JP2016136039A - 潤滑層の破断抑制方法および摺動部を有する構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 摺動始動時における潤滑層の破断抑制方法およびこれを実現できる摺動部を有する構造体。【解決手段】 気泡と液体が混在する潤滑層Lを介して近接する領域を有する第1摺動面Faおよび第2摺動面Fbを備え、移動する摺動面に、表面エネルギーの高い親油性もしくは親水性を有する表面が作製された第1領域Raと、第1領域Raよりも表面エネルギーの低い親油特性を有する表面が作製された第2領域Rbを隣接して配置して、その境界において表面エネルギーが異なる界面を形成し、界面を摺動面の移動方向Mに対して鋭角方向αに配置することにより、第1領域Raへの迅速で深い液体の浸透を可能にするとともに、摺動始動時の界面の移動に伴い、潤滑層L中のキャビティを第2領域Rbに集積保持して移動させ、第1摺動面Faと第2摺動面Fbの近接領域Rn外に排出する。【選択図】 図1

Description

本発明は、潤滑層の破断抑制方法および摺動部を有する構造体に関し、例えば軸受の摺動始動時における潤滑層の破断抑制方法および摺動部を有する構造体に関するものである。
自動車や各種機械装置には、摺動部を有する構造体として軸受や歯車,カム・タペットなどが用いられている。こうした構造体の摺動部には、多くの場合、双方の潤滑面(以下「摺動面」ということがある)が近接している潤滑部が設けられ、その潤滑性を維持するために、潤滑油やグリース等からなる潤滑層が形成されている。
しかしながら、こうした構成においては、以下のような問題があった。
(i)十分な潤滑油が無い状態で起動した場合には、摺動面の突起接触部での局所的な油膜の破断に伴う摺動面同士の直接接触(金属接触)や摺動面の破損等を引き起こす要因となっている。
(ii)また、潤滑層の膜厚は、摺動部における摺動面の移動速度や加速度もしくは潤滑面の状況により変化する。特に、起動時(摺動始動時)のような極低速状態では、油膜が薄くなるため、潤滑面同士の直接接触の可能性が高まる。
(iii)さらに、こうした課題は、特に自動車等最先端分野において著しい。つまり、高効率化のために、高速・高面圧の下、微量な低粘度油により潤滑される傾向にある。間欠的な停止と始動を繰り返すアイドリングストップ機能の採用やハイブリッド自動車の普及により、エンジンの摺動面は、十分な潤滑油が無い状態での始動を強いられる場面を増している。特に、始動時の摺動面では、突起接触部での局所的な油膜の破断だけではなく、潤滑油の不足による広領域での空洞や微小な気泡が残存することも多いため、それらを起点として容易にキャビティが発生・成長し、摺動面が損傷を受ける危険性が高くなる。
(iv)このような過酷な条件での潤滑状態の改善や摺動面損傷の回避方法としては、現状摺動部の材質の変更もしくは各種添加剤による低摩擦反応膜や硬質炭素膜(DLC)等のコーティング膜の形成が主流であり、キャビティの発生・成長の抑制や排除による根本的な改善を検討した研究は殆どなかった。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複雑な構造や特殊な材料や処理を行わずに、潤滑部における油膜等でのキャビティの発生・成長の抑制や排除を図り、潤滑層の破断を未然に抑制する方法およびこうした構成を有する摺動部を備えた構造体を提供することである。特に、気泡と液体が混在する潤滑層を有する摺動部を備えた構造体において、摺動始動時における潤滑層の破断抑制方法およびこれを実現できる摺動部を有する構造体を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す潤滑層の破断抑制方法および摺動部を有する構造体によって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明に係る潤滑層の破断抑制方法は、気泡と液体が混在する潤滑層を介して近接する領域を有する第1摺動面および第2摺動面を備え、移動するこれら摺動面の少なくとも一方に、第1領域とこれに隣接する第2領域を形成し、
