)は、第1姿勢角θ1にある吐出ヘッド27から吐出されるインク滴の吐出速度Vmの鉛直方向成分(媒体Pの被印刷面と垂直な方向の成分)である。
図10に示すように、X軸回りの角度ずれがある場合、ノズル番号毎にギャップPG1が違うため、ノズル番号毎にギャップ補正値ΔPG1+f(θ1)を変えることで、ノズル番号毎にディレイ値Dpを調整する。ここで、第1姿勢角θ1にあるときに一番低い位置にあるノズル♯1を基準ノズルとする。なお、ΔPG1は、キャリッジ22がX軸回りに角度ずれしたときの基準ノズル(例えばノズル♯1)の高さ方向の変位である。
ここで、ノズル♯1からノズル♯nまでの距離は「D1」であり、X軸回りに回動した第1姿勢角θ1で最もギャップPGが小さくなる一番下側に位置するノズル(図11の例ではノズル♯1)を基準ノズルとする。基準ノズルから順番に上に向かって同じノズル列に属する各ノズル27bに番号「i」を、i=1,2,…,nと符番する。この「i」を用いて、第1姿勢角θ1のときのギャップ補正値f(θ1)は、次の(3)式で表わされる。
f(θ1)=(i−1)/(n−1)・D1・sinθ1 …(3)
例えば1列当たりのノズル数nが400個(n=400)の例では、ノズル♯1〜♯nのギャップ補正値f(θ1)は以下のようになる。
ノズル♯1のとき、f(θ1)=0
ノズル♯2のとき、f(θ1)=1/399・D1・sinθ1
ノズル♯3のとき、f(θ1)=2/399・D1・sinθ1
ノズル♯4のとき、f(θ1)=3/399・D1・sinθ1
・・・・・
ノズル♯400のとき、f(θ1)=D1・sinθ1
また、図12から分かるように、第1姿勢角θ1にある吐出ヘッド27から吐出されたインク滴の吐出速度Vmの鉛直方向成分は、Vm・cosθ1で与えられる。
f(θ1)=(i−1)/(n−1)・D1・sinθ1 …(3)
例えば1列当たりのノズル数nが400個(n=400)の例では、ノズル♯1〜♯nのギャップ補正値f(θ1)は以下のようになる。
ノズル♯1のとき、f(θ1)=0
ノズル♯2のとき、f(θ1)=1/399・D1・sinθ1
ノズル♯3のとき、f(θ1)=2/399・D1・sinθ1
ノズル♯4のとき、f(θ1)=3/399・D1・sinθ1
・・・・・
ノズル♯400のとき、f(θ1)=D1・sinθ1
また、図12から分かるように、第1姿勢角θ1にある吐出ヘッド27から吐出されたインク滴の吐出速度Vmの鉛直方向成分は、Vm・cosθ1で与えられる。
次に、図13〜図15を参照して、第2姿勢角θ2の吐出タイミングの補正について説明する。キャリッジ22が走査方向X1と交差(特に本例では直交)する搬送方向F1と平行なY軸回りに回動して、正常時の姿勢角からずれて第2姿勢角θ2(ウィリー角)にあるとき、同ノズル列間(A列〜H列間)でギャップPG2が違うことになるため、着弾誤差が生じてしまう。
そこで、以下の(4)式に基づいて、第2姿勢角θ2をディレイ値Dp(PTSディレイ段数)に反映させることで、着弾位置を改善する。
Dp={PG+ΔPG2+g(θ2)}/(Vm・cosθ2)
・(1/Tref−1/Tprt) …(4)
ここで、上記(4)式において、項{PG+ΔPG2+g(θ2)}は、第2姿勢角θ2のときのギャップを示し、ΔPG2+g(θ2)は、第2姿勢角θ2の角度ずれに起因するギャップのずれを表わし、このずれ分を補正することで、第2姿勢角θ2のときのノズル列毎の正しいギャップPGが求められる。このため、g(θ2)は、ギャップPGを補正するためのギャップ補正値になる。
Dp={PG+ΔPG2+g(θ2)}/(Vm・cosθ2)
・(1/Tref−1/Tprt) …(4)
ここで、上記(4)式において、項{PG+ΔPG2+g(θ2)}は、第2姿勢角θ2のときのギャップを示し、ΔPG2+g(θ2)は、第2姿勢角θ2の角度ずれに起因するギャップのずれを表わし、このずれ分を補正することで、第2姿勢角θ2のときのノズル列毎の正しいギャップPGが求められる。このため、g(θ2)は、ギャップPGを補正するためのギャップ補正値になる。
また、上記(4)式において、項(Vm・cosθ2)は、第2姿勢角θ2のときの吐出速度Vmの鉛直方向成分(媒体Pの被印刷面と垂直な方向の成分)である。
図13に示すように、Y軸回りの角度ずれ(ウィリー)がある場合、ノズル列毎にギャップPG2が違うため、ノズル列毎にギャップ補正値g(θ2)を変えることで、ノズル列毎にディレイ値Dpを調整する。ここで、ΔPG2は、吐出ヘッド27がY軸回りに回動して第2姿勢角θ2にあるとき、一番低い位置にあるノズル列を基準ノズル列(例えばH列)とすると、この基準ノズル列の第2姿勢角θ2=0のときの基準位置(図14における二点鎖線で示すノズル開口面27aの高さ位置)に対する角度ずれによる高さ方向の変位である。
