JP2016137455A - 複合イオン交換膜及びその製造方法、イオン交換膜モジュール、並びに、イオン交換装置 - Google Patents

複合イオン交換膜及びその製造方法、イオン交換膜モジュール、並びに、イオン交換装置 Download PDF

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Abstract

【課題】一価イオンの選択性に優れた複合イオン交換膜、及び、その製造方法、並びに、複合イオン交換膜を用いたイオン交換膜モジュール、及び、イオン交換装置の提供。
【解決手段】セルロースナノファイバーを含む表面層2を、片面又は両面に有する複合イオン交換膜1で、セルロースナノファイバーは、カルボキシ基、カルボン酸塩、スルホ基、及び、スルホン酸塩よりなる群から選ばれた、少なくとも1種を表面に有し、表面層2が2以上の架橋用のエチレン性不飽和基であり、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基及びスチリル基から選である複合イオン変換膜。
【選択図】図1

Description

本発明は、複合イオン交換膜及びその製造方法、イオン交換膜モジュール、並びに、イオン交換装置に関する。
イオン交換膜は、電気脱塩(EDI:Electrodeionization)、連続的な電気脱塩(CEDI:Continuous Electrodeionization)、電気透析(ED:Electrodialysis)、逆電気透析(EDR:Electrodialysis reversal)等に用いられる。
電気脱塩(EDI)は、イオン輸送を達成するためにイオン交換膜と電位を使用して、水性液体からイオンが取り除かれる水処理プロセスである。従来のイオン交換のような他の浄水技術と異なり、酸又は苛性ソーダのような化学薬品の使用を要求せず、超純水を生産するために使用することができる。電気透析(ED)及び逆電気透析(EDR)は、水及び他の流体からイオン等を取り除く電気化学の分離プロセスである。
特許文献1には、イオン交換膜として、カチオン交換膜又はアニオン交換膜の一方の面に、カチオン性基及び/又はアニオン性基を有するイオン性構造体層を形成してなるイオン交換複合膜体であって、上記カチオン性基及び/又はアニオン性基が、平均粒子径が10nm〜10μmの範囲のアニオン性粒状重合体及び/又はカチオン性粒状重合体に由来する基であることを特徴とするイオン交換複合膜体が記載されている。
特許文献2には、イオン交換膜として、水素イオン伝導性を有する炭化水素ベースのカチオン交換樹脂と、親水基を有する線維状ナノ粒子と、を含む、燃料電池のためのポリマー電解質膜が記載されている。
特開2006−21193号公報 特開2013−514625号公報
本発明が解決しようとする課題は、一価イオンの選択透過性に優れた複合イオン交換膜、及び、その製造方法、並びに、上記複合イオン交換膜を用いたイオン交換膜モジュール、及び、イオン交換装置を提供することである。
本発明の上記課題は、以下の<1>、<8>、<15>又は<16>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<7>及び<9>〜<14>と共に以下に記載する。
<1> セルロースナノファイバーを含む表面層を、ベースとなるイオン交換膜の片面又は両面に有することを特徴とする複合イオン交換膜、
<2> 上記セルロースナノファイバーが、カルボキシ基、カルボン酸塩、スルホ基、及び、スルホン酸塩よりなる群から選ばれた、少なくとも1種を表面に有する、<1>に記載の複合イオン交換膜、
<3> 上記表面層が、2以上の架橋性基を有する化合物の硬化物を更に含む、<1>又は<2>に記載の複合イオン交換膜、
<4> 上記架橋性基が、エチレン性不飽和基である、<3>に記載の複合イオン交換膜、
<5> 上記架橋性基が、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、及び、スチリル基よりなる群から選ばれた、少なくとも1つの基である、<3>又は<4>に記載の複合イオン交換膜、
<6> 上記架橋性基が、(メタ)アクリルアミド基である、<3>〜<5>のいずれか1つに記載の複合イオン交換膜、
<7> 複合アニオン交換膜である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の複合イオン交換膜、
<8> ベースとなるイオン交換膜の片面又は両面に、セルロースナノファイバーを含む分散液を塗布する塗布工程を含む、複合イオン交換膜の製造方法、
<9> 更に上記分散液を乾燥させる乾燥工程を含む、<8>に記載の複合イオン交換膜の製造方法、
<10> 上記分散液が2以上の架橋性基を有する化合物を更に含む、<8>又は<9>に記載の複合イオン交換膜の製造方法、
<11> 上記架橋性基が、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、及び、スチリル基のいずれかである、<10>に記載の複合イオン交換膜の製造方法、
<12> 上記架橋性基が、(メタ)アクリルアミド基である、<10>又は<11>に記載の複合イオン交換膜の製造方法、
<13> 紫外光及び/又は熱により上記分散液を架橋する架橋反応工程を更に含む、<8>〜<12>のいずれか1つに記載の複合イオン交換膜の製造方法、
<14> 複合アニオン交換膜の製造方法である、<8>〜<13>のいずれか1つに記載の複合イオン交換膜の製造方法、
<15> <1>〜<7>のいずれか1つに記載の複合イオン交換膜を備えたイオン交換膜モジュール、
<16> <1>〜<7>のいずれか1つに記載の複合イオン交換膜を備えたイオン交換装置。
本発明によれば、一価イオンの選択透過性に優れた複合イオン交換膜、及び、その製造方法、並びに、上記複合イオン交換膜を用いたイオン交換膜モジュール、及び、複合イオン交換装置を提供することができた。
本発明の複合イオン交換膜の一例を示す概略断面図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
更に、各式における二重結合の置換様式である幾何異性体は、表示の都合上、異性体の一方を記載したとしても、特段の断りがない限り、E体であってもZ体であっても、これらの混合物であっても構わない。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
なお、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”はアクリレート及びメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリル及びメタクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイル及びメタクリロイルを表し、”(メタ)アクリルアミド”はアクリルアミド及びメタクリルアミドを表す。
また、本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
(複合イオン交換膜)
本発明の複合イオン交換膜は、セルロースナノファイバーを含む表面層を、ベースとなるイオン交換膜(以下、「ベース膜」ともいう。)の片面又は両面に有することを特徴とする。
本発明の複合イオン交換膜は特に限定されず、複合アニオン交換膜であっても複合カチオン交換膜であってもよいが、複合アニオン交換膜であることが好ましい。
本発明の複合イオン交換膜は、セルロースナノファイバーを含む表面層を、両面に有することが好ましい。
本発明者が鋭意検討した結果、セルロースナノファイバーを含む表面層を片面又は両面に有する複合イオン交換膜は、一価イオンの選択性に優れることを見出した。
複合イオン交換膜が上記表面層を有することにより、分子ふるい効果や、電荷反発効果によってイオン半径が大きく、電荷の大きな二価イオンの透過が抑制されていると推定している。
