JP2016125534A - ディスクブレーキ - Google Patents
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Abstract
【課題】品質を向上させたディスクブレーキを提供する。
【解決手段】ディスクブレーキ1に備えた回転直動変換機構48は、モータ40からの回転によってピストン18に軸方向の推力を付与するボールアンドランプ機構127と、該ボールアンドランプ機構127からの振動を吸収する制振部材である一端側ワッシャ120及び他端側ワッシャ122とを備えているので、ボールアンドランプ機構127からの振動を他端側ワッシャ122によって吸収して、その振動がコイルばね121に伝播するのを抑制することができ、ひいては異音の発生を抑制することができ、品質を向上させることができる。
【選択図】図2
【解決手段】ディスクブレーキ1に備えた回転直動変換機構48は、モータ40からの回転によってピストン18に軸方向の推力を付与するボールアンドランプ機構127と、該ボールアンドランプ機構127からの振動を吸収する制振部材である一端側ワッシャ120及び他端側ワッシャ122とを備えているので、ボールアンドランプ機構127からの振動を他端側ワッシャ122によって吸収して、その振動がコイルばね121に伝播するのを抑制することができ、ひいては異音の発生を抑制することができ、品質を向上させることができる。
【選択図】図2
Description
本発明は、車両の制動に用いられるディスクブレーキに関する。
従来のディスクブレーキには、駐車ブレーキ時等における制動力を得るためにピストンを推進して制動位置に保持させるピストン保持機構が採用されている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1のディスクブレーキでは、ピストン保持機構としてボールアンドランプ機構が採用されているが、特に、駐車ブレーキを解除する際ボールアンドランプ機構から異音が発生しないように構造を工夫する必要があった。
本発明は、品質を向上させたディスクブレーキを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段として、本発明は、ロータを挟んでそのロータ軸方向両側に配置される一対のパッドと、該一対のパッドのうち一方をロータに押し付ける一つのピストンと、該ピストンが移動可能に配置されるシリンダを有するキャリパ本体と、該キャリパ本体に設けられる電動モータと、前記キャリパ本体に設けられ、前記ピストンを推進して制動位置に保持させる回転直動変換機構と、を備えたディスクブレーキにおいて、該回転直動変換機構は、前記電動モータからの回転によって前記ピストンに軸方向の推力を付与するボールアンドランプ機構と、該ボールアンドランプ機構からの振動を吸収する制振部材と、を備えることを特徴とする。
本発明のディスクブレーキによれば、駐車ブレーキの解除等において、異音の発生を抑制でき品質を向上させることができる。
以下、本実施形態を図1乃至図4に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本ディスクブレーキ1には、車両の回転部に取り付けられたディスクロータDを挟んで軸方向両側に配置された一対のインナブレーキパッド2及びアウタブレーキパッド3と、キャリパ4とが設けられている。本ディスクブレーキ1は、キャリパ浮動型として構成されている。なお、一対のインナブレーキパッド2及びアウタブレーキパッド3と、キャリパ4とは、車両のナックル等の非回転部に固定されたブラケット5にディスクロータDの軸方向へ移動可能に支持されている。なお、以下の説明において、説明の便宜上、図1及び図2の右方を一端側として、左方を他端側として適宜説明する。
図1に示すように、本ディスクブレーキ1には、車両の回転部に取り付けられたディスクロータDを挟んで軸方向両側に配置された一対のインナブレーキパッド2及びアウタブレーキパッド3と、キャリパ4とが設けられている。本ディスクブレーキ1は、キャリパ浮動型として構成されている。なお、一対のインナブレーキパッド2及びアウタブレーキパッド3と、キャリパ4とは、車両のナックル等の非回転部に固定されたブラケット5にディスクロータDの軸方向へ移動可能に支持されている。なお、以下の説明において、説明の便宜上、図1及び図2の右方を一端側として、左方を他端側として適宜説明する。
キャリパ4の主体であるキャリパ本体6は、車両内側のインナブレーキパッド2に対向する基端側に配置されるシリンダ部7と、車両外側のアウタブレーキパッド3に対向する先端側に配置される爪部8とを有している。シリンダ部7には、インナブレーキパッド2側が開口される大径開口部9Aとなり、その反対側が孔部10を有する底壁11により閉じられた有底のシリンダ15が形成されている。該シリンダ15内の底壁11側には、大径開口部9Aと連設され該大径開口部9Aよりも小径となる小径開口部9Bが形成される。シリンダ15は、大径開口部9Aの内周面にピストンシール16が配置されている。
図1及び図2に示すように、ピストン18は、底部19と円筒部20となる有底のカップ状に形成される。該ピストン18は、その底部19がインナブレーキパッド2に対向するようにシリンダ15内に収められている。ピストン18は、ピストンシール16に接触した状態で軸方向に移動可能にシリンダ15の大径開口部9Aに内装されている。このピストン18とシリンダ15の底壁11との間は、液圧室21としてピストンシール16により画成されている。この液圧室21には、シリンダ部7に設けた図示しないポートを通じて、マスタシリンダや液圧制御ユニットなどの図示しない液圧源から液圧が供給されるようになっている。ピストン18の内周面には、周方向に沿って複数の回転規制用縦溝22が形成される。本実施形態では、回転規制用縦溝22は周方向に沿って12箇所形成される(図3参照)。
