添付の図面を参照し、本発明を説明する。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1におけるエスカレータを示す断面図である。図2は、この発明の実施の形態1におけるエスカレータの構成を示すブロック図である。
エスカレータのトラス1は、建物の上下階床間に掛け渡される。トラス1は、エスカレータの自重及び積載荷重を支持する。エスカレータの乗客は、上下階床間を移動する際にステップ2に乗る。ステップ2は、ステップチェーン3に連結される。ステップチェーン3は、無端状に形成される。多数のステップ2がステップチェーン3に連結されることにより、上部の乗降口4から下部の乗降口5に渡ってステップ2が隙間無く配置される。
乗降口4の下方に、機械室6が設けられる。機械室6は、トラス1の上端部に形成された空間である。機械室6に、例えば駆動電動機7、減速機8及び制御装置9が備えられる。また、機械室6に設けられた軸に、スプロケット10及び11が設けられる。
駆動電動機7は、ステップ2を駆動するための駆動力を発生させる。減速機8は、駆動電動機7の出力を減速し、チェーンを介してスプロケット10及び11が設けられた軸を回転させる。ステップチェーン3は、ステップ駆動用のスプロケット10に巻き掛けられる。スプロケット10が軸とともに回転することにより、ステップ2が乗降口4及び乗降口5間を移動する。
制御装置9は、各種運転を制御する。例えば、制御装置9は、通常運転及び緊急停止時の運転を制御する。通常運転は、乗客を乗降口4から乗降口5に移動させる下り運転と乗客を乗降口5から乗降口4に移動させる上り運転とを含む。制御装置9に駆動電動機7が電気的に接続される。駆動電動機7の制御は、制御装置9によって行われる。
移動手摺12は、ステップ2に乗降する乗客及びステップ2に乗っている乗客が安全のために掴むものである。移動手摺12は無端状に形成される。ステップ2の両側に欄干13が設けられる。移動手摺12は、上部側が、欄干13の縁に沿うように配置される。移動手摺12は、乗降口4及び乗降口5で上下に反転される。移動手摺12の下部側は、ステップ2の両側に設けられたスカートガード内に配置される。
移動手摺12は、手摺駆動装置14によって駆動される。手摺駆動装置14は、例えば、摩擦駆動方式によって移動手摺12を駆動する。摩擦駆動方式を採用する手摺駆動装置14は、例えば駆動ローラ15及び加圧ローラ16(図3参照)を備える。移動手摺12は、駆動ローラ15と加圧ローラ16とにより、上下(表裏)から挟み込まれる。手摺駆動装置14は、この移動手摺12を挟み込んだ状態で駆動ローラ15を回転させることにより、移動手摺12との摩擦力を利用して移動手摺12を駆動する。
手摺駆動用のスプロケット11に、手摺チェーン17が巻き掛けられる。スプロケット11の回転力は、手摺チェーン17によって手摺駆動装置14に伝達される。スプロケット11が上記軸及びスプロケット10とともに回転することにより、移動手摺12が手摺駆動装置14によって駆動される。即ち、駆動電動機7は、移動手摺12を駆動するための駆動力も発生させる。通常運転が行われている間、移動手摺12は、往路側のステップ2と同期するように上下階床間を循環移動する。
安全装置18は、駆動電動機7を停止させることが必要なある状態を検出すると動作する。安全装置18は、制御装置9に電気的に接続される。安全装置18が動作すると、その旨の情報が安全装置18から制御装置9に出力される。
手摺ロック装置19は、移動手摺12を挟んで停止させるための装置である。手摺ロック装置19は、移動手摺12を移動及び停止させる手摺駆動装置14とは別に設けられる。手摺ロック装置19は、制御装置9に電気的に接続される。手摺ロック装置19の制御は、制御装置9によって行われる。
図3及び図5は、手摺ロック装置19の機能を説明するための図である。図3は通常運転が行われている時の状態を示す。図4は図3のA−A断面を示す図である。手摺ロック装置19は、例えば上部材19a及び下部材19bを備える。通常運転が行われている間、上部材19aと下部材19bとの間に隙間が形成される。移動手摺12は、上部材19aと下部材19bとの間に形成された隙間を通過する。通常運転が行われている間、移動手摺12は、上部材19a及び下部材19bのどちらにも接触しない。
図5は手摺ロック装置19が動作した時の状態を示す。図6は図5のB−B断面を示す図である。手摺ロック装置19が動作すると、移動手摺12は、上部材19aと下部材19bとによって上下(表裏)から挟み込まれる。手摺ロック装置19は、例えば上部材19aを移動手摺12側に押し付ける押付部材と下部材19bを移動手摺12側に押し付ける押付部材(共に図示せず)とを備える。押付部材は、例えばバネでも良い。手摺ロック装置19が動作すると、手摺駆動装置14を動作させても移動手摺12を移動させることはできない。
手摺監視装置20は、移動手摺12の状態を監視する。例えば、手摺監視装置20は、移動手摺12が移動する速度を監視する。手摺監視装置20は、移動手摺12の移動速度が0であれば、移動手摺12が停止していることを検出する。手摺監視装置20は、制御装置9に電気的に接続される。移動手摺12が停止していることが手摺監視装置20によって検出されると、その旨の情報が手摺監視装置20から制御装置9に出力される。移動手摺12が停止していることを検出する方法は、他の方法であっても良い。
