JP2016141666A - 新規アレルゲンおよびその使用 - Google Patents

新規アレルゲンおよびその使用 Download PDF

Info

Publication number
JP2016141666A
JP2016141666A JP2015020596A JP2015020596A JP2016141666A JP 2016141666 A JP2016141666 A JP 2016141666A JP 2015020596 A JP2015020596 A JP 2015020596A JP 2015020596 A JP2015020596 A JP 2015020596A JP 2016141666 A JP2016141666 A JP 2016141666A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
seq
polypeptide
amino acid
acid sequence
protein
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2015020596A
Other languages
English (en)
Inventor
一幸 曽川
Kazuyuki Sogawa
一幸 曽川
悠衣 柴田
Yui Shibata
悠衣 柴田
直樹 下条
Naoki Shimojo
直樹 下条
文夫 野村
Fumio Nomura
文夫 野村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Chiba University NUC
Azabu Veterinary Medical School
Original Assignee
Chiba University NUC
Azabu Veterinary Medical School
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Chiba University NUC, Azabu Veterinary Medical School filed Critical Chiba University NUC
Priority to JP2015020596A priority Critical patent/JP2016141666A/ja
Publication of JP2016141666A publication Critical patent/JP2016141666A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

【課題】卵由来の新規アレルゲンコンポーネントの同定、卵由来の新規アレルゲンを含む、卵アレルギー性疾患の予防薬、治療薬又は検査薬、及び、卵アレルギー性疾患の診断方法等の提供。【解決手段】以下の(a)または(b)のポリペプチド:(a)特定の配列で表されるアミノ酸からなるポリペプチド;(b)特定の配列で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチド。【選択図】なし