ピストン18の底部19の、インナブレーキパッド2に対向する他端面の外周側に凹部25が設けられている。この凹部25は、インナブレーキパッド2の背面に形成されている凸部26が係合している。この係合によってピストン18はシリンダ15、ひいてはキャリパ本体6に対して回り止めされている。また、ピストン18の底部19の外周面と、シリンダ15の大径開口部9Aの内周面との間には、該シリンダ15内への異物の進入を防ぐダストブーツ27が介装されている。ピストン18の底部19の、後述する回転直動変換機構43と対向する一端面は、その径方向中央部に設けた円形状平面部30と、該円形状平面部30から連続してピストン18の内周面に向かって一端側へ拡径するように延びる環状テーパ部31とが形成される。
図1に示すように、キャリパ本体6のシリンダ15の底壁11側には気密的にハウジング35が取り付けられている。該ハウジング35の一端開口には気密的にカバー36が取り付けられている。なお、ハウジング35とシリンダ部7とはシール部材37によって気密性が保持されている。また、ハウジング35とカバー36とはシール部材38によって気密性が保持されている。ハウジング35には、キャリパ本体6と並ぶように、電動モータの一例であるモータ40がシール部材41を介して密閉的に取り付けられている。なお、本実施形態では、モータ40をハウジング35の外側に配置したが、モータ40を覆うようにハウジング35を形成し、ハウジング35内にモータ40を収容してもよい。この場合、シール部材41が不要となり、組み付け工数の低減を図ることが可能となる。
キャリパ本体6には、ピストン18を推進すると共に推進したピストン18を制動位置に保持する回転直動変換機構43と、モータ40による駆動力を増強する平歯多段減速機構44及び遊星歯車減速機構45とが備えられている。平歯多段減速機構44及び遊星歯車減速機構45は、ハウジング35内に収納されている。
回転直動変換機構43は、平歯多段減速機構44及び遊星歯車減速機構45からの回転運動、すなわちモータ40の回転を直線方向の運動(以下、便宜上直動という)に変換し、ピストン18に推力を付与して、該ピストン18を制動位置で保持するものである。該回転直動変換機構43は、平歯多段減速機構44及び遊星歯車減速機構45からの回転運動が伝達されて回転可能に支持されるベースナット75と、該ベースナット75の雌ねじ部97にねじ嵌合され、回転可能に、且つ直動可能に支持されるプッシュロッド102と、該プッシュロッド102にねじ嵌合されて、該プッシュロッド102の回転によってピストン18へ軸方向への推力を付与するボールアンドランプ機構127と、該ボールアンドランプ機構127からの振動を吸収する制振部材としての一端側ワッシャ120及び他端側ワッシャ122とを備えて構成される。該回転直動変換機構43は、キャリパ本体6のシリンダ15とピストン18との間に収納される。
なお、本実施形態においては、ピストン18を推進する回転力を得るために、モータ40による駆動力を増強する減速機構としての平歯多段減速機構44及び遊星歯車減速機構45を設けているが、これらは必ずしも設ける必要はない。すなわち、モータ40がピストン18を推進するための回転力を出力できるものであれば、いずれか一方、または両方の減速機構は省略することが可能となっている。
平歯多段減速機構44は、ピニオンギヤ46と、第1減速歯車47と、第2減速歯車48とを有している。ピニオンギヤ46は円筒状に形成されており、モータ40の回転軸40Aに圧入固定される孔部50と、外周面に形成される歯車51とを有している。第1減速歯車47は、ピニオンギヤ46の歯車51に噛合する大径の大歯車53と、大歯車53から軸方向に延出して形成される小径の小歯車54とが一体的に形成されている。この第1減速歯車47は、一端がハウジング35に支持されると共に他端がカバー36に支持されたシャフト55により回転可能に支持される。第2減速歯車48は、第1減速歯車47の小歯車54に噛合する大径の大歯車56と、大歯車56から軸方向に延出して形成される小径のサンギヤ57とが一体形成されている。サンギヤ57は後述する遊星歯車減速機構45の一部を構成している。この第2減速歯車48は、カバー36に支持されたシャフト58により回転可能に支持される。
遊星歯車減速機構45は、サンギヤ57と、複数個(本実施形態では3個)のプラネタリギヤ60と、インターナルギヤ61と、キャリア62とを有する。プラネタリギヤ60は、第2減速歯車48のサンギヤ57に噛合される歯車63と、キャリア62から立設されるピン65を挿通する孔部64とを有している。3個のプラネタリギヤ60は、キャリア62の円周上に等間隔に配置される。
キャリア62は、円板状に形成され、その径方向中心には、後述するベースナット75の多角形柱81が嵌合する多角形孔68が形成される。該キャリア62の多角形孔68に、ベースナット75の円柱部76の先端から連続して設けた多角形柱81が嵌合することで、キャリア62とベースナット75の間で互いに回転トルクを伝達できるようになっている。キャリア62の外周側には複数のピン用孔69が形成されている。該各ピン用孔69に、各プラネタリギヤ60を回転可能に支持するピン65が圧入固定されている。該キャリア62及び各プラネタリギヤ60は、ハウジング35の開口部35A周辺から一端側に突設した壁面35Bと、インターナルギヤ61の第2減速歯車48側に一体的に設けた環状壁部72とにより軸方向の移動が規制されている。なお、本実施形態では、キャリア62に設けた多角形孔68によりベースナット75との相対的な回転を規制しているが、スプラインやキー等回転トルクを伝達できる機械要素を採用してもよい。
インターナルギヤ61は、各プラネタリギヤ60の歯車63がそれぞれ噛合する内歯71と、この内歯71から連続して第2減速歯車48側に一体的に設けられてプラネタリギヤ60の軸方向の移動を規制する環状壁部72とから形成されている。該インターナルギヤ61は、ハウジング35内に圧入固定されるようになっている。