該第1領域には表面エネルギーの高い親油性もしくは親水性を有する表面を作製し、該第2領域には第1領域よりも表面エネルギーの低い親油性もしくは親水性を有する表面または撥油性もしくは撥水性を有する表面を作製し、
前記第1摺動面と第2摺動面の近接領域にある第1領域と第2領域の境界において表面エネルギーが異なる界面を形成し、該界面を摺動面の移動方向に対して鋭角方向に配置することにより、
表面エネルギーの高い該第1領域への迅速で深い液体の浸透を可能にするとともに、
摺動始動時に、前記界面の移動に伴い、摺動停止時に前記潤滑層中に存在した気泡からなるキャビティを表面エネルギーの低い第2領域に集積保持して移動させ、前記潤滑層中のキャビティを第1摺動面と第2摺動面の近接領域外に排出することを特徴とする。
また、本発明に係る摺動部を有する構造体は、気泡と液体が混在する潤滑層を介して近接する領域を有する第1摺動面および第2摺動面を備え、移動するこれら摺動面の少なくとも一方に、表面エネルギーの高い親油性もしくは親水性を有する表面が作製された第1領域と、該第1領域よりも表面エネルギーの低い親油性もしくは親水性を有する表面または撥油性もしくは撥水性を有する表面が作製された第2領域を隣接して配置して、その境界において表面エネルギーが異なる界面を形成し、該界面を摺動面の移動方向に対して鋭角方向に配置することにより、表面エネルギーの高い該第1領域への迅速で深い液体の浸透を可能にするとともに、
摺動始動時の該界面の移動に伴い、摺動停止時に前記潤滑層中に存在した気泡からなるキャビティを表面エネルギーの低い第2領域に集積保持して移動させ、前記第1摺動面と第2摺動面の近接領域外に排出することを特徴とする。
摺動部における潤滑性を確保するために導入される潤滑油中には、潤滑油の貯留状態において内在する気泡等や摺動部に導入される移送流路において取り込みもしくは発生によって混在する気泡等以外に、摺動部の潤滑面(摺動面)に初期的に存在する気泡等様々なキャビティが含まれる。こうしたキャビティは、特に摺動始動時に摺動面に集合しやすいと同時に、細かな気泡は摺動面に付着しやすく、また付着した状態から殆ど移動しない場合や大きく成長する場合も多く、潤滑性の悪化や摺動面の損傷の原因となる。本発明者は、種々の検証の結果、
(a)摺動面において、表面エネルギーの相違によって潤滑油の移動速度に差を設けることができること、特に、表面エネルギーの異なる隣接する領域の境界に界面が形成された場合には、表面エネルギーの高い領域への迅速で深い潤滑油の浸透が生じること、
(b)また、細かな気泡等からなるキャビティに対しても、摺動面における表面エネルギーの差によって、その集積機能や保持機能に差が生じること、特に、表面エネルギーの低い領域において高い集積機能や保持機能を有し、集積・拡大した気泡は,表面エネルギーの低い領域での接触面積が大きくなるため,その表面への保持力が微小気泡より大きくなること、
(c)隣接する領域との境界において生じる界面による表面エネルギーの高い領域への迅速で深い潤滑油の浸透は、摺動面の移動による界面の移動に伴い、キャビティ特に気泡の種に対して移動を促す機能があること、
(d)隣接する領域の境界に形成された界面が摺動面の移動方向に対して鋭角方向に配置された場合、摺動面の移動による界面の移動に伴い、表面エネルギーの低い領域において集積・保持されたキャビティに対して,摺動面の移動方向だけでなく傾いた界面方向の力が作用し、徐々に集積され移動すること、
