JP2016132694A - 二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法 - Google Patents

二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法 Download PDF

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哲也 町田
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Abstract

【課題】遮光性、隠蔽性、難燃性に優れ、連続生産性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】下記(1)〜(3)を満たす二軸配向ポリエステルフィルム。
(1)フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中にカーボンブラック粒子を含有し、その含有量が0.5〜10重量%であること。
(2)光学濃度斑が0.10%以上50%以下であること。
(3)難燃性がVTM−0、VTM−1、VTM−2のいずれかであること。
【選択図】なし

Description

本発明は、遮光性、隠蔽性、難燃性に優れ、連続生産性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法に関する。
ポリエステル(特にポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートなど)樹脂は機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。そのポリエステルをフィルム化したポリエステルフィルム、中でも二軸配向ポリエステルフィルムは、その機械的特性、電気的特性などから、光学装置、太陽電池バックシートあるいはモーターなどに用いられる電気絶縁材料や、建築材料、感熱転写用途、工程紙などの各種工業材料として使用されている。
これらの用途のうち、電気絶縁材料では、難燃性が求められる。また、光学装置、特に携帯電話、カメラ、ビデオカメラ用途においては、装置の小型化、軽量化に加え、それらを構成する部材にも難燃性が求められるようになってきた。
従来、シャッターや絞りなどの光学装置の遮光部材には金属が使用されていたが、小型化、軽量化に伴い、合成樹脂フィルムが用いられることが多くなってきた。合成樹脂フィルムに遮光性を付与する方法としては、ポリエステルフィルムにカーボンブラックを添加することが一般的である。例えば、極限粘度[η]が0.5〜0.85dl/gのポリエステル樹脂にカーボンブラック粒子を添加したポリエステル樹脂組成物から構成されるポリエステルフィルムが考案されている(特許文献1)。
また、電気絶縁材料の中でも、太陽電池バックシート用途では、近年、難燃性だけでなく、意匠性の観点から、発電素子への配線などが外側から見えないことが望まれるようになっている。そのため、太陽電池バックシートには、難燃性だけでなく、高い隠蔽性が必要とされる。一般的に、フィルムの隠蔽性を向上させるためにはポリエステルフィルムを黒色化することが有効であり、これまでに黒色顔料としてカーボンブラックを添加したポリエステルフィルムを太陽電池バックシートに用いることが考案されている(特許文献2、3)。
特開2008−56871号公報 国際公開第2012/121076号パンフレット 特開2011−119651号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載されたポリエステルフィルムは、遮光性、隠蔽性には優れるものの、ポリエステルフィルムの難燃性は十分なものではなかった。
かかる課題に対して、本発明者らは、特許文献1〜3に記載されたポリエステルフィルムの難燃性を高めるために、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物に、従来公知の難燃剤を添加する検討を行なった。その結果、特許文献1〜3に記載のポリエステルフィルムは、難燃剤を添加・含有せしめることによって、一定の難燃性の向上の効果は得られるが、十分な難燃性を得るためには多量の難燃剤の添加が必要であること、また、そのような多量の難燃剤を添加する場合、フィルムの成形性が悪化し、連続生産性が悪化するという課題を有していることがわかった。
また、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に、多量の難燃剤やカーボンブラック粒子を添加する場合には、難燃剤やカーボンブラック粒子の凝集を防ぐために、従来公知の分散剤を添加することが必要になるが、分散剤を添加すると、難燃性が悪化するという課題を有していることがわかった。
そこで本発明は、これらの問題点を解消し、遮光性、隠蔽性、難燃性に優れ、連続生産性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。すなわち、
[I]下記(1)〜(3)を満たす二軸配向ポリエステルフィルム。
(1)フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中にカーボンブラック粒子を含有し、その含有量が0.5〜10重量%であること。
(2)光学濃度斑が0.10%以上50%以下であること。
(3)下記方法により求められる難燃性がVTM−0、VTM−1、VTM−2のいずれかであること。
<難燃性の評価方法>
(i)サンプル準備
測定サンプル(二軸配向ポリエステルフィルム)を20cm×5cmにカットする。
23℃、50%RH中で48時間放置したサンプルをサンプルA、温度70℃、168時間放置後、温度23℃、20%RH以下で4時間冷却したサンプルをサンプルBとして、それぞれサンプル5枚を1セットとして用意する。
(ii)測定方法
各サンプルの短辺から125mmのところに短辺と平行方向に線を引き、直径12.7mmの棒に、短辺が上下方向となるように巻きつける。125mmマークより上の75mm部分内は感圧テープで留めたあと棒を引き抜く。サンプルの上端はテスト中に煙突効果がないように閉じておく。次に、各サンプルを垂直にセットし、その300mm下方に脱脂綿を置く。サンプルの下端から10mmのところにバーナーの筒が位置するように、径9.5mm、炎長20mmのブンゼンバーナーを加熱源とし、サンプルの下端の中央に青色炎を3秒間接炎し、1回目の離炎後の燃焼時間(t1)を測定する。次いで、炎が消えたらすぐに再び3秒間接炎し、2回目の離炎後の燃焼時間(t2)および火種時間(t3)を測定する。また、1回目および2回目の接炎の際、125mmマークまで燃え上がる燃焼があったかどうか、脱脂綿を着火させるような燃焼落下物があったかの観察も行う。サンプルA、サンプルBについて、各1セット(5枚)ずつ、上記の測定を行なう。
(iii)難燃性の評価
下記判定基準を元に、難燃性を下記のとおり評価する。
VTM−0:判定基準(あ)、(い)、(う)、(え)、(お)のいずれも満たす。
VTM−1:判定基準(あ’)、(い’)、(う’)、(え)、(お)のいずれも満たす。
VTM−2:判定基準(あ’)、(い’)、(う’)、(え)のいずれも満たす。
VTMなし:VTM−0、VTM−1、VTM−2のいずれにも該当しない。
判定基準(あ):すべてのサンプルにおいて、1回目の離炎後の燃焼時間(t1)または2回目の離炎後の燃焼時間(t2)の長い方が10秒以下である。
判定基準(あ’):すべてのサンプルにおいて、1回目の離炎後の燃焼時間(t1)または2回目の離炎後の燃焼時間(t2)の長い方が30秒以下である。
判定基準(い):1セットあたりの離炎後の燃焼時間の合計(5枚サンプルの離炎後の燃焼時間(t1+t2)の合計)が、サンプルA、サンプルBいずれも50秒以下である。
判定基準(い’):1セットあたりの離炎後の燃焼時間の合計(5枚サンプルの離炎後の燃焼時間(t1+t2)の合計)が、サンプルA、サンプルBいずれも250秒以下である。
判定基準(う):すべてのサンプルにおいて、2回目の離炎後の燃焼時間(t2)と火種時間(t3)の合計が30秒以下である。
判定基準(う’):すべてのサンプルにおいて、2回目の離炎後の燃焼時間(t2)と火種時間(t3)の合計が60秒以下である。
判定基準(え):すべてのサンプルにおいて、125mmマークまで燃焼または火種が達しない。
判定基準(お):すべてのサンプルにおいて、燃焼したサンプルの落下によって脱脂綿が着火することがない。
[II]フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に難燃剤、分散剤を実質的に含有しない[I]に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
[III]フィルムの厚みが50μm以上、300μm以下である[I]または[II]に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
[IV]フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に含有するカーボンブラック粒子の偏在度が0.10%以上20%以下である[I]〜[III]のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
