JP2016144795A - 分離膜エレメント - Google Patents
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Abstract
【課題】常に安定した濾過流量および脱塩率が得られる分離膜エレメント用の透過側流路材および分離膜エレメントを提供すること。【解決手段】分離膜エレメント用の透過側流路材であって、分離膜との接着部分が、前記透過側流路材における他の部分よりも流体浸透性が高い透過側流路材とする。【選択図】図2
Description
本発明は、液体、気体等の流体に含まれる成分を分離するために使用される分離膜エレメントに関する。
液体、気体等の流体に含まれる成分を分離する方法としては、様々なものがある。例えば海水、かん水などに含まれるイオン性物質を除くための技術を例にとると、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして分離膜エレメントによる分離法の利用が拡大している。分離膜エレメントによる分離法に使用される分離膜には、その孔径や分離機能の点から、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜、正浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、廃水処理、有価物の回収などに用いられており、目的とする分離成分および分離性能によって使い分けられている。
分離膜エレメントは、分離膜の一方の面に原流体を供給し、他方の面から透過流体を得る点では共通している。分離膜エレメントは、各種形状からなる分離膜素子を多数束ねて膜面積を大きくし、単位エレメントあたりで多くの透過流体を得ることができるように構成されており、用途や目的にあわせて、スパイラル型、中空糸型、プレート・アンド・フレーム型、回転平膜型、平膜集積型などの各種エレメントが製造されている。
例えば、逆浸透ろ過に用いられる分離膜エレメントを例にとると、その分離膜エレメントは、原流体を分離膜表面へ供給する供給側流路材、原流体に含まれる成分を分離する分離膜、及び分離膜を透過し供給流体から分離された透過流体を集水管へと導くための透過側流路材、からなる部材を集水管の周りに巻き付けたスパイラル型分離膜エレメントが、原流体に圧力を付与し、透過流体を多く取り出す点で広く用いられている。
スパイラル型分離膜エレメントの部材としては、供給側流路材では供給流体の流路を形成させるために主に高分子製のネットが使用され、分離膜としては、ポリアミドなどの架橋高分子からなる分離機能層、ポリスルホンなどの高分子からなる多孔性樹脂層、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子からなる不織布がそれぞれ供給側から透過側にかけて積層された分離膜が使用される。透過側流路材は、透過側流路材自身の構造部と空隙とからなり、空隙部が透過流体流路として用いられるが、膜に原流体のろ過圧が作用して空隙部への膜の落ち込み変形を防ぐ目的で、供給側流路材よりも空隙が小さいトリコットと呼ばれる編み物部材が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
近年、造水コストの低減意識の高まりから、分離膜エレメントの高性能化のニーズ、および、分離膜エレメントの低価格化が求められている。この様な背景の中、分離膜エレメントの分離性能、単位時間あたりの透過流体量を増やす上では、透過側流路材の流動抵抗を減らすため、流路となる空隙が小さい、トリコットのような編み物部材に代えて、薄手のフィルム状のシートに突起を設けた構造の透過側流路材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
本発明者らは、透過側流路材として特許文献2のようにフィルムを用いた場合、あるいはその他の接着剤が浸透しにくい部材を用いた場合、透過側流路材の両面に接着剤を塗布しなければならないので、製造工程の増加により製造コストが高まり、製造効率が低下すること、透過流体流路材に接着剤が浸透し難く、アンカー効果を発現しないために透過側流路材と接着剤との間に剥離が生じやすく、結果として分離膜と透過側流路材との間にリークが生じやすいことを見出した。
本発明の目的は、よりリークが生じにくく、製造効率のよい分離膜エレメントを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は次の(1)〜(4)のいずれかの構成を有する。
