JP2016138618A - 車両の自励振動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】摩擦動力伝達要素のスリップ制御中、振幅の発達を遅延させる制御により自励振動を抑制すること。
【解決手段】走行用モータ10と駆動輪54との間に配置され、変速アクチュエータ6により駆動ローラと従動ローラとの間に押付け力を与えて摩擦締結する1速ローラ対21,31と2速ローラ対22,32を備える。この電気自動車において、変速アクチュエータ6へ出力するアクチュエータ指令値により1速ローラ対21,31及び2速ローラ対22,32の押付け力を制御する締結力制御手段を設ける。締結力制御手段は、1速ローラ対21,31又は2速ローラ対22,32が滑り速度制御中のとき、時間軸に対する押付け力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する。
【選択図】図1
【解決手段】走行用モータ10と駆動輪54との間に配置され、変速アクチュエータ6により駆動ローラと従動ローラとの間に押付け力を与えて摩擦締結する1速ローラ対21,31と2速ローラ対22,32を備える。この電気自動車において、変速アクチュエータ6へ出力するアクチュエータ指令値により1速ローラ対21,31及び2速ローラ対22,32の押付け力を制御する締結力制御手段を設ける。締結力制御手段は、1速ローラ対21,31又は2速ローラ対22,32が滑り速度制御中のとき、時間軸に対する押付け力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する。
【選択図】図1
Description
本発明は、摩擦動力伝達要素のスリップ制御中に発生する自励振動(ジャダー振動等)を抑制する車両の自励振動制御装置に関する。
従来、車両の駆動軸のねじり振動とともに、車両のばね上振動を抑制することを目的とし、フィルタリング処理が施されたモータトルク指令値を用いてモータトルクを制御する電動車両の制振制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、従来装置にあっては、車両のモデル化に基づく車両伝達特性の逆特性とバンドパスフィルタからなるフィルタを用いてモータトルク指令値にフィルタリング処理を施すようにしている。このため、車両のモデル化誤差により、逆にねじり振動を誘発する可能性がある、という問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、摩擦動力伝達要素のスリップ制御中、振幅の発達を遅延させる制御により自励振動を抑制する車両の自励振動制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、駆動源と駆動輪との間に配置され、締結力アクチュエータにより駆動側部材と従動側部材との間に締結力を与えて摩擦締結する摩擦動力伝達要素を備える。
この車両において、締結力アクチュエータへ出力するアクチュエータ指令値により摩擦動力伝達要素の締結力を制御する締結力制御手段を設ける。
締結力制御手段は、摩擦動力伝達要素がスリップ制御中のとき、時間軸に対する締結力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する。
この車両において、締結力アクチュエータへ出力するアクチュエータ指令値により摩擦動力伝達要素の締結力を制御する締結力制御手段を設ける。
締結力制御手段は、摩擦動力伝達要素がスリップ制御中のとき、時間軸に対する締結力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する。
摩擦動力伝達要素がスリップ制御中のとき、時間軸に対する締結力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値が出力される。
即ち、自励振動の一つであるジャダーの振幅は、
ジャダー振幅={1/共振周波数締結力次数}・{exp(μ−V勾配)}
の関係式であらわされることを知見した。
このジャダー振幅の関係式から明らかなように、締結力次数を高次にすることでジャダー振幅を小さくすることができる。したがって、摩擦動力伝達要素を滑り締結するスリップ制御中、締結力特性の次数を高次にする制御を行うことで、スリップ制御中のジャダー振幅が小さくなる。つまり、摩擦動力伝達要素のスリップ制御が開始されると、ジャダーの発生が無い完全締結領域又は切り離し解放領域に移行するまでの間、ジャダー振幅の発達が遅延する制御になる。
この結果、摩擦動力伝達要素のスリップ制御中、振幅の発達を遅延させる制御により自励振動を抑制することができる。
即ち、自励振動の一つであるジャダーの振幅は、
ジャダー振幅={1/共振周波数締結力次数}・{exp(μ−V勾配)}
の関係式であらわされることを知見した。
このジャダー振幅の関係式から明らかなように、締結力次数を高次にすることでジャダー振幅を小さくすることができる。したがって、摩擦動力伝達要素を滑り締結するスリップ制御中、締結力特性の次数を高次にする制御を行うことで、スリップ制御中のジャダー振幅が小さくなる。つまり、摩擦動力伝達要素のスリップ制御が開始されると、ジャダーの発生が無い完全締結領域又は切り離し解放領域に移行するまでの間、ジャダー振幅の発達が遅延する制御になる。
この結果、摩擦動力伝達要素のスリップ制御中、振幅の発達を遅延させる制御により自励振動を抑制することができる。
以下、本発明の車両の自励振動制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
実施例1における自励振動制御装置は、摩擦伝動変速機(トラクション変速機)を搭載した電気自動車(車両の一例)に適用したものである。実施例1における電気自動車の自励振動制御装置の構成を、「全体システム構成」、「摩擦伝動変速機の構成」、「ローラ押付け力制御構成」に分けて説明する。
実施例1における自励振動制御装置は、摩擦伝動変速機(トラクション変速機)を搭載した電気自動車(車両の一例)に適用したものである。実施例1における電気自動車の自励振動制御装置の構成を、「全体システム構成」、「摩擦伝動変速機の構成」、「ローラ押付け力制御構成」に分けて説明する。
[全体システム構成]
図1は実施例1の自励振動制御装置が適用された電気自動車の駆動系及び制御系を示す。以下、図1に基づき、全体システム構成を説明する。
図1は実施例1の自励振動制御装置が適用された電気自動車の駆動系及び制御系を示す。以下、図1に基づき、全体システム構成を説明する。
電気自動車の駆動系は、図1に示すように、走行用モータ10(駆動源)と、変速機入力軸2と、摩擦伝動変速機TMと、変速機出力軸4と、を備えている。変速機出力軸4からは、出力ギヤ42、ファイナルギヤ51、ドライブシャフト53を介して駆動タイヤ54(駆動輪)に連結されている。
前記走行用モータ10は、モータ入力端子にインバータ16を介してバッテリ17が接続され、モータ出力軸が摩擦伝動変速機TMの変速機入力軸2に連結されたモータジェネレータである。力行時には、バッテリ17からの直流をインバータ16により変換した三相交流が走行用モータ10に印加される。一方、回生時には、走行用モータ10で作り出された三相交流をインバータ16により直流に変換してバッテリ17を充電する。
前記摩擦伝動変速機TMは、変速機入力軸2とクランク軸3の間に、1速段を達成する1速ローラ対21,31(摩擦動力伝達要素)と、2速段を達成する2速ローラ対22,32(摩擦動力伝達要素)と、が並列に配置されたトラクション変速機である。1速ローラ対21,31は、1速駆動ローラ21(駆動側部材)と1速従動ローラ31(従動側部材)により構成される。2速ローラ対22,32は、2速駆動ローラ22(駆動側部材)と2速従動ローラ32(従動側部材)により構成される。1速段で1速ローラ対21,31を選択し、2速段で2速ローラ対22,32を選択する変速動作は、クランク軸3を回動させる変速アクチュエータ6によりなされる。
電気自動車の制御系は、図1に示すように、走行用モータ10を制御するモータコントロールユニット91(MCU)と、変速アクチュエータ6を制御する自動変速機コントロールユニット92(ATCU)と、を備えている。
前記モータコントロールユニット91は、レゾルバ93、出力回転数センサ94等からの検出信号を入力すると共に、自動変速機コントロールユニット92からCAN通信線95を介して変速制御情報を入力し、走行用モータ10を制御する。このモータコントロールユニット91では、インバータ16に対するトルク制御指令によるモータトルク制御(以下、単に「トルク制御」という。)と、インバータ16に対する回転数制御指令によるモータ回転数制御(以下、単に「回転数制御」という。)と、を行う。
トルク制御は、変速過渡期のイナーシャフェーズ領域以外で行われる走行用モータ10の制御であり、力行トルク制御と回生トルク制御を有する。力行トルク制御では、加速走行時や定速走行時等においてアクセル開度や車速に基づき目標駆動トルクを設定し、実モータトルクを目標駆動トルクに一致させるように制御する。回生トルク制御では、減速走行時等において目標回生トルクを設定し、実モータトルクを目標回生トルク制御に一致させるように制御する。
