JP2016128714A - 車両用動力伝達装置の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ベルト式無段変速機における入力側シーブの軸方向変位速度を抑制する車両用動力伝達装置の制御装置を提供する。【解決手段】ベルト式無段変速機18によりトルク伝達を行う状態又は車両停止状態からギヤ機構20によりトルク伝達を行う状態への切換時には、入力側シーブ54に供給する油圧Pinを切換前よりも上昇させる制御、及び、ギヤ機構20によりトルク伝達を行う状態からベルト式無段変速機18によりトルク伝達を行う状態への切換時には、入力側シーブ54に供給する油圧Pinを最低圧Pinlimとする制御の少なくとも一方を実行するものであることから、ギヤ機構20を介してトルク伝達を行う状態への切換時、及び、ベルト式無段変速機18を介してトルク伝達を行う状態への切換時に、入力側シーブ54が軸方向に急速に変位することを好適に抑制できる。【選択図】図1
Description
本発明は、車両用動力伝達装置の制御装置に関し、特に、ベルト式無段変速機における入力側シーブの軸方向変位速度を抑制するための改良に関する。
入力軸と出力軸との間の動力伝達経路に、ギヤ機構と、入力側シーブ及び出力側シーブを備えたベルト式無段変速機とが、並列に設けられ、前記入力軸から入力されたトルクを前記ベルト式無段変速機を介して前記出力軸に伝達する第1伝達経路と、前記ギヤ機構を介して前記出力軸に伝達する第2伝達経路とを、選択的に成立させる車両用動力伝達装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された車両用動力伝達装置がその一例である。
前記車両用動力伝達装置においては、前記ギヤ機構を介してトルク伝達を行う状態において、そのギヤ機構に備えられたヘリカルギヤ等によりスラスト力が発生させられる。前記ベルト式無段変速機を介してトルク伝達を行う状態においては、前記スラスト力は少なくとも前記ギヤ機構を介してトルク伝達を行う状態よりも小さくなる。前記入力側シーブの油圧室に供給される油圧に応じて、前記スラスト力に対向する方向の油圧押付力が前記入力側シーブに発生させられる。前記ギヤ機構を介してトルク伝達を行う状態においては、前記スラスト力が前記油圧押付力よりも大きくなるが、前記ベルト式無段変速機を介してトルク伝達を行う状態においては、前記スラスト力が前記油圧押付力よりも小さくなる。従って、前記車両用動力伝達装置において、前記ギヤ機構を介してトルク伝達を行う状態への切換時、及び、前記ベルト式無段変速機を介してトルク伝達を行う状態への切換時には、前記入力側シーブが軸方向に急速に変位するおそれがある。このような課題は、車両用動力伝達装置の性能向上を意図して本発明者が鋭意研究を続ける過程において新たに見出したものである。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ベルト式無段変速機における入力側シーブの軸方向変位速度を抑制する車両用動力伝達装置の制御装置を提供することにある。
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、入力軸と出力軸との間の動力伝達経路に、ギヤ機構と、入力側シーブ及び出力側シーブを備えたベルト式無段変速機とが、並列に設けられ、前記入力軸から入力されたトルクを前記ベルト式無段変速機を介して前記出力軸に伝達する第1伝達経路と、前記ギヤ機構を介して前記出力軸に伝達する第2伝達経路とを、選択的に成立させる車両用動力伝達装置において、前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態又は車両停止状態から前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時には、前記入力側シーブに供給する油圧を切換前よりも上昇させる制御、及び、前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態から前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時には、前記入力側シーブに供給する油圧を最低圧とする制御の少なくとも一方を実行することを特徴とするものである。
このようにすれば、前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態又は車両停止状態から前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時には、前記入力側シーブに供給する油圧を切換前よりも上昇させる制御、及び、前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態から前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時には、前記入力側シーブに供給する油圧を最低圧とする制御の少なくとも一方を実行するものであることから、前記ギヤ機構を介してトルク伝達を行う状態への切換時、及び、前記ベルト式無段変速機を介してトルク伝達を行う状態への切換時に、前記入力側シーブが軸方向に急速に変位することを好適に抑制できる。すなわち、ベルト式無段変速機における入力側シーブの軸方向変位速度を抑制する車両用動力伝達装置の制御装置を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明に用いる図面において、各部の寸法比等は必ずしも正確には描かれていない。
図1は、本発明が好適に適用される車両用動力伝達装置10(以下、単に動力伝達装置10という)の構成を概略的に示す骨子図である。図1に示すように、本実施例の動力伝達装置10は、例えば、走行用の駆動力源として用いられるエンジン12と、流体式伝動装置であるトルクコンバータ14と、前後進切換装置16と、ベルト式無段変速機18(以下、単に無段変速機18という)と、ギヤ機構20と、図示しない駆動輪に動力伝達可能な出力ギヤ22を有する出力軸24とを、備えている。前記エンジン12により発生させられたトルク(駆動力)は、前記トルクコンバータ14を介してタービン軸26に伝達され、そのタービン軸26と同軸に一体回転させられるように構成された入力軸32に入力される。
前記動力伝達装置10は、前記入力軸32と前記出力軸24との間の動力伝達経路に、前記無段変速機18と、前記ギヤ機構20とを、並列に備えている。すなわち、前記動力伝達装置10においては、前記入力軸32に伝達されたトルクが前記無段変速機18等を経由して前記出力軸24に伝達される第1伝達経路と、前記入力軸32に伝達されたトルクが前記ギヤ機構20等を経由して前記出力軸24に伝達される第2伝達経路との何れかが選択的に成立させられるように構成されており、車両の走行状態に応じてトルク伝達経路が切り換えられるように構成されている。