図13に示すように、Y軸回りの角度ずれ(ウィリー)がある場合、ノズル列毎にギャップPG2が違うため、ノズル列毎にギャップ補正値g(θ2)を変えることで、ノズル列毎にディレイ値Dpを調整する。ここで、ΔPG2は、吐出ヘッド27がY軸回りに回動して第2姿勢角θ2にあるとき、一番低い位置にあるノズル列を基準ノズル列(例えばH列)とすると、この基準ノズル列の第2姿勢角θ2=0のときの基準位置(図14における二点鎖線で示すノズル開口面27aの高さ位置)に対する角度ずれによる高さ方向の変位である。
ここで、図14から分かるように、ノズル列のA列からH列までの距離は「D2」であり、Y軸回りに回動した第2姿勢角θ2で最もギャップPGが小さくなる一番下側に位置するノズル列(図14の例ではH列)を基準ノズル列とし、基準ノズル列から上側に向かう順番に各ノズル列に、番号「j」を、j=1,2,…,mと符番する。この「j」を用いて、第2姿勢角θ2のときのギャップ補正値g(θ2)は、次の(5)式で表わされる。
g(θ2)=(j−1)/(m−1)・D2・sinθ2 …(5)
例えばノズル列数mが8列(m=8)の例では、ノズル列のA列〜H列のギャップ補正値g(θ2)は、以下のようになる。
A列のとき、g(θ2)=D2・sinθ2
B列のとき、g(θ2)=6/7・D2・sinθ2
C列のとき、g(θ2)=5/7・D2・sinθ2
・・・・・
G列のとき、g(θ2)=1/7・D2・sinθ2
H列のとき、g(θ2)=0
また、図15から分かるように、第2姿勢角θ2にある吐出ヘッド27から吐出されるインク滴の吐出速度Vmの鉛直方向成分は、Vm・cosθ2で与えられる。なお、ΔPG2は、第2姿勢角θ2になるときに基準ノズル列のギャップPGが変化した場合、その変化量である。
g(θ2)=(j−1)/(m−1)・D2・sinθ2 …(5)
例えばノズル列数mが8列(m=8)の例では、ノズル列のA列〜H列のギャップ補正値g(θ2)は、以下のようになる。
A列のとき、g(θ2)=D2・sinθ2
B列のとき、g(θ2)=6/7・D2・sinθ2
C列のとき、g(θ2)=5/7・D2・sinθ2
・・・・・
G列のとき、g(θ2)=1/7・D2・sinθ2
H列のとき、g(θ2)=0
また、図15から分かるように、第2姿勢角θ2にある吐出ヘッド27から吐出されるインク滴の吐出速度Vmの鉛直方向成分は、Vm・cosθ2で与えられる。なお、ΔPG2は、第2姿勢角θ2になるときに基準ノズル列のギャップPGが変化した場合、その変化量である。
次に、図16及び図17を参照して、第3姿勢角θ3の吐出タイミングの補正について説明する。キャリッジ22に走査方向X1と搬送方向F1との両方に直交するZ軸回りの姿勢角がずれた首振りが発生すると、ノズル間で走査方向X1の位置が変動するため、着弾誤差が生じてしまう。
そこで、以下の(6)式に基づいて、第3姿勢角θ3を、ディレイ値Dp(PTSディレイ段数)に反映させることで、着弾位置を改善する。
Dp=PG/Vm・(1/Tref−1/Tprt)+ΔDx+h(θ3) …(6)
ここで、h(θ3)は、首振りによって吐出ヘッド27が第3姿勢角θ3となったときに変位したノズルの走査方向成分に相当し、詳しくはそのノズルの走査方向X1の変位のディレイ値換算相当の値である。また、基準ノズル列の変位したX方向成分が0(零)でない場合は、その変化分Δxのディレイ値換算相当の値である。
Dp=PG/Vm・(1/Tref−1/Tprt)+ΔDx+h(θ3) …(6)
ここで、h(θ3)は、首振りによって吐出ヘッド27が第3姿勢角θ3となったときに変位したノズルの走査方向成分に相当し、詳しくはそのノズルの走査方向X1の変位のディレイ値換算相当の値である。また、基準ノズル列の変位したX方向成分が0(零)でない場合は、その変化分Δxのディレイ値換算相当の値である。
ここで、図16、図17から分かるように、ノズル♯1からノズル♯nまでの距離は「D1」であり、Z軸回りに回動した第3姿勢角θ3で最もキャリッジ22の進行方向側に位置するノズル(図16の例ではノズル♯1)を基準ノズルとする。この基準ノズルと同じノズル列に属する各ノズルに基準ノズルから順番に「k」を、k=1,2,…,nと符番する。この「k」を用いて、第3姿勢角θ3のときのディレイ補正値h(θ3)は、次の(7)式で表わされる。
h(θ3)=(k−1)/(n−1)・D1・sinθ3 …(7)
例えば1列当たりのノズル数nが400個(n=400)の例では、ノズル♯1〜♯nのディレイ補正値h(θ3)は以下のようになる。
ノズル♯1のとき、h(θ3)=0
ノズル♯2のとき、h(θ3)=1/399・D1・sinθ3
ノズル♯3のとき、h(θ3)=2/399・D1・sinθ3
ノズル♯4のとき、h(θ3)=3/399・D1・sinθ3
・・・・・
ノズル♯400のとき、h(θ3)=D1・sinθ3
