JP2016144430A - 細胞培養用冶具 - Google Patents
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Abstract
【課題】培養される細胞等に新鮮な培養液が供給され、当該細胞等の壊死を防止するとともに、当該細胞等により構成される管腔構造体を任意の長さで容易に作製可能な細胞培養用冶具を提供する。【解決手段】細胞を培養して管腔構造の立体構造体を作製するために用いられる細胞培養用冶具1は、平板状の基部20と、当該基部20から一体的に突出してなる複数の針部30とを有する、金属製の針状物部材10を、その厚さ方向に複数枚積層してなり、複数の針部30の頂部31が、細胞培養用冶具1の複数の針部30の頂部31から求められる、一軸に沿って湾曲する近似曲面上に実質的に位置している。【選択図】図1
Description
本発明は、培養対象である細胞塊等を穿刺するための針部を備え、当該針部に細胞塊等を穿刺した状態で当該細胞塊等を培養するために用いられる細胞培養用冶具に関する。
基部と、その基部から突出した複数の針部とを備え、複数の針部に細胞塊等を穿刺し、その状態で当該細胞塊等を培養するために用いられる細胞培養用冶具が知られている。かかる細胞培養用冶具の複数の針部のそれぞれに、複数の細胞塊を穿刺し、隣接する細胞塊同士を密着させた状態で培養することで、細胞塊等により構成される立体構造体を作製することができる。そのため、当該細胞培養用冶具は、再生医療の分野等での適用が期待されている。
このような細胞培養用冶具として、従来、細胞塊を任意の空間に配置するための支持体であって、基板と、細胞塊を貫通させるための複数の針状体とを備える支持体が提案されている(特許文献1参照)。この支持体においては、複数の針状体が、上面視縦方向及び横方向のそれぞれに、所定のピッチで並列しており、各針状体の先端に位置する頂部は、当該針状体の高さ方向において同一高さに位置している。
特許文献1に開示された支持体を用いて、血管、リンパ管等の管腔構造を有する立体構造体を作製するためには、例えば、作製予定の立体構造体の軸方向が針状体の長手方向と平行になるように、複数の針状体に細胞塊を穿刺して培養する方法、作製予定の立体構造体の軸方向が針状体の長手方向と直交するように、複数の針状体に細胞塊を穿刺して培養する方法等が採用され得る。
しかしながら、前者の方法では、作製可能な立体構造体の軸方向の長さが、針状体の長さに依存してしまうため、針状体の長さを超える長さの立体構造体を作製することができないという問題がある。そのような長さの立体構造体を作製するために、針状体を長くすると、針状体の強度低下等を招きかねない。
また、両者の方法とも、針状体のピッチ、培養液の粘度等にもよるものの、針状体の下方に位置する細胞塊に新鮮な培養液が供給され難く、当該細胞塊が壊死しやすいという問題がある。
このような実情に鑑み、本発明は、培養される細胞等に新鮮な培養液が供給され、当該細胞等の壊死を防止するとともに、当該細胞等により構成される管腔構造の立体構造体を任意の長さで容易に作製可能な細胞培養用冶具を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、細胞を培養して管腔構造の立体構造体を作製するために用いられる細胞培養用冶具であって、前記細胞培養用冶具は、平板状の基部と、当該基部から一体的に突出してなる複数の針部とを有する、金属製の針状物部材を、その厚さ方向に複数積層してなり、前記細胞培養用冶具の前記複数の針部の頂部は、前記細胞培養用冶具の前記複数の針部の頂部から求められる、一軸に沿って湾曲する近似曲面上に実質的に位置していることを特徴とする細胞培養用冶具を提供する(発明1)。
上記発明(発明1)によれば、複数の針部の頂部が、それらの頂部から求められる一軸に沿って湾曲する近似曲面上に実質的に位置していることで、当該針部の頂部近傍に細胞塊等を穿刺して培養処理を施すことで、管腔構造の壁面の一部を構成する湾曲面を有する立体構造体を作製することができる。また、当該立体構造体を作製するにあたり、複数の針部の頂部の近傍に細胞塊等を穿刺して培養することで、培養処理中にすべての細胞塊等に新鮮な培養液が供給されるため、当該細胞塊等の壊死を防止することができる。
本発明において「複数の針部の頂部が、複数の針部の頂部から求められる、一軸に沿って湾曲する近似曲面上に実質的に位置している」とは、複数の針部の頂部から求められる近似曲面から各針部の頂部までの長さ(針部の長手方向における長さ)が1mm以下であることを意味するものとする。なお、上記近似曲面は、2次元測定器(ニコン社製,NEXIV)等を用いて各針状物部材の各針部の頂部の座標を測定し、当該座標から最小二乗法により求められ得る。
上記発明(発明1)において、前記各針状物部材をその厚さ方向に沿って見たときに、前記各針状物部材の前記複数の針部の頂部は、前記各針状物部材の前記複数の針部の頂部から求められる近似曲線上に実質的に位置していてもよいし(発明2)、前記複数の針状物部材のそれぞれをその厚さ方向に沿って見たときに、各針状物部材の複数の針部は実質的に同一の長さを有しており、前記細胞培養用冶具は、前記針状物部材が積層される方向の両端に位置する当該針状物部材の前記針部の長手方向の長さが最も長く、前記積層方向の略中央に向かって、前記針部の長手方向の長さが漸減するように、複数の前記針状物部材が積層され、前記細胞培養用冶具の前記複数の針部の頂部は、前記複数の針部の頂部から求められる、前記針状物部材の積層方向に直交する方向の前記一軸に沿って湾曲する近似曲面上に実質的に位置していてもよい(発明3)。
本発明において「複数の針部の頂部が湾曲線上に実質的に位置する」とは、複数の針部の頂部から求められる近似曲線から各針部の頂部までの長さ(針部の長手方向における長さ)が、1mm以下であることを意味するものとする。なお、上記近似曲線は、2次元測定器(ニコン社製,NEXIV)を用いて針状物部材の各針部の頂部の座標を測定し、当該座標から最小二乗法により求められ得る。また、本発明において「実質的に同一長さ」とは、一の針状物部材が有する複数の針部の長さの算術平均値と各針部の長さとの差が、1mm以下であることを意味するものとする。