前記エンジン12は、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であり、前記動力伝達装置10が適用された車両の走行用トルク(走行用駆動力)を発生させる。前記トルクコンバータ14は、前記エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14pと、前記トルクコンバータ14の出力側部材に相当するタービン軸26を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tとを、備えており、流体を介して動力伝達を行うように構成されている。前記ポンプ翼車14pと前記タービン翼車14tとの間にはロックアップクラッチ28が設けられており、このロックアップクラッチ28が完全係合させられることで前記ポンプ翼車14p及び前記タービン翼車14tが一体的に回転させられるようになっている。
前記前後進切換装置16は、前進用クラッチC1と、後進用ブレーキB1と、ダブルピニオン型の遊星歯車装置30とを、主体として構成されている。前記遊星歯車装置30のキャリア30cは、前記入力軸32(タービン軸26)と一体的に回転させられるように連結されている。前記遊星歯車装置30のリングギヤ30rは、前記後進用ブレーキB1を介して非回転部材としてのハウジング34に選択的に連結されるようになっている。前記サンギヤ30sと前記キャリア30cとは、前記前進用クラッチC1を介して選択的に連結されるようになっている。前記前進用クラッチC1及び前記後進用ブレーキB1は、何れも油圧アクチュエータによってその係合状態が制御される油圧式係合装置である。好適には、摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
前記遊星歯車装置30のサンギヤ30sは、前記ギヤ機構20を構成する小径ギヤ36に連結されている。前記ギヤ機構20は、複数のギヤ対(ギヤ列)を備え、前記小径ギヤ36から入力された動力を前記複数のギヤ対を介して前記出力軸24に伝達する機構である。前記ギヤ機構20は、カウンタ軸38に相対回転不能に設けられた大径ギヤ40を備えており、前記小径ギヤ36と前記大径ギヤ40とが相互に噛み合わされている。アイドラギヤ42が、前記カウンタ軸38と同軸且つそのカウンタ軸38に対する相対回転可能に設けられている。前記カウンタ軸38と前記アイドラギヤ42との間には、噛合クラッチD1が設けられている。この噛合クラッチD1は、前記カウンタ軸38と一体的に回転させられる第1ギヤ44と、前記アイドラギヤ42と一体的に回転させられる第2ギヤ46と、前記第1ギヤ44及び前記第2ギヤ46と嵌合可能(係合可能、噛合可能)な溝部を備えたスリーブ48とを、備えている。このスリーブ48が、前記第1ギヤ44及び前記第2ギヤ46と嵌合させられることで、前記カウンタ軸38と前記アイドラギヤ42とが接続され、一体的に回転させられる。前記噛合クラッチD1は、前記スリーブ48を嵌合させる際に回転を同期させる同期機構としてシンクロメッシュ機構S1を備えている。
前記アイドラギヤ42は、そのアイドラギヤ42よりも大径の入力ギヤ52と相互に噛み合わされている。前記入力ギヤ52は、前記無段変速機18における出力側シーブ56の回転軸と同軸に配置されている前記出力軸24に対して相対回転不能に設けられている。この出力軸24は、前記出力側シーブ56の回転軸まわりに回転可能に配置されている。前記出力軸24には、前記入力ギヤ52及び前記出力ギヤ22が相対回転不能に設けられている。これより、前記エンジン12により発生させられたトルクに係る、前記タービン軸26(入力軸32)から前記ギヤ機構20を経由して前記出力軸24に伝達される第2伝達経路上には、前記前進用クラッチC1、前記後進用ブレーキB1、及び前記噛合クラッチD1が設けられている。前記前進用クラッチC1及び前記噛合クラッチD1の少なくとも一方が解放されると、第2伝達経路が遮断され、前記ギヤ機構20から前記出力軸24にトルクが伝達されない状態とされる。
前記無段変速機18と前記出力軸24との間の動力伝達経路には、それらの間を選択的に連結するベルト走行用クラッチC2が介挿されている。このベルト走行用クラッチC2が係合されることで、前記エンジン12により発生させられたトルクが前記入力軸32及び前記無段変速機18を経由して前記出力軸24に伝達される第1伝達経路が形成される。前記ベルト走行用クラッチC2が解放されると、第1伝達経路が遮断され、前記無段変速機18から前記出力軸24にトルクが伝達されない状態とされる。
前記無段変速機18は、前記タービン軸26に連結された前記入力軸32と前記出力軸24との間の動力伝達経路に設けられている。前記無段変速機18は、前記入力軸32側に設けられた入力側部材である有効径が可変の入力側シーブ54と、出力側部材である有効径が可変の出力側シーブ56と、前記入力側シーブ54と前記出力側シーブ56との間に巻き掛けられた伝動ベルト58とを備えており、前記入力側シーブ54及び前記出力側シーブ56と前記伝動ベルト58との間の摩擦力を介して動力伝達を行う無段変速機構である。
前記入力側シーブ54は、前記入力軸32に対して同軸に取り付けられた入力側固定回転体としての固定シーブ54aと、前記入力軸32に対して軸まわりの相対回転不能且つ軸方向の移動可能に設けられた入力側可動回転体としての可動シーブ54bと、それらの間のV溝幅を変更するために可動シーブ54bを移動させるための推力を発生させるプライマリ側油圧アクチュエータ54cとを、備えている。前記出力側シーブ56は、出力側固定回転体としての固定シーブ56aと、その固定シーブ56aに対して軸まわりの相対回転不能且つ軸方向の移動可能に設けられた出力側可動回転体としての可動シーブ56bと、それらの間のV溝幅を変更するために前記可動シーブ56bを移動させるための推力を発生させるセカンダリ側油圧アクチュエータ56cとを、備えて構成されている。
前記無段変速機18においては、前記入力側シーブ54におけるV溝幅が変化させられて前記伝動ベルト58の掛かり径(有効径)が変更されることで、実変速比(ギヤ比)γcvt(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)が連続的に変更させられる。例えば、前記入力側シーブ54のV溝幅が狭くされると、前記変速比γcvtが小さくなる。すなわち、前記無段変速機18がアップシフトされる。前記入力側シーブ54のV溝幅が広くされると、変速比γcvtが大きくなる。すなわち、前記無段変速機18がダウンシフトされる。
