JP2016140802A - 中空糸型半透膜とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】製膜成分として、(A)スルホン化度が0.15〜0.20の酸型のスルホン化ポリエーテルスルホン15〜45質量%と(B)ポリエーテルスルホン85〜55質量%が溶媒に溶解された製膜溶液組成物から得られる中空糸型半透膜であって、
前記(A)成分のスルホン化ポリエーテルスルホンが下記の要件(a)および(b)を満たすものである、中空糸型半透膜。
(a)TG/DTA法による揮発分が5.0質量%以下
(b)TG/DTA法による残留分が1.0質量%以下
【選択図】なし
Description
特許文献1には、疎水性の芳香族スルホンポリマーと親水性ポリマーからなる限外濾過のための親水性の一体型非対称半透性中空繊維膜の発明が記載されている(請求項1)。
この中空繊維膜は、膜の内側表面に接して開放気孔性の分離層を有し、前記分離層に接して外側表面の方向に非対称のスポンジ状の細孔構造を有し、フィンガーポアがない支持層を有し、さらに前記支持層に接して外側方向に外部層を有している(請求項1)。
疎水性の芳香族スルホンポリマーは、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンが好ましいことが記載されており(段落番号0035)、親水性ポリマーはポリビニルピロリドンなどが例示されており、実施例では、ポリエーテルスルホンとポリビニルピロリドンの併用例のみが記載されている。
また、図1、図2の膜断面の走査型電子顕微鏡写真からは、内側の開放気孔性の分離層と外側のスポンジ層は、内側の開放気孔性の分離層の密度が小さく、外側のスポンジ層の密度が大きいことが確認できる。
前記(A)成分のスルホン化ポリエーテルスルホンが下記の要件(a)および(b)を満たすものである、中空糸型半透膜を提供する。
(a)TG/DTA法による揮発分が5.0質量%以下
(b)TG/DTA法による残留分が1.0質量%以下
前記製膜溶液組成物を脱泡後、紡糸して中空糸を得る工程と、
紡糸した中空糸を乾燥する工程を有しているものであり、
前記製膜溶液組成物を脱泡後、紡糸する工程において、内部凝固液として、水、ジエチレングリコールおよびジエチレングリコールモノメチルエーテルの混合溶液を使用する、中空糸膜の製造方法を提供する。
<製膜溶液組成物>
本発明の中空糸型半透膜は、製膜成分として、(A)スルホン化度が0.10〜0.20のスルホン化ポリエーテルスルホン20〜40質量%と(B)ポリエーテルスルホン80〜60質量%が溶媒に溶解された製膜溶液組成物から得られるものである。
(A)スルホン化度が0.10〜0.20のスルホン化ポリエーテルスルホン3〜15質量%
(B)ポリエーテルスルホン10〜30質量%
(C)ポリエチレングリコール10〜30質量%、
(D)残部割合の溶媒を含み、
(A)成分と(B)成分の合計量中の含有割合が、(A)成分15〜45質量%、(B)成分85〜55質量%のもの。
スルホン化度が前記範囲内であると、特に河川水および海水の濾過処理における透過流束を高めることができる。
スルホン化ポリエーテルスルホンは、スルホ基が酸型(−SO3H)のものであり、スルホ基が塩型(−SO3Naなど)のものは含まれない。
(a)TG/DTA法による揮発分が5.0質量%以下、好ましくは4.0質量%以下。
(b)TG/DTA法による残留分が1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下。
要件(a)を満たすようにするためには、スルホン化ポリエーテルスルホンの乾燥を十分に行い、水分などの揮発分を除去する必要があり、特開2013−215640号公報の実施例1に記載の・・℃・における91時間の熱風乾燥に加えて、120℃にて48時間熱風乾燥する、または80℃にて48時間減圧乾燥する方法を適用することができる。
要件(b)を満たすようにするためには、スルホン化ポリエーテルスルホンの洗浄を十分に行い、含まれる微量な塩分や未反応物等を除去する必要がある。特開2013−215640号公報の実施例1に記載の洗浄液の導電率を200μ\ochS/cmとする水洗では不十分であり、洗浄液の導電率が90μ\ochS/cm以下になるまで繰り返し水洗する方法を適用することができる。
(A)成分のスルホン化ポリエーテルスルホンは、重量平均分子量が10万以上であるものが好ましい。
なお、上記の製膜溶液組成物組成物は、上記成分以外にも、少量の塩化リチウム、硝酸リチウムなどを含有することもできる。
(A)成分は、3〜15質量%、好ましくは3〜12質量%、より好ましくは5〜10質量%であり、
(B)成分は、10〜30質量%、好ましくは10〜25質量%、より好ましくは13〜23質量%であり、