[V]光学装置の遮光部材、または太陽電池バックシートに用いられる[I]〜[IV]のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
[VI]ポリエステル樹脂組成物とカーボンブラック粒子を、溶融混練押出機を用いて溶融混練する工程を含む二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法であって、前記溶融混練する工程における溶融混練押出機のスクリュー回転数をN(rpm)としたとき、スクリュー回転数Nに、0.01%以上10%以下の変動を付与することを特徴とする[I]〜[IV]のいずれかに二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
[VII]下記(4)〜(5)を満たす工程を含む、[VI]に記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
(4)極限粘度[η]が0.70dl/g以上0.90dl/g以下のポリエステル樹脂組成物(a)とカーボンブラック粒子を溶融混練して得られるカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)と、カーボンブラックを含有しないポリエステル樹脂組成物(c)を溶融混練押出する工程を含むこと。
(5)前記カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)とカーボンブラックを含有しないポリエステル樹脂組成物(c)を溶融混練する工程における溶融混練押出機のスクリュー回転数をN(rpm)としたとき、スクリュー回転数Nに0.01%以上10%以下の変動を付与すること。
[VIII]前記カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)を作製する際、前記混練前のポリエステル樹脂組成物(a)のポリエステル樹脂の極限粘度と、得られるカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)のポリエステル樹脂の極限粘度が下記式(6−1)を満足する[VII]に記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
(6−1)0.75 ≦ [η]b/[η]a ≦ 0.90
[η]a:0.7dl/g以上のポリエステル樹脂組成物(a)のポリエステル樹脂の極限粘度(dl/g)
[η]b:カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)のポリエステル樹脂の極限粘度(dl/g)
本発明によれば、高い遮光性、隠蔽性、難燃性を満足し、連続生産性に優れる二軸配向ポリエステルフィルムを提供することができる。さらには、かかるフィルムを用いることで、高い遮光性、隠蔽性、難燃性を兼ね備えた光学装置の遮光部材、あるいは、太陽電池バックシートを提供することができる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂組成物中にカーボンブラック粒子を含有し、その含有量が0.5〜10重量%以上であるものである。
該ポリエステル樹脂組成物におけるポリエステル樹脂の含有率は、フィルムを構成する樹脂組成物全体に対して80重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは85重量%以上である。ポリエステル樹脂の含有率を上記の範囲とすることによって、フィルムの機械特性を向上させることができる。
本発明におけるポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分とを反応せしめて得られる、主鎖の主要な結合鎖としてエステル結合を有する高分子である。
かかるポリエステルを構成するジカルボン酸構成成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
また、かかるポリエステルを構成するジオール構成成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、芳香族ジオール類等のジオール、上述のジオールが複数個連なったものが例としてあげられるがこれらに限定されない。
また、本発明に用いられるポリエステルとしては、機械特性、電気特性、耐久性、生産性の観点からポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物全体に対してカーボンブラック粒子を0.5重量%以上、10重量%以下含有することが必要である。カーボンブラック粒子の含有量が0.5重量%に満たないと遮光性が十分でない。一方、カーボンブラック粒子の含有量が10重量%を超えるとカーボンブラック粒子の分散性悪化から、凝集体が発生し、難燃性が悪化し、生産性が悪化する。より好ましい下限としては、1.0重量%以上であり、さらに好ましい下限としては1.5重量%である。また、より好ましい上限としては、5重量%以下であり、さらに好ましくは、3重量%以下である。
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、光学濃度斑が0.10%以上50%以下であることが必要である。光学濃度斑は、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に含有するカーボンブラック粒子の偏在が大きい場合や、フィルムを構成するポリエステル樹脂の結晶化度斑が大きい場合に大きくなる。光学濃度斑が上記範囲にあると、難燃性が著しく良好となる。一方、光学濃度斑が50%を超えると、外観不良となる。この効果が得られるメカニズムは、いかなる理論に拘泥するものでもないが、発明者らは以下のように推定している。光学濃度斑が小さいフィルムは、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中にカーボンブラック粒子が均一に存在し、また、結晶化度が均一となっているため、フィルムが燃焼する際には燃焼が均一に進行する結果、燃焼時間が長くなる。一方、光学濃度斑が上記の範囲にあるフィルムは、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中にカーボンブラック粒子が偏在したり、フィルムの結晶化度に斑が存在しているため、ポリエステルフィルムの燃焼を局所的に発生・停止することが可能となり、優れた難燃性能を発揮させているものと考えている。より好ましくは0.2%以上30%以下であり、さらに好ましくは0.3%以上25%以下である。
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に含有するカーボンブラック粒子の偏在度が0.10%以上20%以下であることが好ましい。カーボンブラック粒子の偏在度は、後述する測定方法により求められるものである。フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に含有するカーボンブラック粒子を均一に分散させるよりも、偏在度が上記の範囲となるようにあえて偏在させて含有させることにより、難燃性が大きく向上する。カーボンブラック粒子の偏在度が0.10%未満では、難燃性向上効果が十分に得られない場合がある。一方、カーボンブラック粒子の偏在度が20%を超えると、連続生産性が悪化するだけでなく、難燃性も低下する場合がある。カーボンブラック粒子の偏在度は、より好ましくは0.2%以上10%以下であり、さらに好ましくは0.3%以上8%以下である。フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に含有するカーボンブラック粒子の偏在度を上記の範囲とする方法は特に制限されるモノではないが、例えば、(i)カーボンブラック粒子とポリエステル樹脂組成物を、溶融混練機を用いて溶融混練して、ポリエステル樹脂組成物中にカーボンブラックを分散させる際に、その溶融混練機のスクリュー回転数に変動を与える方法、(ii)カーボンブラック粒子とポリエステル樹脂組成物を、溶融混練機を用いて溶融混練して、ポリエステル樹脂組成物中にカーボンブラックを分散させる際に、溶融混練に供するポリエステル樹脂組成物の粘度を特定の範囲とすることが例示される。(i)、(ii)の方法については、後に詳しく述べる。
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に難燃剤、分散剤を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本発明において、「実質的に含有しない」とは、含有量が0.05重量%未満であることを表す。また、本発明において、ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中のカーボンブラック粒子、難燃剤、分散剤の含有量とは、ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂組成物に対する添加量とする。また、本発明において、難燃剤とは、樹脂に添加することにより、樹脂の難燃性を向上させる(樹脂の限界酸素指数値(LOI値)を上昇させる)機能を有する化合物、樹脂をあらわす。