図2及び図3に示すように、ベースナット75は、円柱部76と、該円柱部76の他端部に一体的に設けられるナット部77とから構成される。シリンダ15の底壁11にはワッシャ80が当接するように配置されている。ベースナット75の円柱部76は、ワッシャ80の挿通孔80A及びシリンダ15の底壁11に設けた孔部10のそれぞれに挿通される。該円柱部76の先端には多角形柱81が一体的に接続されている。該多角形柱81がハウジング35の開口部35Aを挿通してキャリア62の多角形孔68に嵌合される。ベースナット75のナット部77は有底円筒状に形成される。該ナット部77は、円形状壁部82と、該円形状壁部82の他端面から一体的に突設される円筒部83とから構成される。円形状壁部82の外周面がシリンダ15の小径開口部9Bの内壁面に近接する。円形状壁部82の一端面の径方向中央部から小径円形状壁部84が突設される。該小径円形状壁部84の一端面から円柱部76が一端側に向かって突設される。円柱部76の外径は、ナット部77の円筒部83の外径よりも小径に形成される。
ベースナット75のナット部77の小径円形状壁部84周りの円形状壁部82とワッシャ80との間にスラストベアリング87が配置される。そして、ベースナット75はスラストベアリング87により回転自在にシリンダ15の底壁11に支持される。ベースナット75の円柱部76の外周面とシリンダ15の底壁11の孔部10との間にはシール部材88及びスリーブ89が設けられる。これにより、液圧室21の液密性が保持される。ベースナット75の円柱部76と多角形柱81との間に設けた環状溝に止め輪90が装着されており、該止め輪90によりベースナット75のシリンダ15の軸方向への移動が規制される。
ベースナット75のナット部77の円筒部83は、一端側に配置される大径円筒部91と、他端側に配置される小径円筒部92とが一体的に接続されて構成される。大径円筒部91の内径と小径円筒部92の内径とは同一である。大径円筒部91の一端が円形状壁部82に一体的に接続される。大径円筒部91の外周面と小径円筒部92の外周面との間の他端側を向く環状段差面93は複数の凹凸部94を有する波状に形成される。大径円筒部91の周壁部には径方向に延びる貫通孔95が複数形成される。貫通孔95は周方向に間隔を置いて複数形成される。ナット部77の小径円筒部92の内周面に雌ねじ部97が形成される。小径円筒部92の周壁部の他端面には、周方向に間隔を置いて複数の係止溝98がそれぞれ形成される。本実施形態では、係止溝98は4箇所形成される。
ベースナット75の小径円筒部92の各係止溝98のいずれかに、一方向へ回転に対して回転抵抗トルクを付与する第1スプリングクラッチ100の先端部100Aが嵌合される。該第1スプリングクラッチ100は、径方向外方に向いた先端部100Aと、該先端部100Aから一重に巻かれたコイル部100Bとからなる。そして、第1スプリングクラッチ100の先端部100Aがベースナット75の小径円筒部92の各係止溝98のいずれかに嵌合され、コイル部100Bが後述するプッシュロッド102の第1の雄ねじ部103の他端側外周に巻き付けられる。該第1スプリングクラッチ100は、プッシュロッド102がベースナット75に対してシリンダ15の底壁11側へ移動するときの回転方向(リリース時の回転方向)に対して回転抵抗トルクを付与する一方、プッシュロッド102がベースナット75に対してピストン18の底部19側に移動するときの回転方向(アプライ時の回転方向)への回転は許容するように構成されている。
ベースナット75のナット部77内にプッシュロッド102の一端側が挿入される。プッシュロッド102の一端側には、ベースナット75の小径円筒部92の雌ねじ部97にねじ嵌合される第1の雄ねじ部103が形成される。該プッシュロッド102の第1の雄ねじ部103とベースナット75の小径円筒部92の雌ねじ部97と間の第1のねじ嵌合部105は、ピストン18からプッシュロッド102への軸方向荷重によってベースナット75が回転しないように、その逆効率が0以下になるように、すなわち、不可逆性が大きなねじ嵌合部として構成されている。
一方、プッシュロッド102の他端側には、後述するボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151に設けた雌ねじ部162にねじ嵌合する第2の雄ねじ部104が形成される。ここでも、プッシュロッド102の第2の雄ねじ部104と回転直動ランプ151に設けた雌ねじ部162との間の第2のねじ嵌合部106は、ピストン18から回転直動ランプ151への軸方向荷重によってプッシュロッド102が回転しないように、その逆効率が0以下になるように、すなわち、不可逆性が大きなねじ嵌合部として構成されている。
プッシュロッド102は、第1の雄ねじ部103と第2の雄ねじ部104との間にスプライン軸108が設けられる。第1の雄ねじ部103の外径は、第2の雄ねじ部104の外径よりも大径に形成される。第1の雄ねじ部103の外径は、スプライン軸108の外径よりも大径に形成される。プッシュロッド102の他端面は、ピストン18の底部19の円形状平面部30に対向する。
ベースナット75のナット部77を構成する円筒部84の小径円筒部92の外周面と、ピストン18の円筒部20の内周面との間にカバー110が軸方向に移動自在に支持される。カバー110は、一端側に円環状壁部111を有し、全体が略円筒状に構成される。円環状壁部111の一端面には周方向に沿って間隔を置いて複数の凸部112が形成される。カバー110の外周面の一端側には凹状面113が形成される。カバー110の凹状面113を含む外周壁には複数の円形状貫通孔114が形成される。本実施形態では、円形状貫通孔114は、凹状面113の範囲に周方向に間隔を置いて3箇所形成され、凹状面113以外の他端側の外周壁にも周方向に間隔を置いて3箇所形成される。カバー110の外周壁で凹状面113の範囲に複数の矩形状貫通孔115が形成される。本実施形態では、矩形状貫通孔115は、周方向に間隔を置いて3箇所形成される。
