図1はこの発明にかかる剥離装置の一実施形態を示す斜視図である。各図における方向を統一的に示すために、図1右下に示すようにXYZ直交座標軸を設定する。ここでXY平面が水平面、Z軸が鉛直軸を表す。より詳しくは、(+Z)方向が鉛直上向き方向を表している。
この剥離装置1は、主面同士が互いに密着した状態で搬入される2枚の板状体を剥離させるための装置である。例えばガラス基板や半導体基板等の基板の表面に所定のパターンを形成するパターン形成プロセスの一部において用いられる。より具体的には、このパターン形成プロセスでは、被転写体である基板に転写すべきパターンを一時的に担持する担持体としてのブランケット表面にパターン形成材料を均一に塗布し(塗布工程)、パターン形状に応じて表面加工された版をブランケット上の塗布層に押し当てることによって塗布層をパターニングし(パターニング工程)、こうしてパターンが形成されたブランケットを基板に密着させることで(転写工程)、パターンをブランケットから基板に最終転写する。
このとき、パターニング工程において密着された版とブランケットとの間、または転写工程において密着された基板とブランケットとの間を離間させる目的のために、本装置を好適に適用することが可能である。もちろんこれらの両方に用いられてもよく、これ以外の用途で用いられても構わない。例えば担持体に担持された薄膜を基板に転写する際の剥離プロセスにも適用することができる。
この剥離装置1は、筺体に取り付けられたメインフレーム11の上にステージブロック3および上部吸着ブロック5がそれぞれ固定された構造を有している。図1では装置の内部構造を示すために筐体の図示を省略している。また、これらの各ブロックの他に、この剥離装置1は後述する制御ユニット70(図4)を備えている。
ステージブロック3は、版または基板とブランケットとが密着されてなる密着体(以下、「ワーク」という)を載置するためのステージ30を有しており、ステージ30は、上面が略水平の平面となった水平ステージ部31と、上面が水平面に対して数度(例えば2度程度)の傾きを有する平面となったテーパーステージ部32とを備えている。ステージ30のテーパーステージ部32側、すなわち(−Y)側の端部近傍には初期剥離ユニット33が設けられている。また、水平ステージ部31を跨ぐようにローラユニット34が設けられる。
一方、上部吸着ブロック5は、メインフレーム11から立設されるとともにステージブロック3の上部を覆うように設けられた支持フレーム50と、該支持フレーム50に取り付けられたN組(Nは自然数)の吸着ユニット51,52,53,…,5Nとを備えている。これらの吸着ユニット51〜5Nは(+Y)方向に順番に並べられている。以下、各吸着ユニットを区別する必要がある場合には、(+Y)方向に数えて第i番目(iは自然数)の吸着ユニット5iを「第i吸着ユニット」と称することとする。
図2はこの剥離装置の主要構成を示す斜視図である。より具体的には、図2は、剥離装置1の各構成のうちステージ30、ローラユニット34および第i吸着ユニット5iの構造を示している。ステージ30は、上面310が略水平面となった水平ステージ部31と上面320がテーパー面となったテーパーステージ部32とを備えている。水平ステージ部31の上面310は載置されるワークの平面サイズより少し大きい平面サイズを有している。
テーパーステージ部32は水平ステージ部31の(−Y)側端部に密着して設けられており、その上面320は、水平ステージ部31と接する部分では水平ステージ部31の上面310と同じ高さ(Z方向位置)に位置する一方、水平ステージ部31から(−Y)方向に離れるにつれて下方、つまり(−Z)方向へ後退している。したがって、ステージ30全体では、水平ステージ部31の上面310の水平面とテーパーステージ部32の上面320のテーパー面とが連続しており、それらが接続する稜線部EはX方向に延びる直線状となっている。
また、水平ステージ部31の上面310には格子状の溝が刻設されている。より具体的には、水平ステージ部31の上面310の中央部に格子状の溝311が設けられるとともに、該溝311が形成された領域を取り囲むように、矩形のうちテーパーステージ部32側の1辺を除いた概略コの字型となるように、溝312が水平ステージ部31の上面310周縁部に設けられている。これらの溝311,312は制御バルブを介して後述する負圧供給部704(図4)に接続されており、負圧が供給されることで、ステージ30に載置されるワークを吸着保持する吸着溝としての機能を有する。2種類の溝311,312はステージ上では繋がっておらず、また互いに独立した制御バルブを介して負圧供給部704に接続されているので、両方の溝を使用した吸着の他に、一方の溝のみ使用した吸着も可能となっている。
このように構成されたステージ30を跨ぐように、ローラユニット34が設けられる。具体的には、水平ステージ部31のX方向両端部に沿って、1対のガイドレール351,352がY方向に延設されており、これらのガイドレール351,352はメインフレーム11に固定されている。そして、ガイドレール351,352に対し摺動自在にローラユニット34が取り付けられている。
ローラユニット34は、ガイドレール351,352とそれぞれ摺動自在に係合するスライダ341,342を備えており、これらのスライダ341,342を繋ぐように、ステージ30上部を跨いでX方向に延設された下部アングル343が設けられている。下部アングル343には適宜の昇降機構344を介して上部アングル345が昇降自在に取り付けられている。そして、上部アングル345に対して、X方向に延設された円柱状の剥離ローラ340が回転自在に取り付けられる。