ポリエステル樹脂を代表とする樹脂の難燃性を向上するために難燃剤を添加することは、広く知られている。従来公知の難燃剤としては種々あるが、例えば、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤、無機系難燃剤、窒素系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系化合物、ポリリン酸アンモニウム難燃剤、金属酸化物が挙げられる。
例えば、塩素系難燃剤としては、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、テトラクロロ無水フタル酸、クロレンド酸が挙げられる。臭素系難燃剤としては、含臭素ポリオール、デカブロモジフェニルオキサイド、エチレングリコースビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビスペンタブロモフェノール、トリブロモフェノール、ヘキサブロモベンゼン、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、TBBA・エポキシオリゴマー、TBBA・カーボネートオリゴマー、トリブロモフェニルアリルエーテル、ヘキサブロモシクロドデカン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、臭素化ポリスチレン、デカブロモフェニルオキシドが挙げられる。無機系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモンが挙げられる。酸化アンチモンには三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。窒素系難燃剤としては、メラミン化合物、グアニジン化合物、トリアジン化合物を挙げられる。リン系難燃剤には、リン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられ、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールNビス(ジ−2,6−キシリール)ホスフェート、リン酸アミド、赤リン、ポリリン酸塩、ホスファゼン化合物、エチレンジアミンホスフェート化合物、トリアジン化合物が挙げられる。シリコーン系化合物には、高分子量シリコーン油、シリコーンエラストマーが挙げられる。
上記のような難燃剤は、本願発明の難燃性を向上させるためには、フィルム中に数重量%程度添加する必要がある。難燃剤を添加・含有せしめると、樹脂の成形性、機械的強度低下、添加剤のブリードアウトによる表面欠点増加を招く場合がある。特に、カーボンブラック粒子を高濃度に含有するポリエステル樹脂組成物から構成されるフィルムを、二軸に配向させる工程を含む二軸配向ポリエステルフィルムにおいては、上記のような難燃剤を多量添加すると、製膜時の膜破れが発生しやすく、機械的強度低下を発生させやすくなる。そのため、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に上記の難燃剤を実質的に含有しないポリエステルフィルムは、生産性、成形性に優れ、特に連続生産性に優れる。なお、上記難燃剤として例示した化合物は、難燃性を向上させる以外の目的で、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に添加・含有させたとしても、フィルムの連続生産性を低下させる要因となる。そのため、上記例示した難燃剤は、難燃性を向上させる目的以外であっても、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に実質的に含有しないことが好ましい。
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に、分散剤を実質的に含有しないことが難燃性向上の観点から好ましい。
カーボンブラック粒子や難燃剤の分散性を向上する目的で添加される分散剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウムのような金属石鹸、エチレンビスアマイド、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスのような炭化水素ワックスおよびこれらの誘導体、また、酸変性体や水酸基変性体からなるワックスが挙げられる。例えば、メタロセン化合物の触媒により重合されたメタロセン系ポリオレフィンワックスが一般的に用いられている。
メタロセン化合物とは、たとえばチタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、ニオブ、プラチナ等の四価の遷移金属に、シクロペンタジエニル骨格を有するリガンドが少なくとも1つ以上配位する化合物の総称である。シクロペンタジエニル骨格を有するリガンドとしては、シクロペンタジエニル基;メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n−またはi−プロピルシクロペンタジエニル基、n−、i−、sec−、tert−ブチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基、オクチルシクロペンタジエニル基等のアルキル一置換シクロペンタジエニル基;ジメチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、メチルヘキシルシクロペンタジエニル基、エチルブチルシクロペンタジエニル基、エチルヘキシルシクロペンタジエニル基等のアルキル二置換シクロペンタジエニル基;トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基等のアルキル多置換シクロペンタジエニル基;メチルシクロヘキシルシクロペンタジエニル基等のシクロアルキル置換シクロペンタジエニル基;インデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基が挙げられる。
シクロペンタジエニル骨格を有するリガンド以外のリガンドとしては、たとえば、塩基、臭素等の一価のアニオンリガンド、二価のアニオンキレートリガンド、炭化水素基、アルコキシド、アミド、アリールアミド、アリールオキシド、ホスフィド、アリールホスフィド、シリル基、置換シリル基等が挙げられる。上記炭化水素基としては、炭素数1〜12程度のものが挙げられ、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘブチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セシル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、ネオフィル基等のアラルキル基;ノニルフェニル基等が挙げられる。
シクロペンタジエニル骨格を有するリガンドが配位したメタロセン化合物としては、具体的には、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−tert−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−p−n−ブチルフェニルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−tert−ブチルアミドハフニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−tert−ブチルアミドハフニウムジクロリド、インデニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジエチルアミド)、インデニルチタニウムビス(ジ−n−ブチルアミド)、インデニルチタニウムビス(ジ−n−プロピルアミド)等が挙げられる。
上記のような分散剤は、樹脂組成物中に含まれるカーボンブラック粒子や難燃剤の分散性を向上させること可能となるが、一方で、樹脂の難燃性を大きく低下させる。そのため、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に上記の分散剤を実質的に含有しないポリエステルフィルムは、難燃性に特に優れる。なお、上記分散剤として例示した化合物は、分散性を向上させる以外の目的で、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に添加・含有させたとしても、フィルムの難燃性を低下させる要因となる。そのため、上記例示した分散剤は、分散性を向上させる目的以外であっても、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に実質的に含有しないことが好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、優れた遮光性、隠蔽性を得る観点から、光学濃度が2.5以上であることが好ましい。好ましくは、4以上、さらに好ましくは、5以上である。光学濃度は、フィルムの厚み、およびフィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中のカーボンブラック粒子の含有量によって調整することができる。光学濃度が2.5未満の場合、遮光性、隠蔽性が不十分となり、光学的機能を発揮できなくなる場合がある。光学濃度の上限は特に限定されないが、光学濃度が6を超えるフィルムを得るためには、フィルム厚みを厚くしたり、カーボンブラック粒子の含有量を多くする必要があり、製膜性が悪化することがある。そのため、光学濃度は6以下であることが好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、10μm以上500μm以下の範囲が好ましい。より好ましい下限としては50μm以上である。また、より好ましい上限としては、300μm以下であり、さらに好ましくは150μm以下である。ポリエステルフィルムの厚みを前述の範囲とすると、遮光性、隠蔽性、難燃性、連続生産性のいずれも良好となる点から好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、下記方法(アメリカ保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories Inc.(ULと称する場合がある))の難燃性試験(UL94VTM燃焼試験)に準拠する)にて測定される難燃性が、VTM−0、VTM−1、VTM−2のいずれかである必要がある。上記の難燃性を有することにより、光学装置の遮光部材、あるいは、太陽電池バックシートの隠蔽部材に好適に用いることができる。