図2に示すように、制御装置9は、例えば判定部21、検出部22及び制御部23を備える。判定部21は、エスカレータの運転方向を判定する。判定部21が運転方向を判定する方法は如何なる方法であっても良い。検出部22は、安全装置18が動作したことを検出する。検出部22は、例えば安全装置18から入力される情報に基づいて上記検出を行う。制御部23は、制御装置9に接続された機器を制御する。
次に、図7も参照し、上記構成を有するエスカレータの動作について説明する。図7は、この発明の実施の形態1におけるエスカレータの動作を示すフローチャートである。
制御装置9は、安全装置18が動作したか否かを判定する(S1)。例えば、通常運転が行われている時に駆動電動機7を緊急停止させなければならない事象が発生すると、安全装置18が動作する。これにより、安全装置18が動作したことが検出部22によって検出される(S1のYes)。
次に、制御装置9は、下り運転が行われているか否かを判定する(S2)。下り運転が行われていることが判定部21によって判定されると(S2のYes)、制御部23は、手摺ロック装置19を動作させる(S3)。即ち、制御部23は、下り運転が行われている時に安全装置18が動作したことが検出部22によって検出されると、その直後に手摺ロック装置19を動作させる。
安全装置18が動作したことが検出部22によって検出されると、制御部23は、駆動電動機7を停止させるための指令を出力する。駆動電動機7を停止させるための指令が出力されても、ステップ2は慣性力によって僅かな時間だけ移動し続ける。駆動電動機7を停止させるための指令が出力されるとステップ2が瞬時に停止する訳ではない。このため、S3で手摺ロック装置19が動作すると、ステップ2が停止する前に移動手摺12が停止する。即ち、下り運転が行われている時に安全装置18が動作すると、移動手摺12が停止した後にステップ2が停止する。これにより、移動手摺12を掴んでいる乗客は、上体が上部の乗降口4の方に傾くことになる。ステップ2の上にいる乗客が乗降口5側に転倒したり前方にいる他の乗客にぶつかったりすることを簡単な構成によって防ぐことができる。
S2において上り運転が行われていることが判定部21によって判定されると、制御装置9は、移動手摺12が停止したか否かを判定する(S4)。上述したように、安全装置18が動作したことが検出部22によって検出されると、制御部23は、駆動電動機7を停止させるための指令を出力する。これにより、駆動電動機7の機能によってステップ2及び移動手摺12が停止する。移動手摺12が停止していることは、手摺監視装置20によって検出される。制御部23は、移動手摺12が停止している旨の情報が手摺監視装置20から入力されると、手摺ロック装置19を動作させる(S3)。即ち、制御部23は、移動手摺12が停止していることが手摺監視装置20によって検出された後に手摺ロック装置19に移動手摺12を挟ませる。
上り運転が行われている場合、ステップ2が停止する前に移動手摺12が停止すると、移動手摺12を掴んでいる乗客の上体が下部の乗降口5の方に傾いてしまう。このため、上り運転が行われている時は、駆動電動機7の機能によってステップ2及び移動手摺12が停止した後に手摺ロック装置19を動作させることが良い。このような構成を採用することにより、例えば移動手摺12が停止した後に乗客の重さでステップ2が下降するような事故が発生した場合に、移動手摺12がステップ2とともに移動してしまうことを防止できる。乗客は、固定された移動手摺12を掴んで対処することができる。
なお、上り運転が行われている場合、制御部23は、安全装置18が動作したことが検出部22によって検出されると、安全装置18が動作してから一定時間が経過した後に手摺ロック装置19に移動手摺12を挟ませても良い。上記一定時間は、例えば、安全装置18が動作してから駆動電動機7の機能によってステップ2及び移動手摺12が停止するまでに必要な時間より長い時間に設定される。このような構成を採用すれば、手摺監視装置20を備えていなくても上記と同様の効果を得ることができる。
本実施の形態において、符号21〜23に示す各部は制御装置9が有する機能を示す。制御装置9は、ハードウェア資源として、例えば入出力インターフェースとCPUとメモリとを含む回路を備える。制御装置9は、メモリに記憶されたプログラムをCPUによって実行することにより、各部21〜23が有する各機能を実現する。各部21〜23が有する機能の一部又は全部をハードウェアによって実現しても良い。
本実施の形態では、下り運転及び上り運転の双方において手摺ロック装置19を動作させる場合について説明した。これは一例である。下り運転が行われている時のみ手摺ロック装置19を動作させても良い。また、下り運転しか行わないエスカレータであれば、制御装置9に判定部21を備える必要はない。かかる場合、制御装置9は、図7のS2及びS4の処理を行わない。常に下り運転が行われているため、制御部23は、安全装置18が動作したことが検出部22によって検出されると、その直後に手摺ロック装置19を動作させる。