(1)供給側の面と透過側の面とを有する分離膜と、前記透過側の面に挟まれるように配置される透過側流路材と、を備え、前記分離膜によって原流体を透過流体と濃縮流体とに分離する分離膜エレメントであって、前記透過側流路材は、それを挟む前記分離膜の透過側の面の両方に、接着剤により固定されており、前記は、第1領域と第2領域とを有し、前記第2領域は前記第1領域よりも前記接着剤が浸透しやすく、前記接着剤は、少なくとも前記第2領域に浸透し、かつ前記流路材と前記透過側の面とを接着している、分離膜エレメント。
(2)前記透過側流路材は、基材に突起を有する上記(1)に記載の分離膜エレメント。
(3)前記突起が、基材に固着している上記(2)に記載の分離膜エレメント。
(4)前記第2領域において前記透過側流路材は孔を備える上記(1)〜(3)のいずれかに記載の分離膜エレメント。
(5)前記第2領域は、前記流路材の端部に位置する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の分離膜エレメント。
(6)前記第1領域において、前記透過側流路材は、流体を透過させないことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の分離膜エレメント。
(2)前記透過側流路材は、基材に突起を有する上記(1)に記載の分離膜エレメント。
(3)前記突起が、基材に固着している上記(2)に記載の分離膜エレメント。
(4)前記第2領域において前記透過側流路材は孔を備える上記(1)〜(3)のいずれかに記載の分離膜エレメント。
(5)前記第2領域は、前記流路材の端部に位置する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の分離膜エレメント。
(6)前記第1領域において、前記透過側流路材は、流体を透過させないことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の分離膜エレメント。
本発明によると、透過側の面が向かい合わせになっている分離膜同士が、透過側流路材を介して接着されており、この透過側流路材に接着剤が浸透しやすい第2領域が存在することで、接着剤と透過側流路材との間の剥離が生じにくい。
また、第2領域に接着剤が浸透することで、透過側流路材の片面のみに接着剤を塗布しても、透過側流路材の他方の面にまで接着剤が到達しやすいので、透過側流路材の片面に接着剤を塗布するだけで、両面を分離膜に接着することが可能となる。
以下、本発明の実施形態の例を、逆浸透膜を用いたスパイラル型の分離膜エレメント、および、その透過側流路材について、適用した場合を例にとって、図面を参照しながら説明する。
1.分離膜エレメントの構成
図1〜図4に本実施形態の分離膜エレメント1の構成を示す。
図1〜図4に本実施形態の分離膜エレメント1の構成を示す。
図1に示すように、分離膜エレメント1は、集水管5と、集水管5の周囲に巻囲された積層体11と、端板53および55とを備える。
集水管5は、複数の孔を有する中空の管である。
図1および図2に示すように、積層体11は、分離膜2と、供給側流路材3と、透過側流路材4と、接着部7を備える。なお、図2においては、積層体11の構成の説明のために部材のみを抜粋して示す。特に、積層体11の最下部には、後述するように他の層よりも長い透過側流路材が配置されるが、図2では省略する。
分離膜2の2つの面のうち、供給流体(原流体)101と接触する方の面を供給側の面と称し、分離膜2を通った透過流体103と接する方の面を透過側の面と称する。積層体11は複数の分離膜2を備えており、複数の分離膜2は、供給側の面同士が対向し、かつ透過側の面同士が対向するように重ねられている。本実施形態では、図2に示すように、分離膜2は矩形であり、供給側の面を内側に向けて折り畳まれている。複数の分離膜2は、その折り山が集水管5に沿うように配置される。
分離膜2としては、精密ろ過膜、限外ろ過膜、逆浸透膜、ナノろ過膜、正浸透膜等の種々の膜が適用可能である。
分離膜2は複数の層を備えてもよく、例えば、支持体および多孔質層で構成されてもよいし、支持体、多孔質層および分離機能層で構成されてもよい。いずれの場合でも、支持体には、ポリエステル,ポリプロピレン,ポリエチレン又はポリアミド等を素材とする織布,不織布およびネット等が挙げられる。また、多孔質層の材料としては、ポリアクリロニトリル,ポリエーテルスルホン,ポリフェニレンスルホン,ポリフェニレンスルフィドスルホン,ポリフッ化ビニリデン,酢酸セルロース,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスルホン等が挙げられる。二層構造の場合は、多孔質層が分離機能を担う。さらなる分離機能層が設けられる場合は、分離機能層の材料としては、ポリアミド,ポリイミド,酢酸セルロース等が挙げられる。
