JP2016130488A - ノッキング信号分析方法およびノッキング信号分析装置 - Google Patents

ノッキング信号分析方法およびノッキング信号分析装置 Download PDF

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Abstract

【課題】内燃機関の状態変化が生じても、ノッキング検出精度の低下を抑制できるノッキング信号解析方法およびノッキング信号分析装置を提供する。
【解決手段】点火時期制御装置31の点火時期調整装置43が実行するノッキング信号分析処理では、ノッキング信号のデジタルデータについて複数の周波数成分におけるそれぞれ強度を分析値(第1分析値An1〜第5分析値An5)として演算して、分析値をそれぞれ二乗した値を合計した強度二乗和を含んだ強度Stを演算する(S160〜S190、S200〜S250)。ノッキング判定ステップ(S260)では、強度Stを用いて、内燃機関1でのノッキングの有無を判定する。この点火時期調整装置43においては、単一の周波数成分における分析値に基づいてノッキング判定する場合に比べて、より広い周波数帯域の変化状態に基づくノッキング判定が可能となる。
【選択図】図4

Description

本発明は、内燃機関に設けられたノッキングセンサのセンサ出力信号を分析するノッキング信号分析方法およびノッキング信号分析装置に関する。
内燃機関(エンジン)に設けられたノッキングセンサのセンサ出力信号を所定時間間隔でサンプリングしたデジタルデータについて離散フーリエ変換による周波数解析を行い、その周波数解析結果に基づいてノッキング判定を行うノッキング信号分析方法およびノッキング信号分析装置が知られている(特許文献1)。
このノッキング信号分析方法およびノッキング信号分析装置では、ノッキングセンサのセンサ出力信号(デジタルデータ)を周波数解析して、ノッキングに対応した周波数成分の強度を演算し、その強度を用いてノッキング判定を行う。
なお、「ノッキングに対応した周波数成分」は、ノッキング発生時に内燃機関に発生する振動の周波数(ノッキング周波数)に基づいて決定される。また、ノッキング周波数は、内燃機関等の共振周波数によって定まるものであり、この共振周波数は、内燃機関を構成する材料のバネ定数や質量などによって定まる。
特許第5511913号公報
しかし、内燃機関の状態変化(例えば、温度変化など)によってノッキング周波数が変化した場合には、上記のノッキング信号分析方法およびノッキング信号分析装置では、適切にノッキングを検出できない可能性がある。
つまり、内燃機関の状態変化(例えば、温度変化など)により内燃機関のバネ定数が変化して、内燃機関で実際に発生するノッキング周波数が変化すると、上記のノッキング信号分析方法およびノッキング信号分析装置で演算される「周波数成分の強度」としては検出できない可能性がある。
このような事態が発生すると、実際にはノッキングが発生しているにも関わらず、ノッキング検出ができず、ノッキング検出精度が低下する可能性がある。
そこで、本発明は、内燃機関の状態変化が生じても、ノッキング検出精度の低下を抑制できるノッキング信号解析方法およびノッキング信号分析装置を提供することを目的とする。
本発明の第1の局面におけるノッキング信号解析方法は、内燃機関に設けられたノッキングセンサのセンサ出力信号を所定時間間隔でサンプリングしたデジタルデータについて離散フーリエ変換による周波数解析を行う周波数解析ステップと、周波数解析ステップでの周波数解析結果に基づいて内燃機関でのノッキングの有無を判定するノッキング判定ステップと、を有している。
周波数解析ステップでは、離散フーリエ変換による周波数解析によって、センサ出力信号のデジタルデータについて複数の周波数成分におけるそれぞれの強度を個別強度として演算して、個別強度をそれぞれ二乗した値を合計した強度二乗和を演算する。ノッキング判定ステップでは、強度二乗和を用いて内燃機関でのノッキングの有無を判定する。
また、本発明の他の局面におけるノッキング信号解析装置は、内燃機関に設けられたノッキングセンサのセンサ出力信号を所定時間間隔でサンプリングしたデジタルデータについて離散フーリエ変換による周波数解析を行う周波数解析部と、周波数解析部での周波数解析結果に基づいて内燃機関でのノッキングの有無を判定するノッキング判定部と、を有している。
周波数解析部は、離散フーリエ変換による周波数解析によって、センサ出力信号のデジタルデータについて複数の周波数成分におけるそれぞれの強度を個別強度として演算して、個別強度をそれぞれ二乗した値を合計した強度二乗和を演算する。ノッキング判定部は、強度二乗和を用いて内燃機関でのノッキングの有無を判定する。
このノッキング信号分析方法およびノッキング信号分析装置においては、複数の周波数成分におけるそれぞれの個別強度が反映される強度二乗和に基づいてノッキング判定を行うため、単一の周波数成分における個別強度に基づいてノッキング判定する場合に比べて、より広い周波数帯域の変化状態に基づくノッキング判定が可能となる。
このため、内燃機関の状態変化(温度変化など)が生じて、ノッキング発生時に内燃機関に発生する振動の周波数(ノッキング周波数)が変化した場合でも、そのノッキング周波数成分の個別強度が強度二乗和に反映される場合には、ノッキングの検出が可能となる。
よって、このノッキング信号分析方法およびノッキング信号分析装置によれば、内燃機関の状態変化が生じても、ノッキング検出精度の低下を抑制できる。
次に、上記のノッキング信号分析方法およびノッキング信号分析装置においては、複数の周波数成分は、ノッキング判定用に予め定められた判定用周波数帯域に含まれる周波数成分であってもよい。
