以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1には本第1実施形態に係る車両用ポップアップフード装置10Aが示されている。車両用ポップアップフード装置10Aは、車両50(図2参照)に搭載され、互いに異なる制御を行う複数の電子制御ユニット(コンピュータを含んで構成された制御ユニットであり、以下ECUと称する)が各々接続されたバス12を備えている。バス12には、プリクラッシュ制御ECU14A、死角検知ECU16、ポップアップフード制御ECU18、車両50の車体速度を検出する車速センサ20、及び、車両50と物体との衝突を検知する衝突検知センサ44が各々接続されている。なお、衝突検知センサ44の詳細は後述するが、衝突検知センサ44は本発明における衝突検知部の一例であり、車速センサ20は本発明における車速検知部の一例である。なお、以下では「ポップアップフード」を「PUH」、「プリクラッシュ」を「PC」、「アクチュエータ」を「ACT」と称する。
PC制御ECU14Aには、レーダ装置22が接続されていると共に、画像処理装置24を介してカメラ26が接続されている。レーダ装置22は、車両50の周囲に存在する歩行者や他車両等の物体を点情報として検出し、検出した物体と車両50の相対位置関係及び相対速度を取得する。また、レーダ装置22は周囲の物体の探知結果を処理する処理装置を内蔵している。当該処理装置は直近の複数回の探知結果を基に、相対位置関係や相対速度の変化等に基づいてノイズやガードレール等の路側物等を監視対象から除外し、歩行者や他車両等の特定の物体を監視対象物として追従監視する処理を行う。個々の監視対象物との相対位置関係や相対速度等の情報は、画像処理装置24及びPC制御ECU14Aへ出力される。
カメラ26は車両50の周囲を撮像可能な位置に配置され、画像処理装置24にはカメラ26が車両50の周囲を撮像することで得られた画像が入力される。画像処理装置24は、レーダ装置22から入力された個々の監視対象物との相対位置関係等の情報に基づいて、カメラ26から入力された画像のうち個々の監視対象物に相当する画像部を認識する。また、認識した画像部の前記画像上での位置及び範囲に基づき、三角測量の原理により個々の監視対象物の中心位置及び幅寸法を検出する。また、認識した画像部から所定の特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づいて監視対象物の種別(歩行者か車両か等)を判別する。そして画像処理装置24は、上記処理を一定周期で繰り返すことで、レーダ装置22と同様に監視対象物を追従監視すると共に、個々の監視対象物の中心位置、幅寸法及び種別の検出結果をPC制御ECU14Aへ出力する。
PC制御ECU14Aは、レーダ装置22から入力される個々の監視対象物との相対位置関係や相対速度等、画像処理装置24から入力される個々の監視対象物の中心位置及び幅寸法等の情報に基づき、車両50の周囲に存在する監視対象物の物体と車両50との相対位置関係等を把握しつつ、監視対象物までの到達距離や到達時間を演算して衝突に至る可能性を予測判断するPC制御処理を行う。そして、車両50と衝突する確率が所定値以上の監視対象物を検知し、当該監視対象物の種別が歩行者等の車両用PUH装置10Aの衝突保護対象であった場合には、衝突保護対象と衝突する可能性が有ることを表す情報をPUH制御ECU18へ出力する。
なお、PC制御ECU14A、レーダ装置22、画像処理装置24及びカメラ26はPC予測部を構成しており、本発明における予測部の一例である。上記構成は予測部の一例であり、例えばレーダ装置22を省略し、カメラ26によって撮像された画像から上記のPC制御処理を行うように構成することも可能である。特にこの場合はカメラ26がステレオカメラであることが望ましい。
死角検知ECU16は、車両50の周囲における物体の探知結果をレーダ装置22から取得し、監視対象物の中心位置、幅寸法及び種別の検出結果を画像処理装置24から取得する。また、レーダ装置22及び画像処理装置24から取得した情報に基づき、車両50の周囲に存在する障害物を検出する。そして、車両50の周囲に存在する障害物を検出した場合、レーダ装置22からの探知波が障害物によって遮られる領域、すなわちレーダ装置22から見て障害物の背後に存在する領域を、PC予測部による衝突保護対象の検知における死角領域(以下、単に「PC予測部の死角領域」という)と推定する。そして、車両の周囲にPC予測部の死角領域が存在する場合、死角検知信号をPUH制御ECU18へ出力する。
なお、死角検知ECU16は、カメラ26によって撮像された画像を取得し、レーダ装置22から取得した周囲の物体の探知結果に基づいて検出した障害物を画像上で照合し、画像上での障害物のサイズと、周囲の物体の探知結果に含まれる物体と車両50の相対位置関係と、に基づいて、個々の障害物の路面からの高さを推定し、路面からの高さが所定高さ以上の障害物が存在していた場合にのみ、死角検知信号をPUH制御ECU18へ出力するようにしてもよい。
なお、死角検知ECU16は本発明における死角検知部の一例である。上記構成は死角検知部の一例であり、例えばGPSを利用して車両50の現在位置を取得し、道路の周辺に存在する建物や塀の位置や高さを情報として含む詳細な地図情報と照合することで、PC予測部の死角領域を検知する構成としてもよい。また、路車間通信を行って車両50が走行している道路の周辺に存在する建物や塀の位置や高さを情報として取得し、PC予測部の死角領域を検知する構成とすることも可能である。
PUH制御ECU18は、CPU28、メモリ30、PUH制御プログラム34を記憶する不揮発性の記憶部32を備えている。PUH制御ECU18には、車両50のフード52(図2参照)の車両前側を持ち上げ可能な第1フロントアクチュエータ(ACT)36、フード52の車両前側を第1フロントACT36よりも速い持ち上げ速度で持ち上げ可能な第2フロントACT38、及び、フード52の車両後側を持ち上げ可能なリアACT40が各々接続されている。PUH制御ECU18は、PUH制御プログラム34が記憶部32から読み出されてメモリ30に展開され、メモリ30に展開されたPUH制御プログラム34がCPU28によって実行されることで、第1フロントACT36、第2フロントACT38及びリアACT40によるフード52の持ち上げを制御するPUH制御処理を行う。また、第1フロントACT36及び第2フロントACT38にはフードロック装置42が連結されている。
なお、PUH制御ECU18は本発明における制御部の一例である。PUH制御ECU18は、例えば半導体集積回路、より詳しくはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で実現することも可能である。また、第1フロントACT36、第2フロントACT38及びリアACT40は本発明におけるアクチュエータの一例であり、より詳しくは、第1フロントACT36は本発明における第1アクチュエータの一例、第2フロントACT38は本発明における第2アクチュエータの一例である。
次に、各アクチュエータについて順に説明する。なお、以下で説明する図2〜図8(及び後述する図14,15)において適宜示す矢印FRは車両前方を、矢印UPは車両上方を、矢印RHは車両右方を各々表している。
図2に示すように、第1フロントACT36及び第2フロントACT38は、車両50の前部に設けられたエンジンルーム(パワーユニット室)ERを閉じるフード52の前端部付近に、車両50の幅方向に間隔を空けて各々一対配置されている。リアACT40は、フード52の後端部付近で、かつ車両50の幅方向に沿ったフード52の両端部付近に一対配置されている。
また、車両の前端部に配置されたバンパの裏面側には衝突検知センサ44が配設されている。衝突検知センサ44は、車両幅方向を長手方向とした略長尺状の圧力チューブ44Aと、圧力チューブ44Aの両端に各々設けられ圧力チューブ44A内の圧力変化に応じた信号を出力する圧力センサ44Bと、を含んでいる。なお、衝突検知センサ44は圧力チャンバや光ファイバによって構成することも可能である。
図4に示すように、フード52は、フードアウタパネル52Aとフードインナパネル52Bとを含んでいる。フードアウタパネル52Aは、フード52の車両外側(エンジンルームERとは反対側)部分を構成し、車両50の意匠面を構成している。フードインナパネル52Bはフード52のエンジンルームER側部分を構成している。そして、フードインナパネル52Bの末端部がフードアウタパネル52Aの末端部と結合されており、フードインナパネル52Bによってフードアウタパネル52Aが補強されている。
フード52の前端部における車幅方向中間部には、フードストライカ54が設けられており、フードストライカ54はフード52から車両下側へ突出されている。フードストライカ54は下端部が係止部54Aとされており、係止部54Aは車両前後方向に延びている。また、フード52がエンジンルームERを閉じた状態では、フードストライカ54が、後述するフードロック装置42に係止されている。これにより、フード52の前端部が車体に固定されている。
(第1フロントACTの構成)
図3に示すように、第1フロントACT36は、リンク部材60及びスライドレール62によって主に構成されている。なお、本実施形態では、第1フロントACT36が車幅方向に一対設けられている例を説明するが、一対に限るものではなく、第1フロントACT36は1つであっても3個以上であってもよい。
フードインナパネル52Bの前方の少なくとも2カ所は、フランジ形状に折り曲げられて、貫通穴が設けられている。該貫通穴には、リンク部材60の一端部60Aが回動自在に軸支されている。リンク部材60の他端部60Bは、ベースプレート64に設けられたスライドレール62に、車幅方向に移動可能に軸支されている。スライドレール62は、断面が略箱端の形状で、車幅方向に沿ってスライド溝62Aが設けられており、該スライド溝62Aにリンク部材60の端部60Bが回動自在かつ車幅方向にスライド可能に軸支されている。
詳細には、リンク部材60の端部60Bは、ギヤ66が設けられており、ギヤ66が回動自在かつその回転軸がリンク部材60の端部60Bに軸支されている。また、ギヤ66の回転軸がスライド溝62Aに沿って移動可能とされている。すなわち、ギヤ66とリンク部材60によってスライド溝62Aが挟まれた状態で、リンク部材60の端部60Bがスライドレール62のスライド溝62Aに沿って移動可能とされている。
