JP2016123721A - 医療用機器およびその製造方法 - Google Patents

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亮平 小口
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省吾 小寺
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博司 下田
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創 江口
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Abstract

【課題】長期間に渡って撥水面の撥水効果が維持できる、医療用機器の提供。
【解決手段】医療用機器は、少なくとも一部の表面が撥水面とされている。撥水面は、コーティング層または基材層の表面により構成される。撥水面を構成するコーティング層または基材層は、含フッ素重合体を含有する。また、撥水面のJIS B0601:1994で定義される凹凸の平均間隔Smは、5μm超45μm未満である。
【選択図】なし

Description

本発明は、医療用機器およびその製造方法に関する。
近年、医療用機器の表面は、生体由来の付着物が付着しにくくされ、または付着しても容易に除去できるように、撥水性の材料によりコーティングされている。撥水性の材料としては、例えば、シリコン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
チューブ等の医療用機器の表面を超撥水化する技術としては、例えば、チューブ表面にフッ化グラファイトからなる超撥水処理層を設ける技術が知られている(特許文献1)。
特許第3194776号公報
しかしながら、特許文献1に記載の医療用機器は、長期間使用すると、超撥水処理層が剥がれ、超撥水効果が低下しやすい。
本発明は、長期間に渡って撥水面の超撥水効果が維持できる、医療用機器の提供を目的とする。
本発明は、以下の[1]〜[9]の構成を有する医療用機器およびその製造方法を提供する。
[1]少なくとも一部の表面が撥水面とされた医療用機器であって、基材と、前記基材における前記撥水面側に設けられたコーティング層とを有し、前記コーティング層がカルボキシ基および加水分解性シリル基のうち少なくとも一方の反応性官能基を有する含フッ素重合体を含有するコーティング剤から形成されてなり、前記基材は前記コーティング層側の表面に前記反応性官能基と反応し得る基を有し、前記反応性官能基がカルボキシ基である場合、前記反応性官能基と反応し得る基はヒドロキシ基であり、前記反応性官能基が加水分解性シリル基である場合、前記反応性官能基と反応し得る基はカルボキシ基またはヒドロキシ基であり、前記コーティング層の平均厚さが0.05〜5μmであり、前記コーティング層の表面が前記撥水面を構成しており、前記撥水面のJIS B0601:1994で定義される凹凸の平均間隔Smが、5μm超45μm未満である医療用機器。
[2] 少なくとも一部の表面が撥水面とされた医療用機器であって、基材と、前記基材における前記撥水面側に設けられたコーティング層とを有し、前記コーティング層が含フッ素重合体を含有するコーティング剤から形成されてなり、前記含フッ素重合体がフルオロアルキル基を有する単位、ヒドロキシ基を有する単位、および、イソシアナート基または脱保護によりイソシアナート基に変換し得る基を有する単位を含み、前記コーティング層の平均厚さが0.05〜5μmであり、前記コーティング層の表面が前記撥水面を構成しており、前記撥水面のJIS B0601:1994で定義される凹凸の平均間隔Smが、5μm超45μm未満である医療用機器。
[3]少なくとも一部の表面が撥水面とされた医療用機器であって、基材と、前記基材における前記撥水面側に設けられたコーティング層とを有し、前記コーティング層がヒドロキシ基を有する含フッ素重合体およびヒドロキシ基と反応する架橋剤を含有するコーティング剤から形成されてなり、前記コーティング層の平均厚さが0.05〜5μmであり、
前記コーティング層の表面が前記撥水面を構成しており、前記撥水面のJIS B0601:1994で定義される凹凸の平均間隔Smが、5μm超45μm未満である医療用機器。
[4] 少なくとも一部の表面が撥水面とされた、含フッ素重合体を含有する基材層を有する医療用機器であって、前記基材層の平均厚さが10μm以上であり、前記撥水面のJIS B0601:1994で定義される凹凸の平均間隔Smが、5μm超45μm未満である医療用機器。
[5]前記撥水面の水接触角が150度以上である、[1]〜[4]のいずれかの医療用機器。
[6]内面が前記撥水面とされたチューブである、[1]〜[5]のいずれかの医療用機器。
[7]前記[1]の医療用機器の製造方法であって、前記基材の撥水面側の表面に親水化処理を施す、親水化工程と、前記基材の親水化処理を施した表面上にコーティング剤を塗布して、平均厚さが0.05〜5μmである前記コーティング層を形成する、コーティング層形成工程とを有し、前記基材の撥水面側の表面のJIS B0601:1994で定義される凹凸の平均間隔Smが、5μm超45μm未満である医療用機器の製造方法。
[8]前記[2]または[3]の医療用機器の製造方法であって、前記基材の撥水面側の表面上にコーティング剤を塗布して、平均厚さが0.05〜5μmであるコーティング層を形成する、コーティング層形成工程を有し、前記基材の撥水面側の表面のJIS B0601:1994で定義される凹凸の平均間隔Smが、5μm超45μm未満である医療用機器の製造方法。
[9]前記[4]の医療用機器の製造方法であって、前記医療用機器が、前記一部の表面が撥水面とされた第1の基材層と、第2の基材層とを有し、前記第2の基材層上に、前記含フッ素重合体を押出成形して、平均厚さが10μm以上である前記第1の基材層を形成する工程を有する医療用機器の製造方法。
本発明によれば、長期間に渡って撥水面の超撥水効果が維持できる、医療用機器を提供できる。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲に渡って適用される。
「含フッ素重合体」とは、分子中にフッ素原子を有する高分子化合物を意味する。「非フッ素重合体」とは、分子中にフッ素原子を有しない高分子化合物を意味する。「含フッ素樹脂」とは、含フッ素重合体を含む樹脂を意味し、「非フッ素樹脂」とは、含フッ素重合体を含まず、非フッ素重合体を含む樹脂を意味する。
「単量体」とは、ラジカル重合性不飽和基を有する化合物を意味する。
「単位」とは、重合体中に存在して重合体を構成する、単量体に由来する部分を意味する。炭素−炭素不飽和二重結合を有する単量体の付加重合により生じる、該単量体に由来する単位は、該不飽和二重結合が開裂して生じた2価の単位である。また、ある単位の構造を重合体形成後に化学的に変換したものも単位という。なお、以下、場合により、個々の単量体に由来する単位をその単量体名に「単位」を付した名称で呼ぶ。
重合体の「主鎖」とは、単量体が重合することによって形成される重合鎖の中で、炭素数が最大となる部分を指す。また、「側鎖」とは、主鎖に結合した部分であって、単量体が重合することによって形成された部分を意味する。
「エーテル性酸素原子」とは、炭素原子−炭素原子間においてエーテル結合(−O−)を形成する酸素原子を意味する。
「脂肪族環」とは、芳香性を示さない環構造を意味する。脂肪族環は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。脂肪族環には、環骨格が、炭素原子のみから構成される炭素環構造のものに加えて、環骨格に、炭素原子以外の原子(ヘテロ原子)を含む複素環構造のものも含む。該ヘテロ原子としては酸素原子、窒素原子等が挙げられる。
「超撥水」とは、撥水面の水接触角が150度以上である場合をいう。なお、撥水面の水接触角は、静滴法により、JIS R3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して測定された値である。