カバー110内には、一端側から順に、一端側ワッシャ120、コイルばね121、他端側ワッシャ122、支持プレート123、第2スプリングクラッチ124、回転部材125、スラストベアリング126、ボールアンドランプ機構127、スラストベアリング128及び環状押圧プレート129が配置されている。一端側ワッシャ120はカバー110の円環状壁部111の他端面に当接するように配置される。一端側ワッシャ120は、制振合金で構成されて制振部材として機能するものである。一方、他端側ワッシャ122は支持プレート123に当接するように配置される。他端側ワッシャ122も制振合金で構成されて制振部材として機能するものである。ここで、制振合金とは、固体表面の振動の振動エネルギーを熱エネルギーに変換し、固体表面の振動を小さくするための合金を示す。制振合金の組成は特に限定されるものではないが、FeAl、FeCoのうち、少なくとも一方を含む合金であることが好ましい。また、磁歪効果を有する合金であることが好ましい。なお、本実施形態では、一端側ワッシャ120及び他端側ワッシャ122は制振合金で構成されるが、合成樹脂製からなるシート材を採用してもよい。
一端側ワッシャ120と他端側ワッシャ122との間にコイルばね121が介装される。該コイルばね121は一端側ワッシャ120と他端側ワッシャ122とを離間させる方向に付勢している。カバー110の周壁部の他端面には所定深さの係止溝132が周方向に間隔を置いて複数形成される。係止溝132は本実施形態では3箇所形成される。係止溝132は、カバー110の一端側に位置する幅狭係止溝133と、他端側に位置する幅広係止溝134とから構成される。幅広係止溝134の深さ寸法が幅狭係止溝133の深さ寸法よりも大きく形成される。カバー110の他端部には、ピストン18の底部19に向かう複数のツメ部136が形成されている。カバー110内に、一端側ワッシャ120、コイルばね121、他端側ワッシャ122、支持プレート123、第2スプリングクラッチ124、回転部材125、スラストベアリング126、ボールアンドランプ機構127、スラストベアリング128及び環状押圧プレート129を収容した後、カバー110の各ツメ部136を後述する環状押圧プレート129の収容凹部171に向かって折り込むことで、上述した構成部材をカバー110内に一体的に配置してアッシ化することができる。
他端側ワッシャ122の他端面に環状の支持プレート123が当接するように配置される。該支持プレート123の外周面には周方向に沿って間隔を置いて複数の突起片137が設けられる。本実施形態では突起片137は3箇所形成される。この支持プレート123の各突起片137が、カバー110の幅狭係止溝133とピストン18の内周面に設けた回転規制用縦溝22とにそれぞれ嵌合される。この結果、カバー110は、一端側ワッシャ120、コイルばね121、他端側ワッシャ122及び支持プレート123と共に、ピストン18に対して相対回転不能に、且つ軸方向へ相対移動可能に支持される。
カバー110内において、支持プレート123の他端側には回転部材125が回転自在に支持される。該回転部材125は、スプライン孔140を有する大径円環状部141と、大径円環状部141の一端面から一体的に突設される小径円筒状部142とから構成される。小径円筒状部142の一端部が支持プレート123の他端面に当接される。小径円筒状部142の外周面には環状溝143が形成される。回転部材125内にプッシュロッド102が挿通されて、回転部材125の大径円環状部141のスプライン孔140と、プッシュロッド102のスプライン軸108とがスプライン結合される。これにより、回転部材125とプッシュロッド102とは、相互の回転トルクが伝達されるようになる。
回転部材125の小径円筒状部142に設けた環状溝143に一方向の回転に対して回転抵抗トルクを付与する第2スプリングクラッチ124が巻回される。該第2スプリングクラッチ124は、第1スプリングクラッチ100と同様に、径方向外方に向いた先端部124Aと、該先端部124Aから一重に巻かれたコイル部124Bとからなる。そして、第2スプリングクラッチ124の先端部124Aがカバー110の幅狭係止溝133に嵌合され、コイル部124Bが回転部材125の小径円筒状部142の外周面に設けた環状溝143に巻き付けられる。該第2スプリングクラッチ124は、回転部材125(プッシュロッド102)がカバー110に対してピストン18の底部19側へ移動するときの回転方向(アプライ時の回転方向)に対して回転抵抗トルクを付与する一方、シリンダ15の底壁11側に移動するときの回転方向(リリース時の回転方向)への回転は許容するように構成されている。
なお、第2スプリングクラッチ124のアプライ時における回転抵抗トルクは、プッシュロッド102の第1の雄ねじ部103とベースナット75の雌ねじ部97との間の第1のねじ嵌合部105の回転抵抗トルクよりも大きくなるように設定される。該回転部材125の他端側にはスラストベアリング126を介してボールアンドランプ機構127が配置される。該回転部材125はボールアンドランプ機構127に対してスラストベアリング126を介して回転自在に支持される。
図2及び図3に示すように、ボールアンドランプ機構127は、固定ランプ150と、回転直動ランプ151と、固定ランプ150と回転直動ランプ151との間に介装される各ボール152とを備えている。固定ランプ150は回転部材125の他端側にスラストベアリング126を介して配置される。固定ランプ150は、円板状の固定プレート154と、該固定プレート154の外周面から周方向に沿って間隔を置いて複数突設された凸部155とから構成される。本実施形態では凸部155は3箇所形成される。固定プレート154の径方向中央には、プッシュロッド102が挿通される挿通孔156が形成される。固定ランプ150は、その各凸部155が、カバー110の各係止溝132の幅広係止溝134に嵌合されると共にピストン18の内周面に設けた複数の回転規制用縦溝22に嵌合することでピストン18に対して相対回転不能に、且つ軸方向に移動自在に支持される。