図2は、以上のように構成された本実施例の動力伝達装置10における走行パターンの切り換えについて説明する図であり、各走行パターン毎の係合要素の係合表である。この図2において、C1が前記前進用クラッチC1の作動状態に対応する。C2が前記ベルト走行用クラッチC2の作動状態に対応する。B1が前記後進用ブレーキB1の作動状態に対応する。D1が前記噛合クラッチD1の作動状態に対応する。「○」が係合(接続)を示し、「×」が解放(遮断)を示している。前述のように、前記噛合クラッチD1はシンクロメッシュ機構S1を備えており、前記噛合クラッチD1が係合する際には、前記シンクロメッシュ機構S1が作動することとなる。
図2に示すように、前記前進用クラッチC1及び前記噛合クラッチD1が係合(接続)され、前記ベルト走行用クラッチC2及び前記後進用ブレーキB1が解放(遮断)されることで、前記動力伝達装置10においてギヤ走行(前進走行)が成立させられる。この走行パターンにおいては、前記エンジン12により発生させられたトルクが前記ギヤ機構20を経由して前記出力ギヤ22に伝達される。すなわち、前記タービン軸26に伝達されたトルクが前記ギヤ機構20を経由して前記出力軸24に伝達される第2伝達経路が形成される。
図2に示すギヤ走行すなわち前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態においては、前記前進用クラッチC1が係合されることで、前記遊星歯車装置30が一体回転させられる。これにより、前記タービン軸26と前記小径ギヤ36とが同じ回転速度で回転させられる。この小径ギヤ36は、前記カウンタ軸38に設けられた前記大径ギヤ40と噛み合わされているので、前記小径ギヤ36の回転により前記カウンタ軸38が回転させられる。前記噛合クラッチD1が係合されており、前記カウンタ軸38と前記アイドラギヤ42とが一体的に回転させられるように接続されている。更に、前記アイドラギヤ42が前記入力ギヤ52と噛み合わされているので、前記カウンタ軸38の回転により、前記入力ギヤ52が回転させられ、延いてはその入力ギヤ52と一体的に設けられている前記出力軸24及び前記出力ギヤ22が回転させられる。このように、前記第2伝達経路上に設けられている前記前進用クラッチC1及び前記噛合クラッチD1が係合されると、前記エンジン12により発生させられたトルクが、前記トルクコンバータ14、前記前後進切換装置16、前記ギヤ機構20、及び前記アイドラギヤ42等を経由して前記出力軸24及び前記出力ギヤ22に伝達される。
図2には図示しないが、前記後進用ブレーキB1及び前記噛合クラッチD1が係合(接続)され、前記ベルト走行用クラッチC2及び前記前進用クラッチC1が解放(遮断)されることで、前記動力伝達装置10においてギヤ走行(後進走行)が成立させられる。この走行パターンにおいては、前記エンジン12により発生させられたトルクが前記ギヤ機構20を経由して前記出力ギヤ22に伝達される。すなわち、前記タービン軸26に伝達されたトルクが前記ギヤ機構20を経由して前記出力軸24に伝達される前記第2伝達経路が形成される。
図2に示すように、前記ベルト走行用クラッチC2が接続され、前記前進用クラッチC1、前記後進用ブレーキB1、及び前記噛合クラッチD1が遮断されることで、前記動力伝達装置10においてベルト走行(高車速)が成立させられる。この走行パターンにおいては、前記エンジン12により発生させられたトルクが前記無段変速機18を経由して前記出力ギヤ22に伝達される。すなわち、前記タービン軸26に伝達されたトルクが前記無段変速機18等を経由して前記出力軸24に伝達される前記第1伝達経路が形成される。
図2に示すベルト走行(高車速)すなわち前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態においては、前記ベルト走行用クラッチC2が接続されることで、前記出力側シーブ56と前記出力軸24とが接続される。これにより、前記出力側シーブ56、前記出力軸24、及び前記出力ギヤ22が一体回転させられる。従って、前記エンジン12により発生させられたトルクが、前記トルクコンバータ14、前記入力軸32、前記無段変速機18、及び前記出力軸24等を経由して前記出力ギヤ22に伝達される。ここで、図2に示すベルト走行(高車速)において前記噛合クラッチD1が解放(遮断)されるのは、ベルト走行中における前記ギヤ機構20等の引き摺りを抑制すると共に、比較的高車速時においてそのギヤ機構20等が高回転化するのを抑制するためである。
図2に示すギヤ走行は、比較的低車速領域において選択される。前記第2伝達経路における変速比γ1(入力側回転速度Nin/出力側回転速度Nout)は、前記無段変速機18の最大変速比γmaxよりも大きな値に設定されている。前記動力伝達装置10においては、例えば車速等に基づいて前記ギヤ走行と前記ベルト走行との切り換えが判定され、その切り換えが行われるが、ギヤ走行からベルト走行(高車速)への切り換え、或いはベルト走行(高車速)からギヤ走行への切り換えに際しては、図2に示すベルト走行(中車速)を過渡的に経由して切り換えが行われる。
図1には、前記無段変速機18等を制御するために前記動力伝達装置10に備えられた電子制御装置60の入出力系統を併せて示している。前記電子制御装置60は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより前記動力伝達装置10に係る各種制御を実行する。前記電子制御装置60は、例えば、前記エンジン12の出力制御、前記無段変速機18の変速制御やベルト挟圧力制御、走行パターンを前記ギヤ機構20によるギヤ走行及び前記無段変速機18によるベルト走行の何れかに適宜切り換える切換制御等を実行するものであり、必要に応じてエンジン制御用、無段変速機制御用、走行パターン切換用等に分けて構成される。
前記電子制御装置60には、前記動力伝達装置10の各部に設けられた各種センサ及びスイッチ等により検出された信号が供給されるようになっている。例えば、エンジン回転速度センサ62により検出された前記エンジン12の回転速度(エンジン回転速度)NEを表す信号、入力軸回転速度センサ64により検出された前記無段変速機18の入力軸32(入力側シーブ54)の回転速度である入力軸回転速度Ninを表す信号、出力軸回転速度センサ66により検出された前記出力軸24の回転速度である出力軸回転速度Noutを表す信号、及びアクセル開度センサ68により検出された運転者の加速要求量としての図示しないアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号等が、それぞれ供給される。前記入力軸回転速度Ninは、前記タービン軸26の回転速度Ntに相当する。前記出力軸回転速度Noutは、車速Vに相当する。前記電子制御装置60は、前記出力軸回転速度Noutと、前記入力軸回転速度Ninとに基づいて、前記無段変速機18の実変速比γcvt(=Nin/Nout)を算出する。