そして、ノズル列番号毎に、上記(6)式を用いて、ディレイ値Dpを計算する。
h(θ3)=(k−1)/(n−1)・D1・sinθ3 …(7)
例えば1列当たりのノズル数nが400個(n=400)の例では、ノズル♯1〜♯nのディレイ補正値h(θ3)は以下のようになる。
ノズル♯1のとき、h(θ3)=0
ノズル♯2のとき、h(θ3)=1/399・D1・sinθ3
ノズル♯3のとき、h(θ3)=2/399・D1・sinθ3
ノズル♯4のとき、h(θ3)=3/399・D1・sinθ3
・・・・・
ノズル♯400のとき、h(θ3)=D1・sinθ3
そして、ノズル列番号毎に、上記(6)式を用いて、ディレイ値Dpを計算する。
また、通常は、X軸回りの角度ずれとY軸回りの角度ずれが複合して発生する。この場合は、ディレイ値Dpは、次の(8)式で与えられる。
Dp={PG+ΔPG3+f(θ1)+g(θ2)}/(Vm・cosθ1・cosθ2)
・(1/Tref−1/Tprt) …(8)
ここで、ΔPG3は、角度ずれにより基準ノズル列がθ1=0、θ2=0のときの基準位置に対して高さ方向に変位して、基準ノズル列のギャップPGが変化する場合におけるそのギャップの変化分の値である。
Dp={PG+ΔPG3+f(θ1)+g(θ2)}/(Vm・cosθ1・cosθ2)
・(1/Tref−1/Tprt) …(8)
ここで、ΔPG3は、角度ずれにより基準ノズル列がθ1=0、θ2=0のときの基準位置に対して高さ方向に変位して、基準ノズル列のギャップPGが変化する場合におけるそのギャップの変化分の値である。
さらにおじぎとウィリーと首振りとが複合して発生する場合、ディレイ値Dpは、次の(9)式で与えられる。
Dp={PG+ΔPG3+f(θ1)+g(θ2)}/(Vm・cosθ1・cosθ2)
・(1/Tref−1/Tprt) +ΔDx+h(θ3) …(9)
本例では、X軸回りの角度ずれ(おじぎ)、Y軸回りの角度ずれ(ウィリー)、Z軸回りの角度ずれ(首振り)の3種類全てに対応できるように、上記(2)〜(9)式のデータが、不揮発性メモリー64に記憶されている。この場合、上記各式を用いるに当たり、i,j,kは、各ノズルが属するノズル列と、その属するノズル列のノズル番号から特定される。
Dp={PG+ΔPG3+f(θ1)+g(θ2)}/(Vm・cosθ1・cosθ2)
・(1/Tref−1/Tprt) +ΔDx+h(θ3) …(9)
本例では、X軸回りの角度ずれ(おじぎ)、Y軸回りの角度ずれ(ウィリー)、Z軸回りの角度ずれ(首振り)の3種類全てに対応できるように、上記(2)〜(9)式のデータが、不揮発性メモリー64に記憶されている。この場合、上記各式を用いるに当たり、i,j,kは、各ノズルが属するノズル列と、その属するノズル列のノズル番号から特定される。
次に、プリンター11の作用を説明する。
印刷ジョブを受け付けると、図7に示す印刷制御部81は、印刷モードから決まる定速度Vcのデータと、印刷モード及び媒体種(例えば用紙種)などの情報から決まるギャップPGのデータとを、補正部92に送る。また、本例では、キャリッジ速度Vcrは、基準パルス信号RSの周期の逆数で管理される。このため、印刷制御部81は、印刷モードから決まる定速度Vcのデータとして、キャリッジ速度Vcrが定速度Vcにあるときの周期に相当する基準周期Trefの逆数で示される基準速度データ1/Tref(=Vc)を、補正部92に送る。
印刷ジョブを受け付けると、図7に示す印刷制御部81は、印刷モードから決まる定速度Vcのデータと、印刷モード及び媒体種(例えば用紙種)などの情報から決まるギャップPGのデータとを、補正部92に送る。また、本例では、キャリッジ速度Vcrは、基準パルス信号RSの周期の逆数で管理される。このため、印刷制御部81は、印刷モードから決まる定速度Vcのデータとして、キャリッジ速度Vcrが定速度Vcにあるときの周期に相当する基準周期Trefの逆数で示される基準速度データ1/Tref(=Vc)を、補正部92に送る。
コントローラー50は、吐出ヘッド27を制御する図18に示す吐出制御ルーチンの他に、搬送系のモーター30,31を制御する搬送制御ルーチンを行う。搬送系のモーター30,31の駆動制御により、媒体Pは給送及び搬送される。媒体Pが所定の印刷開始位置まで搬送されると、コントローラー50は、キャリッジモーター25を駆動制御して、キャリッジ22を走査方向X1に移動させる。
印刷を開始して、キャリッジ22が走査方向X1に移動を開始すると、コントローラー50は、リニアエンコーダー29からA相・B相のエンコーダーパルス信号を入力する。コントローラー50は、エッジ検出回路73でエンコーダーパルス信号のパルスエッジを検出して基準パルス信号RSを生成し、その生成した基準パルス信号RSを印刷タイミング発生回路74及びCRカウンター75に出力する。印刷タイミング発生回路74内の速度検出部91(図7参照)は、基準パルス信号RSのパルスエッジの間隔時間を計時(計数)して取得した現在の周期Tprtの逆数1/Tprtを、キャリッジ22の現在の速度データとして補正部92に送る。