を見出した。本発明は、こうした知見を基に、表面エネルギーの異なる2つの領域を摺動面に設け、上記(a)〜(d)の機能を確保することができる潤滑油に対する異なる「親油性もしくは親水性または撥油性もしくは撥水性」(以下「親油特性」ということがある)を有する領域を形成することによって、特に摺動始動時における上記課題を解消し、潤滑部における油膜等でのキャビティの発生・成長の抑制や排除を図り、潤滑層の破断を未然に抑制する方法およびこうした構成を有する摺動部を備えた構造体を提供することを可能にした。
本発明は、上記摺動部を有する構造体であって、前記第1領域および第2領域が、(1)親油性もしくは親水性または撥油性もしくは撥水性を有する物質もしくは塗布膜の有無、(2)化学的な親油処理もしくは親水処理または撥油処理もしくは撥水処理の有無、または(3)表面多孔性の差異や凹み部への撥油性もしくは撥水性の付与の有無、のいずれかまたはこれらのうちのいくつかの組合せにより、異なる親油性もしくは親水性または撥油性もしくは撥水性を有するように形成されたことを特徴とする。
上記のような検証過程において、本発明者は、さらに、こうした機能を有する表面エネルギーの異なる2つの領域の形成は、物理的な手法のみならず化学的な手法を用いても実現することができるとの知見を得た。具体的には、摺動面を構成する2つの領域における、(1)親油特性を有する物質もしくは塗布膜の有無、(2)化学的な「親油処理もしくは親水処理または撥油処理もしくは撥水処理」(以下「親油特性処理」ということがある)の有無、または(3)表面多孔性の差異や凹み部への撥油性もしくは撥水性の付与の有無、のいずれかまたはこれらのうちのいくつかの組合せによって実現することができる。
本発明に係る摺動部を有する構造体を例示する模式図 摺動面の移動に伴う潤滑油の移動特性を例示する説明図 摺動面の移動に伴うキャビティの移動特性を例示する説明図 摺動面に設けられた第1領域と第2領域の構成を例示する説明図
<本発明に係る潤滑層の破断抑制方法>
本発明に係る潤滑層の破断抑制方法(以下「本抑制方法」という)は、気泡と液体が混在する潤滑層を介して近接する領域を有する第1摺動面および第2摺動面を備え、移動するこれら摺動面の少なくとも一方に、第1領域とこれに隣接する第2領域を形成し、第1領域には表面エネルギーの高い親油性もしくは親水性を有する表面を作製し、第2領域には第1領域よりも表面エネルギーの低い親油性もしくは親水性を有する表面または撥油性もしくは撥水性を有する表面を作製し、第1摺動面と第2摺動面の近接領域にある第1領域と第2領域の境界において表面エネルギーが異なる界面を形成し、界面を摺動面の移動方向に対して鋭角方向に配置することにより、表面エネルギーの高い第1領域への迅速で深い液体の浸透を可能にするとともに、摺動始動時に、界面の移動に伴い、摺動停止時に潤滑層中に存在した気泡からなるキャビティを表面エネルギーの低い第2領域に集積保持して移動させ、潤滑層中のキャビティを第1摺動面と第2摺動面の近接領域外に排出することを特徴とする。以下、本抑制方法の動作原理につき図面を用いて説明する。なお、以下では「液体」として「潤滑油」を用いた場合について説明するが、構造体の摺動部の使用条件に合った「液体」として、各種溶媒あるいは水が用いられることがある。
〔原理について〕
最初に、図1(A)に例示するような潤滑層Lを介して近接する領域Rnを有する第1摺動面Faおよび第2摺動面Fbを備えた摺動部Sを有する構造体において、潤滑層L中に存在するキャビティを近接領域Rn外に排出する本抑制方法の動作原理を説明する。摺動面の少なくとも一方、ここでは第1摺動面Faに、図1(B)に例示するようにその表面に表面エネルギーの高い親油性もしくは親水性を有する表面が作製された第1領域Raと、第1領域Raよりも表面エネルギーの低い親油特性を有する表面が作製された第2領域Rbを隣接して配置し、該第1摺動面Faが移動する場合(M方向)について説明するが、これに限定されないことはいうまでもない。