回転数制御は、1→2アップ変速時と2→1ダウン変速時の変速過渡期のうち、イナーシャフェーズ領域で行われる走行用モータ10の制御であり、変速前後の変速機入力回転数の変化特性に合わせるように目標モータ回転数を設定する。そして、イナーシャフェーズ領域において、走行用モータ10の実モータ回転数を、目標モータ回転数に一致させる回転数制御を行うことで、1→2アップ変速の変速比を進行させる制御と2→1ダウン変速の変速比を進行させる制御を行う。つまり、走行用モータ10の回転数制御は、イナーシャフェーズ領域にて変速をアシストする変速アシスト制御である。
前記自動変速機コントロールユニット92は、クランク角度センサ96、車速センサ97、アクセル開度センサ98等からの検出信号を入力すると共に、モータコントロールユニット91からCAN通信線95を介してモータ制御情報を入力する。そして、変速アクチュエータ6に対するクランク角度指令により、1速ローラ対21,31と2速ローラ対22,32のローラ押付け力制御を行う。ローラ押付け力制御は、変速アクチュエータ6によりクランク軸3を回動させることで行われるが、クランク軸3を回動させるとクランク軸3に偏芯状態で設けられた1速従動ローラ31と2速従動ローラ32の偏芯位置がそれぞれ変化する。この偏芯位置の変化により、変速機入力軸2に設けられた軸芯固定の1速駆動ローラ21に対する1速従動ローラ31の相対位置と、2速駆動ローラ22に対する2速従動ローラ32の相対位置とが変化する。
[摩擦伝動変速機の構成]
図2は実施例1の自励振動制御装置が適用された電気自動車の摩擦伝動変速機を示す。以下、図2に基づき、摩擦伝動変速機の構成を説明する。
図2は実施例1の自励振動制御装置が適用された電気自動車の摩擦伝動変速機を示す。以下、図2に基づき、摩擦伝動変速機の構成を説明する。
摩擦伝動変速機TMは、図2に示すように、変速機ケース1と、変速機入力軸2と、クランク軸3と、変速機出力軸4と、デファレンシャルユニット5と、変速アクチュエータ6と、第1連結継手7と、第2連結継手8と、を備えている。
前記変速機ケース1は、入力側連結ケース11と、円筒状ケース本体12と、エンドカバー13と、により構成される。そして、円筒状ケース本体12には第1押圧力支持プレート14がボルト固定され、円筒状ケース本体12とエンドカバー13との間には、第2押圧力支持プレート15がボルトにより挟持固定される。
前記変速機入力軸2は、走行用モータ10に連結される軸であり、第1押圧力支持プレート14と第2押圧力支持プレート15に対してベアリング23とベアリング24を介して両端支持される。この変速機入力軸2には、小径ローラによる1速駆動ローラ21と、大径ローラによる2速駆動ローラ22が一体に形成される。
前記クランク軸3は、変速機入力軸2と平行に配置され、第1押圧力支持プレート14と第2押圧力支持プレート15に対してベアリング33とベアリング34を介して両端部がケース支持される。このクランク軸3には、1速駆動ローラ21と第1トラクション面35を介して押圧接触する大径ローラによる1速従動ローラ31が、ベアリング37を介して回転可能に支持される。また、2速駆動ローラ22と第2トラクション面36を介して押圧接触する小径ローラによる2速従動ローラ32が、ベアリング38を介して回転可能に支持される。ここで、クランク軸3のうち、1速従動ローラ31と2速従動ローラ32が回転可能に支持されるそれぞれの軸部は、両端支持により規定されるクランク軸3の回転中心軸に対し、それぞれ異なる方向に回転中心軸をオフセットさせた偏芯軸部とされる。
前記変速機出力軸4は、クランク軸3と同軸上にベアリング43を介して相対回転可能に設けられ、クランク軸3と共用するベアリング33とベアリング44を介して両端部がケース支持される。この変速機出力軸4には、1速従動ローラ31からのトルクが第2連結継手8を介して伝達される。そして、変速機出力軸4の一端側(従動ローラ側)には、パークギヤ41が一体に形成され、他端側には、出力ギヤ42が一体に形成される。
前記デファレンシャルユニット5は、出力ギヤ42に噛み合い減速ギヤ対を構成するファイナルギヤ51と、ファイナルギヤ51に伝達された回転駆動トルクを、差動を許容しながら左右に分配するデフギヤ組52により構成される。なお、デファレンシャルユニット5には、左右の駆動輪を回転駆動する左右のドライブシャフト53が連結される。
前記変速アクチュエータ6は、クランク軸3の回転角度(クランク角度)を制御することにより、1速駆動ローラ21と1速従動ローラ31を押圧接触させる1速段と、2速駆動ローラ22と2速従動ローラ32を押圧接触させる2速段と、の何れかを選択する。サーボモータ等による変速アクチュエータ6の回転軸には、ウォームギヤ61が設けられ、ウォームギヤ61と噛み合うホイールギヤ62がクランク軸3の端部位置(変速機出力軸4と反対位置)に固定されている。
前記第1連結継手7と第2連結継手8は、互いに偏芯した関係にある隣り合う部材間に介装され、径方向の相対変位を許容しつつ連結する継手である。第1連結継手7は、1速従動ローラ31と2速従動ローラ32の対向する端面間に介装され、第2連結継手8は、1速従動ローラ31の端面と変速機出力軸4の端面との間に介装される。なお、第1連結継手7と第2連結継手8としては、例えば、オルダム継手等が用いられる。
[ローラ押付け力制御構成]
図3は自動変速機コントロールユニット92(ATCU)に有するローラ押付け力フィードバック制御系の制御ブロックを示す。図4はローラ滑り速度制御中判定部74での判定処理の流れを示し、図5はローラ滑り速度制御が行われる1→2アップ変速時のイナーシャフェーズ中における時間軸に対する押付け力の一次関数特性と三次関数特性を示す。以下、図3〜図5に基づき、滑り速度のフィードバック制御により行われるローラ押付け力制御構成を説明する。
図3は自動変速機コントロールユニット92(ATCU)に有するローラ押付け力フィードバック制御系の制御ブロックを示す。図4はローラ滑り速度制御中判定部74での判定処理の流れを示し、図5はローラ滑り速度制御が行われる1→2アップ変速時のイナーシャフェーズ中における時間軸に対する押付け力の一次関数特性と三次関数特性を示す。以下、図3〜図5に基づき、滑り速度のフィードバック制御により行われるローラ押付け力制御構成を説明する。
ローラ押付け力フィードバック制御系は、図3に示すように、差分器71と、FB制御器72と、切替器73と、ローラ滑り速度制御中判定部74と、高次フィルタ75と、クランク角度変換部76と、実滑り速度演算器77と、を備えている。なお、図3に示すローラ押付け力フィードバック制御系の構成が、実施例1の締結力制御手段に相当する。
前記差分器71は、実滑り速度演算器77により演算された摩擦伝動変速機TMでの実滑り速度と、目標滑り速度の差分を演算する。
ここで、目標滑り速度は、例えば、1速→2速のアップ変速時と2速→1速のダウン変速時における変速機入力軸31の目標入力回転数変化(=走行用モータ10の回転数制御で設定される目標モータ回転数の変化)に基づき設定される。
ここで、目標滑り速度は、例えば、1速→2速のアップ変速時と2速→1速のダウン変速時における変速機入力軸31の目標入力回転数変化(=走行用モータ10の回転数制御で設定される目標モータ回転数の変化)に基づき設定される。
前記FB制御器72は、差分器71から滑り速度偏差を入力し、実滑り速度を目標滑り速度に一致させて滑り速度偏差を無くすフィードバック制御(PI制御やPID制御等)を実施し、ローラ対押付け力の指令値を算出する。
前記切替器73は、FB制御器72での滑り速度フィードバック制御により求められたローラ対押付け力の指令値を、クランク角度変換部76に入力するか、高次フィルタ75に入力するかを切り替える。この切替器73では、ローラ滑り速度制御中判定部74にてローラ滑り速度制御中以外(目標滑り速度=0)であると判定されると、実線位置(クランク角度変換部76への入力位置)とする。一方、ローラ滑り速度制御中判定部74にてローラ滑り速度制御中(目標滑り速度≠0)であると判定されると、破線位置(高次フィルタ75への入力位置)とする。
前記ローラ滑り速度制御中判定部74は、変速時、目標滑り速度を与えながら走行用モータ10の回転数制御により変速機入力回転数を制御するローラ滑り速度制御中(イナーシャフェーズ領域)であるか否かを判定し、その判定結果を切替器73に出力する。