また、スライドレール62内には、螺旋状に溝が刻設されたギヤドケーブル68が設けられており、該ギヤドケーブル68がリンク部材60の端部60Bに軸支されたギヤ66に噛合している。ギヤドケーブル68が図3矢印A方向に回転することによって、ギヤ66が回転して、リンク部材60の端部60Bが、スライドレール62のスライド溝62A及びギヤドケーブル68に沿って図3矢印B方向に移動するようになっている。
なお、ギヤドケーブル68に設けられた螺旋状の溝は、一方のリンク機構側と他方のリンク機構側とで逆ねじとなるように構成されている。従って、ギヤドケーブル68を回転することによって、一対の第1フロントACT36のそれぞれのリンク部材60の端部60Bが、車両の内側方向又は外側方向の同方向に、共に移動するようになっている。
ギヤドケーブル68は、図4に示すように、ベースプレート64に配設されたモータ70によって図3矢印A方向に回転される。すなわち、モータ70の回転軸にはピニオンギヤ72が取付けられていると共に、ギヤドケーブル68には回転ギヤ74が設けられている。モータ70の回転によってピニオンギヤ72が回転され、回転ギヤ74を介してギヤドケーブル68が図4矢印A方向に回転される。これにより、ギヤドケーブル68に沿ってリンク部材60の端部60Bに軸支されたギヤ66が回転し、スライドレール62のスライド溝62Aに沿ってリンク部材60の端部60Bが移動する。これに伴い、フード52の車両前側を所定の持ち上げ速度で持上位置(図4に二点鎖線で示す位置)まで持ち上げるように構成されている。
上記のモータ70の駆動はPUH制御ECU18によって制御される。なお、フード52の持ち上げ速度は、ピニオンギヤ72と回転ギヤ74のギヤ比によって定められ、本実施形態では、小型で駆動力の小さいモータ70でもフード52の車両前側を確実に持ち上げ可能な、比較的低い(減速比の大きい)ギヤ比に設定されている。従って、第1フロントACT36は、次に詳述する第2フロントACT38よりも持ち上げ速度が低速とされている。また、本実施形態では、ピニオンギヤ72と回転ギヤ74を用いてギヤドケーブル68を回転しているが、ギヤ比によっては更にギヤを追加してもよい。
また、図3に示すように、スライドレール62の車両左側端部にはリンク機構76が設けられており、リンク機構76にはケーブル78の一端が係止されている。第1フロントACT36によるフード52の持ち上げ時にリンク部材60の端部60Bが車両右側へ移動すると、リンク機構76が作動し、ケーブル78は車両右側へ引っ張られる。
(第2フロントACTの構成)
図5に示すように、第2フロントACT38は、車両上下方向を軸方向とした略円柱状に形成されると共に、フードロック装置42に対して車両右側及び車両左側にそれぞれ設けられている。
第2フロントACT38は、略円筒形状に形成されたACT本体80と、シリンダ部82と、を含んで構成されている。シリンダ部82は、車両下側へ開放された略有底円筒状に形成されており、ACT本体80の上部がシリンダ部82内に挿入されている。また、第2フロントACT38の非作動状態では、シリンダ部82の上端部がフード52に対して車両下側へ僅かに離間して配置されている。
ACT本体80は、板状のブラケット84を介して、図示しないラジエータサポートに固定されている。また、ACT本体80の上部には、ACT本体80の径方向外側へ突出された拡径部80Aが一体に形成されており、拡径部80Aの外径がACT本体80の外径に比して大きく設定されている。この拡径部80Aの外周部には、溝部80BがACT本体80の周方向に沿って形成されている。溝部80BにはOリング86が取付けられており、Oリング86によって拡径部80Aとシリンダ部82との間がシールされている。
また、ACT本体80内には、その長手方向中間部にガス発生装置88が嵌入されている。ガス発生装置88はスクイブ(点火装置)を備え、ガス発生装置88内にはガス発生剤が充填されている。また、ガス発生装置88はPUH制御ECU18の制御によって作動する。そして、ガス発生装置88が作動すると、ガス発生装置88によって発生したガスがACT本体80内に供給されるようになっている。これにより、シリンダ部82が上昇してシリンダ部82の上端部がフード52に当接することで、フード52の車両前側を、第1フロントACT36よりも速い持ち上げ速度で持上位置(図4に二点鎖線で示す位置)まで持上げるように構成されている。
また、ACT本体80の径方向内側には、ガス発生装置88に接続されたワイヤハーネス90が配索されており、ワイヤハーネス90は、ACT本体80の下端から第2フロントACT38の外側に導出されている。なお、ACT本体80の径方向内側には樹脂材が充填されている。
更に、図4に示すように、フードロック装置42に対して車両左側に配置された第2フロントACT38には、リンク機構92がシリンダ部82に係合されており、リンク機構92にはケーブル94の一端が係止されている。第2フロントACT38の作動時にシリンダ部82が上昇すると、リンク機構92が作動し、ケーブル94は車両左側へ引っ張られる。
(フードロック装置の構成)
図4に示すように、フードロック装置42はフード52の前端部における車幅方向中間部に対して車両下側に設けられている。フードロック装置42は、ロックベース100と、フードロック本体102と、固定プレート104と、を含んでいる。
図6に示すように、ロックベース100は、車両前後方向を板厚方向とした略矩形板状に形成され、図示しないラジエータサポートのアッパメンバに締結固定されている。ロックベース100の上部における車幅方向中央部には、正面視で車両上側へ開放された逃げ凹部106が形成されており、逃げ凹部106内にフードストライカ54の係止部54Aが配置されている。また、ロックベース100の上部における車両右側部分には、フードロック本体102を回動可能に支持する支持ピン108が設けられており、支持ピン108は略円柱状に形成され、車両前後方向を軸方向としてロックベース100から車両前側へ突出されている。また、ロックベース100の上部における車両左側部分には、ガイド孔110が形成されており、ガイド孔110は、車両上下方向に延びると共に、支持ピン108の中心を軸中心とした円弧状に湾曲されている。
フードロック本体102は、ロックベース100の車両前側に配置されると共に、正面視で略矩形状に形成されている。フードロック本体102は、車両右側端部において、ロックベース100の支持ピン108に回動可能に支持されている。これにより、フードロック本体102が、支持ピン108を回動中心としてロックベース100に対して車両上下方向(図6の矢印E及び矢印F方向)に相対回動可能になっている。
また、フードロック本体102の車両左側端部には、ガイドピン112が設けられており、ガイドピン112は、円柱状に形成され、車両前後方向を軸方向にしてフードロック本体102から車両後側へ突出されている。そして、ガイドピン112はロックベース100のガイド孔110内にスライド可能に挿入されている。
更に、フードロック本体102の上部には、ロックベース100の逃げ凹部106に対して車両前側の位置において、係止凹部114が形成されている。係止凹部114は車両上側へ開放された溝状に形成され、係止凹部114の幅寸法が車両上側に向かうに従い大きくなるように設定されている。そして、フード52の閉止位置では、フードストライカ54の係止部54Aが係止凹部114の下端部内に配置されている。
また、フードロック本体102にはラッチ116が設けられている。ラッチ116は、係止凹部114の下端部内に配置されたフードストライカ54の係止部54Aを保持する。また、ラッチ116には図示しないケーブルが接続されており、当該ケーブルが操作されることで、ラッチ116による係止部54Aの保持状態が解除される。
固定プレート104は正面視で略扇形状に形成され、フードロック本体102の車両前側に配置されている。固定プレート104は、その基端部において、車両前後方向を軸方向にした支持ピン120によってロックベース100に回動可能に連結されている。
また、固定プレート104の外周部における湾曲された部分が当接面104Aとされており、当接面104Aは支持ピン120の中心を軸中心とする円弧状に形成されている。当接面104Aは、フードロック本体102に設けられた円柱状の固定ピン122に当接されており、この状態では、フードロック本体102の車両上側(図6の矢印E方向側)への回動が規制されている。
また、固定プレート104には、ケーブル78,94の一端が係止されており、ケーブル78の他端は第1フロントACT36のリンク機構76に係止され、ケーブル94の他端は第2フロントACT38のリンク機構92に係止されている。そして、第1フロントACT36のリンク機構76又は第2フロントACT38のリンク機構92によって引っ張られると、固定プレート104が正面視で反時計回りに回動されて、固定プレート104の当接面104Aと固定ピン122との当接状態が解除される。これにより、フードロック本体102が車両上側(図5の矢印E方向側)へ回動可能な状態になり、フード52の車両前側の持上げが可能となる。
なお、フードロック本体102には、図示しない逃げ部が形成されており、フードロック本体102が回動するときには、固定プレート104及び支持ピン120とフードロック本体102とが干渉しないようになっている。また、固定プレート104は、スプリング124によって正面視で時計回り方向へ付勢されている。
(リアACTの構成)
図2に示すように、リアACT40はフード52の後端部における車幅方向両端部にそれぞれ配設されている。左右のリアACT40はいずれも同一の構成であるので、以下では車両右側に配置されたリアACT40について説明し、車両左側に配置されたリアACT40の説明は省略する。
図7及び図8に示すように、リアACT40は、フード52を開閉可能に支持するフードヒンジ部130と、歩行者等との衝突時にフード52の車両後側を持ち上げるリヤACT部144と、を含んでいる。
(リアACTのフードヒンジ部の構成)
フードヒンジ部130は、車体に固定されたヒンジベース132と、ヒンジベース132に回動可能に連結された揺動アーム134と、フード52に固定されたヒンジアーム136と、を含んで構成されている。
ヒンジベース132は、車両正面視で略逆L字形板状に形成され、車幅方向内側から見た側面視で車両上斜め前方へ開放された略V字形状(図8参照)に形成されている。具体的には、ヒンジベース132は、車両上下方向を板厚方向にして配置された取付部132Aと、取付部132Aの車幅方向内側端部から車両上側へ延びる支持部132Bと、を含んでいる。そして、取付部132Aが、車体側構成部材であるカウルトップサイド138の上面部138Aに固定されている。なお、カウルトップサイド138は、フード52の後端側とウインドシールドガラスの下端部との間に車幅方向に沿って延在するカウルの両サイドに設けられている。