「医療用機器」とは、治療、診断、解剖学または生物学的な検査等の医療用として用いられるデバイスであり、人体等の生体内に挿入あるいは接触させる、または血液等の生体試料と接触する如何なるデバイスも含むものとする。
[医療用機器]
本発明の医療用機器は、少なくとも一部の表面が撥水面とされている。撥水面は、コーティング層または基材層の表面により構成される。
撥水面を構成するコーティング層または基材層は、含フッ素重合体を含有する。また、撥水面のJIS B0601:1994で定義される凹凸の平均間隔Sm(以下、「Sm」ともいう。)は、5μm超45μm未満である。コーティング層または基材層が含フッ素重合体を含有すれば、コーティング層または基材層の表面は撥水性を有するものとなるが、必ずしも超撥水性にはならない。そこで、さらに撥水面のSmを上記の特定の範囲とすることにより、撥水面は超撥水性を有するものとなる。
撥水面のSmは、10μm超30μm未満が好ましく、16μm超29μm未満が特に好ましい。撥水面のSmが前記範囲であれば、撥水面が超撥水性により優れる。
本明細書におけるSmは、JIS B0601:1994における定義に基づいて求められた値である。Smは、例えば、レーザ顕微鏡(オリンパス社製「OLS4000」)を用いて測定される。
コーティング層を形成する含フッ素重合体(例えば、後述の含フッ素重合体(a1)〜(a3))のフッ素原子含有率は、5〜75質量%が好ましく、10〜75質量%がより好ましく、20〜75質量%が特に好ましい。フッ素原子含有率が前記範囲の下限値以上であれば、撥水性および耐水性に優れる。フッ素原子含有率が前記範囲の上限値以下であれば、防汚性に優れる。
なお、本明細書におけるフッ素原子含有率(質量%)は、下式(f1)で求められる。
(フッ素原子含有率)=[19×N/M]×100 ・・・(f1)
:含フッ素重合体を構成する単位の種類毎に、単位のフッ素原子数と、全単位に対する当該単位のモル比率とを乗じた値の総和。
:含フッ素重合体を構成する単位の種類毎に、単位を構成する全ての原子の原子量の合計と、全単位に対する当該単位のモル比率とを乗じた値の総和。
なお、フッ素原子含有率は、H−NMR、イオンクロマト、元素分析により測定できる。また、含フッ素重合体の製造に使用する単量体、開始剤の仕込み量から算出できる。
コーティング層を形成する含フッ素重合体の数平均分子量(Mn)は、2,000〜1,000,000が好ましく、2,000〜800,000が特に好ましい。含フッ素重合体の数平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、耐久性に優れる。含フッ素重合体の数平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、加工性に優れる。
含フッ素重合体の質量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000が好ましく、2,000〜1,000,000が特に好ましい。含フッ素重合体の質量平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、耐久性に優れる。含フッ素重合体の質量平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、加工性に優れる。
含フッ素重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1〜10が好ましく、1.1〜5が特に好ましい。含フッ素重合体の分子量分布が前記範囲内であれば、耐水性に優れ、かつ防汚性に優れる。
本発明におけるコーティング層の平均厚さは、0.05〜5μmであり、0.1〜5μmが好ましく、0.1〜3μmが特に好ましい。コーティング層の平均厚さが、前記範囲の下限値以上であれば、均一な厚さのコーティング層が得られ、超撥水性を発現できる。前記範囲の上限値以下であれば、基材表面の凹凸に追従したコーティング層が得られる。
なお、本明細書におけるコーティング層の平均厚さは、サンプルの断面のレーザ顕微鏡により撮影された画像を用いて、100μmの幅における厚さの平均値を求めることにより算出された値である。
本発明において、撥水面が基材層の表面により構成される場合の該基材層の平均厚さは、10μm以上である。基材層の平均厚さは、100〜1,000μmが好ましく、100〜500μmが特に好ましい。基材層の平均厚さが、前記範囲の下限値以上であれば、均一な厚さのコーティング層が得られ、超撥水性を発現できる。前記範囲の上限値以下であれば、基材表面の凹凸に追従したコーティング層が得られる。
なお、本明細書における基材層の平均厚さは、コーティング層の平均厚さと同様に算出された値である。
本発明において、撥水面がコーティング層の表面により構成される場合、以下の手法1〜3を用いてコーティング層を耐久性に優れたものとすることにより、長期に渡って撥水面の超撥水効果が維持される。
手法1:コーティング層中の含フッ素重合体が有する基の一部と、基材が有する基の一部とを、コーティング層と基材の境界にて反応させる手法。
手法2:コーティング層中の含フッ素重合体に架橋構造を形成させ、耐久性に優れたコーティング層を形成させる手法。
手法3:コーティング層中の含フッ素重合体と架橋剤とが架橋構造を形成させ、耐久性に優れたコーティング層を形成させる手法。
本発明において、撥水面が基材層の表面により構成される場合は、手法4として後述する。
(手法1:第1の実施態様)
本実施態様のコーティング層は、カルボキシ基および加水分解性シリル基のうち少なくとも一方の反応性官能基(以下、「反応性官能基(α)」ともいう。)を有する含フッ素重合体(a1)と溶媒(b1)とを含有するコーティング剤(I)を用いて形成される。反応性官能基(α)は、基材のコーティング層側の表面に有する前記反応性官能基(α)と反応し得る基と反応し結合する。これにより、コーティング層は、基材から剥れにくく、耐久性に優れたものとされているため、長期に渡って撥水面の超撥水効果が維持される。
<含フッ素重合体(a1)>
含フッ素重合体(a1)中の反応性官能基(α)は、含フッ素重合体(a1)の主鎖末端に存在していてもよく、側鎖中に存在していてもよく、主鎖途中の炭素に結合していてもよい。
含フッ素重合体(a1)中の反応性官能基(α)は、反応性官能基(α)を有する含フッ素単量体に由来するものであってもよく、反応性官能基(α)を有する非フッ素単量体に由来するものであってもよく、反応性官能基(α)を有する重合開始剤に由来するものであってもよく、重合後の化学変換により形成されたものでもよい。
反応性官能基(α)としてカルボキシ基を有する含フッ素重合体(a1)を得る具体的な方法としては、例えば、メチルペルフルオロ−5−オキシ−6−ヘプテノエート(CF=CFOCFCFCFCOCH)等のカルボン酸エステル基を有する単量体やメタクリル酸メチル等のカルボン酸エステル基を有する単量体を使用し、共重合後にエステル基を除去してカルボキシ基を形成する方法が挙げられる。
反応性官能基(α)として加水分解性シリル基を有する含フッ素重合体(a1)を得る具体的な方法としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系単量体を使用し、重合する方法が挙げられる。
加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系単量体は市販品を用いてもよく、市販品としてはKBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503(信越シリコーン社製)等が挙げられる。
反応性官能基(α)を有する重合開始剤としては、例えば、((CHCHOCOO)等が挙げられる。
含フッ素重合体(a1)は、さらに、生体親和性基を有していてもよい。生体親和性基とは、タンパク質が重合体に吸着および細胞が重合体に接着して動かなくなることを抑制する性質を有する基を意味する。含フッ素重合体(a1)が生体親和性基を有していれば、コーティング層が防汚性により優れる。生体親和性基としては、下式(1)で表される基(以下、「基(1)」ともいう。)、下式(2)で表される基(以下、「基(2)」ともいう。)、および下式(3)で表される基(以下、「基(3)」ともいう。)等が挙げられる。