このローラ滑り速度制御中判定部74での判定処理は、図4に示すフローチャートにしたがって行われる。つまり、変速中でないとき、或いは、変速中であるがローラ滑り速度制御中でないと判断されると、ステップS1(→ステップS2)→ステップS4へと進み、ステップS4では、切替器73を処理無し側(実線位置)とする指示を出力する。一方、変速中であり、かつ、ローラ滑り速度制御中(=イナーシャフェーズ領域)であると判断されると、ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進み、ステップS3では、切替器73を、高次フィルタ75を使用する側(破線位置)とする指示を出力する。言い換えると、切替器73は、変速時、イナーシャフェーズの開始タイミング(=回転数制御開始タイミング)を高次フィルタ75の使用を開始する切り替えトリガとする。そして、イナーシャフェーズの終了タイミング(=回転数制御終了タイミング)を高次フィルタ75の使用を停止する切り替えトリガとしている(図8参照)。
このローラ滑り速度制御中判定部74での判定処理は、図4に示すフローチャートにしたがって行われる。つまり、変速中でないとき、或いは、変速中であるがローラ滑り速度制御中でないと判断されると、ステップS1(→ステップS2)→ステップS4へと進み、ステップS4では、切替器73を処理無し側(実線位置)とする指示を出力する。一方、変速中であり、かつ、ローラ滑り速度制御中(=イナーシャフェーズ領域)であると判断されると、ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進み、ステップS3では、切替器73を、高次フィルタ75を使用する側(破線位置)とする指示を出力する。言い換えると、切替器73は、変速時、イナーシャフェーズの開始タイミング(=回転数制御開始タイミング)を高次フィルタ75の使用を開始する切り替えトリガとする。そして、イナーシャフェーズの終了タイミング(=回転数制御終了タイミング)を高次フィルタ75の使用を停止する切り替えトリガとしている(図8参照)。
前記高次フィルタ75は、滑り速度フィードバック制御によりFB制御器72で求められた押付け力の指令値を積分処理することで、押付け力の指令値を高次数化する。
例えば、1→2アップ変速時のイナーシャフェーズ中における時間軸に対する押付け力Fの特性は、高次フィルタ75を通さないと、図5の破線特性に示すように、時間tの経過に比例して押付け力Fが一定勾配により低下する一次関数特性(F=a0+a1t)になる。これに対し、高次フィルタ75を通すことで時間次数を高める積分処理を行うと、時間軸に対する押付け力Fの特性は、図5の実線特性に示すように、時間tの経過に対して押付け力Fが非線形に変化する三次関数特性(F=a0+a1t+a2t2+a3t3)になる。
例えば、1→2アップ変速時のイナーシャフェーズ中における時間軸に対する押付け力Fの特性は、高次フィルタ75を通さないと、図5の破線特性に示すように、時間tの経過に比例して押付け力Fが一定勾配により低下する一次関数特性(F=a0+a1t)になる。これに対し、高次フィルタ75を通すことで時間次数を高める積分処理を行うと、時間軸に対する押付け力Fの特性は、図5の実線特性に示すように、時間tの経過に対して押付け力Fが非線形に変化する三次関数特性(F=a0+a1t+a2t2+a3t3)になる。
前記クランク角度変換部76は、FB制御器72又は高次フィルタ75からの押付け力Fをクランク角度θに変換する変換マップ(図7参照)を用い、FB制御器72又は高次フィルタ75から出力された押付け力Fを、クランク角度θに変換する。そして、このクランク角度変換部76で変換されたクランク角度θを得るクランク角度制御指令を、摩擦伝動変速機TMの変速アクチュエータ6に出力する。
前記実滑り速度演算器77は、摩擦伝動変速機TMのTM入力回転数NinとTM出力回転数Noutと駆動ローラ径riと従動ローラ径roを用いた(ri・Nin−ro・Nout)の式により実滑り速度Vを演算し、差分器71へ出力する。
次に、作用を説明する。
実施例1の電気自動車の自励振動制御装置における作用を、「摩擦伝動変速機による変速作用」、「ローラ押付け力制御作用」、「1→2アップ変速制御作用」、「自励振動抑制作用」、「他の特徴作用」に分けて説明する。
実施例1の電気自動車の自励振動制御装置における作用を、「摩擦伝動変速機による変速作用」、「ローラ押付け力制御作用」、「1→2アップ変速制御作用」、「自励振動抑制作用」、「他の特徴作用」に分けて説明する。
[摩擦伝動変速機による変速作用]
自動変速機コントロールユニット61には、周知の自動変速機と同様に、車速とアクセル開度による動作点平面上に、1→2速アップ変速線と2→1速ダウン変速線とが書き込まれた変速マップを有する。そして、車速検出値とアクセル開度検出値により決まる動作点が、変速マップの1速領域内にあると1速段を選択し、変速マップの2速領域内にあると2速段を選択する。また、変速マップの1→2速アップ変速線を横切ったらアップ変速要求を出し、2→1速ダウン変速線を横切ったらダウン変速要求を出す。
自動変速機コントロールユニット61には、周知の自動変速機と同様に、車速とアクセル開度による動作点平面上に、1→2速アップ変速線と2→1速ダウン変速線とが書き込まれた変速マップを有する。そして、車速検出値とアクセル開度検出値により決まる動作点が、変速マップの1速領域内にあると1速段を選択し、変速マップの2速領域内にあると2速段を選択する。また、変速マップの1→2速アップ変速線を横切ったらアップ変速要求を出し、2→1速ダウン変速線を横切ったらダウン変速要求を出す。
1速段の選択による走行時においては、1速駆動ローラ21と1速従動ローラ31の押付け力を制御する。2速段の選択による走行時においては、2速駆動ローラ22と2速従動ローラ32の押付け力を制御する。この1速段と2速段での押付け力制御は、入力トルクの大きさや変化に対し、第1トラクション面35と第2トラクション面36での滑りを抑えるように、目標滑り速度をゼロとする。そして、入力トルクに応じた押付け力を与えるように、クランク軸3のクランク角度を変速アクチュエータ6により制御することでなされる。
1→2速アップ変速は、1→2アップ変速要求があると変速アクチュエータ6に対し、1速ローラ対21,31から2速ローラ対22,32へと動力を伝達するローラ対の選択を切り替えるクランク角度制御指令を出力することで行う。2→1速ダウン変速は、2→1ダウン変速要求があると変速アクチュエータ6に対し、2速ローラ対22,32から1速ローラ対21,31へと動力を伝達するローラ対の選択を切り替えるクランク角度制御指令を出力することで行う。この変速時制御は、変速アクチュエータ6によるローラ押付け力を変速前変速段から変速後変速段へ移行させるローラ押付け力制御に、走行用モータ10による回転数制御(変速アシスト制御)を加えた協調制御により行われる。即ち、ローラ押付け力制御以外に、変速フェーズのうちイナーシャフェーズ領域において、変速前の変速機入力回転数から変速後の変速機入力回転数に滑らかに繋ぐ特性を目標回転数とする走行用モータ10の回転数制御を介入させる。
[ローラ押付け力制御作用]
摩擦伝動変速機TMにて行われる変速アクチュエータ6によるローラ押付け力制御作用を、図6及び図7に基づき説明する。
摩擦伝動変速機TMにて行われる変速アクチュエータ6によるローラ押付け力制御作用を、図6及び図7に基づき説明する。
例えば、2速段選択時に入力トルクに対し押付け力Fが不足するときは、図6に示すように、クランク軸3を矢印U方向に回動させるクランク角度制御を行うことで、2速駆動ローラ22と2速従動ローラ32の押付け力Fが上げられる。一方、2速段選択時に入力トルクに対し押付け力Fが過剰なときは、図6に示すように、クランク軸3を矢印D方向に回動させるクランク角度制御を行うことで、2速駆動ローラ22と2速従動ローラ32の押付け力Fが下げられる。1速段選択時の1速駆動ローラ21と1速従動ローラ31のクランク角度と押付け力の関係も2速段選択時と同様であるが、1速段選択時の押付け力最大位置でのクランク角度と、2速段選択時の押付け力最大位置でのクランク角度とを異ならせている。
このため、1速ローラ対21,31と2速ローラ対22,32を備えた摩擦伝動変速機TMで用いられる変換マップは、図7に示す特性で与えられる。即ち、クランク角度θをθ0からθ1まで上昇させてゆくと、1速ローラ対21,31の押付け力Fが上昇し、クランク角度θ1にて1速ローラ対21,31の押付け力が最大になる。クランク角度θ1のクランク角度θをθ1からθ2まで上昇させてゆくと、1速ローラ対21,31の押付け力の低下に合わせて2速ローラ対22,32の押付け力Fが上昇し、クランク角度θ2にて2速ローラ対22,32の押付け力が最大になる。クランク角度θをθ2からθ3まで上昇させてゆくと、2速ローラ対22,32の押付け力Fが低下し、θ3にて2速ローラ対22,32の押付け力Fがゼロになる特性で与えられる。
したがって、1速段選択時は、クランク角度θ1以下であって、実滑り速度を抑えることが可能なクランク角度領域にて1速ローラ対21,31の押付け力Fが制御される。2速段選択時は、クランク角度θ2以上であって、実滑り速度を抑えることが可能なクランク角度領域にて2速ローラ対22,32の押付け力Fが制御される。そして、1→2アップ変速時には、1速ローラ対21,31が押付けられているクランク角度位置から、2速ローラ対22,32の押付け力Fが確保されるクランク角度位置まで、クランク角度θを図7の矢印A方向に移動させることで架け替えられる。2→1ダウン変速時には、2速ローラ対22,32が押付けられているクランク角度位置から、1速ローラ対21,31の押付け力Fが確保されるクランク角度位置まで、クランク角度θを図7の矢印B方向に移動させることで架け替えられる。