(a)摺動面の移動に伴う潤滑油の移動について
摺動面における表面エネルギーの差によって、潤滑油の移動速度に差が生じる。具体的には、図1(B)中のa−a断面を例示する図2(A)において、第1摺動面Faにおける表面エネルギーは、例えば図2(B)に例示するように、第1領域Raと第2領域Rbの境界において大きく変化する。このとき、潤滑層Lに接する第1摺動面Faに設けられた第1領域Raと第2領域Rbにおいて、第1摺動面Faの移動(M方向)に伴い、その表面エネルギーの相違によって潤滑層Lからの潤滑油の移動速度に差が生じ、表面エネルギーの異なる隣接する領域の境界に界面が形成された場合には、さらに潤滑油を移動させる力が生じ、表面エネルギーの高い第1領域Raへの迅速で深い潤滑油の浸透が生じる。
(b)摺動面の移動に伴うキャビティの移動について
摺動面における表面エネルギーの差によって、細かな気泡等からなるキャビティに対する集積機能や保持機能に差が生じる。具体的には、図3(A)に例示するような潤滑層L中のキャビティCおよび第1摺動面Fa上のキャビティに対して、第1摺動面Faの移動(M方向)に伴い、表面エネルギーの低い第2領域Rbにおいて高い集積機能や保持機能が生じて、図3(B)に例示するように、第2領域Raへのキャビティの集積や保持が生じ、気泡の拡大が生じる。集積・拡大した気泡は,表面エネルギーの低い領域での接触面積が大きくなるため,その表面への保持力が微小気泡より大きくなる。また、第2領域Rbに集積・保持されたキャビティは、第1摺動面Faに形成された第2領域Rbの移動に伴い移送され、第1摺動面Faと第2摺動面Fbの近接領域Rn外に排出される。
(c)摺動面の移動に伴う領域の境界の移動について
異なる表面エネルギーを有する所定の領域とこれに隣接する領域との境界は、両領域を隣接させることによって、上記(a)における潤滑油の移動速度の差を拡大し、潤滑油の移動速度に対して界面を形成すると同時に、上記(b)におけるキャビティCに対しても集積機能や保持機能の差を拡大し、集積・保持機能に対して界面を形成する。こうした界面は、摺動面(第1摺動面Fa)の移動に伴い潤滑層L中を移動することによって、移動方向Mと同方向の潤滑油の移動を促進し、逆方向の移動を抑制する。これによって界面を介した移動方向Mと同方向の潤滑油を移動させる力が生じ、移動速度の差をより拡大し、そこでのキャビティCに対する集積・保持機能をより拡大するとともに、第1摺動面Faの移動方向Mに沿ってキャビティCを移送させる機能を生じさせる。特に、親油性もしくは第一摺動面上の表面エネルギーの低い第2領域Rbよりも高い表面エネルギーを有する固定面上に付着しやすい気泡の種に対して移動を促す機能があり、気泡の集積・拡大がさらに促進される。第2領域Rbに集積・保持されたキャビティCは、第1摺動面Faに形成された界面の移動に伴い移送されることによって、第1摺動面Faと第2摺動面Fbの近接領域Rn外に排出される。
(d)摺動面の移動方向と界面形成方向について
第2領域Rbに集積・保持されたキャビティCには、第1摺動面Faの移動に伴い、上記(b)および(c)による移送させる力が働き、その力は、移動方向Mに対向する方向に働く。ここで、隣接する領域の境界に形成された界面が摺動面の移動方向Mに対して鋭角方向に配置された場合、摺動面の移動による界面の移動に伴い、表面エネルギーの低い領域において集積・保持されたキャビティCに対して,摺動面の移動方向Mだけでなく、鋭角に傾いた界面に沿った方向の潤滑油を移動させる力が作用する。従って、第2領域Rbに集積・保持されたキャビティCは徐々に集積され、気泡を拡大しつつ移動し、近接領域Rn外に排出される。