上部アングル345が昇降機構344により下方、つまり(−Z)方向に下降されると、ステージ30に載置されたワークの上面に剥離ローラ340の下面が当接する。一方、上部アングル345が昇降機構344により上方、つまり(+Z)方向の位置に位置決めされた状態では、剥離ローラ340はワークの上面から上方に離間した状態となる。上部アングル345には、剥離ローラ340の撓みを抑制するためのバックアップローラ346が回転自在に取り付けられるとともに、上部アングル345自体の撓みを防止するためのリブが適宜設けられる。剥離ローラ340およびバックアップローラ346は駆動源を有しておらず、これらは自由回転する。
ローラユニット34は、メインフレーム11に取り付けられたモータ353によりY方向に移動可能となっている。より具体的には、下部アングル343が、モータ353の回転運動を直線運動に変換する変換機構としての例えばボールねじ機構354に連結されており、モータ353が回転すると下部アングル343がガイドレール351,352に沿ってY方向に移動し、これによりローラユニット34がY方向に移動する。ローラユニット34の移動に伴う剥離ローラ340の可動範囲は、(−Y)方向には水平ステージ部31の(−Y)側端部の近傍まで、(+Y)方向には水平ステージ部31の(+Y)側端部よりも外側、つまりさらに(+Y)側へ進んだ位置までとされる。
さらに、ローラユニット34には撮像部347が取り付けられている。撮像部347は撮像機能を有する例えばCCDカメラであり、撮像方向を上向きにして上部アングル345に取り付けられている。詳しくは後述するが、撮像部347はローラユニット34の移動に伴い剥離ローラ340と共にY方向に移動し、ローラユニット34の上方に配列された吸着ユニット51等を撮像する。
次に第i吸着ユニット5i(i=1,2,…,N)の構成について説明する。なお、第1ないし第N吸着ユニット51〜5Nはいずれも同一構造を有している。第i吸着ユニット5iは、X方向に延設されて支持フレーム50に固定される梁部材5i1を有しており、該梁部材5i1には鉛直下向き、つまり(−Z)方向に延びる1対の柱部材5i2,5i3がX方向に互いに位置を異ならせて取り付けられている。柱部材5i2,5i3には図では隠れているガイドレールを介してプレート部材5i4が昇降自在に取り付けられており、プレート部材5i4はモータおよび変換機構(例えばボールねじ機構)からなる昇降機構5i5により昇降駆動される。
プレート部材5i4の下部にはX方向に延びる棒状のパッド支持部材5i6が取り付けられており、該パッド支持部材5i6の下面に複数の吸着パッド5i7がX方向に等間隔で配列されている。図2では第i吸着ユニット5iを実際の位置よりも上方に移動させた状態を示しているが、昇降機構5i5によりプレート部材5i4が下方へ移動されたとき、吸着パッド5i7が水平ステージ部31の上面310にごく近接した位置まで下降することができ、ステージ30にワークが載置された状態では該ワークの上面に当接する。各吸着パッド5i7には後述する負圧供給部704からの負圧が付与されて、ワークの上面が吸着保持される。
図3は初期剥離ユニットの構造および各部の位置関係を示す側面図である。まず図1および図3を参照しながら初期剥離ユニット33の構造を説明する。初期剥離ユニット33は、テーパーステージ部32の上方でX方向に延設された棒状の押圧部材331を有しており、押圧部材331は支持アーム332により支持されている。支持アーム332は鉛直方向に延設されるガイドレール333を介して柱部材334に昇降自在に取り付けられており、昇降機構335の作動により、支持アーム332が柱部材334に対して上下動する。柱部材334はメインフレーム11に取り付けられたベース部336により支持されるが、位置調整機構337によりベース部336上での柱部材334のY方向位置が所定の範囲内で調整可能となっている。
水平ステージ部31およびテーパーステージ部32により構成されるステージ30に対して、剥離対象物たるワークWKが載置される。前述したパターニング工程におけるワークは版とブランケットとがパターン形成材料の薄膜を介して密着した密着体である。一方、転写工程におけるワークは基板とブランケットとがパターニングされたパターンを介して密着した密着体である。以下では転写工程における基板SBとブランケットBLとの密着体をワークWKとした場合の剥離装置1の剥離動作について説明するが、版とブランケットとによる密着体をワークとする場合でも同様の方法によって剥離を行うことが可能である。
ワークWKにおいて、基板SBよりもブランケットBLの方が大きい平面サイズを有しているものとする。基板SBはブランケットBLの略中央部に密着される。ワークWKはブランケットBLを下、基板SBを上にしてステージ30に載置される。このとき、図3に示すように、ワークWKのうち基板SBの(−Y)側端部が水平ステージ部31とテーパーステージ部32との境界の稜線部Eの略上方、より詳しくは稜線部Eよりも僅かに(−Y)側にずれた位置となるように、ワークWKがステージ30に載置される。したがって、(−Y)方向において基板SBよりも外側のブランケットBLはテーパーステージ部32の上にせり出すように配置され、ブランケットBLの下面とテーパーステージ部32の上面320との間には隙間が生じる。ブランケットBLの下面とテーパーステージ部32の上面320とがなす角θはテーパーステージ部32のテーパー角と同じ数度(この実施形態では2度)程度である。