Figure 2016123721
ただし、前記式(1)〜(3)中、nは1〜10の整数であり、mは基(1)が含フッ素重合体(a1)において側鎖に含まれる場合は1〜100の整数であり、主鎖に含まれる場合は5〜300であり、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基であり、aは1〜5の整数であり、bは1〜5の整数であり、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは下記の基(3−1)または下記の基(3−2)であり、cは1〜20の整数であり、dは1〜5の整数である。
Figure 2016123721
医療用機器を人工血管として用いた場合、基(1)は、血液中等で運動性が高く、コーティング層の表面を防汚性に優れたものとすることができる。
基(1)は、含フッ素重合体(a1)の主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。
基(1)におけるnは、タンパク質等が吸着しにくい点から、1〜6の整数が好ましく、1〜4の整数が特に好ましい。
基(1)は、直鎖構造であってもよく、分岐鎖構造であってもよい。タンパク質等がより吸着しにくい点から、基(1)は直鎖構造であることが好ましい。
基(1)におけるmは、基(1)が含フッ素重合体(a1)の側鎖に含まれる場合、耐水性に優れる点から、1〜40が好ましく、1〜20が特に好ましい。
基(1)におけるmは、基(1)が含フッ素重合体(a1)の主鎖に含まれる場合、耐水性に優れる点から、5〜300が好ましく、10〜200が特に好ましい。
mが2以上の場合、基(1)の(C2nO)は1種であってもよく、2種以上であってもよい。また、2種以上の場合、その並び方はランダム、ブロック、交互のいずれであってもよい。nが3以上の場合、直鎖構造であってもよく、分岐構造であってもよい。
含フッ素重合体(a1)が基(1)を有する場合、含フッ素重合体(a1)が有する基(1)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
基(2)は、血液中のリン脂質に対して強い親和性を持つ一方、血漿タンパク質に対する相互作用力は弱い。そのため、基(2)を有する含フッ素重合体(a1)を用いることで、例えば血液中ではコーティング層上にリン脂質が優先して吸着し、該リン脂質が自己組織化して吸着層が形成されると考えられる。その結果、表面が血管内皮表面に類似した構造となるために、フィブリノーゲン等のタンパク質の吸着が抑制される。
基(2)は、含フッ素重合体(a1)の側鎖に含まれることが好ましい。
基(2)におけるR〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基であり、原料の入手容易の点から、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
基(2)におけるaは、1〜5の整数であり、原料の入手容易の点から、2〜5の整数が好ましく、2が特に好ましい。
基(2)におけるbは1〜5の整数であり、タンパク質等が吸着しにくい点から、1〜4の整数が好ましく、2が特に好ましい。
含フッ素重合体(a1)が基(2)を有する場合、含フッ素重合体(a1)が有する基(2)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
含フッ素重合体(a1)が基(3)を有することで、基(2)を有する含フッ素重合体(a1)を用いる場合と同様の理由からタンパク質等の吸着が抑制できる。
基(3)は、含フッ素重合体(a1)の側鎖に含まれることが好ましい。
基(3)におけるRおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基であり、タンパク質等が吸着しにくい点から、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
基(3)におけるcは、1〜20の整数であり、含フッ素重合体(a1)が柔軟性に優れる点から、1〜15の整数が好ましく、1〜10の整数がより好ましく、2が特に好ましい。
基(3)におけるdは、1〜5の整数であり、タンパク質等が吸着しにくい点から、1〜4の整数が好ましく、1が特に好ましい。
含フッ素重合体(a1)が基(3)を有する場合、含フッ素重合体(a1)が有する基(3)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
また、含フッ素重合体(a1)が基(3)を有する場合、タンパク質等が吸着しにくい点から、含フッ素重合体(a1)は、Xが基(3−1)である基(3)を有するか、またはXが基(3−2)である基(3)を有するかのいずれかであることが好ましい。
基(1)〜(3)のいずれかを有する含フッ素重合体(a1)としては、反応性官能基(α)を有する含フッ素単量体と基(1)〜(3)のいずれかを有する単量体との共重合体が挙げられる。また、フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体と反応性官能基(α)を有する非フッ素単量体と基(1)〜(3)のいずれかを有する単量体との共重合体が挙げられる。中でも、フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体と反応性官能基(α)を有する非フッ素単量体と基(1)〜(3)のいずれかを有する単量体との共重合体が好ましい。
フルオロアルキル基を有する含フッ素単量体としては、下式(m1)で表される単量体等が挙げられる。
Figure 2016123721
ただし、式中、Rは水素原子、塩素原子またはメチル基であり、eは0〜3の整数であり、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、Rf1は炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基である。
式(m1)中、Rは、重合しやすい点から、水素原子またはメチル基が好ましい。
eは、含フッ素重合体(a1)の柔軟性に優れる点から、1〜3の整数が好ましく、1または2が特に好ましい。
およびRは、耐水性に優れる点から、フッ素原子が好ましい。
f1のペルフルオロアルキル基は、直鎖構造であってもよく、分岐鎖構造であってもよい。Rf1としては、原料が入手容易な点から、炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基が特に好ましい。
単量体(m1)の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
CH=C(CH)COO(CH(CFCF、CH=CHCOO(CH(CFCF、CH=C(CH)COOCHCF、CH=CHCOOCHCF、CH=CRCOO(CHCFCFCF、CH=CRCOO(CHCFCF(CF、CH=CRCOOCH(CF、CH=CRCOOC(CF等。
中でも、耐水性に優れる点から、CH=C(CH)COO(CH(CFCF、CH=CHCOO(CH(CFCF、CH=C(CH)COOCHCFが特に好ましい。
単位(m1)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
また、含フッ素重合体(a1)の好ましい具体例としては、環状含フッ素単量体に由来する単位を有する含フッ素重合体(a11)が挙げられる。
「環状含フッ素単量体」とは、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子間に重合性二重結合を有する単量体、または、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子と含フッ素脂肪族環外の炭素原子との間に重合性二重結合を有する単量体である。