[1→2アップ変速制御作用]
変速アクチュエータ6によるローラ押付け力制御に、走行用モータ10による回転数制御を加えた協調制御により行われる変速制御の一例である1→2アップ変速制御作用を、図8に基づき説明する。なお、1→2アップ変速制御は、1→2アップ変速要求に応えてプリフェーズ→トルクフェーズ→イナーシャフェーズ→完全締結フェーズという変速フェーズを経過して行われる。
変速アクチュエータ6によるローラ押付け力制御に、走行用モータ10による回転数制御を加えた協調制御により行われる変速制御の一例である1→2アップ変速制御作用を、図8に基づき説明する。なお、1→2アップ変速制御は、1→2アップ変速要求に応えてプリフェーズ→トルクフェーズ→イナーシャフェーズ→完全締結フェーズという変速フェーズを経過して行われる。
図8において、時刻t0はプリフェーズ開始時刻(=変速開始時刻)である。時刻t1はプリフェーズ終了/トルクフェーズ開始時刻である。時刻t2はトルクフェーズ終了/イナーシャフェーズ開始時刻である。時刻t3はイナーシャフェーズ終了/完全締結フェーズ開始時刻である。時刻t4は完全締結フェーズ終了時刻(=変速終了時刻)である。以下、各変速フェーズについて説明する。
時刻t0〜時刻t1のプリフェーズにおいては、目標滑り速度をゼロとするローラ押付け力制御によりクランク角θを上昇させ、2速ローラ対22,32の押付け力をゼロに保ったままで、1速ローラ対21,31の押付け力が最大域まで上げられる。
時刻t1〜時刻t2のトルクフェーズにおいては、目標滑り速度をゼロとするローラ押付け力制御によりクランク角θを上昇させ、変速前の1速段で選択されていた1速ローラ対21,31の押付け力を最大からゼロまで低下させる。一方、変速後の2速段で選択される2速ローラ対22,32の押付け力をゼロから上昇させる。つまり、トルクフェーズでは、1速ローラ対21,31の選択から2速ローラ対22,32の選択へとローラ対の架け替え制御が行われる。このトルクフェーズの終了域では、図8の矢印Cによる枠内に示すように、1速ローラ対21,31の押付け力の低下に伴い、第1トラクション面35で滑りが発生することで摩擦係数μが低下する。
時刻t2〜時刻t3のイナーシャフェーズにおいては、走行用モータ10の回転数制御によりモータ回転数が時刻t1から時刻t2に向かって低下する。時刻t2〜時刻t3のイナーシャフェーズのローラ押付け力制御は、ローラ押付け力を低下し、回転数制御に伴う第2トラクション面36での滑りを促すように目標滑り速度が設定される。つまり、図8の破線特性に示すように、ローラ押付け力制御によりクランク角θを緩やかな勾配にて上昇させ、変速後の2速段で選択される2速ローラ対22,32の押付け力を緩やかな勾配にて下降させる。このとき、2速ローラ対22,32に対する押付け力の指令値には、図4のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3と進むことで、高次フィルタ75が使用される。押付け力の指令値に高次フィルタ75を通す処理が施されることで、クランク角及び押付け力の時間変化特性を非線形の三次関数特性とするローラ押付け力制御が行われる。このイナーシャフェーズ領域では、高次化したローラ押付け力を付与する制御により、図8の矢印Dによる枠内に示すように、第2トラクション面36での摩擦係数μが緩やかな正勾配にて上昇する。
時刻t3〜時刻t4の完全締結フェーズにおいては、時刻t3からの目標滑り速度をゼロとするローラ押付け力制御によりクランク角θを低下させ、2速ローラ対22,32の押付け力を最大域まで上昇させる。そして、時刻t4以降は、2速ローラ対22,32によりトルク伝達する2速段の選択状態になる。この完全締結フェーズ領域では、矢印Eによる枠内に示すように、2速ローラ対22,32の押付け力の上昇に伴って摩擦係数μが負勾配になるが、第2トラクション面36での滑り速度を短時間で抑える完全締結フェーズに入っていることでジャダーの発生が抑えられる。このように、高次化したローラ押付け力を付与する制御は、押付け力の時間変化特性を線形の一次関数特性とした場合にイナーシャフェーズ領域で生じる摩擦係数μの負勾配を、完全締結フェーズ領域まで遅らせる制御になるため、自励振動(ジャダー)の遅延制御といえる。
[自励振動抑制作用]
「ジャダー」とは、摩擦によって動力を伝達するローラやブレーキやクラッチ等において、μ−V特性が負勾配であることに起因し、滑り制御中にスムーズに力が伝達せず、異音や振動を起こす代表的な自励振動現象をいう。
「ジャダー」とは、摩擦によって動力を伝達するローラやブレーキやクラッチ等において、μ−V特性が負勾配であることに起因し、滑り制御中にスムーズに力が伝達せず、異音や振動を起こす代表的な自励振動現象をいう。
1→2アップ変速時や2→1ダウン変速時、変速フェーズのうちイナーシャフェーズ領域において走行用モータ10による回転数制御が行われる。1→2アップ変速時には、変速後の2速ローラ対22,32が押付けられている状態で変速機入力回転数(=モータ回転数)が低下することで、第2トラクション面36で滑りが発生する。また、2→1ダウン変速時には、変速後の1速ローラ対21,31が押付けられている状態で変速機入力回転数(=モータ回転数)が上昇することで、第1トラクション面35で滑りが発生する。この第1トラクション面35と第2トラクション面36で滑りが発生しているときに問題となるのが「ジャダー」である。
この「ジャダー」は、μ−V特性が負勾配になるシステムを周波数解析した結果、μ−V負勾配である条件下で、位相進みが加わったときに大きく振れる自励振動が発生することを知見した。すなわち、「ジャダー」は、μ−V特性の負勾配が起因となるが、μ−V負勾配による不安定さを、位相進みがさらに助長することで、自励振動の振幅を拡大する現象であることが解った。そして、「ジャダー」は位相進みが振幅の拡大を助長する現象である点に着目し、「ジャダー振幅」に絞った観点からさらに解析を進めていった。
この結果、「ジャダーの振幅」は、
ジャダー振幅={1/共振周波数締結力次数}・{exp(μ−V勾配)} …(1)
に示す関係式(1)であらわされることを知見した。
なお、上記(1)式において、「exp(μ−V勾配)」は、自然対数の底eの(μ−V勾配)乗を意味する。
この結果、「ジャダーの振幅」は、
ジャダー振幅={1/共振周波数締結力次数}・{exp(μ−V勾配)} …(1)
に示す関係式(1)であらわされることを知見した。
なお、上記(1)式において、「exp(μ−V勾配)」は、自然対数の底eの(μ−V勾配)乗を意味する。
上記ジャダー振幅の関係式(1)から明らかなように、締結力次数を高次にすることでジャダー振幅を小さくすることができる。この締結力次数の高次化をローラ押付け力次数の高次化に置き換えたものが実施例1である。即ち、実施例1では、1速ローラ対21,31又は2速ローラ対22,32が滑り速度制御中のとき、時間軸に対する押付け力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する構成とした。
したがって、1速ローラ対21,31又は2速ローラ対22,32を滑り締結する滑り速度制御中、押付け力特性の次数を高次にする制御を行うことで、滑り速度制御中のジャダー振幅が小さくなる。つまり、1速ローラ対21,31又は2速ローラ対22,32の滑り速度制御が開始されると、ジャダーの発生が無い完全締結領域(又は切り離し解放領域)に移行するまでの間、ジャダー振幅の発達が遅延する制御になる。
この結果、1速ローラ対21,31又は2速ローラ対22,32の滑り速度制御中、振幅の発達を遅延させる制御によりジャダー(自励振動)を抑制することができる。
この結果、1速ローラ対21,31又は2速ローラ対22,32の滑り速度制御中、振幅の発達を遅延させる制御によりジャダー(自励振動)を抑制することができる。
図9は、1→2アップ変速においてイナーシャフェーズ領域にて高次フィルタ75を入れないとき(比較例)と高次フィルタ75を入れたとき(実施例1)でのモータ回転数対比特性及び出力トルク対比特性の実験結果を示す。
モータ回転数特性については、比較例の場合、イナーシャフェーズ開始域で2速ローラ対22,32の押付け力が低減され、走行用モータ10に加わる負荷が減少する。このため、矢印Fの枠内特性に示すように、モータ回転数の急上昇があり、その後、変速後の目標回転数に向かって低下する。一方、実施例1の場合、イナーシャフェーズ開始域で2速ローラ対22,32の押付け力が維持される、或いは、僅かに上昇される。つまり、比較例のように走行用モータ10に加わる負荷が減少することがないため、モータ回転数の急上昇が抑えられる。その後、比較例の特性より少し遅れた特性により変速後の目標回転数に向かって低下するという実験結果が得られた。