水平ステージ部31には吸着溝311,312が設けられており、ブランケットBLの下面を吸着保持する。このうち吸着溝311は基板SBの下部に当たるブランケットBLの下面を吸着する一方、吸着溝312は基板SBよりも外側のブランケットBLの下面を吸着する。吸着溝311,312は互いに独立して吸着をオン・オフすることができ、2種類の吸着溝311,312を共に使用して強力にブランケットBLを吸着することができる。一方、外側の吸着溝312のみを使用して吸着を行い、パターンが有効に形成されたブランケットBLの中央部については吸着を行わないようにすることで、吸着によるブランケットBLの撓みに起因するパターンの損傷を防止することができる。このように、中央部の吸着溝311と周縁部の吸着溝312とへの負圧供給を独立に制御することで、ブランケットBLの吸着保持の態様を目的に応じて切り換えることが可能となっている。
このようにしてステージ30に吸着保持されるワークWKの上方に、第1ないし第N吸着ユニット51〜5Nと、ローラユニット34の剥離ローラ340とが配置される。前述したように第i吸着ユニット5iの下部には複数の吸着パッド5i7がX方向に並べて設けられている。より詳しくは、吸着パッド5i7は、例えばゴムやシリコン樹脂などの柔軟性および弾性を有する材料により形成されており、下面がワークWKの上面(より具体的には基板SBの上面)に当接してこれを吸着する機能を有している。以下では各吸着ユニット51,52,…,5Nに設けられた吸着パッドにそれぞれ符号517,527,…,5N7を付すことにより互いを区別することとする。
第1吸着ユニット51は水平ステージ部31の(−Y)側端部の上方に設けられており、下降したときに基板SBの(−Y)側端部の上面を吸着する。一方、第N吸着ユニット5Nは、ステージ30に載置される基板SBの(+Y)側端部の上方に設けられ、下降したときに基板SBの(+Y)側端部の上面を吸着する。第2吸着ユニット52ないし第(N−1)吸着ユニット5(N−1)はこれらの間に適宜分散配置され、例えば吸着パッド517〜5N7がY方向において略等間隔となるようにすることができる。なお、後述するように、吸着パッド517〜5N7の間隔は必要に応じて不均等としてもよい。これらの吸着ユニット51〜5Nの間では、上下方向への移動および吸着のオン・オフを互いに独立して実行可能となっている。
剥離ローラ340は上下方向に移動して基板SBに対し接近・離間移動するとともに、Y方向に移動することで基板SBに沿って水平移動する。剥離ローラ340が下降した状態では、基板SBの上面に当接して転動しながら水平移動する。最も(−Y)側に移動したときの剥離ローラ340の位置は、第1吸着ユニット51の吸着パッド517の(+Y)側直近位置である。このような近接位置への配置を可能とするために、第1吸着ユニット51については、図2に示す第i吸着ユニット5iと同一構造のものが、図1に示すように他の第2ないし第N吸着ユニット52〜5Nとは反対向きにして支持フレーム50に取り付けられている。
初期剥離ユニット33は、テーパーステージ部32の上方に突き出されたブランケットBLの上方に押圧部材331が位置するように、そのY方向位置が調整されている。そして、支持アーム332が下降することにより、押圧部材331の下端が下降してブランケットBLの上面を押圧する。このとき押圧部材331がブランケットBLを傷つけることがないように、押圧部材331の先端は弾性部材により形成されている。
図4はこの剥離装置の電気的構成を示すブロック図である。装置各部は制御ユニット70により制御される。制御ユニット70は、装置全体の動作を司るCPU701と、各部に設けられたモータ類を制御するモータ制御部702と、各部に設けられたバルブ類を制御するバルブ制御部703と、各部に供給する負圧を発生する負圧供給部704と、ユーザからの操作入力を受け付けたり装置の状態をユーザに報知するためのユーザインタフェース(UI)部705と、画像信号に基づき所定の画像処理を実行する画像処理部706とを備えている。なお、工場用力など外部から供給される負圧を利用可能である場合には制御ユニット70が負圧供給部を備えていなくてもよい。
モータ制御部702は、ステージブロック3に設けられたモータ353および昇降機構335,344、上部吸着ブロック5の各吸着ユニット51〜5Nにそれぞれ設けられた昇降機構515〜5N5などのモータ群を駆動制御する。バルブ制御部703は、負圧供給部704から水平ステージ部31に設けられた吸着溝311,312につながる配管経路上に設けられてこれらの吸着溝に対し所定の負圧を個別に供給するためのバルブ群V3、負圧供給部704から各吸着パッド517〜5N7につながる配管経路上に設けられて各吸着パッド517〜5N7に所定の負圧を供給するためのバルブ群V5などを制御する。
画像処理部706は、撮像部347から出力される画像信号を受信して、所定の画像処理を実行する。詳しくは後述するが、画像処理部706は撮像部347により撮像された画像から第i吸着ユニットの像を検出する。
次に、上記のように構成された剥離装置1の動作について説明する。この剥離装置1により実行される剥離動作は、前述の特許文献1(特開2014−189350号公報)に記載された剥離装置における剥離動作と基本的に同一である。そこで、この剥離装置1における剥離動作についての詳しい説明を省略し、ここでは剥離動作における各部の動きを簡単に説明する。