なお、固定ランプ150の外周面に周方向に間隔を置いて複数の平面部を形成して、ピストン18の内周面にも固定ランプ150の各平面部に対応する複数の平面部を形成して、これらの各平面部を当接させることでピストン18に対する固定ランプ150の回転を規制するように構成してもよい。固定プレート154の他端面には、周方向に沿って所定の傾斜角を有して円弧状に延びるとともに径方向において円弧状断面を有する複数、本実施形態においては3つのボール溝157が形成されている。
回転直動ランプ151は、円環状の回転直動プレート160と、該回転直動プレート160の他端面の径方向中央部分から一体的に突設される円筒部161とから構成される。回転直動プレート160から円筒部161に至る内周面には、プッシュロッド102の第2の雄ねじ部104がねじ嵌合される雌ねじ部162が形成される。回転直動プレート160の、固定ランプ150の固定プレート154との対向面には、周方向に沿って所定の傾斜角を有して円弧状に延びるとともに径方向において円弧状断面を有する複数、本実施形態においては3つのボール溝163が形成されている。なお、固定ランプ150の各ボール溝157、及び回転直動ランプ151の各ボール溝163は、周方向に沿った傾斜の途中に窪みを付けたり、傾斜を途中で変化させて構成するようにしても良い。
ボール152は、回転直動ランプ151(回転直動プレート160)の各ボール溝163と、固定ランプ150(固定プレート154)の各ボール溝157との間にそれぞれ介装されている。そして、回転直動ランプ151に回転トルクを加えると、回転直動プレート160の各ボール溝163と固定プレート154の各ボール溝157との間の各ボール152が転動することで、回転直動プレート160と固定プレート154との間の回転差により、回転直動プレート160と固定プレート154との間の軸方向の相対距離が変動するようになっている。
また、回転直動プレート160の他端面で円筒部161の周りには、環状ボール溝164が形成される。回転直動プレート160の他端側にはスラストベアリング128を介して環状押圧プレート129が配置される。環状押圧プレート129の一端面にも環状ボール溝166が形成される。そして、回転直動プレート160の環状ボール溝164と環状押圧プレート129の環状ボール溝166との間に、周方向に複数のボールが回転自在に支持されるスラストベアリング128が配置される。回転直動プレート160の円筒部161は環状押圧プレート129内に挿通される。環状押圧プレート129の外周面には、周方向に沿って間隔を置いて複数突設された凸部168が形成される。環状押圧プレート129は、その各凸部168が、カバー110の各係止溝132の幅広係止溝134に嵌合されると共にピストン18の内周面に設けた複数の回転規制用縦溝22に嵌合することでピストン18に対して相対回転不能に、且つ軸方向に移動自在に支持される。
ボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151はスラストベアリング128を介して回転自在に環状押圧プレート129により支持される。環状押圧プレート129の他端面がピストン18の底部19の環状テーパ部31と対向する。環状押圧プレート129の他端面には、径方向中心から外周端部に向かって一端側に湾曲する湾曲状押圧部170が形成される。この環状押圧プレート129が、ピストン18の底部19に設けた環状テーパ部31に当接して、該ピストン18を押圧するように構成される。環状押圧プレート129の他端面には、各凸部168間の外周部に、カバー110の、内方に折り込まれた各ツメ部136を収容する収容凹部171がそれぞれ形成される。
プッシュロッド102の第2の雄ねじ部104の先端にはストッパリング172が一体的に固定される。該ストッパリング172は回転直動ランプ151の円筒部161内に配置される。なお、プッシュロッド102の第2の雄ねじ部104とボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151の雌ねじ部162との間の第2のねじ嵌合部106の回転抵抗トルクは、第1スプリングクラッチ100によるベースナット75に対するプッシュロッド102のリリース方向への回転抵抗トルクに、プッシュロッド102の第1の雄ねじ部103とベースナット75の雌ねじ部97との間の第1のねじ嵌合部105の回転抵抗トルクを加えた回転抵抗トルクよりもが小さくなるように設定される。
図1に示すように、モータ40には、該モータ40を駆動制御する制御手段である電子制御装置からなるECU175が接続されている。ECU175には、駐車ブレーキの作動・解除を指示すべく操作されるパーキングスイッチ176が接続されている。また、ECU175には、図示しない車両側からの信号に基づきパーキングスイッチ176の操作によらずに作動することもできる。
次に、本実施形態に係るディスクブレーキ1の作用を説明する。
まず、ブレーキペダル(図示略)の操作による通常の液圧ブレーキとしてのディスクブレーキ1の制動時における作用を説明する。
運転者によりブレーキペダルが踏み込まれると、ブレーキペダルの踏力に応じた液圧がマスタシリンダから液圧回路(共に図示略)を経てキャリパ4内の液圧室21に供給される。これにより、ピストン18がピストンシール16を弾性変形させながら非制動時の原位置から前進(図1の左方向に移動)してインナブレーキパッド2をディスクロータDに押し付ける。そして、キャリパ本体6は、ピストン18の押圧力の反力によりブラケット5に対して図1における右方向に移動して、爪部8に取り付けられたアウタブレーキパッド3をディスクロータDに押し付ける。この結果、ディスクロータDが一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3により挟みつけられて摩擦力が発生し、ひいては、車両の制動力が発生することになる。