つまり、例えば、ノッキングセンサが設置された内燃機関で発生するノッキングの周波数帯域を予め調べておき、その周波数帯域に基づいて判定用周波数帯域を設定してもよい。このような判定用周波数帯域に含まれる複数の個別強度を用いて強度二乗和を演算して、その強度二乗和に基づいてノッキング判定を行うことで、より適切なノッキング判定が可能となり、ノッキング判定精度を向上できる。
次に、上記のノッキング信号分析方法およびノッキング信号分析装置においては、強度二乗和の演算に、個別強度を3個以上用いてもよい。
このように、3個以上の個別強度を用いて強度二乗和を演算することで、2個の個別強度を用いる場合に比べて、より広い周波数帯域の強度が強度二乗和に反映されることになる。つまり、内燃機関で実際に発生するノッキング周波数の変化幅が大きくなった場合であっても、強度二乗和に基づいたノッキング判定によりノッキングが検出できる可能性が向上する。
よって、このノッキング信号分析方法およびノッキング信号分析装置によれば、内燃機関の状態変化(温度変化など)が生じた場合であっても、より適切にノッキングを検出でき、ノッキング検出精度の低下を抑制できる。
次に、上記のノッキング信号分析方法においては、内燃機関の運転条件に応じて、強度二乗和の演算に用いる個別強度の個数を変更する個数変更ステップを有してもよい。また、上記のノッキング信号分析装置においては、内燃機関の運転条件に応じて、強度二乗和の演算に用いる個別強度の個数を変更する個数変更部を備えてもよい。
つまり、ノッキング発生時に内燃機関に発生する振動の周波数(ノッキング周波数)は、内燃機関の運転条件に応じて変化しており、ノッキング周波数の帯域幅についても内燃機関の運転条件に応じて変化する場合がある。
このため、内燃機関の運転条件に応じて、強度二乗和の演算に用いる個別強度の個数を変更することで、ノッキング周波数の帯域幅の変化にも対応したノッキング判定が可能となる。
よって、このノッキング信号分析方法およびノッキング信号分析装置によれば、内燃機関の状態変化(温度変化など)が生じた場合であっても、より適切にノッキングを検出でき、ノッキング検出精度の低下を抑制できる。
本発明のノッキング信号分析方法およびノッキング信号分析装置によれば、内燃機関の状態変化(温度変化など)が生じた場合であっても、より適切にノッキングを検出でき、ノッキング検出精度の低下を抑制できる。
実施例1の点火時期制御装置が用いられる内燃機関のシステム構成を示す説明図である。 (a)は実施例1の点火時期制御装置を一部破断して示す平面図、(b)はその点火時期制御装置を一部破断して示す正面図である。 (a)は実施例1の点火時期制御装置及びその周辺の装置を示す説明図、(b)はその点火時期調整装置の接続端子を示す説明図である。 ノッキング信号分析処理の処理内容を表すフローチャートである。 解析数が3点の場合と解析数が1点の場合とのそれぞれについて、ノッキング信号の解析用信号に関してFFT演算処理を実行して強度Stを演算した比較測定の測定結果を示す説明図である。 ノッキング信号のピーク値であるノック強度Ksと、FFT演算処理により演算した強度Stと、の相関係数について測定した測定結果を示す説明図である。
以下では、本発明を実施するための形態(実施例)について説明する。
尚、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
[1.実施例1]
[1−1.全体構成]
本実施例の点火時期制御装置は、汎用エンジンや2輪車用エンジンなどの各種のエンジン(内燃機関)に用いられるものであり、内燃機関の点火時期を制御する装置である。この点火時期制御装置は、内燃機関のノッキング判定を行い、ノッキング判定結果を用いて、ノッキングを抑制するように点火時期を制御する。
なお、以下では、4サイクルの2輪車用エンジンに備えられる点火時期制御装置を例に挙げて説明する。
まず、本実施例の点火時期制御装置を備えた内燃機関のシステム全体について説明する。
図1に示す様に、内燃機関1(エンジン1)は、エンジン本体3と、エンジン本体3に空気を導入する吸気管5と、吸入空気量を検出するエアフローメータ7と、吸入空気量を調整するスロットルバルブ9と、スロットルバルブ9の開度を検出するスロットル開度センサ11と、燃焼室13内に空気を導入する吸気マニホールド15と、燃料を吸気マニホールド15内に噴射する燃料噴射弁17と、エンジン本体3から(燃焼後の)空気を排出する排気マニホールド19と、排気マニホールド19から排出される排気から空燃比を検出する空燃比センサ21(又は酸素センサ21)などを備えている。
また、エンジン本体3のシリンダヘッド23には、点火プラグ25が取り付けられ、エンジン本体3には、エンジン回転数(回転速度)を検出するエンジン回転数センサ27や、クランク角を検出するクランク角センサ29が取り付けられている。
更に、エンジン本体3には、後述する点火時期制御装置31が取り付けられている。この点火時期制御装置31には、イグナイタ33が接続され、イグナイタ33には点火コイル35が接続され、点火コイル35は点火プラグ25に接続されている。
また、内燃機関1には、エンジン本体3等の運転状態(例えばエンジン回転数や空燃比センサ21の出力に基づく空燃比フィードバック制御など)を総合的に制御する内燃機関用制御装置37(エンジンコントロールユニット37)が設けられている。この内燃機関用制御装置37は、図示しないが、周知のRAM、ROM、CPU等を有するマイコンを備えた電子制御装置(ECU)である。
なお、以下では、点火時期制御装置31と内燃機関用制御装置37とを備えたシステムを、点火時期制御システム38と称する。
内燃機関用制御装置37の入力ポート(図示せず)には、エアフローメータ7、スロットル開度センサ11、空燃比センサ21、エンジン回転数センサ27、クランク角センサ29が接続されており、これらの各機器からの信号(センサ信号等)が入力ポートに入力される。
