JP2016134277A - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】負極活物質層にスリットを設けることで負極活物質層中の電荷担体の分散の偏りを抑制し、且つかかるスリットにおける電荷担体に由来する物質の析出が抑制された非水電解液二次電池を提供すること。【解決手段】本発明によって提供される非水電解液二次電池は、正極集電体上に正極活物質層が形成された正極と、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極と、該正負極を電気的に隔離するセパレータとを備えた電極体と、非水電解液とを備え、上記負極活物質層は、上記正極活物質層に対向する対向部分と、上記正極活物質層に対向しない非対向部分とを有する。そして、上記非対向部分のうち上記対向部分と隣接する部分には上記負極活物質層を有しないスリットが上記隣接する対向部分に沿って設けられており、当該スリットが電気絶縁性であり且つ非水電解液の透過を阻止する物質によって被覆されている。【選択図】図4

Description

本発明は、非水電解液二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池は、例えば、電気を駆動源として利用する車両に搭載される電源、或いはパソコンや携帯端末その他の電気製品等に用いられる電源として重要性が高まっている。特に軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、車両搭載用高出力電源として好ましい。
この種の非水電解液二次電池の典型的な構成では、負極に形成された負極活物質層と正極に形成された正極活物質層とが対向するように配置されている。かかる構成では、一般的に、負極活物質層の幅および長さが正極活物質層より広くなるように形成し、該負極活物質層が正極活物質層を覆うように重ねあわせる。即ち、かかる構成の電池では、負極活物質層は、正極活物質層と対向する対向部分と、正極活物質と対向しない非対向部分とからなる。以下、負極活物質層のうち正極活物質層と対向する部分を単に「対向部分」とよび、負極活物質層のうち正極と対向しない部分を「非対向部分」ともよぶ。
また、非水電解液二次電池の一つの典型的な例では、正極活物質を含む正極活物質層と負極活物質を含む負極活物質層との間を電荷担体(例えばリチウムイオン)が行き来することによって、充電および放電が行われる。負極活物質層に着目すると、充電時には負極活物質層中に電荷担体が吸蔵され、放電時には充電時に吸蔵された電荷担体が負極活物質層中から非水電解液中に放出される。このとき、典型的には、非対向部分よりも優先的に対向部分に電荷担体が吸蔵され、また、対向部分に吸蔵された電荷担体が非対向部分に吸蔵された電荷担体に優先的に放出される。
特開2010−250985号公報
ところで、上述の構成の非水電解液二次電池を充放電(特に高い入出力密度での充放電)を短い間隔で頻繁に繰り返す用途(例えば、車載用電池のように、ハイレート充放電を繰り返す用途)に用いると、負極活物質層中での電荷担体の分布に偏りが生じる場合があった。
例えば、上述の構成の非水電解液二次電池の充電時には、充電が進むにつれて負極活物質層の対向部分のみならず、負極活物質層の未対向部分にも電荷担体(典型的にはリチウムイオン)が移動して吸蔵される。また、上述の構成の非水電解液二次電池の放電時には、対向部分に吸蔵された電荷担体が非対向部分に吸蔵された電荷担体よりも優先的に放出されるため、放電が進むにつれて上記対向部分の電位が上昇し、対向部分と非対向部分との電位差が拡大する。その場合、この電位差が小さくなる方向、即ち、非対向部分に吸蔵された電荷担体の一部が対向部分(典型的には対向部分のうち非対向部分に近い端部)に拡散(移動)する。上記非対向部分から対向部分に移動してきた電荷担体により対向部分の一部の電荷担体濃度が高くなった状態で充電を行うと、上記非対向部分から拡散(移動)してきた電荷担体が存在する部分(典型的には対向部分のうちの非対向部分に近い端部)において局所的に電荷担体濃度が増大する場合がある。
電荷担体濃度が局所的に高濃度となった部分では、局所的に電位が上昇し(局所的な過充電状態となり)、該部分に電荷担体に由来する物質(例えば金属リチウム)が析出する場合がある。負極活物質層表面に析出した電荷担体に由来する物質(例えば、金属リチウム)は電池反応に使用されないため、電池容量が低下する原因となり得、また、電荷担体に由来する物質の析出は、内部抵抗が増大する原因となり得るため好ましくない。
特許文献1には、上記負極活物質層中での電荷担体の分布の偏りを解消するために、上記非対向部分のうちの対向部分との隣接部分に負極活物質層を除去したスリットを設けた構成の負極を有する電池が開示されている。かかるスリットにより、非対向部分から対向部分への電荷担体の拡散(移動)を抑制することで、上記対向部分のうちの非対向部分に近い端部での電荷担体濃度の局所的な上昇を抑制し得る。
その一方で、負極活物質層を除去して上記負極集電体(典型的には銅箔等の金属材料)を露出させたスリット形成部分においては、その露出のさせ方(程度)によっては、該負極集電体上に電荷担体に由来する物質が析出する虞もあり、なお改善の余地があった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、上記スリットを設けることで負極活物質層中の電荷担体の分散の偏りを抑制し、且つかかるスリットへの電荷担体に由来する物質(典型的には金属リチウム等の金属)の析出が抑制された非水電解液二次電池を提供することである。
上記目的を実現すべく、本発明により、以下の構成の非水電解液二次電池が提供される。即ち、ここで開示される非水電解液二次電池は、
正極集電体上に正極活物質層が形成された正極と、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極と、該正負極を電気的に隔離するセパレータとを備えた電極体と、
非水電解液と
を備える非水電解液二次電池であって、上記負極活物質層は、上記正極活物質層に対向する対向部分と、上記正極活物質層に対向しない非対向部分とを有する。
そして、かかる非水電解液二次電池は、上記非対向部分のうち上記対向部分と隣接する部分には負極活物質層を有しないスリットが隣接する対向部分に沿って設けられており、当該スリットが、電気絶縁性を有し且つ非水電解液の透過を阻止する物質によって被覆されていることを特徴とする。
本発明によって提供される非水電解液二次電池によると、負極活物質層には、非対向部分のうちの上記対向部分に隣接する部分に負極活物質層を有しないスリットが設けられている。かかるスリットにより、放電時に非対向部分から対向部分へ電荷担体が移動することを抑制する(防ぐ)ことができる。このため、負極活物質中の電荷担体の分布を均一に保つことが可能である。
また、上記の構成の非水電解液二次電池によると、上記スリットが電気絶縁性を有し且つスリットが非水電解液の透過を阻止する物質(即ち非水電解液の透過が困難な物質、典型的には非水電解液を透過しない物質)によって被覆されているため、当該スリット部分の負極集電体に非水電解液が接触することを抑制する(防ぐ)ことが出来る。これにより、非水電解液中に含まれる電荷担体がスリットに析出することを抑制することが出来る。
ここで開示される非水電解液二次電池の好適な一態様では、上記非水電解液の透過を阻止する物質は、所定の温度域T1(以下単に「温度域T1」ともいう)においては上記非水電解液を透過する性状である一方で、上記所定の温度域T1より高温である所定の温度域T2(以下単に「温度域T2」ともいう)において上記非水電解液を透過しない性状に変化する物質である。
電極体中に非水電解液を含浸させるまでは、上記スリットを被覆する物質を非水電解液を透過する性状に保っておくことで、当該電極体中に非水電解液をスムーズに含浸させることができる。そして、上記電極体中に非水電解液を含浸させた後で当該電極体を上記所定の温度域T2まで昇温(加熱)して上記スリットを被覆する物質を非水電解液が透過しない性状に変化させることで、上記充放電時における上記スリットでの電荷担体由来の物質の析出を抑制(防止)することができる。