エレメント1内での分離膜2は、折り畳まれている場合、広げると、巻囲方向における長さL0は500mm〜5000mmの範囲であることが好ましく、1000mm〜3000mmの範囲であることがより好ましい。また、折り畳まれた状態での長さL2は、300mm〜4000mmの範囲であればよく、300mm〜2000mmの範囲であることが好ましい。また、分離膜2の幅(集水管5の長手方向における幅)は、50mm~3000mmの範囲であればよい。
供給側流路材3は、2枚の(図2に示すように、折り畳みによって見かけ上2枚である場合を含む)分離膜2の供給側の面の間に挿入されている。2枚一組の分離膜2とその間に挿入された供給側流路材3とを、膜−供給側流路材ユニットとよび、符号30を付す。供給側流路材3は、分離膜2間で、供給流体101および濃縮流体102が流れる空間を確保する。供給側流路材3としては、例えばネットなど、分離膜エレメントの供給側流路材として従来公知の部材が適用可能である。
透過側流路材4は、流路材の一例であり、折り畳まれた2枚の分離膜2の外側の面の間、つまり透過側の面の間に配置される。透過側流路材4は、透過側の流路を確保するスペーサーとして主に機能する第1領域41と、接着剤が含浸しやすいように構成された第2領域42とを備える。
透過側流路材4の寸法は、分離膜2のサイズによっても変更可能であり、透過側流路を確保できる程度の大きさであればよい。透過側流路材4の幅WP(集水管5の長手方向における幅)は例えば、100mm〜3000mmの範囲であることが好ましい。また透過側流路材4の長さLP(巻回方向における長さ)は、100mm〜4000mmの範囲であることが好ましい。第2領域42の幅M1は、10mm〜300mmの範囲であることが好ましい。
図2に示すように、第2領域42は、透過側流路材4の4辺のうち、巻回方向内側の1辺を除いた3つの辺に沿って設けられる。つまり、第2領域42は、第1領域41の周りに、コの字型(角張ったU字型)に設けられる。なお、説明の便宜上、図2では、第2領域42は、透過側流路材4の外縁(矩形)に沿うように連続的に描かれているが、第2領域42は、不連続な形状であってもよい。
図4に示すように、透過側流路材4は、基材44と、基材44の両面に設けられた突起部45とを備える。本実施形態では、第2領域42には、基材44の一方の面から他方の面に貫通する孔46が設けられており、第1領域41には孔46は設けられていない。孔46は、第2領域42において、突起部45が設けられていない箇所に少なくとも設けられている。つまり、透過側流路材4では、複数の孔46が露出している。ただし、基材44において、一部の孔46の上に、かぶさるように突起部45が設けられていてもよいし、突起部45を避けるように孔46が設けられていてもよい。
本実施形態では、孔部分を除いて、透過側流路材4(特に基材44)は、流体透過性を有さなくてもよい。基材44としては例えばフィルムが適用される。その材質は具体的な化合物に限定されない。ただし、透過側流路材の基材としては、流体透過性を有するものも適用可能である。例えば不織布、またはネット、トリコット等の織物若しくは編み物など、流体透過性を有する材料が、透過側流路材に適用されてもよい。
また、基材44の厚みT1は、0.005mmから1mmの範囲であることが好ましく、0.01mm〜0.05mmであることがより好ましい。
透過側流路材4は、基材44の片面または両面に突起部45を備えてもよい。透過側流路材の突起部は、透過流体の流路空間を形成することができればよく、その形状および数は、適宜設定される。一例として、本実施形態の突起部45は、円柱状であり、本実施形態では、第1領域41および第2領域42を含む透過側流路材4の全面に設けられている。ただし、第2領域42には突起部45は設けられなくてもよい。
突起部45の配列ピッチPPは、0.1mm〜3mmであることが好ましい。配列ピッチPPとは、透過側流路材4の長さ方向(巻回方向)における、各突起部45の中心と、隣り合う突起部45の中心までの距離、および幅方向(集水管長手方向)における、各突起部45の中心と、隣り合う突起部45の中心までの距離の両方を指す。
また、突起部45は、透過側流路材4の特に幅方向における幅が0.02mm〜1mmであることが好ましい。透過側流路材4の長さ方向における幅も、同様の範囲とすることができる。突起部45の高さも0.02mm〜1mmの範囲であることが好ましい。
貫通孔46は、第2領域42の接着剤浸透性を、第1領域41よりも高めるための手段の一例である。透過側流路材が、接着剤浸透性を有する基材を備える場合、つまり第1領域も第2領域も接着剤浸透性を有する場合、第2領域における基材厚みを第1領域における基材厚みより小さくしてもよい。また、同様に第1領域及び第2領域の両方が接着剤浸透性を有する場合、第2領域の空隙率を第1領域の空隙率よりも高くしてもよい。また、第2領域の密度(目付)を第1領域よりも小さくすることもできる。これは、流路材の基材が、繊維で構成された不織布またはトリコット等である場合に特に有効である。