<難燃性の評価方法>
(i)サンプル準備
測定サンプル(二軸配向ポリエステルフィルム)を20cm×5cmにカットする。
23℃、50%RH中で48時間放置したサンプルをサンプルA、温度70℃、168時間放置後、温度23℃、20%RH以下で4時間冷却したサンプルをサンプルBとして、それぞれサンプル5枚を1セットとして用意する。
(ii)測定方法
各サンプルの短辺から125mmのところに短辺と平行方向に線を引き、直径12.7mmの棒に、短辺が上下方向となるように巻きつける。125mmマークより上の75mm部分内は感圧テープで留めたあと棒を引き抜く。サンプルの上端はテスト中に煙突効果がないように閉じておく。次に、各サンプルを垂直にセットし、その300mm下方に脱脂綿を置く。サンプルの下端から10mmのところにバーナーの筒が位置するように、径9.5mm、炎長20mmのブンゼンバーナーを加熱源とし、サンプルの下端の中央に青色炎を3秒間接炎し、1回目の離炎後の燃焼時間(t1)を測定する。次いで、炎が消えたらすぐに再び3秒間接炎し、2回目の離炎後の燃焼時間(t2)および火種時間(t3)を測定する。また、1回目および2回目の接炎の際、125mmマークまで燃え上がる燃焼があったかどうか、脱脂綿を着火させるような燃焼落下物があったかの観察も行う。サンプルA、サンプルBについて、各1セット(5枚)ずつ、上記の測定を行なう。
(iii)難燃性の評価
下記判定基準を元に、難燃性を下記のとおり評価する。
VTM−0:判定基準(あ)、(い)、(う)、(え)、(お)のいずれも満たす。
VTM−1:判定基準(あ’)、(い’)、(う’)、(え)、(お)のいずれも満たす。
VTM−2:判定基準(あ’)、(い’)、(う’)、(え)のいずれも満たす。
VTMなし:VTM−0、VTM−1、VTM−2のいずれにも該当しない。
判定基準(あ):すべてのサンプルにおいて、1回目の離炎後の燃焼時間(t1)または2回目の離炎後の燃焼時間(t2)の長い方が10秒以下である。
判定基準(あ’):すべてのサンプルにおいて、1回目の離炎後の燃焼時間(t1)または2回目の離炎後の燃焼時間(t2)の長い方が30秒以下である。
判定基準(い):1セットあたりの離炎後の燃焼時間の合計(5枚サンプルの離炎後の燃焼時間(t1+t2)の合計)が、サンプルA、サンプルBいずれも50秒以下である。
判定基準(い’):1セットあたりの離炎後の燃焼時間の合計(5枚サンプルの離炎後の燃焼時間(t1+t2)の合計)が、サンプルA、サンプルBいずれも250秒以下である。
判定基準(う):すべてのサンプルにおいて、2回目の離炎後の燃焼時間(t2)と火種時間(t3)の合計が30秒以下である。
判定基準(う’):すべてのサンプルにおいて、2回目の離炎後の燃焼時間(t2)と火種時間(t3)の合計が60秒以下である。
判定基準(え):すべてのサンプルにおいて、125mmマークまで燃焼または火種が達しない。
判定基準(お):すべてのサンプルにおいて、燃焼したサンプルの落下によって脱脂綿が着火することがない。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂組成物とカーボンブラック粒子を、溶融混練押出機を用いて溶融混練する工程を含み、前記溶融混練工程における溶融混練押出機のスクリュー回転数をN(rpm)としたとき、スクリュー回転数Nに、0.01%以上10%以下の変動を付与するポリエステルフィルムの製造方法により得ることで、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中のカーボンブラック粒子を容易に偏在化させたり、フィルムを構成するポリエステル樹脂の結晶化度に斑を発生させることができ、光学濃度斑を付与できる結果、難燃性、連続生産性に優れたポリエステルフィルムを得ることができるため好ましい。溶融混練押出機のスクリュー回転数を一定に保ったまま溶融混練するのではなく、溶融混練押出機のスクリュー回転数を0.01%以上10%以下の範囲で速くしたり遅くしたり、スクリュー回転数に変動を与えることで、溶融混練機中のポリマーの流速に変動が与えられる結果、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に含有するカーボンブラック粒子を偏在化させたり、結晶化度に斑を与えることが可能となる。より好ましくは、0.2%以上8%以下である。また、スクリュー回転数の変動の発生頻度は、1回/分〜600回/分であることが好ましい。
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、以下、(4)〜(5)を満たす工程を含むポリエステルフィルムの製造方法により得ることで、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中のカーボンブラック粒子を容易に偏在化させたり、結晶化度に斑を発生させることができ、難燃性、連続生産性に優れたポリエステルフィルムを得ることができるため好ましい。
(4)極限粘度[η]が0.70dl/g以上0.90dl/g以下のポリエステル樹脂組成物(a)とカーボンブラック粒子を溶融混練して得られるカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)と、カーボンブラックを含有しないポリエステル樹脂組成物(c)を溶融混練押出する工程を含むこと。
(5)前記カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)とカーボンブラックを含有しないポリエステル樹脂組成物(c)を溶融混練する工程における溶融混練押出機のスクリュー回転数をN(rpm)としたとき、スクリュー回転数Nに0.01%以上10%以下の変動を付与すること。
本発明のカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)は、ポリエステル樹脂の極限粘度[η]が0.70g/dl以上0.90dl/g以下のポリエステル樹脂組成物(a)とカーボンブラック粒子を溶融混練することにより、カーボンブラック粒子を好適な範囲に偏在化させたり、結晶化度に斑を与えることが容易となる。ポリエステル樹脂の極限粘度[η]が0.90g/dlを超えるとポリエステル樹脂の粘度が高いため、カーボンブラック粒子の偏在化や、結晶化度の斑が高くなりすぎる場合がある。また、ポリエステル樹脂の極限粘度[η]が0.70g/dl未満だとポリエステル樹脂の粘度が低いため、カーボンブラック粒子の偏在化や結晶化度の斑を高くすることが困難となる場合がある。ポリエステル樹脂組成物(a)は、0.72g/dl以上0.85dl/gであることがより好ましい。
また、カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)とカーボンブラックを含有しないポリエステル樹脂組成物(c)を溶融混練する工程における溶融混練押出機のスクリュー回転数をN(rpm)としたとき、スクリュー回転数Nに0.01%以上10%以下の変動を付与することで、溶融混練機中のポリマーの流速に変動が与えられる結果、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に含有するカーボンブラック粒子を容易に偏在化させたり、結晶化度に斑を与えることできる。より好ましくは、0.2%以上8%以下である。また、スクリュー回転数の発生頻度は、1回/分〜600回/分であることが好ましい。
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、以下、(6)を満たす工程を含むポリエステルフィルムの製造方法により得ることが好ましい。
(6)前記カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)を作製する際、前記混練前のポリエステル樹脂組成物(a)のポリエステル樹脂の極限粘度と、得られるカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)のポリエステル樹脂の極限粘度が下記式(6−1)を満足すること。