上記発明(発明1〜3)において、前記基部を下方に位置させ、前記針部の頂部を上方に位置させたときに、前記複数の針部の頂部が、凹状の前記湾曲面上に実質的に位置していてもよいし(発明4)、前記基部を下方に位置させ、前記針部の頂部を上方に位置させたときに、前記複数の針部の頂部が、凸状の前記湾曲面上に実質的に位置していてもよい(発明5)。
上記発明(発明1〜5)において、前記複数の針部により求められる近似曲面が、前記管腔構造の壁面の一部を構成する湾曲面と実質的に同一の曲率半径を有するのが好ましい(発明6)。
本発明によれば、培養される細胞等に新鮮な培養液が供給され、当該細胞等の壊死を防止するとともに、当該細胞等により構成される管腔構造体を任意の長さで容易に作製可能な細胞培養用冶具を提供することができる。
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施形態に係る細胞培養用冶具は、平板状の基部と、基部から一体的に突出してなる複数の針部とを有する金属製の針状物部材を、その厚さ方向に複数枚積層してなり、複数の針部の頂部が、管腔構造の壁面の一部を構成する実質的湾曲面を構成している。この複数の針部の頂部近傍に細胞塊等を穿刺し、その状態で培養することで、管腔構造の壁面の一部を構成する立体構造体を作製することができる。以下、本実施形態に係る細胞培養冶具の具体的態様について、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る細胞培養用冶具は、平板状の基部と、基部から一体的に突出してなる複数の針部とを有する金属製の針状物部材を、その厚さ方向に複数枚積層してなり、複数の針部の頂部が、管腔構造の壁面の一部を構成する実質的湾曲面を構成している。この複数の針部の頂部近傍に細胞塊等を穿刺し、その状態で培養することで、管腔構造の壁面の一部を構成する立体構造体を作製することができる。以下、本実施形態に係る細胞培養冶具の具体的態様について、図面を参照しつつ説明する。
〔第1の実施形態〕
図1(A)及び(B)は、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具の概略構成を示す斜視図であり、図2は、第1の実施形態における針状物部材の概略構成を示す側面図であり、図3は、第1の実施形態における針状物部材の針部の頂部近傍の概略構成を示す側面図である。
図1(A)及び(B)は、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具の概略構成を示す斜視図であり、図2は、第1の実施形態における針状物部材の概略構成を示す側面図であり、図3は、第1の実施形態における針状物部材の針部の頂部近傍の概略構成を示す側面図である。
図1(A)及び(B)に示すように、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1は、金属薄板をエッチング加工して形成された針状物部材10とスペーサ40とを、それらの厚さ方向に交互に複数積層した構成を有する。
図2に示すように、針状物部材10は、略長方形状の平板状の基部20と、基部20の一の長辺部21から、基部20の平面方向に一体的に突出形成された針部30とを有する。「一体的に突出形成された」とは、基部20と針部30とが同一材質により構成されており、かつ基部20と針部30とが一度も分離された状態で存在したことがない状態を意味する。
針状物部材10の加工前のベースとなる金属薄板としては、圧延加工により形成された金属薄板(例えば、ステンレス製薄板等)を用いるのが好ましい。
針状物部材10の加工前のベースとなる金属薄板として、圧延加工により形成された金属薄板が用いられる場合、基部20の一の長辺部21から突出する針30の長手方向は、金属薄板の圧延金属組織の配列方向に対して、実質的に直角方向(90°±15°の範囲)であるのが好ましい。ここで、圧延金属組織の配列方向とは、図2に示すように、圧延加工された金属薄板の金属組織を確認して認識される圧延方向Eと同一方向である。なお、圧延金属組織の圧延方向Eは、例えば、100倍以上の倍率(総合倍率)を有する金属顕微鏡等を用いて針状物部材10を観察することにより容易に確認され得る。
このようにして、圧延金属組織の配列方向(圧延方向E)に対して針部30の長手方向が実質的に直角方向であることで、針部30の長手方向の強度を向上させることができる。したがって、針部30の折れ、曲がり等の欠陥が生じ難くなる。
圧延加工とは、高温、常温、低温等の条件下で、金属素材を圧延機の回転ロールに通して、金属薄板等の板材を形成する手法である。圧延加工時に板材を引っ張る方向が、圧延方向Eに相当する。
基部20の長手方向の長さL20は、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1を用いて作製される、細胞等により構成される立体構造体の大きさ(管腔構造の直径)等により適宜設定され得るものであって、特に制限されるものではない。
第1の実施形態において、各針状物部材10の複数の針部30は、基部20の長手方向の一端部側及び他端部側のそれぞれに位置する2つの針部30aと、一端部側の2つの針部30aと他端部側の2つの針部30aとの間に位置する複数(図1及び図2に示す例においては9個)の針部30bとを含む。基部20の長手方向の一端部側に位置する2つの針部30a、及び他端部側に位置する2つの針部30aは、互いに実質的に同一の長さを有する。