また、本発明の複合イオン交換膜の製造方法によれば、安価なイオン交換膜の表面に上記表面層を形成することにより、一価イオンの選択性を付与することが可能となる。更に、上記表面層を紫外光の照射という簡便な方法により製造することも可能である。すなわち、一価イオンの選択性に優れる複合イオン交換膜を、簡便な方法により低コストで製造可能となることを見出した。
本発明の複合イオン交換膜について、図を参照しながら説明する。なお、図中、同一の符号は同一の対象を示すものとする。
図1は、本発明の複合イオン交換膜を示す概略断面図である。
図1では、ベースとなるイオン交換膜1は、両面に表面層2を有している。ベースとなるイオン交換膜1は、表面層2を両面に有していることが好ましいが、片面にのみ有していてもよい。
また、ベースとなるイオン交換膜1は、アニオン交換膜であることが好ましく、多孔質支持体と、多孔質支持体に担持された、陰イオン交換性ポリマーを含む樹脂層とを有することが好ましい。
以下、本発明の複合イオン交換膜を構成する、各成分について説明する。
<表面層>
〔セルロースナノファイバー〕
本発明の複合イオン交換膜が有する表面層は、セルロースナノファイバーを含む。
本発明に用いられるセルロースナノファイバーは、数平均繊維径が3〜100nmであることが好ましく、3〜50nmであることがより好ましく、3〜30nmであることが更に好ましい。数平均繊維長は、10〜2,000nmであることが好ましく、50〜1,800nmであることがより好ましく、100〜1,600nmであることが更に好ましい。
また、最大繊維径は1,000nm以下であることが好ましく、800nm以下であることがより好ましい。
数平均繊維径及び数平均繊維長が上記の範囲内であれば、一価のイオン選択性に優れた複合イオン交換膜を得ることができる。
セルロースナノファイバーの数平均繊維径及び数平均繊維長は、以下の方法で解析することができる。
まず、0.05〜0.1重量%のセルロースナノファイバー分散液を調製する。この分散液を親液化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。その後、この試料を、5,000倍、10,000倍、又は50,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡観察を行う。この際に、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定したときに、この軸が20本以上のセルロースナノファイバーと交差するような試料(濃度等)及び観察条件(倍率等)とする。
そして、この条件を満足する観察画像に対して、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯するセルロースナノファイバーの繊維長及び繊維径を目視で読み取っていく。こうして少なくとも3枚の重複しない領域の画像について繊維長及び繊維径の値を読み取る。これにより、最低20本×2(軸)×3(枚)=120本の繊維について、繊維長及び繊維径の情報が得られる。
以上により得られた繊維長及び繊維径のデータから、数平均繊維長及び数平均繊維径を算出することができる。
なお、上記ではTEM観察を行うこととしたが、繊維径の大きな繊維を含む場合には、SEM観察により行ってもよい。
本発明に用いられるセルロースナノファイバーを構成するセルロースの結晶化度は、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。結晶化度は、繊維学会誌 Vol.46 P324−329に記載の方法により測定することができる。
一価イオンの選択性をより向上させるため、本発明に用いられるセルロースナノファイバーは、カルボキシ基、カルボン酸塩、スルホ基、及び、スルホン酸塩よりなる群から選ばれた、少なくとも1種を表面に有することが好ましい。
セルロースナノファイバーの製造方法は特に限定されないが、天然セルロースを原料として、水系溶媒中においてN−オキシル化合物を酸化触媒とし、酸化剤を作用させることにより酸化セルロースを得て、これを解繊して水系溶媒中に分散する方法や、結晶セルロースを硫酸等の無機酸により加水分解する方法が好ましく用いられる。
上記N−オキシル化合物を用いた方法については、特開2014−14761号公報に詳細が記載されている。
上記N−オキシル化合物を用いた方法によれば、表面にカルボキシ基及び/又はカルボン酸塩を表面に有するセルロースナノファイバーが得られる。
上記結晶セルロースを硫酸により加水分解する方法によれば、表面にスルホ基及び/又はスルホン酸塩を表面に有するセルロースナノファイバーが得られる。例えば、特開2010−126637号公報に詳細が記載されている。
表面層中のセルロースナノファイバーの含有量は、表面層の全質量に対し、5〜50質量%であることが好ましく、8〜45質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることが更に好ましい。
〔2以上の架橋性基を有する化合物の硬化物〕
本発明に用いられる表面層は、2以上の架橋性基を有する化合物の硬化物を更に含むことが好ましい。
上記硬化物は、上記2以上の架橋性基を有する化合物を含み、かつ、セルロースナノファイバーを含む分散液を架橋することにより得ることが好ましい。
上記架橋性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、及び、スチリル基よりなる群から選ばれた、少なくとも1つの基がより好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は、(メタ)アクリルアミド基が更に好ましく、(メタ)アクリルアミド基が特に好ましい。
本発明に用いられる2以上の架橋性基を有する化合物としては、具体的には、下記に示す多官能(メタ)アクリルアミド化合物、及び、多官能アクリレート化合物が挙げられる。
−多官能(メタ)アクリルアミド化合物−
多官能(メタ)アクリルアミド化合物としては、複合イオン交換膜の一価イオンの選択性の観点から、2〜10官能の(メタ)アクリルアミド化合物が好ましく、2〜6官能の(メタ)アクリルアミド化合物がより好ましく、2〜4官能の(メタ)アクリルアミド化合物が更に好ましい。
また、多官能(メタ)アクリルアミド化合物の分子量は、150〜2,000が好ましく、200〜1,500がより好ましく、250〜1,000が更に好ましい。
多官能(メタ)アクリルアミド化合物としては、下記式1〜3で表される化合物や、国際公開第2014/050993号公報に記載の成分Aが好ましく用いられる。
Figure 2016137455
式1及び2中、mは1〜6の整数を表し、1〜3が好ましく、1又は2がより好ましい。
1は任意の位置に酸素原子を含んでもよいアルキレン基を表す。上記アルキレン基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、2〜15であることがより好ましい。また、L1はポリアルキレングリコールを含むことが好ましく、ポリエチレングリコールを含むことがより好ましい。
11、R12、R21、R22はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表すが、いずれも水素原子であることが好ましい。
Figure 2016137455
式3中、Zは3〜6価のポリオールから、水酸基の水素原子をn個除いたポリオール残基を表す。R3は水素原子又はメチル基を表す。nは3〜6の整数を表す。
式3において、R3はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表すが、いずれも水素原子であることが好ましい。
式3において、Zは3〜6価のポリオールから、水酸基の水素原子をn個除いたポリオール残基を表す。上記ポリオールは、3〜5価のポリオールであることが更に好ましく、3〜4価のポリオールであることが特に好ましい。
上記ポリオールは、炭素数3〜12が好ましく、炭素数4〜10が更に好ましく、炭素数4〜6が特に好ましい。上記ポリオールは、分子内にエーテル結合を含んでいてもよい。