揺動アーム134は、ヒンジベース132の車幅方向内側に配置され、側面視で略逆三角形板状に形成されている。具体的には、揺動アーム134は、側面視で、下端部134Aと、下端部134Aの車両前側且つ車両上側に配置された前端部134Bと、下端部134Aの車両後側且つ車両上側に配置された後端部134Cと、を頂点とした略逆三角形板状に形成されている。
また、揺動アーム134の後端部134Cは、車幅方向を軸方向としたヒンジピン140によってヒンジベース132の支持部132Bの上端部にヒンジ結合されている。これにより、揺動アーム134は、ヒンジピン140を回動中心として車両上下方向(図7の矢印G方向及び矢印H方向)へ回動可能に構成されている。更に、揺動アーム134の下端部134Aには、後述するリヤACT部144の下端部を回動可能に支持する連結軸142が設けられている。連結軸142は略円柱状に形成され、車両幅方向を軸方向にして揺動アーム134から車両幅方向内側へ突出されている。
ヒンジアーム136は揺動アーム134の車幅方向内側に配置され、略車両前後方向に沿って延在されている。具体的には、ヒンジアーム136は、揺動アーム134に対して略平行に配置された側壁部136Aを備えている。側壁部136Aの前端部は、車幅方向を軸方向にしたヒンジピン160によって揺動アーム134の前端部134Bにヒンジ結合されている。これにより、ヒンジアーム136は、ヒンジピン160を回動中心として車両上下方向(図7の矢印C方向及び矢印D方向)に揺動アーム134に対して相対回動可能とされている。
また、ヒンジアーム136は頂壁部136Bを備えている。頂壁部136Bは、側壁部136Aの上端部から車幅方向内側へ折り曲げられて形成されると共に、フード52のうち車両下方へ膨出された部分の底壁に沿って略車両前後方向に延在されている。頂壁部136Bには図示しない取付孔が貫通形成されており、この取付孔に対応して、膨出部分の底壁にウエルドナット(図示省略)が固定されている。そして、図示しないヒンジボルトが車両下方側から当該取付孔内へ挿入されてウエルドナットに螺合されることで、頂壁部136Bがフード52に締結(固定)されている。
これにより、フード52の後端部が、フードヒンジ部130によって車体に連結されている。また、後述するリヤACT部144の非作動状態では、ヒンジアーム136の揺動アーム134に対する相対回動がリヤACT部144によって規制されている。このため、ヒンジアーム136及び揺動アーム134がヒンジピン140を回動中心にして回動することで、フード52がエンジンルームERを開閉するようになっている。
更に、ヒンジアーム136における側壁部136Aの後端部には、後述するリヤACT部144のピストンロッド148を連結するための連結軸158が一体に設けられている。連結軸158は略円柱状に形成され、側壁部136Aから車幅方向内側へ突出されている。
(リアACTのリヤACT部の構成)
図7に示すように、リヤACT部144は、揺動アーム134の車幅方向内側に配置されて、ヒンジアーム136の後端部と揺動アーム134の下端部134Aとを架け渡すように延在されている。つまり、リヤACT部144は側面視で車両上側へ向かうに従い車両後側へ傾斜されている。そして、リヤACT部144は、シリンダ146と、シリンダ146内に収容されたピストンロッド148と、を有している。
シリンダ146は、略円筒形状を成すパイプ材により構成されたシリンダ本体150を有しており、シリンダ本体150は、取付ブラケット152を介して揺動アーム134に連結されている。取付ブラケット152は、側面視でシリンダ本体150の軸方向を長手方向とする略長尺状に形成され、シリンダ本体150に固定されている。そして、取付ブラケット152の下端部が、揺動アーム134の連結軸142に回動可能に支持されている。これにより、リヤACT部144の下端部が揺動アーム134に対して相対回動可能に構成されている。
シリンダ本体150の上端部には、略円筒形状のヘッド部154が嵌入されている。また、シリンダ本体150の下端部には、ガス発生装置156が設けられている。ガス発生装置156は略円柱状に形成され、シリンダ本体150の下端部を塞ぐようにシリンダ本体150内に嵌入されている。ガス発生装置156はスクイブ(点火装置)を備えており、ガス発生装置156内にはガス発生剤が充填されている。また、ガス発生装置156はPUH制御ECU18の制御によって作動する。ガス発生装置156が作動すると、スクイブが発熱して、ガス発生剤が燃焼することで、ガス発生装置156によって発生したガスがシリンダ本体150内に供給される。
一方、図7に示すように、ピストンロッド148は、シリンダ本体150内に収容されたピストン部162を有している。ピストン部162は略円柱状に形成され、シリンダ本体150と同軸上に配置されている。なお、ピストン部162とシリンダ本体150との間は、図示しないOリング等によってシールされている。
また、ピストンロッド148はロッド部164を有している。ロッド部164は断面円形を成す棒状に形成され、ピストン部162からシリンダ本体150の軸方向に沿って車両上側へ延出されている。更に、ロッド部164はヘッド部154内を挿通しており、ロッド部164の上端部がシリンダ146に対して車両上側へ突出されている。ロッド部164の上端部にはロッド連結部166が一体に設けられており、ロッド連結部166は車幅方向を軸方向にした略円筒形状に形成されている。ロッド連結部166内にはヒンジアーム136の連結軸158が挿入されており、これによりロッド部164の上端部がヒンジアーム136に対して相対回動可能に連結されている。
そして、ガス発生装置156によって発生したガスがシリンダ本体150内に供給されると、シリンダ本体150内のガス圧によってピストン部162(ピストンロッド148)がシリンダ本体150の軸方向に沿って上昇する。これにより、ピストンロッド148によってヒンジアーム136の後端部が車両上側へ持上げられ、フード52の車両後側が持上位置(図8に示す位置)に持ち上げられる。なお、このときには、ヒンジアーム136がヒンジピン160を回動中心として揺動アーム134に対して車両上側(図7の矢印C方向側)へ相対回動される。また、ヒンジアーム136の回動に連動して、揺動アーム134がヒンジピン140を回動中心としてヒンジベース132に対して車両上側(図7の矢印G方向側)へ相対回動される。
また、リヤACT部144は図示しないロック機構を有しており、リヤACT部144が作動してピストンロッド148がフード52を持上位置に持上げたときには、ロック機構によってピストンロッド148の後退が規制される。
(第1実施形態の作用)
次に本第1実施形態の作用として、PUH制御ECU18によって行われるPUH制御処理について、図9を参照して説明する。なお、図9に示すPUH制御処理は、車両50のイグニッションスイッチがオンされると、PUH制御ECU18によって実行される。
PUH制御処理のステップ400において、PUH制御ECU18は、車両50が物体と衝突したか否かを判定するための有効質量Mについての衝突検知閾値に、予め定められた通常時の閾値(歩行者等の衝突保護対象を判別するための有効質量Mの閾値)である第1閾値th1を設定する。次のステップ402において、PUH制御ECU18は、PC制御ECU14Aを含むPC予測部により、車両用PUH装置10Aによる衝突保護対象が車両50の周囲に存在しているか否かを探索させる。また、車両50の周囲に衝突保護対象が存在していた場合には、当該衝突保護対象が車両50と衝突する確率をPC制御ECU14Aに演算させる。
次のステップ404において、PUH制御ECU18は、PC予測部による処理結果をPC制御ECU14Aから取得する。そして、取得した処理結果に基づいて、車両50の周囲に、車両50と衝突する確率が所定値以上の衝突保護対象が存在しているか否か判定する。ステップ404の判定が否定された場合はステップ406へ移行し、ステップ406において、PUH制御ECU18は、死角検知ECU16から死角検知信号が入力されているか否かに基づいて、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が存在するか否か判定する。ステップ406の判定が否定された場合はステップ400に戻る。これにより、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が存在しない場合は、ステップ404又はステップ406の判定が肯定される迄、ステップ400〜ステップ406が繰り返される。
車両50の走行に伴い、車両50が走行している道路やその周辺に何らかの障害物が存在している状況になると、死角検知ECU16からPUH制御ECU18に死角検知信号が入力されることで、ステップ406の判定が肯定されてステップ408へ移行する。ステップ408において、PUH制御ECU18は、車速センサ20から車両50の現在の車速を取得し、取得した車速が予め設定された所定範囲内か否か判定する。
一例として、車両50が、側方に防音壁が設けられた高速道路を走行している場合、防音壁が障害物として検知されることで、死角検知ECU16から死角検知信号が出力される可能性がある。しかし、上記の状況でPC予測部の死角領域から歩行者等の衝突保護対象が飛び出してくることは生じ得ない。PC予測部の死角領域から衝突保護対象が飛び出してくる可能性があるのは、車両50が市街地等を走行している場合である。このため、本実施形態では、ステップ408の判定で用いる車速の所定範囲として、車両50が市街地等を走行している場合の車速に対応する数値範囲が設定されている。
ステップ408の判定が否定された場合には、車両50の周囲にPC予測部の死角領域は存在しているものの、当該死角領域から衝突保護対象が飛び出してくることは生じ得ないと判断できるので、ステップ400に戻る。このため、車両50の周囲にPC予測部の死角領域は存在しているものの車速が所定範囲内でない場合は、ステップ404又はステップ408の判定が肯定される迄、ステップ400〜ステップ408が繰り返される。
また、車両50が市街地等を走行している場合は、PC予測部の死角領域が死角検知ECU16によって検知されることに基づいてステップ406の判定が肯定され、また車速が所定範囲内になることでステップ408の判定も肯定されてステップ412へ移行する。