また、貫通孔46の直径は、分離膜間を接着する接着剤の粘度が高い場合は特に、大きい方が良い。具体的には、貫通孔46の直径は、0.1〜10mmの範囲が好ましく、3〜10mmの範囲がより好ましい。なお、貫通孔46の形状は、円形である必要はなく、四角形やそれ以外の形状でもよく、開孔手段としては、刃物等を用いて切除しても良く、熱溶融を用いても良い。
また、第1領域41よりも第2領域42の接着剤浸透性を高める手段として本実施形態では、貫通孔46は、基材44を切除または、熱溶融することで、開孔面積を確保する開孔形態例を記載しているが、刃物等でスリット状に切り込みを入れて貫通部を形成した形態や、鋭利な針等を突き刺して貫通部を形成した形態でも、浸透性の向上を図ることができる。後者の方法では、貫通部を開孔する際の切除屑が発生しない利点があり、屑処理や製品への屑混入の弊害が無く生産性が良い。
また、第1領域41よりも第2領域42の接着剤浸透性を高める手段として本実施形態では、貫通孔46は、基材44を切除または、熱溶融することで、開孔面積を確保する開孔形態例を記載しているが、刃物等でスリット状に切り込みを入れて貫通部を形成した形態や、鋭利な針等を突き刺して貫通部を形成した形態でも、浸透性の向上を図ることができる。後者の方法では、貫通部を開孔する際の切除屑が発生しない利点があり、屑処理や製品への屑混入の弊害が無く生産性が良い。
接着部7は、2枚の分離膜2の透過側の面の間を接着する。接着部7は、透過側流路材4と分離膜2との間も接着する。具体的には、接着部7は、供給流体101および濃縮流体103から透過流体102を隔離するように、集水管5に隣接し、集水管5の長手方向に平行な1辺を除いて、分離膜2の3辺に沿って設けられる。特に、接着部7は、透過側流路材4の第2領域42を介して、分離膜2の透過側の面の間を接着する。図2では便宜上、透過側流路材4の上側と下側とで接着部7を分けて描いているが、実際は、図5に示すように、透過側流路材4の第2領域42に設けられた孔46を通じて、上下の接着部7は繋がっている。いわば、接着部7は、透過側流路材4の上下で一体的に形成されている。よって、透過側流路材4と接着部7との間が剥離しにくい、つまり透過側流路材4と分離膜2との間のリークが生じにくいという利点がある。
接着部7は、硬化した接着剤である。接着剤としては、反応系接着剤、溶液系接着剤(つまり乾燥接着剤)ホットメルトなど、硬化する前は液状であるものが用いられる。
2.製造工程
本実施形態に係る分離膜エレメントは、
(A)分離膜2の供給側の面の間に供給側流路材6を挟み込むことで、膜−供給側流路材ユニット30を作製する工程
(B)透過側流路材4と膜−供給側流路材ユニット30とを交互に重ねる工程、
(C)液状の接着剤を透過側流路材4の少なくとも一方の面と分離膜2との間に塗布する工程
(D)積層体11を集水管5の周囲に巻囲する工程
(E)接着剤を硬化させることで、接着部を形成する工程
を含む方法によって製造可能である。
本実施形態に係る分離膜エレメントは、
(A)分離膜2の供給側の面の間に供給側流路材6を挟み込むことで、膜−供給側流路材ユニット30を作製する工程
(B)透過側流路材4と膜−供給側流路材ユニット30とを交互に重ねる工程、
(C)液状の接着剤を透過側流路材4の少なくとも一方の面と分離膜2との間に塗布する工程
(D)積層体11を集水管5の周囲に巻囲する工程
(E)接着剤を硬化させることで、接着部を形成する工程
を含む方法によって製造可能である。
図6Aに示すように、工程Aでは、分離膜2を折り畳むか、2枚の分離膜2を貼り合わせることで、集水管5に近い端部が封止された、2枚一組の分離膜対を作製する。供給側流路材6を分離膜2に重ねてから折り畳みまたは貼り合わせを行ってもよいし、分離膜対を作製してから供給側流路材6を分離膜2間に挿入してもよい。
図6Aでは、説明の便宜上、分離膜2の折り目部分がマチを有するように描かれているが、実際には、分離膜2はマチのない二つ折りになっている。
図中で、分離膜2の長さをL0として表し、折り目を境に分けられた分離膜の2つの領域のうち、積層体11において上になる方の領域(上領域)の長さをL2とし、下になる領域(下領域)の長さをL1として、図に示す。折り目の位置は変更可能である。つまり、L1=L2であっても、L1<L2であっても、L1>L2であってもよい。本実施形態では、L1<L2となっている。