上記ポリオールの具体例としては、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられ、特に、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールが好ましい。
式1中のnは3〜6の整数を表すが、3〜5が好ましく、3又は4がより好ましい。
本発明における表面層に好適に用いられる多官能(メタ)アクリルアミド化合物の具体例を下記に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2016137455
Figure 2016137455
Figure 2016137455
上記化合物の中でも、M−1〜M−5が好ましく、M−2又はM−5がより好ましい。
−多官能(メタ)アクリレート化合物−
本発明の表面層に用いられる多官能(メタ)アクリレート化合物は、アルキレングリコールを含むことが好ましく、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが更に好ましく、ポリエチレングリコールジアクリレートが特に好ましい。
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレート化合物の分子量は、150〜2,000が好ましく、200〜1,500がより好ましく、250〜1,200が更に好ましい。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、上市されている化合物を使用することもできる。具体的には、A−200、A−400、A−600、A−1000、APG−400、APG−700、A−GLY−9E、A−GLY−20E、9G、14G、23G(以上、新中村化学(株)製)が例示される。
表面層中の2以上の架橋性基を有する化合物の含有量は、表面層の全質量に対し、40〜95質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましく、55〜80質量%であることが更に好ましい。
〔表面層の特性〕
本発明に用いられる表面層の厚さは、片面の厚さとして1〜50μmが好ましく、1.5〜40μmがより好ましく、2〜30μmが特に好ましい。
<ベースとなるイオン交換膜>
本発明に用いられるベースとなるイオン交換膜としては、特に制限なく公知のイオン交換膜が使用でき、例えば、炭化水素系やフッ素系のイオン交換膜を用いることができる。製造適性の観点から炭化水素系のイオン交換膜が好ましく、スチレン系、アクリル系や主鎖型芳香族系イオン交換膜がより好ましく、アクリル系又はスチレン系のイオン交換膜が更に好ましい。
本発明における炭化水素系のイオン交換膜とは、炭化水素を含有する樹脂を含有するイオン交換膜を表す。
本発明におけるフッ素系のイオン交換膜とは、パーフルオロアルキレン基を含有する樹脂を含有するイオン交換膜を表す。上記樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等が挙げられる。
本発明におけるスチレン系のイオン交換膜とは、スチレン化合物に由来する樹脂を含有するイオン交換膜を表す。スチレン化合物としては、置換基を有していてもよいスチレン、ジビニルベンゼンが好適に挙げられる。
本発明におけるアクリル系のイオン交換膜とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物に由来する樹脂を含有するイオン交換膜を表す。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物及び(メタ)アクリルアミド化合物が好適に挙げられる。
また、上記ベースとなるイオン交換膜としては、アニオン交換膜が好ましい。
以下、ベースとなるイオン交換膜の例として、アクリル系のアニオン交換膜について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔アクリル系のアニオン交換膜〕
本発明に用いられるアクリル系のアニオン交換膜は、多孔質支持体に担持されたイオン交換樹脂層を有することが好ましい。
上記アクリル系のアニオン交換膜の多孔質支持体及び樹脂層を含む複合体としての膜厚は、10〜500μmが好ましく、30〜300μmがより好ましく、40〜250μmが特に好ましい。 膜厚がこの範囲内にあることにより、膜の電気抵抗を低く抑えることができる。
−多孔質支持体−
本発明に用いられるアクリル系のアニオン交換膜は、多孔質支持体を有することが好ましい。この多孔質支持体の空孔に後述の膜形成用の硬化性組成物を存在させることにより、多孔質支持体を膜の一部として構成することができる。補強材料としての多孔質支持体としては、例えば、合成織布、又は合成不織布等の不織布、スポンジ状フィルム、微細な貫通孔を有するフィルムが挙げられる。
本発明における多孔質支持体を形成する素材は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド及びそれらのコポリマーであるか、あるいは、例えばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルミド(polyethermide)、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、酢酸セルロース、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン及びそれらのコポリマーに基づく多孔質膜が挙げられる。市販の多孔質支持体は、例えば、三菱製紙(株)、ニッポン高度紙工業(株)、旭化成せんい(株)、日本バイリーン(株)、タピルス社、Freudenberg Filtration Technologies社から市販されている。なお、多孔質支持体及び補強材料はエネルギー線照射による重合硬化反応を行う場合は、エネルギー線の波長領域を遮らないこと、すなわち、重合硬化に用いられる波長の照射を通過させることが要求される。
ここで、多孔質補強材料は、樹脂層形成用組成物が浸透することができるものであることが好ましい。
また、多孔質支持体は親水性を有することが好ましい。支持体に親水性を付与するには、コロナ処理、プラズマ処理、フッ素ガス処理、オゾン処理、硫酸処理、シランカップリング剤処理などの一般的な方法を使用することができる。
本発明における多孔質支持体は不織布が好ましく、不織布の中でも、ポリエチレンとポリプロピレンの複合繊維からなる不織布が好ましい。また、この複合繊維の繊維径は、0.5〜20μmが好ましく、1〜18μmがより好ましく、2〜15μmが特に好ましい。
本発明における多孔質支持体の厚さは、20〜500μmが好ましく、30〜400μmが更に好ましく、40〜250μmが特に好ましい。
−樹脂層−
本発明に用いられる、アクリル系のアニオン交換膜の樹脂層は、陰イオン交換性ポリマーを含有する。
上記陰イオン交換性ポリマーは、いずれもα位にアルキル基を有してもよいアクリロイル基から得られる単位を含むポリマーである。
ここで、α位にアルキル基を有してもよいアクリロイル基は、α位にアルキル基を有してもよいアクリロイルアミノ基若しくはアクリロイルオキシ基が好ましく、α位にアルキル基を有してもよいアクリロイルアミノ基がより好ましい。
本発明において、陰イオン交換基を有するイオン交換性ポリマーは、α位にアルキル基を有してもよいアクリロイル基から得られる単位を含むポリマーであれば、どのような陰イオン交換基でも構わないが、ピリジニウムのような含窒素ヘテロ環における窒素原子がカチオン、4級化された窒素原子を有するもの、若しくは芳香族ヘテロ環の窒素原子がアルキル化若しくはアリール化のように置換基で置換されたもの、又は4級化されたアミノ基、すなわち、オニオ基を有するものが好ましい。
中でも、式IAで表される単位を有するイオン交換性ポリマーが好ましい。
Figure 2016137455
式IAにおいて、RA1は水素原子又はアルキル基を表し、RA2〜RA4はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表す。ここで、RA2〜RA4のうち2つ以上が互いに結合して環を形成してもよい。ZA1は−O−又は−N(Ra)−を表す。ここで、Raは水素原子又はアルキル基を表す。LA1はアルキレン基を表す。XA1はハロゲンイオン又は脂肪族若しくは芳香族カルボン酸イオンを表す。