なお、第1の実施形態においては、基部20の長手方向の一端部側及び他端部側のそれぞれに位置する、互いに実質的に同一の長さを有する針部30aが、一端部側及び他端部側に2個ずつ存在するが、このような態様に限定されるものではない。当該針部30aが、一端部側及び他端部側のそれぞれに3個以上存在していてもよいし、一端部側及び他端部側のいずれにも互いに実質的に同一の長さを有する針部30aが存在していなくてもよい。
針状物部材10の基部20を下方に、針部30を上方に位置させた側面視において、複数の針部30bは、それらの各頂部31により求められる近似曲線から各針部30bの頂部31までの長さ(針部30bの長手方向における長さ)が、1mm以下、好ましくは0.8mm以下となるように、基部20の一の長辺部21から突出形成されている。換言すると、複数の針部30bの各頂部31は、近似曲線CL上に実質的に位置している。したがって、複数の針状物部材10が厚さ方向に積層されてなる、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1においては、当該細胞培養用冶具1の複数の針部30bから求められる、当該積層方向に平行な一軸に沿って湾曲する近似曲面上に、各針部30bの頂部31が実質的に位置することになる。なお、針状物部材10の基部20の長手方向の両端部側に位置する針部30aは、上記近似曲線CL上に実質的に位置していてもよいし、上記近似曲線CL上に実質的に位置していなくてもよい。
第1の実施形態において、複数の針部30bの各頂部31により求められる近似曲面が、細胞培養用冶具1を用いて作製され得る立体構造体の管腔構造の壁面の一部を構成する湾曲面と実質的に同一の曲率半径を有するのが好ましい。すなわち、各針状物部材10の側面視において、複数の針部30bの各頂部31により求められる近似曲線CLが、管腔構造の軸方向に直交する切断端面における当該管腔構造の壁面の一部を構成する湾曲線と実質的に同一の曲率半径を有するのが好ましい。
なお、第1の実施形態において、上記近似曲面及び近似曲線CLは、例えば、複数の針部30の頂部31の座標を、2次元測定器(ニコン社製,NEXIV)等を用いて測定し、当該座標から最小二乗法により求められ得る。
針部30の長手方向の長さNdは、当該針部30に穿刺して培養される細胞塊等の大きさ、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1を用いて作製される立体構造体の壁面(管腔構造の壁面)の厚さ等に応じ、例えば1〜20mm程度の範囲で適宜設定され得る。
針状物部材10の基部20の長手方向の両端部側に位置する針部30aの長手方向の長さNdと、針状物部材10の略中央に位置する針部30bの長手方向の長さNdとの差(針部30aの長手方向の長さNdと、針部30bのうち最短の針部30bの長手方向の長さNdとの差)は、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1を用いて作製される立体構造体の大きさ(管腔構造の直径、曲率半径等)に応じて適宜設定され得るものであり、例えば、1〜20mm程度の範囲内で適宜設定され得る。
針部30の頂部31の先端角度θは、例えば、10〜20°程度、好ましくは10〜15°程度である。先端角度θが上記範囲内であれば、細胞塊等に対する穿刺性を良好にすることができる。
針状物部材10において、隣接する針部30のピッチP11は、当該針部30に穿刺される細胞塊等の大きさに応じて適宜設定され得る。例えば、隣接する針部30のピッチP11は、針部30に穿刺される細胞塊等の直径に対して60〜90%程度に設定され得る。
なお、第1の実施形態において、針部30の表面にコーティング層が形成されていてもよい。コーティング層は、PVD法、CVD法等のドライプロセス、又はめっき法等のウェットプロセスによって形成され得る。PVD法で形成されるコーティング層としては、Ti、TiN、TiCN、TiAlN又はCrN等により構成されるコーティング層等が挙げられる。CVD法で形成されるコーティング層としては、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等により構成されるコーティング層等が挙げられる。めっき法で形成されるコーティング層としては、ニッケル、金、銀、パラジウム又はクロム等により構成されるコーティング層等が挙げられる。
第1の実施形態において、隣接する針状物部材10の間には、スペーサ40が介在している。スペーサ40を介在させることにより、針部30を、針状物部材10の厚さ方向に所定のピッチで並列させることができる。なお、スペーサ40は、針状物部材10と同様に、金属材料により構成され得る。
針状物部材10及びスペーサ40の積層方向において、隣接する針部30,30のピッチP12は、針部30の積層方向における厚さ及びスペーサ40の厚さT40により決定される。そして、針状物部材10の隣接する針部30のピッチP11と、細胞培養用冶具1の積層方向における隣接する針部30のピッチP12とは、同一であることが望ましい。そのため、針部30に穿刺される細胞塊等の直径に応じ、例えば、スペーサ40の厚さT40は、当該細胞塊等の直径に対して40〜70%程度に設定され得る。
第1の実施形態において、複数の針状物部材10には、基部20に厚さ方向に貫通する2つの貫通孔22,22が形成されている。また、スペーサ40には、針状物部材10の貫通孔22に対応する位置に貫通孔が形成されている。これにより、複数の針状部材10とスペーサ40とを厚さ方向に交互に積層してなる積層体において、その積層方向に連続する貫通孔が形成される。そして、上記積層体において、その積層方向に連続する貫通孔にネジ50が挿入される。これにより、当該積層体が固定される。
第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1において、各針状物部材10の基部20には、他の長辺部24に開口する略U字状の溝25が形成されている。また、スペーサ40にも、複数の針状物部材10とスペーサ40とを、それらの厚さ方向に交互に積層したときの各針状物部材10の溝25と対応する位置に略U字状の溝が形成されている。これにより、細胞培養用冶具1は、その厚さ方向に沿って形成されてなる溝25を有する。