この剥離装置1に外部から剥離対象物たるワークWKが搬入されステージ30の所定位置に載置されると、装置各部が図3に示す初期状態に位置決めされる。初期状態では、ワークWKが吸着溝311,312の一方または両方によって吸着保持され、初期剥離ユニット33の押圧部材331、ローラユニット34の剥離ローラ340、第1ないし第N吸着ユニット51〜5Nの吸着パッド517〜5N7はいずれもワークWKから離間している。各吸着ユニット5iは、Y方向に走行するローラユニット34と干渉することがないように、吸着パッド5i7と基板SBとの間に十分なギャップを隔てて配置される。また剥離ローラ340は、第1吸着ユニット51の吸着パッド517よりもわずかに(+Y)側に寄った位置で、ワークWKから離間した状態にある。この状態から剥離動作が実行される。
図5は剥離動作の過程における各部の動作を示す図である。最初に、第1吸着ユニット51が下降し、負圧を供給された吸着パッド517が基板SBの(−Y)側端部上面に当接して基板SBを吸着保持する。また、剥離ローラ340が下降して基板SBの上面に当接する。この状態から、図5(a)に示すように、押圧部材331が下降してブランケットBLの端部を押し下げる。ブランケットBLの端部はテーパーステージ部32の上方に突出しており、その下面とテーパーステージ32の上面320との間には隙間がある。したがって、押圧部材331がブランケットBLの端部を下方へ押圧することにより、ブランケットBLの端部がテーパーステージ部32のテーパー面に沿って下方へ屈曲する。その結果、第1吸着ユニット51により吸着保持される基板SBの端部とブランケットBLとの間が離間し剥離が開始される。
続いて、図5(b)に示すように、第1吸着ユニット51の上昇が開始されるとともに、剥離ローラ340が基板SB表面に当接して転動しながら(+Y)方向に移動する。これにより、基板SBとブランケットBLとの剥離が(+Y)方向に向かって進行するが、剥離ローラ340を当接させているため、剥離ローラ340が基板SBに当接する領域を超えて剥離が進行することはない。剥離ローラ340を基板SBに当接させながら一定速度で(+Y)方向に移動させることで、剥離の進行速度を一定に維持することができる。
以下では、基板SBとブランケットBLとが既に剥離した剥離領域と、まだ剥離していない未剥離領域との境界線を「剥離境界線」と称することとする。剥離ローラ340はX方向に延びるローラ部材であり、これが基板SBに当接しながら(+Y)方向に移動する。このため、剥離境界線はローラ延設方向つまりX方向に沿った一直線状に維持され、しかも一定速度で(+Y)方向に進行する。これにより、剥離の進行速度の変動による応力集中に起因するパターンの損傷を確実に防止することができる。
剥離ローラ340が通過した後の基板SBに対して、吸着ユニット52,53,…が順次下降し、ブランケットBLから剥離した後の基板SBに当接してこれを保持する。具体的には、図5(b)に示すように、第2吸着ユニット52は、その直下位置を剥離ローラ340が通過すると下降を開始し基板SBに向けて進行する。吸着パッド527が基板SB上面に当接すると、負圧供給部704から供給される負圧によって、第2吸着ユニット52による基板SBの吸着保持が開始される。
図5(c)に示すように、第2吸着ユニット52は、基板SBの吸着保持を開始すると上昇に転じる。これ以後、基板SBは、第1吸着ユニット51と第2吸着ユニット52とによって保持されることとなる。これにより、ブランケットBLとの剥離が進行する基板SBがより確実に保持され、基板SBが下向きに撓んでブランケットBLと再接触したり、吸着パッド517から脱落したりするという問題が防止される。また、剥離境界線近傍における基板SBとブランケットBLとの角度を適正に保つことで、剥離を良好に進行させる効果も得られる。
他の吸着ユニット53,54,…,5Nも同様に、当該吸着ユニットの下方を剥離ローラ340が通過すると下降を始め、吸着パッドが基板SBに当接した時点で吸着保持を開始し上昇することにより、基板SBを上方へ引き上げる。各吸着ユニットはステージ30から所定の高さまで上昇した時点で停止する。
剥離進行方向の最下流側、つまり最も(+Y)側の吸着ユニット5Nが基板SBを保持して所定位置まで上昇することにより、図5(d)に示すように、基板SBとブランケットBLとが完全に分離し、剥離が完了する。剥離ローラ340および押圧部材331が基板SB、ブランケットBLのいずれからの離間した位置に退避することで、互いに分離された基板SBとブランケットBLとが搬出可能となる。こうして剥離動作が完了する。
上記のような剥離動作において、吸着ユニットの配設数やその配置については、基板SBの種類や厚さ、ブランケットBLとの間に形成されたパターンや薄膜の種類によって変更されることが好ましい場合がある。
図6は吸着ユニットの配設パターンが異なる例を示す図である。例えば基板SBとブランケットBLとの密着力が、両者の間に担持されるパターンの材料や形状に起因して比較的弱い場合には、図6(a)に示すように、剥離後の基板SBとブランケットBLとがなす角αを比較的小さな値に保って剥離を進行させることが好ましい。このような目的においては、剥離に要する引き上げ力も小さいため、Y方向において吸着ユニットを比較的大きな間隔で配置すればよい。