後述するように、本実施形態では、膜−供給側流路材ユニット30は、その下の膜−供給側流路材ユニット30よりも集水管5から積層ピッチP2だけ遠ざかるようにずらして配置される。本実施形態のように、L1<L2である場合、積層ピッチP2は、(L2−L1)とほぼ同じ長さに設定されることが好ましい。これによって、膜の長さを有効に分離および接着に活用することができる。また、積層体11を巻囲することで、隣接する膜−供給側流路材ユニット30の位置にはさらにずれが生じる。このずれを考慮すれば、ユニット30の積層ピッチP2を、(L2−L1)より小さくすることができる。ただし、エレメントの構造によっては、P2を(L2−L1)よりも大きくすることも可能であり、これらの寸法は適宜変更することが可能である。
図6C、図6Dに示すように、工程Bでは、こうして作製された膜−供給側流路材ユニット30と透過側流路材4とを重ねることで、分離膜2の透過側の面の間に透過側流路材4を挿入しながら、積層体11を形成する。
工程Cでは、液状の接着剤71を膜−供給側流路材ユニット30の上面に塗布するか、膜−供給側流路材ユニット30に重ねた透過側流路材4の上から塗布すればよい。つまり、透過側流路材4とその下の膜−供給側流路材ユニット30との間、または透過側流路材4とその上の膜−供給側流路材ユニット30との間の、いずれに接着剤71を塗布してもよい。ただし、接着剤71は、透過側流路材4の第2領域42に接触するように塗布される。
膜−供給側流路材ユニット30の上面に接着剤71を塗布し、そこに透過側流路材4を重ねる場合、第2領域42に接着剤71が浸透する。具体的には孔46を通って、接着剤71は、透過側流路材4の上に染み出し、さらに上に重ねられた膜−供給側流路材ユニット30の下面と透過側流路材4とを接着する。
逆に、透過側流路材4を膜−供給側流路材ユニット30に載せ、その透過側流路材4の上から接着剤71を塗布し、さらに上に膜−供給側流路材ユニット30を重ねる場合は、接着剤71は、その透過側流路材4と上の膜−供給側流路材ユニット30との間を接着すると共に、透過側流路材4に浸透して、その透過側流路材4と、その下の膜−供給側流路材ユニット30との間を接着する。
つまり、図6C、Dで透過側流路材4を挟んで分けて描かれている接着剤71は、実際には、透過側流路材4内部を通じて一体的に繋がっている。
このように、エレメントの製造方法は、接着剤71を透過側流路材4に浸透させる工程を含む、ともいえる。接着剤71の浸透は、接着剤を塗布してから硬化するまで進行し得る。つまり、接着剤の塗布中、積層体11の構成要素を重ねる間および積層体11を巻囲する間、接着剤を透過側流路材へ浸透させる工程が行われることになる。接着剤71の粘度は、0.1Pa・s〜50Pa・sの範囲であることで、透過側流路材4に浸透しやすい。
図7Aには、膜−供給側流路材ユニット30の上面に塗布装置700によって接着剤71を塗布する様子を示す。また、図7Bには、膜−供給側流路材ユニット30に透過側流路材4を重ねた後、さらにその上に膜−供給側流路材ユニット30を重ねる様子を、接着剤71が透過側流路材4に下から浸透する様子(矢印)を併せて示す。
こうして、膜−供給側流路材ユニット30、透過側流路材4を交互に重ねて、その間に接着剤71を塗布することを繰り返すことで、積層体11が形成される。積層体11において、重ねられた膜−供給側流路材ユニット30の集水管5に近い端部(分離膜2の折り山)は、そのすぐ下に配置された膜−供給側流路材ユニット30の集水管5に近い端部よりも、集水管5から離される。上下に重なった膜−供給側流路材ユニット30の端部の水平方向における距離を、積層ピッチとよび、符号「P2」を付す。積層ピッチP2は、0.5mm〜100mmの範囲であることが好ましい。この積層ピッチP2は、完成したエレメント内でも維持される。
その後、図6Dに示すように、工程Dによって集水管5の周囲に積層体11が巻囲される。巻囲時の集水管5の回転方向を図中にSで示す。
積層体11の形成時に、あるいは巻囲時に、接着剤71は、塗布されたときよりも、透過側流路材4の厚み方向および平面方向に広がる。
また、積層体11最上部の膜−供給側流路材ユニット(説明の便宜上、特に符号“30a”を付して区別する)が、接着剤(説明の便宜上、特に符号“71a”を付して区別する)を介して、積層体11の最下の膜−供給側流路材ユニット(説明の便宜上、特に符号“30b”を付して区別する)のさらに下に配置された透過側流路材(説明の便宜上、特に符号“4b”を付して区別する)と重なることで、最上部の膜−供給側流路材ユニット30aと最下部の膜−供給側流路材ユニット30bとの間も、接着される。
最上部の膜−供給側流路材ユニット30aおよび接着剤71aとしては、他の層の膜−供給側流路材ユニット30および接着剤71とそれぞれ同じ構成が適用可能であり、最下部の膜−供給側流路材ユニット30bおよび透過側流路材4bとしては、他の透過側流路材4と同構成の部材が適用される。