また、キャリッジ22の移動中にジャイロセンサー55によりキャリッジ22の姿勢角θ1〜θ3を逐次検出する。そのため、コントローラー50には、ジャイロセンサー55が検出した姿勢角θ1〜θ3が逐次入力される。このキャリッジ22の走査中(移動中)において、コントローラー50は図18に示す吐出制御ルーチンを実行して吐出ヘッド27の吐出制御を行う。
まずステップS11では、姿勢角θを取得する。コントローラー50内の印刷制御部81は、ジャイロセンサー55から検出値信号を取得する。姿勢角検出部85は、ジャイロセンサー55から入力した検出値信号に基づいてキャリッジ22の姿勢角θ1〜θ3を検出し、印刷タイミング発生回路74内の補正部92に送る。
ステップS12では、姿勢角θを用いてディレイ値Dpを演算する。コントローラー50内の補正部92は、姿勢角θ1〜θ3と、現在周期Tprtと、基準周期Trefとを用いて、上記(2)式、(4)式、(6)式、(8)式及び(9)式のうちいずれか1つの計算式に基づいて、ディレイ値Dpを演算する。例えば第1姿勢角θ1だけが0(零)でない場合、(2)式及び(3)式を用いてディレイ値Dpを演算する。また、例えば第2姿勢角θ2だけが0(零)でない場合、(4)式及び(5)式を用いてディレイ値Dpを演算する。さらに、例えば第3姿勢角θ3だけが0(零)でない場合、(6)式及び(7)式を用いてディレイ値Dpを演算する。また、例えば第1姿勢角θ1及び第2姿勢角θ2が共に0(零)でない場合、(8)式を用いてディレイ値Dpを演算する。さらに、例えば第1〜第3姿勢角θ1〜θ3が共に0(零)でない場合、(9)式を用いてディレイ値Dpを演算する。補正部92は、算出したディレイ値Dpをディレイ値設定部93に設定する。なお、ディレイ値設定部93は、双方向印刷時には、キャリッジ22の往動時と復動時で同じ目標着弾位置にインク滴を着弾させるべく吐出タイミングを調整する。キャリッジ22の復動時には、キャリッジ22の往動時に対する復動時のディレイ調整値Dsを用いて、式Dp=Dp+Dsにより復動用のディレイ値Dpを演算し、ディレイ値設定部93に設定する。
ステップS13では、ディレイ値Dpに基づき吐出制御を行う。吐出タイミング信号生成部94は、ディレイ値設定部93からディレイ値Dpを読み込んでディレイカウンター95にセットする。ディレイカウンター95は、カウントダウンしてノズル毎の計数値が0(零)になる度に、又はノズル列毎の計数値が0(零)になる度に、吐出タイミング信号PTS1〜PTSjを順番にヘッド駆動回路54に出力する。この結果、ノズル番号毎又はノズル列番号毎に、そのときの姿勢角θ1〜θ3に応じて補正されたディレイ値Dpに基づく吐出タイミングで、各ノズル27bからインク滴が吐出される。
この結果、印刷中に、キャリッジ22の移動中の姿勢角θが正常な姿勢角からずれても、姿勢角θに応じて補正された吐出タイミングで吐出ヘッド27からインク滴が吐出される。以後、ステップS11〜S13の処理を繰り返す。この結果、補正部92は、1吐出毎に、つまり1回の吐出が行われる印刷周期毎に、姿勢角検出部85から姿勢角θ1〜θ3を取得し(S11)、姿勢角θ1〜θ3に応じたディレイ値Dpを演算し(S12)、1吐出毎に補正部92が姿勢角θ1〜θ3に応じて補正した吐出タイミングで、吐出ヘッド27が吐出制御される。こうして、その時々の姿勢角θに応じて補正された吐出タイミングでインク滴が吐出されることにより、姿勢角θ1〜θ3のうち少なくとも1つが正常時の姿勢角からずれても、正常時の姿勢角にあるときとさほどずれのない位置にインク滴を着弾させることができる。よって、キャリッジ22の姿勢角θに依らず、着弾位置のずれが小さく抑えられる。
また、本実施形態では、少なくとも1つの姿勢角については、ジャイロセンサー55でキャリッジ22の角度を検出しなくても、加速度から姿勢角θを推定することができる。すなわち、コントローラー50は、図19に示す吐出制御ルーチンを実行する。
まずステップS21では、加速度αを取得する。速度データの逆数である基準パルスの前回の周期の逆数と今回の周期の逆数との差から加速度αを求める。