一方、例えば基板SBとブランケットBLとの密着力が比較的強い場合には、図6(b)に示すように、剥離後の基板SBとブランケットBLとがなす角βをより大きな値に維持して剥離を進行させることが好ましい。また、基板SBを引き上げる力をより大きくする必要がある。このためには、Y方向における吸着ユニット間の間隔をより小さくする必要があり、場合によっては吸着ユニットの配設数を増加させる必要が生じる。
また、例えば基板SBの剛性が高く撓みにくい場合には、基板SBとブランケットBLとがなす角を小さくしつつ、比較的強い引き上げ力で基板SBを引き上げる必要がある。この場合にも、吸着ユニットの数を増加させる必要が生じる。例えばこのような場合に対応するため、図6(c)に示すように基板SBの端部付近で吸着ユニットを近接配置するなど、吸着ユニットの間隔を不均等とすることも考えられる。
このように、吸着ユニットの配設数およびそれらの配置については、目的に応じて変更することができると装置の利用範囲が広がり便宜である。しかしながら、これを可能にするためには次のような問題が生じ得る。
図7はローラユニットと吸着ユニットとの位置関係を示す図である。図7(a)に示すように、剥離動作においてローラユニット34は(+Y)方向に一定速度で走行する。一方、吸着ユニット5iは、下部に吸着パッド5i7が設けられたプレート部材5i4をZ方向に昇降させることで、基板SBの保持および引き上げを行う。そのため、これらの移動タイミングが適切に設定されなければ、両者が干渉して接触するおそれがある。
図7(b)に示すように、原則的にはローラユニット34が直下位置を通過した後にプレート部材5i4が下降を開始すれば干渉は生じない。しかし、基板SBとブランケットBLとのなす角αを一定に維持し剥離を安定的に進行させるためには、剥離ローラ340が通過した後の基板SBをできるだけ早く吸着パッド5i7により保持することが望ましい。つまり、吸着パッド5i7が下降開始する際のパッド支持部材5i6の(+Y)側端面5i6yと剥離ローラ340が基板SBに当接する位置とのY方向における間隔Wができるだけ小さいことが好ましく、この間隔Wを0とするのが理想的である。
従来、このような動作を実現するための各部の移動タイミングは、例えば、オペレータが周期的に出力されるタイミング信号と各部の移動タイミングとを関連付けて装置に記憶させるティーチング作業を行うことにより設定される。しかしながら、前記したように吸着ユニットの配設個数が多い場合や配置が不均等となる場合にはティーチング作業も煩雑となり、取り付け位置のばらつきに対応する微調整まで含めると作業工数が膨大となる。
そこで、この実施形態の剥離装置1は、ローラユニット34が走行する際のローラユニット34と各吸着ユニット5iとの位置関係を検出し、その結果に基づいて各吸着ユニット5iの移動タイミングを決定する機能を有している。具体的には、ローラユニット34に撮像部347(図2)が設けられ、ローラユニット34の移動に伴い撮像部347が剥離ローラ340と一体的に移動するように構成される。そして、ローラユニット34が吸着ユニット5iの下方を通過し、撮像部347が上方に位置する吸着ユニット5iを撮像することで、ローラユニット34から見た各吸着ユニット5iの位置が画像処理により把握される。その結果に基づき、ローラユニット34の走行タイミングを基準とする各吸着ユニット5iの移動タイミングが設定される。
図8は撮像部による吸着ユニットの撮像の態様を示す図である。図8(a)に示すように、撮像部347は、剥離ローラ340の概ね直上位置で、撮像方向が上向きとなるように上部アングル345に固定されている。したがって、ローラユニット34が吸着ユニット5iの直下位置にあるときに撮像部347により撮像される画像IMには、図8(b)に示すように、当該吸着ユニット5iの一部、例えばパッド支持部材5i6の像が含まれることになる。言い換えれば、撮像部347により撮像される画像IMに吸着ユニット5iの像が含まれるとき、ローラユニット34が当該吸着ユニット5iの直下位置にあることがわかる。このことから、ローラユニット34がその走行において各吸着ユニット5iの直下位置を通過するタイミングを把握することができる。
撮像部347から出力される画像信号は画像処理部706により解析される。画像処理部706は、吸着ユニット5iのうちローラユニット34と干渉するおそれのある部位であって、ローラユニット34の走行方向における最下流側に位置する部位を画像IMから検出する。このような部位がローラ上部を通過するタイミングを把握しておくことによって、ローラユニット34と吸着ユニット5iとの干渉を確実に回避することが可能となるからである。この実施形態では、パッド支持部材5i6の(+Y)側端面5i6yが、当該部位として検出される。
図8(c)に示すように、画像IM内に基準線Lsが設定される。基準線Lsは、図7(b)に示す間隔W、すなわちパッド支持部材5i6の(+Y)側端面5i6yと剥離ローラ340が基板SBに当接する位置との間隔が0であるときの、画像IMにおけるパッド支持部材端面5i6yの位置に相当する。したがって、画像IMにおいてパッド支持部材端面5i6yの位置が基準線Lsと一致するとき、間隔Wが0となっているということができる。このことを利用して、ローラユニット34の走行に伴って間隔Wが0となるタイミングで吸着パッド5i7の下降を開始するような移動タイミングを、各吸着ユニット5iについて定めることができる。