一方、内燃機関用制御装置37の出力ポート(図示せず)には、燃料噴射弁17、点火時期制御装置31が接続されており、これらの機器に対して、内燃機関用制御装置37から、各機器の動作を制御するための制御信号が出力される。
なお、本実施例では、点火時期制御装置31にイグナイタ33を接続した例を示したが、点火時期制御装置31にイグナイタ33を内蔵する態様を採ってもよい。
[1−2.点火時期制御装置]
次に、本実施例の点火時期制御装置31について説明する。
図2に示す様に、本実施例の点火時期制御装置31は、ノッキング検出装置41(ノッキングセンサ41)と点火時期調整装置43とが、接続ケーブル45を介して、電気的及び機械的に分離不可能に一体に構成されたものである。
ノッキング検出装置41は、周知の圧電素子65を用いた非共振型ノッキングセンサであり、主体金具47の軸孔47aに取付用ボルト(図示せず)が挿入される構造を有し、取付用ボルトによってエンジン本体3のシリンダブロック49(図1参照)に固定されるものである。
詳しくは、ノッキング検出装置41は、ほぼ全体が樹脂成形体51によってモールドさており、略円筒形状の本体部53と、本体部53の側面から突出する略直方体形状のコネクタ部55と、を備えている。
このうち、本体部53は、円筒形状の筒状部57とその一端側(図2(b)の下方)に設けられた環状の鍔部59とからなる前記主体金具47を有している。筒状部57には、鍔部59側から、環状の第1絶縁板61、環状の第1電極板63、環状の圧電素子65、環状の第2電極板67、環状の第2絶縁板69、環状のウエイト71、環状の皿バネ73、環状のナット75が配置されている。また、第1電極板63と第2電極板67とには、両電極板63、67間に発生した出力信号を取り出すための第1出力端子81と第2出力端子83とが、それぞれ接続されている。
点火時期調整装置43は、点火時期を調節する制御装置であり、内燃機関用制御装置37と同様に、周知のRAM、ROM、CPU等を有するマイコン(図示せず)を備えた電子制御装置である。
接続ケーブル45は、内部に第1出力端子81と第2出力端子83とに接続された各電気配線(図示せず)が設けられているケーブルであり、この接続ケーブル45の両端には、両電気配線と接続された第1コネクタ85と第2コネクタ87とが設けられている。
つまり、第1コネクタ85は、ノッキング検出装置41のコネクタ部55の開口部55aに嵌め込まれるとともに、各電気配線が第1出力端子81、第2出力端子83に接続されている。また、第2コネクタ87は、点火時期調整装置43の凹状のコネクタ部89に嵌め込まれるとともに、各電気配線が、点火時期調整装置43内の内部配線(図示せず)と接続されている。
特に本実施例では、接続ケーブル45の第1コネクタ85は、ノッキング検出装置41のコネクタ部55に嵌め込まれるとともに、接着剤によって固定されて分離不可能に一体に構成されている。同様に、接続ケーブル45の第2コネクタ87は、点火時期調整装置43のコネクタ部89に嵌め込まれるとともに、接着剤によって固定されて分離不可能に一体に構成されている。
[1−3.点火時期制御装置に関する電気的構成]
次に、点火時期制御装置31に関する電気的構成などについて説明する。
図3(a)に示す様に、点火時期制御装置31の点火時期調整装置43は、バッテリ91から電力の供給を受けて作動するものである。よって、点火時期調整装置43の接続端子には、図3(b)に示す様に、バッテリ91からの電力を受けるための一対の電源端子93、95が設けられている。
また、点火時期調整装置43は、リード線(信号線)97を介して、内燃機関用制御装置37と着脱可能に接続されている。なお、リード線97は、点火時期調整装置43および内燃機関用制御装置37の両方に対して着脱可能とされている。
点火時期調整装置43は、基準点火信号Aを内燃機関用制御装置37から受信するための受信用端子101を備えている。
更に、点火時期調整装置43は、1本のリード線105を介して、イグナイタ33と接続されており、点火コイル35を作動させるため信号(補正点火信号B)をイグナイタ33に対して出力するための点火用端子107が設けられている。
[1−4.点火時期制御の基本的な動作]
次に、上述した点火時期制御装置31を用いた点火時期制御の基本的な動作について説明する。
内燃機関用制御装置37では、例えばエンジン回転数や吸入空気量などに基づいて、点火時期の基準となる基準点火時期を決定する。この基準点火時期とは、内燃機関1毎のばらつきや気候変化等を考慮したときにも当該内燃機関1が破損しないような十分なマージンを持って設定された点火時期を、内燃機関1の運転状態毎に複数設定したマップを用いた上で、このマップと現在の運転状態とを対応(照合)して設定されるベースとなる点火時期(即ち、点火時期調整装置43によって調整される対象の点火時期)である。
なお、この基準点火時期を示す信号が、基準点火信号Aである。そして、この基準点火信号Aが、点火時期調整装置43に対して出力される。
基準点火信号Aを受信する点火時期調整装置43では、ノッキング検出装置41からの信号(ノッキング信号)を受信し、そのノッキング信号に基づいて、ノッキング(ノック)の発生の有無を検出する。このノッキング検出処理の内容については、後述する。
そして、点火時期調整装置43では、ノッキングの発生状態等に応じて、点火時期を調整(補正)して、補正点火時期を決定する。なお、この補正点火時期を示す信号が、補正点火信号Bである。
具体的には、ノッキングが発生していない場合には、所定期間毎に、点火時期を最大進角に至るまで徐々に進角させ、ノッキングが発生すると基準点火時期に戻すように、補正点火時期を設定する。なお、エンジン起動時や加速時等の運転過渡期といったエンジン回転数の変動が大きな場合には、点火時期を補正する処理は行わない。