ステップS22では、加速度αに基づいて姿勢角θを推定する。コントローラー50は、加速度αを基に図8に示す参照データADを参照することにより、その加速度αに対応する姿勢角θを推定する。このため、ジャイロセンサー55を用いなくても、加速度αから姿勢角θを推定することができる。例えば加速度αと第1姿勢角θ1(おじぎ角)との対応関係を示す参照データADを参照し、加速度αに対応する第1姿勢角θ1を推定できる。また、例えば加速度αと第2姿勢角θ2(ウィリー角)との対応関係を示す参照データADを参照して、加速度αに対応する第2姿勢角θ2を推定する。さらに、例えば加速度αと第3姿勢角θ3(首振り角)との対応関係を示す参照データADを参照して、加速度αに対応する第3姿勢角θ3を推定することができる。また、例えば加速度αと第1姿勢角θ1と第2姿勢角θ2との対応関係を示す参照データADを参照して、加速度αに対応する各姿勢角θ1,θ2を推定することができる。また、加速度αと第1姿勢角θ1と第2姿勢角θ2と第3姿勢角θ3との対応関係を示す参照データADを参照して、加速度αに対応する各姿勢角θ1〜θ3を推定することができる。
ステップS22では、加速度αに基づいて姿勢角θを推定する。コントローラー50は、加速度αを基に図8に示す参照データADを参照することにより、その加速度αに対応する姿勢角θを推定する。このため、ジャイロセンサー55を用いなくても、加速度αから姿勢角θを推定することができる。例えば加速度αと第1姿勢角θ1(おじぎ角)との対応関係を示す参照データADを参照し、加速度αに対応する第1姿勢角θ1を推定できる。また、例えば加速度αと第2姿勢角θ2(ウィリー角)との対応関係を示す参照データADを参照して、加速度αに対応する第2姿勢角θ2を推定する。さらに、例えば加速度αと第3姿勢角θ3(首振り角)との対応関係を示す参照データADを参照して、加速度αに対応する第3姿勢角θ3を推定することができる。また、例えば加速度αと第1姿勢角θ1と第2姿勢角θ2との対応関係を示す参照データADを参照して、加速度αに対応する各姿勢角θ1,θ2を推定することができる。また、加速度αと第1姿勢角θ1と第2姿勢角θ2と第3姿勢角θ3との対応関係を示す参照データADを参照して、加速度αに対応する各姿勢角θ1〜θ3を推定することができる。
ステップS23では、姿勢角θを用いてディレイ値Dpを演算する。このディレイ値Dpの演算は、ステップS12と同様である。次のステップS24では、ディレイ値Dpに基づき吐出制御する。この吐出制御は、ステップS13と同様である。
こうして、姿勢角θ1〜θ3のうち少なくとも1つが正常時の姿勢角からずれても、その時々の姿勢角θに応じて補正された吐出タイミングでインク滴が吐出される。この結果、正常時の姿勢角にあるときとさほどずれのない位置にインク滴を着弾させることができる。よって、キャリッジ22の姿勢角θに依らず、着弾位置のずれが小さく抑えられる。
以上詳述した第1実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)コントローラー50は、キャリッジ22(つまり吐出ヘッド27)の姿勢角θに応じて吐出タイミングを補正する。よって、キャリッジ22の姿勢角θが正常な姿勢角からずれても、インク滴の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
(1)コントローラー50は、キャリッジ22(つまり吐出ヘッド27)の姿勢角θに応じて吐出タイミングを補正する。よって、キャリッジ22の姿勢角θが正常な姿勢角からずれても、インク滴の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
(2)吐出ヘッド27の姿勢角θを検出するジャイロセンサー55を備え、コントローラー50は、ジャイロセンサー55により検出されたキャリッジ22の正確な姿勢角θに応じて吐出タイミングを補正する。よって、キャリッジ22の姿勢角θが正常な姿勢角からずれても、インク滴の着弾位置のずれを一層小さく抑えることができる。
(3)キャリッジ22を走査方向X1に移動させて、吐出ヘッド27から媒体Pにインク滴が吐出される構成でも、キャリッジ22の姿勢角θが正常な姿勢角からずれた場合に、インク滴の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
(4)走査方向X1に移動するキャリッジ22の加速度に基づいて姿勢角θを推定する構成では、ジャイロセンサー55を設けなくても、吐出ヘッド27の姿勢角θを取得できる。よって、ジャイロセンサー55が無くても、姿勢角θが正常な姿勢角からずれた場合に、インク滴の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
(5)キャリッジ22の姿勢角θに応じて第1ノズルと第2ノズルとの媒体Pに対するギャップが異なる場合は、媒体Pとのギャップの小さい方の第1ノズルからの吐出タイミングに比べて、ギャップが大きい方の第2ノズルからの吐出タイミングを遅くする。よって、キャリッジ22の姿勢角θが正常な姿勢角からずれても、第1ノズルから吐出されたインク滴の着弾位置と第2ノズルから吐出されたインク滴の着弾位置との各ずれを共に小さく抑えることができる。