ここで開示される非水電解液二次電池の好適な一態様として、以下の構成の非水電解液二次電池が提供される。即ち、ここで開示される非水電解液二次電池の好適な一態様は、正極集電体上に正極活物質層が形成された正極と、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極と、該正負極を電気的に隔離するセパレータとを備えた電極体と、非水電解液とを備える非水電解液二次電池であって、
上記負極活物質層は、上記正極活物質層に対向する対向部分と、上記正極活物質層に対向しない非対向部分とを有し、
上記非対向部分のうち上記対向部分と隣接する部分には上記負極活物質層を有しないスリットが上記隣接する対向部分に沿って設けられており、
上記スリットが、フッ化ビニリデン骨格を含む重合体を主体とした樹脂あるいはアクリロニトリル骨格を含む重合体を主体とした樹脂で被覆されていることを特徴とする。
上記フッ化ビニリデン骨格を含む重合体あるいはアクリロニトリル骨格を含む重合体を主体とした樹脂は、温度域T1では非水電解液を透過する性状である一方で、当該温度域T1よりも高温の温度域T2において非水電解液を透過しない性状に変化する物質として好適に使用し得る物質である。また、これらの物質は、典型的に、非水電解液を透過しない性状において電気絶縁性である。なかでも、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体あるいはポリアクリロニトリルは、温度域T1では非水電解液を透過する性状である一方で、当該温度域T1よりも高温の温度域T2において非水電解液を透過しない性状に変化する特性に優れていることや、入手が比較的容易であること等から、スリットを被覆する物質として特に好適に使用することができる。
また、本発明によって、正極集電体上に正極活物質層が形成された正極と、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極であって、該負極活物質層が上記正極活物質層に対向する対向部分と上記正極活物質層に対向しない非対向部分とを有する負極と、該正負極を電気的に隔離するセパレータとを備えた電極体および非水電解液を電池ケース内に収容した非水電解液二次電池の製造方法が提供される。即ちここで開示される製造方法は、
(i)上記負極集電体上に、少なくとも負極活物質を含む負極活物質層形成用組成物を付与して負極活物質層を形成する工程;
(ii)上記負極活物質層のうち、上記非対向部分の一部であって、上記対向部分と隣接する部分を除去してスリットを形成する工程;
(iii)上記スリットを、所定の温度域T1においては上記非水電解液を透過する性状である一方で、上記所定の温度域T1より高温である所定の温度域T2において上記非水電解液を透過しない性状に変化する物質であって、当該非水電解液を透過しない性状では電気絶縁性である物質で被覆する工程;
(iv)上記正極および上記負極を上記セパレータを介して積層して電極体を構築する工程;
(v)上記電極体を電池ケース内に収容する工程;
(vi)上記電極体を収容した上記電池ケース内に上記非水電解液を注入し、上記電極体内に当該非水電解液を含浸させる工程;および、
(vii)上記電極体に上記非水電解液を含浸させた後で、上記電極体と上記非水電解液とを収容した上記電池ケースを、上記スリットを被覆した物質が非水電解液を透過しない性状に変化するまで加熱する工程;
を包含する。
上記の製造方法によると、電極体中に非水電解液を含浸させた後で、上記スリットを被覆した物質を電気絶縁性であり且つ非水電解液の透過しない性状に変化させることができる。これにより、電極体中への電解液の含浸性を確保しつつ、スリットへの電荷担体由来の物質の析出を高度に抑制することができる。
ここで開示される非水電解液二次電池の製造方法の好適な一態様として、正極集電体上に正極活物質層が形成された正極と、
負極集電体上に負極活物質層が形成された負極であって、該負極活物質層が上記正極活物質層に対向する対向部分と上記正極活物質層に対向しない非対向部分とを有する負極と、
該正負極を電気的に隔離するセパレータと
を備えた電極体および非水電解液を電池ケース内に収容した非水電解液二次電池の製造方法であって、以下の(i)〜(vii)の工程を含む製造方法が提供される。即ち、ここで開示される非水電解液二次電池の製造方法の工程な一態様では、
(i)上記負極集電体上に、少なくとも負極活物質を含む負極活物質層形成用組成物を付与して負極活物質層を形成する工程;
(ii)上記負極活物質層のうち、上記非対向部分の一部であって、上記対向部分と隣接する部分を除去してスリットを形成する工程;
(iii)上記スリットを、フッ化ビニリデン骨格を含む重合体を主体とした樹脂あるいはアクリロニトリル骨格を含む重合体を主体とした樹脂で被覆する工程;
(iv)上記正極および上記負極を上記セパレータを介して積層して電極体を構築する工程;
(v)上記電極体を電池ケース内に収容する工程;
(vi)上記電極体を収容した上記電池ケース内に上記非水電解液を注入し、上記電極体内に当該非水電解液を含浸させる工程;および、
(vii)上記電極体に上記非水電解液を含浸させた後で、上記電極体と上記非水電解液とを収容した上記電池ケースを、上記スリットを被覆した物質が非水電解液を透過しない性状に変化するまで加熱する工程;
を包含する。
上記フッ化ビニリデン骨格を含む重合体を主体とした樹脂あるいはアクリロニトリル骨格を含む重合体を主体とした樹脂で上記スリットを被覆することで、上記加熱工程を行うより前(即ち電解液含浸工程)までは当該樹脂を非水電解液を容易に透過し得る性状に保つことができるため、電極体中に非水電解液をスムーズに含浸させることができる。一方で、上記加熱工程により、上記フッ化ビニリデン骨格を含む重合体を主体とした樹脂あるいはアクリロニトリル骨格を含む重合体を主体とした樹脂を非水電解液を透過しない性状に変化させることで、当該スリットへの電荷担体由来の物質の析出を高度に抑制することができる。
ここで開示される非水電解液二次電池の製造方法の好適な一態様では、上記フッ化ビニリデン骨格を含む重合体を主体とした樹脂あるいはアクリロニトリル骨格を含む重合体を主体とした樹脂(スリットを被覆する物質)として、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体あるいはポリアクリロニトリルを使用し、上記電極体と非水電解液とを収容した電池ケースを少なくとも80℃以上に加熱する。
上記のポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体あるいはポリアクリロニトリルは、本発明において負極活物質層に形成された上記スリットを被覆する物質として好ましい。具体的には、これらの物質は、加熱前は非水電解液を透過する一方で、所定の温度以上に加熱されることで非水電解液の透過が困難な性状(典型的には非水電解液が透過しない性状)に変化する物質として好適に採用することができる。さらに、これらの物質は、少なくとも上記温度(ここでは80℃以上)に加熱することで、非水電解液の透過が困難な性状(典型的には非水電解液が透過しない性状)に好適に変化させることができる。
一実施形態に係る非水電解液二次電池の構造の一例を示す模式図である。 図1中のII−II断面を示す縦断面図である。 一実施形態に係る捲回電極体の構成を示す模式図である。 一実施形態に係る捲回電極体の構成を示す部分断面図である。 ここで開示される非水電解液二次電池の製造方法を説明するためのフローチァートである。 一実例における非水電解液二次電池の捲回電極体の部分断面図であって、負極活物質層中の電荷担体の分布を測定する際の測定領域を示す模式図である。 一実施例における非水電解液二次電池の負極活物質層中の電荷担体の分布を測定した結果を示すグラフである。縦軸には、各例に係る測定試料におけるリチウムイオンのイオン強度を各例に係る測定試料における炭素イオンのイオン強度に対する相対イオン強度として示す。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位に同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