ステップ412において、PUH制御ECU18は、衝突検知センサ44の出力及び車速センサ20の出力に基づき、車両50が物体と衝突したと仮定したときの物体の有効質量Mを算出する。そして、算出した有効質量Mがステップ400で設定した衝突検知閾値(第1閾値th1)を越えているか否かを判定することで、車両50と歩行者等の衝突保護対象との衝突が検知されたか否か判定する。
有効質量Mは以下のようにして算出できる。すなわち、衝突検知センサ44は車両50のバンパに加わった圧力を検出し、PUH制御ECU18は、衝突検知センサ44によって検出された圧力を時間積分して力積を算出する。そして、算出した力積[N/s]を車速センサ20によって検出された車速[km/h]で除算し、単位変換のための値(例えば3.6)との積を演算する。これにより有効質量Mが算出される。そして、算出した有効質量Mが第1閾値th1以下であれば衝突保護対象が衝突していないと判定し、算出した有効質量Mが第1閾値th1を越えていれば衝突保護対象が衝突したと判定する。
有効質量Mが衝突検知閾値(第1閾値th1)を越えていない場合は、車両50は衝突保護対象と衝突していないと判断できる。このため、ステップ412の判定が否定された場合はステップ400に戻り、ステップ400以降の処理を繰り返す。
ここで、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が存在していない場合に、車両50の周囲に存在する衝突保護対象がPC予測部によって検知され、PC制御ECU14Aによって演算された、前記衝突保護対象が車両50と衝突する確率が所定値以上になったときには、ステップ404の判定が肯定されることでステップ420へ移行する。
ステップ404の判定が肯定された場合は、車両50が物体と衝突したことが衝突検知センサ44によって検知されていない状態である。このため、車両50と衝突する確率が所定値以上と演算された衝突保護対象が仮に車両50と実際に衝突するとしても、前記衝突保護対象が車両50と実際に衝突するまでには時間的な猶予がある。従って、ステップ420において、PUH制御ECU18は、第1フロントACT36のリンク部材60の端部60Bを車両の内側方向へ移動させる方向にモータ70の回転軸を回転させる。これにより、車両50のフード52の車両前側を第1フロントACT36によって通常の持ち上げ速度で所定の持上位置(図4に二点鎖線で示す位置)まで持ち上げる(図10(A)に示す「衝突予測」も参照)。また、第1フロントACT36によってフード52の車両前側が持ち上げられる際には、第1フロントACT36のリンク機構76によってケーブル78が引っ張られることで、フードロック装置42によるフード52の前端部のロックが解除される。
次のステップ422において、PUH制御ECU18は、フード52の車両前側を所定の持上位置まで持ち上げてから所定時間が経過したか否か判定する。ステップ422の判定が否定された場合はステップ424へ移行し、ステップ424において、PUH制御ECU18は、衝突検知センサ44の出力及び車速センサ20の出力に基づき、車両50が物体と衝突したと仮定したときの物体の有効質量Mを算出する。そして、算出した有効質量Mがステップ400で設定した衝突検知閾値(第1閾値th1)を越えているか否かを判定することで、車両50と衝突保護対象との衝突が検知されたか否か判定する。
ステップ424の判定も否定された場合はステップ422に戻り、ステップ422又はステップ424の判定が肯定される迄、ステップ422,424を繰り返す。ステップ424の判定が肯定されずにステップ422の判定が肯定された場合は、車両50の運転者による運転操作等により、車両50と衝突する確率が所定値以上と演算された衝突保護対象と車両50との衝突は回避されたと判断できる。
このため、ステップ422の判定が肯定された場合はステップ426へ移行し、ステップ426において、PUH制御ECU18は、第1フロントACT36のリンク部材60の端部60Bを車両の外側方向へ移動させる方向にモータ70の回転軸を回転させる。これにより、フード52の車両前側を第1フロントACT36によって元の位置(図4に実線で示す位置)に復帰させる。また、第1フロントACT36によってフード52の車両前側が元の位置に復帰されると、フードロック装置42によってフード52の前端部が再びロックされる。ステップ426の処理を行うとステップ400に戻り、ステップ400以降の処理が繰り返される。
また、ステップ422の判定が肯定されずにステップ424の判定が肯定された場合は、車両50と衝突する確率が所定値以上と演算された衝突保護対象と車両50とが衝突したと判断できる。このため、ステップ424の判定が肯定された場合はステップ428へ移行し、ステップ428において、PUH制御ECU18は、リアACT40のリヤACT部144のガス発生装置156を作動させることで、フード52の車両後側をリアACT40によって所定の持上位置(図8に示す位置)まで持ち上げる(図10(A)に示す「衝突」も参照)。これにより、衝突保護対象が、車両50のバンパに一旦当たった後、フード52に衝突する際に加わる衝撃が緩和され、衝突保護対象を保護することができる。
なお、上述したフード52の持ち上げ制御において、車両50の周囲に、車両50と衝突する確率が所定値以上の衝突保護対象が存在していると判定されて、ステップ404の判定が肯定された後、ステップ420〜ステップ424の処理を行っている間に、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が新たに出現し、かつ当該死角領域から衝突保護対象が飛び出してくる可能性は完全には否定できない。しかし、上述したフード52の持ち上げ制御は、ステップ404の判定が肯定された時点でフード52の車両前側を持ち上げているので、仮に、車両50との衝突が検知された物体が、PC予測部によって車両50と衝突する確率が所定値以上と演算された衝突保護対象ではなくて、新たに出現したPC予測部の死角領域から飛び出してきた衝突保護対象であったとしても、フード52の車両前側の持ち上げが、衝突保護対象がフード52に衝突するタイミングに間に合わないことは生じ得ず、飛び出してきた衝突保護対象を確実に保護することができる。
上述したフード52の持ち上げ制御は、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が存在していない場合であるが、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が存在しており、かつ車速が所定範囲内である場合(ステップ406,408の判定が肯定されている場合)には、PC予測部の死角領域から衝突保護対象が飛び出してくる可能性がある。そして、PC予測部の死角領域から衝突保護対象が飛び出してきた場合は、PC予測部による飛び出してきた衝突保護対象の検知が遅延し、フード52の持ち上げ、特にフード52の車両前側の持ち上げが、衝突保護対象がフード52に衝突するタイミングに間に合わない可能性がある。
このため、本実施形態では、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が存在しており、かつ車速が所定範囲内である場合に、ステップ412で衝突判定を行っている。そして、ステップ412の衝突判定で有効質量Mが衝突検知閾値(第1閾値th1)を越えた場合には、車両50と衝突した物体が、PC予測部の死角領域から飛び出してきた衝突保護対象である可能性が高いことから、ステップ412の判定が肯定された場合はステップ414へ移行し、ステップ414において、PUH制御ECU18は、第2フロントACT38のガス発生装置88を作動させることで、第2フロントACT38により、第1フロントACT36によってフード52の車両前側を持ち上げる場合よりも速い持ち上げ速度で、フード52の車両前側を所定の持上位置(図4に二点鎖線で示す位置)まで持ち上げる。また、第2フロントACT38によってフード52の車両前側が持ち上げられる際には、第2フロントACT38のリンク機構92によってケーブル94が引っ張られることで、フードロック装置42によるフード52の前端部のロックが解除される。
上述したフード52の車両前側の持ち上げについて、図10(B)を参照して更に説明すると、第1フロントACT36によってフード52の車両前側を持ち上げた場合には、図10(B)に「衝突」と表記して示す、車両50に衝突保護対象が衝突したタイミングに対し、フード52の車両前側を持ち上げられるタイミングは、図10(B)に「フード前側位置(第1フロントACT)」と表記して破線で示すタイミングとなる。
これに対し、第2フロントACT38によってフード52の車両前側を持ち上げた場合には、図10(B)に「フード前側位置(第2フロントACT)」と表記して実線で示すように、第2フロントACT38によるフード52の車両前側の持ち上げ速度が、第1フロントACT36によるフード52の車両前側の持ち上げ速度よりも速い(フードの車両前側位置の変化の傾きが大きい)ことで、図10(B)に「フード前側持ち上げ完了の時間差Δt1」と表記して示すように、フード52の車両前側の持ち上げが早期に完了する。これにより、PC予測部の死角領域から衝突保護対象が飛び出してきた場合に、フード52の車両前側の持ち上げが完了するタイミングを、衝突保護対象がフード52に衝突するタイミングに間に合わせることができる。
また、次のステップ418において、PUH制御ECU18は、フード52の車両後側をリアACT40によって所定の持上位置(図8に示す位置)まで持ち上げる(図10(B)に「フード後側位置」と表記して示す実線も参照)。これにより、ステップ412で車両50との衝突が検知された物体が、PC予測部の死角領域から飛び出してきた衝突保護対象であった場合にも、当該衝突保護対象が、車両50のバンパに一旦当たった後、フード52に衝突する際に加わる衝撃を緩和することができ、衝突保護対象を保護することができる。
上述したように、本第1実施形態では、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が死角検知ECU16によって検知されており、かつ車両50が物体と衝突したと仮定して算出した有効質量Mが第1閾値th1を越えている場合に、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が死角検知ECU16によって検知されていない場合よりも、フード52の車両前側の持ち上げが早期に完了するように、第2フロントACT36を制御する。このためPC予測部の死角から衝突保護対象が飛び出してきた場合に、フード52の車両前側の持ち上げが完了するタイミングが遅延することを防止できる。