(C)成分は、10〜30質量%、好ましくは13〜25質量%、より好ましくは15〜25質量%であり、
(D)成分は、(A)〜(D)成分で合計100質量%となる残部割合である。
(A)成分は15〜45質量%、好ましくは20〜40質量%、より好ましくは20〜35質量%であり、
(B)成分は、85〜55質量%、好ましくは80〜60質量%、より好ましくは80〜65質量%である。
本発明の中空糸型半透膜は、内径600〜1000μm、外径1100〜1500μmのものが好ましく、内径650〜900μm、外径1200〜1450μmのものがより好ましい。
本発明の中空糸型半透膜は、好ましくは破断点伸度が50%以上のものであり、より好ましくは破断点伸度が55%以上のものであり、さらに好ましくは破断点伸度が60%以上のものである。
特に破断点伸度が高くなることで耐衝撃性(急激な流速変化や加重変化への耐性)が向上するため、糸切れ等の不具合が無くなり好ましい。
本発明の中空糸型半透膜は、海水淡水化における前処理手段、浄水場における浄水用の膜として使用することができるものであり、浄水用の膜として使用することで細菌、原虫などを除去することができる。
本発明の中空糸型半透膜は、上記した中空糸型半透膜用の製膜溶液組成物を使用して製造する。以下、工程順に説明する。
最初に上記した中空糸型半透膜用の製膜溶液組成物を調製する。
紡糸は二重紡糸ノズルの外周部から製膜溶液を吐出させると同時に、中央孔からは製膜成分の非溶媒(内部凝固液)を吐出させる。
内部凝固液は、水、ジエチレングリコール(DEG)およびジエチレングリコールモノメチルエーテル(DMM)の混合溶液を使用する。
内部凝固液の温度は10〜50℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。
水は、好ましくは3〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%、さらに好ましくは5〜12質量%であり、
ジエチレングリコールは、好ましくは17〜45質量%、より好ましくは25〜40質量%、さらに好ましくは27〜35質量%であり、
ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、好ましくは40〜80質量%、より50〜70質量%、さらに好ましくは55〜65質量%である。
乾燥空間の温度は、40〜90℃が好ましい。
乾燥空間の距離は、10〜150mmが好ましい。
凝固槽中の凝固液は水を用いることができ、凝固槽の温度(凝固浴の温度)は40〜90℃が好ましい。
精製、乾燥後のスルホン化ポリエーテルスルホンを重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、600MHz H-NMR(BRUKER AVANCE 600)より測定した。1H- NMRスペクトルで得られた芳香環水素のピーク積分値及び下記式より、スルホン化度(置換度)を算出した。
スルホン化度(置換度)
=[8.2〜8.5ppmの積分値(下記化学式中の(1))]/{([6.8〜8.2ppmの積分値(下記化学式中の(2)〜(5))]-[8.2〜8.5ppmの積分値]×2)/4+[8.2〜8.5ppmの積分値]}
セイコー電子工業(株)製のTG/DTA6300「高温示差熱熱重量同時測定装置」を用いて測定した。
測定サンプルは、実施例および比較例で使用した(A)成分のスルホン化ポリエーテルスルホン10mgを使用した。
空気を300ml/minの流速で供給しながら、昇温速度20℃/minで30℃から1000℃まで加熱したときのサンプルの質量変化を測定する熱重量分析(TG)を実施した。
要件(a)の揮発分は、30〜160℃の間における質量減少率を揮発分(質量%)とし、要件(b)の残留分は、1000℃における残存量率を残留分(質量%)とした。
実施例1〜4、実施例6、比較例1、3、4のTG/DTAチャートを図1〜図5に示す。
実施例及び比較例で得た中空糸型半透膜の一端側を閉じた状態で、他端側から純水を0.1MPaで供給し、中空糸膜から一定時間に透過する純水の容量を測定した。この容量を採取時間(h)、中空糸膜内表面の膜面積(m2)で除して、純水透過係数〔L/m2・h(0.1MPa)〕を求めた。
原水として兵庫県揖保川下流域の河川水を用い、膜面積0.13m2の膜モジュールを用いて、図6に示す装置フローの膜濾過装置により1ヶ月間の濾過運転を行った。
まず、原水を原水供給ポンプ11で濾過膜モジュール12に送液し、中空糸の外側を流す外圧クロスフロー濾過を行った。透過水は貯水タンク15に貯水した。濃縮水は、濃縮水返送ライン14で原水の供給ラインに返送した。
濾過運転は定圧濾過であり、モジュール入口圧力は約0.05MPa、 クロスフロー線速は0.1m/s、濾過過程の時間は60分であった。