(6−1)0.75 ≦ [η]b/[η]a ≦ 0.90
[η]a:0.7dl/g以上のポリエステル樹脂組成物(a)のポリエステル樹脂の極限粘度(dl/g)
[η]b:カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)のポリエステル樹脂の極限粘度(dl/g)
[η]b/[η]aは、より好ましい下限は、0.76以上であり、さらに好ましくは0.78以上である。また、より好ましい上限は、0.88以下であり、さらに好ましくは、0.85以下である。[η]b/[η]aが0.75未満の場合、マスター原料の極限粘度の低下が大きく、フィルムの機械特性が悪化し、製膜破れが発生する場合があり、また、カーボンブラック粒子の偏在化が不十分となる場合がある。0.90を超えると、溶融混練におけるせん断が不十分となり、カーボンブラック粒子の偏在化が高くなりすぎる場合があり、遮光性、隠蔽性の悪化や、製膜時の濾圧上昇を招き、連続生産性が悪化する場合がある。
本発明においては、優れた難燃性、連続生産性発現の観点から、[η]b/[η]aが、式(6−1)を満たす範囲となるように、ポリエステル樹脂組成物(a)とカーボンブラック粒子とを溶融混練することで、カーボンブラック粒子が異物とならない程度に分散させつつ適度に偏在化させることが可能となり、難燃性、遮光性、隠蔽性、連続生産性に優れたポリエステルフィルムを得ることができることを見出した。
[η]b/[η]aが、式(6−1)を満たすための方法は、溶融混練部の温度、溶融混練の時間(ポリマーの滞留時間)、溶融混練時に加える剪断力を適宜調整することにより達成することができる。溶融混練する装置としては、一軸押出機であっても、二軸以上の押出機であっても良いが、二軸押出機などのせん断応力が高い高せん断混合機を用いる方法が好ましく例示される。また、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましい。二軸押出機を用いる場合、溶融混練部は200℃〜280℃の温度範囲が好ましい。より好ましい温度範囲は210℃〜280℃であり、さらに好ましい温度範囲は220℃〜280℃である。そのときのポリマーの滞留時間は1〜5分の範囲であることが好ましい。また、二軸のスクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜300回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高いせん断応力が付加され易く、カーボンブラック粒子の分散性を向上することが可能となり、また、せん断応力がかかり過ぎることにより起こるポリエステルの分解反応を抑制することができる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率(L/D)は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。
さらに、二軸押出機のスクリュー構成において、混練力を高めるためにニーディングパドル(ニーディングディスク)などによる混練部を設けることが好ましく、その混練部を好ましくは2箇所以上、さらに好ましくは3箇所以上設けたスクリュー構成にすることが好ましい。この際、ポリエステル樹脂組成物(a)とカーボンブラック粒子の混合順序には特に制限はなく、ポリエステル樹脂組成物(a)をペレット状にしたものとカーボンブラック粒子を配合後上記の方法により溶融混練する方法、ポリエステル樹脂組成物(a)を単軸あるいは2軸の押出機により溶融押出中にサイドフィーダーを用いてカーボンブラック粒子を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。
上記カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)中のカーボンブラック粒子の含有量は、5重量%以上、30重量%以下が好ましい。より好ましい下限は、10重量%以上である。また、より好ましい上限は、25重量%以下である。カーボンブラックの含有量が30重量%を超えると、せん断発熱の制御が難しくなり分散性が悪化する場合がある。カーボンブラックの含有量が5重量%未満の場合、せん断発熱が十分でなく、分散性が悪化する場合がある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、前記カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)とカーボンブラック粒子を含有しないポリエステル樹脂組成物(c)を混合したものを原料として用いることが好ましい。特に、下記(7)〜(9)を満足する工程を含む製造方法により得られると、遮光性、隠蔽性、難燃性、連続生産性の効果を発現する観点から好ましい。
(7)フィルムを製造するポリエステル原料に、前記カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)と、カーボンブラックを含有しないポリエステル樹脂組成物(c)を含むこと。
(8)カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)と、カーボンブラックを含有しないポリエステル樹脂組成物(c)のポリエステル樹脂の極限粘度が下記式(8−1)を満足すること。
(8−1)0.75 ≦ [η]b/[η]c ≦ 1.10
[η]b:カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)のポリエステル樹脂の極限粘度(dl/g)
[η]c:カーボンブラックを含有しないポリエステル樹脂組成物(c)のポリエステル樹脂の極限粘度(dl/g)
(9)フィルムを製造するポリエステル原料全体に対するカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターの含有量Wb(重量%)と、カーボンブラックを含有しないポリエステル樹脂組成物(c)の含有量Wc(重量%)が、下記式(9−1)を満たすこと。
(9−1)0.03 ≦ Wb/Wc ≦ 0.5
Wb:フィルムを製造するポリエステル原料全体に対するカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)の含有量(重量%)
Wc:フィルムを製造するポリエステル原料全体に対するカーボンブラックを含有しないポリエステル樹脂組成物(c)の含有量(重量%)
[η]b/[η]c、および、Wb/Wcが、上記好ましい範囲から外れると、遮光性、難燃性が悪化し、連続生産性が悪くなる(製膜時の濾圧上昇が発生する)場合がある。この原因は現時点では詳細には明らかになっていないが、[η]b/[η]c、および、Wb/Wcが、上記好ましい範囲から外れると、たとえカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)中において、カーボンブラック粒子が均一に分散していたとしても、溶融製膜を行う際に粒子の凝集が発生し、その凝集物が、難燃性、連続生産性の悪化を引き起こすものと推定している。[η]b/[η]cは、難燃性、連続生産性の観点からより好ましい下限は、0.85以上であり、さらに好ましくは、0.90以上である。また、より好ましい上限は、1.05以下であり、さらに好ましくは、0・95以下である。また、Wb/Wcは、より好ましい下限は、0.03以上である。より好ましい上限は、0.3以下であり、さらに好ましくは、0.15以下である。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、製膜機口金からシート状に溶融押出し、例えば以下の条件で製膜される。製膜機の口金からシート状に溶融押出された後、表面温度10℃以上60℃以下に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸シートを作製する。このようにして得られた未延伸シートを縦方向および横方向に二軸延伸して必要最適な厚みのシートに成形される。延伸は、逐次二軸延伸方式、あるいは、同時二軸延伸方式を用いることができる。例えば逐次二軸延伸の場合、該未延伸シートを70〜120℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に2〜5倍延伸し、20〜30℃のロール群で冷却する。続いて、長手方向に延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、90〜150℃に加熱した雰囲気中で長手方向に垂直な方向(横方向)に2〜5倍延伸する。このようにして得られた二軸延伸フィルムは、結晶配向を完了させて、平面性や熱寸法安定性を付与するために、テンター内にて150〜240℃で1〜30秒間の熱処理工程を経て、均一に冷却後、室温まで冷却して巻き取る。なお、熱処理工程中に、必要に応じて長手方向および/または幅方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、高い遮光性、隠蔽性と難燃性と優れた連続生産性を有するものであり、その特長を生かして携帯電話、カメラ、ビデオカメラなどの光学装置、太陽電池バックシートあるいはモーターなどに用いられる電気絶縁材料や、建築材料、感熱転写用途、工程紙などの各種工業材料として用いることができ、中でも、難燃性と遮光性、隠蔽性が求められる光学装置、太陽電池用バックシート用として好適に用いられる。