工程Eにより、接着剤71(71aを含む)が硬化して、接着部70となることで、隣接する全ての膜−供給側流路材ユニットの間が封止される。
なお、積層体11の最下に配置された透過側流路材4bが、他の透過側流路材4よりも長いことで、巻囲時に、まず集水管5の周囲に透過側流路材4が巻き付き、その後に分離膜2が巻き付く。こうして、集水管5の周囲に、透過側流路材4bによって流路が確保される。
なお、エレメントの製造方法は、透過側流路材4が突起部45を有する時、基材44に突起部45を作製する工程をさらに含んでいてもよい。具体的にはこの工程は、以下のステップ:
(i)基材の片面または両面に凹凸を付すことで、流路材を形成するステップ
(ii)基材に貫通孔(開孔部)を設けるステップ
を備える。
(i)基材の片面または両面に凹凸を付すことで、流路材を形成するステップ
(ii)基材に貫通孔(開孔部)を設けるステップ
を備える。
凹凸を付す、とは、熱可塑性樹脂で形成された基材を、金型を用いて、加熱賦型すること、または基材上にホットメルト等で突起を固着せしめることで実現可能である。また、基材に溝を掘ることで、凹凸を付すこともできる。ホットメルトで突起を形成する場合は、具体的には、溶融した樹脂を口金から基材上に吐出し、この樹脂を基材の上で硬化させればよい。この場合、突起としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどが適用される。
また、孔形成には、レーザー加工または機械加工など、公知の加工方法を適用することができる。ステップ(ii)は、ステップ(i)の前でも後でもよいし、並行して行ってもよい。いずれにしても、図4における突起部45を外して、または突起部45が設けられる予定の位置を外して孔を形成してもよいし、突起部45がある無しにかかわらず、孔を形成することもできる。
なお、上記ステップ(ii)は、第2領域に高い接着剤浸透性を与えるための手段の一例であり、これに代えて、接着剤浸透性が得られる他のプロセスを適用してもよい。
2.第2実施形態
本実施形態のエレメントは、流路材として、透過側流路材4に代えて、図8に示す透過側流路材402を備える以外は、第1実施形態と同様の構成を備える。第1実施形態ですでに説明したものと同様の機能を有する部材については、同符号を付してその説明を省略することがある。
本実施形態のエレメントは、流路材として、透過側流路材4に代えて、図8に示す透過側流路材402を備える以外は、第1実施形態と同様の構成を備える。第1実施形態ですでに説明したものと同様の機能を有する部材については、同符号を付してその説明を省略することがある。
図8に示すように、本実施形態の透過側流路材402は、突起部45に代えて突起部452を備える以外は、第1実施形態の透過側流路材4と同様の構成を有する。突起部452の基材44の面方向における形状は、集水管5の長手方向に垂直な方向に延びる直線状である。複数の突起部452は、集水管5の長手方向において、間隔をおいて配置されている。
本形態では、突起部452は、第1領域41および第2領域42の両方、つまり透過側流路材402全体に渡って、設けられる。
突起部452の寸法は、集水管5の長手方向に垂直な方向つまり巻回方向において連続している以外は、高さ、幅、ピッチ等、第1実施形態の突起部45についての説明がそのまま適用される。
本実施形態のエレメントの製造方法としては、上述の第1実施形態の方法が適用される。
<実施例1>
幅WPが950mmであり,長さLPが800mmであり,厚みT1が0.03mmであるポリエチレンテレフタレート製フィルムの両面に、金型を用いた加熱賦形によって突起を設けた。突起は円柱型であり、直径が0.3mmであり,高さが0.2mmであり,縦横各配列ピッチPPが1mmであった。賦形後のフィルムに、集水管側に配置される1辺を除く3辺に沿って、フィルムの縁から70mm幅(M1)の領域に、孔径0.5mmの貫通孔を縦横各配列ピッチ2mmで設けた。こうして透過側流路材を得た。
幅WPが950mmであり,長さLPが800mmであり,厚みT1が0.03mmであるポリエチレンテレフタレート製フィルムの両面に、金型を用いた加熱賦形によって突起を設けた。突起は円柱型であり、直径が0.3mmであり,高さが0.2mmであり,縦横各配列ピッチPPが1mmであった。賦形後のフィルムに、集水管側に配置される1辺を除く3辺に沿って、フィルムの縁から70mm幅(M1)の領域に、孔径0.5mmの貫通孔を縦横各配列ピッチ2mmで設けた。こうして透過側流路材を得た。
分離機能層、多孔質層および支持体から構成される3層構造の逆浸透膜を分離膜として使用した。分離機能層はポリアミドで形成された層であり、多孔質層はポリスルホンで形成された層であり、基材はポリエステル不織布材である。