<本発明に係る摺動部を有する構造体>
次に、上記本抑制方法を基に構成される本発明に係る摺動部を有する構造体(以下「本構造体」という)について説明する。本構造体は、図1(A)に例示するように、気泡と液体が混在する潤滑層Lを介して近接する領域Rnを有する第1摺動面Faおよび第2摺動面Fbを備えた摺動部Sを有する。ここで、これら摺動面の少なくとも一方が移動するとともに、移動する摺動面(ここでは、上記同様第1摺動面Faの場合を説明する)に、図1(B)に例示するように、表面エネルギーの高い親油性もしくは親水性を有する表面が作製された第1領域Raと、該第1領域Raよりも表面エネルギーの低い親油特性を有する表面が作製された第2領域Rbが隣接して配置される。第1領域Raと第2領域Rbは、その境界において表面エネルギーが異なる界面が形成される。
このとき、該界面は、図4(A)〜(D)に例示するように、摺動面の移動方向Mに対して鋭角方向(αまたはβ)に配置することが好ましい。配置の詳細は後述する。上記(d)のように、表面エネルギーの高い該第1領域Raへの迅速で深い液体の浸透を可能にするとともに、摺動始動時の該界面の移動に伴い、摺動停止時に潤滑層L中に存在した気泡からなるキャビティCを表面エネルギーの低い第2領域Rbに集積保持して移動させ、第1摺動面Faと第2摺動面Fbの近接領域Rn外に排出することができる。以下、好適な実施形態につき図面を用いて説明する。
ここで、第1領域Raおよび第2領域Rbにおける表面処理について述べる。
(1)各領域表面が、親油性もしくは親水性または撥油性もしくは撥水性を有する物質を有する場合もしくはこうした物質を有する塗布膜が形成された場合をいう。例えば、親油性もしくは親水性を有する物質として黄銅や鋼等、撥油性もしくは撥水性を有する物質としてフッ素樹脂、グラファイト、ダイヤモンド、輝水鉛鉱物等が挙げられる。また、これらが塗布(コーティング)された塗布膜が形成された場合が挙げられる。
(2)各領域表面が、化学的な親油処理もしくは親水処理または撥油処理もしくは撥水処理された場合をいう。例えば、金属表面の酸処理や炭化処理もしくは窒化処理等の化学処理等が挙げられる。
(3)表面多孔性を有する場合や凹み部への撥油性もしくは撥水性を付与する場合が挙げられる。例えば、異なる特性の焼結金属やセラミックス等を組合せて表面を作製する場合が挙げられる。
(4)または、上記(1)〜(3)のうちのいくつかの組合せにより、異なる親油性もしくは親水性または撥油性もしくは撥水性を有するように形成された場合をいう。
こうした表面処理を行うことによって、表面エネルギーの異なる第1領域Raおよび第2領域Rbを作製することができる。
移動する摺動面に形成する第1領域Raと第2領域Rbは、図4(A)〜(D)に例示するように、摺動面の移動方向Mに対して鋭角方向(αまたはβ)に配置することが好ましい。ここで、鋭角とは2°以上45°以下をいう。2°未満の場合には移動方向Mと同じ方向となり、摺動面の移動に伴う第1領域Raと第2領域Rbの境界に形成された界面による潤滑油およびキャビティの移動機能が得られ難く、45°を超える場合には第1領域Ra内での潤滑油の移動機能と第2領域Rb内でのキャビティの移動機能が得られない。