ここで開示される非水電解液二次電池は、負極活物質層にスリットを有し且つ該スリットを電気絶縁性であり且つ非水電解液の透過を阻止する物質で被覆する以外は従来の非水電解液二次電池と同様の構成をとり得る。特に限定する事を意図したものではないが、ここで開示される非水電解液二次電池として、図1〜4に示す非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)100を例にして詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)の概略構成を図1、図2に示す。図1は、非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)100の外形を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示した非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)100のII−II線に沿う断面構造を模式的に示す縦断面図である。
図1および図2に示すように、非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)100は、長尺状の正極(正極シート)50と長尺状の負極(負極シート)60とが長尺状のセパレータ(セパレータシート)70を介して扁平に捲回された形態の電極体(捲回電極体)20が、図示しない非水電解液とともに扁平な箱型形状の電池ケース30に収容された構成を有する。
電池ケース30は、一端(電池の通常の使用状態における上端部に相当する。)に開口部を有する箱形(すなわち有底直方体状)のケース本体32と、該ケース本体32の開口部を封止する蓋体34とから構成される。図1および図2に示すように、蓋体34には外部接続用の正極端子42および負極端子44が設けられている。また、蓋体34には、電池ケース30内部で発生したガスを電池ケース外部に排出するための安全弁36および非水電解液を当該電池ケース内に注入するための注入口(図示せず)とが設けられている。
電池ケース30の材質としては、アルミニウム、スチール等の金属材料;ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料;が例示される。なかでも、放熱性向上やエネルギー密度を高める目的から、比較的軽量な金属(例えばアルミニウムやアルミニウム合金)を好ましく採用し得る。また、該ケースの形状(容器の外形)は、例えば円形(円筒形、コイン形、ボタン形)、六面体形(直方体形、立方体形)、袋体形、およびそれらを加工し変形させた形状等であり得る。
ここで開示される電極体20は、例えば積層型の電極体或いは捲回型の電極体であり得る。以下、特に限定することを意図したものではないが、捲回型の電極体(捲回電極体)20を例にして説明する。
≪捲回電極体20≫
図3は、図2に示す捲回電極体20の構成を示す模式図である。図3に示すように、本実施形態に係る捲回電極体20は、組み立てる前段階において長尺状のシート構造(シート状電極体)を有している。かかる捲回電極体20は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された正極(正極シート)50と、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成された負極(負極シート)60とを、長尺状のセパレータ(セパレータシート)70を介して重ね合わせて長尺方向に捲回し、更に側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状に成形されている。
図3に示すように、上記積層の際には、正極シート50は、捲回電極体20の一方(図では左側)の端部に正極シート50の正極活物質層非形成部分(即ち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)52aの一部が突出するように、負極シート60は他方(図では右側)の端部に負極シート60の負極活物質層非形成部分(即ち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)62aの一部が突出するように、幅方向で互いにずらして重ね合わされている。その結果、捲回電極体20の中央部には正極シート50と負極シート60とセパレータシート70とが積層されて捲回された積層部が形成される一方で、捲回電極体20の捲回軸方向の両端には、上記正負極の活物質層非形成部分(52a、62a)の一部がそれぞれ積層部から外方にはみ出した正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aが形成される。そして、図2に示すように、かかる正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aには、正極集電板42aおよび負極集電板44aが超音波溶接、抵抗溶接等によりそれぞれ接合されている。そして図示されるように、正極集電板42aおよび負極集電板44aは、それぞれ、上記正極端子42および負極端子44と電気的に接続されている。
捲回電極体20は、図3および図4に示すように、負極活物質層64の幅方向の長さが正極活物質層54の幅方向の長さよりも長くなるように各活物質層が形成され、該正極活物質層54の幅方向の両端が該負極活物質層64の幅方向の両端よりも内側に位置するように、正極50および負極60が積層されている。即ち、捲回電極体20は、図示するように、負極活物質層64の幅方向の中央部に正極活物質層54と対向する部分(対向部分22)が形成され、負極活物質層64の幅方向の両端部に正極活物質層54と対向しない部分(非対向部分24)が形成されるように、正極および負極が積層されている。なお、セパレータ70の幅方向の長さは、図示するように、負極活物質層64の幅方向の長さよりも長くなるように形成されている。
また、負極活物質層64の長尺方向の長さが正極活物質層54の長尺方向の長さよりも長くなるように各活物質層を形成し、該正極活物質層54の長尺方向の両端が該負極活物質層64の長尺方向の両端よりも内側に位置するように、正極50および負極60が積層してもよい。即ち、負極活物質層64の長尺方向の両端部(即ち、捲回電極体の捲き始めと捲き終わり)にも正極活物質層54と対向しない部分が形成されてもよい。
そして、図3および図4に示すように、上記負極活物質層64の非対向部分24うち、上記対向部分22に隣接する部分には、負極活物質層を有しないスリット66が当該対向部分22に沿って設けられており、該スリット66は、電気絶縁性であり且つ非水電解液の透過を阻止し得る物質(例えば非水電解液の透過が困難な物質、典型的には非水電解液を透過しない物質)によって被覆されている。典型的には、上記非対向部分24には、上記対向部分22との境界部分に当該対向部分22を取り囲んでスリット66が設けられている。かかるスリット66の幅長は特に限定されず、例えば1mm〜10mm程度、典型的には1mm〜5mm程度、好ましくは2mm〜3mm程度であり得る。
≪負極60(負極シート60)≫
負極60は、負極集電体62と、該負極集電体上に形成された少なくとも負極活物質を含む負極活物質層64とを備える。
負極集電体62には、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性材料が好適に使用され得る。
負極活物質層64は、少なくとも負極活物質を含んでいる。負極活物質としては、非水電解液二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)の負極活物質として使用し得ることが知られている各種の材料の1種または2種以上を、特に限定なく使用することができる。例えば、少なくとも一部にグラファイト構造(層状構造)を有する粒子状の炭素材料(カーボン粒子)を好適に用いることができる。いわゆる黒鉛質のもの(グラファイト)、難黒鉛化炭素質のもの(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素質のもの(ソフトカーボン)、これらを組み合わせた構造を有するもののいずれの炭素材料も好適に使用され得る。なかでも、高いエネルギー密度が得られることから、天然黒鉛(石墨)や人造黒鉛等の黒鉛系材料を好ましく用いることができる。また、上記炭素材料(コアとなる炭素材料)の表面を非晶質炭素膜で被覆してもよい。例えば、黒鉛質の炭素材料の表面を電解液との反応性が低い非晶質炭素で被覆することで、黒鉛質材料のエッジ部(典型的には、黒鉛のベーサル面の端部)が非水電解液(典型的には該電解液に含まれる非水溶媒)と反応(典型的には還元分解反応)することによって生じ得る電池の容量低下や抵抗増加を低く抑えることができる。また、負極活物質層64は、活物質以外の成分、例えば結着剤や増粘剤等を含み得る。結着剤としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)等の各種ポリマー材料を使用し得る。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の各種のポリマー材料を使用し得る。