前記電子制御装置60からは、前記動力伝達装置10の各部に作動指令が出力されるように構成されている。例えば、前記エンジン12の出力制御のためのエンジン出力制御指令信号、前記無段変速機18の変速に関する油圧制御のための油圧制御指令信号、前記動力伝達装置10の走行パターンの切換に関連する前記前後進切換装置16(前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1)、ベルト走行用クラッチC2、及び噛合クラッチD1を制御するための油圧制御指令信号等が、それぞれ出力される。すなわち、本実施例においては、前記電子制御装置60が、前記動力伝達装置10の制御装置に相当する。具体的には、前記無段変速機18の変速に関する油圧制御のための油圧制御指令信号として、前記プライマリ側油圧アクチュエータ54cに供給される油圧(プライマリ圧)Pinを調圧する図示しないリニアソレノイド弁を駆動するための指令信号、前記セカンダリ側油圧アクチュエータ56cに供給される油圧(セカンダリ圧)Poutを調圧する図示しないリニアソレノイド弁を駆動するための指令信号等が、前記動力伝達装置10に備えられた油圧制御回路70へ出力される。前記油圧制御指令信号として、前記前進用クラッチC1、前記後進用ブレーキB1、前記ベルト走行用クラッチC2、前記シンクロメッシュ機構S1に供給される油圧を制御する各リニアソレノイド弁を駆動するための指令信号等が前記油圧制御回路70へ出力される。
図1に示すように、前記電子制御装置60は、切換制御部80、無段変速機油圧制御部82、及びガレージ制御部84等を機能的に備えている。前記切換制御部80は、前記動力伝達装置10において前記第1伝達経路が形成される状態と、前記第2伝達経路が形成される状態とを、切り換える。すなわち、前記エンジン12により発生させられたトルクが前記ギヤ機構20等を経由して前記出力軸24に伝達されるギヤ走行と、前記エンジン12により発生させられたトルクが前記無段変速機18等を経由して前記出力軸24に伝達されるベルト走行とを、車両の状態に基づいて切り換える切換制御を実行する。
前記切換制御部80は、車両の走行状態に基づいて、前記動力伝達装置10における走行パターンを切り換えるか否かを判定する。前記電子制御装置60の記憶部には、車速V及びアクセル開度Acc(或いはスロットル開度θth)の関係に基づいて走行パターンを決定する走行領域マップが予め定められて記憶されている。この走行領域マップにおいて、前記ギヤ走行は、比較的低車速、低アクセル開度(低負荷走行)領域に設定されている。前記ベルト走行は、比較的中高車速、中高アクセル開度(中高負荷走行)領域に設定されている。前記切換制御部80は、前記走行領域マップから、前記車速Vに対応する出力軸回転速度Nout及び前記アクセル開度Acc等に基づいて、前記動力伝達装置10において成立させられるべき走行パターンを判定する。
走行パターンの切換が判定された場合、前記切換制御部80は、前記動力伝達装置10における走行パターンの切換を実行する。例えば、前記動力伝達装置10における走行パターンをギヤ走行からベルト走行(高車速)に切り換える場合、前記切換制御部80は、前記前進用クラッチC1と前記ベルト走行用クラッチC2との掛け替えを開始する。具体的には、前記前進用クラッチC1を解放させると共に前記ベルト走行用クラッチC2を係合させる掛け替え制御(クラッチツゥクラッチ制御)を実行する。この状態は、図2に示すベルト走行(中車速)に対応している。次に、前記切換制御部80は、前記噛合クラッチD1を解放(遮断)させる。すなわち、前記シンクロメッシュ機構S1における前記スリーブ48を移動させて接続中の噛合クラッチD1を遮断する指令を出力する。
前記動力伝達装置10における走行パターンをベルト走行(高車速)からギヤ走行に切り換える場合、前記切換制御部80は、先ず、前記噛合クラッチD1を係合(接続)させる。この状態は、図2に示すベルト走行(中車速)に対応している。次に、前記切換制御部80は、前記前進用クラッチC1と前記ベルト走行用クラッチC2の掛け替えを開始する。具体的には、前記前進用クラッチC1を係合させると共に前記ベルト走行用クラッチC2を解放させる掛け替え制御(クラッチツゥクラッチ制御)を実行する。
前記無段変速機油圧制御部82は、前記無段変速機18に供給する油圧を制御する。具体的には、前記油圧制御回路70に備えられた図示しないリニアソレノイド弁を介して、前記入力側シーブ54における前記プライマリ側油圧アクチュエータ54cに供給されるプライマリ圧Pinを制御する。これにより、前記入力側シーブ54におけるV溝幅を変化させて前記伝動ベルト58の掛かり径(有効径)を変化させ、前記無段変速機18の変速比γcvtを変更する。本実施例においては、前記プライマリ圧Pinが、入力側シーブである前記入力側シーブ54に供給される油圧に相当する。前記油圧制御回路70に備えられた図示しないリニアソレノイド弁を介して、前記出力側シーブ56における前記セカンダリ側油圧アクチュエータ56cに供給されるセカンダリ圧Poutを制御する。これにより、前記出力側シーブ56におけるV溝幅を変化させて前記伝動ベルト58の挟圧力を制御する。すなわち、前記無段変速機油圧制御部82は、前記無段変速機18における前記入力側シーブ54及び前記出力側シーブ56それぞれに供給する油圧を制御することで、前記無段変速機18における変速比γを制御すると共に、その変速比γに応じて好適な前記伝動ベルト58の挟圧力を実現する。
前記ガレージ制御部84は、前記動力伝達装置10によるガレージ制御を実行する。具体的には、図示しないアクセルペダルの踏み込みが行われていない状態において、所定のガレージ操作装置による操作に応じて比較的低車速での前進走行又は後進走行を行う。換言すれば、車両停止状態すなわち前記動力伝達装置10が搭載された車両が停止した状態(車速Vが零である状態)から、前記ガレージ操作装置による操作に応じて、前記車両を比較的低車速で前進走行又は後進走行させる駆動状態を実現する。斯かるガレージ制御が行われる場合、前記動力伝達装置10においては、前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態すなわち前記ギヤ走行が成立させられる。すなわち、前記ガレージ制御部84によるガレージ制御が開始される場合、前記切換制御部80は、車両停止状態から前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換を行う。具体的には、前記油圧制御回路70を介して前記前進用クラッチC1及び前記噛合クラッチD1を係合させる。