上述したように、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1は、複数の針状物部材10とスペーサ40とを、それらの厚さ方向に交互に積層し、その積層方向に連続する貫通孔にネジ50が挿入されることで固定されている。このとき、ネジ50の頭部51が、細胞培養用冶具1における積層方向の一端に位置する針状物部材10の基部20から、その外側に突出する(図1(A)及び(B)参照)。
一方で、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1を用いて作製される管腔構造の立体構造体の軸方向の長さは、細胞培養用冶具1における針状物部材10及びスペーサ40の積層枚数と、それらの厚さとによって決定される。そのため、例えば、一の細胞培養用冶具1A(図1(A)参照)と、他の細胞培養用冶具1B(図1(B)参照)とを含む細胞培養用冶具セットを用いることで、1個の細胞培養用冶具1を用いて作製され得る立体構造体の軸方向の長さよりも長い立体構造体を作製することができる。
一の細胞培養用冶具1Aにおいては、当該一の細胞培養用冶具1Aと他の細胞培養用冶具1Bとを、それらの積層方向一端に位置する針状物部材10とスペーサ40とを当接させるように積層方向に並列させたときの他の細胞培養用冶具1Bのネジ50の頭部51に対応する位置に溝25が形成され、他の細胞培養用冶具1Bの溝25に対応する位置にネジ50の頭部51が位置する。一方、他の細胞培養用冶具1Bにおいては、上記と同様にしてそれらの細胞培養用冶具1A,1Bを並列させたときの一の細胞培養用冶具1Aのネジ50の頭部51に対応する位置に溝25が形成され、一の細胞培養用冶具1Aの溝25に対応する位置にネジ50の頭部51が位置する(図1(A)及び(B)参照)。
このような細胞培養用冶具セットは、図5(A)及び(B)に示すように、一の細胞培養用冶具1Aの積層方向一端に位置する針状物部材10と、他の細胞培養用冶具1Bの積層方向一端に位置するスペーサ40とを当接させるようにして、それらを積層方向に並列させるようにして用いられる。これにより、一の細胞培養用冶具1Aの積層方向の一端に位置する針状物部材10の基部20から突出するネジ50の頭部51が、並列させた他の細胞培養用冶具1Bの針状物部材10の基部20の溝25に収納される(図5(B)参照)。
また、上記細胞培養用冶具セットは、一の細胞培養用冶具1Aと他の細胞培養用冶具1Bとを少なくとも1個ずつ含むのが好ましい。このような細胞培養用冶具セットを用いることで、軸方向の長さが1個の細胞培養用冶具1の積層方向の長さの2倍を超える立体構造体であっても作製可能となる。この場合、一の細胞培養用冶具1Aと他の細胞培養用冶具1Bとが積層方向に交互に並列するように、3個以上の細胞培養用冶具1を並列させる。このとき、一の細胞培養用冶具1Aの積層方向の一端に位置する針状物部材10の基部20から突出するネジ50の頭部51が、並列させた他の細胞培養用冶具1Bの針状物部材10の基部20の溝25に収納される。当該他の細胞培養用冶具1Bのネジ50の頭部51は、別個の一の細胞培養用冶具1Aの溝部25に収納される(図5(C)参照)。
このように、細胞培養用冶具セットを用い、一の細胞培養用冶具1Aと他の細胞培養用冶具1Bとを積層方向に交互に並列させたときに、一の細胞培養用冶具1Aの一端側に位置する針状物部材10の針部30と、他の細胞培養用冶具1Bの一端側に位置する針状物部材10の針部30とのピッチP13が、各細胞培養用冶具1における積層方向の針部30のピッチP12と同一となる(図5(B)参照)。よって、複数の細胞培養用冶具1を積層方向に並列させても、全体として積層方向における針部30のピッチを同一にすることができる。
上述した構成を有する細胞培養用冶具1は、例えば、以下のようにして製造され得る。
図6〜7は、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1の針状物部材10を作製する工程を斜視図にて示す工程フロー図である。
図6〜7は、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1の針状物部材10を作製する工程を斜視図にて示す工程フロー図である。
図6(A)に示すように、圧延加工により形成された金属薄板11を準備する。金属薄板11は、予め脱脂洗浄処理しておくことが好ましい。次工程におけるフォトレジスト膜の密着性を向上させ、品質・仕上がりを向上させるためである。なお、金属薄板11の厚さT11は、50〜300μm程度とされる。
次に、図6(B)に示すように、金属薄板11の両平面11a,11bにフォトレジスト膜12,12を形成する。フォトレジスト膜12は、金属薄板11の両平面11a,11bに塗布形成されてもよいし、当該両平面11a,11bにフィルム状のフォトレジスト膜12が貼り付けられてもよい。フォトレジスト膜12は、ネガ型、ポジ型のいずれであってもよい。
フォトレジスト膜12がネガ型の場合、露光部分が現像液に対して不溶解性となり、現像後に露光部分が残る。フォトレジスト膜12がポジ型の場合、露光部分が現像液に対して溶解し、現像後に未露光部分が残る。図示例では、ネガ型の場合を示している。
続いて、フォトレジスト膜12,12の上に、露光用のパターンが形成されたパターンフィルム原版を配置し、露光処理を行い、現像処理を行うことによって、図7(A)に示すように、マスクパターン13が形成される。このとき、マスクパターン13のうち、作製される針状物部材10の針部30の頂部31に対応する部分が湾曲線CL上に実質的に位置するように、当該マスクパターン13が形成される。