環状含フッ素単量体としては、例えば、下式(a11−1)〜(a11−4)で表される単量体が挙げられる。
Figure 2016123721
含フッ素重合体(a11)は、反応性官能基(α)を有する重合開始剤を用いて合成された環状含フッ素単量体の単独重合体であってもよく、環状含フッ素単量体と反応性官能基(α)を有する単量体と必要に応じてこれらの単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
該他の単量体としては、例えば、ジエン系含フッ素単量体、TFE、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
「ジエン系含フッ素単量体」とは、2個の重合性二重結合およびフッ素原子を有する単量体である。重合性二重結合としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基が好ましい。
ジエン系含フッ素単量体としては、下式(a11−5)で表される単量体(以下、「単量体(a11−5)」ともいう。)が好ましい。
CF=CF−Q−CF=CF ・・・(a11−5)
ただし、Qは、エーテル性酸素原子を有していてもよく、フッ素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の分岐を有してもよいペルフルオロアルキレン基である。該フッ素以外のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
のペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜3が好ましい。
としては、エーテル性酸素原子を有するペルフルオロアルキレン基が好ましい。この場合、ペルフルオロアルキレン基におけるエーテル性酸素原子は、該基の一方の末端に存在していてもよく、該基の両末端に存在していてもよく、該基の炭素原子間に存在していてもよい。環化重合性の点から、ペルフルオロアルキレン基の一方の末端にエーテル性酸素原子が存在していることが好ましい。
単量体(a11−5)の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
CF=CFOCFCF=CF、CF=CFOCF(CF)CF=CF、CF=CFOCFCFCF=CF、CF=CFOCFCF(CF)CF=CF、CF=CFOCF(CF)CFCF=CF、CF=CFOCFClCFCF=CF、CF=CFOCClCFCF=CF、CF=CFOCFOCF=CF、CF=CFOC(CFOCF=CF、CF=CFOCFCF(OCF)CF=CF、CF=CFCFCF=CF、CF=CFCFCFCF=CF、CF=CFCFOCFCF=CF等。
含フッ素重合体(a11)中の全単位に対する環状含フッ素単量体に由来する単位の割合は、20モル%以上が好ましく、40モル%以上が特に好ましい。前記環状含フッ素単量体に由来する単位の割合の上限値は100モル%である。
含フッ素重合体(a11)の具体例としては、例えば、式(a11−1)で表される単量体とTFEとを共重合させて得られる、下式(a11−6)で表される単位を有し、反応性官能基(α)を有する共重合体が挙げられる。
Figure 2016123721
ただし、式(a11−6)中、jは1〜100の整数であり、kは10〜1,000の整数である。
jは、1〜90の整数が好ましく、2〜90の整数が特に好ましい。
kは、10〜800の整数が好ましく、10〜500の整数が特に好ましい。
<<含フッ素重合体(a1)の製造方法>>
含フッ素重合体(a1)の製造方法は、公知の重合方法で行えばよい。重合方法としては、例えば、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法等が挙げられる。
含フッ素重合体(a1)を製造する方法としては、例えば、原料として少なくとも反応性官能基(α)を有する含フッ素単量体を用いて重合反応して含フッ素重合体(a1)を得る方法、原料として少なくとも含フッ素単量体および反応性官能基(α)を有する非フッ素単量体を用いて重合反応して含フッ素重合体(a1)を得る方法、重合の際に反応性官能基(α)を有する重合開始剤を用いる方法、これらを組み合わせた方法が挙げられる。
中でも、得られる含フッ素重合体(a1)中の反応性官能基(α)の含有量を調整しやすい点から、原料として少なくとも反応性官能基(α)を有する含フッ素単量体を用いて重合反応して含フッ素重合体(a1)を得る方法、原料として少なくとも含フッ素単量体および反応性官能基(α)を有する非フッ素単量体を用いて重合反応して含フッ素重合体(a1)を得る方法、またはこれらを組み合わせた方法が好ましい。
含フッ素重合体(a1)は市販品を用いてもよく、市販品としては、CYTOP(登録商標)Mタイプ(旭硝子社製)、CYTOP(登録商標)Aタイプ(旭硝子社製)等が挙げられる。
<コーティング剤(I)>
本発明におけるコーティング剤(I)は、含フッ素重合体(a1)と溶媒(b1)とを含み、必要に応じて、レベリング剤等をさらに含有していてもよい。
溶媒(b1)としては、非含フッ素溶媒、含フッ素溶媒が挙げられ、非含フッ素溶媒としては、アルコール系溶媒、含ハロゲン系溶媒等が挙げられる。例えば、エタノール、メタノール、アセトン、クロロホルム、アサヒクリン(登録商標)AK225(旭硝子社製)、AC−6000(旭硝子社製)等が挙げられる。溶媒(b1)としては、医療用機器等を溶解しない種類を選択することが好ましい。医療用機器としてポリスチレンを使用する場合、エタノール、メタノール、アサヒクリン(登録商標)AK225(旭硝子社製)、AC−6000(旭硝子社製)等が好ましい。
コーティング剤(I)中の含フッ素重合体(a1)の含有量は、0.0001〜10質量%が好ましく、0.0005〜5質量%が特に好ましい。含フッ素重合体(a1)の含有量が前記範囲であれば、均一に塗布することができ、均一なコーティング層が形成できる。
<基材>
基材は、コーティング層側の表面に、含フッ素重合体(a1)中の反応性官能基(α)と反応し得る基を有する。反応性官能基(α)と反応し得る基の種類は、反応性官能基(α)の種類により決まる。
反応性官能基(α)の種類と該反応性官能基(α)と反応し得る基の種類の一般的な組み合わせとしては、反応性官能基(α)がカルボキシ基であるときは、該反応性官能基(α)と反応し得る基はヒドロキシ基であり、反応性官能基(α)が加水分解性シリル基であるときは、該反応性官能基(α)と反応し得る基はカルボキシ基、ヒドロキシ基、加水分解性シリル基またはシラノール基である組み合わせが挙げられる。なお、加水分解性シリル基は加水分解によりシラノール基となる。したがって、反応性官能基(α)が加水分解性シリル基である場合に反応性官能基(α)と反応し得る基とは、シラノール基と反応し得る基を意味する。
基材の材質としては、樹脂、ガラス、金属等が挙げられる。中でも、チューブ等の可撓性を有する医療用機器を製造できる点から樹脂が好ましい。樹脂は、含フッ素樹脂でもよく、非フッ素樹脂でもよい。
含フッ素樹脂としては、TFE−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、「PFA」ともいう。)、TFE−HFP−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、「EPE」ともいう。)、TFE−HFP共重合体(以下、「FEP」ともいう。)、ポリクロロトリフルオロエチレン(以下、「PCTFE」ともいう。)系共重合体、E−TFE共重合体(以下、「ETFE」ともいう。)、E−CTFE共重合体(以下、「ECTFE」ともいう。)、ポリビニリデンフルオリド(以下、「PVDF」ともいう。)系共重合体、ポリビニルフルオリド(以下、「PVF」ともいう。)系共重合体等を含む樹脂が挙げられる。
非フッ素樹脂としては、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を含む樹脂が挙げられる。