前記動力伝達装置10において、前記ギヤ機構20を介してトルク伝達を行う状態すなわち前記ギヤ走行では、前記ギヤ機構20に備えられたヘリカルギヤ等によりスラスト力(ギヤの噛み合いにより生じる各ギヤの軸方向の推力)が発生させられる。前記入力側シーブ54においては、前記プライマリ側油圧アクチュエータ54cに供給される油圧Pinに応じて、前記可動シーブ54bを前記固定シーブ54aに押し付ける方向の油圧押付力f1が発生させられるが、前記ギヤ走行では、図1に矢印f2で示すように、前記油圧押付力に対向する方向のスラスト力が発生させられる。前記無段変速機18を介してトルク伝達を行う状態すなわち前記ベルト走行では、前記スラスト力は少なくとも前記ギヤ機構20を介してトルク伝達を行う状態よりも小さくなる。前記ギヤ機構20を介してトルク伝達を行う状態においては、前記スラスト力が前記油圧押付力よりも大きくなるが、前記無段変速機18を介してトルク伝達を行う状態においては、前記スラスト力が前記油圧押付力よりも小さくなることが考えられる。前記動力伝達装置10においては、前記入力側シーブ54を軸方向に固定する構成(例えば、ストッパプレート等)が特に設けられていない。従って、前記動力伝達装置10において、前記ギヤ機構20を介してトルク伝達を行う状態への切換時、及び、前記無段変速機18を介してトルク伝達を行う状態への切換時には、前記入力側シーブ54(固定シーブ54a或いは入力側シーブ54全体)が軸方向すなわち前記入力軸32の軸心方向に変位するおそれがある。
前記入力側シーブ54が軸方向に変位することで、以下のような問題が生じるおそれがある。すなわち、前記入力側シーブ54における前記固定シーブ54a又は前記可動シーブ54bの背面側には、回転速度センサ等が設けられていることが考えられるが、前記入力側シーブ54が軸方向に変位することで、斯かるセンサの読み取り不良が発生するおそれがある。前記入力側シーブ54における芯ずれが増加するおそれがあり、ベルト効率の悪化或いは耐久性の低下等を引き起こすおそれがある。前記ハウジング34に対して前記入力側シーブ54を回転可能に支持する図示しないベアリングのアウターレースにフレーキングが生じる等、前記ベアリングの耐久性が低下するおそれがある。
前記不具合を解消するため、本実施例では、以下の制御を行う。すなわち、前記無段変速機油圧制御部82は、前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態から前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時には、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを切換前よりも上昇させる。すなわち、前記切換制御部80による、前記ベルト走行から前記ギヤ走行への切換時には、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを切換前よりも上昇させる。具体的には、前記ベルト走行から前記ギヤ走行への切り換えに際して、前記前進用クラッチC1を係合させると共に前記ベルト走行用クラッチC2を解放させる掛け替え制御(クラッチツゥクラッチ制御)が開始された時点又はその開始が予測された時点から、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを規定値Pinupまで上昇させる。前記前進用クラッチC1を係合させると共に前記ベルト走行用クラッチC2を解放させる掛け替え制御が完了した後、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを低下させる。好適には、前記動力伝達装置10における前記ギヤ走行時における油圧Pinまでスイープダウンさせる。前記前記前進用クラッチC1を係合させると共に前記ベルト走行用クラッチC2を解放させる掛け替え制御の開始が予測される時点とは、例えば、前記無段変速機18の変速比γcvtが最大変速比γmaxとされた時点をいう。前記掛け替え制御の完了は、前記前進用クラッチC1の係合圧Pc1が規定値αよりも大きくなることにより判定される。本実施例において、前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態から前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時とは、前記掛け替え制御が開始された時点又はその開始が予測された時点からその掛け替え制御が完了するまでの間をいう。前記切換前とは、前記掛け替え制御が開始される前をいう。
前記無段変速機油圧制御部82は、車両停止状態から前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時には、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを切換前よりも上昇させる。すなわち、前記切換制御部80による、車両停止状態から前記ギヤ走行への切換時には、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを切換前よりも上昇させる。具体的には、車両停止状態から前記ギヤ走行への切換時例えば前記ガレージ制御時における前記ギヤ走行への切り換えに際して、前記前進用クラッチC1を係合させる制御が開始された時点又はその開始が予測された時点から、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを規定値Pinupまで上昇させる。この規定値Pinupは、前記ベルト走行から前記ギヤ走行への切換時における制御に用いられる値とは異なる値であってもよい(以下の制御において同じ)。前記ガレージ制御が完了した後、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを低下させる。好適には、前記動力伝達装置10における前記ギヤ走行時における油圧Pinまでスイープダウンさせる。本実施例において、車両停止状態から前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時とは、前記ガレージ制御が開始された時点又はその開始が予測された時点からそのガレージ制御が完了するまでの間をいう。前記切換前とは、前記ガレージ制御が開始される前をいう。