そして、図7(B)に示すように、金属薄板11にエッチング処理を施し、基部20及び針部30を形成する。エッチング処理に用いられるエッチング液としては、金属薄板を構成する金属材料に応じて適宜選定され得る。
次に、エッチング処理後に残存しているマスクパターン13を除去し、洗浄・乾燥処理を経て、基部20と基部20の一の長辺部21から一体的に突出形成されてなる針部30とを有する針状物部材10(図2参照)を作製することができる。
上記エッチング処理としては、金属薄板の肉厚が極めて薄いものであれば、反応性気体やイオン、ラジカルを用いたドライエッチング処理を採用することもできる。
なお、上述のようにして形成された針状物部材10に対し、所望により研磨処理が行われてもよい。この研磨処理によって、針状物部材10の角部を丸めることができる。研磨処理としては、化学研磨処理及び/又は電解研磨処理が採用され得る。化学研磨処理及び電解研磨処理が行われる場合、それらの処理の順番は特に限定されるものではないが、電解研磨処理が行われた後に、化学研磨処理が行われることが好ましい。
化学研磨処理は、被研磨物をある特定の酸、アルカリ、塩類により構成された研磨液に浸漬し、その溶解作用により、被研磨物表面を平滑化、光沢化させる処理である。電解研磨処理は、被研磨物をプラス側にして電解液を介して直流電流を流し、金属表面を溶解させることで研磨効果を得る処理である。
化学研磨処理は、電解研磨処理に比べて、重量、厚みなどの変化量のコントロールが容易であり、減肉量(研磨量)の均一化が図りやすいというメリットがある。この一方で、電解研磨では、角部を集中的に研磨できるというメリットがある。
このような研磨処理の後に、さらに針部30の表面にコーティング層を形成する処理が行われてもよい。コーティング層は、PVD法、CVD法等のドライプロセス、又はめっき法等のウェットプロセスによって形成され得る。PVD法で形成されるコーティング層としては、Ti、TiN、TiCN、TiAlN又はCrN等により構成されるコーティング層等が挙げられる。CVD法で形成されるコーティング層としては、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等により構成されるコーティング層等が挙げられる。めっき法で形成されるコーティング層としては、ニッケル、金、銀、パラジウム又はクロム等により構成されるコーティング層等が挙げられる。
上述のようにして形成された針状物部材10と、スペーサ40とを交互に積層して積層体を形成し、当該積層体の積層方向に連続する貫通孔にネジ50を挿入して、当該積層体を固定することで、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1を製造することができる。
上述した第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1を用いて細胞塊等を培養し、管腔構造の立体構造体を作製する方法について説明する。図8(A)及び(B)は、管腔構造の立体構造体を作製する方法を概略的に示す、細胞培養用冶具1の積層方向から見た平面図である。
細胞培養用冶具1の針部30の頂部31近傍に細胞塊60が保持されるように、針部30に細胞塊60を穿刺する(図8(A)参照)。このとき、作製する立体構造体の壁面の厚さ、細胞塊60の大きさ(直径)等に応じ、1つの針部30に対し1個以上の細胞塊60を穿刺する。
なお、図8(A)においては、1つの針部30に対し2個の細胞塊60を穿刺する例が示されている。また、図8(A)においては、針状物部材10のすべての針部30に細胞塊60が穿刺されているが、一部の針部30に細胞塊60が穿刺されてもよい。この場合において、針部30に穿刺された細胞塊60同士を当接させ、一つの湾曲シート状の立体構造体が作製されるようにする必要がある。
第1の実施形態において、細胞塊60としては、一種類の細胞(単一種の同一組織又は器官等に由来する、機能的に同等の細胞)を含むもののみが用いられてもよいし、それぞれ異なる種類の細胞を含むものが用いられてもよい。例えば、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1を用いて、立体構造体としての血管を作製しようとする場合、細胞塊60としては、血管内皮細胞を含む細胞塊(血管内膜に相当)、平滑筋細胞を含む細胞塊(血管中膜に相当)及び結合組織を構成する細胞を含む細胞塊の3種類の細胞塊を用いることができる。
次に、細胞培養用冶具1の針部30の先端部近傍に保持された細胞塊60を培養する。培養方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、培養液を還流させながら培養する循環培養方式等を採用することができる。このようにして細胞塊を培養することで、隣接する細胞塊60同士が接着融合する。これにより、一軸方向に沿って湾曲する立体構造体61を作製することができる。
このようにして作製された立体構造体61を複数準備し、管腔構造を形成するように、複数の立体構造体61の端部62同士を接触させた状態でさらに培養する。上記のようにして作製された、一軸方向に沿って湾曲する立体構造体61は、最終的に作製される管腔構造を有する立体構造体の壁面の一部と実質的に同一の曲率を有するものである。したがって、複数の立体構造体61の端部62同士を接触させた状態で培養することで、管腔構造を有する立体構造体を作製することができる。
第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1においては、複数の針部30の頂部31が一軸に沿って湾曲する湾曲面上に実質的に位置し、好適には当該湾曲面(各頂部31により求められる近似曲面)が管腔構造の壁面の一部を構成する湾曲面の曲率半径と実質的に同一である。そのため、複数の細胞培養用冶具1を用いて作製された、一軸に沿って湾曲する立体構造体61の端部62同士を、細胞培養用冶具1に保持させたままの状態で接触させることができる。これにより、立体構造体61の湾曲形状が崩れることなく、管腔構造を有する立体構造体を容易に作製することができる。