上記スリット66は、電気絶縁性であり且つ非水電解液の透過を阻止する物質(例えば非水電解液の透過が困難な物質、典型的には非水電解液が透過しない物質)で被覆されている。
上記電気絶縁性であり且つ非水電解液の透過を阻止し得る物質(即ちスリット66を被覆する物質)は、所定の温度域T1(即ち、温度域T2に加熱されるより前)においては非水電解液を透過する性状である一方で、上記所定の温度域T1より高温である所定の温度域T2において非水電解液の透過が困難な性状(即ち、非水電解液の透過を阻止し得る性状、典型的には非水電解液が透過しない性状)に変化する物質が好ましい。典型的には、温度域T1(即ち、温度域T2に加熱されるより前)においては多孔性の固体であり、非水電解液を容易に透過する一方で、加熱していくことにより固体からゲルに相変化(相転移)し、該ゲル化した物質によって上記固体状態で有していた孔が塞がれて非水電解液の透過が困難な性状(即ち非水電解液の透過を阻止し得る性状、典型的には非水電解液が透過しない性状)に変化する物質が好ましい。かかる特性を有する物質として、例えば、フッ化ビニリデン骨格を有する重合体或いはアクリロニトリル骨格を有する重合体を主体とした(典型的には当該重合体が全体の50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは95質量%以上を占める)樹脂が挙げられる。好ましくは、フッ化ビニリデン骨格(典型的にはポリフッ化ビニリデン骨格)を有する重合体或いはアクリロニトリル骨格を有する重合体からなる樹脂である。上記スリット66を被覆する物質(典型的にはフッ化ビニリデン骨格を有する重合体或いはアクリロニトリル骨格を有する重合体を主体とした樹脂)としては、上述の重合体の中の一つを単独で含む樹脂であってもよいし、これらのうちの複数の重合体を含む樹脂であってもよい。また、必要に応じて、上述した重合体以外の成分を含み得る。
上記フッ化ビニリデン骨格を有する重合体としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)とポリオレフィンとの共重合体が挙げられる。このような重合体として、PVdFとフッ化ポリオレフィンとの共重合体が好ましく、特にPVdFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体(以下、単に「PVdF−HFP」ともいう)が好ましい。ここで、上記PVdFとポリオレフィン(好ましくはヘキサフルオロプロピレン)との共重合体において、全モノマー単位に対するフッ化ビニリデン単位の比率は特に限定されないが、典型的には70〜95モル%、例えば80モル%〜85モル%が好ましい。
また、上記アクリロニトリル骨格を有する重合体の好適例としては、例えばポリアクリロニトリルが挙げられる。
上記所定の温度域T1は特に限定されないが、少なくとも常温(20℃±15℃)を含む温度域(例えば0℃以上60℃以下)が好ましい。少なくとも常温(20℃±15℃)で非水電解液を透過する性状である物質(即ち温度域T1が常温(20℃±15℃)を含む物質)は、常温環境下(20℃±15℃)において電極体中へ非水電解液をスムーズに含浸させることができる。
また、上記所定の温度域T2は、スリットを被覆する物質(典型的にはフッ化ビニリデン骨格を有する重合体或いはアクリロニトリル骨格を有する重合体を主体とした樹脂)が非水電解液の透過が困難な性状(典型的には非水電解液を透過しない性状)に変化し得る温度域であれば特に限定されないが、少なくとも80℃以上(例えば90℃以上、典型的には100℃以上であって、例えば140℃以下、典型的には120℃以下)であり得る。かかる温度域T2で非水電解液の透過が困難な性状(典型的には非水電解液を透過しない性状)に変化する物質は、従来公知の加熱方法により容易に性状を変化させることが出来るため好ましい。
ここで、正極50およびセパレータ70は、従来の非水電解液二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)に用いられるものと同様のものを制限なく使用可能である。典型的な一態様を以下に示す。
≪正極50(正極シート50)≫
正極50は、正極集電体52と、該正極集電体上に形成された少なくとも正極活物質を含む正極活物質層54とを備える。正極集電体52には、導電性の良好な金属(例えばアルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性部材が好適に使用され得る。
正極活物質層54は、少なくとも正極活物質を含んでいる。正極活物質としては、非水電解液二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)の正極活物質として使用し得ることが知られている各種の材料の1種または2種以上を、特に限定なく採用し得る。好適例として、層状系、スピネル系等のリチウム複合金属酸化物(LiNiO、LiCoO、LiFeO、LiMn、LiNi0.5Mn1.5,LiCrMnO、LiFePO等)が挙げられる。なかでも、構成元素としてLi,Ni,CoおよびMnを含む、層状構造(典型的には、六方晶系に属する層状岩塩型構造)のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3)は、熱安定性に優れ、且つ他の化合物に比べて理論エネルギー密度が高いため好ましい。また、正極活物質層54は、活物質以外の成分、例えば導電材やバインダ等を含み得る。導電材としては、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、PVdF等を使用し得る。
このような正極50は、例えば以下のようにして作製することができる。まず、正極活物質と必要に応じて用いられる材料とを適当な溶媒(例えばN−メチル−2−ピロリドン)に分散させ、ペースト状(スラリー状)の組成物を調製し、次に、該組成物の適当量を正極集電体52の表面に付与した後、乾燥によって溶媒を除去することによって形成することができる。また、必要に応じて適当なプレス処理を施すことによって正極活物質層54の性状(例えば、平均厚み、活物質密度、空孔率等)を調整し得る。
≪セパレータ70(セパレータシート70)≫
正負極50、60間に介在されるセパレータ70(セパレータシート70)としては、正極活物質層54と負極活物質層64とを絶縁するとともに非水電解液の保持機能やシャットダウン機能を有するものであればよい。好適例として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から成る多孔質樹脂シート(フィルム)が挙げられる。なかでも、ポリオレフィン系の多孔質樹脂シート(例えばPEやPP)は、シャットダウン温度が80℃〜140℃(典型的には110℃〜140℃、例えば120℃〜135℃)と、電池の耐熱温度(典型的には凡そ200℃以上)よりも充分に低いため、適切なタイミングでシャットダウン機能を発揮することができる。
セパレータシート70は、単層構造であってもよく、あるいは材質や性状(厚みや空孔率等)の異なる2種以上の多孔質樹脂シートが積層された構造であってもよい。多層構造のものとしては、例えば、ポリエチレン(PE)層の両面にポリプロピレン(PP)層が積層された三層構造(すなわちPP/PE/PPの三層構造)のセパレータシートを好適に採用し得る。また、捲回電極体20に備えられた2枚のセパレータシート70には、それぞれ材質や性状の異なるものを採用することもできる。