本発明における基材の材質としては、コストの点から、非フッ素樹脂が好ましく、非フッ素樹脂の中でも、柔軟性に優れる点から塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
基材は、単層体でもよく、2層以上の積層体でもよい。積層体である場合は、層間の密着性の観点から、各層とも同じ材質であることが好ましい。
<<基材の製造方法>>
基材は、押出成形等の公知の成形方法により成形されたものでもよい。
基材が、例えば、内層と外層の2層の基材層(それぞれ「第1の基材層」、「第2の基材層」ともいう。)を有する基材である場合、該基材は、第2の基材層上に、含フッ素重合体(a1)を押出成形して、平均厚さが10μm以上である第1の基材層を形成することにより得られる。
基材の撥水面側の表面のSmの調整は、例えば、押出成形機を用いて成形を行う場合には、ダイス出口の温度を適宜変更することにより行うことができる。
ダイス出口の温度とSmとの関係は、樹脂毎で異なる。
所望のSmとなるようなダイス出口の温度は、当該樹脂が有する臨界せん断応力と、その臨界せん断応力を示す際の温度から予想できる。予想することにより、効率的に、所望のSmが得られるダイス出口の温度を設定できる。
例えば、当該樹脂の臨界せん断応力が0.08MPa未満の場合、Smが20μm前後になると予想されるダイス出口の温度は、{(臨界せん断応力を示す際の温度)−30}℃程度である。
また、樹脂の臨界せん断応力が0.08MPa〜0.11MPaの場合、Smが20μm前後になると予想されるダイス出口の温度は、{(臨界せん断応力を示す際の温度)−10}℃程度である。
また、樹脂の臨界せん断応力が0.11MPaより高い場合、Smが20μm前後になると予想されるダイス出口の温度は、臨界せん断応力を示す際の温度程度である。
臨界せん断応力の測定は、例えば、以下のように行える。
東洋精機社製キャピラリーレオメーターキャピログラフを用いて、一定温度、一定速度で、ダイスから樹脂を吐出しながら、ストランドを成形する。ストランドは吐出後すぐに水中に落とし、吐出直後の形状を固定化できるようにして、サンプリングを行う。サンプリングしたストランドの表面を、100倍の倍率で光学顕微鏡にて形態観察する。
せん断速度を増加させると、成形品の表面性状が荒れ始める。その際の応力を臨界せん断応力とする。また、せん断速度を増加させるとダイス出口の温度が上昇する。成形品の表面性状が荒れ始める際の温度を、臨界せん断応力を示す際のダイス出口温度とする。
ダイスの出口の温度を予想した温度に設定して、当該樹脂を用いて基材サンプルの成形を試行し、得られた基材サンプルのSmを測定する。所望のSmであった場合、そのまま予想した温度にて所望のSmを有する基材を製造し続けることができる。
所望のSmではなかった場合、ダイス出口の温度を、1〜数℃の範囲で適宜変更して、再度、基材サンプルの成形を試行し、得られた基材サンプルのSmを測定する。通常、ダイス出口の温度を上げるとSmを高く調整でき、温度を下げるとSmを低く調整できる。
表1に、基材に用いられる代表的な樹脂(LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、軟質塩化ビニル、ETFE、PFA、FEP)の臨界せん断応力と、その臨界せん断応力を示す際の温度と、Smが20μm前後となる予想温度との関係を示す。
Figure 2016123721
<医療用機器の製造方法>
本実施態様の医療用機器の製造方法は、親水化工程とコーティング層形成工程とを有する。
親水化工程:
親水化工程は、基材の撥水面側の表面に親水化処理を施す工程である。
親水化処理は、公知の親水化処理でよく、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、オゾン処理、エキシマ処理等が挙げられる。
親水化処理により、基材の撥水面側の表面は、反応性官能基(α)と反応し得る基として、カルボキシ基やヒドロキシ基等が生じる。
コーティング層形成工程:
コーティング層形成工程は、前記基材の親水化処理を施した表面上にコーティング剤(I)を塗布して、平均厚さが0.05〜5μmであるコーティング層を形成する工程である。
コーティング剤(I)の塗布方法は特に限定されず、例えば、コーティング剤(I)を公知の湿式塗布法で塗布して乾燥する方法が採用できる。
<作用効果>
本実施態様では、コーティング層が含フッ素重合体(a1)を含有し、かつ撥水面のSmが特定の範囲であるため、撥水面は超撥水性を有する。
撥水面のSmが特定の範囲であることにより撥水面が超撥水性になるメカニズムは、以下のように考えられる。
特開2006−83244号公報に記載されているように、撥水性被膜の凹凸面においては、その窪みの内径が水滴より小さい微小な窪みである場合、当窪みに空気属がトラップされ、水をはじく性質が増し、見かけの水接触角が大きくなる。この時の見かけの水接触角θは、下式(4)のCassieの式において成分2を空気(θ2=180度)とすることで、その値が求められる。
cosθ=Q1cosθ1+Q2cosθ2 ・・・(4)
Q1:成分1(フッ素材料)が表面を占める割合。
Q2:成分2(空気)が表面を占める割合。
θ1:成分1(フッ素材料)の真の水接触角。
θ2:成分2(空気)の真の水接触角(180度)。
含フッ素樹脂材料の水接触角は、材料化合物によって異なり、代表的なものは下記である。
Cytop−Mの接触角:108度
Q1+Q2=1の関係から式(4)は、下式(5)に変形できる。
cosθ=Q1(1+cosθ1)−1 ・・・(5)
式(5)から、窪みの内径が水滴より小さい微小な窪みの範囲で、含フッ素重合体を含有する材料の表面比が小さいと、撥水性が安定しかつ超撥水に近づくことが分かる。すなわち、撥水面を超撥水性とするには、Smは、窪みの内径が水滴より小さい微小な窪みとなる範囲で、より大きくすることが求められる。
そして本発明では、撥水面を構成するコーティング層または基材層が含フッ素重合体を含有する医療用機器において、撥水面のSmの範囲を特定したことにより、該撥水面は超撥水性を有するものとなっている。
さらに本実施態様では、コーティング層中の含フッ素重合体(a1)が有するカルボキシ基および加水分解性シリル基のうち少なくとも一方の反応性官能基を、基材が有する反応性官能基と反応し得る基と反応することにより、コーティング層が耐久性に優れたものとされているため、長期に渡って撥水面の超撥水効果が維持できる。
(手法2:第2の実施態様)
本実施態様のコーティング層は、含フッ素重合体(a2)と溶媒(b2)とを含有するコーティング剤(II)を用いて形成される。
<含フッ素重合体(a2)>
含フッ素重合体(a2)は、フルオロアルキル基を有する単位(β−1)(以下、「単位(β−1)」ともいう。)、ヒドロキシ基を有する単位(β−2)(以下、「単位(β−2)」ともいう。)、および、イソシアナート基または脱保護によりイソシアナート基に変換し得る基を有する単位(β−3)(以下、「単位(β−3)」ともいう。)とを含む。
コーティング層の形成時には、単位(β−2)が有するヒドロキシ基と、単位(β−3)が有するイソシアナート基または単位(β−3)において脱保護により生じたイソシアナート基とが自己架橋する。これにより、コーティング層は、基材から剥れにくく、耐久性に優れたものとされているため、長期に渡って撥水面の超撥水効果が維持できる。
ヒドロキシ基、またはイソシアナート基もしくは脱保護によりイソシアナート基に変換し得る基は、含フッ素重合体(a2)の主鎖末端に存在していてもよく、側鎖中に存在していてもよく、主鎖途中の炭素に結合していてもよい。
含フッ素重合体(a2)は、さらに、生体親和性基を有していてもよい。含フッ素重合体(a2)が生体親和性基を有していれば、コーティング層が防汚性により優れる。生体親和性基としては、上述の含フッ素重合体(a1)におけるものと同様のものが挙げられ、導入方法も同様である。
単位(β−1)としては、フルオロアルキル基を有する単量体に由来する単位、例えば、上述の式(m1)で表される単量体に由来する単位等が挙げられる。