上述したように、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1においては、複数の針部30の頂部31が一軸に沿って湾曲する湾曲面上に実質的に位置しているため、当該針部30の頂部31近傍に細胞塊60を穿刺して培養処理を施すことで、管腔構造の壁面の一部を構成する湾曲面と実質的に同一の湾曲面を有する立体構造体61を作製することができる。また、当該湾曲面を有する立体構造体61を複数組み合わせてさらに培養することで、管腔構造を有する立体構造体を容易に作製することができる。そして、針部30の頂部31近傍に細胞塊60が穿刺・保持されることで、当該細胞塊61に対して新鮮な培養液を供給し続けることができ、培養処理中に細胞塊60が壊死してしまうのを防止することができる。
さらに、第1の実施形態に係る細胞培養用冶具1は、金属材料のみにより構成され、樹脂材料のような有機物等を含まないため、培養の前処理として、オートクレーブ等により加熱殺菌処理を行った際に、当該有機物等により汚染されることがない。
〔第2の実施形態〕
図9は、第2の実施形態に係る細胞培養用冶具の概略構成を示す斜視図であり、図10は、第2の実施形態における針状物部材の概略構成を示す平面図であり、図11は、第2の実施形態における針状物部材の概略構成を示す部分拡大平面図である。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成を有する要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図9は、第2の実施形態に係る細胞培養用冶具の概略構成を示す斜視図であり、図10は、第2の実施形態における針状物部材の概略構成を示す平面図であり、図11は、第2の実施形態における針状物部材の概略構成を示す部分拡大平面図である。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成を有する要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第2の実施形態に係る細胞培養用冶具1’は、図9に示すように、金属薄板をエッチング加工して形成された針状物部材10’とスペーサ40とを、それらの厚さ方向に交互に複数積層した構成を有する。
第2の実施形態において、針状物部材10’は、略長方形状の平板状の基部20’と、基部20’の一の長辺部21から、基部20’の平面方向に一体的に突出形成された針部30とを有する。「一体的に突出形成された」とは、基部20’と針部30とが同一材質により構成されており、かつ基部20’と針部30とが一度も分離された状態で存在したことがない状態を意味する。
針状物部材10’の基部20’を下方に、針部30を上方に位置させた側面視において、針部30は、各頂部31が基部20’の長辺部21に平行な直線SL上に実質的に位置するように、すなわち、針状物部材10’に含まれる複数の針部30の長手方向の長さNdの算術平均値から各針部30の頂部31までの長さ(針部30の長手方向における長さ)が1mm以下、好ましくは0.8mm以下になるように、基部20’の一の長辺部21から突出形成されている。
第2の実施形態に係る細胞培養用冶具1’において、積層される複数の針状物部材10’のうち、積層方向の両端に位置する針状物部材10’の針部30の長手方向の長さNdが最も長く、積層方向の略中央に向かって、針部30の長手方向の長さNdが漸減する。なお、積層方向の両端に位置する針状物部材10’と、それらに隣接する針状物部材10’との針部30の長手方向の長さNdは、実質的に同一であってもよい。そして、細胞培養用冶具1’の各針部30の頂部31が、当該各頂部31により求められる、積層方向に直交する方向の一軸に沿って湾曲する近似曲面上に実質的に位置する。
第2の実施形態において、複数の針部30の各頂部31により求められる近似曲面が、細胞培養用冶具1’を用いて作製され得る立体構造体の管腔構造の壁面の一部を構成する湾曲面と実質的に同一の曲率半径を有するのが好ましい。すなわち、細胞培養用冶具1’の積層方向に直交する側面から見たときに、複数の針部30(積層方向に沿って並ぶ各針状物部材10’の針部30)の各頂部31により求められる近似曲線が、管腔構造の軸方向に直交する切断端面における当該管腔構造の壁面の一部を構成する湾曲線と実質的に同一の曲率半径を有するのが好ましい。
なお、第2の実施形態において、上記近似曲面及び近似曲線は、例えば、複数の針部30の頂部31の座標を、2次元測定器(ニコン社製,NEXIV)等を用いて測定し、当該座標から、最小二乗法により求められ得る。
基部20’の長手方向の長さは、特に限定されるものではなく、第2の実施形態に係る細胞培養用冶具1’を用いて作製される管腔構造の立体構造体の長さ(軸方向の長さ)に応じて適宜設定され得る。基部20’の長手方向の両端に位置する針部30の側面32から当該側面32に最も近い基部20’の長手方向端部26’までの長さL1は、隣接する針部30,30の間隔L2の半分であるのが好ましい。
第2の実施形態に係る細胞培養用冶具1’を用いて作製される管腔構造の立体構造体の軸方向の長さは、細胞培養用冶具1’における針状物部材10’の両端(基部20’の長手方向両端)に位置する針部30,30間の長さによって決定される。そのため、複数の細胞培養用冶具1をその積層方向に直交する方向に並列させることで、1個の細胞培養用冶具1を用いて作製され得る立体構造体の軸方向の長さよりも長い立体構造体を作製することができる。
この場合において、基部20’の長手方向の両端に位置する針部30の側面32から当該側面32に最も近い基部20’の長手方向端部26’までの長さL1が、隣接する針部30,30の間隔L2の半分であれば、他の細胞培養用冶具1’を積層方向に直交する方向に並列させたときに、全体として針部30のピッチを略同一にすることができる。