A1、RA2〜RA4及びRaのアルキル基は、直鎖若しくは分岐のアルキル基で、炭素数は1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が更に好ましく、1又は2が特に好ましく、1が最も好ましい。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ドデシル、i−デシルが挙げられる。
A2〜RA4のアリール基の炭素数は、6〜16が好ましく、6〜12がより好ましく、6〜10が更に好ましい。例えば、フェニル、ナフチルが挙げられる。
A1はアルキレン基の炭素数は、1〜10が好ましく、2〜10がより好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4が更に好ましく、2又は3が特に好ましく、3が最も好ましい。例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレンが挙げられる。
A1におけるハロゲンイオンは、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンが挙げられる。
A1における脂肪族カルボン酸イオンの炭素数は、1〜11が好ましく、2〜7がより好ましく、2〜5が更に好ましく、2又は3が特に好ましく、2が最も好ましい。
脂肪族カルボン酸イオンは、飽和炭化水素のカルボン酸、不飽和炭化水素のカルボン酸のいずれでもよいが、飽和炭化水素のカルボン酸が好ましい。
A1における芳香族カルボン酸イオンは、アリールカルボン酸イオン及びヘテロアリールカルボン酸イオンが好ましい。ここで、ヘテロアリールは、5又は6員環が好ましく、環構成ヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。芳香族カルボン酸イオンの炭素数は、1〜17が好ましく、2〜13がより好ましく、3〜11が更に好ましい。例えば、安息香酸イオン、ナフタレンカルボン酸イオン、ニコチン酸イオン、イソニコチン酸イオンが挙げられる。
A2〜RA4のうち2つ以上が互いに結合して形成する環としては、5又は6員環の単環若しくは架橋環が好ましく、炭素数は、4〜16が好ましく、4〜10がより好ましい。例えば、ピロリジン環、ピペラジン環、ピペリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、インドール環、キヌクリジン環が挙げられる。
A1は、水素原子、メチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。RA1〜RA4はメチル基、エチル基が好ましい。ZA1は、−N(Ra)−が好ましく、Raは、水素原子が好ましい。XA1は、ハロゲン原子が好ましい。
以下に、式IAで表される単位の具体例を示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。
Figure 2016137455
Figure 2016137455
式IAで表される単位は、下記式MAで表される化合物から得ることができる。
Figure 2016137455
式MAにおいて、RA1〜RA4、ZA1、LA1及びXA1は、式IAにおけるRA1〜RA4、ZA1、LA1及びXA1と同義であり、好ましい範囲も同じである。
以下に、式MAで表される化合物の具体例を示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。
Figure 2016137455
Figure 2016137455
本発明に用いられる陰イオン交換基を有するイオン交換性ポリマーは、上記式IAで表される単位に加えて、架橋剤から得られる単位を有することが好ましい。
架橋剤から得られる単位の中でも、本発明では、下記式ICLで表される単位を有することが好ましい。
Figure 2016137455
式ICLにおいて、RCL1はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。ZCL1及びZCL2はそれぞれ独立に、−O−又は−N(Ra)−を表す。ここで、Raは水素原子又はアルキル基を表す。LCL1はp1+1価の炭素数2以上の連結基を表す。p1は1以上の整数を表す。
ここで、RCL1は式IAにおけるRA1と同義であり、好ましい範囲も同じである。ZCL1、ZCL2は式IAにおけるZA1と同義であり、好ましい範囲も同じである。
p1は1〜4の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1又は2が更に好ましく、1が特に好ましい。
CL1は、p1+1価の連結基を表すが、p1+1価の炭化水素基又は、p1+1価で、−O−、−S−又はN(Ra)−と、炭化水素基が組み合わされた基が好ましい。ここで、Raは水素原子又はアルキル基を表す。連結基の炭素数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。
CL1及びZCL2が、−N(Ra)−の場合、LCL1は、p1+1価の炭化水素基が好ましい。このような炭化水素基は炭化水素基の炭素数は1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。
CL1が2価の炭化水素基の場合、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレンが挙げられる。
CL1及びZCL2が、−O−の場合、LCL1は、p1+1価で、−O−、−S−又はN(Ra)−と、炭化水素基が組み合わされた基が好ましい。中でも、−O−と炭化水素基が組み合わされた基が好ましい。
CL1が2価の連結基の場合、例えば、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基が好ましく、オキシエチレン基、ポリオキシエチレン基、オキシプロピレン基、ポリオキシプロピレン基が挙げられる。
本発明では、特にLCL1の連結基は無置換が好ましい。
式ICLで表される単位は、下記式CLで表される化合物から得ることができる。
Figure 2016137455
式CLにおいて、RCL1、ZCL1、ZCL2、LCL1、p1は式ICLにおけるRCL1、ZCL1、ZCL2、LCL1、p1と同義であり、好ましい範囲も同じである。
以下に、式CLで表される化合物の具体例を示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。
Figure 2016137455
Figure 2016137455
また、その他の架橋剤から得られる単位としては、本発明では、下記式Aで表される化合物より得られる単位が好ましい。
Figure 2016137455
式Aにおいて、RA2及びRA3は各々独立に、水素原子又はアルキル基を表し、RB4〜RB7は各々独立に、アルキル基又はアリール基を表す。ZA2及びZA3は各々独立に−NRa−を表す。ここで、Raは水素原子又はアルキル基を表す。LA2及びLA3は各々独立にアルキレン基を表し、RXはアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、−O−、ケトン基、−SO2−、又はこれらが組み合わされた2価の連結基を表す。2価の連結はそれぞれ置換基を有していてもよい。XA2及びXA3はそれぞれ独立に、ハロゲンイオン又は脂肪族若しくは芳香族カルボン酸イオンを表す。
ここで、RA2、RA3は式IAにおけるRA1と同義であり、水素原子若しくはメチル基が好ましい。
B4〜RB7は各々独立に、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
A2及びZA3は式IAにおけるZA1と同義であり、−NH−若しくはNCH3−が好ましい。。
A2及びXA3は式IAにおけるXA1と同義であり、塩素イオンが好ましい。
Xはアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、−O−又はこれらが組み合わされた2価の連結基を表し、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルケニレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、又はそれらが2以上結合した二価の基を表す事が好ましい。またRXは置換されていてもよく、代表的な置換基としてはハロゲン原子が挙げられる。
A2及びLA3は各々独立にアルキレン基を表し、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましい。
以下に、式Aで表される重合性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2016137455
Figure 2016137455
式Aで表される重合性化合物は、下記式A−1で表される化合物と下記式A−2で表される化合物を反応させることによって得られる。
Figure 2016137455
式A−1において、RA2、RB4、RB5、ZA2及びLA2は式Aにおける対応するRA2、RB4、RB5、ZA2及びLA2と同義であり、好ましい範囲も同じである。
式A−2において、RXは式AにおけるRXと同義であり、好ましい範囲も同じである。XB1及びXB2は各々独立にハロゲン原子又は脂肪族若しくは芳香族のアシルオキシ基を表す。
ここで、XB1及びXB2は、式A−1で表される重合性化合物と反応して、アニオンとして放出され、式AにおけるXA2、XA3となるものである。
−ベースとなるイオン交換膜−
本発明に用いられるベースとなるイオン交換膜は、例えば、式MAで表される化合物、式CLで表される化合物、式Aで表される化合物、及び、重合開始剤を少なくとも含む樹脂層形成用組成物を、多孔性支持体に塗布及び/又は含浸させ、光照射及び/又は加熱により重合硬化させることにより製造することができる。
上記樹脂層形成用組成物は、重合禁止剤、溶媒、アルカリ金属化合物、界面活性剤、粘度向上剤、表面張力調整剤、防腐剤を更に含有してもよい。
ベースとなるイオン交換膜は、バッチ式(バッチ方式)で製造することが可能であるが、連続式(連続方式)で膜を製造してもよい。
なお、多孔性支持体と別に、高分子機能性膜形成用組成物を多孔性支持体に浸漬させ重合硬化反応が終わるまでの間、仮支持体(重合硬化反応終了後、仮支持体から膜を剥がす)を用いてもよい。
このような仮支持体は、物質透過を考慮する必要がなく、例えば、PETフィルムやアルミ板等の金属板を含め、膜形成のために固定できるものであれば、どのようなものでも構わない。
−塗布方法−
樹脂層形成用組成物は、種々の方法、例えば、カーテンコーティング、押し出しコーティング、エアナイフコーティング、スライドコーティング、ニップロールコーティング、フォワードロールコーティング、リバースロールコーティング、浸漬コーティング、キスコーティング、ロッドバーコーティング又は噴霧コーティングにより、多孔性支持体に塗布若しくは含浸することができる。複数の層の塗布は、同時又は連続して行うことができる。同時重層塗布するには、カーテンコーティング、スライドコーティング、スロットダイコーティング及び押し出しコーティングが好ましい。
ベースとなるイオン交換膜の連続方式での製造は、樹脂層形成用組成物塗布部と、樹脂層形成用組成物を重合硬化するための照射源と、膜巻取り部と、支持体を樹脂層形成用組成物塗布部から照射源及び膜巻取り部に移動させるための手段とを含む製造ユニットにより製造する。
−照射方法−
上記製造ユニットでは、樹脂層形成用組成物塗布部は照射源に対し上流の位置に設け、照射源は膜巻き取り部に対し上流の位置に置かれる。
高速塗布機で塗布する際に十分な流動性を有するために、本発明における樹脂層形成用組成物の35℃での粘度は、4,000mPa・s未満が好ましく、1〜1,000mPa・sがより好ましく、1〜500mPa.sが最も好ましい。スライドビードコーティングの場合に35℃での粘度は1〜100mPa・sが好ましい。
高速塗布機では、本発明における樹脂層形成用組成物である塗布液を、5m/分を超える速度で、移動する支持体に塗布することができ、10m/分を超える速度で塗布することもできる。
特に機械的強度を高めるために支持体を使用する場合、本発明における樹脂層形成用組成物を支持体の表面に塗布する前に、この支持体を、例えば支持体の湿潤性及び付着力を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理などに付してもよい。
本発明における樹脂層形成用組成物の重合硬化は、樹脂層形成用組成物を支持体に塗布若しくは含浸して、好ましくは60秒以内、より好ましくは15秒以内、特に好ましくは5秒以内、最も好ましくは3秒以内に開始する。
重合硬化の光照射は、好ましくは10秒未満、より好ましくは5秒未満、特に好ましくは3秒未満、最も好ましくは2秒未満である。連続法では照射を連続的に行い、膜形成用組成物が照射ビームを通過して移動する速度を考慮して、重合硬化反応時間を決める。
強度の高い紫外線(UV光)を重合硬化反応に用いる場合、かなりの量の熱が発生するため、過熱を防ぐために、光源のランプ及び/又は支持体/膜を冷却用空気などで冷却することが好ましい。著しい線量の赤外線(IR光)がUVビームと一緒に照射される場合、IR反射性石英プレートをフィルターにしてUV光を照射する。
エネルギー線は紫外線が好ましい。照射波長は、樹脂層形成用組成物中に包含される任意の光重合開始剤の吸収波長と波長が適合することが好ましく、例えばUV−A(400〜320nm)、UV−B(320〜280nm)、UV−C(280〜200nm)である。
紫外線源は、水銀アーク灯、炭素アーク灯、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、旋回流プラズマアーク灯、金属ハロゲン化物灯、キセノン灯、タングステン灯、ハロゲン灯、レーザー及び紫外線発光ダイオードである。中圧又は高圧水銀蒸気タイプの紫外線発光ランプが好ましい。これに加えて、ランプの発光スペクトルを改変するために、金属ハロゲン化物などの添加剤が存在していてもよい。200〜450nmに発光極大を有するランプがとりわけ適している。
照射源のエネルギー出力は、好ましくは20〜1000W/cm、好ましくは40〜500W/cmであるが、所望の暴露線量を実現することができるならば、これより高くても低くても構わない。暴露強度により、膜の重合硬化を調整する。暴露線量は、High Energy UV Radiometer(EIT−Instrument Markets製のUV Power PuckTM)により、装置で示されたUV−A範囲で測定して、好ましくは少なくとも40mJ/cm2以上、より好ましくは100〜2,000mJ/cm2、最も好ましくは150〜1,500mJ/cm2である。暴露時間は自由に選ぶことができるが、短いことが好ましく、最も好ましくは2秒未満である。
なお、塗布速度が速い場合、必要な暴露線量を得るために、複数の光源を使用しても構わない。この場合、複数の光源は暴露強度が同じでも異なってもよい。
(複合イオン交換膜の製造方法)
本発明の複合イオン交換膜の製造方法は、ベースとなるイオン交換膜の片面又は両面に、セルロースナノファイバーを含む分散液を塗布する塗布工程を含むことを特徴とする。
本発明の複合イオン交換膜の製造方法は、上記分散液を乾燥させる乾燥工程を更に含むことが好ましい。
また、本発明の複合イオン交換膜の製造方法は、複合アニオン交換膜の製造方法であることが好ましい。ベースとなるイオン交換膜として、アニオン交換膜を用いることにより、複合アニオン交換膜を製造することが可能である。
以下、各工程について説明する。
<塗布工程>
本発明の複合イオン交換膜の製造方法は、ベースとなるイオン交換膜の片面又は両面に、セルロースナノファイバーを含む分散液を塗布する塗布工程を含む。
ベースとなるイオン交換膜については、上記において説明したものと同義であり、好ましい範囲も同様である。