Description

本発明は、新規のアレルゲン、およびその利用に関する。より具体的には、本発明は、鳥類の卵由来の新規アレルゲン、およびその利用に関する。
アレルギー疾患の患者は、世界的にもその数が増加傾向にあり、特に、生きていく上で必要な栄養を供給する食物によるアレルギー患者数の増加は、食の多様化の進む先進国において、特に解決すべき重要課題である。
我が国も例外ではなく、食物アレルギー患者の割合は増加しており、厚生労働省の2008年の調査では、その有病率は乳児で約10%、3歳児で約5%、学童以降では、1.3〜2.6%、全年齢を通して1〜2%と推定されている。
食物の中でも、鶏卵などの卵によるアレルギーの発症頻度は高い。卵は、栄養価が高く良質なタンパク質を多く含み、タンパク質の供給源としては、有用な食材の一つである。卵によるアレルギーは、0〜3歳児くらいに多く、さらに年齢が進むと、他の食物がアレルゲンとして上位を占めるようになる。
乳児期に発症する卵によるアレルギーは、年齢と共に、症状が軽くなり自然に治癒する事も多い。しかし、その症状は、蕁麻疹などの他、アナフィラキシーショックなどの重篤な場合もあるため、できる限り早期に卵アレルギーを発症する可能性について、知っておくことが望ましい。
また、卵によるアレルギーは、乳児期に多いとはいえ、卵を使用した食品加工業などに携わる人においては、成人でも、卵を原因とするアレルギーを発症するケースがある。そのため、未だに知られていない卵のアレルゲンの同定は、他の食品由来のアレルゲンと同様に、必要かつ重要な課題となっている。
卵の主要アレルゲンとして、卵白中のOvalbumin (Gal d 2)、Ovomucoid (Gal d 1)、Ovotransferrin (Gal d 3)、Hen Egg Lysozyme (Gal d 4)、および卵黄中のSerum albumin (Gal d 5)、YGP42 (Gal d 6)などが知られている。卵アレルギーを発症するかどうかの診断は、特定のアレルゲンに特異的なIgEを検出する抗体検査によって行われるが、検出結果と臨床結果が合致しないことがしばしば生じており、適切なアレルゲンが選択されていない可能性が示唆される。
従って、未だ同定されていない卵のアレルゲンを特定し、アレルゲンの検査対象にすることで、より精度の高いアレルゲン診断を実現することが期待されている。
Yamauraら, Biochim Biopyhs Acta. 244:384-394, 1995 Nilsonら, J Agric Food Chame. 54:6881-3887, 2006 Jolivetら, J Agric Food Chame. 56:5871-5879, 2008
上記事情に鑑み、本発明者らは、卵由来の新規アレルゲンコンポーネント(アレルギー症状を引き起こす分子)の同定を行った。
すなわち、本発明は、卵由来の新規アレルゲンコンポーネントを同定し、提供することを目的とする。
さらに、本発明は、卵由来の新規アレルゲンを含む、卵アレルギー性疾患の予防薬、治療薬または検査薬、および、卵アレルギー性疾患の診断方法等を提供する。
発明者らは、鶏卵アレルギーの患者由来の血清を用いて、卵白および卵黄のタンパク質抽出液に対し、ウエスタンブロッティングを行ったところ、分子量約39kDaのタンパク質が血清と反応することを見出した。アミノ酸配列の解析の結果、この分子量約39kDaのタンパク質は、卵黄由来のVitellogenin-2の部分ペプチドである、YGP40であることが分かった。
これまでに、YGP40については、Vitellogenin-2の部分ペプチドであること(非特許文献1)、オイル/水の境界面に選択的に抽出される性質をもつこと(非特許文献2)、血漿に溶解性のタンパク質の構成要素である糖タンパク質として検出されること(非特許文献3)などが報告されているが、アレルゲンコンポーネントとしての性質を有することについては、明らかにされていなかった。
すなわち、卵黄由来のVitellogenin-2の部分ペプチドであるYGP40がアレルゲンコンポーネントであるとの知見は、発明者らにより、初めて見出されたことであり、この知見に基づいて、本発明は完成されるに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(6)である。
(1)以下の(a)または(b)のポリペプチド:
(a)配列番号1で表されるアミノ酸からなるポリペプチド;
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチド。
(2)以下の(a)または(b)に示すポリペプチドをコードする核酸:
(a)配列番号1に示されるアミノ酸からなるポリペプチド;
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチド。
(3)以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質からなるグループから選択される1または複数のポリペプチドまたはタンパク質を含む卵アレルギー性疾患の治療薬:
(a)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質;
(b)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドまたはタンパク質。
(4)以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質からなるグループから選択される1または複数のポリペプチドまたはタンパク質を含む卵アレルギー性疾患の診断キット:
(a)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質;
(b)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドまたはタンパク質。
(5)以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドに特異的に結合する抗体:
(a)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチド;
(b)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチド。
(6)以下の(1)および(2)の工程を含む卵アレルギーの発症または発症の可能性の有無を診断する方法:
(1)以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質と被験者由来の免疫グロブリンを含む生体試料とを反応させる工程、
(2)工程(1)の反応後、該生体試料中に(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質と結合するIgEを検出する工程、
(a)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質;
(b)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドまたはタンパク質。
本発明にかかるポリペプチドおよびタンパク質は、卵アレルギー患者のIgEと反応(または結合)するアレルゲンコンポーネントである。従って、本発明にかかるポリペプチドおよびタンパク質は、卵アレルギーの予防薬、治療薬または診断キット(または、診断薬、検査キット)として利用することができる。
図1は、Vitellogenin-2のアミノ酸配列における、YGP40のアミノ酸配列が存在する位置を示した図である。 図2は、YGP40のアミノ酸配列(配列番号2)のN末端から約30アミノ酸ずつ化学合成した10種類の合成ペプチドに対し、鶏卵アレルギー患者由来の血清を用いてドットブロット解析を行った結果を示す。 YPG40のN末端から30アミノ酸を10アミノ酸ずつずらして5種類のペプチド(ペプチド1-1, ペプチド1-2 ペプチド1-3, ペプチド1-4, ペプチド1-5)を合成し、鶏卵アレルギー患者由来の血清を用いてドットブロット解析を行い、YGP40のエピトープ領域を同定した結果である。
本発明の第1の実施形態は、以下の(a)または(b)のポリペプチドである。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸からなるポリペプチド;
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチド。
本実施形態は、卵黄由来のアレルギー活性を有する新規アレルギーコンポーネントとして同定したYGP40(配列番号2)のエピトープ領域を含むポリペプチド(配列番号1)に関するものである。ここで、「アレルゲン活性」とは、IgEと結合する能力のことであり、特に、IgEと結合して、即時型アレルギーの諸症状を惹起する能力のことである。
YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチドとは、配列番号1で表されるアミノ酸からなるポリペプチドのみならず、配列番号1で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドも含まれる。ここで、「実質的に同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド」とは、配列番号2で表されるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,最も好ましくは約99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドのことである。あるいは、配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドとは、配列番号1で表されるアミノ酸配列中の1または数個(好ましくは、1〜5個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドのことである。
上記アミノ酸の欠失、置換、挿入および付加は、ポリペプチドをコードする核酸に元々存在した変異であってもよく、また、該核酸を当該技術分野で公知の手法によって改変することによって新たに導入したものであってもよい。
本発明の実施形態には、配列番号1で表されるポリペプチドをコードする核酸も含まれる。配列番号1で表されるポリペプチドをコードする核酸の配列としては、例えば、配列番号4で表される配列などをあげることができるが、これに限定されるものではない。配列番号1で表されるポリペプチドをコードする核酸は、例えば、配列番号4で表される核酸配列を化学合成などの方法によって作製してもよく、または、当該ポリペプチドを構成する各アミノ酸に対応する塩基配列(コドン)に基づいて、ポリペプチド全長をコードする塩基配列情報を作成し、この情報に基づいて、化学合成などの方法によって作製することができる。あるいは、後述(第2の実施形態の説明の部分)の遺伝子工学的な手法によって作製してもよい。
本発明の第2の実施形態は、YGP40のエピトープ領域(IgEが結合する部分)を含むポリペプチド、YGP40タンパク質およびVitellogenin-2から選択される1または複数のポリペプチドまたはタンパク質の使用であって、これらのポリペプチドまたはタンパク質を含む卵アレルギー性疾患の診断キット(または、診断薬、検査キット)、または卵アレルギー性疾患の予防薬もしくは治療薬である。
本発明の第2の実施形態をより具体的に記載すると、以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質からなるグループから選択される1または複数のポリペプチドまたはタンパク質の使用であって、これらのポリペプチドまたはタンパク質を含む卵アレルギー性疾患の診断キット(または、診断薬、検査キット)、または、卵アレルギー性疾患の予防薬もしくは治療薬である。
(a)配列番号1、配列番号2または配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質;
(b)配列番号1、配列番号2または配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドまたはタンパク質。
ここで、卵とは、鳥類の卵など、通常、食物として摂取する機会のある卵のことで、特に、ニワトリ、ウズラなどの卵のことである。