上述した第2の実施形態に係る細胞培養用冶具1’は、第1の実施形態と同様にして作製され得る。すなわち、まず、金属基板11の両平面11a,11bにマスクパターンを形成し、金属基板11にエッチング処理を施して、針状物部材10’を作製する。上記マスクパターンは、第1の実施形態とは異なり、針部30の頂部31に対応する部分が直線SL上に実質的に位置するように形成され得る。
そして、第2の実施形態においては、針部30の長手方向の長さNdの異なる針状物部材10’を複数作製し、それらを、積層方向の両端に位置する針部30の長手方向の長さNdが最も長く、積層方向の略中央に向かって、針部30の長手方向の長さNdが漸減するように、スペーサ40を針状物部材10’間に介在させながら積層して積層体を形成し、当該積層体の積層方向に連続する貫通孔にネジ50を挿入して、当該積層体を固定する。これにより、第2の実施形態に係る細胞培養用冶具1’を製造することができる。
上述した第2の実施形態に係る細胞培養用冶具1’を用いて細胞塊等を培養し、管腔構造の立体構造体を作製する方法としては、第1の実施形態と同様の方法を例示することができる。
すなわち、まず、細胞培養用冶具1’の針部30の頂部31近傍に細胞塊60が保持されるように、針部30に細胞塊60を穿刺し、細胞培養用冶具1’の針部30の頂部31近傍に保持された細胞塊60を培養する。これにより、細胞培養用冶具1’の積層方向に直交する一軸方向に沿って湾曲する立体構造体61を作製することができる。
次に、このようにして作製された立体構造体61を複数準備し、管腔構造を形成するように、複数の立体構造体61の端部62同士を接触させた状態でさらに培養する。これにより、管腔構造を有する立体構造体を作製することができる。
上述したように、第2の実施形態に係る細胞培養用冶具1’においては、複数の針部30の頂部31が、当該細胞培養用冶具1’の積層方向に直交する一軸に沿って湾曲する湾曲面上に実質的に位置しているため、当該針部30の頂部31近傍に細胞塊60を穿刺して培養処理を施すことで、管腔構造の壁面の一部を構成する湾曲面と実質的に同一の湾曲面を有する立体構造体61を作製することができる。また、当該湾曲面を有する立体構造体61を複数組み合わせてさらに培養することで、管腔構造を有する立体構造体を容易に作製することができる。そして、針部30の頂部31近傍に細胞塊60が穿刺・保持されることで、当該細胞塊61に対して新鮮な培養液を供給し続けることができ、培養処理中に細胞塊60が壊死してしまうのを防止することができる。
さらに、第2の実施形態に係る細胞培養用冶具1’は、金属材料のみにより構成され、樹脂材料のような有機物等を含まないため、培養の前処理として、オートクレーブ等により加熱殺菌処理を行った際に、当該有機物等により汚染されることがない。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
上記第1及び第2の実施形態においては、針状物部材10,10’とスペーサ40とが交互に積層されているが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、針状物部材10,10’において、針部30の厚さを基部20,20’よりも薄くし、スペーサ40を介在させることなく針状物部材10,10’が積層されていてもよい。この場合において、針部30と基部20,20’との厚さの差により、積層方向における隣接する針部30のピッチP12が規定される。そのため、針部30及び基部20,20’のそれぞれの厚さは、針部30に穿刺される細胞塊等の大きさ等に応じて適宜設定され得る。
上記第1及び第2の実施形態において、細胞培養用冶具1,1’は、針部30のピッチP11,P12と略同一のピッチで形成された開口部を有し、当該開口部に各針部30を挿入可能な金属板をさらに備えていてもよい。この金属板の開口部に各針部30を挿入し、基部20,20’側に当該金属板を配置した状態で、各針部30に細胞塊60を穿刺して培養し、一軸に沿って湾曲する湾曲面を有する立体構造体61を作製すれば、当該金属板を針部30の頂部31方向に移動させることで、作製された立体構造体61を細胞培養用冶具1,1’から容易に取り外すことができる。
この場合において、上記金属板は、細胞培養用冶具1,1’を構成する金属材料よりも低い反射率を有する金属材料により構成されているのが好ましい。第1及び第2の実施形態に係る細胞培養用冶具1,1’の使用時に、針部30の長手方向上方から光学的に針部30の位置を確認し、各針部30に細胞塊等を穿刺する場合、上記金属板が低反射率の金属材料により構成されていることで、針部30の位置をより容易に確認することができる。なお、上記金属板を構成する金属材料の反射率にかかわらず、当該金属板の少なくとも一方の面にポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート、フッ素樹脂等の樹脂層が形成されてなるものであってもよい。この樹脂層が形成されることで、上記反射率を調整することができるため、金属板を構成する金属材料の選択の幅を広げることができる。
以下、実施例等により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕細胞培養用冶具1の製造
原材料となる厚さ150μmのステンレス製金属薄板11を準備し、この金属薄板11の両平面11a,11bに、それぞれ、厚さ38μmのネガ型フォトレジストフィルム12を貼り付けた。
原材料となる厚さ150μmのステンレス製金属薄板11を準備し、この金属薄板11の両平面11a,11bに、それぞれ、厚さ38μmのネガ型フォトレジストフィルム12を貼り付けた。