まず、ブレーキペダル(図示略)の操作による通常の液圧ブレーキとしてのディスクブレーキ1の制動時における作用を説明する。
運転者によりブレーキペダルが踏み込まれると、ブレーキペダルの踏力に応じた液圧がマスタシリンダから液圧回路(共に図示略)を経てキャリパ4内の液圧室21に供給される。これにより、ピストン18がピストンシール16を弾性変形させながら非制動時の原位置から前進(図1の左方向に移動)してインナブレーキパッド2をディスクロータDに押し付ける。そして、キャリパ本体6は、ピストン18の押圧力の反力によりブラケット5に対して図1における右方向に移動して、爪部8に取り付けられたアウタブレーキパッド3をディスクロータDに押し付ける。この結果、ディスクロータDが一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3により挟みつけられて摩擦力が発生し、ひいては、車両の制動力が発生することになる。
そして、運転者がブレーキペダルを解放すると、マスタシリンダからの液圧の供給が途絶えて液圧室21内の液圧が低下する。これにより、ピストン18は、ピストンシール16の弾性変形の復元力によって原位置まで後退して制動力が解除される。ちなみに、インナ及びアウタブレーキパッド2、3の摩耗に伴いピストン18の移動量が増大してピストンシール16の弾性変形の限界を越えると、ピストン18とピストンシール16との間に滑りが生じる。この滑りによってキャリパ本体6に対するピストン18の原位置が移動して、パッドクリアランスが一定に調整されるようになっている。
次に、車両の停止状態を維持するための作用の一例である駐車ブレーキとしての作用を説明する。
まず、駐車ブレーキの解除状態からパーキングスイッチ176が操作されて駐車ブレーキを作動(アプライ)させる際には、ECU175は、モータ40を駆動させて、平歯多段減速機構44を介して遊星歯車減速機構45のサンギヤ57を回転させる。このサンギヤ57の回転により、各プラネタリギヤ60を介してキャリア62が回転する。そして、キャリア62からの回転トルクがベースナット75に伝達される。
まず、駐車ブレーキの解除状態からパーキングスイッチ176が操作されて駐車ブレーキを作動(アプライ)させる際には、ECU175は、モータ40を駆動させて、平歯多段減速機構44を介して遊星歯車減速機構45のサンギヤ57を回転させる。このサンギヤ57の回転により、各プラネタリギヤ60を介してキャリア62が回転する。そして、キャリア62からの回転トルクがベースナット75に伝達される。
次に、第2スプリングクラッチ124による回転部材125(プッシュロッド102)のカバー110に対するアプライ方向への回転抵抗トルクが、プッシュロッド102の第1の雄ねじ部103とベースナット75の雌ねじ部97との間の第1のねじ嵌合部105による回転抵抗トルクよりも大きくなるように設定されており。これにより、第1スプリングクラッチ100による、プッシュロッド102のベースナット75に対するアプライ方向への回転が許容される。このため、環状押圧プレート129とピストン18の底部19との間が所定の隙間を有する初期位置から、ベースナット75のアプライ方向への回転により、ベースナット75の雌ねじ部97とプッシュロッド102の第1の雄ねじ部103との間の第1のねじ嵌合部105が相対的に回転、すなわちベースナット75だけがアプライ方向に回転する一方、プッシュロッド102が軸方向に沿ってピストン18の底部19側に向かって前進する。
その結果、プッシュロッド102と共にカバー110を含むカバー110内の一端側ワッシャ120、コイルばね121、他端側ワッシャ122、支持プレート123、第2スプリングクラッチ124、回転部材125、スラストベアリング126、ボールアンドランプ機構127、スラストベアリング128及び環状押圧プレート129の各構成部材が一体となって軸方向に沿ってピストン18の底部19側に向かって前進する。これら構成部品の前進によって、環状押圧プレート129の湾曲状押圧部170がピストン18の底部19の環状テーパ部31に当接して、ピストン18が前進してピストン18の底部19の一端面がインナブレーキパッド2に当接する。
さらにモータ40のアプライ方向への回転駆動が継続されると、ピストン18は、プッシュロッド102の移動によりブレーキパッド2、3を介してディスクロータDを押圧し始める。この押圧力が発生し始めると、今度は、その押圧力に対する反力となる軸力によってプッシュロッド102の第1の雄ねじ部103とベースナット75の雌ねじ部97との間の第1のねじ嵌合部105における回転抵抗トルクが増大して、プッシュロッド102を前進させるための必要回転トルクが増大していく。そして、必要回転トルクである第1のねじ嵌合部105の回転抵抗トルクが、第2スプリングクラッチ124の回転抵抗トルクよりも大きくなる。この結果、ベースナット75の回転に伴ってプッシュロッド102が回転部材125と共にアプライ方向へ回転し始める。すると、ディスクロータDの押圧力からの反力によりプッシュロッド102の第2の雄ねじ部104とボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151の雌ねじ部162との間の第2のねじ嵌合部106における回転抵抗トルクもディスクロータDの押圧力の反力により増大しているために、プッシュロッド102のアプライ方向への回転トルクが第2のねじ嵌合部106を介してボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151に伝達される。