(6)吐出ヘッド27の姿勢角θに応じて第1ノズルと第2ノズルとの吐出ヘッド27が正常な姿勢角θにあるときの位置に対して走査方向X1(相対移動方向の一例)に変位した量の小さい方の第1ノズルからの吐出タイミングに比べて、走査方向X1に変位した量の大きい方の第2ノズルからの吐出タイミングをより大きく補正する。よって、キャリッジ22の姿勢角θが正常な姿勢角からずれたために第1ノズルの位置と第2ノズルとの位置とが走査方向X1に変位した場合に、第1ノズルから吐出されたインク滴の着弾位置と第2ノズルから吐出されたインク滴の着弾位置との各ずれを共に小さく抑えることができる。
(7)同じノズル列に属する第1ノズル及び第2ノズルの各吐出タイミングを補正するので、第1ノズル及び第2ノズルから吐出されるインク滴の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
(8)異なるノズル列にそれぞれ属する第1ノズル及び第2ノズルの各吐出タイミングが補正されるので、第1ノズル及び第2ノズルから吐出されるインク滴の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
(9)キャリッジ22が走査方向X1と平行なX軸(第1仮想軸の一例)を中心に回動する第1姿勢角θ1に応じて吐出タイミングを補正する。よって、第1姿勢角θ1が正常な姿勢角からずれた場合でも、インク滴の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
(10)吐出ヘッド27が走査方向X1と交差するY軸(第2仮想軸の一例)を中心に回動する第2姿勢角θ2に応じて吐出タイミングを補正する。よって、第2姿勢角θ2が正常な姿勢角からずれた場合でも、インク滴の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
(11)吐出ヘッド27が走査方向X1と平行なX軸と走査方向X1と交差するY軸との両方に直交するZ軸(第3仮想軸の一例)を中心に回動する第3姿勢角θ3に応じて吐出タイミングを補正する。よって、第3姿勢角θ3が正常な姿勢角からずれた場合でも、インク滴の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
・参照データADを無くして加速度から姿勢角を推定する方法を行わない構成としてもよい。この場合、ジャイロセンサー55により姿勢角を検出できるので、吐出ヘッド27の姿勢角変動に応じた適切な吐出タイミングで印刷を行うことができる。
・参照データADを無くして加速度から姿勢角を推定する方法を行わない構成としてもよい。この場合、ジャイロセンサー55により姿勢角を検出できるので、吐出ヘッド27の姿勢角変動に応じた適切な吐出タイミングで印刷を行うことができる。
・ジャイロセンサー55を無くしてもよい。この場合、姿勢角検出部85は、取得した加速度を基に参照データADを参照することで、加速度に対応する姿勢角を検出できる。このため、ジャイロセンサー55を廃止して少ない部品点数にしたうえで、吐出ヘッド27の姿勢角変動に応じた適切な吐出タイミングで印刷を行うことができる。
・参照データに替えて、キャリッジ22の加速度から姿勢角を算出可能な計算式を不揮発性メモリー64に記憶し、検出部の一例である姿勢角検出部85が、取得したキャリッジ22の加速度を基に計算式を用いて液体吐出部の傾き度を算出してもよい。
・姿勢角としてX軸回りの第1姿勢角θ1、Y軸回りの第2姿勢角θ2、Z軸回りの第3姿勢角θ3の3つの姿勢角を用いて吐出タイミングを補正したが、第1〜第3姿勢角θ1〜θ3のうち2つの姿勢角に基づいて吐出タイミングを補正したり、1つの姿勢角のみに基づいて吐出タイミングを補正したりしてもよい。例えば2つの姿勢角として、第1及び第2姿勢角θ1,θ2を選択した場合、吐出ヘッド27のX軸回りとY軸回りの姿勢角の変動に応じた適切な吐出タイミングで印刷を行うことができる。また、2つの姿勢角として、第1及び第3姿勢角θ1,θ3を選択した場合、吐出ヘッド27のX軸回りとZ軸回りの姿勢角の変動に応じた適切な吐出タイミングで印刷を行うことができる。さらに2つの姿勢角として、第2及び第3姿勢角θ2,θ3を選択した場合、吐出ヘッド27のY軸回りとZ軸回りの姿勢角の変動に応じた適切な吐出タイミングで印刷を行うことができる。また、第1姿勢角θ1のみを選択した場合、吐出ヘッド27のX軸回りの姿勢角の変動に応じた適切な吐出タイミングで印刷を行うことができる。また、第2姿勢角θ2のみを選択した場合、吐出ヘッド27のY軸回りの姿勢角の変動に応じた適切な吐出タイミングで印刷を行うことができる。さらに第3姿勢角θ3のみを選択した場合、吐出ヘッド27のZ軸回りの姿勢角の変動に応じた適切な吐出タイミングで印刷を行うことができる。