逆浸透膜の寸法は、幅が1000mmであり,長さL0が1700mmであり,厚みが0.14mmであった。これを折返し寸法L2が855mmとなるように折り畳み、中に供給側流路材としてネットを挟み込むことで、26枚の膜−供給側流路材ユニットを準備した。
膜−供給側流路材ユニットの上面のみに、2液混合エポキシ製で、12Pa・sの粘度を有する接着剤を塗布し、間に透過側流路材を挟んで、26枚の膜−供給側流路材ユニットを重ねた。積層ピッチ(P2)は4mmとした。
こうして得られた積層体を集水管に巻回し、直径8インチのスパイラル型の分離膜エレメントを得た。
この分離膜エレメントについて、試験運転を実施し、得られた透過水について脱塩率と造水量を測定したところ、脱塩率は98.2%、造水量は35.8m3/dayであり、良好な性能が得られた。
評価条件は以下のとおりである。原流体は濃度500mg/Lの食塩水であり、運転圧力は2.5Mpaであり、運転温度は25℃であり、回収率は15%であり、運転時間は100時間であった。
その後の10分間の運転で得られた透過水の体積から、分離膜の単位面積あたり、かつ1日あたりの透水量(立方メートル)を、造水量(m3/day)として表した。
また、脱塩率については、造水量の測定における10分間の運転で用いた供給水およびサンプリングした透過水について、TDS濃度を伝導率測定により求め、下記式からTDS除去率(脱塩率)を算出した。
脱塩率(%)=100×〔1−(透過水中のTDS濃度/供給水中のTDS濃度)〕
また、評価後の分離膜エレメントを分解してみると、透過側流路材とその上下に接する分離膜との間の接着状態は上下ともほぼ同様で、剥離は見られなかった。
脱塩率(%)=100×〔1−(透過水中のTDS濃度/供給水中のTDS濃度)〕
また、評価後の分離膜エレメントを分解してみると、透過側流路材とその上下に接する分離膜との間の接着状態は上下ともほぼ同様で、剥離は見られなかった。
このように本実施例では、エレメント製造時に、透過側流路材の上に接着剤を塗布する工程を行うことなく、安定した性能のエレメントを作製することができた。
<実施例2>
透過側流路材として、フィルムに代えて流体浸透性を有する不織布を用い、その上に突起をホットメルトで形成し、かつ突起の形状を変更した以外は、貫通孔を形成するなど、実施例1と同様にしてエレメントを作製し、評価を行った。
透過側流路材として、フィルムに代えて流体浸透性を有する不織布を用い、その上に突起をホットメルトで形成し、かつ突起の形状を変更した以外は、貫通孔を形成するなど、実施例1と同様にしてエレメントを作製し、評価を行った。
透過側流路材の基材として用いた不織布は、ポリエチレンテレフタレート製で、厚み0.05mmであり、目付け量30g/m2であった。その不織布上に、巻回方向に沿うように延びる直線状の複数の突起を設けた。突起の断面は略四角形状であり、高さは0.2mmであり,幅は0.3mmであり,配列ピッチは0.8mmであった。
結果として、脱塩率は98.1%であり、造水量は36.0m3/dayであり、良好な性能が得られた。
評価後の分離膜エレメントを分解してみると、実施例1と同様に、剥離は見られなかった。
<比較例1>
貫通孔を設けなかった以外は、実施例2と同様にして、8インチサイズのスパイラル型分離膜エレメントを製作した。
貫通孔を設けなかった以外は、実施例2と同様にして、8インチサイズのスパイラル型分離膜エレメントを製作した。
この分離膜エレメントについて、実施例1と同じ条件で評価した。結果、脱塩率は95.1%、造水量は36.6m3/dayであり、実施例2と比べて、脱塩率が低かった。
評価後のエレメントを分解したところ、透過側流路材の下面と膜−供給側流路材ユニットの上面との間は充分に接着できていいたが、透過側流路材の上面と膜−供給側流路材ユニットの下面との間には、接着剤不足によるシール不良があった。脱塩率が低下したのは、そこから原流体が透過側流路に入り込んでいるからであると考えられた。
<比較例2>
貫通孔を設けず、かつ膜−供給側流路材ユニット上への接着剤塗布量を1.5倍に増量した以外は、実施例2と同様にして、8インチサイズのスパイラル型分離膜エレメントを製作した。
貫通孔を設けず、かつ膜−供給側流路材ユニット上への接着剤塗布量を1.5倍に増量した以外は、実施例2と同様にして、8インチサイズのスパイラル型分離膜エレメントを製作した。
この分離膜エレメントを、実施例1と同じ条件で評価した。結果、脱塩率は98.1%、造水量は、31.5m3/dayであり、実施例2と比べて、造水量が少なかった。
評価後のエレメントを分解したところ、透過側流路材の下面と膜−供給側流路材ユニットの上面との接着部の接着幅が大きく、これにより、原流体を濾過するための分離膜の有効濾過面積が小さくなっていた。