図4(A)は、複数の第1領域Raと第2領域Rbを、帯状に隣接して配置するとともに、長さ方向を摺動面の移動方向Mに対して鋭角(α)となるように形成されている構成を例示する。摺動面の移動に伴う、潤滑層L全体の移動とともに、界面が形成された第1領域Raへの潤滑層L中の潤滑油の移動が生じる。潤滑層L中を移動する潤滑油は、負荷を少なくするように移動方向Mに対する鋭角α方向に移動する。潤滑層L中のキャビティも同様に、摺動面の移動に伴い、境界の一方で第2領域Rbへの集積・保持が促進されるとともに、他方の境界を回避するように負荷の少ない第2領域Rb内のα方向に移動する。第2領域Rbに集積・保持されたキャビティCは、第2領域Rbの移動に伴い移送されとともに、さらに第2領域Rb内のα方向に移動し、第1摺動面Faと第2摺動面Fbの近接領域Rn外に排出される。また、第1領域Raと第2領域Rbの幅(α方向に垂直方向の長さ)を調整することによって、潤滑油およびキャビティCの移動速度、もしくはキャビティCの集積・保持機能を変更することができる。
図4(B)は、複数の第1領域Raと第2領域Rbを、帯状に隣接して配置するとともに、摺動面の移動方向Mに対して鋭角αおよび鋭角βの境界を有するV形もしくはこれに近い形状となるように形成されている構成を例示する。摺動面の移動に伴う、潤滑層全体の移動とともに、界面が形成された第1領域Raへの潤滑層L中の潤滑油の移動が生じる。潤滑層L中を移動する潤滑油は、負荷を少なくするように移動方向Mに対する鋭角α方向もしくはβ方向に移動する。潤滑層L中のキャビティも同様に、摺動面の移動に伴い、境界の一方で第2領域Rbへの集積・保持が促進されるとともに、他方の境界を回避するように負荷の少ない第2領域Rb内のα方向もしくはβ方向に移動する。第2領域Rbに集積・保持されたキャビティCは、第2領域Rbの移動に伴い移送されとともに、さらに第2領域Rb内のα方向もしくはβ方向に移動し、第1摺動面Faと第2摺動面Fbの近接領域Rn外に排出される。また、第1領域Raと第2領域Rbの幅(α方向もしくはβ方向に垂直方向の長さ)を調整することによって、潤滑油およびキャビティCの移動速度、もしくはキャビティCの集積・保持機能を変更することができる。さらに、摺動面が平面からの傾斜を有する場合もしくは近接領域Rnにおける第1摺動面Faと第2摺動面Fbの傾斜角度に相違がある場合等には、鋭角αとβの大きさを変更し調整することによって、よりキャビティCの近接領域Rn外への排出機能を高めることができる。
図4(C)は、複数の第1領域Raと第2領域Rbを、摺動面の移動方向Mに対して2つ鋭角(αおよびβ)となるように、格子状に隣接して配置されている構成を例示する。摺動面の移動に伴う、潤滑層L全体の移動とともに、界面が形成された第1領域Raへの潤滑層L中の潤滑油の移動が生じる。このとき、第1領域Raと第2領域Rbの境界には移動方向Mに対して鋭角αおよびβを有する界面が発生し、1の第1領域Raへ移動した潤滑油は、該第1領域Raでは該界面に沿って移動する。該第1領域Raから第2領域Rbへの移動は界面によって律速するが、該第1領域Raの端部では2つの第2領域Rbと隣接する他の第1領域Raと隣接することから該端部に移動した潤滑油は、容易に他の第1領域Raに移動する。潤滑層L中のキャビティCも同様に、摺動面の移動に伴い、1の第2領域Rbへの集積・保持が促進されるとともに、該第2領域Rbでは界面に沿った方向の潤滑油を移動させる力が作用し、負荷の少ないαおよびβ方向に移動しながら気泡が拡大する。第2領域Rbに集積・保持されたキャビティは、第2領域Rbの移動に伴い移送されとともに、さらに第2領域Rb内のαおよびβ方向に移動し、第1摺動面Faと第2摺動面Fbの近接領域Rn外に排出される。