セパレータシート70は、上記多孔質シートの片面または両面(典型的には片面)に多孔質の耐熱層を備えた耐熱性セパレータであってもよい。この耐熱層は、例えば、無機フィラーとバインダとを含む層であり得る。無機フィラーとしては、例えばアルミナ、ベーマイト、シリカ、チタニア、カルシア、マグネシア、ジルコニア、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等を好ましく採用し得る。耐熱層の平均厚みは、例えば1μm〜10μm程度とし得る。
≪非水電解液≫
ここで開示される非水電解液としては、従来からリ非水電解液二次電池(典型的にはチウムイオン二次電池)に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。典型的には適当な有機溶媒(非水溶媒)中に支持塩を含有させたものを用いることができる。
有機溶媒としては、一般的な非水電解液二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)の電解液に用いられる各種の有機溶媒、例えば、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性溶媒を、特に限定なく用いることができる。具体例として、カーボネート類、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピレンカーボネート(PC)等が挙げられる。なかでも、比誘電率の高いECや、酸化電位が高い(電位窓の広い)DMCやEMCを好適に用いることができる。例えば、非水溶媒として1種または2種以上のカーボネート類を含み、それらカーボネート類の合計体積が非水溶媒全体の体積の60体積%以上(より好ましくは75体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上であり、実質的に100体積%であってもよい。)を占める非水溶媒を好ましく用いることができる。
支持塩としては、一般的な非水電解液二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)の電解液に用いられる支持塩、例えばリチウム塩を特に制限なく用いることができる。なかでもLiPF、LiClO、LiAsF、Li(CFSON、LiBF、LiCFSO等のリチウム塩を好適に採用し得る。かかる支持塩は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。特にLiPFが好ましい。支持塩の濃度は特に制限されないが、極端に低すぎると非水電解液に含まれる電荷担体(典型的にはリチウムイオン)の量が不足し、イオン伝導性が低下する傾向がある。またかかる濃度が極端に高すぎると、室温以下の温度域(例えば0℃〜30℃)において非水電解液の粘度が高くなり、イオン伝導性が低下する傾向がある。このため、該支持塩の濃度は例えば、0.1mol/L以上(例えば0.8mol/L以上)であって、2mol/L以下(例えば1.5mol/L以下)とすることが好ましい。好ましくは、1.1mol/Lである。
さらに、非水電解液中には本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒、支持塩以外の成分をさらに含み得る。かかる任意成分は、例えば、電池の出力性能の向上、保存性の向上(保存中における容量低下の抑制等)、サイクル特性の向上、初期充放電効率の向上等の1または2以上の目的で使用されるものであり得る。好ましい添加剤の例として、ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤;オキサラト錯体化合物、フルオロリン酸塩(典型的にはジフルオロリン酸塩、例えばジフルオロリン酸リチウム)、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等の被膜形成剤;分散剤;増粘剤;等の各種添加剤が挙げられる。かかる添加剤は、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
以下、本発明に係る非水電解液二次電池の製造方法に関し、上述した非水電解液二次電池100を製造する好適な一実施態様を適宜図面を参照しながら説明する。なお、本発明の非水電解液二次電池の製造方法を以下の実施形態に限定することを意図したものではない。
ここで開示される非水電解液二次電池の製造方法は、図5に示すように、負極活物質層形成工程(S10)、スリット形成工程(S20)、スリット被覆工程(S30)、電極体構築工程(S40)、電極体収容工程(S50)、電解液含浸工程(S60)、加熱工程(S70)を包含する。以下、各工程について詳細に説明する。
まず、負極活物質層形成工程(S10)について説明する。かかる工程は、少なくとも負極活物質を含む負極活物質層形成用組成物を調製し、負極集電体62上に該負極活物質層形成用組成物を付与する工程が含まれる。
上記負極活物質層形成用組成物は、典型的には、ペースト状またはスラリー状の組成物であり、負極活物質と必要に応じて用いられる材料とを適当な溶媒(例えば水)に分散させることで調整することができる。ここで、上記分散方法は、従来公知の方法を特に制限なく採用することが可能であり、本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
そして、上述のとおりに作製した負極活物質層形成用組成物の適量を、負極集電体62の表面(片面または両面)に付与する。上記負極活物質層形成用組成物を付与する操作は特に限定されず、例えば、グラビアコーター、スリットコーター、ダイコーター、コンマコーター、ディップコーター等の適当な塗付装置を使用して行うことができる。
次に、スリット形成工程(S20)について説明する。かかる工程は、上記負極活物質層形成工程(S10)で形成した負極活物質層64の一部分に当該負極活物質層を有しないスリット66を形成する工程を含む。具体的には、上記負極活物質層64のうち、電極体を構築した際に正極活物質層54と対向しない非対向部分24の一部であって、正極活物質層54と対向する対向部分22と隣接する部分の負極活物質層64を、当該対向部分22に沿って除去する。
上記スリット66を形成する方法は、負極集電体62上に付与した負極活物質層を除去できる方法であれば特に限定されない。例えば、針状の部材(突起部材)を用いて負極活物質層の該当箇所の負極活物質層を削りとることで、スリット66を形成することができる。または、負極活物質層形成用組成物を付与する前の負極集電体62について、スリット66を形成する部分を予め適当な部材(例えばスリットの形状と一致した形状の部材、典型的にはテープ状の部材)で保護した後で、上記負極活物質層形成用組成物を付与し、その後上記スリット66形成部分を保護していた部材を除去する手法によっても、スリット66を形成可能である。或いはまた、負極集電体上に、上記負極活物質層形成用組成物を間欠的に付与する(即ち、上記スリット66を形成する領域には負極活物質層形成用組成物を付与しない)方法であっても、スリット66を形成することができる。
次に、スリット被覆工程(S30)について説明する。かかる工程は、上記スリット形成工程(S20)で形成したスリット66を、所定の温度域T1においては非水電解液を透過する性状である一方で、上記所定の温度域T1より高温である所定の温度域T2において非水電解液の透過が困難な性状(典型的には非水電解液が透過しない性状)に変化する物質であって、当該非水電解液の透過が困難な性状では電気絶縁性を有する物質で被覆することを含む。かかる所定の温度域T1においては非水電解液を透過する性状である一方で、上記所定の温度域T1より高温である所定の温度域T2において非水電解液の透過が困難な性状(典型的には非水電解液が透過しない性状)に変化する物質(即ちスリット66を被覆する物質)としては、既に上述したものの中から適切なものを用いればよい。
例えば、上記スリット66を被覆するための物質(即ち、所定の温度域T1においては非水電解液を透過する性状である一方で、上記所定の温度域T1より高温である所定の温度域T2において非水電解液の透過が困難な性状(即ち非水電解液の透過を阻止し得る性状、典型的には非水電解液が透過しない性状)に変化する性質を有する物質であって、当該非水電解液の透過が困難な性状では電気絶縁性を有する物質)を適当な溶媒(例えばジメチルアセトアミド(DMAC)、アセトン等)中に分散或いは溶解させてペースト状(スラリー状、インク状)の組成物(スリット被覆用組成物)を調製し、当該組成物をスリット66に付与した後で当該組成物中の溶媒を乾燥により除去することで、上記スリット66を、上記スリット66を被覆するための物質で被覆することができる。