次に、上述のように補正点火時期が決定されると、点火時期調整装置43から、イグナイタ33に対して、補正点火信号Bが出力される。
イグナイタ33では、補正点火信号Bの状態に応じて点火コイル35への通電状態(オン・オフ)を制御することで、点火コイル35における磁束密度を急激に変化させて、点火コイル35に点火用電圧を発生させる。
点火コイル35は、一次巻線および二次巻線(図示省略)を備えており、イグナイタ33による一次巻線への通電により、点火コイル35に磁束エネルギーが蓄積される。一次巻線に一次電流が流れている状態で、一次巻線への一次電流の通電が遮断(停止)されると、点火コイル35における磁束密度が急激に変化して、二次巻線に点火用電圧が発生する。
この点火用高電圧が点火プラグ25に印加されることで、点火プラグ25の中心電極と接地電極との間に火花放電が発生する。このときに二次巻線に流れる電流が二次電流である。
なお、上述した基準点火信号A及び補正点火信号Bには、ローレベルからハイレベルになるタイミングと、ハイレベルからローレベルになるタイミングとの情報が含まれている。このうち、ハイレベルからローレベルになるタイミングは、所望の点火時期(発火する時期)である。また、ハイレベルの期間は、必要な磁束エネルギーが蓄積されるように所定の期間が設定される。
[1−5.点火時期調整装置にて行われる処理]
次に、点火時期調整装置43にて行われる各種処理について説明する。
まず、ノッキング信号収集処理について説明する。
ノッキング信号収集処理は、点火時期調整装置43が起動されると、処理を開始し、点火時期調整装置43が停止するまで、処理を継続する。
ノッキング信号収集処理では、ノッキング検出装置41からのノッキング信号を、予め定められた所定時間間隔(サンプリング周期)で収集し、AD変換により得られたノッキング信号のデジタルデータを、点火時期調整装置43の記憶部(RAMなど)に記憶する処理を行う。とりわけ、そのデジタルデータのうち、ノッキングの発生する可能性のある所定期間(所定の回転角の区間)におけるノッキング信号を、解析用信号として点火時期調整装置43の記憶部に記憶する。
次に、ノッキング信号分析処理について説明する。
本処理は、ノッキング検出装置41からのノッキング信号に基づいて、ノッキング(ノック)の発生の有無を判定する処理である。ノッキング信号分析処理は、点火周期毎に実行される。
図4のフローチャートに示すように、ノッキング信号分析処理が起動されると、まず、S110(Sはステップを表す)では、内燃機関の運転条件(回転数など)に基づいて解析数の設定を行う。なお、解析数とは、周波数解析を行う周波数の個数である。
本実施例では、内燃機関の運転条件と解析数との対応関係を示したマップあるいは演算式を用いて、内燃機関の運転条件に対応する解析数の設定を行う。このマップあるいは演算式は、点火時期調整装置43の記憶部(ROMなど)に予め記憶されている。
次のS120では、内燃機関の運転条件(回転数など)に基づいて解析周波数(単位:[kHz])の設定を行う。なお、解析周波数とは、周波数解析を行う周波数である。
本実施例では、内燃機関の運転条件と解析周波数との対応関係を示したマップあるいは演算式を用いて、内燃機関の運転条件に対応する解析周波数の設定を行う。このマップあるいは演算式は、解析周波数を設定するにあたり、ノッキング判定用に予め定められた判定用周波数帯域(本実施例では、11.0〜21.0[kHz])に含まれる周波数成分を解析周波数に設定するように構成されている。判定用周波数帯域は、実際の内燃機関を用いたノッキング周波数の測定結果などにより得られた「内燃機関の運転条件とノッキング周波数との対応関係」に基づいて範囲が設定されている。なお、このマップあるいは演算式は、点火時期調整装置43の記憶部(ROMなど)に予め記憶されている。
次のS130では、S110で設定した解析数がいくつであるかを判定しており、解析数が1点の場合にはS140に移行し、解析数が3点の場合にはS160に移行し、解析数が5点の場合にはS200に移行する。
S130で解析数が1点と判定されてS140に移行すると、S140では、ノッキング検出装置41からのノッキング信号に関して、S120で設定された解析周波数におけるFFT演算処理を行う。このFFT演算処理は、離散フーリエ変換の一種であり、このFFT演算処理による演算結果は、解析周波数におけるノッキング信号の強度(スペクトル)であり、この値は第1分析値An1に設定される。
なお、上述したノッキング信号収集処理が実行されることで、ノッキング検出装置41からのノッキング信号のうち、ノッキングの発生する可能性のある所定期間(所定の回転角の区間)における信号は、解析用信号として点火時期調整装置43の記憶部(RAMなど)に記憶されている。S140では、この解析用信号を用いてFFT演算処理を実行する。
次のS150では、S140で得られた第1分析値An1をノッキングの強度を表す強度Stに代入する。
また、S130で解析数が3点と判定されてS160に移行すると、S160では、ノッキング検出装置41からのノッキング信号のうち解析用信号に関して、S120で設定された解析周波数から1[kHz]だけ小さい周波数におけるFFT演算処理を行う。このFFT演算処理による演算結果は、「解析周波数−1[kHz]」におけるノッキング信号の強度であり、この値は第1分析値An1に設定される。
なお、このとき解析周波数から減算する「1[kHz]」は、周波数分解能であり、点火時期調整装置43におけるノッキング信号のサンプリング周波数に応じて値が定められている。
次のS170では、ノッキング検出装置41からのノッキング信号のうち解析用信号に関して、S120で設定された解析周波数におけるFFT演算処理を行う。このFFT演算処理による演算結果は、解析周波数におけるノッキング信号の強度であり、この値は第2分析値An2に設定される。