出力トルク特性については、比較例の場合には、イナーシャフェーズ開始域から2速ローラ対22,32の押付け力が低減されて滑り速度が上昇し、μ−V特性で負勾配になる側に一気に移行する。このため、矢印Gの枠内特性に示すように、激しいトルク変動によるジャダーが発生する。一方、実施例1の場合には、イナーシャフェーズ開始域で2速ローラ対22,32の押付け力が維持される、或いは、僅かに上昇されて滑り速度の上昇が抑えられることで、μ−V特性で負勾配になる側への移行が遅れる。このため、出力トルク変動が開始するのが遅れ、出力トルク変動が開始するタイミングになると2速ローラ対22,32の押付け力を増大させる完全締結フェーズに入ってしまい、激しいトルク変動によるジャダーの発生が抑えられるという実験結果が得られた。
この実験結果により、1速ローラ対21,31又は2速ローラ対22,32の滑り速度制御中、押付け力特性の次数を高次にする制御を行うことで、ジャダー(自励振動)を抑制できることが確認された。特に、実施例1のような電気自動車の場合、静粛性がエンジン車よりも高いことで、走行中の変速時に発生するジャダーは、乗員に違和感を与える車室内異音や車両振動の原因となる。
[他の特徴作用]
実施例1では、入力値を時間により積分処理する高次フィルタ75を設け、高次フィルタ75に所定の制御周期で演算される押付け力の指令値を通す構成とした。
即ち、所定の制御周期を持つ制御系においては、等間隔の時間により押付け力の指令値が演算される。このため、押付け力の指令値に高次フィルタ75を通すだけで、時間軸に対する押付け力特性が二次以上の高次関数特性とされる。
したがって、高次フィルタ75に押付け力の指令値を通すだけで、時間軸に対する押付け力特性を応答良く二次以上の高次関数特性とされる。
実施例1では、入力値を時間により積分処理する高次フィルタ75を設け、高次フィルタ75に所定の制御周期で演算される押付け力の指令値を通す構成とした。
即ち、所定の制御周期を持つ制御系においては、等間隔の時間により押付け力の指令値が演算される。このため、押付け力の指令値に高次フィルタ75を通すだけで、時間軸に対する押付け力特性が二次以上の高次関数特性とされる。
したがって、高次フィルタ75に押付け力の指令値を通すだけで、時間軸に対する押付け力特性を応答良く二次以上の高次関数特性とされる。
実施例1では、ローラ押付け力フィードバック制御系に、ローラ対の実滑り速度と目標滑り速度の差分を無くすように押付け力の指令値をフィードバック演算するFB制御器72を有する。このFB制御器72の下流位置に、高次フィルタ75を設ける構成とした。
即ち、FB制御器72の下流位置に、高次フィルタ75を設けると、等間隔の時間により押付け力の指令値が高次フィルタ75に入力される。
したがって、FB制御器72を有するローラ押付け力フィードバック制御系に、高次フィルタ75を追加するだけの簡単な構成により、押付け力の高次関数特性が得られる。
即ち、FB制御器72の下流位置に、高次フィルタ75を設けると、等間隔の時間により押付け力の指令値が高次フィルタ75に入力される。
したがって、FB制御器72を有するローラ押付け力フィードバック制御系に、高次フィルタ75を追加するだけの簡単な構成により、押付け力の高次関数特性が得られる。
実施例1では、ローラ押付け力フィードバック制御系に、FB制御器72からの押付け力の指令値の出力を切り替える切替器73と、ローラ対が滑り速度制御中であるか否かを判定し、切替器73を切り替える滑り速度制御中判定部74と、を有する。そして、高次フィルタ75を、滑り速度制御中判定部74にて滑り速度制御中であるとの判定結果に基づく切替器73の切り替え側に設ける構成とした。
例えば、ジャダー発生域かジャダー非発生域かにかかわらず、高次フィルタ75を挿入してフィードバック制御系を構成すると、ジャダー非発生域において、高次フィルタ75によりローラ押付け力を遅らせる機能が、押付け力制御性能を低下させるような影響を及ぼすことがある。これに対し、FB制御器72と高次フィルタ75との間に切替器73を設け、高次フィルタ75を挿入するのをジャダーの発生が予測される滑り速度制御中に限るようにしている。
したがって、ジャダー非発生域における押付け力制御性を確保しながら、ジャダー発生域にてジャダー抑制が確保される。
例えば、ジャダー発生域かジャダー非発生域かにかかわらず、高次フィルタ75を挿入してフィードバック制御系を構成すると、ジャダー非発生域において、高次フィルタ75によりローラ押付け力を遅らせる機能が、押付け力制御性能を低下させるような影響を及ぼすことがある。これに対し、FB制御器72と高次フィルタ75との間に切替器73を設け、高次フィルタ75を挿入するのをジャダーの発生が予測される滑り速度制御中に限るようにしている。
したがって、ジャダー非発生域における押付け力制御性を確保しながら、ジャダー発生域にてジャダー抑制が確保される。
実施例1では、駆動源として走行用モータ10を有し、走行用モータ10から駆動輪54への動力伝達経路に、1速ローラ対21,31及び2速ローラ対22,32を摩擦伝動要素とし、ローラ対の架け替えにより変速する摩擦伝動変速機TMを搭載する。そして、押付け力制御では、走行用モータ10の回転数制御により変速アシスト制御が行われるイナーシャフェーズ領域のとき、時間軸に対するローラ対への押付け力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する構成とした。
したがって、摩擦伝動変速機TMを駆動系に備えた電気自動車での走行中の変速時において、静粛性の阻害要因になるジャダーの発生が有効に抑制される。
したがって、摩擦伝動変速機TMを駆動系に備えた電気自動車での走行中の変速時において、静粛性の阻害要因になるジャダーの発生が有効に抑制される。
次に、効果を説明する。
実施例1における電気自動車の自励振動制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
実施例1における電気自動車の自励振動制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 駆動源(走行用モータ10)と駆動輪54との間に配置され、締結力アクチュエータ(変速アクチュエータ6)により駆動側部材(1速駆動ローラ21、2速駆動ローラ22)と従動側部材(1速従動ローラ31、2速従動ローラ32)との間に締結力(押付け力)を与えて摩擦締結する摩擦動力伝達要素(1速ローラ対21,31、2速ローラ対22,32)を備えた車両(電気自動車)において、
締結力アクチュエータ(変速アクチュエータ6)へ出力するアクチュエータ指令値により摩擦動力伝達要素(1速ローラ対21,31、2速ローラ対22,32)の締結力(押付け力)を制御する締結力制御手段(図3)を設け、
締結力制御手段(図3)は、摩擦動力伝達要素(1速ローラ対21,31、2速ローラ対22,32)がスリップ制御中(滑り速度制御中)のとき、時間軸に対する締結力特性(押付け力特性)を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する。
このため、摩擦動力伝達要素(1速ローラ対21,31、2速ローラ対22,32)のスリップ制御中(滑り速度制御中)、振幅の発達を遅延させる制御により自励振動(ジャダー)を抑制することができる。
締結力アクチュエータ(変速アクチュエータ6)へ出力するアクチュエータ指令値により摩擦動力伝達要素(1速ローラ対21,31、2速ローラ対22,32)の締結力(押付け力)を制御する締結力制御手段(図3)を設け、
締結力制御手段(図3)は、摩擦動力伝達要素(1速ローラ対21,31、2速ローラ対22,32)がスリップ制御中(滑り速度制御中)のとき、時間軸に対する締結力特性(押付け力特性)を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する。
このため、摩擦動力伝達要素(1速ローラ対21,31、2速ローラ対22,32)のスリップ制御中(滑り速度制御中)、振幅の発達を遅延させる制御により自励振動(ジャダー)を抑制することができる。
(2) 締結力制御手段(図3)は、入力値を時間により積分処理する高次フィルタ75を設け、高次フィルタ75に所定の制御周期で演算される締結力(押付け力)の指令値を通す。
このため、(1)の効果に加え、高次フィルタ75に締結力(押付け力)の指令値を通すだけで、時間軸に対する締結力特性(押付け力特性)を応答良く二次以上の高次関数特性とすることができる。
このため、(1)の効果に加え、高次フィルタ75に締結力(押付け力)の指令値を通すだけで、時間軸に対する締結力特性(押付け力特性)を応答良く二次以上の高次関数特性とすることができる。
(3) 締結力制御手段(図3)は、摩擦動力伝達要素(1速ローラ対21,31、2速ローラ対22,32)の実スリップ相当値(実滑り速度)と目標スリップ相当値(目標滑り速度)の差分を無くすように締結力(押付け力)の指令値をフィードバック演算するフィードバック制御器(FB制御器72)を有し、フィードバック制御器(FB制御器72)の下流位置に、高次フィルタ75を設ける。