配列番号2は、鶏卵の卵黄由来のYGP40タンパク質のアミノ酸配列である。発明者らは、YGP40が卵アレルギーの患者由来の血清由来のIgEと反応したことから、YGP40が卵アレルギーの原因となる新規なアレルゲンコンポーネントであると同定した。YGP40は、Vitellogenin-2(配列番号3;アミノ酸位置1〜15はシグナルペプチド)(Genbankアクセション番号;AAN22959.1)のアミノ酸位置1567〜1850に位置する部分ペプチドであることが知られている。従って、YGP40のエピトープ領域を含む配列番号1で表されるアミノ酸からなるポリペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸からなるYGP40および配列番号3で表されるアミノ酸からなるVitellogenin-2は、アレルゲンコンポーネントとして、様々な用途に使用することができる。
ここで、YGP40およびvitellogenin-2とは、配列番号2または配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質のみならず、配列番号2または配列番号3で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質も含まれる。ここで、配列番号2または配列番号3で表されるアミノ酸配列と「実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質」とは、各々、配列番号2または配列番号3で表わされるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,最も好ましくは約99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するタンパク質のことである。あるいは、配列番号2または配列番号3で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質とは、配列番号2または配列番号3で表わされるアミノ酸配列中の1または数個(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するタンパク質のことである。
上記アミノ酸の欠失、置換、挿入および付加は、タンパク質をコードする核酸に元々存在している変異であってもよく、また、当該核酸を当該技術分野で公知の手法によって改変することによって新たに導入したものであってもよい。また、上記アミノ酸欠失、置換、挿入、付加等は、エピトープ領域(配列番号2で示されるアミノ酸配列が存在する領域)以外の配列に含まれていることが望ましいが、エピトープ領域に含まれていてもアレルゲン活性を有する場合には、そのようなアミノ酸の欠失、置換、挿入、付加等であってもよい。
なお、本明細書中において、「タンパク質」および「ポリペプチド」なる用語は、厳密に区別されて使用されるものではなく、相互に互換性を有し、同一の対象を示す場合においても、いずれの用語も使用され得る。また、本発明の実施形態で使用されるタンパク質およびポリペプチドは、アミノ酸以外の置換基、例えば、糖鎖などが含まれていてもよく、Hisタグ、Mycタグ、Flagタグなどのタグペプチドが含まれていてもよい。
本発明の第1または第2の実施形態における、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質およびVitellogenin-2は、これらをコードする核酸を使用して、遺伝子工学的な手法によって作製してもよい。
YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質およびVitellogenin-2をコードする核酸としては、限定はしないが、例えば、各々、
(a)配列番号4、配列番号5および配列番号6で表される核酸配列からなる核酸(例えば、DNA)、ならびに、
(b)配列番号4、配列番号5および配列番号6で表わされる核酸配列からなる核酸と相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、該核酸がコードするポリペプチドまたはタンパク質が、アレルゲン活性を有する核酸を挙げることができる。
配列番号4、配列番号5および配列番号6で表わされる核酸配列からなる核酸と相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸としては、配列番号4、配列番号5および配列番号6で表わされる核酸配列と好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,最も好ましくは約99%の核酸配列相同性を有する配列からなる核酸等が挙げられる。
ここで、ストリンジェントな条件とは、当業者によって容易に決定されるハイブリダイゼーション条件のことで、一般的に、プローブ長、洗浄温度、および塩濃度に依存する経験的な実験条件である。通常、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。核酸同士のハイブリッドの形成は、相補鎖がその融点よりやや低い環境における再アニールする能力に依存する。
ストリンジェントな条件とは、具体的には、低ストリンジェントな条件として、例えば、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄段階において、37℃〜42℃の温度条件下、0.1×SSC(1倍濃度のSSC溶液の組成は、例えば、150mmol/L 塩化ナトリウム、15mmol/L クエン酸ナトリウム)、0.1%SDS溶液中で洗浄する条件などが挙げることができる。また、高ストリンジェントな条件として、例えば、洗浄段階において、60℃〜70℃、好ましくは65℃の温度条件下、5×SSC、0.1%SDS中で洗浄する条件などが挙げられる。ストリンジェントな条件をより高くすることにより、相同性の高い核酸を得ることができる。
YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質およびVitellogenin-2は、これらをコードする核酸は、鳥類、特にニワトリやウズラ由来のcDNAライブラリーを鋳型にして、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質およびVitellogenin-2をコードする核酸と特異的にアニールするプライマーを用いてPCR法等により取得することができる。あるいは、cDNAライブラリーから、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、イムノスクリーニング法などを用いて取得することもできる。得られた核酸断片が不完全長の場合(すなわち、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質およびVitellogenin-2の全長をコードする核酸の全長が得られなかった場合)は、得られた核酸断片をプローブとして、さらに、cNDAライブラリーを検索することで完全長cDNAを得ることが可能である。あるいは、該cDNAの存在が確認されたcDNAライブラリー等を鋳型として、5'RACE法と3'RACE法を行うことにより、該当する配列を有するcDNAの5'末端側の断片と3'末端側の断片を取得し、両断片を連結することにより、完全長cDNAを取得することもできる。
得られたcDNAは、常法により塩基配列を決定して確認をすることができる(例えば、マキサムギルバート法(Maxam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 74 56, 1977)、ジデオキシ法(Messing et al., Nucl. Acides. Res., 9 309 1981)等)。
なお、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチドをコードする核酸については、比較的短い核酸であることから、所望の核酸配列を化学的な手法により合成してもよい。
YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質およびVitellogenin-2は、遺伝子工学的手法により調製することができる。例えば、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質およびVitellogenin-2をコードする核酸を適当な発現ベクターに組込み、該発現ベクターを適当な宿主細胞に形質転換または形質導入し、これを適当な培地中で培養し、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質およびVitellogenin-2を発現させ、精製することで調製することができる。
ポリペプチドおよびタンパク質の発現用ベクターとしては、大腸菌を宿主とする場合に、例えば、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pCBD-C、pGEX(GEヘルスケアバイオサイエンス社)、pCold(TaKaRa社)などを挙げることができる。動物細胞を宿主とする場合に、例えば、pEGF-C、pEGF-N(クロンテック社)の他、アデノウイルスを介した遺伝子導入による蛋白質発現のためのpAdenoX(クロンテック社)やレトロウイルスを介した遺伝子導入による蛋白質発現のためのRetro-X(クロンテック社)なども使用することができる。昆虫細胞を宿主とする場合に、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(すべてInvitrogen社製)、pFastBac HT、pTrC(すべてライフテクノロジー社)、pET(Novagen社)などを使用することができる。また、酵母細胞を宿主とする場合には、例えば、pG-1、Yep13、pPICZ(ライフテクノロジー社)などを使用することができる。これらの発現ベクターは、複製開始点、選択マーカー、プロモーターを有しており、必要に応じて、エンハンサー、転写集結配列(ターミネーター)、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル等を有していてもよい。
用いられるプロモーターは、特に限定されるものではなく、用いる宿主細胞に対応して適切なプロモーターを使用すればよい。例えば、宿主が大腸菌である場合には、tacプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーターなどが、宿主が酵母である場合には、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーターなどが、宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが、宿主が動物細胞である場合は、SRαプロモーター、CMVプロモーター、CAGプロモーター、SV40プロモーター、などが使用可能である。
複製開始点としては、大腸菌用ベクターの場合、例えば、ColiE1、R因子、F因子由来のもの、酵母用ベクターの場合、例えば、2μmDNA、ARS1由来のもの、動物細胞用ベクターの場合、例えば、SV40、アデノウイルス由来のものなどを使用することができる。
選択マーカーとしては、大腸菌用ベクターの場合、例えば、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子など、酵母用ベクターの場合、例えば、Leu2、Trp1、Ura3遺伝子など、動物細胞用ベクターの場合、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子などを使用することができる。
YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質およびVitellogenin-2をコードする核酸の発現用ベクターへの組込みは、当業者において容易に選択可能な公知技術によって行うことができる。発現に用いるベクターは、1または複数の制限酵素切断部位を有していることが望ましく、この部位を利用して、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質またはVitellogenin-2をコードする核酸を発現用ベクターに組み込むことができる。また、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質またはVitellogenin-2をコードする核酸の他、精製に使用されるタグ配列(Hisタグ、HAタグなど)をコードする核酸配列をベクターに組み込んでもよい。特に、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチドを発現する場合には、当該ポリペプチドが短いことによってポリペプチドの発現または発現したポリペプチドの精製等を容易にする目的で、抗原性の弱い(IgEが結合しない)任意のペプチドをYGP40のエピトープ領域を含むポリペプチドに連結させた形態で発現を行ってもよい。
また、任意のベクターの位置に不必要な配列を付加することなく、クローニングする方法として、In-Fusionクローニング(TaKaRa社)法を挙げることができる。In-Fusionクローニング法は、市販のキットを購入することで、容易に実施することができる(TaKaRa社)。
ポリペプチドおよびタンパク質を発現させる宿主細胞としては、例えば、大腸菌、酵母、動物細胞などの中から選択することができる。
宿主細胞として大腸菌を用いる場合、例えば、Escherichia coli XL1-Blue、EscherichiacoliXL2-Blue、Escherichia coli DH1、Escherichia coliMC1000、Escherichia coli KY3276、Escherichia coliW1485、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichiacoli No.49、Escherichia coli W3110、Escherichia coliNY49、Escherichia coli BL21(DE3)、Escherichia coliBL21(DE3)pLysS、Escherichia coli HMS174(DE3)、Escherichia coliHMS174(DE3)pLysSなどの大腸菌株を使用することができる。
宿主細胞として酵母を用いる場合、例えば、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Trichosporon pullulans、Schwanniomycesalluvius などの酵母株を使用することができる。
宿主細胞として動物細胞を用いる場合、例えば、マウス・ミエローマ細胞であるSP2/0細胞、NSO細胞など、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、BHK細胞など、アフリカミドリザル腎臓細胞であるCOS-1細胞、COS-7細胞など、ヒトの細胞であるNamalwa細胞、ヒト白血病細胞であるBALL-1細胞、ヒト大腸癌細胞であるHCT-15細胞などを使用することができる。
宿主細胞として昆虫細胞を用いる場合、例えば、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHigh 5、BTI-TN-5B1-4(Invitrogen社)など、カイコ卵巣由来の培養細胞であるBombyxmori N4などを使用することができる。
タンパク質を発現させるための組換えベクターの宿主細胞への導入方法としては、当業者において実施可能な如何なる方法を選択してもよい。
例えば、大腸菌に組換えベクターを導入する場合、例えば、エレクトロポレーション法(Nucleic Acids Res., 16, 6127 1988)、カルシウムイオンを用いる方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 1972)、プロトプラスト法(Gene, 17, 107 1982))などが利用可能である。
また、酵母に組換えベクターを導入する場合、例えば、エレクトロポレーション法(Methods. Enzymol., 194, 182 1990)、スフェロプラスト法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 1929 1978)、酢酸リチウム法(J. Bacteriol., 153, 163 1983)などが利用可能である。
動物細胞に組換えベクターを導入する場合、例えば、エレクトロポレーション法(Cytotechnology, 3, 133 1990)、リポフェクション法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 1987)などが利用可能である。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えば、公知の文献等に記載の方法によって目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現させることができる(例えば、Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual, W. H. Freeman and Company, NewYork 1992; Bio/Technology, 6, 47 1988等)。具体的には、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、該組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現させることができる。
バキュロウイルスとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus) 等を用いることができる。組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への上記組換えベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リポフェクション法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 1987)などが利用可能である。
ポリペプチドおよびタンパク質を発現させるための宿主細胞を培養する培地は、該宿主細胞が栄養源として利用し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含み、形質転換体を効率良く培養し得る培地であれば、いかなるものであっても使用することができる。ここで、培地に含まれる炭素源としては、例えば、グルコース、フラクトース、スクロースなどの糖、または、エタノール、プロパノール等のアルコール類が使用可能である。また、窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸や有機酸のアンモニウム塩などの他、ペプトン、酵母エキス、カゼイン加水分解物、などを使用することができる。無機物塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムなどの塩を用いることができる。
ポリペプチドおよびタンパク質の発現用ベクターを形質転換または形質導入した宿主細胞は、振盪培養または攪拌培養など、宿主細胞に適した条件下で行うことが望ましい。培養温度も宿主細胞の生育条件に適した温度において行い、例えば、15〜40℃の間で、また、培養時間も数時間〜数日間の間で適宜選択することができる。また、動物細胞などを使用する場合は、5%程度のCO2の存在下において培養してもよい。
ポリペプチドおよびタンパク質を発現する形質転換体が大腸菌である場合、該細胞を培養する培地として、例えば、LB培地、M9培地などを使用することができる。プロモーターとして発現誘導性のプロモーターを用いた場合には、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを有する発現用ベクターで形質転換した大腸菌等を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを有する発現用ベクターで形質転換した大腸菌等を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
また、ポリペプチドおよびタンパク質を発現する形質転換体が酵母である場合、SD培地、YPD培地、YPAD培地、YPED培地などを使用することができる。
ポリペプチドおよびタンパク質を発現する形質転換体が動物細胞である場合、該細胞を培養する培地は、例えば、RPMI1640培地、Eagle’s MEM培地、DMEM培地などを使用してもよく、必要に応じて、適宜、FBSなどの血清等を添加してもよい。また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。昆虫細胞を宿主細胞とした場合、形質転換体を培養する培地としては、例えば、TNM-FH培地(PharMingen社)、Sf-900 II SFM培地(GibcoBRL社)などを使用することができる。
発現させたポリペプチドおよびタンパク質を培養菌体または培養細胞から抽出する際には、培養後、公知の方法で菌体を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離や濾過により、可溶性抽出液を取得する。得られた抽出液から、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて目的のポリペプチドおよびタンパク質を取得することができる。公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS-PAGE等の主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの電荷の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法(例えば、GSTタグと共に蛋白質を発現させた場合にはグルタチオンを担体に結合させた樹脂を、Hisタグと共に蛋白質を発現させた場合にはNi-NTA樹脂やCoベースの樹脂を、HAタグと共に蛋白質を発現させた場合には、抗HA抗体結合カラムなどを使用することができる)、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
本発明の第2の実施形態の卵アレルギー性疾患の診断キット等には、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質および/またはVitellogenin-2が含まれる。YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質および/またはVitellogenin-2と被験者由来の免疫グロブリンを含む生体試料とを接触させ、反応させた場合に、これらのポリペプチドまたはタンパク質とIgE(免疫グロブリンE)との反応が検出された場合には、当該被験者は卵アレルギー性疾患を発症しているか、あるいは、発症する可能性があると判断することができる。従って、本発明の実施形態である卵アレルギー性疾患の診断キットには、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質および/またはVitellogenin-2の他、これらのポリペプチドまたはタンパク質とIgEとの抗原抗体反応を検出するために必要な器具、試薬等が含まれる。本実施形態の診断キットには、例えば、限定はしないが、ELISA法やウエスタンブロッティング法を行うためのプレート、電気泳動用ゲル、ブロッティング用のメンブレンおよび試薬類(二次抗体、検出試薬など)、ラテックス凝集法を行うためのラテックス粒子および試薬類(二次抗体、検出試薬など)が含まれていてもよい。その他、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質および/またはVitellogenin-2とIgEとの結合性を定量するために、検量線を作成するために使用する、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質またはVitellogenin-2に対する抗体(IgEなど)が本発明の診断キットに含まれていてもよい。