より具体的には、各吸着ユニット5iが撮像部347により撮像されるタイミングを、装置の稼働に伴って周期的に発生する信号を用いて、走行するローラユニット34の位置と関連付けることができる。ローラユニット34を走行させるモータ353が例えばステッピングモータのようなパルスモータであるとき、該モータ353を駆動するためにモータ制御部702から出力される駆動パルスの数をローラユニット34の位置を示す情報として用いることができる。モータの回転量が駆動パルスの数に比例するから、駆動開始からの駆動パルスのカウント値がローラユニット34の現在位置を指標する位置情報となる。したがって、ローラユニット34の位置を指標する情報と吸着ユニット5iが検出された画像IMが撮像されたタイミングとを関連付けておけば、ローラユニット34が各吸着ユニット5iの直下位置を通過するタイミングを個別に把握することができる。
このようにローラユニット34の位置および通過タイミングがわかっていれば、ローラユニット34と干渉せず、かつローラ通過後に遅滞なく基板SBを保持するために必要な各吸着ユニット5iの移動タイミングを設定することができる。位置情報としては、ローラユニット34の位置を指標する各種の情報を用いることが可能である。ここに例示したモータ駆動パルス数以外に、駆動を開始してからの時間計測値や、制御クロックのカウント値のようにローラユニット34の移動に伴って定期的に発生する信号の計測値などを用いることができる。また、ローラユニットの位置を検出する機能を有する検出手段からの出力信号、例えばポジションセンサやリニアエンコーダの出力信号、監視カメラからの画像信号などから位置情報を取得することも可能である。
なお、各吸着ユニット5iの基本的な動作シーケンスは、
(1)プレート部材5i4が基板SBに向けて下降する、
(2)吸着パッド5i7が基板SBに当接し基板SBを吸着保持すると下降を中止する、
(3)プレート部材5i4が所定位置まで上昇する、
というものであり、この順序は吸着ユニットの配設数や配設位置によって変わるものではない。上記(1)の開始タイミングが、吸着ユニットの配設数や配設位置に応じて変更される。
この実施形態では、各吸着ユニット5iのプレート部材5i4が下降を開始するタイミングがモータ353の駆動パルスカウント値によって規定される。すなわち、ローラユニット34を駆動するモータ353に与えられる駆動パルス数がカウントされ、駆動開始からのカウント値が規定値に達したときに吸着ユニット5iのプレート部材5i4が下降を開始する。この規定値は、各吸着ユニット5iについて個別に設定され、しかも、ローラユニット34が実際に走行しながら撮像部347が取得した画像に基づいて自動的に設定される。そのため、オペレータの作業負担が大幅に軽減され、また吸着ユニット5iの数や配置によらず、同一のプロセスで各吸着ユニット5iの移動タイミングを設定することができる。
図9は吸着ユニットの移動タイミングの設定方法を示すフローチャートである。また、図10はその原理を説明する図である。この原理に基づく移動タイミングの設定処理は、CPU701が予め記憶された制御プログラムを実行して装置各部に所定の動作を行わせることにより実行される。
この処理では、最初に装置各部が初期状態に設定される(ステップS101)。このときの初期状態は、前記した剥離動作における初期状態とは異なる状態である。この処理における初期状態では、図10(a)に示すように、ステージ30にワークは載置されない。また、各吸着ユニット5iのプレート部材5i4はステージ30から上方に離間した位置に位置決めされ、ローラユニット34が走行しても干渉しない状態となっている。
また、ローラユニット34は、図において点線で示すように、Z方向においては剥離ローラ340がステージ30に接触しない位置に位置決めされる一方、Y方向においては、ローラ走行方向である(+Y)方向において最上流側に位置する第1吸着ユニット51の吸着パッド517よりも上流側、つまり(−Y)側に位置決めされる。
上記のような初期状態から、撮像部347による撮像および画像処理部706による画像処理が開始される(ステップS102)。画像処理部706により実行される画像処理は、撮像された画像IMを解析してパッド支持部材端面5i6yを検出する処理であり、例えば公知のエッジ検出処理を用いて、画像IMからパッド支持部材端面5i6yに相当するエッジを検出することができる。
続いて、モータ353に駆動パルスが与えられることによりローラユニット34が(+Y)方向への走行を開始し、パルス数のカウントが開始される(ステップS103、S104)。これにより、パルスカウント、撮像部347による撮像および画像処理部706による解析が継続されつつ、ローラユニット34が(+Y)方向に走行する。
撮像部347により随時撮像される画像IMからパッド支持部材端面5i6yに相当するエッジが検出されると(ステップS105においてYES)、そのときのパルスカウント値が記憶される(ステップS106)。エッジが検出されなければステップS106はスキップされる。
なお、求めるべきパルスカウント値は、パッド支持部材端面5i6yが基準線Lsと一致するときの値である。しかしながら、吸着ユニット5iの配置および撮像部347が画像を取り込むタイミングによっては、図10(b)に示すように、画像IMにおいて検出されるパッド支持部材端面5i6yの位置が基準線Lsと一致しない場合があり得る。このような場合には、画像IMからY方向におけるパッド支持部材端面5i6yと基準線Lsとの位置の差分Δyが算出される。1パルス当たりのローラユニット34の移動量は既知であるから、その値と差分Δyとに基づいてパッド支持部材端面5i6yが基準線Lsに到達するときのパルスカウント値を算出することが可能である。ステップS106では、このようにして算出されたパルスカウント値が記憶される。