単位(β−2)が有するヒドロキシ基は、ヒドロキシ基を有する単量体に由来するものであってもよく、含フッ素重合体(a2)中の基をヒドロキシ基化合物により変換した単位に存在するものであってもよい。
中でも、含フッ素重合体(a2)の製造において、得られる含フッ素重合体(a2)中のヒドロキシ基の含有量を調整しやすい点から、ヒドロキシ基は、ヒドロキシ基を有する単量体に由来するものであることが好ましい。
ヒドロキシ基を有する単量体としては、例えば、下式(m2)で表される単量体等が挙げられる。式(m2)中のオキシアルキレン基(C2fO)が生体親和性基として機能し、コーティング層の防汚性にも優れる。
Figure 2016123721
ただし、式(m2)中、Rは水素原子、塩素原子またはメチル基であり、Qは−COO−または−COO(CH−NHCOO−(ただし、hは1〜4の整数である。)であり、R10は水素原子または−(CH−R11(ただし、R11は炭素数1〜8のアルコキシ基であり、iは1〜25の整数である。)であり、fは1〜10の整数であり、gは1〜100の整数である。
式(m2)中、Rは、重合しやすい点から、水素原子またはメチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
は、−COO−が好ましい。
10は、水素原子が好ましい。
gが2以上の場合、複数存在する(C2fO)の種類が同じであっても異なっていてもよい。異なる場合には、その並び方はランダム、ブロック、交互(例えば(CHCHO−CHCHCHCHO)等)のいずれであってもよい。fが3以上の場合には、直鎖構造でも分岐構造でもよい。(C2fO)としては、(CHO)、(CHCHO)、(CHCHCHO)、(CH(CH)CHO)、(CHCHCHCHO)等が挙げられる。
fは、防汚性に優れる点から、1〜6の整数が好ましく、1〜4の整数が特に好ましい。
gは、排除体積効果が高く防汚性に優れる点から、1〜50の整数が好ましく、1〜30の整数がより好ましく、1〜20の整数が特に好ましい。
iは、含フッ素重合体(a2)の柔軟性に優れる点から、1〜4の整数が好ましく、1または2が特に好ましい。
単量体(m2)としては、下式(m21)で表される単量体(m21)が好ましい。
Figure 2016123721
単量体(m2)の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
CH=CH−COO−(CO)−H、CH=CH−COO−(CO)−H、CH=CH−COO−(CO)−H、CH=C(CH)−COO−(CO)−H、CH=C(CH)−COO−(CO)−H、CH=C(CH)−COO−(CO)−H、CH=CH−COO−(CHO)−(CO)g1−CH−OH、CH=CH−COO−(CO)g2−(CO)g3−H、CH=C(CH)−COO−(CO)g2−(CO)g3−H等。
上式においてg1は1〜20の整数であり、g2およびg3はそれぞれ独立に1〜50の整数である。
単量体(m2)としては、防汚性に優れる点から、以下の化合物が好ましい。
CH=CH−COO−(CO)−H、CH=CH−COO−(CO)−H、CH=CH−COO−(CO)−H、CH=CH−COO−(CHO)−(CO)g1−CH−OH、CH=C(CH)−COO−(CO)g2−(CO)g3−H。
単位(β−3)が有するイソシアナート基または脱保護によりイソシアナート基に変換し得る基は、イソシアナート基または脱保護によりイソシアナート基に変換し得る基を有する単量体に由来するものであってもよく、含フッ素重合体(a2)中の基をイソシアナート基または脱保護によりイソシアナート基に変換し得る基を有する化合物により変換した単位に存在するものであってもよく、イソシアナート基または脱保護によりイソシアナート基に変換し得る基を有する重合開始剤に由来するものであってもよい。
中でも、含フッ素重合体(a2)の製造において、得られる含フッ素重合体(a2)中のイソシアナート基または脱保護によりイソシアナート基に変換し得る基の含有量を調整しやすい点から、イソシアナート基または脱保護によりイソシアナート基に変換し得る基は、イソシアナート基または脱保護によりイソシアナート基に変換し得る基を有する単量体に由来するものであることが好ましい。
イソシアナート基を有する単量体としては、具体的には、2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルアクリレート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2−(2−イソシアナトエトキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。中でも、共重合しやすい点から、2−イソシアナトエチルメタクリレートが好ましい。イソシアナート基を有する単量体は市販品を用いてもよく、市販品としては、カレンズMOI(登録商標)、カレンズAOI(登録商標)、カレンズMOI−BEI(登録商標)、カレンズMOI−EG(登録商標)等が挙げられる。
イソシアナート基に変換し得る基を有する単量体としては、具体的には、2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチルメタクリレート、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート等が挙げられる。中でも、共重合しやすい点から、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレートが好ましい。イソシアナート基に変換し得る基を有する単量体は市販品を用いてもよく、市販品としては、カレンズMOI−BM(登録商標)、カレンズMOI−BP(登録商標)等が挙げられる。
含フッ素重合体(a2)における単位(β−1)と単位(β−2)と単位(β−3)の組成比((β−1)/(β−2)/(β−3))(モル比)は、30〜90/5〜35/5〜35が好ましい。
単位(β−1)の組成比が前記下限値以上であれば、フッ素原子含有率を高くすることができ、一方、上限値以下であれば、フッ素原子含有率を低くすることができる。
単位(β−2)の組成比が前記下限値以上であれば、生体親和性に優れ、一方、上限値以下であれば、耐水性に優れる。
単位(β−3)の組成比が前記下限値以上であれば、架橋性に優れ、一方、上限値以下であれば、変色しにくい。
<<含フッ素重合体(a2)の製造方法>>
含フッ素重合体(a2)の製造方法は、公知の重合方法で行えばよい。重合方法としては、例えば、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法等が挙げられる。
含フッ素重合体(a2)を製造する方法としては、単量体(m1)、単量体(m2)、イソシアナート基または脱保護によりイソシアナート基に変換し得る基を有する単量体、必要に応じて基(1)〜(3)を有する単量体を共重合する方法が挙げられる。該方法において、ヒドロキシ基を有する単量体に代えてヒドロキシ基を有する重合開始剤を用いる方法、イソシアナート基または脱保護によりイソシアナート基に変換し得る基を有する単量体に代えてイソシアナート基または脱保護によりイソシアナート基に変換し得る基を有する重合開始剤を用いる方法を採用してもよい。
含フッ素重合体(a2)は、市販品を用いてもよく、市販品としては、アサヒガード(登録商標)(旭硝子社製)等が挙げられる。
<コーティング剤(II)>
本発明におけるコーティング剤(II)は、含フッ素重合体(a2)と溶媒(b2)とを含み、必要に応じて、レベリング剤等をさらに含有していてもよい。
溶媒(b2)としては、上記溶媒(b1)と同様のものが挙げられる。
コーティング剤(II)中の含フッ素重合体(a2)の好ましい含有量は、上述したコーティング剤(I)中の含フッ素重合体(a1)の好ましい含有量と同様である。
<基材>
基材の材質は、上述の「手法1:第1の実施態様」と同様である。
基材は、単層体でもよく、2層以上の積層体でもよい。積層体である場合は、層間の密着性の観点から、各層とも同じ材質であることが好ましい。