〔セルロースナノファイバーを含む分散液〕
本発明に用いられるセルロースナノファイバーを含む分散液(以下、単に「分散液」ともいう。)は、セルロースナノファイバーを含有する。
上記分散液は、2以上の架橋性基を有する化合物を更に含むことが好ましく、2以上の架橋性基を有する化合物及び重合開始剤を更に含むことがより好ましい。
セルロースナノファイバー及び2以上の架橋性基を有する化合物については、それぞれ上記セルロースナノファイバー及び2以上の架橋性基を有する化合物と同義であり、好ましい範囲も同様である。
分散液中のセルロースナノファイバーの含有量は、分散液の全質量に対し、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがより好ましく、0.5〜3質量%であることが更に好ましい。
セルロースナノファイバーは、分散液に用いられる他の各成分と混合する前に、あらかじめ溶媒に分散しておくことが好ましい。その場合の溶媒としては、水が好ましく挙げられる。水に可溶な有機溶媒を混合してもよい。
分散液中の2以上の架橋性基を有する化合物の含有量は、分散液の全質量に対し、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜5質量%であることが更に好ましい。
−重合開始剤−
本発明に用いられる分散液は、重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、芳香族ケトン類、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機化酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びにアルキルアミン化合物等が挙げられる。
重合開始剤は、上記各成分や反応時に使用する溶媒に溶解可能なものであれば、光重合開始剤に限定されるものではない。この重合開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル(BPO)等の油溶性過酸化物系熱重合開始剤、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の油溶性アゾ系熱重合開始剤、アゾビスシアノ吉草酸(ACVA)等の水溶性アゾ系熱重合開始剤等が挙げられる。また、溶液重合の溶媒中の水割合が多い場合は、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム等の水溶性過酸化物系熱重合開始剤、過酸化水素水等も使用することができる。更に、フェロセンやアミン類等のレドックス剤の組み合わせも可能である。
芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキシド化合物、及び、チオ化合物の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」,pp.77〜117(1993)に記載のベンゾフェノン骨格又はチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい例としては、特公昭47−6416号公報に記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報に記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報に記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報に記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報に記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報に記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号明細書、欧州特許出願公開第0284561A1号明細書に記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報に記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報に記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報に記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報に記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報に記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報に記載のクマリン類等を挙げることができる。また、特開2008−105379号公報、特開2009−114290号公報に記載の重合開始剤も好ましい。また、加藤清視著「紫外線硬化システム」((株)総合技術センター発行:平成元年)の第65〜148頁に記載されている重合開始剤などを挙げることができる。
本発明では、水溶性の重合開始剤が好ましい。
ここで、重合開始剤が水溶性であることは、25℃において蒸留水に0.1質量%以上溶解することを意味する。水溶性の重合開始剤は、25℃において蒸留水に1質量%以上溶解することが更に好ましく、3質量%以上溶解することが特に好ましい。
本発明において、重合開始剤の含有量は、分散液の全質量に対し、0.1〜5.0質量%が好ましく、0.1〜3.0質量%がより好ましく、0.3〜1.0質量%が更に好ましい。
−溶媒−
本発明に用いられる分散液は、溶媒を含んでもよい。
溶媒の含有量は、分散液の全質量に対し、50〜99質量%が好ましく、60〜98質量%がより好ましく、70〜97質量%が更に好ましい。
溶媒は、水、又は水と水に対する溶解度が5質量%以上の溶媒の混合液が好ましく用いられ、更には水に対して自由に混合するものが好ましい。このため、水及び水溶性溶媒から選択される溶媒が好ましい。
水溶性溶媒としては、特に、アルコール系溶媒、非プロトン性極性溶媒であるエーテル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、二トリル系溶媒、有機リン系溶媒が好ましい。
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。これらは1種類単独で又は2種類以上を併用して用いることができる。
また、非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン等が好ましい溶媒として挙げられ、中でもジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトン又はアセトニトリル、テトラヒドロフランが好ましい。これらは1種類単独で又は2種類以上を併用して用いることができる。
−その他の成分−
表面層形成用の分散液には重合禁止剤、界面活性剤、粘度向上剤、表面張力調整剤、防腐剤を更に含有してもよい。
〔塗布方法〕
分散液の塗布方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
分散液は、種々の方法、例えば、カーテンコーティング、押し出しコーティング、エアナイフコーティング、スライドコーティング、ニップロールコーティング、フォワードロールコーティング、リバースロールコーティング、浸漬コーティング、キスコーティング、ロッドバーコーティング又は噴霧コーティングにより、ベースとなるイオン交換膜上に塗布することができる。
なお、ベース膜と表面層との密着性を向上させるために、分散液塗布の前処理として、ベース膜の表面をサンドペーパー等で粗面化する、あるいはコロナ、プラズマ処理等を施してもよい。
<乾燥工程>
本発明の複合イオン交換膜の製造方法は、上記分散液を乾燥させる乾燥工程を含むことが好ましい。
乾燥方法としては、特に限定されないが、熱を加えて乾燥させることが好ましい。