また、本発明の診断キットには、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質またはVitellogenin-2が基板上に固定化された、プロテインチップなどが含まれていてもよい。ここで、基板とは、ポリペプチドやタンパク質を固定化するための支持体のことで、例えば、ビーズ(磁気ビーズ、ポリスチレンビーズなどが例示され、特に材質は限定されない)、板状あるいはフィルム状の固相体(ガラスプレート、マイクロタイタープレートなどが例示され、特に材質は限定されない)などが例示される。
これらの基板へのポリペプチドやタンパク質の固定化は、当業者であれば容易に実施することができる。
本発明の第2の実施形態には、YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質およびVitellogenin-2をアレルゲンコンポーネントとする卵アレルギー疾患の予防薬または治療薬が含まれる。
YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質および/またはVitellogenin-2がアレルゲンコンポーネントである卵アレルギー疾患患者に対し、これらのポリペプチドやタンパク質を減感作治療の目的で投与することで、当該アレルギー疾患を予防または治療することができる。
このような本発明の実施形態の予防薬または治療薬などの、医薬には、有効成分として
YGP40のエピトープ領域を含むポリペプチド、YGP40タンパク質およびVitellogenin-2、ならびに、これらの実質的に同一のポリペプチドまたはタンパク質が含まれる(以下、これらのポリペプチドおよびタンパク質を、「本発明にかかるアレルゲンコンポーネント」とする)。さらに、後述する、阻害因子(本発明にかかるアレルゲンコンポーネントとIgEとの結合を阻害する物質)を有効成分として含む医薬も本発明の実施形態に含まれる。
本発明にかかる医薬は、有効成分である本発明にかかるアレルゲンコンポーネントまたは、当該アレルゲンコンポーネントとIgEの結合を阻害する因子(以下、「本発明にかかる阻害因子」とする)を投与してもよいが、一般的には、これらの有効成分の他、1または2以上の製剤用添加物を含む医薬組成物の形態で投与することが望ましい。また、本発明にかかる医薬組成物には、その有効成分として、他の卵アレルギー性疾患の治療薬または予防薬等をさらに含んでもよい。
本発明にかかる医薬組成物の製造に用いられる製剤用添加物の種類、有効成分に対する製剤用添加物の割合、または医薬組成物の製造方法は、組成物の形態に応じて当業者が適宜選択することが可能である。製剤用添加物としては無機または有機物質、あるいは、固体または液体の物質を用いることができ、一般的には、有効成分重量に対して1重量%から90重量%の間で配合することができる。具体的には、その様な物質の例として乳糖、ブドウ糖、マンニット、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、蔗糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、イオン交換樹脂、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、トラガント、ベントナイト、ビーガム、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸グリセリンエステル、精製ラノリン、グリセロゼラチン、ポリソルベート、マクロゴール、植物油、ロウ、流動パラフィン、白色ワセリン、フルオロカーボン、非イオン性界面活性剤、プロピレングルコール、水等が挙げられる。
本発明にかかる医薬組成物が注射剤として製造される場合、その有効成分を、必要に応じて塩酸、水酸化ナトリウム、乳糖、乳酸、ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖などの等張化剤と共に注射用蒸留水に溶解し、無菌濾過してアンプルに充填するか、さらに、マンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチンなどを加えて真空凍結乾燥し、用事溶解型の注射剤としてもよい。また、有効成分にレチシン、ポリソルベート80 、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを加えて水中で乳化せしめ注射剤用乳剤とすることもできる。
本発明の他の実施形態には、本発明にかかる医薬または医薬組成物を、卵アレルギーを発症するおそれのある者、または卵アレルギー患者に投与して、本発明のアレルゲンコンポーネントを原因とするアレルギーの発症を抑える予防方法、あるいは、発症したアレルギーを治療する治療方法が含まれる。
本発明のその他の実施形態として、本発明にかかるアレルゲンコンポーネントのアレルゲン活性を阻害する阻害因子のスクリーニング方法を挙げることができる。具体的には、本発明のアレルゲンコンポーネントとIgEの結合を阻害する因子は、アレルゲン活性を阻害する因子の可能性があるため、本発明にかかるアレルゲンコンポーネントとIgEの結合を阻害することを基準として、アレルゲン活性の阻害因子のスクリーニングが可能である。
本発明にかかるスクリーニング方法には、例えば、本発明にかかるアレルゲンコンポーネントのみが存在する条件下における、当該アレルゲンコンポーネントとIgEの結合量を測定する工程、試験物質とアレルゲンコンポーネントが共存する条件下における、アレルゲンコンポーネントとIgEの結合量を測定する工程、両工程で測定された結合量を比較し、試験物質が共存する条件下における結合量が減少した場合には、アレルゲン活性を阻害する候補物質として判定する工程が含まれる。
本発明にかかるスクリーニング方法において、アレルゲンコンポーネントとIgEの結合量は、ELISA法(直接吸着法、サンドイッチ法、競合法など)によって容易に定量することができる。
なお、試験物質は、如何なるものであってもよく、ペプチド、タンパク質(抗体などを含む)、核酸、低分子化合物、高分子化合物などが例としてあげられる。
本発明のさらなる実施形態として、本発明にかかるアレルゲンコンポーネントに結合する抗体を挙げることができる。特に、好ましい実施形態は、本発明にかかるアレルゲンコンポーネントに結合するIgE、本発明にかかるアレルゲンコンポーネントとIgEとの結合を阻害する抗体などである。
本発明にかかる抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体などが含まれ、本発明にかかる抗体の断片には、FabまたはF(ab’)2などの抗体断片、または、単一鎖抗体などが含まれ、抗体の一部をなすポリペプチド(あるいは、ポリペプチド複合体)であって本発明にかかるアレルゲンコンポーネントと結合するものが含まれる。
ここで「モノクローナル」とは、実質的に均一な抗体の集団より得られた抗体の特性を示唆するものであって、抗体が特定の方法により製造されることを限定するものではない。モノクローナル抗体の製造方法としては、例えば、ハイブリドーマ法(Kohler and Milstein, Nature 256 495 1975)、または、組換え法(米国特許第4,816,567号)などを挙げることができる。また、本発明におけるモノクローナル抗体は、ファージ抗体ライブラリーから単離してもよい(Clackson et al., Nature 352 624-628 1991;Marks et al., J.Mol.Biol. 222 581-597 1991)。本発明におけるモノクローナル抗体は、特に、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種、または特定の抗体クラスもしくはサブクラス由来であり、本発明におけるモノクローナル抗体の重鎖および/または軽鎖の残りの部分が別の種、または別の抗体クラスもしくはサブクラス由来である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、抗体変異体であってもよく、抗体断片には、その断片が含まれる(米国特許第4,816,567号;Morrison et al., Proc.Natl.Acad.Sci. USA 81 6851-6855 1984)。
本発明にかかる抗体がモノクローナル抗体の場合、例えば、ハイブリドーマ法を用いて調製することができる。この方法には、例えば、以下に示す4つの工程が含まれる:(i)本発明にかかるアレルゲンコンポーネントを免疫動物に免疫する、(ii)モノクローナル抗体分泌性(または潜在的に分泌性)のリンパ球を回収する、(iii)リンパ球を不死化細胞に融合させる、(iv)所望のモノクローナル抗体を分泌する細胞を選択する。免疫動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスターなどが選択可能である。免疫後、宿主動物から得られたリンパ球はハイブリドーマ細胞を樹立するために、ポリエチレングリコールなどの融合剤を用いて不死化細胞株と融合する。融合細胞としては、例えば、ラットもしくはマウスのミエローマ細胞株が使用される。細胞融合を行った後、融合しなかったリンパ球および不死化細胞株の成長または生存を阻害する1または複数の基質を含む適切な培地中で細胞を生育させる。通常の技術では、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く親細胞を使用する。この場合、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンがHGPRT欠損細胞の成長を阻害し、ハイブリドーマの成長を許容する培地(HAT培地)に添加される。このようにして得られたハイブリドーマから、所望の抗体を産生するハイブリドーマを選択し、選択したハイブリドーマが生育する培地から、常法に従い、目的のモノクローナル抗体を取得することができる。
このようにして調製したハイブリドーマをインビトロ培養し、あるいは、マウス、ラット、モルモット、ハムスターなどの腹水中でインビボ培養し、目的の抗体を培養上清、あるいは、腹水から調製することができる。
本発明にかかる抗体がポリクローナル抗体の場合、例えば、哺乳類宿主動物に対して、免疫原およびアジュバントの混合物をインジェクトすることにより調製することができる。通常は、免疫原としての抗原および/またはアジュバントを宿主動物の皮下または腹腔内へ複数回インジェクトする。アジュバントの例には、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、モノホスホリル脂質A合成−トレハロースジコリノミコレート(MPL-TDM)、水酸化アルミニウムなどが含まれる。
本発明にかかる抗体には、遺伝子組換え抗体が含まれる。遺伝子組換え抗体としては、特に限定はされないが、例えば、キメラ抗体等が挙げられる。ここで、キメラ抗体とは、異なる動物種由来の可変領域と定常領域を連結した抗体、例えば、マウス由来抗体の可変領域を豚あるいはヒト由来の定常領域に連結した抗体などである。キメラを作製する場合、そのように連結した抗体が得られるよう、当業者に周知の遺伝子組換え技術によって容易に構築できる。
さらに、本発明の実施形態には、以下の(1)および(2)の工程を含む卵アレルギーの発症または発症の可能性の有無を診断する方法が含まれる。
(1)以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質と被験者由来の免疫グロブリンを含む生体試料とを反応させる工程、
(2)工程(1)の反応後、該生体試料中に(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質と結合するIgEを検出する工程、
(a)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質;
(b)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドまたはタンパク質。