なお、上記スリット66を形成する工程およびスリット66を被覆する工程は、負極活物質層形成用組成物中の溶媒を乾燥により除去する前後のいずれのタイミングで行ってもよい。上記負極活物質層形成用組成物中の溶媒を乾燥する前に上記スリット66の被覆を行うことで、上記負極活物質層形成用組成物中の溶媒の除去と、上記スリット被覆用組成物中の溶媒の除去とを同一の乾燥工程で行い得る。ただし、上記スリット被覆用組成物中の溶媒の除去は、上記スリットを被覆するための物質(即ち、所定の温度域T1においては非水電解液を透過する性状である一方で、上記所定の温度域T1より高温である所定の温度域T2において非水電解液の透過が困難な性状(即ち非水電解液の透過を阻止し得る性状、典型的には非水電解液が透過しない性状)に変化する性質を有する物質であって、当該非水電解液の透過が困難な性状では電気絶縁性を有する物質)が非水電解液の透過が困難な性状(典型的には非水電解液を透過しない性状)に変化する温度よりも低温の条件(典型的には温度域T1)で行う。
上記負極活物質層形成用組成物中の溶媒または上記スリット被覆用組成物中の溶媒を除去する方法は特に限定されず、例えば加熱乾燥や真空乾燥等の従来の一般的な乾燥手段により行うことができる。また、上記乾燥により負極活物質層形成用組成物中の溶媒を除去した後で、当該負極60(負極活物質層64)に対して適当なプレス処理を施すことによって、負極活物質層64の性状(例えば平均厚み、密度、空隙率等)を調製し得る。かかるプレス処理には、ロールプレス法、平板プレス法等の従来公知の各種のプレス方法を採用することができ、また、かかるプレス処理は1回でもよく、2回以上の複数回行うこともできる。
次に、電極体構築工程(S40)について説明する。かかる工程は、負極60と正極50とがセパレータ70を介して積層された電極体20を作製することを含む。正極50およびセパレータ70は従来の非水電解液二次電池用の電極に用いられるものを特に限定なく用いることができ、例えば上述したものを使用すればよい。ここで、正極50と負極60とは、負極活物質層64に形成されたスリット66の内側に正極活物質層54が配置されるように積層する。
特に限定することを意図したものではないが、上記電極体20は、図3に示すような、捲回軸方向の両端部から正極活物質層非形成部分52aあるいは負極活物質層非形成部分62aが突出し、扁平形状に成形された、捲回形状の電極体20であり得る。かかる捲回型の電極体20は、長尺状の正極50と長尺状の負極60とを、2枚の長尺状のセパレータ70を介して長尺方向に重ねあわせて捲回することで作製することができる。なお、正負極およびセパレータを重ねあわせて捲回した後で、該捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって、扁平形状に成形することができる。
次に、上記電極体収容工程(S50)について説明する。かかる工程は、上記電極体構築工程(S40)で作製した電極体20を電池ケース30内に収容することを含む。電池ケース30は従来の非水電解液二次電池に用いられるものを特に限定なく用いることができ、例えば上述したものを用いればよい。例えば、電池ケース本体32の一端(典型的には電池の通常の使用状態における上端)に設けられた開口から電極体20を挿入し、その後当該電池ケース本体32の開口を蓋体34で塞ぐことで、電極体20を電池ケース30内に収容することができる。なお、電極体20を電池ケース30内に収容する方法は、本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は割愛する。
次に、上記電解液含浸工程(S60)について説明する。かかる工程は、上記電極体収容工程(S50)で電極体を収容した電池ケース内に非水電解液を注入し、上記電極体内に非水電解液を含浸させることを含む。非水電解液は従来の非水電解液二次電池に用いられるものを特に限定なく用いることができ、例えば上述したものを用いればよい。
非水電解液を電池ケース内に注入する方法は特に限定されず、例えば蓋体34に設けた注入口から電池ケース30の内部に非水電解液を注液することで、電池ケース30内に非水電解液を注入することができる。このとき、電池ケース内を減圧してもよい。
また、電極体内に非水電解液を含浸させる方法は特に限定されず、例えば、電極体内に非水電解液が十分に含浸するまで、電極体および非水電解液を収容した電池ケースを放置(例えば静置)すればよい。電池ケースを放置する時間は、非水電解液二次電池の構成(例えば電池ケースの大きさ、電極体の構成材料および電極体の大きさ、非水電解液組成および非水電解液の液量等)によって異なるが、例えば従来の非水電解液二次電池の製造において電極体内に非水電解液を含浸させるために放置する時間と同程度の時間(典型的には数時間以上)放置すればよい。例えば1時間以上(典型的には3時間以上、好ましくは5時間以上)放置すればよい。放置時間の上限は特に限定されないが、作業効率の観点からは、例えば72時間以下(典型的には48時間以下、好ましくは24時間以下)であり得る。或いはまた、電池ケース内を減圧することで、電極体内への非水電解液の含浸を促進してもよい。
次に、上記加熱工程(S70)について説明する。かかる工程は、上記電極体収容工程(S50)および電解液含浸工程(S60)で電極体20および非水電解液が収容された電池ケース30を、スリット66を被覆した物質が非水電解液の透過が困難な性状(即ち非水電解液の透過を阻止し得る性状、典型的には非水電解液が透過しない性状)に変化するまで加熱する工程を含む。典型的には、上記電極体20および非水電解液を収容した電池ケース30を、当該電池ケース30の外部から所定の温度域T2まで加熱する。
上記加熱工程(S70)における加熱条件は、上記スリット66を被覆した物質が非水電解液の透過が困難な性状(典型的には非水電解液が透過しない性状)に変化する温度以上の温度(典型的には温度域T2)で加熱すればよい。例えば、電池ケース内の温度(典型的には電池内の電極体20の負極活物質層64に形成されたスリット66の温度)が、少なくとも80℃以上(典型的には90℃以上、例えば100℃以上)となるように加熱することが好ましい。一方で、電池ケース30(典型的には該電池ケース30内に収容された電極体20)を加熱する温度が高温すぎると、該電極体20を構成する他の材料が変質してしまうため好ましくない。このため、上記加熱温度を電極体20を構成する材料のうち上記スリット66を被覆する物質以外の材料が変質しない温度、例えば、電極体20を構成する材料のうち上記スリット66を被覆する物質以外の材料のうち融点が最も低い材料(典型的にはセパレータを構成する樹脂材料)の融点以下の温度(例えば140℃以下、典型的には120℃以下)に設定することが好ましい。
電極体20および非水電解液を収容した電池ケース30を加熱する方法は特に限定されず、所定の温度(典型的には温度域T2)の熱風を当てて加熱する方法(熱風加熱)、赤外線(遠赤外線を含む)を利用して加熱する方法(赤外線加熱或いは遠赤外線加熱)、所定の温度(典型的には温度域T2)の熱源を直接接触させて加熱する方法(接触加熱)等の従来公知の加熱方法から適宜選択して採用すればよい。例えば、所定の温度(典型的には温度域T2)に調温した恒温槽(オーブン)内に電池を放置することで当該電池を加熱することができる。
また、加熱時間は、上記スリット66を被覆した物質を非水電解液の透過が困難な性状(典型的には非水電解液が透過しない性状)に変化させるのに十分な時間であればよく、凡そ1〜3時間程度加熱すればよい。
本実施形態に係る非水電解液二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)では、負極活物質層の非対向部分のうち対向部分に隣接する部分にスリットを設けているため、負極活物質層中で電荷担体の分布が偏ることを好適に低減(防止)し得る。また、当該スリットを、電気絶縁性の物質であり且つ非水電解液の透過が困難な物質(即ち、非水電解液の透過を阻止し得る物質、典型的には非水電解液が透過しない物質)で被覆しているため、当該スリットにおける電荷担体由来の物質の析出を高度に抑制することができる。即ち、本発明によると、電池性能および安全性に優れた非水電解液二次電池が提供される。したがって、ここで開示される非水電解液二次電池は、その特徴を活かして、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等の車両に搭載される駆動用電源として好適に利用し得る。また、本発明によれば、ここに開示される非水電解液二次電池を、好ましくは動力源(典型的には複数個の二次電池が相互に電気的に接続されてなる組電池)として備えた車両が提供される。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<例1>