基材の製造方法は、上述の「手法1:第1の実施態様」の基材の製造方法と同様である。
<医療用機器の製造方法>
本実施例の医療用機器の製造方法は、コーティング層形成工程を有する。
コーティング形成工程は、基材の撥水面側の表面上にコーティング剤(II)を塗布して、平均厚さが0.05〜5μmであるコーティング層を形成する工程である。
コーティング剤(II)の塗布方法は、上述の第1の実施態様におけるコーティング剤(I)の塗布方法と同様である。
<作用効果>
本実施態様では、コーティング層が含フッ素重合体(a2)を含有し、かつ撥水面のSmが特定の範囲であるため、撥水面は超撥水性を有する。
撥水面のSmが特定の範囲であることにより撥水面が超撥水性になるメカニズムは、上述の第1の実施態様で説明したものと同様である。
さらに本実施態様では、含フッ素重合体(a2)を含有するコーティング剤(II)を用いて含フッ素重合体(a2)に架橋構造を形成させることにより、コーティング層が耐久性に優れたものとされているため、長期に渡って撥水面の超撥水効果が維持できる。
(手法3:第3の実施態様)
本実施態様のコーティング層は、ヒドロキシ基を有する含フッ素重合体(a3)およびヒドロキシ基と反応する架橋剤(c3)と溶媒(b3)とを含有するコーティング剤(III)を用いて形成されたものである。
<含フッ素重合体(a3)>
含フッ素重合体(a3)が有するヒドロキシ基は、含フッ素重合体(a3)の主鎖末端に存在していてもよく、側鎖中に存在していてもよく、主鎖途中の炭素に結合していてもよい。
含フッ素重合体(a3)は、さらに、生体親和性基を有していてもよい。含フッ素重合体(a3)が生体親和性基を有していれば、コーティング層が防汚性により優れる。生体親和性基としては、上述の含フッ素重合体(a1)と同様のものが挙げられる。
含フッ素重合体(a3)の好ましい具体例としては、フルオロアルキル基を有する単量体に由来する単位およびヒドロキシ基を有する単位とを含む共重合体が挙げられる。
フルオロアルキル基を有する単量体に由来する単位としては、上述の式(m1)で表される単量体に由来する単位等が挙げられる。
ヒドロキシ基を有する単位としては、上述の単位(β−2)と同様のものが挙げられる。
<<含フッ素重合体(a3)の製造方法>>
含フッ素重合体(a3)の製造方法は、公知の重合方法で行えばよい。重合方法としては、例えば、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法等が挙げられる。
含フッ素重合体(a3)は、市販品用いてもよく、市販品としては、アサヒガード(登録商標)、ルミフロン(登録商標)(旭硝子社製)等が挙げられる。
<架橋剤(c3)>
ヒドロキシ基と反応する架橋剤(c3)としては、多官能イソシアネート化合物が挙げられる。
多官能イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、HDI系ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。HDI系ポリイソシアネートには、2液型用としてビウレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、アダクトタイプ、2官能型が挙げられ、硬化開始温度に閾値があるブロック型も挙げられる。HDI系ポリイソシアネートは、市販品を使用することができ、デュラネート(登録商標)(旭化成社製)等が挙げられる。
使用する多官能イソシアネート化合物は、反応温度、医療用機器の材質によって適宜選択できる。例えば医療用機器としてポリスチレンを使用する場合、アサヒクリン(登録商標)AK225(旭硝子社製)、AC−6000(旭硝子社製)等に溶解でき、かつポリスチレンの熱変形温度である80℃以下でも硬化反応が進行するビウレットタイプ、イソシアヌレートタイプが好ましい。
コーティング層中の架橋度合いは、含フッ素重合体(a3)中のヒドロキシ基量、添加する架橋剤(c3)の量、反応率等によって決まり、本発明による効果を損なわない範囲で適宜調節できる。
コーティング剤(III)中の架橋剤(c3)の含有量は、含フッ素重合体(a3)の100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜1質量部が特に好ましい。架橋剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、耐久性に優れたコーティング層を形成しやすい。架橋剤(c3)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、生体適合性に優れたコーティング層を形成しやすい。
<コーティング剤(III)>
コーティング剤(III)は、含フッ素重合体(a3)と溶媒(b3)と架橋剤(c3)とを含み、レベリング剤等をさらに含有していてもよい。
溶媒(b3)としては、上記溶媒(b1)と同様のものが挙げられる。
コーティング剤(III)中の含フッ素重合体(a3)の好ましい濃度は、上述したコーティング剤(I)中の含フッ素重合体(a1)の好ましい濃度と同様である。
<基材>
本実施態様の基材は、上述の第2の実施態様と同様である。
<医療用機器の製造方法>
本実施態様の製造方法は、コーティング剤(II)に代えてコーティング剤(III)を用いる以外は、上述の第2の実施態様と同様である。
<作用効果>
本実施態様では、コーティング層が含フッ素重合体(a3)を含有し、かつ撥水面のSmが特定の範囲であるため、撥水面は超撥水性を有する。
撥水面のSmが特定の範囲であることにより撥水面が超撥水性になるメカニズムは、上述の第1の実施態様で説明したものと同様である。
さらに本実施態様では、含フッ素重合体(a3)および架橋剤(c3)を含有するコーティング剤(III)を用いて含フッ素重合体(a3)に架橋構造を形成させることにより、コーティング層が耐久性に優れたものとされているため、長期に渡って撥水面の超撥水効果が維持できる。
(手法4:第4の実施態様)
<基材層>
本実施態様の基材層は、含フッ素重合体(a4)を含有する。
含フッ素重合体(a4)は、分子中にフッ素原子を有する高分子化合物であればよく、特に限定されない。含フッ素重合体(a4)としては、PFA、EPE、FEP、PCTFE、ETFE、ECTFE、PVDF、PVF等が挙げられる。中でも、成形および加工性に優れる点から、ETFEが好ましい。
本実施態様の医療用機器は、基材層として含フッ素重合体(a4)を含有する基材層のみを有するものであってもよく、少なくとも一部の表面が撥水面とされた含フッ素重合体(a4)を含有する基材層を含めた2層以上の基材層を有しているものであってもよい。
2層以上の基材層を有する場合、少なくとも一部の表面が撥水面とされた含フッ素重合体(a4)を含有する基材層以外の基材層は、含フッ素重合体(a4)を含有していてもよく、含フッ素重合体(a4)を含有せず非フッ素重合体のみを含有していてもよい。
基材層に含有させる非フッ素重合体としては、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
本実施態様において2層以上の基材層を有している場合、各層は、層間の密着性に優れる点から、同じ材料を含有していることが好ましい。
本実施態様の医療用機器が内層と外層の2層の基材層を有するチューブ等の医療用機器である場合、内層の基材層が、少なくとも一部の表面が撥水面とされた含フッ素重合体(a4)を含有する基材層であることが好ましい。この場合において、内層の材質と外層の材質は適宜組み合わせられるが、密着性に優れる点から、内層がETFEであるときは、外層はETFEであり、内層がPFAであるときは、外層はETFEまたはPFAであり、内層がFEPであるときは、外層はETFEまたはFEPであることが好ましい。
<医療用機器の製造方法>
基材は、押出成形等の公知の成形方法により成形されたものでよい。
本実施態様の医療用機器が内層と外層の2層の基材層(それぞれ第1の基材層、第2の基材層と称する。)を有するチューブ等の医療用機器である場合、該医療用機器の製造方法は、第2の基材層上に、含フッ素重合体(a4)を押出成形して、平均厚さが10μm以上である第1の基材層を形成する工程を有する。