図4(D)は、図4(C)において、第1領域Raの大きさを第2領域Rbよりも小さくし、第1領域Ra同士の隣接を回避して配置されている構成を例示する。摺動面の移動に伴う、潤滑層L全体の移動とともに、界面が形成された第1領域Raへの潤滑層L中の潤滑油の移動が生じる。潤滑層L中を移動する潤滑油は、移動方向Mに対する鋭角方向(αおよびβ方向)に移動することによって負荷を少なくし、第2領域Rbを介して第1領域Raに移動する。潤滑層L中のキャビティは、摺動面の移動に伴い、境界の一方で第2領域Rbへの集積・保持が促進されるとともに、αおよびβ方向のみならず負荷の少ない多方向に移動する。第2領域Rbに集積・保持されたキャビティは、第2領域Rbの移動に伴い移送されとともに、さらに第2領域Rb内のαおよびβ方向のみならず負荷の少ない多方向に移動し、第1摺動面Faと第2摺動面Fbの近接領域Rn外に排出される。
また、図4(D)に例示された構成同様第1領域Ra同士の隣接を回避して配置するとともに、逆に第1領域Raの大きさを第2領域Rbよりも大きく形成することによって、潤滑油が第1摺動面Fa全体に広く浸透させることができる構成(図示せず)も好ましい場合がある。第2領域Rbを小さくすることによって、キャビティCの集積度を高くし、気泡の拡大を促進することができ、効率よくキャビティCの近接領域Rn外に排出される。
C キャビティ
Fa 第1摺動面
Fb 第2摺動面
L 潤滑層
M 摺動面の移動方向
Ra 第1領域
Rb 第2領域
Rn 近接領域
S 摺動部

Claims (3)

  1. 気泡と液体が混在する潤滑層を介して近接する領域を有する第1摺動面および第2摺動面を備え、移動するこれら摺動面の少なくとも一方に、第1領域とこれに隣接する第2領域を形成し、
    該第1領域には表面エネルギーの高い親油性もしくは親水性を有する表面を作製し、該第2領域には第1領域よりも表面エネルギーの低い親油性もしくは親水性を有する表面または撥油性もしくは撥水性を有する表面を作製し、
    前記第1摺動面と第2摺動面の近接領域にある第1領域と第2領域の境界において表面エネルギーが異なる界面を形成し、該界面を摺動面の移動方向に対して鋭角方向に配置することにより、
    表面エネルギーの高い該第1領域への迅速で深い液体の浸透を可能にするとともに、
    摺動始動時に、前記界面の移動に伴い、摺動停止時に前記潤滑層中に存在した気泡からなるキャビティを表面エネルギーの低い第2領域に集積保持して移動させ、前記潤滑層中のキャビティを第1摺動面と第2摺動面の近接領域外に排出することを特徴とする潤滑層の破断抑制方法。
  2. 気泡と液体が混在する潤滑層を介して近接する領域を有する第1摺動面および第2摺動面を備え、移動するこれら摺動面の少なくとも一方に、表面エネルギーの高い親油性もしくは親水性を有する表面が作製された第1領域と、該第1領域よりも表面エネルギーの低い親油性もしくは親水性を有する表面または撥油性もしくは撥水性を有する表面が作製された第2領域を隣接して配置して、その境界において表面エネルギーが異なる界面を形成し、該界面を摺動面の移動方向に対して鋭角方向に配置することにより、表面エネルギーの高い該第1領域への迅速で深い液体の浸透を可能にするとともに、
    摺動始動時の該界面の移動に伴い、摺動停止時に前記潤滑層中に存在した気泡からなるキャビティを表面エネルギーの低い第2領域に集積保持して移動させ、前記第1摺動面と第2摺動面の近接領域外に排出することを特徴とする摺動部を有する構造体。
  3. 前記第1領域および第2領域が、
    (1)親油性もしくは親水性または撥油性もしくは撥水性を有する物質もしくは塗布膜の有無、(2)化学的な親油処理もしくは親水処理または撥油処理もしくは撥水処理の有無、または(3)表面多孔性の差異や凹み部への撥油性もしくは撥水性の付与の有無、のいずれかまたはこれらのうちのいくつかの組合せにより、異なる親油性もしくは親水性または撥油性もしくは撥水性を有するように形成されたことを特徴とする請求項2記載の摺動部を有する構造体。
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