また、第1実施形態では、モータ70の駆動力によってフード52の車両前側を持ち上げる第1フロントACT36と、ガス発生装置88によって発生したガスにより第1フロントACT36よりも速い持ち上げ速度でフード52の車両前側を持ち上げる第2フロントACT38と、を設け、死角検知ECU16によってPC予測部の死角領域が検知されていない場合には、第1フロントACT36によってフード52の車両前側を持ち上げるように制御し、死角検知ECU16によってPC予測部の死角領域が検知されている場合には、第2フロントACT38によってフード52の車両前側を持ち上げるように制御するので、フード52の車両前側の持ち上げを早期に完了させることを簡単な制御で実現することができる。
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2実施形態を説明する。なお、本第2実施形態は第1実施形態と同一の構成であるので、各部分に同一の符号を付して説明を省略し、以下、本第2実施形態の作用として、本第2実施形態に係るPUH制御処理について、図11を参照し、第1実施形態で説明したPUH制御処理と異なる部分のみ説明する。
本第2実施形態に係るPUH制御処理では、PC予測部の死角領域が死角検知ECU16によって検知されてステップ406の判定が肯定され、また車速が所定範囲内になることでステップ408の判定も肯定された場合にステップ410へ移行する。ステップ410において、PUH制御ECU18は、車両50が物体と衝突したか否かを判定するための有効質量Mについての衝突検知閾値に、予め定められた死角存在時の閾値である第2閾値th2を設定する。一例として図12(B)に示すように、第2閾値th2は第1閾値th1よりも低い値とされている。
ステップ410で衝突検知閾値に第2閾値th2を設定することで、次のステップ412では、車両50が物体と衝突したと仮定したときの物体の有効質量Mが第2閾値th2を越えているか否を判定することで、車両50と物体との衝突が検知されたか否かが判定される。そして、ステップ412の衝突判定で有効質量Mが衝突検知閾値(第2閾値th2)を越えた場合には、車両50と衝突した物体が、PC予測部の死角領域から飛び出してきた衝突保護対象である可能性がある。このため、ステップ412の判定が肯定された場合はステップ414へ移行し、ステップ414において、PUH制御ECU18は、第1実施形態と同様に、第2フロントACT38のガス発生装置88を作動させる。これにより、第2フロントACT38により、第1フロントACT36によってフード52の車両前側を持ち上げる場合よりも早期かつ速い持ち上げ速度で、フード52の車両前側を所定の持上位置(図4に二点鎖線で示す位置)まで持ち上げる。
第2実施形態におけるフード52の車両前側の持ち上げについて、図12(A)を参照して更に説明すると、衝突検知閾値に通常時の閾値である第1閾値th1を用い、かつ第1フロントACT36によってフード52の車両前側を持ち上げた場合には、図12(A)に「衝突」と表記して示す、車両50に物体が衝突したタイミングに対し、フード52の車両前側を持ち上げられるタイミングは、図12(A)に「フード前側位置(第1フロントACT)」と表記して破線で示すタイミングとなる。
これに対し、衝突検知閾値に死角存在時の閾値である第2閾値th2を用い、かつ第2フロントACT38によってフード52の車両前側を持ち上げた場合には、図12(A)に「フード前側位置(第2フロントACT)」と表記して実線で示すように、まず第2閾値th2を用いることで第2フロントACT38によるフード52の車両前側の持ち上げが早期に開始される。また第2フロントACT38によるフード52の車両前側の持ち上げ速度が、第1フロントACT36によるフード52の車両前側の持ち上げ速度よりも速い(フードの車両前側位置の変化の傾きが大きい)ことで、図12(A)に「フード前側持ち上げ完了の時間差Δt2」と表記して示すように、フード52の車両前側の持ち上げが早期に完了する。これにより、PC予測部の死角領域から衝突保護対象が飛び出してきた場合に、フード52の車両前側の持ち上げが完了するタイミングを、衝突保護対象がフード52に衝突するタイミングに間に合わせることができる。
上述したように、本第2実施形態では、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が死角検知ECU16によって検知されており、かつ車両50が物体と衝突したと仮定して算出した有効質量Mが死角存在時の閾値である第2閾値th2を越えている場合に、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が死角検知ECU16によって検知されていない場合よりも、フード52の車両前側の持ち上げが早期に完了するように、第2フロントACT38を制御する。このためPC予測部の死角から衝突保護対象が飛び出してきた場合に、フード52の車両前側の持ち上げが完了するタイミングが遅延することを防止できる。
また、第2実施形態では、車両50が物体と衝突したか否かを判定するための有効質量Mについての衝突検知閾値を、通常時の閾値である第1閾値th1から死角存在時の閾値である第2閾値th2(第2閾値th2<第1閾値th1)へ変更することで、フード52の車両前側の持ち上げを第1実施形態よりも早期に完了させている。これにより、フード52の車両前側の持ち上げを早期に完了させるために、車両用PUH装置10Aの構成や、PUH制御ECU18の処理が複雑化することを回避することができる。
また、第2実施形態では、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が死角検知ECU16によって検知され、かつ車両50の車速が所定範囲内の場合に、衝突検知閾値を第1閾値th1から第2閾値th2へ変更しているので、衝突検知センサ44等へのノイズ等の入力により衝突の誤検知が生じる確率も低減される。
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
図13には第3実施形態に係る車両用PUH装置10Bが示されている。車両用PUH装置10Bは、第1実施形態で説明した車両用PUH装置10Aと比較して、PC制御ECU14Aに代えてPC制御ECU14Bが設けられ、衝突検知センサ44の構成が若干相違しており、第2フロントACT38に代えて第2フロントACT46が設けられている点が相違している。
第1実施形態で説明したPC制御ECU14Aは、車両50と衝突する確率が所定値以上の監視対象物を検知し、当該監視対象物の種別が歩行者等の車両用PUH装置10Aの衝突保護対象であった場合に、衝突保護対象と衝突する可能性が有ることを表す情報をPUH制御ECU18へ出力していた。
一方、本第3実施形態に係るPC制御ECU14Bは、車両50と衝突する確率が所定値以上の監視対象物を検知すると、当該監視対象物の種別が歩行者等の車両用PUH装置10Aの衝突保護対象かそれ以外の物体(非衝突保護対象)かを判別すると共に、車両50のうち衝突確率が所定値以上の監視対象物が衝突すると予測される車両幅方向に沿った位置(衝突予測位置)を判定する。そしてPC制御ECU14Bは、車両50が物体と衝突する可能性が有ることを表す情報をPUH制御ECU18へ出力するが、この出力情報には、衝突確率が所定値以上の物体の種別(衝突保護対象/非衝突保護対象)と衝突予測位置の情報が含まれている。
また、本第3実施形態に係る衝突検知センサ44は、車両幅方向に沿って配設された圧力チューブ44Aと、圧力チューブ44Aの両端に各々設けられた圧力センサ44Bと、を含む点は、第1実施形態と同じであるが、一対の圧力センサ44Bによって圧力変化が検知されたタイミングを比較することで、車両幅方向に沿った衝突位置を検知し、検知した衝突位置をPUH制御ECU18へ出力する。
また、本第3実施形態に係る第2フロントACT46は、フード52の車両前側を第1フロントACT36よりも速い持ち上げ速度で持ち上げ可能である点は、第1実施形態で説明した第2フロントACT38と同じであるが、構成が相違している。以下、第2フロントACT46の構成を説明する。
(第2フロントACTの構成)
本第3実施形態に係る第2フロントACT46は、第1実施形態で説明した第2フロントACT38と同じ位置に一対設けられている。図14及び図15に示すように、第2フロントACT46は、各々車両上下方向を長手方向として配置されたアウタパイプ(外筒)200及びインナパイプ(内筒)202を備えている。アウタパイプ200及びインナパイプ202は、いずれも矩形管で構成されている。インナパイプ202はアウタパイプ200よりも一回り小さく形成されており、通常はアウタパイプ200内に格納(収縮)されている。なお、アウタパイプ200及びインナパイプ202は矩形管に限らず、円管や矩形管以外の多角形管等を用いてもよい。
(アウタパイプの構成)
アウタパイプ200の下端部はブロック状に形成されたケース204の上端収容部206に嵌合されており、複数箇所にて低頭ボルト208によって固定されている。ケース204の下端部は、平板状のベースプレート210に複数の低頭ボルト(図示省略)によって固定されている。なお、ベースプレート210は、図示しない固定手段によって車体構造体に固定されている。
また、アウタパイプ200の上端部には略四角筒形状に形成されたホルダ212の下端部が嵌合されており、この状態で複数の低頭ボルト214によってホルダ212の下端部がアウタパイプ200の上端部に固定されている。ホルダ212は、四角筒形状に形成された本体部212Aと、本体部212Aの上端から一体に形成されかつテーパ状に絞られた絞り部212Bと、を含んでいる。絞り部212Bの内周面にはすべり板216が装着されており、更にその隣接位置(本体部212Aと絞り部212Bとの境界付近)には、断面内方へ向けて所定高さ突出する突起部218が一体に形成されている。
(インナパイプの構成)
一方、インナパイプ202はアウタパイプ200の内側に同軸的に配置されており、車両上下方向に沿ってスライド可能に収容されている。インナパイプ202の軸長はアウタパイプ200よりも軸長よりも若干長く、その上端部はアウタパイプ200の上端部から車両上方側へ所定量突出されている。この突出端部には略箱状に形成されたキャップ220が被嵌されており、この状態で複数の低頭ボルト300によってキャップ220がインナパイプ202の上端部に固定されている。
キャップ220の下方側には、キャップ220よりも若干大きめに形成されたシール部材222が隣接して配置されている。シール部材222の内側面はテーパ状に形成されており、第2フロントACT46の非作動状態(組付状態)では、シール部材222の内側に、前述したホルダ212の絞り部212Bが密着状態で挿入される構成である(図14参照)。