次のS180では、ノッキング検出装置41からのノッキング信号のうち解析用信号に関して、S120で設定された解析周波数から1[kHz]だけ大きい周波数におけるFFT演算処理を行う。このFFT演算処理による演算結果は、「解析周波数+1[kHz]」におけるノッキング信号の強度であり、この値は第3分析値An3に設定される。
なお、このとき解析周波数に加算する「1[kHz]」は、周波数分解能であり、点火時期調整装置43におけるノッキング信号のサンプリング周波数に応じて値が定められている。
次のS190では、S160で得られた第1分析値An1と、S170で得られた第2分析値An2と、S180で得られた第3分析値An3と、に基づいて、ノッキングの強度を表す強度Stを演算する。具体的には、[数1]を用いて、ノッキングの強度を表す強度Stを演算する。
また、S130で解析数が5点と判定されてS200に移行すると、S200では、ノッキング検出装置41からのノッキング信号のうち解析用信号に関して、S120で設定された解析周波数から2[kHz]だけ小さい周波数におけるFFT演算処理を行う。このFFT演算処理による演算結果は、「解析周波数−2[kHz]」におけるノッキング信号の強度であり、この値は第1分析値An1に設定される。
次のS210では、ノッキング検出装置41からのノッキング信号のうち解析用信号に関して、S120で設定された解析周波数から1[kHz]だけ小さい周波数におけるFFT演算処理を行う。このFFT演算処理による演算結果は、「解析周波数−1[kHz]」におけるノッキング信号の強度であり、この値は第2分析値An2に設定される。
次のS220では、ノッキング検出装置41からのノッキング信号のうち解析用信号に関して、S120で設定された解析周波数におけるFFT演算処理を行う。このFFT演算処理による演算結果は、解析周波数におけるノッキング信号の強度であり、この値は第3分析値An3に設定される。
次のS230では、ノッキング検出装置41からのノッキング信号のうち解析用信号に関して、S120で設定された解析周波数から1[kHz]だけ大きい周波数におけるFFT演算処理を行う。このFFT演算処理による演算結果は、「解析周波数+1[kHz]」におけるノッキング信号の強度であり、この値は第4分析値An4に設定される。
次のS240では、ノッキング検出装置41からのノッキング信号のうち解析用信号に関して、S120で設定された解析周波数から2[kHz]だけ大きい周波数におけるFFT演算処理を行う。このFFT演算処理による演算結果は、「解析周波数+2[kHz]」におけるノッキング信号の強度であり、この値は第5分析値An5に設定される。
次のS250では、S200で得られた第1分析値An1と、S210で得られた第2分析値An2と、S220で得られた第3分析値An3と、S230で得られた第4分析値An4と、S240で得られた第5分析値An5と、に基づいて、ノッキングの強度を表す強度Stを演算する。具体的には、[数2]を用いて、ノッキングの強度を表す強度Stを演算する。
なお、S200〜S240の各ステップでのFFT演算処理は、それぞれの周波数の差分値が1[kHz]となるように設定された5つの周波数のそれぞれにおいてFFT演算を行う。
S150,S190,S250のいずれかの処理が終了するとS260に移行し、S260では、演算された強度Stに基づいてノッキングの有無を判定する。
具体的には、予め定められた閾値Thと強度Stとを比較して、強度Stが閾値Thよりも大きい場合には「ノッキング有り」と判定し、強度Stが閾値Th以下の場合には「ノッキング無し」と判定する。
S260での処理が終了すると、本処理が終了する。
このように、ノッキング信号分析処理では、内燃機関のノッキング判定のためのFFT演算処理を行うにあたり、内燃機関の運転条件に応じて、FFT演算処理での周波数の解析数や解析周波数を設定している。つまり、内燃機関の状態変化(例えば、温度変化など)によってノッキング周波数が変化した場合でも、その変化後のノッキング周波数に応じて解析数や解析周波数を設定することで、内燃機関のノッキング判定のためのFFT演算処理を実行することが可能となる。
次に、点火時期調整装置43にて実行される補正点火時期算出処理について、簡単に説明する。
本処理は、内燃機関用制御装置37からの基準点火信号Aを基準として、ノッキング判定結果に基づいて補正点火時期を算出する処理である。つまり、本処理では、ノッキングの発生状態等に応じて、点火時期を調整(補正)して、補正点火時期を決定する。なお、この補正点火時期を示す信号が、補正点火信号Bである。
具体的には、ノッキングが発生していない場合には、所定期間毎に、点火時期を最大進角に至るまで徐々に進角させ、ノッキングが発生すると基準点火時期に戻すように、補正点火時期を設定する。なお、エンジン起動時や加速時等の運転過渡期といったエンジン回転数の変動が大きな場合には、点火時期を補正する処理は行わない。
上述のように補正点火時期が決定されると、点火時期調整装置43から、イグナイタ33に対して、補正点火信号Bが出力される。
[1−6.測定]
ここで、本実施例の点火時期制御装置31を用いて実施した2つの測定に関して、それぞれの測定結果について説明する。
まず、本実施例の点火時期制御装置31を用いて、解析数が3点の場合と、解析数が1点の場合と、のそれぞれについて、ノッキング信号の解析用信号に関してFFT演算処理を実行して強度Stを演算した比較測定の測定結果について説明する。
なお、この測定では、解析数が3点の場合、解析数が1点の場合のそれぞれについて、解析周波数として5種類の周波数(14,15,16,17,18[kHz])について、強度Stの演算(測定)を実施した。