ローラユニット34がその可動範囲において最も(+Y)側の終了位置に到達するまで(ステップS107においてYES)、ローラユニット34の走行および画像IMにおけるエッジ検出が継続される。これにより、全ての吸着ユニット51,52,53,54,55,…の各々について、ローラユニット34が当該吸着ユニット5iの直下位置を通過するときのパルスカウント値c1,c2,c3,c4,c5,…が求められる。図に示すように、吸着ユニット5iの配置が不均等であるとき、計測されるパルスカウント値も不規則となる。
ローラユニット34が終了位置に到達すると、ローラユニット34の移動および撮像部743による撮像が停止される(ステップS108)。そして、記憶されている各吸着ユニット51,52,…に対応するパルスカウント値c1,c2,…に基づき、各吸着ユニット51,52,…の動作タイミングが決定される(ステップS109)。具体的には、吸着ユニット5iごとに、当該吸着ユニット5iのプレート部材5i4が下降を開始するときのパルスカウント値の規定値が決定される。
一般的には、ローラユニット34の走行開始から起算したパルスカウント値が先に記憶されたカウント値c1,c2,…となったときに各吸着ユニット51,52,…が動作開始するようにすればよい。ただし、プレート部材5i4が下降し始めてからローラユニット34への干渉が発生するまでに1パルス分以上の時間差がある場合には、それに対応するカウント値をオフセット値として加えてもよい。また、パルス発生のタイミングとプレート部材5i4の下降を開始するタイミングとの間に適宜の時間差を与えてもよい。このようにして、各吸着ユニット5iの動作タイミングが決定される。
以後の剥離動作においては、ローラユニット34を走行させる駆動パルスがカウントされ、カウント値が上記で求められた規定値となる度に各吸着ユニット51,52,…が順次作動して、プレート部材5i4の下降が開始される。これにより、剥離ローラ340が通過しブランケットBLから離間した直後の基板SBに対して吸着パッド5i7が当接して基板SBを保持することができる。
以上のように、この実施形態は、互いに密着してワークWKをなすブランケットBLと基板SBとを剥離させる剥離装置1である。この剥離装置1において、ステージ30がブランケットBLを吸着保持する。そして、Y方向に複数配列された吸着ユニット5iが順次基板SBに当接してこれを保持し、ブランケットBLから離間する方向に移動する。これにより、基板SBの一方端から他方端に向けてブランケットBLとの間での剥離が進行する。このとき、剥離ローラ340が、基板SBに当接しながら剥離の進行方向に沿って一定速度で走行する。これにより、剥離を一方向にかつ一定速度で進行させることができ、パターン等の損壊を防止しながら良好に剥離を進行させることができる。
吸着ユニット5iは、剥離ローラ340が走行する際にはこれと干渉することなく、しかも剥離ローラ340の通過後には速やかに基板SBを保持することが求められる。この実施形態では、剥離ローラ340が実際に走行してその過程で各吸着ユニット5iを撮像し、その画像から、剥離ローラ340から見た各吸着ユニット5iの位置が把握される。そして、その結果に基づき、各吸着ユニット5iが作動するタイミングが剥離ローラ340の位置情報と関連付けて決定される。このため、吸着ユニット5iの数や配置に関わらず同一のプロセスを用いて各吸着ユニット5iの移動タイミングを最適化することができる。その結果、調整作業を行うオペレータの負担を大きく軽減することができ、また人的ミスに起因するトラブルを未然に防止することができる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、ローラユニット34の走行と各吸着ユニット5iの位置とを関連付けるために、撮像機能を有する例えばCCDカメラからなる撮像部347が用いられている。しかしながら、吸着ユニット5iの位置を検出する手段としてはこのような撮像機能を有するものに限定されない。
例えば、ローラユニット34および各吸着ユニット5iの一方に投光器、他方に受光器を設けて、投光器からの光が受光器に受光されるタイミングから吸着ユニット5iの位置を検出するようにしてもよい。また、フォトインタラプタを用いて、ローラユニット34が吸着ユニット5iの直下位置を通過する際に光が遮蔽される(または遮蔽が解除される)構成であってもよい。また、このような光学的手法による検出に限らず、例えばマイクロスイッチを用いた機械的な検出方法や、磁気センサを用いた電磁気的な検出方法であってもよい。
また例えば、上記実施形態の移動タイミング設定処理では、第1吸着ユニット51よりも(−Y)側の位置からローラユニット34の走行が開始される。これは他の吸着ユニットと同様に、第1吸着ユニット51の位置についてもローラユニット34の駆動パルス数と関連付けて記憶するためである。しかしながら、第1吸着ユニット51は基板SBの(−Y)側端部を保持するものであり、その位置は吸着ユニットの配設数や配置に影響されない。このことから、第1吸着ユニット51の位置については既に判っているものとして、第2吸着ユニット52以降の各吸着ユニットの位置をローラユニット34の走行によって把握する構成であってもよい。このとき、ローラユニット34の走行開始位置は、Y方向において第1吸着ユニット51と第2吸着ユニット52との間の位置、例えば図3に示した剥離動作における初期位置と同じにすることが可能である。