(コントロールパイプの構成)
上述したインナパイプ202の内部には、円筒形状に形成されると共にインナパイプ202と一体に軸方向移動するコントロールパイプ224が同軸上に挿入されている。コントロールパイプ224の上端部には、略円柱形状のスライダ226が螺合されている。スライダ226は、外周面に雄ねじが形成されると共に軸芯部にスプール挿通孔228が形成された円柱形状の基部226Aと、基部226Aの外周部から軸方向へ延出された薄肉環状の中間部226Bと、中間部226Bの上端部から半径方向外側へ張り出されかつ正面視で矩形枠状に形成された張出し部226Cと、を含んでいる。
基部226Aはコントロールパイプ224の上端部に螺合されており、中間部226B及び張出し部226Cがコントロールパイプ224の上端部から車両上方側へ突出されている。また、張出し部226Cを収容するインナパイプ202の上端部は所定長さ(例えば、張出し部226Cの厚さの約二倍程度の長さ)に亘って薄肉化されており(以下、この部分を「上端収容部202A」と称す)、これによりインナパイプ202の上端部の内周面には上端収容部202Aとそれ以外の一般部202Bとの境界部分に段差部230が形成されている。第2フロントACT46の非作動時には、張出し部226Cは段差部230に当接係止された状態で保持される(図14参照)。
上記スライダ226の基部226Aのスプール挿通孔228には、図14に示すように、ワイヤ232の先端部が係止されたスプール234が張出し部226C側から挿嵌されている。スプール234は全体としては略棒状に形成されており、小径の円柱形状に形成されて基部226Aのスプール挿通孔228内へ挿嵌される挿入部234Aと、挿入部234Aよりも若干大径に形成されたスプリング保持部234Bと、スプリング保持部234Bよりも若干大径に形成された鍔状のスプリング係止部234Cと、によって構成されている。
スプリング係止部234Cの中央には、ワイヤ232の先端ループ部232Aを係止させるためのワイヤ係止溝236が形成されている。また、スプリング保持部234Bには圧縮コイルスプリング238が巻装されている。圧縮コイルスプリング238の上端部はスプリング係止部234Cに当接係止されており、下端部はスライダ226の基部226Aの底面に当接係止されている。従って、圧縮コイルスプリング238は、スプール234を介してワイヤ232を常時車両上方側へ引張り付勢しており、ワイヤ232にテンションをかける役割を果たしている。
一方、図15に示すように、上述したコントロールパイプ224の下端部には、略矩形筒状に形成されたストッパ240が装着されている。ストッパ240の上部240Aの内周面には雌ねじが形成されており、この雌ねじを使ってストッパ240はコントロールパイプ224の下端部に螺合されている。また、ストッパ240の上部240Aの板厚はインナパイプ202の内周面とコントロールパイプ224の外周面との間隙寸法に略一致しており、当該隙間へストッパ240の上部240Aが挿嵌されている。
ストッパ240の下部240Bの内周面には、軸線側へ向けてフック状に形成された被係合部242が一体に形成されている。この被係合部242は、ストッパ240の下端部の全周に亘って環状に形成されている。これに対応して、前述したケース204の軸芯内部には、左右一対のトリガレバー244が支軸246回りに揺動可能に配設されている。左右一対のトリガレバー244は車両幅方向に所定距離だけ離間して配置されており、その上端部には径方向外側へ向けてフック状に形成された係合部244Aが形成されている。また、トリガレバー244の下端部にはスプリング係止部244Bが一体に形成されている。そして、左右一対のトリガレバー244のスプリング係止部244B同士に一本の引張コイルスプリング248が掛け渡されている。これにより、引張コイルスプリング248は、左右一対のトリガレバー244を支軸246回りに係合方向(係合部244Aが被係合部242に係合する方向)へ回転付勢し、トリガレバー244の係合部244Aを被係合部242に係合させている。
また、インナパイプ202の下端部には、ハウジング250及びガイドプレート252が装着されている。ハウジング250はアウタパイプ200内を摺動可能な矩形枠状とされ、複数の低頭ボルト254によってインナパイプ202の下端部に固定されている。ガイドプレート252はハウジング250と同一の矩形枠状とされ、ガイドプレート252との間に後述するロック爪256をスライド可能に保持している。なお、ハウジング250、ガイドプレート252及びロック爪256はインナパイプ202への組付前に予めねじ258(締結線で図示)でサブアッセンブリ化されている。ハウジング250がインナパイプ202の下端部に組付けられた状態では、ハウジング250の上端部が前述したホルダ212の内周面に形成された突起部218に対向した状態で(即ち、干渉可能に)配置されている。従って、第2フロントACT46の作動時には、ガイドプレート252がアウタパイプ200の内部を車両上方側へ向けて所定ストロークだけ軸方向移動(伸長)すると、ハウジング250の上端部が前述したホルダ212の突起部218に当接し、これによりインナパイプ202の移動ストロークを所定のストロークに制限している。
ロック爪256はインナパイプ202の各面に対応してそれぞれ設けられており、インナパイプ202の面直角方向へスライド可能に保持されている。ロック爪256は、ハウジング250の下部の板厚よりも若干長く形成されている。これらのロック爪256に対応して前述したストッパ240の下部240Bの外周面には、環状の凹溝260が全周に亘って形成されている。凹溝260の断面形状は略二等辺三角形状とされており、第2フロントACT46の非作動時には、図示しない圧縮コイルスプリング等の付勢手段の付勢力によって、ロック爪256の内端部が凹溝260の中央底部に底付きするまで進入されている。
一方、前述したホルダ212の本体部212Aの内周面の所定位置(軸方向中間部付近)には、断面形状が矩形状とされたロック溝262が全周に亘って形成されている。ロック溝262の溝幅はロック爪256の爪幅よりも若干大きめに設定されている。第2フロントACT46が作動すると、ロック爪256の内端部は凹溝260内へ進入された状態のままインナパイプ202と一体に車両上方側へ軸方向移動し、ハウジング250の上端部がホルダ212の突起部218に当接し、更にコントロールパイプ224が圧縮コイルスプリング264の付勢力に抗して車両上方側へ移動し、スライダ226の張出し部226Cが前述したキャップ220の底部との間の隙間266(図14参照)が無くなるまでストロークすると、ロック爪256の内端部がストッパ240の凹溝260の傾斜面を昇り上がり、ストッパ240の下端部のカム面268によってロック爪256の外端部がロック溝262内へ挿入される。これにより、インナパイプ202は車両下方側へ軸方向移動することができない状態、即ちロック状態となる。
(ガイドパイプの構成)
ガイドパイプ270は中空のロッド状に形成されており、アウタパイプ200の軸芯部に同軸的に配置されている。ガイドパイプ270はコントロールパイプ224よりも小径に形成されており、第2フロントACT46の非作動時にはガイドパイプ270はコントロールパイプ224の軸芯部に挿入状態で配置されている。ガイドパイプ270は、アウタパイプ200と略同一の軸長を有している。ガイドパイプ270の基端部にはベース部材272が螺合されており、ガイドパイプ270の先端部にはインサーション274が螺合されている。インサーション274は前述したスプール234の挿入部234Aと軸方向に対向して配置されており、その軸芯部にはワイヤ挿通孔276が形成されている。また、ベース部材272は、ガイドパイプ270の基端部に螺合される固定部272Aと、固定部272Aと一体に形成されかつ固定部272Aよりも大径とされたスプリング係止部272Bと、によって構成されている。固定部272Aの軸芯部にはワイヤ挿通孔278が形成されており、スプール234に係止されたワイヤ232は、インサーション274のワイヤ挿通孔276及びベース部材272のワイヤ挿通孔278内を挿通されて前述したケース204内へ案内されている。
また、ベース部材272のスプリング係止部272Bには圧縮コイルスプリング280の下端部が当接係止されている。圧縮コイルスプリング280はガイドパイプ270の外周部に巻装されており、上端部は前述したスライダ226の基部226Aの下端面に当接係止されている。従って、圧縮コイルスプリング280は、スライダ226を介してコントロールパイプ224及びインナパイプ202を車両上方側へ常時押圧付勢している。
更に、前述したスライダ226の底面とキャップ220の底面との間には、圧縮コイルスプリング280と同一径寸法の圧縮コイルスプリング264が同軸に配置されている。圧縮コイルスプリング264は前述したスプール234を車両上方側へ押圧付勢する圧縮コイルスプリング238の外側に同心円的に介装されており、スライダ226を車両下方側(即ち、スライダ226の張出し部226Cがコントロールパイプ224の段差部230に当接係止される方向)へ常時押圧付勢している。従って、圧縮コイルスプリング280と圧縮コイルスプリング264とは付勢力の作用方向が反対となるが、圧縮コイルスプリング280の付勢力の方が圧縮コイルスプリング264の付勢力よりも強く設定されている。第2フロントACT46の非作動時には、トリガレバー244がストッパ240の被係合部242に係合されているため、スライダ226の張出し部226Cはインナパイプ202の段差部230に当接した状態で保持され、この状態ではキャップ220の底部とスライダ226の張出し部226Cの上端面との間に所定の隙間266(図14参照)が形成されている。
(駆動系及びそれに関連する巻取機構、トリガ機構の一部の構成)
上述したアウタパイプ200の隣(車両幅方向内側)には、駆動機構282が配設されている。駆動機構282はベースプレート210に支持されており、モータ284及び一対のクラッチ286、288を含んで構成されている。一方のクラッチ286はトリガ機構の一部を成すカム290(図14参照)の回転軸であるカム軸292に接続されており、他方のクラッチ288は巻取機構の一部を成すプーリ294(図14参照)の回転軸であるプーリ軸296に接続されている。なお、一方のクラッチ286が接続状態のときには他方のクラッチ288は非接続状態とされ、逆に他方のクラッチ288が接続状態のときには一方のクラッチ286は非接続状態となるようにPUH制御ECU18によって切換制御される。