図5に示すように、解析数が3点の場合の強度Stは、例えば、解析周波数が14[kHz]の場合に演算される強度Stは、13〜15[kHz]の比較的広い周波数帯域において、大きい値(例えば、強度Stが15000以上)を示している。解析周波数が15,16,17,18[kHz]のそれぞれでも、解析周波数を中心とする±1[kHz]の周波数帯域において、演算される強度Stは大きい値を示している。
他方、解析数が1点の場合の強度Stは、例えば、解析周波数が14[kHz]の場合に演算される強度Stは、13.8〜14.2[kHz]の比較的狭い周波数帯域において、大きい値(例えば、強度Stが15000以上)を示している。解析周波数が15,16,17,18[kHz]のそれぞれでも、解析周波数を中心とする比較的狭い周波数帯域において、演算される強度Stは大きい値を示している。
これらのことから、例えば、内燃機関に発生したノッキングのノッキング周波数が15.5[kHz]の場合において、解析数が1点であり、解析周波数が15.0[kHz]あるいは16.0[kHz]の場合に得られる強度Stは、図5の測定結果によれば、小さい値(およそ強度St=11000)となる。この強度Stに基づいてノッキング判定を行うと、実際にはノッキングが発生している場合でも、強度Stが小さい値を示すために、「ノッキング無し」と誤判定される可能性がある。
これに対して、ノッキング周波数が15.5[kHz]の場合において、解析数が3点であり、解析周波数が15.0[kHz]あるいは16.0[kHz]の場合に得られる強度Stは、図5の測定結果によれば、大きい値(およそ強度St=15000)となる。この強度Stに基づいてノッキング判定を行うと、実際にはノッキングが発生している場合には、強度Stが大きい値を示すために、「ノッキング有り」と適切に判定できる可能性が高まる。
このことから、解析数が3点の場合には、解析数が1点の場合に比べて、より広い周波数帯域のノッキング周波数に対応したノッキング判定が可能となり、ノッキング判定精度を向上できる。
また、強度Stの演算にあたり、解析数が3点の場合においては、3つの分析値(第1分析値An1、第2分析値An2、第3分析値An3)を単純に合計した値を強度Stの演算に用いるのではなく、各分析値の二乗値を合計した値(強度二乗和)を強度Stの演算に用いている。これにより、得られる強度Stのうち、「解析周波数−1」から「解析周波数+1」までの周波数帯域において、値が大幅に小さくなるのを抑制できるため、適切なノッキング判定が可能となる。
とりわけ、ノッキング信号のサンプリング周波数の制約により、周波数分解能が1[kHz]となる場合(サンプリング周期=1[msec])には、その周波数分解能よりも小さい単位で解析周波数を設定することができず、ノッキング周波数が周波数分解能よりも小さい単位で変動する場合には、ノッキングが検出できない虞がある。このように、周波数分解能よりも小さい単位でノッキング周波数が変動する場合においては、解析数を複数に設定することで、解析数が1個の場合に比べて、ノッキング判定精度を向上できる。
次に、本実施例の点火時期制御装置31を用いて、燃焼圧センサにより取得したピーク値であるノッキング強度Ks(以下、ノック強度Ksともいう)と、ノッキング信号を用いてFFT演算処理により演算した強度Stと、の相関係数について測定した測定結果について説明する。
本測定では、10〜25[kHz]の周波数帯域における1[kHz]毎に、ノック強度Ksの検出と強度Stの演算とをそれぞれ実施し、ノック強度Ksと強度Stとの相関係数を求めた。この相関係数は、ノック強度Ksと強度Stとの正の相関関係が強くなるに従い、1に近い値となり、ノック強度Ksと強度Stとの正の相関関係が弱くなるに従い、0に近い値となる。
なお、強度Stの演算については、まず、解析数を1個としつつ10〜25[kHz]の周波数帯域における1[kHz]毎に、強度Stを演算した。さらに、解析数を3個としつつ解析周波数を20[kHz]として強度Stを演算して、この強度Stとノック強度との相関係数についても測定した。
また、強度Stとノック強度との相関係数の測定は、二輪用の空冷式125ccエンジンを用いて実施した。また、本測定は、内燃機関の運転条件のうち、3種類の運転条件(エンジン回転数:4000rpm、6000rpm、8000rpm)のそれぞれについて実施した。
図6に示すように、エンジン回転数4000rpmの場合、解析数が1個の場合に演算される強度Stとノック強度Ksとの相関係数は、周波数が20[kHz]の時に最大値として約0.55を示す。これに対して、解析数が3個の場合に演算される強度Stとノック強度Ksとの相関係数は、周波数が19〜21[kHz]の時に約0.60を示す。
また、エンジン回転数6000rpmの場合、解析数が1個の場合に演算される強度Stとノック強度Ksとの相関係数は、周波数が20[kHz]の時に最大値として約0.57を示す。これに対して、解析数が3個の場合に演算される強度Stとノック強度Ksとの相関係数は、周波数が19〜21[kHz]の時に約0.66を示す。
さらに、エンジン回転数8000rpmの場合、解析数が1個の場合に演算される強度Stとノック強度Ksとの相関係数は、周波数が10〜20[kHz]の時に最大値として約0.10を示す。これに対して、解析数が3個の場合に演算される強度Stとノック強度Ksとの相関係数は、周波数が19〜21[kHz]の時に約0.14を示す。
この測定結果から、内燃機関の運転条件がいずれの場合においても、解析数が3個の場合に演算される強度Stは、解析数が1個の場合に演算される強度Stと比べて、ノック強度Ksとの相関係数が高くなることが判る。よって、解析数が3個の場合には、解析数が1個の場合に比べて、ノッキング判定精度が向上する。