加熱手段としては、分散液に含まれる溶媒を乾燥させることができればよく、限定されないが、ヒートドラム、温風、赤外線ランプ、熱オーブン、ヒート版加熱などを使用することができる。
加熱温度は、40℃〜100℃が好ましく、40〜90℃がより好ましく、40〜80℃程度が更に好ましい。
乾燥時間は、層の厚さ等を考慮して適宜設定すればよいが、1〜30分程度が好ましい。
塗布工程において、分散液の塗布をベースとなるイオン交換膜の両面に行う場合、塗布工程と乾燥工程を交互に行い、片面ずつ表面層を形成してもよい。
<架橋反応工程>
本発明の複合イオン交換膜の製造方法は、紫外光及び/又は熱により、上記分散液を架橋する架橋反応工程を更に含む。
架橋反応工程においては、設備の簡便さや製造速度の観点から、紫外光を用いることが好ましい。上記紫外光による架橋反応を行った後に、更に加熱を行ってもよい。
また、上記架橋反応工程においては、架橋反応時に空気や酸素などの気体を共存させてもよいが、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。
照射波長としては、分散液中に包含される任意の光重合開始剤の吸収波長と波長が適合することが好ましく、例えばUV−A(400〜320nm)、UV−B(320〜280nm)、UV−C(280〜200nm)が例示される。
紫外線源としては、水銀アーク灯、炭素アーク灯、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、旋回流プラズマアーク灯、金属ハロゲン化物灯、キセノン灯、タングステン灯、ハロゲン灯、レーザー及び紫外線発光ダイオードが例示され、中圧又は高圧水銀蒸気タイプの紫外線発光ランプが好ましい。これに加えて、ランプの発光スペクトルを改変するために、金属ハロゲン化物などの添加剤が存在していてもよい。200〜450nmに発光極大を有するランプがとりわけ適している。
照射源のエネルギー出力は、好ましくは20〜1,000W/cm、好ましくは40〜500W/cmであるが、所望の暴露線量を実現することができるならば、これより高くても低くても構わない。暴露強度により、膜の重合硬化を調整する。暴露線量は、High Energy UV Radiometer(EIT−Instrument Markets製のUV Power PuckTM)により、装置で示されたUV−A範囲で測定して、好ましくは少なくとも40mJ/cm2以上、より好ましくは100〜2,000mJ/cm2、最も好ましくは150〜1,500mJ/cm2である。暴露時間は自由に選ぶことができるが、短いことが好ましく、最も好ましくは2秒未満である。
加熱手段としては、分散液に含まれる溶媒を乾燥させることができればよく、限定されないが、ヒートドラム、温風、赤外線ランプ、熱オーブン、ヒート版加熱などを使用することができる。
加熱温度としては、100℃〜200℃程度がより好ましく、120℃〜180℃程度が更に好ましい。
加熱時間は、層の厚さ等を考慮して適宜設定すればよいが、短い方が好ましく、10秒未満が好ましい。
また、本発明の複合イオン交換膜の製造方法において、本発明の複合イオン交換膜は、固定されたベース膜を用いてバッチ式(バッチ方式)で製造することが可能であるが、連続式(連続方式)で膜を調製してもよい。ベース膜は、連続的に巻き戻されるロール形状でもよい。
なお、連続方式の場合、まずベース膜を形成し、更に上記塗布工程、乾燥工程を連続して本発明の複合イオン交換膜を製造する、すなわち、ベース膜の形成と表面層の形成を連続式で行うことも可能である。上記ベース膜の形成は、例えば樹脂層形成用組成物の塗布及び活性放射線の照射により行われる。
(イオン交換膜モジュール・イオン交換装置)
本発明の複合イオン交換膜はモジュール化して好適に用いることができる。モジュールの例としては、プレート&フレーム型、スタック型などが挙げられる。
また、本発明のイオン交換膜モジュールを用いて、軟水化、脱塩、濃縮、精製させるための手段を有するイオン交換装置とすることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
(ベース膜の製造)
下記表1に示すベース膜A用の組成物を調製し、塗布液とした。上記塗布液をアルミ板に、150μmのワイヤ巻き棒を用いて、手動で約5m/分の速さで塗布し、続いて、不織布(Freudenberg社製 FO−2223−10、厚さ100μm)に塗布液を含浸させた。含浸させた不織布の上にPETフィルムを置き、ワイヤの巻いていないロッドを用いて余分な塗布液を除去した。塗布時の塗布液の温度は約25℃(室温)であった。UV露光機(Fusion UV Systems社製、型式Light Hammer 10、D−バルブ、コンベア速度10m/分、100%強度)を用いて、塗布液含浸支持体を重合硬化反応することにより、塗布液を硬化させ、樹脂層を形成した。露光量は、UV−A領域にて1,000mJ/cm2であった。これをPETフィルム及びアルミ板から取り外し、0.1M NaCl溶液中で少なくとも12時間保存し、不織布に担持された厚さ115μmの樹脂層を作製し、ベース膜Aとした。
塗布液の組成を表1に示すベース膜B用の組成物とした以外は同様にして、ベース膜Bを製造した。
Figure 2016137455
表1中に記載の化合物の詳細を以下に示す。なお、表1における組成物の各成分欄における数値の単位は、有効成分の質量部である。また、表中の「−」は、当該成分を含有しないことを意味する。
純水:純水(和光純薬(株)製)
MEHQ:モノメチルエーテルハイドロキノン(シグマアルドリッチ(株)製)
DMAPAA−Q:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩(興人フィルム&ケミカルズ(株)製)
LiNO3:硝酸リチウム(和光純薬工業(株)製)
IPA:イソプロピルアルコール(和光純薬工業(株)製)
MBA:メチレンビスアクリルアミド(和光純薬工業(株)製)
重合性化合物1: 下記構造の化合物(合成品)
Tegoglide 432:ポリエーテル変性シロキサンコポリマー(エボニック社製)
Darocur 1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製)
−重合性化合物1の合成−
下記合成スキームで重合性化合物1を合成した。
Figure 2016137455
パラジクロロキシレン175g(1.00mol、東京化成工業(株)製)、アセトニトリル1,220g、メタノール244g、t−ブチルハイドロペルオキシド1g(東京化成工業(株)製)の混合溶液に対し、N−[3−(ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド]313g(2.00mol、東京化成工業(株)製)を加え、50℃で2時間加熱撹拌した。続いて、アセトン1220gを加え室温にて1時間撹拌し、生じた結晶を濾過して重合性化合物1の白色結晶450g(収率92%)を得た。
(セルロースナノファイバーの製造)
<セルロースナノファイバー分散液1の製造>
まず、乾燥重量で1g相当分の針葉樹漂白クラフトパルプ、10mmolの次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)、0.1g(1mmol)の臭化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)、0.16g(1mmol)のTEMPO(和光純薬工業(株)製)を100mLの水に分散させ、室温で4時間穏やかに撹拌し、蒸留水で洗浄・水洗することにより、TEMPO触媒酸化パルプ(酸化セルロース)を得た。
その後、未乾燥のTEMPO触媒酸化パルプに蒸留水を加え、固形分濃度1.1質量%の水懸濁液を調製した。そして、懸濁液に、家庭用ミキサーで1分間、超音波処理で2分間の解繊処理を施すことで、セルロースナノファイバー水分散液とした。その後、セルロースナノファイバー水分散液から、遠心分離(12,000×g)により未解繊成分を取り除いた。
以上の操作により、透明な液体である、濃度1.1質量%のセルロースナノファイバー分散液1を得た。