次に、フォトレジストフィルム12の上に、露光用のパターンが形成されたパターンフィルム原版を配置し、露光・現像処理を行い、マスクパターン13を形成した。なお、マスクパターン13は、針部30の長手方向が金属薄板11の圧延方向Eに対して直角方向を向くように、かつ、針部30の頂部31に対応するマスクパターン13の部分が湾曲線CL上に実質的に位置するように形成された。また、金属薄板の圧延方向に沿って並列する26本の針部30(ピッチ=0.4mm)が形成されるように、マスクパターン13を形成した。
次いで、エッチング液としての塩化鉄(II)溶液を用いて、エッチング処理を行った後、残余のマスクパターン13を除去し、洗浄・乾燥することによって、図2に示す態様の針状物部材10を作製した。
上記針状物部材10を26個作製し、針状物部材10とスペーサ40とを交互に積層し、貫通孔にネジ50を挿入して固定して、図1に示す態様の細胞培養用冶具1を作製した。
〔試験例〕立体構造体の作製
線維芽細胞及び軟骨細胞を予め大量に培養しておき、10%FBS含有DMEM培地を用いて、96穴マイクロプレート(住友ベークライト社製,製品名:PrimeSurface(登録商標)MS-9096U)の各ウェルに、上記線維芽細胞及び軟骨細胞をそれぞれ12,500cells/wellの細胞密度で播種し、37℃、5%CO2の培養雰囲気下で2日間培養し、約2,700個の細胞塊を形成した。
線維芽細胞及び軟骨細胞を予め大量に培養しておき、10%FBS含有DMEM培地を用いて、96穴マイクロプレート(住友ベークライト社製,製品名:PrimeSurface(登録商標)MS-9096U)の各ウェルに、上記線維芽細胞及び軟骨細胞をそれぞれ12,500cells/wellの細胞密度で播種し、37℃、5%CO2の培養雰囲気下で2日間培養し、約2,700個の細胞塊を形成した。
次に、実施例1にて作製した細胞培養用冶具1を4つ用意し、各細胞培養用冶具1の針部30に上記細胞塊を1個ずつ(各細胞培養用冶具1において合計676個の細胞塊)穿刺して、細胞塊を湾曲シート状に配置した。湾曲シート状に配置された細胞塊を、培地(10%FBS含有DMEM培地)を還流させながら7日間培養した。これにより、隣接する細胞塊同士が接着融合してなり、一軸方向に沿って湾曲する立体構造体を作製することができた。
そして、2つの細胞培養治具1の針部30の頂部31が相互に向かい合うように対向させて、各細胞培養用冶具1の針部30に穿刺されている立体構造体の端部同士を接触させ、その状態で引き続き1週間培養することにより、立体構造体の端部同士を接着融合させることができた。最後に、細胞培養治具1を取り外すことにより、管腔構造を有する立体構造体を作製することができた。
本発明の細胞培養用冶具は、再生医療分野等において有用である。
1,1’…細胞培養用冶具
10,10’…針状物部材
20,20’…基部
30…針部
31…頂部
10,10’…針状物部材
20,20’…基部
30…針部
31…頂部
Claims (6)
- 細胞を培養して管腔構造の立体構造体を作製するために用いられる細胞培養用冶具であって、
前記細胞培養用冶具は、平板状の基部と、当該基部から一体的に突出してなる複数の針部とを有する、金属製の針状物部材を、その厚さ方向に複数積層してなり、
前記細胞培養用冶具の前記複数の針部の頂部は、前記細胞培養用冶具の前記複数の針部の頂部から求められる、一軸に沿って湾曲する近似曲面上に実質的に位置していることを特徴とする細胞培養用冶具。 - 前記各針状物部材をその厚さ方向に沿って見たときに、前記各針状物部材の前記複数の針部の頂部は、前記各針状物部材の前記複数の針部の頂部から求められる近似曲線上に実質的に位置していることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養用冶具。
- 前記複数の針状物部材のそれぞれをその厚さ方向に沿って見たときに、各針状物部材の複数の針部は実質的に同一の長さを有しており、
前記細胞培養用冶具は、前記針状物部材が積層される方向の両端に位置する当該針状物部材の前記針部の長手方向の長さが最も長く、前記積層方向の略中央に向かって、前記針部の長手方向の長さが漸減するように、複数の前記針状物部材が積層され、
前記細胞培養用冶具の前記複数の針部の頂部は、前記複数の針部の頂部から求められる、前記針状物部材の積層方向に直交する方向の前記一軸に沿って湾曲する近似曲面上に実質的に位置することを特徴とする請求項1に記載の細胞培養用冶具。 - 前記基部を下方に位置させ、前記針部の頂部を上方に位置させたときに、前記複数の針部の頂部が、凹状の前記湾曲面上に実質的に位置していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の細胞培養用冶具。
- 前記基部を下方に位置させ、前記針部の頂部を上方に位置させたときに、前記複数の針部の頂部が、凸状の前記湾曲面上に実質的に位置していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の細胞培養用冶具。
- 前記複数の針部により求められる近似曲面が、前記管腔構造の壁面の一部を構成する湾曲面と実質的に同一の曲率半径を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の細胞培養用冶具。
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
EP3940055A4 (en) * | 2019-03-15 | 2022-12-14 | Saga University | LIGHT STRUCTURE MANUFACTURING METHOD |
WO2023003046A1 (ja) * | 2021-07-20 | 2023-01-26 | 国立大学法人佐賀大学 | 培養システム |
-
2015
- 2015-02-09 JP JP2015023228A patent/JP2016144430A/ja active Pending
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