ここで、被験者由来の免疫グロブリンを含む生体試料としては、特に限定しないが、例えば、被験者由来の血液などを挙げることができる。上記(1)の工程では、(a)または(b)に示されるペプチドまたはタンパク質と該生体試料を混合し、適当な温度(抗原抗体反応に適した温度)、適当な時間(例えば、数分〜数時間程度)反応を行わせる。その後、抗原抗体反応を検出する方法により、該ペプチドまたはタンパク質と結合する、生体試料由来のIgEの有無を検出すればよい。
以下に実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
1.血清検体の採取
千葉大学医学部附属病院小児科を受診した鶏卵アレルギー患者34名の血清検体を使用した。内訳は、男性20名、女性14名 年齢は3.4±2.6歳。特異的IgE値は卵白が13.2±18.4 UA/mL 卵黄が3.8±5.8 UA/mLであった。鶏卵アレルギーをもたない健常者2名(鶏卵特異的IgE 0.34 UA/mL以下)使用した。血清検体使用にあたり、すべての患者の保護者から同意を得たうえで行った。
2.卵白、卵黄のタンパク質の抽出
鶏卵を卵白と卵黄に分けた後、0.1mol/L Tris-HCl溶液(pH 8.6)で2倍希釈した。それぞれ遠心分離(21,130g, 30分)を行い、上清を分取し200mLずつ小分けし使用するまで-80℃で保存した。
3.ウエスタンブロッティングによるアレルゲンタンパク質の探索
2−メルカプトエタノール(2-ME, ナカライタクス)と×2 サンプルバッファー(0.25mol/L Tris-HCl (pH8.8) 5ml/ SDS 0.2g/ 80%Glycerol 2.5ml/ 10%BPB 50ul)を卵白および卵黄のタンパク抽出液に加え、97℃で3分加熱後、SDS-PAGEを行った。メタノールに浸した後、トランスバッファーに浸したPVDF膜をSDS-PAGEを行ったゲルと共にトランスファー装置(Criterion, Bio-Rad)にセットし、10V定電圧で一晩電気泳動を行った。その後、PVDF膜を取り出し、ブロッキングバッファー(0.3% スキムミルク in TBS-T buffer)に浸して一時間振蕩させた。一次抗体は患者血清を用い、ブロッキングバッファーで患者血清を20倍希釈した後、PVDF膜に浸し60分間振蕩させた。その後TBS-T bufferにPVDF膜を浸し5分間振蕩させ、TBS-T bufferを捨てた。この作業を3回繰り返した。2次抗体(ブロッキングバッファーでMouse anti-human IgE抗体を500倍希釈)をメンブレンに浸し60分間振蕩させた。その後TBS-T bufferにPVDF膜を浸し5分間振蕩させ、TBS-T bufferを捨てた。この作業を3回繰り返した。次に3次抗体(ブロッキングバッファーでRabbit ani-mouse immunoglobulin/HRPを1000倍希釈)で60分間振蕩させた後、その後TBS-T bufferにPVDF膜を浸し5分間振蕩させ、TBS-T bufferを捨てた。この作業を3回繰り返した。その後TBSに液を交換し、5分間振蕩させ、TBSを捨てた。検出はPierce Western Blotting Substrate(Thermo Scientific社)を用い、Light-Capture II(アトー社)でバンド検出を行った。
ウエスタンブロッティングの結果、卵白由来のタンパク質抽出液において、37.0kDa(6人の患者血清で反応)、44.7Da(4人の患者血清で反応)、82.1kDa(13人の患者血清で反応)の各バンドが患者血清と反応し、卵黄由来のタンパク質抽出液において、39.0kDa(7人の患者血清で反応)、42.6kDa(1人の患者血清で反応)、70.8Da(7人の患者血清で反応)、86.0kDa(7人の患者血清で反応)の各バンドが患者血清と反応した。この結果を表1に示す。
4.患者由来の血清と反応したタンパク質の解析
ウエスタンブロッティングにおいて患者由来の血清と反応したタンパク質のバンドをゲルから切り出し、1mLの50% Acetonitrile/50mM NH4HCO3溶液でCBB染色液を除去した後、50% Acetonitrile/50mM NH4HCO3溶液を捨て、1mLの蒸留水で洗った後、液を捨て、1mLの100% Acetonitrileを加え室温で15分静置した。5分毎に軽く撹拌した。100% Acetonitrileを捨て60分間speed vac.を行った後、氷浴下でTrypsin(10mL) [25ng/mL Trypsin/25mM NH4HCO3]を加え、45分間静置した。ゲルに吸収されなかった余分なTrypsinをアスピレーターで捨て、25mM NH4HCO3(10 mL)を加え、37℃で24時間混合を行った。混合後、溶液をシリコナイズしたチューブに移し氷浴させ酵素消化を停止させた。残ったゲルに5% ギ酸/50% acetonitrile(10 mL)を入れ室温で20分撹拌後、溶液をシリコナイズしたチューブに移し、酵素消化を停止させた後、speed vacを行い完全に乾燥させた。乾燥させたサンプルを50% Acetonitrile/0.1%TFA(5μL)で溶かし、0.1%TFA/H2O(55 mL)を加え、ボルテックスを行った。Stage Tipをアダプターにセットし、100% メタノール (100 mL)を入れ2,000gで2分遠心を行い、そこに100% Acetonitrile (100 mL)を入れ同じく2,000gで2分遠心をし、0.1% TFA/H2O (100 mL)を入れ遠心(2,000g, 2min)を行った。その後サンプルを全量加え1,000g, 2分遠心し、0.1%TFA/H2O (100 mL)を入れ、2,000g, 2分遠心した。なお、この操作を2回繰り返した後サンプル回収用チューブをセットした。セット後、80% acetonitrile/0.1%TFA (10 mL)を入れ2000g, 2分遠心した。この操作をもう一度繰り返した。使用するまで凍結乾燥にて保存し、その後LC-MS/MSにて同定を行った。
その結果、卵黄抽出液の39.0kDaのバンドが由来するタンパク質が、これまでアレルゲンとしての活性を有することが知られていなかった、Vitellogenin-2のアミノ酸配列の一部と一致することが明らかとなった(表2)。
Vitellogenin-2から、選択的スプライシングにより、Lipovitellin-1、Phosvitin、Lipovitellin-2、YGP40が生じ、今回の新規アレルゲンタンパク質は、YGP40であった(図1)。
5.YGP40のエピトープ解析
5−1.解析1
まず、YGP40のアミノ酸配列(配列番号2)のN末端から約30アミノ酸ずつ化学合成し、以下の10種類の合成ペプチドを作製した。
ペプチド1;AEAP SAVLENLKAR CSVSYNKIKT FNEVKF(配列番号7)
ペプチド2;NYSM PANCYHILVQ DCSSELKFLV MMK(配列番号8)
ペプチド3;SAGEATN LKAINIKIGS HEIDMHPVNG QVK(配列番号9)
ペプチド4;LLVDGAE SPTANISLIS AGASLWIHNE NQG(配列番号10)
ペプチド5;FALAAPG HGIDKLYFDG KTITIQVPLW MAGK(配列番号11)
ペプチド6;TCGICG KYDAECEQEY RMPNGYLAK(配列番号12)
ペプチド7;N AVSFHSWIL EEAPCRGACK LHR(配列番号13)
ペプチド8;SFVKLEK TVQLAGVDSK CYSTEPVLR(配列番号14)
ペプチド9;C AKGCSATKTT PVTVGFHCLP ADSANSLTDK(配列番号15)
ペプチド10;QMKYDQKSED MQDTVDAHTT CSCENEECST(配列番号16)
作製したペプチドに対し、患者血清を用いてドットブロットによる解析を行った。
メタノールに浸した後、トランスバッファーに浸したニトロセルロース膜をBIO-DOT APPARATUS(Bio-Rad)にセットし、各ウエルに10種類の合成ペプチドを1mgずつ吸着させた。ブロッキングバッファー(0.3% スキムミルク in TBS-T buffer)に浸して一時間振蕩させた。一次抗体は患者血清を用い、ブロッキングバッファーで患者血清(39.0kDaのバンドに反応した5名患者血清および卵アレルギーではない1名の被験者由来の血清を使用)を20倍希釈した後、PVDF膜に浸し60分間振蕩させた。その後TBS-T bufferにPVDF膜を浸し5分間振蕩させ、TBS-T bufferを捨てた。この作業を3回繰り返した。2次抗体(ブロッキングバッファーでMouse anti-human IgE抗体を500倍希釈)をメンブレンに浸し60分間振蕩させた。その後TBS-T bufferにPVDF膜を浸し5分間振蕩させ、TBS-T bufferを捨てた。この作業を3回繰り返した。次に3次抗体(ブロッキングバッファーでRabbit ani-mouse immunoglobulin/HRPを1000倍希釈)で60分間振蕩させた。その後TBS-T bufferにPVDF膜を浸し5分間振蕩させ、TBS-T bufferを捨てた。この作業を3回繰り返した。その後TBSに液を交換し、5分間振蕩後、液を捨てた。検出はPierce Western Blotting Substrate(Thermo Scientific社)を用い、Light-Capture II(アトー社)でバンド検出を行った。解析結果を図2に示す。
解析の結果、5名の患者由来の血清全てに反応したペプチド1(YGP40のN末端から30アミノ酸)にエピトープの主要な部分が含まれていると判断し、YGP40のN末端部分から10アミノ酸ずつずらして、以下の5種類のペプチドを作製した。
ペプチド1-1;AEAP SAVLENLKAR CSVSYNKIKT FNEVKF(配列番号17)
ペプチド1-2;LKAR CSVSYNKIKT FNEVKFNYSM PANCYH(配列番号1)
ペプチド1-3;KIKT FNEVKFNYSM PANCYHILVQ DCSSEL(配列番号18)
ペプチド1-4;NYSM PANCYHILVQ DCSSELKFLV MMKSAG(配列番号19)
ペプチド1-5;ILVQ DCSSELKFLV MMKSAGEATN LKAINI(配列番号20)
作製したペプチドに対し、患者血清を用いてドットブロットによるエピトープ解析を行った。
メタノールに浸した後、トランスバッファーに浸したニトロセルロース膜をBIO-DOT APPARATUS(Bio-Rad)にセットし、各ウエルに5種類の合成ペプチドを1mgずつ吸着させた。ブロッキングバッファー(0.3% スキムミルク in TBS-T buffer)に浸して一時間振蕩させた。一次抗体は患者血清を用い、ブロッキングバッファーで患者血清を20倍希釈した後、PVDF膜に浸し60分間振蕩させた。その後TBS-T bufferにPVDF膜を浸し5分間振蕩させ、TBS-T bufferを捨てた。この作業を3回繰り返した。2次抗体(ブロッキングバッファーでMouse anti-human IgE抗体を500倍希釈)をメンブレンに浸し60分間振蕩させた。その後TBS-T bufferにPVDF膜を浸し5分間振蕩させ、TBS-T bufferを捨てた。この作業を3回繰り返した。次に3次抗体(ブロッキングバッファーでRabbit anti-mouse immunoglobulin/HRPを1000倍希釈)で60分間振蕩させた後、その後TBS-T bufferにPVDF膜を浸し5分間振蕩させ、TBS-T bufferを捨てた。この作業を3回繰り返した。その後TBSに液を交換し、5分間振蕩後、液を捨てた。検出はPierce Western Blotting Substrate(Thermo Scientific社)を用い、Light-Capture II(アトー社)でバンド検出を行った。解析結果を図3に示す。
図3から分かる通り、ペプチド1-2(配列番号1)に対して、5名の患者由来の血清全てが反応し、他のペプチドには反応しなかった。従って、アレルゲンコンポーネントであるYGP40のエピトープは、配列番号1で表されるアミノ酸配列領域に存在すると考えられる。
本発明は、卵由来の新規なアレルゲンコンポーネントを提供する。本発明にかかるアレルゲンコンポーネントを使用することで、より精度の高い卵アレルギー疾患の診断が可能となり、また、当該アレルゲンコンポーネントを原因として発症するアレルギー疾患の治療または予防薬等の開発の進展が期待される。