・X軸回りの第1姿勢角θ1とY軸回りの第2姿勢角θ2とのうち少なくとも一方の姿勢角に応じて吐出タイミングを補正する場合に、姿勢角に応じた第1ノズルと第2ノズルとの変位のうち走査方向X1(相対移動方向)成分に応じた補正を加えてもよい。第1ノズルと第2ノズルの変位のZ方向成分(ギャップ)による補正に加え、X方向成分による補正が行われることで、着弾位置精度をさらに高めることができる。
・姿勢角の回動中心軸(仮想軸)は、走査方向X1と平行なX軸、搬送方向F1と平行なY軸、X軸とY軸との両方に直交するZ軸に限定されない。例えば走査方向X1と鋭角で交差する仮想軸、搬送方向F1と鋭角で交差する仮想軸、Z軸と鋭角に交差する仮想軸でもよい。
・前記実施形態では、シリアルプリンターに適用したが、キャリッジ(又は吐出ヘッド)を移動させながら印刷する他の走査式の印刷装置ででもよい。例えばキャリッジが主走査方向と副走査方向との2方向に移動可能なラテラル式プリンターに適用してもよい。さらに吐出ヘッドの一例としてラインヘッドを備えたラインプリンターに適用してもよい。ラインプリンターでも、ラインヘッドの姿勢角が正常な姿勢角から回動して角度ずれが存在する場合でも、姿勢角に応じて吐出タイミングを補正することで、インク滴の着弾位置のずれを小さく抑えることができる。この場合、ラインヘッドと媒体Pとの相対移動方向と平行な第1仮想軸、相対移動方向と交差する第2仮想軸、第1仮想軸と第2仮想軸との両方に直交する第3仮想軸のうち少なくとも1つの仮想軸周りの姿勢角に応じて、ラインヘッドの第1ノズルと第2ノズル間で異なる吐出タイミングに補正すればよい。
・検出部は、ジャイロセンサーに限定されず、液体吐出部の姿勢角を検出できる他の検出器でもよい。例えば加速度センサーや角度センサーを用いてもよい。また液体吐出部が角度閾値を超えるとオンするリミットスイッチを少なくとも1つ設けてもよい。
・プリンターのコントローラー50内の印刷制御部81及び印刷タイミング発生回路74内に構築される各機能部は、プログラムを実行するコンピューターによりソフトウェアで実現されたり、例えばFPGA(field-programmable gate array)やASIC(Application Specific IC)等の電子回路によりハードウェアで実現されたり、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現されたりしてもよい。
・吐出対象物は、用紙等の媒体に限定されず、樹脂製のフィルムやシート、樹脂と金属の複合体フィルム(ラミネートフィルム)、織物、不織布、金属箔、金属フィルム、セラミックシートなどであってもよい。また、用紙やシート等の平坦形状のものに限らず、円柱、円錐、多角錐等の所定形状を有する立体物でもよい。
・液体吐出装置は、吐出対象物の一例として用紙等の媒体Pに印刷を行う印刷装置に限らず、液体吐出方式(例えばインクジェット方式)で樹脂液滴を吐出して三次元立体物(吐出対象物の一例)を成形する液体吐出装置でもよい。このような液体吐出装置でも、液体吐出部の姿勢角に応じて吐出タイミングを補正することで、着弾位置の精度を高めることができるので、精度の高い三次元立体物を成形できる。
11…液体吐出装置の一例としてのプリンター、22…液体吐出部の一例を構成するキャリッジ、25…動力源の一例としてのキャリッジモーター、27…液体吐出部の一例を構成する吐出ヘッド、27a…ノズル開口面、27b…ノズル、40…吐出部、50…制御部の一例としてのコントローラー、55…検出部の一例としてのジャイロセンサー、92…補正部、PD…印刷データ、P…吐出対象物の一例としての媒体、X1…走査方向、F1…搬送方向、N…ノズル列、PG…ギャップ、θ…姿勢角、θ1…第1姿勢角、θ2…第2姿勢角、θ3…第3姿勢角、α…加速度。
Claims (12)
- 液体を吐出する液体吐出部を備えた液体吐出装置であって、
液体を吐出可能な液体吐出部と、
前記液体吐出部から液体を吐出する吐出タイミングを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記液体吐出部の姿勢角に応じて吐出タイミングを補正することを特徴とする液体吐出装置。 - 前記液体吐出部の姿勢角を検出する検出部を更に備え、
前記制御部は、前記検出部が検出した姿勢角に応じて吐出タイミングを補正することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。 - 前記液体吐出部のノズルから吐出された液体が着弾する吐出対象物と前記液体吐出部とを相対移動方向に相対移動させる動力源を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
- 前記動力源は、前記液体吐出部を前記相対移動方向として走査方向に移動させる構成であり、