[特性の評価方法]
(1)融点
JIS K7121―1987に準じて示差走査熱量計セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上で室温から300℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、300℃で5分間溶融保持し、急冷固化して5分間保持した後、室温から昇温速度20℃/分で昇温した。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点とした。
(2)極限粘度
オルトクロロフェノール100mlに測定試料を溶解させ(溶液濃度C=1.2g/dl)、その溶液の25℃での粘度を、オストワルド粘度計を用いて測定する。また、同様に溶媒の粘度を測定する。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式(a)により、[η](dl/g)を算出し、得られた値でもって極限粘度とする。
(a)ηsp/C=[η]+K[η]・C
(ここで、ηsp=(溶液粘度(dl/g)/溶媒粘度(dl/g))―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)。
なお、測定試料を溶解させた溶液に無機粒子などの不溶物がある場合は、以下の方法を用いて測定を行った。
i)オルトクロロフェノール100mLに測定試料を溶解させ、溶液濃度が1.2mg/mLよりも濃い溶液を作成する。ここで、オルトクロロフェノールに供した測定試料の重量を測定試料重量とする。
ii)次に、不溶物を含む溶液を濾過し、不溶物の重量測定と、濾過後の濾液の体積測定を行う。
iii)濾過後の濾液にオルトクロロフェノールを追加して、(測定試料重量(g)−不溶物の重量(g))/(濾過後の濾液の体積(mL)+追加したオルトクロロフェノールの体積(mL))が、1.2g/100mLとなるように調整する。
(例えば、測定試料重量2.0g/溶液体積100mLの濃厚溶液を作成したときに、該溶液を濾過したときの不溶物の重量が0.2g、濾過後の濾液の体積が99mLであった場合は、オルトクロロフェノールを51mL追加する調整を実施する。((2.0g−0.2g)/(99mL+51mL)=1.2g/mL))
iv)iii)で得られた溶液を用いて、25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定し、得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、上記式(C)により、[η]を算出し、得られた値をもって極限粘度とする。
(3)光学濃度、光学濃度斑
測定対象のポリエステルフィルムを任意に20点サンプリングし、各サンプルにおける光学濃度を旧JIS K7605に準拠して下記の方法にて測定する。得られた20点の光学濃度の測定値の平均値を光学濃度、(最大値と最小値との差)/(20点の平均値)×100を光学濃度斑として求めた。
<光学濃度測定方法>
光学濃度計は、XRite361T(日本平板機械製)を用い、試料に垂直透過光束を照射して、試料がない状態との比をlog(対数)で表したものを光学濃度とした。光束幅は直径1mmの円形もしくは、それ以上の広さのものとした。
S:光学濃度が5以上
A:光学濃度が4以上5未満
B:光学濃度が3.5以上4未満
C:光学濃度が2.5以上3.5未満
D:光学濃度が2.5未満
S〜Bが良好であり、その中でもSが最も優れている。
(4)カーボンブラック粒子の含有量、偏在度
測定対象のポリエステルフィルムを任意に20点サンプリングし、各サンプルにおけるカーボンブラック粒子の含有量をJIS K6813に準拠して下記の方法にて測定する。得られた20点のカーボンブラック粒子の含有量の測定値の平均値をカーボンブラック粒子の含有量、(最大値と最小値との差)/(20点の平均値)×100を偏在度として求めた。
<カーボンブラック粒子の含有量測定方法>
試料を秤量し、重さをm1とする。秤量した試料を試料ボートに乗せ、あらかじめ550℃に加熱した円筒形電気炉にて窒素雰囲気下において45分間加熱する。窒素雰囲気下で試料ボートを10分間放冷した後、デシケータに移して室温まで放冷後、重さを秤量し、m2とする。その後、試料ボートをマッフル炉に入れ、900℃にてカーボンブラックの痕跡が無くなるまで灰化する。デシケータ内で室温まで試料ボートを冷却し、重さを秤量してm3とする。カーボンブラックの含有量(質量%)は以下の(式i)で算出し、算術平均を以て含有量(質量%)とする。
(式i)(m2−m3)/m1×100
(5)難燃性
UL−94VTM法に準拠して、下記方法により評価した。
(i)サンプル準備
測定サンプル(二軸配向ポリエステルフィルム)を20cm×5cmにカットする。
23℃、50%RH中で48時間放置したサンプルをサンプルA、温度70℃、168時間放置後、温度23℃、20%RH以下で4時間冷却したサンプルをサンプルBとして、それぞれサンプル5枚を1セットとして用意する。
(ii)測定方法
各サンプルの長辺の底辺から125mmのところに線を引き、直径12.7mmの棒に巻きつける。125mmマークより上の75mm部分内は感圧テープで留めたあと棒を引き抜く。サンプルの上端はテスト中に煙突効果がないように閉じておく。次に、各サンプルを垂直にセットし、その300mm下方に脱脂綿を置く。サンプルの下端から10mmのところにバーナーの筒が位置するように、径9.5mm、炎長20mmのブンゼンバーナーを加熱源とし、サンプルの下端の中央に青色炎を3秒間接炎し、1回目の離炎後の燃焼時間(t1)を測定する。次いで、炎が消えたらすぐに再び3秒間接炎し、2回目の離炎後の燃焼時間(t2)および火種時間(t3)を測定する。また、1回目および2回目の接炎の際、125mmマークまで燃え上がる燃焼があったかどうか、脱脂綿を着火させるような燃焼落下物があったかの観察も行う。サンプルA、サンプルBについて、各1セット(5枚)ずつ、上記の測定を行なう。
(iii)難燃性の評価
下記判定基準を元に、難燃性を下記のとおり評価した。
VTM−0:判定基準(あ)、(い)、(う)、(え)、(お)のいずれも満たす。
VTM−1:判定基準(あ’)、(い’)、(う’)、(え)、(お)のいずれも満たす。
VTM−2:判定基準(あ’)、(い’)、(う’)、(え)のいずれも満たす。
VTMなし:VTM−0、VTM−1、VTM−2のいずれにも該当しない。
判定基準(あ):各サンプルの1回目の離炎後の燃焼時間(t1)または2回目の離炎後の燃焼時間(t2)の長い方が、すべてのサンプルにおいて10秒以下である。
判定基準(あ’):各サンプルの1回目の離炎後の燃焼時間(t1)または2回目の離炎後の燃焼時間(t2)の長い方が、すべてのサンプルにおいて30秒以下である。
判定基準(い):1セットあたりの離炎後の燃焼時間の合計(5枚サンプルの離炎後の燃焼時間(t1+t2)の合計)が、サンプルA、サンプルBいずれも50秒以下である。
判定基準(い’):1セットあたりの離炎後の燃焼時間の合計(5枚サンプルの離炎後の燃焼時間(t1+t2)の合計)が、サンプルA、サンプルBいずれも250秒以下である。
判定基準(う):2回目の離炎後の燃焼時間(t2)と火種時間(t3)の合計が、すべてのサンプルにおいて30秒以下である。
判定基準(う’):2回目の離炎後の燃焼時間(t2)と火種時間(t3)の合計が、すべてのサンプルにおいて60秒以下である。
判定基準(え):125mmマークまで燃焼または火種が、すべてのサンプルにおいて達しない。
判定基準(お):すべてのサンプルにおいて燃焼したサンプルの落下によって脱脂綿が着火することがない。
(6)連続生産性
連続生産性は、実施例・比較例の条件にて製膜を48時間実施した際の膜の破れ回数を24時間当たりに換算した計算値、および、実施例・比較例に用いたフィルム原料を下記条件にてろ過性試験を行なった際のろ圧上昇値を用いて、下記の基準にて判定した。
S:24時間当たりの破れが1回未満 かつ ろ圧上昇値が80kg/cm未満
A:24時間当たりの破れが1回未満 かつ ろ圧上昇値が80kg/cm以上100kg/cm未満
B:24時間当たりの破れが1回未満 かつ ろ圧上昇値が100kg/cm以上120kg/cm未満
C:24時間当たりの破れが1回以上 あるいは ろ圧上昇値が120kg/cm以上
S〜Bが良好であり、その中でもSが最も優れている。
<ろ過性試験の条件>
実施例・比較例で用いた原料を、140℃で8時間、133Pa以下の減圧下で乾燥する。乾燥したペレットを、単軸の押出機を用いて、このペレットを、渡辺製作所社製のX4型20μmダイナロイフィルター(ろ過面積4.5cm)を用いて、ポリマー温度280℃、通過量10g/分でろ過を行う。ろ過開始から、ポリマーの通過量が1200gの時点のろ圧(R0)、8400gの時点のろ圧(R1)を測定し、R1−R0(kg/cm)をろ圧上昇値とする。
(7)フィルム厚み
フィルム厚みはJIS C 2151(2006年)「マイクロメータ法」に準じて測定した。測定器具はマイクロメータを使用し、製品幅方向に沿ってほぼ等間隔になるように測定し、幅方向30点の平均値とした。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