正極の作製は以下の手順で行った。正極活物質粉末としてのLiNi0.38Co0.32Mn0.30(LNCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのPVdFとを、これら材料の質量比率がLNCM:AB:PVdF=91:6:3となるよう混練機に投入し、N−メチルピロリドン(NMP)で粘度を調整しながら混練して、スラリー状の正極活物質層形成用組成物を調製した。かかる組成物を、厚み15μmの長尺状のアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布して、乾燥後にプレスすることによって、正極集電体上に正極活物質層を形成した。
負極の作製は以下の手順で行った。負極活物質としての天然黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、分散剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、これら材料の質量比率がC:SBR:CMC=98:1:1となるよう混練機に投入し、イオン交換水で粘度を調整しながら混練して、スラリー状の負極活物質層形成用組成物を調製した。かかる組成物を、厚み10μmの長尺状銅箔(負極集電体)の両面に適当量塗布した。
そして、該負極を用いて電極体を構築すると非対向部分に該当する部分の一部であって、対向部分と隣接する部分を当該対向部分に沿って除去してスリットを形成した。ここで、該スリットの形成は針状の部材(突起部材)を用いて該スリット形成部分の負極活物質層形成用組成物を削り取る方法で行った。
次いで、上述のとおりに形成したスリットを、PVdF−HFPで被覆した。具体的には、PVdF−HFP(PVdFとHFPとの共重合体)をジメチルアセトアミド(DMAC)中に分散させたスラリー状の組成物(スリット被覆用組成物)を上記スリットに付与し、スリットをPVdF−HFPで被覆した。そして、負極活物質層形成用組成物中の溶媒、およびスリット被覆用組成物(PVdF−HFPを含む組成物)中の溶媒を除去した。
これにより、負極集電体上に負極活物質層が形成されており、上記負極活物質層の非対向部分の一部であって対向部分と隣接する部分に当該対向部分に沿ってスリットが設けられており、且つ当該スリットがPVdF−HFPで被覆された負極を作製した。
上述の方法で作製した正極および負極を、2枚セパレータシート(多孔質ポリエチレン層の両面に多孔質ポリプロピレン層が形成された三層構造のセパレータシート)を介在させて長尺方向に重ねあわせ、長尺方向に捲回した後に押しつぶして拉げることで、扁平形状の捲回電極体を作製した。そして、かかる捲回電極体の端部に露出した正極集電体および負極集電体にそれぞれ正極集電板および負極集電板を溶接した。
そして、電池ケースの蓋体に正極端子および負極端子を取り付け、これらの端子を上記正極集電板および負極集電板とそれぞれ電気的に接続した。蓋体と連結された捲回電極体を、アルミ製の角型電池ケースの開口からその内部に収容し、開口と蓋体を溶接した。
次に、非水電解液を調製し、上記捲回電極体を収容した電池ケース内に該非水電解液を注入した。具体的には、まず、ECとDMCとEMCとの体積比が3:4:3の非水溶媒に、支持塩として1.1mol/LのLiPFを溶解させたものを準備した。そして、電池ケースの蓋体に設けられた電解液注入口から当該非水電解液を注入した。そして、上記非水電解液を注入した電池ケースを、捲回電極体中に非水電解液が十分に含浸されるまで(室温で凡そ10時間)放置した。
上記捲回電極体中に非水電解液が十分に含浸した後の電池を、凡そ80℃の恒温槽(オーブン)中に2時間程度放置した。即ち、かかる加熱により、上記スリットを被覆したPVdF−HFPを非水電解液の透過が困難な性状(即ち、非水電解液の透過を阻止する性状、典型的には非水電解液が透過しない性状)に変化させた。
このようにして、上記負極活物質層の非対向部分の一部であって対向部分と隣接する部分にスリットが設けられており、且つ当該スリットが、電気絶縁性の物質であって、非水電解液の透過を阻止し得る物質(例えば非水電解液の透過が困難な物質、典型的には非水電解液を透過しない物質、即ち加熱後のPVdF−HFP)で被覆された負極を備えた非水電解液二次電池を作製した。
<例2>
上記スリットをPVdF−HFPで被覆しない以外は上記例1に係る電池と同様の材料およびプロセスによって、例2に係る電池を作製した。即ち、例2に係る電池は、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極を備える電池であって、かかる負極活物質層の非対向部分の一部であって対向部分と隣接する部分にはスリットが設けられており、且つ当該スリットは、電気絶縁性の物質であって非水電解液の透過が困難な物質で被覆されていない。
<例3>
比較例として、上記スリットを設けない負極を備えた電池(例3)を作製した。具体的には、上記スリットを設けない(即ち、PVdF−HFPによるスリットの被覆を行わない)以外は上記例1に係る電池と同様の材料およびプロセスによって、例3にかかる電池を作製した。
上記作製した例1〜例3に係るリチウムイオン二次電池について、ハイレート充放電を3000サイクル繰り返す充放電サイクル試験を行い、該充放電サイクルを繰り返した後の負極活物質層中の電荷担体(Liイオン)の分布を調べた。また、上記充放電サイクル試験後の例1および例3に係る電池について、負極(スリットを含む)上への電荷担体に由来の物質(金属リチウム)の析出の有無を調べた。
[充放電サイクル試験]
上記充放電サイクル試験は、25℃の温度条件下において、30Cの充電レートで20秒間の定電流充電を行い、10分間の休止を行い、続いて30Cの放電レートで20秒間の定電流放電を行い、10分間の休止を行う充放電を1サイクルとして、該充放電を3000回繰り返した。ここで1Cとは、正極の理論容量より予測した電池容量(Ah)を1時間で充電できる電流値を意味する。
[Liイオンの分布状態の分析]
次に、上記充放電サイクル試験終了後の各電池の負極活物質層中のLiイオンの分布を調べた。
具体的には、まず、上記充放電サイクル試験後の各例に係る電池を正負極端子間電位が3Vの状態(SOC0%の状態)までCC−CV放電した後、ドライ環境のグローブボックス内で解体し、負極を取り出した。次に、かかる負極について、図6に示すように、負極活物質層の対向部分を捲回軸方向に6等分に区切ったうちの正極端子側端の1/6に該当する部分(正極端子側端部)、中央の2/6に該当する部分(中央部)、および負極端子側端の1/6に該当する部分(負極端子側端部)から、それぞれ適当な大きさの試験片を切り取った。そして、かかる各試験片(負極)を非水電解液として用いたEMC中に10分程度浸漬して洗浄し、Liイオン分布測定用の試験体とした。そして、各試験体の負極活物質層中のLiイオンの分布をレーザアブレーションICP質量分析(LA−ICP−MASS)により調べた。分析装置としては、NEW WAVE RESERCH社製のUP213を装置に添付のマニュアルに従って用いた。結果を図7に示す。
図7に示すように、負極活物質層の非対向部分のうち対向部分に隣接する部分に負極活物質層を有しないスリットを設けた例1及び例2は、当該スリットを設けなかった例3と比較して、負極活物質層の対向部分の両端部(正極端子側端部および負極端子側端部)におけるリチウムイオンのイオン強度が顕著に低かった。このことから、負極活物質層の非対向部分のうち対向部分に隣接する部分に上記スリットを設けることで、負極活物質層中の電荷担体の偏りを低減し得ることを確認した。特に、例1に係る電池は、負極活物質層の対向部分の両端部におけるリチウムイオンのイオン強度と負極活物質層の対向部分の中央部におけるイオン強度とが同程度であった。このことから、上記スリットを、電気絶縁性を有し且つ非水電解液の透過が困難な物質(即ち非水電解液の透過を阻止し得る物質、典型的には非水電解液を透過しない物質)で被覆することで、当該スリットを形成することによる負極活物質層中の電荷担体の偏りを低減する効果をより高レベルに発揮し得ることを確認した。