カム290は、前述した左右一対のトリガレバー244の各々に対応して、側面視で三角形状に形成された押圧部290Aを対向した状態で備えており(つまり、図14において押圧部290Aは紙面の手前と奥に離間して二枚存在する)、カム軸292が軸線回りに回転することにより、左右一対のトリガレバー244の対向側面244Cを引張コイルスプリング248の付勢力に抗して係合解除方向へ押圧するようになっている。なお、カム290の下方側にはマイクロスイッチ298(図14参照)が近接して配置されており、ワイヤ232の巻取量を検出している。プーリ294は、上記左右一対のトリガレバー244の中間位置の上方に配置されており(図14参照)、前述したワイヤ232を巻き取るようになっている。
上記により、駆動機構282は、カム290をカム軸292で回転させて左右一対のトリガレバー244を引張コイルスプリング248の付勢力に抗して支軸246回りに係合解除方向へ揺動させるトリガ系駆動経路と、プーリ294をプーリ軸296で回転させてワイヤ232をプーリ294に巻き取らせる巻取系駆動経路の二経路を備えている。
また、図示は省略するが、第2フロントACT46にはリンク機構が設けられており、当該リンク機構にはケーブルの一端が係止され、当該ケーブルの他端はフードロック装置42の固定プレート104に係止されている。第2フロントACT46のリンク機構は、インナパイプ202が車両上方側へ突出されるとケーブル78を引っ張る。これにより、フードロック装置42によるフード52の前端部のロックが解除される。
(第3実施形態の作用)
次に本第3実施形態の作用として、本第3実施形態に係るPUH制御処理について、図16を参照し、第2実施形態で説明したPUH制御処理(図11)と相違する部分を主に説明する。
PUH制御処理のステップ400において、PUH制御ECU18は、車両50が物体と衝突したか否かを判定するための有効質量Mについての衝突検知閾値に、通常時の閾値である第1閾値th1を設定する。次のステップ401において、PUH制御ECU18は、PC制御ECU14Aを含むPC予測部により、車両50の周囲に存在している物体(衝突保護対象及び非衝突保護対象)を探索させる。また、車両50の周囲に存在している個々の物体毎に、衝突保護対象か否かの判定、車両50と衝突する確率の演算、及び、車両50と衝突する確率が所定値以上の物体が車両50に衝突すると予測される位置(衝突予測位置:例えば車両50の幅方向に沿った位置)の演算をPC制御ECU14Aに行わせる。
次のステップ404において、PUH制御ECU18は、PC予測部による処理結果をPC制御ECU14Aから取得し、取得した処理結果に基づいて、車両50の周囲に、車両50と衝突する確率が所定値以上の衝突保護対象が存在しているか否か判定する。ステップ404の判定が否定された場合はステップ406へ移行する。ステップ406において、PUH制御ECU18は、死角検知ECU16から死角検知信号が入力されているか否かに基づいて、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が存在するか否か判定する。ステップ406の判定が否定された場合はステップ400に戻る。このため、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が存在しない場合は、第1実施形態と同様に、ステップ404又はステップ406の判定が肯定される迄、ステップ400〜ステップ406が繰り返される。
また、ステップ406の判定が肯定された場合はステップ408へ移行し、ステップ408において、PUH制御ECU18は、車速センサ20から車両50の現在の車速を取得し、取得した車速が予め設定された所定範囲内か否か判定する。ステップ408の判定が否定された場合にはステップ400に戻る。このため、車両50の周囲にPC予測部の死角領域は存在しているものの車速が所定範囲内でない場合は、第1実施形態と同様に、ステップ404又はステップ408の判定が肯定される迄、ステップ400〜ステップ408が繰り返される。
また、車両50の周囲にPC予測部の死角領域が存在しており、かつ車速が所定範囲内の場合は、ステップ406,408の判定が肯定されてステップ410へ移行する。ステップ410において、PUH制御ECU18は、車両50が物体と衝突したか否かを判定するための有効質量Mについての衝突検知閾値に、死角存在時の閾値である第2閾値th2を設定する。
次のステップ412において、PUH制御ECU18は、衝突検知センサ44の出力及び車速センサ20の出力に基づき、車両50が物体と衝突したと仮定したときの物体の有効質量Mを算出する。そして、算出した有効質量Mがステップ410で設定した衝突検知閾値(第2閾値th2)を越えているか否かを判定することで、車両50と物体との衝突が検知されたか否か判定する。有効質量Mが衝突検知閾値(第2閾値th2)を越えていない場合は、ステップ412の判定が否定されてステップ400に戻り、ステップ400以降の処理を繰り返す。また、ステップ400で衝突検知閾値が通常時の値(第1閾値th1)に戻される。
また、PC予測部の死角領域が検知されていない場合に、車両50の周囲に存在する衝突保護対象がPC予測部によって検知され、PC制御ECU14Aによって演算された、前記衝突保護対象が車両50と衝突する確率が所定値以上になったときには、ステップ404の判定が肯定されることでステップ420へ移行する。なお、ステップ420〜ステップ428の処理は、第1実施形態及び第2実施形態と同一であるので説明を省略する。
一方、ステップ412の衝突判定で有効質量Mが衝突検知閾値(第2閾値th2)を越えた場合には、車両50と衝突した物体が、PC予測部の死角領域から飛び出してきた衝突保護対象である可能性があるが、PC予測部によって検知されている非衝突保護対象である可能性も否定できない。このため、ステップ412の判定が肯定された場合はステップ450へ移行し、PC制御ECU14Aが、車両50の周囲に存在している個々の物体毎に、衝突保護対象か否かの判定、車両50と衝突する確率の演算、及び、車両50と衝突する確率が所定値以上の物体の衝突予測位置の演算を行った結果をPC制御ECU14Aから取り込む。
次のステップ452において、PUH制御ECU18は、衝突検知センサ44によって検知された衝突検知位置が、PC予測部(PC制御ECU14B)によって予測された非衝突保護対象の衝突予測位置にほぼ一致しているか否か判定する。なお、ステップ452におけるほぼ一致しているか否かの判定は、例えば、衝突検知センサ44によって検知された衝突検知位置が、PC予測部によって予測された衝突予測位置を中心として、PC予測部による衝突予測位置の予測誤差を考慮して設定された衝突予測範囲内か否かを判定することで実現できる。
ステップ452の判定が肯定された場合は、車両50と衝突した物体が、PC予測部によって検知されている非衝突保護対象であると判断できる。このため、ステップ452の判定が肯定された場合は、フード52の持ち上げを行うことなくステップ400に戻る。これにより、車両50との衝突が検知された物体が非衝突保護対象である場合に、不必要なフード52の持ち上げを行うことを回避することができる。
また、ステップ452の判定が否定された場合は、車両50と衝突した物体が、PC予測部の死角領域から飛び出してきた衝突保護対象である可能性を否定できないので、ステップ414へ移行し、ステップ414において、PUH制御ECU18は、第2フロントACT46により、第1フロントACT36によってフード52の車両前側を持ち上げる場合よりも早期かつ速い持ち上げ速度で、フード52の車両前側を所定の持上位置(図4に二点鎖線で示す位置)まで持ち上げる。
すなわち、図14に示す状態は、第2フロントACT46の非作動時の状態、つまりインナパイプ202が収縮した状態である。この状態では、左右一対のトリガレバー244の上端部に設けられた係合部244Aがストッパ240の下端部に形成された被係合部242に係合されているため、インナパイプ202は圧縮コイルスプリング280の付勢力に抗してアウタパイプ200内へ収縮した状態を維持する。また、このとき、スライダ226の上端部に形成された張出し部226Cは、インナパイプ202の上端部に形成された段差部230に当接係止された状態にある。さらに、ロック爪256は、図示しない圧縮コイルスプリングの付勢力によって、ストッパ240の下部240Bの外周面に形成された凹溝260に進入した状態(非ロック状態)にある。また、ワイヤ232はプーリ294に全量巻き取られた状態にある。
図14に示す状態から、PUH制御ECU18によって第2フロントACT46が作動されると、第2フロントACT46のインナパイプ202が車両上方側へ突出される。すなわち、PUH制御ECU18によってモータ284が駆動されることにより、一方のクラッチ286を介してカム軸292が軸線回りに所定量回転される。これにより、カム290の一対の押圧部290Aが回動し、左右一対のトリガレバー244の対向側面244Cが係合解除方向へ押圧される。これにより、左右一対のトリガレバー244は引張コイルスプリング248の付勢力に抗して支軸246回りに揺動し、係合部244A同士が互いに接近する方向へ移動する。トリガレバー244の支軸246回りの揺動量が所定量に達すると、係合部244Aがストッパ240の被係合部242から外れ、インナパイプ202に対する拘束が解除される。
トリガレバー244による拘束が解除されると、圧縮コイルスプリング280の付勢力がスライダ226、圧縮コイルスプリング264及びキャップ220を介してインナパイプ202に作用し、インナパイプ202が車両上方側へ突出される(伸長される)。これにより、フード52の車両前側が車両上方側へ持ち上げられる。なお、このとき、他方のクラッチ288はフリー状態(非接続状態)とされているため、スライダ226が車両上方側へ移動するとそれに応じた量だけプーリ294が回転しワイヤ232が引き出される。
インナパイプ202が車両上方側へスライドしていくと、まず最初にハウジング250の上端部がホルダ212の内周面に形成された突起部218に当接し、インナパイプ202がフルストロークした状態となる。この時点では、圧縮コイルスプリング264の付勢力によって、スライダ226の張出し部226Cの下端面がインナパイプ202の上端部に当接係止され、当該張出し部226Cの上端面とキャップ220の底部との間に所定の隙間266が形成された状態にある。また、ロック爪256の内端部は、図示しない圧縮コイルスプリング等の付勢手段の付勢力によってストッパ240の凹溝260内に進入した状態を維持している。