前記無段変速機油圧制御部82は、前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態から前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時には、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを最低圧とする。すなわち、前記切換制御部80による、前記ギヤ走行から前記ベルト走行への切換時には、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを最低圧Pinlimとする。本実施例において、最低圧Pinlimとは、前記プライマリ側油圧アクチュエータ54cに供給されるべき油圧の最低値であり、前記入力側シーブ54の仕様等に応じて設計上定まる値である。前記無段変速機油圧制御部82は、具体的には、前記ギヤ走行から前記ベルト走行への切り換えに際して、前記ベルト走行用クラッチC2を係合させると共に前記前進用クラッチC1を解放させる掛け替え制御(クラッチツゥクラッチ制御)が開始された時点又はその開始が予測された時点から、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを前記最低圧Pinlimとする。前記ベルト走行用クラッチC2を係合させると共に前記前進用クラッチC1を解放させる掛け替え制御が完了した後、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinが、前記動力伝達装置10における前記ベルト走行時における油圧Pinとなるように制御する。本実施例において、前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態から前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時とは、前記掛け替え制御が開始された時点又はその開始が予測された時点からその掛け替え制御が完了するまでの間をいう。前記切換前とは、前記掛け替え制御が開始される前をいう。
以上のように、本実施例の制御では、前記動力伝達装置10における、前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時、及び、前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時に、切換後に前記動力伝達装置10に発生するギヤスラスト力に応じて、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを制御する。すなわち、前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態又は車両停止状態から前記第2伝達経路を介してトルク伝達を行う状態への切換時には、前記スラスト力が前記油圧押付力よりも大きくなることから、前記油圧押付力に対する前記スラスト力の差分を打ち消すように、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを切換前よりも上昇させる。前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態から前記第1伝達経路を介してトルク伝達を行う状態への切換時には、前記スラスト力が前記油圧押付力よりも小さくなることから、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを最低圧とする。
前記無段変速機油圧制御部82は、好適には、前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態から前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時には、前記出力側シーブ54に供給する油圧Poutを切換前よりも上昇させる。具体的には、前記ベルト走行から前記ギヤ走行への切り換えに際して、前記前進用クラッチC1を係合させると共に前記ベルト走行用クラッチC2を解放させる掛け替え制御が開始された時点又はその開始が予測された時点から、前記出力側シーブ56に供給する油圧Poutを規定値Poutupまで上昇させる。前記前進用クラッチC1を係合させると共に前記ベルト走行用クラッチC2を解放させる掛け替え制御が完了した後、前記出力側シーブ56に供給する油圧Poutを低下させる。好適には、前記動力伝達装置10における前記ギヤ走行時における油圧Poutまでスイープダウンさせる。
前記無段変速機油圧制御部82は、好適には、車両停止状態から前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時には、前記出力側シーブ54に供給する油圧Poutを切換前よりも上昇させる。この規定値Poutupは、前記ベルト走行から前記ギヤ走行への切換時における制御に用いられる値等とは異なる値であってもよい(以下の制御において同じ)。具体的には、車両停止状態から前記ギヤ走行への切換時例えば前記ガレージ制御時における前記ギヤ走行への切り換えに際して、前記前進用クラッチC1を係合させる制御が開始された時点又はその開始が予測された時点から、前記出力側シーブ56に供給する油圧Poutを規定値Poutupまで上昇させる。前記ガレージ制御が完了した後、前記出力側シーブ56に供給する油圧Poutを低下させる。好適には、前記動力伝達装置10における前記ギヤ走行時における油圧Poutまでスイープダウンさせる。
前記無段変速機油圧制御部82は、好適には、前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態から前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時には、前記出力側シーブ54に供給する油圧Poutを切換前よりも上昇させる。具体的には、前記ギヤ走行から前記ベルト走行への切り換えに際して、前記ベルト走行用クラッチC2を係合させると共に前記前進用クラッチC1を解放させる掛け替え制御が開始された時点又はその開始が予測された時点から、前記出力側シーブ56に供給する油圧Poutを規定値Poutupまで上昇させる。前記ベルト走行用クラッチC2を係合させると共に前記前進用クラッチC1を解放させる掛け替え制御が完了した後、前記出力側シーブ56に供給する油圧Poutを低下させる。好適には、前記動力伝達装置10における前記ベルト走行時における油圧Poutまでスイープダウンさせる。