[1−7.効果]
次に、本実施例の効果を説明する。
上記のように、点火時期制御装置31の点火時期調整装置43は、各種処理の1つとして、ノッキング信号分析処理を実行する。
ノッキング信号分析処理には、ノッキング検出装置41(ノッキングセンサ)からのノッキング信号(センサ出力信号)を所定時間間隔でサンプリングした解析用信号(デジタルデータ)についてFFT演算処理を行う周波数解析ステップ(S140〜S150,S160〜S190、S200〜S250)が含まれる。
また、ノッキング信号分析処理には、周波数解析ステップでの周波数解析結果(強度St)に基づいてノッキング判定を行うノッキング判定ステップ(S260)が含まれる。
周波数解析ステップのうち、S160〜S190、S200〜S250では、FFT演算処理による周波数解析によって、ノッキング信号のデジタルデータについて複数の周波数成分におけるそれぞれ強度を分析値(第1分析値An1〜第5分析値An5)として演算して、[数1]または[数2]を用いて、強度Stを演算する。なお、[数1]および[数2]では、分析値をそれぞれ二乗した値を合計した強度二乗和を演算するとともに、その強度二乗和の平方根を強度Stとして演算する。
ノッキング判定ステップ(S260)では、強度二乗和に応じて値が変化する強度Stを用いて、内燃機関1でのノッキングの有無を判定する。具体的には、強度Stと閾値Thとの比較結果に基づいて、「ノッキング有り」または「ノッキング無し」と判定する。
点火時期調整装置43においては、複数の周波数成分におけるそれぞれの分析値(第1分析値An1〜第5分析値An5)が反映される強度二乗和を含む強度Stに基づいてノッキング判定を行うため、単一の周波数成分における分析値に基づいてノッキング判定する場合に比べて、より広い周波数帯域の変化状態に基づくノッキング判定が可能となる。
このため、内燃機関の状態変化(温度変化など)が生じて、ノッキング発生時に内燃機関に発生する振動の周波数(ノッキング周波数)が変化した場合でも、そのノッキング周波数成分の分析値が強度二乗和に反映される場合には、ノッキングの検出が可能となる。
よって、点火時期調整装置43によれば、内燃機関の状態変化が生じても、ノッキング検出精度の低下を抑制できる。
次に、ノッキング信号分析処理のS120では、周波数解析を行う周波数である解析周波数を設定するにあたり、ノッキング判定用に予め定められた判定用周波数帯域に含まれる周波数成分を解析周波数に設定する。そして、判定用周波数帯域は、実際の内燃機関を用いたノッキング周波数の測定結果などにより得られた「内燃機関の運転条件とノッキング周波数との対応関係」に基づいて範囲が設定されている。
これにより、解析周波数を適切に設定することができるため、より適切なノッキング判定が可能となり、ノッキング判定精度を向上できる。
次に、ノッキング信号分析処理のS190およびS250では、強度二乗和の演算において、分析値(第1分析値An1、第2分析値An2、第3分析値An3、第4分析値An4、第5分析値An5)を3個または5個用いている。なお、強度二乗和の演算とは、強度Stの演算式に含まれる一部の演算である。
このように、3個以上の分析値を用いて強度二乗和を演算することで、2個の分析値を用いる場合に比べて、より広い周波数帯域の分析値が強度二乗和に反映されることになる。つまり、内燃機関で実際に発生するノッキング周波数の変化幅が大きくなった場合であっても、強度二乗和に基づいたノッキング判定によりノッキングが検出できる可能性が向上する。
よって、ノッキング信号分析処理を実行する点火時期調整装置43によれば、内燃機関1の状態変化(温度変化など)が生じた場合であっても、より適切にノッキングを検出でき、ノッキング検出精度の低下を抑制できる。
次に、ノッキング信号分析処理においては、S110にて内燃機関の運転条件に基づいて解析数を設定することで、内燃機関の運転条件に応じて、強度二乗和の演算に用いる分析値(第1分析値An1、第2分析値An2、第3分析値An3、第4分析値An4、第5分析値An5)の個数を変更している。
つまり、ノッキング発生時に内燃機関1に発生する振動の周波数(ノッキング周波数)は、内燃機関の運転条件に応じて変化しており、ノッキング周波数の帯域幅についても内燃機関の運転条件に応じて変化する場合がある。
このため、内燃機関1の運転条件に応じて、強度二乗和の演算に用いる分析値の個数を変更することで、ノッキング周波数の帯域幅の変化にも対応したノッキング判定が可能となる。
よって、ノッキング信号分析処理を実行する点火時期調整装置43によれば、内燃機関の状態変化(温度変化など)が生じた場合であっても、より適切にノッキングを検出でき、ノッキング検出精度の低下を抑制できる。
[1−8.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施例とにおける文言の対応関係について説明する。
ノッキング信号分析処理のS160〜S190、S200〜S250での各処理が周波数解析ステップの一例に相当し、ノッキング信号分析処理のS260での処理がノッキング判定ステップの一例に相当する。
分析値(第1分析値An1、第2分析値An2、第3分析値An3、第4分析値An4、第5分析値An5)が個別強度の一例に相当し、各分析値の二乗値を合計した値(換言すれば、強度Stの演算式(数1,数2)に含まれる一部の数式の値)が強度二乗和の一例に相当し、S120で用いるマップあるいは演算式で定められた判定用周波数帯域が判定用周波数帯域の一例に相当する。ノッキング信号分析処理のS110での処理が個数変更ステップの一例に相当する。