このため、(2)の効果に加え、フィードバック制御器(FB制御器72)を有する締結力フィードバック制御系(ローラ押付け力フィードバック制御系)に、高次フィルタ75を追加するだけの簡単な構成により、締結力(押付け力)の高次関数特性を得ることができる。
このため、(2)の効果に加え、フィードバック制御器(FB制御器72)を有する締結力フィードバック制御系(ローラ押付け力フィードバック制御系)に、高次フィルタ75を追加するだけの簡単な構成により、締結力(押付け力)の高次関数特性を得ることができる。
(4) 締結力制御手段(図3)は、フィードバック制御器(FB制御器72)からの締結力(押付け力)の指令値の出力を切り替える切替器73と、
摩擦動力伝達要素(1速ローラ対21,31、2速ローラ対22,32)がスリップ制御中(滑り速度制御中)であるか否かを判定し、切替器73を切り替えるスリップ制御中判定部(滑り速度制御中判定部74)と、を有し、
高次フィルタ75を、スリップ制御中判定部(滑り速度制御中判定部74)にてスリップ制御中(滑り速度制御中)であるとの判定結果に基づく切替器73の切り替え側に設ける。
このため、(3)の効果に加え、自励振動非発生域(ジャダー非発生域)における締結力制御性(押付け力制御性)を確保しながら、自励振動発生域(ジャダー発生域)にて自励振動抑制(ジャダー抑制)を確保することができる。
摩擦動力伝達要素(1速ローラ対21,31、2速ローラ対22,32)がスリップ制御中(滑り速度制御中)であるか否かを判定し、切替器73を切り替えるスリップ制御中判定部(滑り速度制御中判定部74)と、を有し、
高次フィルタ75を、スリップ制御中判定部(滑り速度制御中判定部74)にてスリップ制御中(滑り速度制御中)であるとの判定結果に基づく切替器73の切り替え側に設ける。
このため、(3)の効果に加え、自励振動非発生域(ジャダー非発生域)における締結力制御性(押付け力制御性)を確保しながら、自励振動発生域(ジャダー発生域)にて自励振動抑制(ジャダー抑制)を確保することができる。
(5) 駆動源として走行用モータ10を有し、
走行用モータ10から駆動輪54への動力伝達経路に、複数のローラ対(1速ローラ対21,31、2速ローラ対22,32)を摩擦伝動要素とし、複数のローラ対の架け替えにより変速する摩擦伝動変速機TMを搭載し、
締結力制御手段(図3)は、走行用モータ10の回転数制御により変速アシスト制御が行われるイナーシャフェーズ領域のとき、時間軸に対するローラ対への押付け力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、摩擦伝動変速機TMを駆動系に備えた電気自動車での走行中の変速時において、静粛性の阻害要因になる自励振動(ジャダー)の発生を有効に抑制することができる。
走行用モータ10から駆動輪54への動力伝達経路に、複数のローラ対(1速ローラ対21,31、2速ローラ対22,32)を摩擦伝動要素とし、複数のローラ対の架け替えにより変速する摩擦伝動変速機TMを搭載し、
締結力制御手段(図3)は、走行用モータ10の回転数制御により変速アシスト制御が行われるイナーシャフェーズ領域のとき、時間軸に対するローラ対への押付け力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、摩擦伝動変速機TMを駆動系に備えた電気自動車での走行中の変速時において、静粛性の阻害要因になる自励振動(ジャダー)の発生を有効に抑制することができる。
実施例2は、駆動源と駆動輪との間に配置された摩擦動力伝達要素として、発進時にスリップ締結される発進クラッチを備える例である。
まず、構成を説明する。
実施例2における自励振動制御装置は、発進クラッチ及び自動変速機を搭載した電気自動車(車両の一例)に適用したものである。実施例2における電気自動車の自励振動制御装置の構成を、「全体システム構成」、「発進クラッチの締結力制御構成」に分けて説明する。
実施例2における自励振動制御装置は、発進クラッチ及び自動変速機を搭載した電気自動車(車両の一例)に適用したものである。実施例2における電気自動車の自励振動制御装置の構成を、「全体システム構成」、「発進クラッチの締結力制御構成」に分けて説明する。
[全体システム構成]
図10は実施例2の自励振動制御装置が適用された電気自動車の駆動系及び制御系を示す。以下、図10に基づき、全体システム構成を説明する。
図10は実施例2の自励振動制御装置が適用された電気自動車の駆動系及び制御系を示す。以下、図10に基づき、全体システム構成を説明する。
電気自動車の駆動系は、図10に示すように、走行用モータ10(駆動源)と、発進クラッチ81(摩擦動力伝達要素)と、変速機入力軸2と、自動変速機ATと、変速機出力軸4と、を備えている。変速機出力軸4からは、出力ギヤ42、ファイナルギヤ51、ドライブシャフト53を介して駆動タイヤ54(駆動輪)に連結されている。
前記発進クラッチ81は、走行用モータ10のモータ軸18と変速機入力軸2との間に介装され、発進時にスリップ締結される摩擦動力伝達要素である。この発進クラッチ81は、モータ軸18側のドライブプレート82(駆動側部材)と、変速機入力軸2側のドリブンプレート83(従動側部材)と、を有して構成される。発進クラッチ81の締結/スリップ締結/解放の動作は、ドリブンプレート83を軸方向にストロークさせる締結アクチュエータ63によりなされる。
前記自動変速機ATは、変速機入力軸2と変速機出力軸4の間に介装された変速機であり、例えば、無段階の変速比を得る無段変速機や有段階の変速段を得る有段変速機、等が用いられる。
電気自動車の制御系は、図10に示すように、走行用モータ10を制御するモータコントロールユニット91(MCU)と、自動変速機AT及び締結アクチュエータ63を制御する自動変速機コントロールユニット92(ATCU)と、を備えている。
前記モータコントロールユニット91は、レゾルバ93、出力回転数センサ94等からの検出信号を入力すると共に、自動変速機コントロールユニット92からCAN通信線95を介して変速制御情報や発進クラッチ制御情報を入力し、走行用モータ10を制御する。このモータコントロールユニット91では、実施例1と同様に、インバータ16に対するトルク制御指令によるトルク制御と、インバータ16に対する回転数制御指令による回転数制御と、を行う。
前記自動変速機コントロールユニット92は、ストロークセンサ99、車速センサ97、アクセル開度センサ98等からの検出信号を入力すると共に、モータコントロールユニット91からCAN通信線95を介してモータ制御情報を入力する。そして、自動変速機ATに対して変速制御指令値を出力することにより変速制御を行う。又、締結アクチュエータ63に対して締結力の指令値を出力することにより発進クラッチ81の締結制御を行う。
[発進クラッチの締結力制御構成]
図11は自動変速機コントロールユニット(ATCU)に有する発進クラッチの締結力フィードバック制御系を示し、図12は発進クラッチの締結力フィードバック制御系のスリップ制御中判定部での判定処理の流れを示す。以下、図11及び図12に基づき、スリップ量のフィードバック制御により行われる発進クラッチの締結力制御構成を説明する。
図11は自動変速機コントロールユニット(ATCU)に有する発進クラッチの締結力フィードバック制御系を示し、図12は発進クラッチの締結力フィードバック制御系のスリップ制御中判定部での判定処理の流れを示す。以下、図11及び図12に基づき、スリップ量のフィードバック制御により行われる発進クラッチの締結力制御構成を説明する。
発進クラッチ81の締結力フィードバック制御系は、図11に示すように、差分器71と、FB制御器72と、切替器73と、スリップ制御中判定部74’と、高次フィルタ75と、ストローク変換部76’と、実スリップ量演算器77’と、を備えている。
前記差分器71は、スリップ量演算器77’により演算された発進クラッチ81での実スリップ量と、目標スリップ量の差分を演算する。
ここで、目標スリップ量は、例えば、発進時における自動変速機ATへの目標入力回転数変化に基づき設定される。
ここで、目標スリップ量は、例えば、発進時における自動変速機ATへの目標入力回転数変化に基づき設定される。
前記FB制御器72は、差分器71からスリップ量偏差を入力し、実スリップ量を目標スリップ量に一致させてスリップ量偏差を無くすフィードバック制御(PI制御やPID制御等)を実施し、発進クラッチ81の締結力の指令値を算出する。
前記切替器73は、FB制御器72でのスリップ量フィードバック制御により求められたクラッチ締結力の指令値を、クラッチストローク変換部76’に入力するか、高次フィルタ75に入力するかを切り替える。この切替器73では、スリップ制御中判定部74’にてスリップ制御中以外(目標スリップ量=0)であると判定されると、実線位置(クラッチストローク変換部76’への入力位置)とする。一方、スリップ制御中判定部74’にてスリップ制御中(目標スリップ量≠0)であると判定されると、破線位置(高次フィルタ75への入力位置)とする。