(参考例1)ポリエチレンテレフタレート樹脂Aの製造
ジメチルテレフタレートとエチレングリコールの混合物に、ジメチルテレフタレートに対して、酢酸カルシウム0.09重量%と三酸化アンチモン0.03重量%とを添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行った。次いで、得られたエステル交換反応生成物に、原料であるジメチルテレフタレートに対して、酢酸リチウム0.15重量%とリン酸トリメチル0.21重量%とを添加した後、重合反応槽に移行し、次いで加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重合し、極限粘度0.54dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)を得た。得られたPETポリマーを回転型真空重合装置を用いて、1mmHg以下の減圧下、225℃の温度で35時間加熱処理し、融点255℃、極限粘度0.73dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂A(PETチップA)を得た。
(参考例2)ポリエチレンテレフタレート樹脂Bの製造
参考例1で極限粘度0.54dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)を、20時間加熱処理する以外は参考例1と同様にして、融点255℃、極限粘度0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂B(PETチップB)を得た。
(参考例3)ポリエチレンテレフタレート樹脂Cの製造
参考例1で極限粘度0.54dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)を、50時間加熱処理する以外は参考例1と同様にして、融点255℃、極限粘度0.80dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂C(PETチップC)を得た。
(参考例4)カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターAの製造
参考例1で作製したPETチップA80重量%とカーボンブラック粒子として三菱化学社製ファーネスブラック(#3030B)20重量%をニーディングパドル混練部を設けた真空ベント付き同方向回転式二軸混練押出機(L/D=40)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分、スクリュー回転数の変動率4%、290℃で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして極限粘度0.58dl/gのカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターA(マスターチップA)を作製した。なお、スクリュー回転数Nは、10分間における平均値であり、スクリュー回転数の変動は、時間に対するスクリュー回転数を表す波形を表示可能なオシロスコープを観察しながら、スクリューの駆動装置のモーターの電流を調整することで実施した。
(参考例5)カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターBの製造
参考例4で、ベント付き同方向回転式二軸混練押出機のスクリュー回転数を100回転/分とする以外は、参考例4と同様にして極限粘度0.64dl/gのカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターB(マスターチップB)を製造した。
(参考例6)カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターCの製造
参考例4で、ベント付き同方向回転式二軸混練押出機のスクリュー回転数を400回転/分とする以外は、参考例4と同様にして極限粘度0.55dl/gのカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターC(マスターチップC)を製造した。
(参考例7)カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターDの製造
参考例4で、参考例1で得られたPETチップA90重量%とカーボンブラック10重量%とする以外は、参考例4と同様にして極限粘度0.63dl/gのカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターD(マスターチップD)を製造した。
(参考例8)カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターEの製造
参考例4で、参考例1で得られたPETチップA94重量%とカーボンブラック6重量%とする以外は、参考例4と同様にして、極限粘度0.65dl/gのカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターE(マスターチップE)を製造した。
(参考例9)カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターFの製造
参考例4で、参考例1で得られたPETチップA78重量%、カーボンブラック20重量%、分散剤として、オレフィンワックス「Licowax PP230」(クラリアント社製)を2重量%添加する以外は、参考例4と同様にして、極限粘度0.55dl/gのカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターF(マスターチップF)を製造した。
(参考例10)カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターGの製造
参考例4で、参考例2で作製したPETチップBを用いる以外は、参考例4と同様にして、極限粘度0.46dl/gのカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスターG(マスターチップG)を製造した。
(実施例1)
参考例4で得られたマスターチップA10重量%、参考例2で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂B90重量%をそれぞれ、180℃の温度で2時間真空乾燥せしめた。次いで、窒素雰囲気下で、押出機に供給した。スクリュー回転数300回転/分、スクリュー回転数の変動率4%、ポリマーを温度290℃にて、フィルターで濾過した後、温度280℃に設定したTダイの口金から溶融押出して表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、未延伸フィルムを作製した。
この未延伸フィルムを、加熱された複数のロール群からなる縦延伸機を用い、ロールの周速差を利用して、90℃の温度でフィルムの縦方向に3.3倍の倍率で延伸した。その後、このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、延伸温度95℃、延伸倍率3.5倍でフィルムの幅方向に延伸し、熱処理を225℃で8秒間行い、厚さ50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの特性等を表に示す。
(実施例2〜5、比較例1〜2)
スクリュー回転数の変動率を表に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの特性等を表に示す。
(実施例6)
実施例1のフィルムの厚みを200μmに変更した以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの特性等を表に示す。
(実施例7)
マスターチップA、ポリエチレンテレフタレート樹脂Bの含有量を表のとおりに変更する以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの特性等を表に示す。
(実施例8)
マスターチップAの代わりに、参考例5で得られたマスターチップB10重量%を用いる以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの特性等を表に示す。
(実施例9)
マスターチップAの代わりに、参考例6で得られたマスターチップC10重量%を用いる以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの特性等を表に示す。
(実施例10)
フィルムを製造するポリエステル原料として、参考例7で得られたマスターチップD20重量%用い、参考例2で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂B80重量%を用いる以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの特性等を表に示す。
(実施例11)