前記制御部は、前記動力源を制御して前記液体吐出部を速度制御するとともに、前記液体吐出部の加速度を取得し、当該加速度に基づいて前記液体吐出部の姿勢角を推定することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。 - 前記液体吐出部は、媒体に対して液体を吐出する複数のノズルを備え、
前記制御部は、前記液体吐出部の姿勢角に応じて第1ノズルと第2ノズルとの前記媒体に対するギャップが異なる場合は、前記媒体とのギャップの小さい方の第1ノズルからの吐出タイミングに比べて、ギャップが大きい方の第2ノズルからの吐出タイミングを遅くすることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体吐出装置。 - 前記液体吐出部は、媒体に対して液体を吐出する複数のノズルを備え、
前記制御部は、前記液体吐出部の姿勢角に応じて第1ノズルと第2ノズルとの前記液体吐出部が正常な姿勢角にあるときの位置に対して前記相対移動方向に変位した量の小さい方の第1ノズルからの吐出タイミングに比べて、前記相対移動方向に変位した量の大きい方の第2ノズルからの吐出タイミングをより大きく補正することを特徴とする請求項3又は4に記載の液体吐出装置。 - 前記液体吐出部は、前記ノズルが一定のノズルピッチで配置されたノズル列を有し、
前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、同じ前記ノズル列に属することを特徴とする請求項5又は6に記載の液体吐出装置。 - 前記液体吐出部は、前記ノズルが一定のノズルピッチで配置されたノズル列を複数有し、
前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、異なる前記ノズル列に属することを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。 - 前記姿勢角は、前記液体吐出部が前記相対移動方向と平行な第1仮想軸を中心に回動する第1姿勢角であることを特徴とする請求項3乃至8のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
- 前記姿勢角は、前記液体吐出部が前記相対移動方向と交差する第2仮想軸を中心に回動する第2姿勢角であることを特徴とする請求項3乃至9のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
- 前記姿勢角は、前記相対移動方向と平行な第1仮想軸と前記相対移動方向と交差する第2仮想軸との両方に直交する第3仮想軸を中心に回動する第3姿勢角であることを特徴とする請求項3、4、6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
- 液体吐出部から液体を吐出する液体吐出方法であって、
液体吐出部の姿勢角を取得する取得ステップと、
前記液体吐出部の姿勢角に応じて吐出タイミングを補正する補正ステップと
を備えたことを特徴とする液体吐出方法。
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2017217806A (ja) * | 2016-06-07 | 2017-12-14 | 株式会社リコー | 液体を吐出する装置および液体吐出方法 |
JP2018144338A (ja) * | 2017-03-03 | 2018-09-20 | 株式会社リコー | 液滴吐出装置、印刷方法、プログラム |
JP2020082596A (ja) * | 2018-11-29 | 2020-06-04 | セイコーエプソン株式会社 | 記録装置 |
JP2021062565A (ja) * | 2019-10-16 | 2021-04-22 | セイコーエプソン株式会社 | 情報処理装置、学習装置、情報処理装置の制御方法、及び、プログラム |
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2015
- 2015-02-17 JP JP2015028771A patent/JP2016150502A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2017217806A (ja) * | 2016-06-07 | 2017-12-14 | 株式会社リコー | 液体を吐出する装置および液体吐出方法 |
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JP2020082596A (ja) * | 2018-11-29 | 2020-06-04 | セイコーエプソン株式会社 | 記録装置 |
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