前記スリップ制御中判定部74’は、発進時、目標スリップ量を与えながら走行用モータ10の回転数制御を行うスリップ制御中であるか否かを判定し、その判定結果を切替器73に出力する。
このスリップ制御中判定部74’での判定処理は、図12に示すフローチャートにしたがって行われる。つまり、発進中でないとき、或いは、発進中であるがスリップ制御中でないと判断されると、ステップS21(→ステップS22)→ステップS24へと進み、ステップS24では、切替器73を処理無し側(実線位置)とする指示を出力する。一方、発進中であり、かつ、スリップ制御中であると判断されると、ステップS21→ステップS22→ステップS23へと進み、ステップS23では、切替器73を、高次フィルタ75を使用する側(破線位置)とする指示を出力する。言い換えると、切替器73は、発進時、スリップ制御開始タイミングを高次フィルタ75の使用を開始する切り替えトリガとし、スリップ制御終了タイミングを高次フィルタ75の使用を停止する切り替えトリガとしている。
このスリップ制御中判定部74’での判定処理は、図12に示すフローチャートにしたがって行われる。つまり、発進中でないとき、或いは、発進中であるがスリップ制御中でないと判断されると、ステップS21(→ステップS22)→ステップS24へと進み、ステップS24では、切替器73を処理無し側(実線位置)とする指示を出力する。一方、発進中であり、かつ、スリップ制御中であると判断されると、ステップS21→ステップS22→ステップS23へと進み、ステップS23では、切替器73を、高次フィルタ75を使用する側(破線位置)とする指示を出力する。言い換えると、切替器73は、発進時、スリップ制御開始タイミングを高次フィルタ75の使用を開始する切り替えトリガとし、スリップ制御終了タイミングを高次フィルタ75の使用を停止する切り替えトリガとしている。
前記高次フィルタ75は、スリップ量フィードバック制御によりFB制御器72で求められた締結力の指令値を積分処理することで、締結力の指令値を高次数化する。
例えば、発進時の時間軸に対する締結力の特性は、高次フィルタ75を通さないと、図13の破線特性に示すように、時間tの経過に比例して締結力が一定勾配により上昇する一次関数特性になる。これに対し、高次フィルタ75を通すことで時間次数を高める積分処理を行うと、時間軸に対する締結力の特性は、図13の実線特性に示すように、時間tの経過に対して締結力が非線形に変化する三次関数特性になる。
例えば、発進時の時間軸に対する締結力の特性は、高次フィルタ75を通さないと、図13の破線特性に示すように、時間tの経過に比例して締結力が一定勾配により上昇する一次関数特性になる。これに対し、高次フィルタ75を通すことで時間次数を高める積分処理を行うと、時間軸に対する締結力の特性は、図13の実線特性に示すように、時間tの経過に対して締結力が非線形に変化する三次関数特性になる。
前記ストローク変換部76’は、FB制御器72又は高次フィルタ75からの締結力を発進クラッチ81のストロークに変換する変換マップを用い、FB制御器72又は高次フィルタ75から出力された締結力を、ストロークに変換する。そして、このストローク変換部76’で変換されたストロークを得るストローク制御指令を、発進クラッチ81の締結アクチュエータ63に出力する。
前記実スリップ量演算器77’は、発進クラッチ81のモータ回転数Nm(=クラッチ入力回転数)と変速機入力回転数Nin(=クラッチ出力回転数)との差により実スリップ量を演算し、差分器71へ出力する。
次に、自励振動抑制作用を説明する。
発進時、解放されている発進クラッチ81を完全締結に移行するとき、発進ショックを抑えるように発進クラッチ81のスリップ締結制御が行われる。このとき、ドライブプレート82とドリブンプレート83の摩擦面で滑りが発生する。この摩擦面で滑りが発生しているときに問題となるのが「ジャダー」である。
発進時、解放されている発進クラッチ81を完全締結に移行するとき、発進ショックを抑えるように発進クラッチ81のスリップ締結制御が行われる。このとき、ドライブプレート82とドリブンプレート83の摩擦面で滑りが発生する。この摩擦面で滑りが発生しているときに問題となるのが「ジャダー」である。
この「ジャダー」についても、実施例1と同様に、「ジャダーの振幅」は、
ジャダー振幅={1/共振周波数締結力次数}・{exp(μ−V勾配)} …(1)
に示す関係式(1)であらわされることを知見した。
ジャダー振幅={1/共振周波数締結力次数}・{exp(μ−V勾配)} …(1)
に示す関係式(1)であらわされることを知見した。
上記ジャダー振幅の関係式(1)から明らかなように、締結力次数を高次にすることでジャダー振幅を小さくすることができる。この締結力次数の高次化を発進クラッチ81の締結力次数の高次化に置き換えたものが実施例2である。即ち、実施例2では、発進クラッチ81がスリップ制御中のとき、時間軸に対する締結力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する構成とした。
したがって、発進クラッチ81のスリップ制御中、締結力特性の次数を高次にする制御を行うことで、スリップ制御中のジャダー振幅が小さくなる。つまり、発進クラッチ81のスリップ制御が開始されると、ジャダーの発生が無い完全締結領域(又は切り離し解放領域)に移行するまでの間、ジャダー振幅の発達が遅延する制御になる。
この結果、発進クラッチ81のスリップ制御中、振幅の発達を遅延させる制御によりジャダー(自励振動)を抑制することができる。
この結果、発進クラッチ81のスリップ制御中、振幅の発達を遅延させる制御によりジャダー(自励振動)を抑制することができる。
図14は、発進領域にて高次フィルタ75を入れないとき(比較例)と高次フィルタ75を入れたとき(実施例2)での出力トルク対比特性の実験結果を示す。
比較例の場合には、発進開始域にて発進クラッチ81の締結力不足によりスリップ量が上昇し、μ−V特性で負勾配になる側に一気に移行する。このため、矢印Hの枠内特性に示すように、激しいトルク変動によるジャダーが発生する。一方、実施例2の場合には、発進開始域にて発進クラッチ81への締結力確保によりスリップ量の上昇が抑えられることで、μ−V特性で負勾配になる側への移行が遅れる。このため、出力トルク変動が開始するのが遅れ、出力トルク変動が開始するタイミングになると発進クラッチ81の締結力を増大させる完全締結領域に入ってしまい、激しいトルク変動によるジャダーの発生が抑えられるという実験結果が得られた。
比較例の場合には、発進開始域にて発進クラッチ81の締結力不足によりスリップ量が上昇し、μ−V特性で負勾配になる側に一気に移行する。このため、矢印Hの枠内特性に示すように、激しいトルク変動によるジャダーが発生する。一方、実施例2の場合には、発進開始域にて発進クラッチ81への締結力確保によりスリップ量の上昇が抑えられることで、μ−V特性で負勾配になる側への移行が遅れる。このため、出力トルク変動が開始するのが遅れ、出力トルク変動が開始するタイミングになると発進クラッチ81の締結力を増大させる完全締結領域に入ってしまい、激しいトルク変動によるジャダーの発生が抑えられるという実験結果が得られた。
この実験結果により、発進クラッチ81のスリップ制御中、締結力特性の次数を高次にする制御を行うことで、ジャダー(自励振動)を抑制できることが確認された。特に、実施例2のような電気自動車の場合、静粛性がエンジン車よりも高いことで、発進時に発生するジャダーは、乗員に違和感を与える車室内異音や車両振動の原因となる。
次に、効果を説明する。
実施例2における電気自動車の自励振動制御装置にあっては、下記の効果が得られる。
実施例2における電気自動車の自励振動制御装置にあっては、下記の効果が得られる。
(6) 駆動源として走行用モータ10を有し、
走行用モータ10から駆動輪54への動力伝達経路に、発進クラッチ81を摩擦伝動要素として搭載し、
締結力制御手段(図12)は、発進クラッチ81のスリップ締結制御が行われる停車からの発進領域のとき、時間軸に対する発進クラッチ81への締結力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する。
このため、上記(1)〜(4)の効果に加え、発進クラッチ81を駆動系に備えた電気自動車での発進時において、静粛性の阻害要因になる自励振動(ジャダー)の発生を有効に抑制することができる。
走行用モータ10から駆動輪54への動力伝達経路に、発進クラッチ81を摩擦伝動要素として搭載し、
締結力制御手段(図12)は、発進クラッチ81のスリップ締結制御が行われる停車からの発進領域のとき、時間軸に対する発進クラッチ81への締結力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する。