図3は、前記動力伝達装置10の前記ガレージ制御に際して実行される、本実施例の制御の一例を示すタイムチャートである。図3においては、前記入力側シーブ54に供給される油圧(プライマリ圧)Pinを一点鎖線で、前記出力側シーブ56に供給される油圧(セカンダリ圧)Poutを二点鎖線で、それぞれ示している(後述する図4及び図5において同じ)。図3に示す制御では、先ず、時点ta1において、前記ガレージ制御が開始され、前記前進用クラッチC1の係合制御が開始される。時点ta1から、前記入力側シーブ54に供給される油圧Pinが規定値Pinupまで上昇させられる。前記油圧Pinを規定値Pinupまで上昇させることで、前記前進用クラッチC1の係合圧の上昇に伴って発生するギヤスラスト力を打ち消し、前記入力側シーブ54の軸方向の移動を抑制できる。時点ta1から、前記出力側シーブ56に供給される油圧Poutが規定値Poutupまで上昇させられる。前記油圧Poutを規定値Poutupまで上昇させることで、前記無段変速機18におけるベルト張力を増加させ、前記伝動ベルト58の摩擦力により前記入力側シーブ54の軸方向の移動を抑制できる。時点ta2において、前記ガレージ制御が完了させられた後、前記入力側シーブ54に供給される油圧Pinが規定値以下の勾配でスイープダウンさせられる。前記出力側シーブ56に供給される油圧Poutがスイープダウンさせられる。図3に示す制御によれば、前記動力伝達装置10の前記ガレージ制御時における、前記入力側シーブ54の軸方向の移動を抑制でき、前記入力側シーブ54に備えられたセンサの読み取り確保(ガレージ回転速度の算出確保)、及び前記ハウジング34に対して前記入力側シーブ54を回転可能に支持する図示しないベアリングのアウターレースにフレーキング抑制等を実現できる。
図4は、前記動力伝達装置10の前記ギヤ走行から前記ベルト走行への切り換えに際して実行される、本実施例の制御の一例を示すタイムチャートである。図4においては、前記前進用クラッチC1の係合圧の変化を実線で、前記ベルト走行用クラッチC2の係合圧の変化を破線で、それぞれ示している(後述する図5において同じ)。図4に示す制御では、先ず、時点tb1において、前記ギヤ走行から前記ベルト走行への切換制御すなわち前記前進用クラッチC1を解放させると共に前記ベルト走行用クラッチC2を係合させる掛け替え制御(ダウンシフト制御)が開始される。時点tb1から、前記入力側シーブ54に供給される油圧Pinが最低圧Pinlimに制御(図4においては最低圧Pinlimに維持)される。前記油圧Pinが最低圧Pinlimに維持されることで、前記ベルト走行への切換後に前記ギヤスラスト力が減少した際、前記入力側シーブ54の軸方向の移動を抑制できる。時点tb1から、前記出力側シーブ56に供給される油圧Poutが規定値Poutupまで上昇させられる。前記油圧Poutを規定値Poutupまで上昇させることで、前記無段変速機18におけるベルト張力を増加させ、前記伝動ベルト58の摩擦力により前記入力側シーブ54の軸方向の移動を抑制できる。時点tb2において、前記前進用クラッチC1を解放させると共に前記ベルト走行用クラッチC2を係合させる掛け替え制御の完了が判定される。好適には、前記ベルト走行用クラッチC2の係合油圧が規定値α以上となった場合に前記掛け替え制御の完了が判定される。時点tb2において前記掛け替え制御の完了が判定された後、前記入力側シーブ54に供給される油圧Pinが前記動力伝達装置10における前記ベルト走行時における油圧Pinとされる。前記出力側シーブ56に供給される油圧Poutが前記動力伝達装置10における前記ベルト走行時における油圧Poutまでスイープダウンさせられる。
図5は、前記動力伝達装置10の前記ベルト走行から前記ギヤ走行への切り換え直前に実行される、本実施例の制御の一例を示すタイムチャートである。図5に示す制御では、先ず、時点tc1において、前記無段変速機18の変速比γcvtが最大変速比γmaxとされている。すなわち、前記ベルト走行から前記ギヤ走行への切換制御の開始直前(開始が予測される状態)となっている。時点tc1から、前記入力側シーブ54に供給される油圧Pinが規定値Pinupまで上昇させられる。前記油圧Pinを規定値Pinupまで上昇させることで、前記ギヤ走行の成立後に発生するギヤスラスト力を打ち消し、前記入力側シーブ54の軸方向の移動を抑制できる。時点tc1から、前記出力側シーブ56に供給される油圧Poutが規定値Poutupまで上昇させられる。前記油圧Poutを規定値Poutupまで上昇させることで、前記無段変速機18におけるベルト張力を増加させ、前記伝動ベルト58の摩擦力により前記入力側シーブ54の軸方向の移動を抑制できる。前記規定値Poutupは、前記プライマリ圧Pinに係る規定値Pinupと、前記無段変速機18において前記最大変速比γmaxを維持するための推力比とから算出される値(Poutup=f(Pinup))が適用される。図5に示す制御によれば、前記動力伝達装置10の前記ベルト走行から前記ギヤ走行への切換時における前記入力側シーブ54の軸方向の移動を抑制することで、前記入力側シーブ54に備えられたセンサの読み取り確保(ガレージ回転速度の算出確保)を実現できる。制御を行うタイミングを、前記無段変速機18の変速比γcvtが最大変速比γmaxとされた時点とすることで、燃費の低下を可及的に抑制できる。
図6は、前記動力伝達装置10の前記ガレージ制御に際して前記電子制御装置60により実行される、本実施例の制御の一例を示すフローチャートであり、繰り返し実行されるものである。
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)SA1において、前記エンジン12が始動させられるか否かが判断される。このSA1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、SA1の判断が肯定される場合には、SA2において、所定のガレージ操作装置によるガレージ操作が行われたか否かが判断される。このSA2の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、SA2の判断が肯定される場合には、SA3において、図示しないアクセルペダルの踏み込みが行われていない状態において、前記ガレージ操作装置による操作に応じて前進走行又は後進走行を行うガレージ制御が開始される。次に、SA4において、前記入力側シーブ54に供給される油圧Pinの目標値Pintgtが規定値Pinupとされると共に、前記出力側シーブ56に供給される油圧Poutの目標値Pouttgtが規定値Poutupとされる。次に、SA5において、前記ガレージ制御が完了させられるか否かが判断される。このSA5の判断が否定される場合には、SA4以下の処理が再び実行されるが、SA5の判断が肯定される場合には、SA6において、前記入力側シーブ54に供給される油圧Pin及び前記入力側シーブ54に供給される油圧Pinがスイープダウンさせられ、それをもって本ルーチンが終了させられる。
図7は、前記動力伝達装置10の前記ギヤ走行から前記ベルト走行への切り換えに際して前記電子制御装置60により実行される、本実施例の制御の一例を示すフローチャートであり、繰り返し実行されるものである。