Claims (6)

  1. 以下の(a)または(b)のポリペプチド:
    (a)配列番号1で表されるアミノ酸からなるポリペプチド;
    (b)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチド。
  2. 以下の(a)または(b)に示すポリペプチドをコードする核酸:
    (a)配列番号1に示されるアミノ酸からなるポリペプチド;
    (b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチド。
  3. 以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質からなるグループから選択される1または複数のポリペプチドまたはタンパク質を含む卵アレルギー性疾患の治療薬:
    (a)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質;
    (b)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドまたはタンパク質。
  4. 以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質からなるグループから選択される1または複数のポリペプチドまたはタンパク質を含む卵アレルギー性疾患の診断キット:
    (a)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質;
    (b)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドまたはタンパク質。
  5. 以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドに特異的に結合する抗体:
    (a)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチド;
    (b)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチド。
  6. 以下の(1)および(2)の工程を含む卵アレルギーの発症または発症の可能性の有無を診断する方法:
    (1)以下の(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質と被験者由来の免疫グロブリンを含む生体試料とを反応させる工程、
    (2)工程(1)の反応後、該生体試料中に(a)または(b)に示されるポリペプチドまたはタンパク質と結合するIgEを検出する工程、
    (a)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸からなるポリペプチドまたはタンパク質;
    (b)配列番号1、配列番号2および配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するポリペプチドまたはタンパク質。
JP2015020596A 2015-02-04 2015-02-04 新規アレルゲンおよびその使用 Pending JP2016141666A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015020596A JP2016141666A (ja) 2015-02-04 2015-02-04 新規アレルゲンおよびその使用