分散液1の濃度を 0.1質量%に希釈した後、透過型電子顕微鏡にて観察したところ、セルロース結晶の大きさは、数平均繊維径20nm、数平均繊維長1,500nmであった。
<セルロースナノファイバー分散液2の製造>
三口フラスコに結晶セルロース(旭化成ケミカルズ(株)製、セオラスTGF20)50gを入れ、あらかじめ45℃に加温した64%硫酸(和光純薬工業(株)製)500mLをフラスコに加えた。懸濁液の温度を45℃になるように水浴にて保温し、窒素下にて撹拌した。2時間後、水浴を氷にて冷却しながら、500mLの冷水を内温が45℃を越えないように徐々に加えた。懸濁液を遠心分離(10,000rpm、10分間)し、残った沈殿に対して水洗と遠心分離を繰り返した。上澄みが濁ってきたところで、上澄みと沈殿をすべて回収し、上澄みと追加する水の量の総量が2,000mLとなるように水を加えた。この液を1時間超音波処理した。懸濁液を遠心分離すると、白濁した上澄みが得られた。この白濁液を回収し、NaOH水溶液で中和した後、蒸留水にて透析することで、セルロースナノファイバー分散液2を得た。分散液中のセルロース結晶の割合は1.1質量%であった。透過型電子顕微鏡にて観察したところ、セルロース結晶の大きさは、数平均繊維径15nm、数平均繊維長200nmであった。
(実施例1〜11及び比較例1〜2)
<表面層の形成>
下記表2に示す組成に従い、表面層用塗布液1〜8を調製した。各実施例及び比較例において、表3又は4に記載の塗布液を、表3又は4に記載のベース膜にアプリケーター(テスター産業製)を用いて塗布した。ベース膜は、表面層を塗布する前に純水に25℃にて浸漬した後に使用した。
塗布終了後、60℃の送風乾燥機で15分間乾燥させた。
両面に形成する場合、まず片面に塗布し、乾燥とUV露光を終えてから、別の面に塗布及び乾燥を同じ条件で再度行った。
実施例1及び実施例3については片面に、その他の実施例及び比較例については両面に表面層を形成した。
乾燥終了後、UV露光機(Fusion UV Systems社製、型式Light Hammer 10、D−バルブ、コンベア速度1.0〜8.0m/min、100%強度)を用いて、上記表面層用塗布液を硬化反応することにより、表面層を調製した。露光量は、UV−A領域にて1,000mJ/cm2であった。
<膜の電気抵抗(Ω・cm2)>
約2時間、0.5M NaNO3水溶液中に浸漬した膜の両面を乾燥ろ紙で拭い、2室型セル(有効膜面積1cm2、電極にはAg/AgCl参照電極(Metrohm社製)を使用)に挟んだ。両室に同一濃度のNaNO3水溶液を100mL満たし、25℃の恒温水槽中に置いて平衡に達するまで放置し、セル中の液温が正しく25℃になってから、交流ブリッジ(周波数1,000Hz)により電気抵抗r1を測定した。次に膜を取り除き、0.5M NaNO3水溶液のみとして両極間の電気抵抗r2を測り、膜の電気抵抗rをr1−r2として求めた。これを膜の電気抵抗ER(0.5M NaNO3)とした。
膜の電気抵抗ER(0.5M NaNO3)と同様にして、膜の電気抵抗ER(0.25M Na2SO4)を測定した。測定結果を下記表3及び4にまとめた。なお、下記表3及び4において、膜の電気抵抗ERを省略して「ER」と記載した。
一価イオンと二価イオンの透過性を比較するためにER比(=ER Na2SO4/ER NaNO3)を算出した。この値が大きいほど、二価イオンが一価イオンに対して透過しにくいことを示し、選択性が高いといえる。
Figure 2016137455
Figure 2016137455
Figure 2016137455
表2中に記載の化合物の詳細を以下に示す。なお、表2における組成物の各成分欄における数値の単位は、有効成分の質量部である。また、表中の「−」は、当該成分を含有しないことを意味する。
IPA:イソプロピルアルコール(和光純薬工業(株)製)
重合性化合物2:下記構造の化合物(合成品)
重合性化合物3:下記構造の化合物(合成品)
重合性化合物4:下記構造の化合物(合成品)
重合性化合物5:下記構造の化合物(合成品)
PEG−600 DA:ポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学(株)製)
Darocur 1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製)
Figure 2016137455
<重合性化合物2の合成>
撹拌機を備えた三口フラスコに先に1,2−ジアミノプロパン(東京化成工業(株)製)30g、NaHCO3476g(14当量)、ジクロロメタン1L、水100mlを加えて、氷浴下、アクリル酸クロリド367g(10当量、和光純薬工業(株)製)を3時間かけて滴下し、その後、室温で3時間撹拌した。原料の消失を1H NMRにて確認した後、反応混合物を減圧下溶媒留去し、硫酸マグネシウムで反応混合物を乾燥させ、セライトろ過を行い、減圧下溶媒留去した。最後に、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール=9:1)にて精製することで、常温で固体である重合性化合物2(収率40%)を得た。
<重合性化合物3及び4の合成>
特開2013−194024号公報の段落0042に記載の方法により合成した。
<重合性化合物5の合成>
特開2014−069155号公報の段落0099に記載の方法により合成した。
1 ベースとなるイオン交換膜、2 表面層

Claims (16)

  1. セルロースナノファイバーを含む表面層を、ベースとなるイオン交換膜の片面又は両面に有することを特徴とする
    複合イオン交換膜。
  2. 前記セルロースナノファイバーが、カルボキシ基、カルボン酸塩、スルホ基、及び、スルホン酸塩よりなる群から選ばれた、少なくとも1種を表面に有する、請求項1に記載の複合イオン交換膜。
  3. 前記表面層が、2以上の架橋性基を有する化合物の硬化物を更に含む、請求項1又は2に記載の複合イオン交換膜。
  4. 前記架橋性基が、エチレン性不飽和基である、請求項3に記載の複合イオン交換膜。
  5. 前記架橋性基が、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、及び、スチリル基よりなる群から選ばれた、少なくとも1つの基である、請求項3又は4に記載の複合イオン交換膜。
  6. 前記架橋性基が、(メタ)アクリルアミド基である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の複合イオン交換膜。
  7. 複合アニオン交換膜である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合イオン交換膜。
  8. ベースとなるイオン交換膜の片面又は両面に、セルロースナノファイバーを含む分散液を塗布する塗布工程を含む、
    複合イオン交換膜の製造方法。
  9. 前記分散液を乾燥させる乾燥工程を更に含む、請求項8に記載の複合イオン交換膜の製造方法。
  10. 前記分散液が2以上の架橋性基を有する化合物を更に含む、請求項8又は9に記載の複合イオン交換膜の製造方法。
  11. 前記架橋性基が、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、及び、スチリル基のいずれかである、請求項10に記載の複合イオン交換膜の製造方法。
  12. 前記架橋性基が、(メタ)アクリルアミド基である、請求項10又は11に記載の複合イオン交換膜の製造方法。
  13. 紫外光及び/又は熱により前記分散液を架橋する架橋反応工程を更に含む、請求項8〜12のいずれか1項に記載の複合イオン交換膜の製造方法。
  14. 複合アニオン交換膜の製造方法である、請求項8〜13のいずれか1項に記載の複合イオン交換膜の製造方法。
  15. 請求項1〜7のいずれか1つに記載の複合イオン交換膜を備えたイオン交換膜モジュール。
  16. 請求項1〜7のいずれか1つに記載の複合イオン交換膜を備えたイオン交換装置。
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