[金属リチウムの析出状態の観察]
また、上記充放電サイクル試験終了後の例1および例3にかかる各電池を構成する負極について、電荷担体に由来の物質(典型的には金属リチウム)の析出の有無を目視にて確認した。その結果、上記充放電サイクル試験後の例3に係る電池を構成する負極において、金属リチウムが析出していることを確認した。特に、例3に係る電池を構成する負極の負極活物質層の対向部分と非対向部分との境界部分で金属リチウムが析出していることを多く確認した。一方で、上記充放電サイクル試験後の例1に係る電池を構成する負極(負極活物質層およびスリット)においては金属リチウムの析出を確認しなかった。これは、負極活物質層の非対向部のうちの対向部分に隣接する部分にスリットを設け、該スリットを電気絶縁性を有し且つ非水電解液の透過が困難な物質(即ち非水電解液の透過を阻止し得る物質、典型的には非水電解液を透過しない物質)で被覆することで、負極活物質層中の電荷担体の偏りを低減(防止)し、且つ該スリットでの電荷担体由来の物質の析出を抑制(防止)したことの両方の効果と考えられる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
20 捲回電極体
22 対向部分
24 非対向部分
30 電池ケース
32 電池ケース本体
34 蓋体
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
66 スリット
70 セパレータシート(セパレータ)
100 非水電解液二次電池(リチウムイオン二次電池)

Claims (7)

  1. 正極集電体上に正極活物質層が形成された正極と、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極と、該正負極を電気的に隔離するセパレータとを備えた電極体と、非水電解液とを備える非水電解液二次電池であって、
    前記負極活物質層は、前記正極活物質層に対向する対向部分と、前記正極活物質層に対向しない非対向部分とを有し、
    前記非対向部分のうち前記対向部分と隣接する部分には前記負極活物質層を有しないスリットが前記隣接する対向部分に沿って設けられており、
    前記スリットが、電気絶縁性を有し且つ非水電解液の透過を阻止する物質によって被覆されている、非水電解液二次電池。
  2. 前記非水電解液の透過を阻止する物質は、所定の温度域T1においては前記非水電解液を透過する性状である一方で、前記所定の温度域T1より高温である所定の温度域T2において前記非水電解液を透過しない性状に変化する物質である、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
  3. 正極集電体上に正極活物質層が形成された正極と、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極と、該正負極を電気的に隔離するセパレータとを備えた電極体と、非水電解液とを備える非水電解液二次電池であって、
    前記負極活物質層は、前記正極活物質層に対向する対向部分と、前記正極活物質層に対向しない非対向部分とを有し、
    前記非対向部分のうち前記対向部分と隣接する部分には前記負極活物質層を有しないスリットが前記隣接する対向部分に沿って設けられており、
    前記スリットが、フッ化ビニリデン骨格を含む重合体を主体とした樹脂あるいはアクリロニトリル骨格を含む重合体を主体とした樹脂で被覆されている、非水電解液二次電池。
  4. 前記フッ化ビニリデン骨格を含む重合体を主体とした樹脂あるいはアクリロニトリル骨格を含む重合体を主体とした樹脂が、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体あるいはポリアクリロニトリルである、請求項3に記載の非水電解液二次電池。
  5. 正極集電体上に正極活物質層が形成された正極と、
    負極集電体上に負極活物質層が形成された負極であって、該負極活物質層が前記正極活物質層に対向する対向部分と前記正極活物質層に対向しない非対向部分とを有する負極と、
    該正負極を電気的に隔離するセパレータと
    を備えた電極体および非水電解液を電池ケース内に収容した非水電解液二次電池の製造方法であって、
    前記負極集電体上に、少なくとも負極活物質を含む負極活物質層形成用組成物を付与して負極活物質層を形成する工程;
    前記負極活物質層のうち、前記非対向部分の一部であって、前記対向部分と隣接する部分を除去してスリットを形成する工程;
    前記スリットを、所定の温度域T1においては前記非水電解液を透過する性状である一方で、前記所定の温度域T1より高温である所定の温度域T2において前記非水電解液を透過しない性状に変化する物質であって、当該非水電解液を透過しない性状では電気絶縁性である物質で被覆する工程;
    前記正極および前記負極を前記セパレータを介して積層して電極体を構築する工程;
    前記電極体を電池ケース内に収容する工程;
    前記電極体を収容した前記電池ケース内に前記非水電解液を注入し、前記電極体内に当該非水電解液を含浸させる工程;および、
    前記電極体に前記非水電解液を含浸させた後で、前記電極体と前記非水電解液とを収容した前記電池ケースを、前記スリットを被覆した物質が非水電解液を透過しない性状に変化するまで加熱する工程;
    を包含する、非水電解液二次電池の製造方法。
  6. 正極集電体上に正極活物質層が形成された正極と、
    負極集電体上に負極活物質層が形成された負極であって、該負極活物質層が前記正極活物質層に対向する対向部分と前記正極活物質層に対向しない非対向部分とを有する負極と、
    該正負極を電気的に隔離するセパレータと
    を備えた電極体および非水電解液を電池ケース内に収容した非水電解液二次電池の製造方法であって、
    前記負極集電体上に、少なくとも負極活物質を含む負極活物質層形成用組成物を付与して負極活物質層を形成する工程;
    前記負極活物質層のうち、前記非対向部分の一部であって、前記対向部分と隣接する部分を除去してスリットを形成する工程;
    前記スリットを、フッ化ビニリデン骨格を含む重合体を主体とした樹脂あるいはアクリロニトリル骨格を含む重合体を主体とした樹脂で被覆する工程;
    前記正極および前記負極を前記セパレータを介して積層して電極体を構築する工程;
    前記電極体を電池ケース内に収容する工程;
    前記電極体を収容した前記電池ケース内に前記非水電解液を注入し、前記電極体内に当該非水電解液を含浸させる工程;および、
    前記電極体に前記非水電解液を含浸させた後で、前記電極体と前記非水電解液とを収容した前記電池ケースを、前記スリットを被覆した物質が非水電解液を透過しない性状に変化するまで加熱する工程;
    を包含する、非水電解液二次電池の製造方法。
  7. 前記フッ化ビニリデン骨格を含む重合体を主体とした樹脂あるいはアクリロニトリル骨格を含む重合体を主体とした樹脂として、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体あるいはポリアクリロニトリルを使用し、
    前記電極体と非水電解液とを収容した電池ケースを少なくとも80℃以上に加熱する、請求項6に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017091804A (ja) * 2015-11-10 2017-05-25 株式会社コベルコ科研 リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法および評価用セル
JP2019185991A (ja) * 2018-04-09 2019-10-24 トヨタ自動車株式会社 リチウムイオン二次電池

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