また例えば、上記実施形態ではローラユニット34の上部アングル345に撮像部347が取り付けられているが、上記したように、撮像部347は、剥離動作に先立って各吸着ユニット5iの移動タイミングを決定するために用いられるものであり、剥離動作においては特段の機能を有していない。このことから、撮像部をローラユニットに対して着脱可能な構成として、各吸着ユニット5iの移動タイミングが決定された後にはローラユニットから取り外されてもよい。例えば工場出荷後に吸着ユニット5iの数や配置が変更されることのない製品においては、調整後に撮像部を取り外した状態で装置が出荷される態様であってもよい。なお、剥離動作における各部の動作を監視するために、撮像部が利用されてもよい。
また例えば、上記実施形態ではステージ30に格子状の吸着溝311,312を設けてブランケットBLを吸着保持しているが、吸着溝の形状はこれに限定されない。例えば環状の吸着溝を設けてもよく、また負圧が供給される吸着孔を適宜配置してブランケットを吸着してもよい。
また、上記実施形態では、剥離後の基板SBの姿勢を平面に近い状態に維持するように各吸着ユニット51〜5Nの上昇が制御されて基板SBに加わるストレスが低減されているが、基板SBの引き上げの態様はこれに限定されない。例えば、剥離後の基板が略水平となるように各吸着ユニットを一定高さで停止させたり、あるいは基板が所定の曲率を持って湾曲するような姿勢に保持するようにしてもよい。これらは各吸着ユニットの上昇の態様を制御することによって自由に設定可能である。
また、上記実施形態では真空吸着によって基板およびブランケットを保持しているが、保持の態様はこれに限定されない。例えば静電的または磁気的な吸着力により吸着保持するものであってもよい。特に、最初に基板SBを保持する第1吸着ユニット51については、吸着によらず、基板周縁部を機械的に把持することにより保持してもよい。
また、上記実施形態ではテーパーステージ部32にブランケットBLを突き出させて保持し、押圧部材331によりブランケットBLを屈曲させて剥離のきっかけを作っているが、このようにすることは必須の要件ではなく、例えば第1吸着ユニット51の引き上げのみで剥離を開始させるようにしてもよい。この場合、ステージにテーパーを設ける必要はなくなる。
以上説明したように、この実施形態においては、ブランケットBLおよび基板SBがそれぞれ本発明の「第1板状体」および「第2板状体」に相当しており、これらがパターン等を介して一体化されたワークWKが、本発明の「密着体」に相当している。また、この実施形態では、(+Y)方向が本発明の「剥離方向」に相当している。
また、上記実施形態では、ステージ30が本発明の「保持手段」として機能する。また、複数の吸着ユニット5iがそれぞれ本発明の「剥離手段」として機能している。より具体的には、吸着ユニット5iのうち、プレート部材5i4および吸着パッド5i7を含む可動部が「剥離手段」に相当する。また、剥離ローラ340が、本発明の「当接部材」として機能している。そして、ローラユニット34を駆動するモータ353に与えられる駆動パルス数が、本発明の「位置情報」に相当している。また、上記実施形態では、撮像部347が本発明の「検出手段」および「撮像手段」として機能している。
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明は、例えば、剥離手段を検出する検出手段が当接部材と一体的に剥離方向に移動し、検出手段の検出結果と位置情報との対応関係に基づき剥離手段各々の移動タイミングが設定される構成であってもよい。このように当接部材と一体的に移動する検出手段により剥離手段を検出することで、当接部材の移動と剥離手段の位置とを実機に即して的確に把握することが可能となる。
この場合、例えば、検出手段は剥離手段を撮像する撮像機能を有し、撮像される画像に基づき当接部材が剥離手段との対向位置を通過するタイミングが検出される構成であってもよい。このような構成では、画像として撮像された剥離手段が検出されることにより、他の部材を誤検出することが防止される。
また例えば、位置情報としては、当接部材の移動に伴って定期的に発生する信号を計測することにより得られる各種の情報を用いることができる。装置内では各種の定期的信号が発生しており、これを計測値により、当接部材の位置を適切に指標することが可能である。例えば、当接部材を剥離方向に移動させるパルスモータの駆動パルス数を位置情報として用いることが可能である。当接部材の移動量はこれを駆動するパルスモータに与えられる駆動パルス数に比例するから、駆動パルス数の計測値により、当接部材の位置を高い精度で表すことが可能である。
また例えば、保持手段が第2板状体を上側にした水平姿勢で密着体を保持し、剥離手段が密着体の上方に配列されてもよい。このような態様では、第1板状体が水平姿勢に保持された状態で第2板状体が上方に引き上げられることにより剥離が進行する。これは第1板状体を最も安定な姿勢で保持することのできる態様であり、第2板状体を離間させる際に第1板状体がこれに追随して剥離が失敗するのを防止することができる。
また例えば、移動タイミングの設定は、密着体を保持していない保持手段に対して剥離手段が配置された状態で実行されてもよい。本発明による剥離手段の移動タイミングの設定では、密着体が保持手段に保持されていることを必要としない。