次に、ポンプ16を駆動させて、貯水タンク15内の透過水を逆圧洗浄ライン18から濾過膜モジュール12に供給する逆圧洗浄を1分間、約0.1MPaの圧力で行った。この際、逆洗水は、透過水に次亜塩素酸ナトリウムを有効塩素濃度が3〜5mg/lになるように注入したものを用いた。
濾過過程における単位時間当たりの透過水量および膜間差圧を測定し,透過流束(単位時間、単位膜面積,圧力0.1MPa当たりの透過水量:m3/(m2・h・0.1MPa))を算出した。膜間差圧とは、膜モジュール入口圧力と出口圧力の平均値から透過圧力を引いたものであり、これを水温25℃に換算した値である。
1ヶ月間運転後の1日当たりの平均透過流束を河川水フラックス(m3/(m2・day))とした。
海水フラックスは、原水として広島県大竹市の瀬戸内海水を使用して、図6に示す装置フローの膜濾過装置を使用して4ヶ月間の濾過運転を行い,河川水フラックスと同様に透過流束から算出した。
河川水フラックスを測定するための濾過運転を1ヶ月行ったときのモジュールの外観検査および解体検査で糸切れの有無を目視により確認した。
得られた中空糸型半透膜の破断点強度及び伸度は、島津製作所製小型卓上試験機EZTestを用いて測定した。
有効長5cmの中空糸型半透膜に対し、クロスヘッドを10mm/minで移動させた場合の破断点強度及び伸度を測定した。
実施例は、特開2013−215640号公報の実施例1に記載の80℃における48時間の減圧乾燥と、洗浄液の導電率が90μ\ochS/cm以下になるまでの水洗を行った。
比較例1、2は、実施例の水洗を行わず、比較例3は、実施例の乾燥を行わず、比較例4は乾燥と水洗の両方を行わなかった。
(B)成分のポリエーテルスルホン(PES):住友化学(株)製の住化エクセル5200P(MW30,000)を使用した。
<製膜溶液組成物>
表1に示すジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール(PEG;MW 200)からなる溶媒に対して、スルホン化ポリエーテルスルホン(SPES)を加え、90℃で約1時間加熱して溶解させた。
次に、前記溶液にポリエーテルスルホン(PES)を加え、90℃で約5時間加熱して溶解して、製膜溶液組成物を得た。
上記の製膜溶液組成物を80℃で15時間かけて脱泡した。
脱泡した製膜溶液組成物を用い、二重紡糸ノズルにより40℃で紡糸した。表1に示す内部凝固液を使用した。
二重紡糸ノズルから吐出させた後、距離100mmの乾燥空間(70℃)を通して乾燥させ、70℃の水が入った凝固槽を通過させた。
その後、さらに50℃の水が入った水洗槽を通過させて中空糸型半透膜を巻き取った。
得られた中空糸型半透膜について、上記した各測定を実施した。結果を表1に示す。
図7から確認できるとおり、内表面側の内側緻密層と外表面側の外側緻密層の間には内部層があり、内側緻密層側の内部層の孔径と外側緻密層側の内部層の孔径を比べると、内側緻密層側の内部層の孔径が大きかった。
13、17、19 開閉バルブ(電磁弁)
Claims (5)
- 製膜成分として、(A)スルホン化度が0.15〜0.20の酸型のスルホン化ポリエーテルスルホン15〜45質量%と(B)ポリエーテルスルホン85〜55質量%が溶媒に溶解された製膜溶液組成物から得られる中空糸型半透膜であって、
前記(A)成分のスルホン化ポリエーテルスルホンが下記の要件(a)および(b)を満たすものである、中空糸型半透膜。
(a)TG/DTA法による揮発分が5.0質量%以下
(b)TG/DTA法による残留分が1.0質量%以下 - 前記製膜溶液組成物が、
(A)スルホン化度が0.15〜0.20のスルホン化ポリエーテルスルホン3〜15質量%
(B)ポリエーテルスルホン10〜30質量%
(C)ポリエチレングリコール10〜30質量%、
(D)残部割合の溶媒を含み、
(A)成分と(B)成分の合計量中の含有割合が、(A)成分15〜45質量%、(B)成分85〜55質量%のものである、請求項1記載の中空糸型半透膜。 - 純水透過係数(PWP)が1200L/m2・h(0.1MPa)以上で、破断点強度が250g/本以上破断点伸度が50%以上である、請求項1記載の中空糸型半透膜。
- 請求項1記載の中空糸型半透膜の製造方法であって、
前記製膜溶液組成物を脱泡後、紡糸して中空糸を得る工程と、
紡糸した中空糸を乾燥する工程を有しているものであり、
前記製膜溶液組成物を脱泡後、紡糸する工程において、内部凝固液として、水、ジエチレングリコールおよびジエチレングリコールモノメチルエーテルの混合溶液を使用する、中空糸型半透膜の製造方法。 - 前記内部凝固液が、水3〜15質量%、ジエチレングリコール17〜45質量%およびジエチレングリコールモノメチルエーテル40〜80質量%からなるものである、請求項4記載の中空糸型半透膜の製造方法。
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