先ず、SB1において、前記車速V及び前記アクセル開度Accが規定の条件を満たす等して、前記動力伝達装置10において前記ギヤ走行から前記ベルト走行への切り換えが判定されるか否かが判断される。このSB1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、SB1の判断が肯定される場合には、SB2において、前記前進用クラッチC1を解放させると共に前記ベルト走行用クラッチC2を係合させる掛け替え制御が開始される。次に、SB3において、前記入力側シーブ54に供給される油圧Pinの目標値Pintgtが最低圧Pinlimとされると共に、前記出力側シーブ56に供給される油圧Poutの目標値Pouttgtが規定値Poutupとされる。次に、SB4において、前記前進用クラッチC1を解放させると共に前記ベルト走行用クラッチC2を係合させる掛け替え制御が完了させられたか否かが判断される。例えば、前記ベルト走行用クラッチC2の係合圧Pc2が規定値αよりも大きい場合には、前記掛け替え制御が完了させられたと判断される。このSB4の判断が否定される場合には、SB3以下の処理が再び実行されるが、SB4の判断が肯定される場合には、SB5において、前記油圧Pinの目標値Pintgt及び前記油圧Poutの目標値Pouttgtが、前記ベルト走行時における前記無段変速機18の変速比γcvtに応じて制御された後、それをもって本ルーチンが終了させられる。
図8は、前記動力伝達装置10の前記ベルト走行から前記ギヤ走行への切換直前に前記電子制御装置60により実行される、本実施例の制御の一例を示すフローチャートであり、繰り返し実行されるものである。
先ず、SC1において、前記無段変速機18の変速比γcvtが最大変速比γmaxであるか否かが判断される。このSC1の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、SC1の判断が肯定される場合には、SC2において、前記入力側シーブ54に供給される油圧Pinの目標値Pintgtが規定値Pinupとされると共に、前記出力側シーブ56に供給される油圧Poutの目標値Pouttgtが規定値Poutupとされる。次に、SC3において、前記ベルト走行用クラッチC2を解放させると共に前記前進用クラッチC1を係合させる掛け替え制御が完了させられたか否かが判断される。例えば、前記前進用クラッチC1の係合圧Pc1が規定値βよりも大きい場合には、前記掛け替え制御が完了させられたと判断される。このSC3の判断が否定される場合には、SC2以下の処理が再び実行されるが、SC3の判断が肯定される場合には、SC4において、前記油圧Pinの目標値Pintgt及び前記油圧Poutの目標値Pouttgtが、前記ギヤ走行時における値とされた後、それをもって本ルーチンが終了させられる。
以上、図6〜図8を用いて説明した制御において、SA3、SB1、SB2、SB4、SC1、及びSC3が前記切換制御部80の動作に、SA4、SA6、SB3、SB5、SC2、及びSC4が前記無段変速機油圧制御部82の動作に、SA2、SA3、及びSA5が前記ガレージ制御部84の動作に、それぞれ対応する。
本実施例によれば、前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態又は車両停止状態から前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時には、入力側シーブである前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを切換前よりも上昇させる制御、及び、前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態から前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時には、前記入力側シーブ54に供給する油圧Pinを最低圧Pinlimとする制御の少なくとも一方を実行するものであることから、前記ギヤ機構20を介してトルク伝達を行う状態への切換時、及び、前記無段変速機18を介してトルク伝達を行う状態への切換時に、前記入力側シーブ54が軸方向に急速に変位することを好適に抑制できる。すなわち、前記無段変速機18における入力側シーブ54の軸方向変位速度を抑制する動力伝達装置10の電子制御装置60を提供することができる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
10:車両用動力伝達装置、18:ベルト式無段変速機、20:ギヤ機構、24:出力軸、32:入力軸、54:入力側シーブ、56:出力側シーブ
Claims (1)
- 入力軸と出力軸との間の動力伝達経路に、ギヤ機構と、入力側シーブ及び出力側シーブを備えたベルト式無段変速機とが、並列に設けられ、前記入力軸から入力されたトルクを前記ベルト式無段変速機を介して前記出力軸に伝達する第1伝達経路と、前記ギヤ機構を介して前記出力軸に伝達する第2伝達経路とを、選択的に成立させる車両用動力伝達装置において、
前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態又は車両停止状態から前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時には、前記入力側シーブに供給する油圧を切換前よりも上昇させる制御、
及び、前記第2伝達経路によりトルク伝達を行う状態から前記第1伝達経路によりトルク伝達を行う状態への切換時には、前記入力側シーブに供給する油圧を最低圧とする制御の少なくとも一方を実行する
ことを特徴とする制御装置。
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JP2018080763A (ja) * | 2016-11-16 | 2018-05-24 | トヨタ自動車株式会社 | 車両用動力伝達装置の制御装置 |
JP2018105495A (ja) * | 2016-12-28 | 2018-07-05 | トヨタ自動車株式会社 | 車両用動力伝達装置の制御装置 |
JP2019105313A (ja) * | 2017-12-13 | 2019-06-27 | トヨタ自動車株式会社 | 変速機の制御装置 |
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2015
- 2015-01-09 JP JP2015003521A patent/JP2016128714A/ja active Pending
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