フィルムを製造するポリエステル原料として、参考例8で得られたマスターチップE33重量%、参考例2で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂B67重量%を用いる以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの特性等を表に示す。
(実施例12)
実施例1で、参考例4で得られたマスターチップA10重量%、参考例3で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂C90重量%を用いる以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの特性等を表に示す。
(比較例3)
マスターチップAの代わりに参考例9で得られたマスターチップFを用いる以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの特性等を表に示す。
(比較例4)
フィルムを製造するポリエステル原料として、参考例4で得られたマスターチップAを60重量%、参考例2で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂Bを40重量%用いる以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの特性等を表に示す。
(比較例5)
フィルムを製造するポリエステル原料として、参考例4で得られたマスターチップAを2重量%、参考例2で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂Bを98重量%用いる以外は、実施例1と同様の方法にて二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの特性等を表に示す。
Figure 2016132694
Figure 2016132694
本発明によれば、高い遮光性、隠蔽性、難燃性を満足し、連続生産性に優れる二軸配向ポリエステルフィルムを提供することができる。さらには、かかるフィルムを用いることで、高い遮光性と難燃性を兼ね備えた光学装置の遮光部材、あるいは、太陽電池バックシートを提供することができる。

Claims (8)

  1. 下記(1)〜(3)を満たす二軸配向ポリエステルフィルム。
    (1)フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中にカーボンブラック粒子を含有し、その含有量が0.5〜10重量%であること。
    (2)光学濃度斑が0.10%以上50%以下であること。
    (3)下記方法により求められる難燃性がVTM−0、VTM−1、VTM−2のいずれかであること。
    <難燃性の評価方法>
    (i)サンプル準備
    測定サンプル(二軸配向ポリエステルフィルム)を20cm×5cmにカットする。
    23℃、50%RH中で48時間放置したサンプルをサンプルA、温度70℃、168時間放置後、温度23℃、20%RH以下で4時間冷却したサンプルをサンプルBとして、それぞれサンプル5枚を1セットとして用意する。
    (ii)測定方法
    各サンプルの短辺から125mmのところに短辺と平行方向に線を引き、直径12.7mmの棒に、短辺が上下方向となるように巻きつける。125mmマークより上の75mm部分内は感圧テープで留めたあと棒を引き抜く。サンプルの上端はテスト中に煙突効果がないように閉じておく。次に、各サンプルを垂直にセットし、その300mm下方に脱脂綿を置く。サンプルの下端から10mmのところにバーナーの筒が位置するように、径9.5mm、炎長20mmのブンゼンバーナーを加熱源とし、サンプルの下端の中央に青色炎を3秒間接炎し、1回目の離炎後の燃焼時間(t1)を測定する。次いで、炎が消えたらすぐに再び3秒間接炎し、2回目の離炎後の燃焼時間(t2)および火種時間(t3)を測定する。また、1回目および2回目の接炎の際、125mmマークまで燃え上がる燃焼があったかどうか、脱脂綿を着火させるような燃焼落下物があったかの観察も行う。サンプルA、サンプルBについて、各1セット(5枚)ずつ、上記の測定を行なう。
    (iii)難燃性の評価
    下記判定基準を元に、難燃性を下記のとおり評価する。
    VTM−0:判定基準(あ)、(い)、(う)、(え)、(お)のいずれも満たす。
    VTM−1:判定基準(あ’)、(い’)、(う’)、(え)、(お)のいずれも満たす。
    VTM−2:判定基準(あ’)、(い’)、(う’)、(え)のいずれも満たす。
    VTMなし:VTM−0、VTM−1、VTM−2のいずれにも該当しない。
    判定基準(あ):すべてのサンプルにおいて、1回目の離炎後の燃焼時間(t1)または2回目の離炎後の燃焼時間(t2)の長い方が10秒以下である。
    判定基準(あ’):すべてのサンプルにおいて、1回目の離炎後の燃焼時間(t1)または2回目の離炎後の燃焼時間(t2)の長い方が30秒以下である。
    判定基準(い):1セットあたりの離炎後の燃焼時間の合計(5枚サンプルの離炎後の燃焼時間(t1+t2)の合計)が、サンプルA、サンプルBいずれも50秒以下である。
    判定基準(い’):1セットあたりの離炎後の燃焼時間の合計(5枚サンプルの離炎後の燃焼時間(t1+t2)の合計)が、サンプルA、サンプルBいずれも250秒以下である。
    判定基準(う):すべてのサンプルにおいて、2回目の離炎後の燃焼時間(t2)と火種時間(t3)の合計が30秒以下である。
    判定基準(う’):すべてのサンプルにおいて、2回目の離炎後の燃焼時間(t2)と火種時間(t3)の合計が60秒以下である。
    判定基準(え):すべてのサンプルにおいて、125mmマークまで燃焼または火種が達しない。
    判定基準(お):すべてのサンプルにおいて、燃焼したサンプルの落下によって脱脂綿が着火することがない。
  2. フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に難燃剤、分散剤を実質的に含有しない請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  3. フィルムの厚みが50μm以上300μm以下である請求項1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  4. フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物中に含有するカーボンブラック粒子の偏在度が0.10%以上20%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  5. 光学装置の遮光部材、太陽電池バックシートのいずれかに用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
  6. ポリエステル樹脂組成物とカーボンブラック粒子を、溶融混練押出機を用いて溶融混練する工程を含む二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法であって、前記溶融混練する工程における溶融混練押出機のスクリュー回転数をN(rpm)としたとき、スクリュー回転数Nに、0.01%以上10%以下の変動を付与することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
  7. 下記(4)〜(5)を満たす工程を含む、請求項6に記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
    (4)極限粘度[η]が0.70dl/g以上0.90dl/g以下のポリエステル樹脂組成物(a)とカーボンブラック粒子を溶融混練して得られるカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)と、カーボンブラックを含有しないポリエステル樹脂組成物(c)を溶融混練押出する工程を含むこと。
    (5)前記カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)とカーボンブラックを含有しないポリエステル樹脂組成物(c)を溶融混練する工程における溶融混練押出機のスクリュー回転数をN(rpm)としたとき、スクリュー回転数Nに0.01%以上10%以下の変動を付与すること。
  8. 前記カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)を作製する際、前記混練前のポリエステル樹脂組成物(a)のポリエステル樹脂の極限粘度と、得られるカーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)のポリエステル樹脂の極限粘度が下記式(6−1)を満足する請求項7に記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
    (6−1)0.75 ≦ [η]b/[η]a ≦ 0.90
    [η]a:0.7dl/g以上のポリエステル樹脂組成物(a)のポリエステル樹脂の極限粘度(dl/g)
    [η]b:カーボンブラック含有ポリエステル樹脂組成物マスター(b)のポリエステル樹脂の極限粘度(dl/g)
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