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015020596A JP2016141666A (ja) 2015-02-04 2015-02-04 新規アレルゲンおよびその使用

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2016141666A true JP2016141666A (ja) 2016-08-08

Family

ID=56569889

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015020596A Pending JP2016141666A (ja) 2015-02-04 2015-02-04 新規アレルゲンおよびその使用

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2016141666A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017209287A1 (ja) * 2016-06-02 2017-12-07 学校法人藤田学園 卵アレルギーの抗原

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017209287A1 (ja) * 2016-06-02 2017-12-07 学校法人藤田学園 卵アレルギーの抗原
JPWO2017209287A1 (ja) * 2016-06-02 2018-06-14 学校法人藤田学園 卵アレルギーの抗原
WO2018220889A1 (ja) * 2016-06-02 2018-12-06 学校法人藤田学園 アレルギーの抗原およびそのエピトープ
KR20190013767A (ko) * 2016-06-02 2019-02-11 호유 가부시키가이샤 알 알레르기의 항원
EP3467499A4 (en) * 2016-06-02 2020-02-19 Hoyu Co., Ltd. EIALLERGIEANTIGEN
JPWO2018220889A1 (ja) * 2016-06-02 2020-04-02 学校法人藤田学園 アレルギーの抗原およびそのエピトープ
CN111051336A (zh) * 2016-06-02 2020-04-21 朋友股份有限公司 变态反应的抗原及其表位
KR20210088753A (ko) * 2016-06-02 2021-07-14 호유 가부시키가이샤 알 알레르기의 항원
KR102277395B1 (ko) 2016-06-02 2021-07-15 호유 가부시키가이샤 알 알레르기의 항원
KR102423088B1 (ko) 2016-06-02 2022-07-21 호유 가부시키가이샤 알 알레르기의 항원

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5825386B2 (ja) 癌の検出方法
CN101985036B (zh) 淀粉样β(1-42)蛋白寡聚体、其衍生物及抗体、其制备方法和用途
CN104662043B (zh) 用于预防、治疗和诊断炎性病症的方法和化合物
KR20110000548A (ko) 신장암의 진단 또는 검출을 위한 조성물 및 방법
JPWO2014014082A1 (ja) 癌の検出方法
JP2018199675A5 (ja)
CN114019161B (zh) 抗camk2a自身抗体的试剂在制备诊断神经系统症状相关疾病的试剂盒中的应用
CN107001453A (zh) 结合人p53线性表位的抗体及其诊断应用
JP4314386B2 (ja) Bcl−2調節因子(BMF)配列及びアポトーシスの調節におけるそれらの使用
KR20130132430A (ko) 재생불량 빈혈과 관련된 모에신 단편
US10273278B2 (en) Epitope recognized by anti-interferon gamma autoantibodies in patients with disseminated mycobacterial infections and the application therefor
KR20130132431A (ko) 면역성 혈소판 감소증과 관련된 모에신 단편
CN1060310A (zh) 用于免疫诊断结核病的新的17KDa蛋白抗原及由其衍生的肽片段的制备方法
JP2016141666A (ja) 新規アレルゲンおよびその使用
US8278058B2 (en) Diagnostic composition and kit for renal cell carcinoma
EP3917571A1 (en) Cnx/erp57 inhibitor for use in the treatment or prevention of cancer
JP2009244125A (ja) 神経障害の検定のための組成物、キットおよび方法
JP2002503813A (ja) ヘパトームの診断のための方法および組成
JP2005514912A (ja) 乳がんに関連する核酸およびポリペプチドならびにその使用
JP2018188394A (ja) リン酸化Smurf2を認識する抗体、該抗体を含む癌の診断剤、並びに該抗体を使用した癌の治療剤のスクリーニング方法
JP2010085375A (ja) 細胞増殖を伴う糖尿病合併症の検査のための方法、組成物およびキット
JP5358808B2 (ja) 腫瘍マーカー、腫瘍診断キット、腫瘍マーカーの測定方法および腫瘍診断方法
JP5971966B2 (ja) Tdp−43の凝集体が蓄積する疾患の発症リスクを予測する方法、診断薬及び治療薬
JP7481733B2 (ja) 脳由来神経栄養因子に対するモノクローナル抗体およびその抗体を産生するハイブリドーマ
KR102307043B1 (ko) Wasf2 자가항체를 이용한 간세포암종 조기진단용 조성물