そして、ボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151がアプライ方向に回転しながら各ボール152の転動により回転直動ランプ151と固定ランプ150とがコイルばね121の付勢力に抗して離間することで、環状押圧プレート129の湾曲状押圧部170がピストン18の底部19の環状テーパ部31をさらに押圧する。これにより、インナ及びアウタブレーキパッド2、3によるディスクロータDを押圧力が増大する。この時、ピストン18の底部19には、第1のねじ嵌合部105で発生する推力及び第2のねじ嵌合部106で発生する推力に、ボールアンドランプ機構127で発生する推力を加えたものが付与される。
なお、本実施形態では、最初に、プッシュロッド102の第1の雄ねじ部103とベースナット75の雌ねじ部97との間の第1のねじ嵌合部105が相対回転してプッシュロッド102が前進してピストン18を前進させてディスクロータDへの押圧力を得る。このため、第1のねじ嵌合部105の作動により一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3の経時的な摩耗によって変化するピストン18に対するプッシュロッド102の原位置を調整することができる。
そして、ECU175は、一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3からディスクロータDへの押圧力が所定値に到達するまで、例えば、モータ40の電流値が所定値に達するまでモータ40を駆動する。その後、ECU175は、ディスクロータDへの押圧力が所定値に到達したことをモータ40の電流値が所定値に達したことによって検出すると、モータ40への通電を停止する。すると、プッシュロッド102のアプライ方向への回転が停止されるのでボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151の回転が停止され、回転直動ランプ151の各ボール溝163と固定ランプ154の各ボール溝157との間の各ボール152の転動作用によるピストン18への推力付与がなくなる。
その後は、回転直動ランプ151には、ディスクロータDからの押圧力の反力が作用するが、プッシュロッド102の第2の雄ねじ部104とボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151の雌ねじ部162との間の第2のねじ嵌合部106は、上述したようにプッシュロッド102と回転直動ランプ151との間で逆作動しないねじ嵌合部として構成され、また、プッシュロッド102の第1の雄ねじ部103とベースナット75の雌ねじ部97との間の第1のねじ嵌合部105も、上述したようにプッシュロッド102とベースナット75との間で逆作動しないねじ嵌合部で構成され、さらには、第1スプリングクラッチ100により、プッシュロッド102にはベースナット75に対してリリース方向への回転抵抗トルクが付与されているので、ボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151は回転せずに停止状態が維持されて、ピストン18が制動位置に保持される。これにより、制動力の保持がなされて駐車ブレーキの作動が完了する。この状態において、ディスクロータDからの押圧力の反力が、ボールアンドランプ機構127、プッシュロッド102、ベースナット75及びスラストベアリング87を介してシリンダ15の底壁11に伝達されてピストン18の保持力となっている。本実施形態においては、比較的小径のものを使用せざるを得ないスラストベアリング126には、上記ピストン18の保持力が作用しないため、本ディスクブレーキ1の耐久性が向上するようになっている。
次に、駐車ブレーキを解除(リリース)する際には、パーキングスイッチ176のパーキング解除操作に基づいて、ECU175は、ピストン18を戻す、すなわちピストン18をディスクロータDから離間させるリリース方向にモータ40を回転駆動する。これにより、平歯多段減速機構44及び遊星歯車減速機構45がピストン18を戻すリリース方向へ回転駆動して、キャリア62を介してベースナット75へその回転駆動が伝達される。
このとき、プッシュロッド102にはディスクロータDからの押圧力の反力が作用している、言い換えれば、プッシュロッド102には、プッシュロッド102の第2の雄ねじ部104とボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151の雌ねじ部162との間の第2のねじ嵌合部106の回転抵抗トルクと、プッシュロッド102の第1の雄ねじ部103とベースナット75の雌ねじ部97との間の第1のねじ嵌合部105の回転抵抗トルクと、第1スプリングクラッチ100による、プッシュロッド102のベースナット75に対するリリース方向への回転抵抗トルクとが付与されている。このため、ベースナット75からのリリース方向の回転トルクは、プッシュロッド102(回転部材125含む)に伝達されると共にボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151に伝達される。その結果、回転直動ランプ151はリリース方向に回転だけして、回転方向の初期位置まで戻る(軸方向の移動はせず軸方向の位置はそのまま)。
次に、プッシュロッド102への反力が減少して、プッシュロッド102の第2の雄ねじ部104とボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151の雌ねじ部162との間の第2のねじ嵌合部106の回転抵抗トルクが、第1スプリングクラッチ100によるベースナット75に対するプッシュロッド102のリリース方向への回転抵抗トルクに、プッシュロッド102の第1の雄ねじ部103とベースナット75の雌ねじ部97との間の第1のねじ嵌合部105の回転抵抗トルクを加えた回転抵抗トルクよりもが小さくなる。すると、まず第2のねじ嵌合部106だけが相対回転して、ボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151がカバー110と共に軸方向に沿ってシリンダ15の底壁11側(リリース方向)に移動して軸方向の初期位置に戻る。