本発明は、透過側流路材および分離膜エレメントに関し、特にかん水や海水の脱塩に好適に用いることができ、飲料水の浄水濾過用エレメントなどにも応用でき、スパイラル型の分離膜エレメントであれば、その応用範囲が、これらに限られるものではない。
1 分離膜エレメント
2 分離膜
3 供給側流路材
4 透過側流路材
4b 積層体の最下部に位置する透過側流路材
5 集水管
7 接着部
11 積層体
30 供給側流路材ユニット
30a 積層体の最上部に位置する供給側流路材ユニット
30b 積層体の最下部に位置する供給側流路材ユニット
44 透過側流路材の基材
45 透過側流路材の突起部
46 透過側流路材の貫通孔
53 端板
7 接着部
71 接着剤
71a 積層体の最上部の接着剤
L1,L2 折り畳み長さ
LP 透過側流路材の長さ
WP 透過側流路材の幅
M1 透過側流路材の第2領域の幅
PP 突起の配列ピッチ
P2 膜−供給側流路材ユニットの積層ピッチ
101 供給流体
102 濃縮流体
103 透過流体
402 透過側流路材
452 透過側流路材の突起部
700 塗布装置
2 分離膜
3 供給側流路材
4 透過側流路材
4b 積層体の最下部に位置する透過側流路材
5 集水管
7 接着部
11 積層体
30 供給側流路材ユニット
30a 積層体の最上部に位置する供給側流路材ユニット
30b 積層体の最下部に位置する供給側流路材ユニット
44 透過側流路材の基材
45 透過側流路材の突起部
46 透過側流路材の貫通孔
53 端板
7 接着部
71 接着剤
71a 積層体の最上部の接着剤
L1,L2 折り畳み長さ
LP 透過側流路材の長さ
WP 透過側流路材の幅
M1 透過側流路材の第2領域の幅
PP 突起の配列ピッチ
P2 膜−供給側流路材ユニットの積層ピッチ
101 供給流体
102 濃縮流体
103 透過流体
402 透過側流路材
452 透過側流路材の突起部
700 塗布装置
Claims (6)
- 供給側の面と透過側の面とを有する分離膜と、前記透過側の面に挟まれるように配置される流路材と、を備え、前記分離膜によって原流体を透過流体と濃縮流体とに分離する分離膜エレメントであって、前記透過側流路材は、前記透過側流路材を挟む前記分離膜の透過側の面の両方に、接着剤により固定されており、前記透過側流路材は、第1領域と第2領域とを有し、前記第2領域は前記第1領域よりも前記接着剤が浸透しやすく、前記接着剤は、少なくとも前記第2領域に浸透し、かつ前記透過側流路材と前記透過側の面とを接着している、分離膜エレメント。
- 前記透過側流路材は、基材に突起を有する請求項1に記載の分離膜エレメント。
- 前記突起が、基材に固着している請求項2に記載の分離膜エレメント。
- 前記第2領域において前記透過側流路材は孔を備える請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜エレメント。
- 前記第2領域は、前記透過側流路材の端部に位置する請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜エレメント。
- 前記第1領域において、前記透過側流路材は、流体を透過させないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の分離膜エレメント。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2015017050 | 2015-01-30 | ||
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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EP3513868A4 (en) * | 2016-09-16 | 2020-05-06 | Nitto Denko Corporation | SPIRAL MEMBRANE ELEMENT |
-
2015
- 2015-10-30 JP JP2015214054A patent/JP2016144795A/ja active Pending
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EP3513868A4 (en) * | 2016-09-16 | 2020-05-06 | Nitto Denko Corporation | SPIRAL MEMBRANE ELEMENT |
US10987632B2 (en) | 2016-09-16 | 2021-04-27 | Nitto Denko Corporation | Spiral membrane element |
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