この状態から、インナパイプ202のハウジング250の上端部がホルダ212の突起部218に当接すると、インナパイプ202はフルストローク状態となる。インナパイプ202がフルストロークした後も、圧縮コイルスプリング280の付勢力がスライダ226に作用するため、コントロールパイプ224は圧縮コイルスプリング264の付勢力に抗してスライダ226の張出し部226Cがキャップ220の底部に当接するまで車両上方側へ相対移動される。コントロールパイプ224の下端部にはストッパ240が螺合されているため、コントロールパイプ224が車両上方側へ相対移動すると、ストッパ240も車両上方側へ相対移動する。これにより、ロック爪256の内端部が凹溝260の斜面を摺動し、インナパイプ202の径方向外側へ強制的に押し出される。その結果、ロック爪256の外端部がロック溝262内へ入り込み、ロック状態となり、インナパイプ202の車両下方側へのスライド動作(収縮方向への移動)が阻止される。
上記のように、第2フロントACT46のインナパイプ202が車両上方側へスライドしていくとフード52の車両前側が持ち上がり、インナパイプ202はフルストローク状態になった時点でフード52の車両前側が所定の持上位置(図4に二点鎖線で示す位置)まで持ち上がることになる。また、第2フロントACT46によってフード52の車両前側が持ち上げられる際には、第2フロントACT46のリンク機構によってケーブルが引っ張られることで、フードロック装置42によるフード52の前端部のロックが解除される。
第2フロントACT46は、圧縮コイルスプリング280の付勢力によってインナパイプ202をスライドさせる構成であるので、衝突検知閾値に死角存在時の閾値である第2閾値th2を用い、かつ第2フロントACT46によってフード52の車両前側を持ち上げることで、図12(A)に「フード前側位置(第2フロントACT)」と表記して実線で示すように、第1フロントACT36によってフード52の車両前側を持ち上げる場合よりも早期かつ速い持ち上げ速度で、フード52の車両前側を所定の持上位置まで持ち上げることができる。従って、図12(A)に「フード前側持ち上げ完了の時間差Δt2」と表記して示すように、第2実施形態と同様にフード52の車両前側の持ち上げが早期に完了する。これにより、PC予測部の死角領域から衝突保護対象が飛び出してきた場合に、フード52の車両前側の持ち上げが完了するタイミングを、衝突保護対象がフード52に衝突するタイミングに間に合わせることができる。
次のステップ454において、PUH制御ECU18は、車両50が物体と衝突したか否かを判定するための有効質量Mについての衝突検知閾値を、通常時の閾値である第1閾値th1に戻す。そして、ステップ456において、PUH制御ECU18は、衝突検知センサ44の出力及び車速センサ20の出力に基づき、車両50が物体と衝突したと仮定したときの物体の有効質量Mを算出し、算出した有効質量Mがステップ454で設定した衝突検知閾値(第1閾値th1)を越えているか否かを判定することで、車両50と物体との衝突が検知されたか否かを再度判定する。
物体の有効質量Mが第1閾値th1以下の場合、衝突検知センサ44にノイズ等が入力された影響によるものか、車両50に物体が衝突していたとしても衝突した物体は衝突保護対象ではない可能性が高く、何れにしても車両50には衝突保護対象は衝突していないと判断できる。このため、ステップ456の判定が否定された場合はステップ426へ移行し、この場合はステップ426において、PUH制御ECU18は、第2フロントACT46のインナパイプ202を車両下方側へスライドさせる。
すなわち、第2フロントACT46のインナパイプ202を車両下方側へスライドさせて、第2フロントACT46を元の状態に復帰させる場合には、モータ284が再び駆動される。なお、このときには、PUH制御ECU18によって、一方のクラッチ286と他方のクラッチ288との接続状態が前述した場合と逆になるように変更される。すなわち、カム290側への駆動力伝達経路は遮断され、プーリ294側への駆動力伝達経路は接続される。
モータ284が駆動されるとプーリ294のプーリ軸296が巻取方向へ回転される。これにより、プーリ294にワイヤ232が巻き取られ、その牽引力がスプール234を介してスライダ226に伝達されるため、コントロールパイプ224がインナパイプ202に対して車両下方側へ相対移動される。これにより、図示しない圧縮コイルスプリングによって軸芯側へ押圧付勢されたロック爪256の外端部がロック溝262から外れ、内端部がストッパ240の凹溝260の底部へ再び入り込む。これにより、インナパイプ202のアウタパイプ200に対するロック状態が解除される。なお、このロック解除動作は、スライダ226の張出し部226Cがインナパイプ202の上端部の段差部230に再び当接係止されるまでになされる。
ロック解除後、ワイヤ232が更に巻き取られると、インナパイプ202はコントロールパイプ224と共に車両下方側へスライドし、アウタパイプ200内へ収縮される。インナパイプ202の収縮動作が完了する直前のとき、インナパイプ202の下端部に配設されたストッパ240の被係合部242とトリガレバー244の係合部244Aとが干渉し、トリガレバー244を引張コイルスプリング248の付勢力に抗して揺動させて、トリガレバー244の係合部244Aが再び被係合部242に係合される。これにより、インナパイプ202は元の状態に復帰される。
また、ステップ426において、PUH制御ECU18は、第1フロントACT36のリンク部材60の端部60Bを車両の外側方向へ移動させる方向にモータ70の回転軸を回転させることで、フード52の車両前側を第1フロントACT36によって元の位置(図4に実線で示す位置)に復帰させる。また、第1フロントACT36によってフード52の車両前側が元の位置に復帰されると、フードロック装置42によってフード52の前端部が再びロックされる。
一方、ステップ456の判定で物体の有効質量Mがステップ454で設定した衝突検知閾値(第1閾値th1)を越えていた場合は、車両50が衝突保護対象と衝突したと判断できる。このため、ステップ456からステップ418へ移行し、ステップ418において、PUH制御ECU18は、フード52の車両後側をリアACT40によって所定の持上位置(図8に示す位置)まで持ち上げる(図12(A)に「フード後側位置」と表記して示す実線も参照)。これにより、ステップ412,456で車両50との衝突が検知された物体が、PC予測部の死角領域から飛び出してきた衝突保護対象であった場合にも、当該衝突保護対象が、車両50のバンパに一旦当たった後、フード52に衝突する際に加わる衝撃を緩和することができ、衝突保護対象を保護することができる。
上述したように、本第3実施形態は、PC予測部が、非衝突保護対象と車両50との衝突も予測すると共に、非衝突保護対象が車両50と衝突すると予測した場合に、車両50のうち非衝突保護対象が衝突する位置(衝突予測位置)を予測し、衝突検知センサ44が車両幅方向に沿った衝突位置(衝突検知位置)を検知し、死角検知ECU16によってPC予測部の死角領域が検知され、かつ車両50と物体の衝突が検知された場合に、衝突検知センサ44によって検知された衝突検知位置がPC予測部による非衝突保護対象の衝突予測位置とおおよそ一致しているとき(ステップ452の判定が肯定された場合)には、ACTによるフード52の持ち上げを中止する。これにより、第1実施形態及び第2実施形態で説明した効果に加え、PC予測部によって検知されていた非衝突保護対象が車両50に衝突した場合に、不必要なフード52の持ち上げを回避することができる、という効果も得られる。
なお、上記では、車両50が市街地等を走行しているか否かを、車両50の車速が所定範囲内か否かに基づいて判定する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばGPSを利用して車両50の現在位置を取得し、取得した現在位置を地図情報と照合することで、車両50が市街地等を走行しているか否かを判定するようにしてもよい。また、路車間通信を行うことで車両50が市街地等を走行しているか否かを判定するようにしてもよい。
また、第1実施形態では、予測部による衝突保護対象の検知における死角が死角検知部によって検知され、かつ衝突検知部によって車両と物体との衝突が検知された場合に、予測部による衝突保護対象の検知における死角が死角検知部によって検知されていない場合よりもフードの車両前側の持ち上げを早期に完了させることを、フード52の車両前側の持ち上げにアクチュエータを切替えることで実現する態様を説明した。また、第2実施形態及び第3実施形態では、衝突検知閾値の第1閾値th1から第2閾値th2への変更と、PC予測部の死角領域が死角検知ECU16によって検知されている場合に、フード52の車両前側の持ち上げに用いるアクチュエータの切替えを併用することで実現する態様を説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、フード52の車両前側の持ち上げを早期に完了させることは、衝突検知閾値の変更のみを行ったとしても実現可能である。
すなわち、フード52の車両前側の持ち上げを単一のACTで行い、衝突検知閾値の変更のみを行ったとしても、図12(B)に示すように、衝突検知閾値を第1閾値th1から第2閾値th2へ変更した場合は、衝突検知閾値を第1閾値th1のままとした場合よりも、フード52の車両前側の持ち上げが早期に開始されることで、図12(B)に「フード前側持ち上げ完了の時間差Δt3」と表記して示すように、フード52の車両前側の持ち上げが早期に完了する。
また、上記で説明したACTは、本発明におけるアクチュエータの単なる一例であり、アクチュエータとしては公知の種々の構成を採用可能である。例えば、上記ではフード52の車両前側を持ち上げた後で、フード52の車両後側を持ち上げる態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、フード52の車両前側の持ち上げと車両後側の持ち上げを並行して行うようにしてもよい。この場合、フード52の車両前側を持ち上げるACTとフード52の車両後側を持ち上げるACTを別々に設けることに限られるものではなく、フード52全体を持ち上げる単一のACTを設けてもよい。
また、上記では本実施形態に係るPUH制御プログラム34が記憶部32に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本実施形態に係るPUH制御プログラム34は、CD−ROMやDVD−ROM等の記録媒体に記録されている形態で提供することも可能である。