このとき、ボールアンドランプ機構127からの振動、すなわちボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151と固定ランプ150とが相対回転して各ボール152が各ボール溝163、157を転動することにより発生する振動(衝突音)を他端側ワッシャ122により吸収してコイルばね121にその振動が伝播するのを抑制して、ひいてはボールアンドランプ機構127からの異音の発生を抑制している。また、僅かな振動がコイルばね121に伝播されたとしても、一端側ワッシャ120によってその振動を吸収して、振動がカバー110等他の構成部材に伝播されるのを抑制するようにしている。
さらにモータ40がリリース方向へ回転駆動されて、ベースナット75のリリース方向への回転が継続されると、ボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151が回転方向及び軸方向共に初期位置に戻った後、プッシュロッド102の第2の雄ねじ部104とボールアンドランプ機構127の回転直動ランプ151の雌ねじ部162との間の第2のねじ嵌合部106の螺合位置が初期位置まで戻り、プッシュロッド102のリリース方向への回転が停止される。さらにベースナット75のリリース方向への回転が継続されると、プッシュロッド102が、第1スプリングクラッチ100によるベースナット75に対するプッシュロッド102のリリース方向への回転抵抗トルクに抗して、軸方向に沿ってシリンダ15の底壁11側(リリース方向)に向かって後退する。その結果、プッシュロッド102と共にカバー110を含むカバー110内の一端側ワッシャ120、コイルばね121、他端側ワッシャ122、支持プレート123、第2スプリングクラッチ124、回転部材125、スラストベアリング126、ボールアンドランプ機構127、スラストベアリング128及び環状押圧プレート129の各構成部材が一体となって軸方向に沿ってシリンダ15の底壁11側(リリース方向)に向かって後退する。そして、ECU175は、回転直動ランプ151の環状押圧プレート129とピストン18の底部19の環状テーパ部31との間が所定の隙間を有する初期位置に到達した時点でモータ40を停止させるように制御している。最終的に、ピストン18は、ピストンシール16の弾性変形の復元力によって原位置まで後退して制動力が完全に解除される。
以上のように、本実施形態に係るディスクブレーキ1では、ボールアンドランプ機構127の固定ランプ150とカバー110の円環状壁部111との間にコイルばね121を配置して、制振部材としての他端側ワッシャ122をボールアンドランプ機構127の固定ランプ150とコイルばね121との間に配置しているので、ボールアンドランプ機構127からの振動(衝突音)を他端側ワッシャ122によって吸収してコイルばね121に伝播するのを抑制することができ、ひいては異音の発生を抑制することができる。
また、本実施形態に係るディスクブレーキ1では、コイルばね121とカバー110の円環状壁部111との間にも制振部材としての一端側ワッシャ120を配置しているので、僅かな振動がボールアンドランプ機構127からコイルばね121に伝播されたとしても、一端側ワッシャ120によってコイルばね121からカバー110等他の構成部材に伝播されるのを抑制することができる。
なお、本実施形態に係るディスクブレーキ1では、コイルばね121の軸方向両側に一端側ワッシャ120と他端側ワッシャ122とをそれぞれ配置したが、図4に示すように、ボールアンドランプ機構127側の、支持プレート123とコイルばね121との間のみに他端側ワッシャ122を配置する形態を採用してもよい。また、本実施形態に係るディスクブレーキ1では、ボールアンドランプ機構127からの振動が伝達される他端側ワッシャ122及び一端側ワッシャ120を制振部材として構成しているが、ボールアンドランプ機構127からの振動が伝達される主要な構成部材としてのコイルばね121やカバー110を制振部材として構成して、これらを制振合金で構成するようにしてもよい。
1 ディスクブレーキ,2 インナブレーキパッド,3 アウタブレーキパッド,4 キャリパ,6 キャリパ本体,7 シリンダ部,15 シリンダ,18 ピストン,40 モータ(電動モータ),43 回転直動変換機構,110 カバー,120 一端側ワッシャ(制振部材),121 コイルばね(スプリング),122 他端側ワッシャ(制振部材),127 ボールアンドランプ機構,150 固定ランプ,151 回転直動ランプ,152 ボール,D ディスクロータ
Claims (3)
- ロータを挟んでそのロータ軸方向両側に配置される一対のパッドと、
該一対のパッドのうち一方をロータに押し付ける一つのピストンと、
該ピストンが移動可能に配置されるシリンダを有するキャリパ本体と、
該キャリパ本体に設けられる電動モータと、
前記キャリパ本体に設けられ、前記ピストンを推進して制動位置に保持させる回転直動変換機構と、を備えたディスクブレーキにおいて、
該回転直動変換機構は、
前記電動モータからの回転によって前記ピストンに軸方向の推力を付与するボールアンドランプ機構と、
該ボールアンドランプ機構からの振動を吸収する制振部材と、
を備えることを特徴とするディスクブレーキ。 - 前記ボールアンドランプ機構を覆うようにカバーが配置され、
前記ボールアンドランプ機構と前記カバーとの間にスプリングが配置され、
前記制振部材は、前記ボールアンドランプ機構と前記スプリングとの間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。 - 前記制振部材は制振合金で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のディスクブレーキ。
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