ノッキング信号分析処理のS160〜S190、S200〜S250の各処理を実行する点火時期調整装置43が周波数解析部の一例に相当し、ノッキング信号分析処理のS260を実行する点火時期調整装置43がノッキング判定部の一例に相当する。ノッキング信号分析処理のS110を実行する点火時期調整装置43が個数変更部の一例に相当する。
ノッキング信号分析処理を実行する点火時期調整装置43がノッキング信号分析装置の一例に相当する。
[2.他の実施例]
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
例えば、上記実施例では、解析数を1個、3個、5個のいずれかに設定する形態について説明したが、解析数はこれらの個数に限られることはない。例えば、解析数を2個あるいは4個に設定してもよく、6個以上に設定しても良い。
また、S110およびS120で用いる内燃機関の運転状態は、エンジン回転数に限られることはなく、冷却水温度などの条件であってもよい。また、エンジン回転数および冷却水温度などの複数の条件を組み合わせたものを「内燃機関の運転状態」としても良い。
さらに、解析数が複数の場合には、S160およびS180などでの解析周波数に対する加算あるいは減算する値は、1[kHz](周波数分解能)に限られることはなく、他の数値であっても良いし、周波数分解能ではない任意の値であっても良い。また、加算時の数値と減算時の数値とは、互いに同一の値に限られることはなく、それぞれ異なる値であっても良い。
また、S110で設定する解析数は、上述のような3段階(1個、3個、5個)の中の1つに限られることはなく、2段階の中の1つや4段階以上の中の1つであってもよい。
さらに、点火時期調整装置43(ノッキング信号分析装置)は、接続ケーブル45を介してノッキング検出装置41(ノッキングセンサ)と電気的及び機械的に分離不可能に一体に構成された形態に限られることはなく、点火時期調整装置43(ノッキング信号分析装置)とノッキング検出装置(ノッキングセンサ)と接続ケーブルが、それぞれ分離可能な形態であっても良い。
また、上記実施例の内燃機関1は、4サイクルの2輪車用エンジンであるが、2輪車用エンジンに限られることはなく、他の車両用エンジン(4輪車用エンジンなど)または据え置き型エンジンなどであってもよい。また、単気筒エンジンであってもよく、多気筒エンジンであってもよい。
1…内燃機関(エンジン)、3…エンジン本体、23…シリンダヘッド、25…点火プラグ、27…エンジン回転数センサ、29…クランク角センサ、31…点火時期制御装置、37…内燃機関用制御装置(エンジンコントロールユニット)、38…点火時期制御システム、41…ノッキング検出装置(ノッキングセンサ)、43…点火時期調整装置、45…接続ケーブル。

Claims (8)

  1. 内燃機関に設けられたノッキングセンサのセンサ出力信号を所定時間間隔でサンプリングしたデジタルデータについて離散フーリエ変換による周波数解析を行う周波数解析ステップと、
    前記周波数解析ステップでの周波数解析結果に基づいて、前記内燃機関でのノッキングの有無を判定するノッキング判定ステップと、
    を有するノッキング信号分析方法であって、
    前記周波数解析ステップでは、前記離散フーリエ変換による周波数解析によって、前記センサ出力信号のデジタルデータについて複数の周波数成分におけるそれぞれの強度を個別強度として演算して、前記個別強度をそれぞれ二乗した値を合計した強度二乗和を演算し、
    前記ノッキング判定ステップでは、前記強度二乗和を用いて前記内燃機関でのノッキングの有無を判定すること、
    を特徴とするノッキング信号分析方法。
  2. 前記複数の周波数成分は、ノッキング判定用に予め定められた判定用周波数帯域に含まれる周波数成分であること、
    を特徴とする請求項1に記載のノッキング信号分析方法。
  3. 前記強度二乗和の演算に、前記個別強度を3個以上用いること、
    を特徴とする請求項1または請求項2に記載のノッキング信号分析方法。
  4. 前記内燃機関の運転条件に応じて、前記強度二乗和の演算に用いる前記個別強度の個数を変更する個数変更ステップを有すること、
    を特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のノッキング信号分析方法。
  5. 内燃機関に設けられたノッキングセンサのセンサ出力信号を所定時間間隔でサンプリングしたデジタルデータについて離散フーリエ変換による周波数解析を行う周波数解析部と、
    前記周波数解析部での周波数解析結果に基づいて、前記内燃機関でのノッキングの有無を判定するノッキング判定部と、
    を備えるノッキング信号分析装置であって、
    前記周波数解析部は、前記離散フーリエ変換による周波数解析によって、前記センサ出力信号のデジタルデータについて複数の周波数成分におけるそれぞれの強度を個別強度として演算して、前記個別強度をそれぞれ二乗した値を合計した強度二乗和を演算し、
    前記ノッキング判定部は、前記強度二乗和を用いて前記内燃機関でのノッキングの有無を判定すること、
    を特徴とするノッキング信号分析装置。
  6. 前記複数の周波数成分は、ノッキング判定用に予め定められた周波数帯域に含まれる周波数成分であること、
    を特徴とする請求項5に記載のノッキング信号分析装置。
  7. 前記強度二乗和の演算に、前記個別強度を3個以上用いること、
    を特徴とする請求項5または請求項6に記載のノッキング信号分析装置。
  8. 前記内燃機関の運転条件に応じて、前記強度二乗和の演算に用いる前記個別強度の個数を変更する個数変更部を備えること、
    を特徴とする請求項5から請求項7のうちいずれか一項に記載のノッキング信号分析装置。
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