このため、上記(1)〜(4)の効果に加え、発進クラッチ81を駆動系に備えた電気自動車での発進時において、静粛性の阻害要因になる自励振動(ジャダー)の発生を有効に抑制することができる。
以上、本発明の車両の自励振動制御装置を実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1,2では、高次フィルタ75として、FB制御器72で求められた押付け力や締結力の指令値を積分処理することで、押付け力や締結力の指令値を三次関数特性に高次数化する例を示した。しかし、高次フィルタとしては、押付け力や締結力の指令値を二次関数特性に高次数化する例としても良いし、押付け力や締結力の指令値を四次関数特性以上に高次数化する例としても良い。なお、自励振動の遅延制御では、二次〜四次までの高次化により有効な遅延効果が得られることも確認された。
実施例1では、本発明の自励振動制御装置をローラ対の架け替えによる摩擦伝動変速機TMに適用する例を示した。実施例2では、本発明の自励振動制御装置を発進クラッチに適用する例を示した。しかし、本発明の自励振動制御装置は、有段変速機の摩擦締結要素(クラッチ/ブレーキ)やロックアップクラッチ、また、無段変速機の前後進切替機構の摩擦締結要素(クラッチ/ブレーキ)、等の様々な変速機だけでなく、動力伝達系に設けられたブレーキやトランスファー等に対しても適用することができる。要するに、摩擦により動力を伝達する摩擦動力伝達要素であれば適用できる。
実施例1,2では、本発明の自励振動制御装置を、駆動源に走行用モータ10を備えた電気自動車に搭載する例を示した。しかし、本発明の自励振動制御装置を搭載する車両としては、エンジン車やハイブリッド車や燃料電池車、等の駆動源が異なる他の車両であっても勿論良い。
TM 摩擦伝動変速機
2 変速機入力軸
3 クランク軸
21 1速駆動ローラ(駆動側部材)
22 2速駆動ローラ(駆動側部材)
31 1速従動ローラ(従動側部材)
32 2速従動ローラ(従動側部材)
21,31 1速ローラ対(摩擦動力伝達要素)
22,32 2速ローラ対(摩擦動力伝達要素)
4 変速機出力軸
5 デファレンシャルユニット
54 駆動輪
6 変速アクチュエータ(締結力アクチュエータ)
71 差分器
72 FB制御器(フィードバック制御器)
73 切替器
74 ローラ滑り速度制御中判定部(スリップ制御中判定部)
74’ スリップ制御中判定部
75 高次フィルタ
76 クランク角度変換部
76’ ストローク変換部
77 実滑り速度演算器
77’ 実スリップ量演算器
91 モータコントロールユニット
92 自動変速機コントロールユニット
10 走行用モータ(駆動源)
AT 自動変速機
2 変速機入力軸
3 クランク軸
21 1速駆動ローラ(駆動側部材)
22 2速駆動ローラ(駆動側部材)
31 1速従動ローラ(従動側部材)
32 2速従動ローラ(従動側部材)
21,31 1速ローラ対(摩擦動力伝達要素)
22,32 2速ローラ対(摩擦動力伝達要素)
4 変速機出力軸
5 デファレンシャルユニット
54 駆動輪
6 変速アクチュエータ(締結力アクチュエータ)
71 差分器
72 FB制御器(フィードバック制御器)
73 切替器
74 ローラ滑り速度制御中判定部(スリップ制御中判定部)
74’ スリップ制御中判定部
75 高次フィルタ
76 クランク角度変換部
76’ ストローク変換部
77 実滑り速度演算器
77’ 実スリップ量演算器
91 モータコントロールユニット
92 自動変速機コントロールユニット
10 走行用モータ(駆動源)
AT 自動変速機
Claims (6)
- 駆動源と駆動輪との間に配置され、締結力アクチュエータにより駆動側部材と従動側部材との間に締結力を与えて摩擦締結する摩擦動力伝達要素を備えた車両において、
前記締結力アクチュエータへ出力するアクチュエータ指令値により前記摩擦動力伝達要素の締結力を制御する締結力制御手段を設け、
前記締結力制御手段は、前記摩擦動力伝達要素がスリップ制御中のとき、時間軸に対する締結力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する
ことを特徴とする車両の自励振動制御装置。 - 請求項1に記載された車両の自励振動制御装置において、
前記締結力制御手段は、入力値を時間により積分処理する高次フィルタを設け、前記高次フィルタに所定の制御周期で演算される締結力の指令値を通す
ことを特徴とする車両の自励振動制御装置。 - 請求項2に記載された車両の自励振動制御装置において、
前記締結力制御手段は、前記摩擦動力伝達要素の実スリップ相当値と目標スリップ相当値の差分を無くすように締結力の指令値をフィードバック演算するフィードバック制御器を有し、前記フィードバック制御器の下流位置に、前記高次フィルタを設ける
ことを特徴とする車両の自励振動制御装置。 - 請求項3に記載された車両の自励振動制御装置において、
前記締結力制御手段は、前記フィードバック制御器からの締結力の指令値の出力を切り替える切替器と、
前記摩擦動力伝達要素がスリップ制御中であるか否かを判定し、前記切替器を切り替えるスリップ制御中判定部と、を有し、
前記高次フィルタを、前記スリップ制御中判定部にてスリップ制御中であるとの判定結果に基づく前記切替器の切り替え側に設ける
ことを特徴とする車両の自励振動制御装置。 - 請求項1から4までの何れか一項に記載された車両の自励振動制御装置において、
前記駆動源として走行用モータを有し、
前記走行用モータから前記駆動輪への動力伝達経路に、複数のローラ対を摩擦伝動要素とし、前記複数のローラ対の架け替えにより変速する摩擦伝動変速機を搭載し、
前記締結力制御手段は、前記走行用モータの回転数制御により変速アシスト制御が行われるイナーシャフェーズ領域のとき、時間軸に対するローラ対への押付け力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する
ことを特徴とする車両の自励振動制御装置。 - 請求項1から4までの何れか一項に記載された車両の自励振動制御装置において、
前記駆動源として走行用モータを有し、
前記走行用モータから前記駆動輪への動力伝達経路に、発進クラッチを摩擦伝動要素として搭載し、
前記締結力制御手段は、前記発進クラッチのスリップ締結制御が行われる停車からの発進領域のとき、時間軸に対する前記発進クラッチへの締結力特性を二次以上の高次関数特性としたアクチュエータ指令値を出力する
ことを特徴とする車両の自励振動制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015014762A JP2016138618A (ja) | 2015-01-28 | 2015-01-28 | 車両の自励振動制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2015014762A JP2016138618A (ja) | 2015-01-28 | 2015-01-28 | 車両の自励振動制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2016138618A true JP2016138618A (ja) | 2016-08-04 |
Family
ID=56559046
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2015014762A Pending JP2016138618A (ja) | 2015-01-28 | 2015-01-28 | 車両の自励振動制御装置 |
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JP (1) | JP2016138618A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020066340A1 (ja) * | 2018-09-28 | 2020-04-02 | 本田技研工業株式会社 | 車両用電動機の冷却構造および車両用電動機の冷却構造の冷却ダクトの製造方法 |
CN113626936A (zh) * | 2021-08-16 | 2021-11-09 | 中国汽车工程研究院股份有限公司 | 一种汽车摩擦异响风险预测方法及装置 |
WO2024062835A1 (ja) * | 2022-09-20 | 2024-03-28 | 株式会社Soken | 車両制御システム |
-
2015
- 2015-01-28 JP JP2015014762A patent/JP2016138618A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2020066340A1 (ja) * | 2018-09-28 | 2020-04-02 | 本田技研工業株式会社 | 車両用電動機の冷却構造および車両用電動機の冷却構造の冷却ダクトの製造方法 |
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