製造にあたって、得られた医療用機器の撥水面の表面のSmは、5μm超45μm未満になるようにする。撥水面の表面のSmの調整は、上述の第1の実施態様における「基材の製造方法」で説明したのと同じである。
<作用効果>
本実施態様では、少なくとも一部の表面が撥水面とされた含フッ素重合体(a4)を含有する基材層を有し、かつ前記撥水面のSmが特定の範囲であるため、撥水面は超撥水性を有し、長期に渡って撥水面の超撥水効果が維持できる。
なお、基材層の撥水面のSmが本実施態様で特定する範囲である場合、すでに該撥水面が長期に渡って超撥水性を維持できるものであるため、生産効率および生産コストの点から、該撥水面上に上述の第1〜第3の実施態様のコーティング層は形成せず、本実施態様の医療用機器とするのが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。後述する例1〜36においては、例2、5、8、11、14、20、23、26、29および32が実施例、例1、3、4、6、7、9、10、12、13、15〜19、21、22、24、25、27、28、30、31および33〜36が比較例である。
[材料]
(基材成分)
軟質塩化ビニル:ポリ塩化ビニル(カネカ社製「カネビニール(登録商標)」)の100質量部に、イソフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOIP)の45質量部、エポキシ化大豆油(花王社製「カポックス(登録商標) S−6」)の20質量部、Ca−Zn安定剤(アデカ社製「アデカサイザー(登録商標)」)の1.3質量部を、混合器(東洋精機社製「ラボプラストミル」)を用いて混合したものを軟質塩化ビニルとした。臨界せん断応力:0.12MPa。
LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン):日本ポリエチレン社製「ノバテック(登録商標)」、臨界せん断応力:0.15MPa。
ETFE:旭硝子社製「フルオン(登録商標)ETFE C−55AXP」、臨界せん断応力:0.1MPa。
PFA:旭硝子社製「フルオン(登録商標)PFA X−61XP」、臨界せん断応力:0.06MPa。
FEP:デュポン社製「テフロン(登録商標)FEP100」、臨界せん断応力:0.05MPa。
(コーティング剤に含有する成分)
含フッ素重合体(a1−1):旭硝子社製「CYTOP(登録商標)Mタイプ」。
含フッ素重合体(a2−1):後述する合成例1で得た含フッ素共重合体。
含フッ素重合体(a3−1):後述する合成例2で得た含フッ素共重合体。
含フッ素重合体(x):後述する合成例3で得た含フッ素重合体。
架橋剤(c3−1):ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成社製)。
<材料>
C6FMA:CH=C(CH)COO(CH(CFCF(メタクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル、和光社製)。
PEBMA:CH=C(CH)COO[(CO)10(CO)]H(日本油脂社製「55PET800」)。
IMADP:2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート(昭和電工社製「カレンズMOI−BP(登録商標)」)。
[合成例1]
単量体としてC6FMAの5g(50質量部)、PEBMAの2.5g(25質量部)およびIMADPの2.5g(25質量部)、重合溶媒としてアセトンの30g、ならびに重合開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)の0.1g(1質量部)を仕込み、窒素雰囲気下で振とうしつつ、65℃で20時間重合を行い、淡黄色の含フッ素重合体(a2−1)を含む重合体溶液を得た。
共重合組成を測定した結果、該含フッ素重合体(a2−1)のC6FMA単位とPEBMA単位とIMADP単位の含有割合は、モル比47:12:41(質量比50:25:25)であった。
[合成例2]
単量体としてC6FMAの5g(50質量部)およびPEBMAの5g(50質量部)、重合溶媒としてアセトンの30g、ならびに重合開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)の0.1g(1質量部)を仕込み、窒素雰囲気下で振とうしつつ、65℃で20時間重合を行い、淡黄色の含フッ素重合体(a3−1)を含む重合体溶液を得た。
共重合組成を測定した結果、該含フッ素重合体(a3−1)のC6FMA単位とPEBMA単位とIMADP単位の含有割合は、モル比33:67(質量比50:50)であった。
[合成例3]
単量体としてC6FMAの10g(100質量部)、重合溶媒としてアセトンの30g、および重合開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)の0.1g(1質量部)を仕込み、窒素雰囲気下で振とうしつつ、65℃で20時間重合を行い、淡黄色の含フッ素重合体(x)を含む重合体溶液を得た。
[評価方法]
(凹凸の平均間隔Smの算出方法)
得られたチューブを切断し、サンプル片を得た。
レーザ顕微鏡(オリンパス社製「OLS4000」)を用いて、サンプル片の断面の像を得、JIS B0601:1994の定義に基づきSmを算出した。
(水接触角の測定方法)
得られたチューブを切断し、37℃の水に1週間浸漬した。浸漬前後の水接触角を以下の手順で求めた。
静滴法により、JIS R3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、各例で得た基材またはコーティング層の撥水面の3ヶ所に水滴を載せ、各水滴について接触角を測定し、その平均値を水接触角とした。液滴量は約5μL/滴とし、25℃で測定を行った。
[例1]
汎用チューブ成形ダイスをφ25mmの池貝社製単軸押出機「VS25」の2台に接続し、チューブ成形を行った。チューブダイは外径が12mm、内径が8mmであり、その形状から引き落とし倍率を2倍として、最終的に外径6mm、内径4mm、長さ1cmのチューブ基材を成形した。
本例では、チューブ基材の外層および内層の材料に軟質塩化ビニルを用いた。外層を成形するチューブダイの外側出口の設定温度を210℃に、内層を成形するチューブダイの内側出口の設定温度を200℃にした。
得られたチューブ基材の内面を、UVオゾン洗浄機(テクノビジョン社製「UV−208」)を用いてUVオゾン処理し、親水化した。
CT−solv100E(製品名)(旭硝子社製)に、含フッ素重合体(a1−1)を濃度0.05質量%となるように溶解して、コーティング剤を得た。コーティング剤の10mLを親水化したチューブ基材内面に塗工した。次いで、80℃で30分加熱してコーティング層を形成し、チューブを得た。製造条件および評価結果を表2に示す。
[例2〜12、16〜18]
表2に記載した条件以外は例1と同様にチューブを得て、評価を行った。製造条件および評価結果を表2に示す。なお、表中のAC−6000(製品名、C13)は旭硝子社製の含フッ素溶媒である。
[例13〜15]
エタノールに、含フッ素重合体(a3−1)を濃度0.05質量%、架橋剤(c3−1)を濃度0.01質量%になるように溶解して、コーティング剤を作成し、表2に記載の条件にした以外は例1と同様にしてチューブ得て、評価を行った。製造条件および評価結果を表2に示す。
Figure 2016123721
表2に示すように、チューブ基材の内層の材料毎に、内層を成形するチューブダイの内側出口の設定温度を設定することにより、得られるチューブ内面のSmが決まった。
例えば、チューブ基材の内層の材料を軟質塩化ビニルとし、チューブダイの内側出口の設定温度を200℃にした例1、4、10、13、16では、Smは50μmであった。チューブダイの内側出口の設定温度を180℃にした例2、5、11、14、17では、Smは20μmであった。チューブダイの内側出口の設定温度を160℃にした例3、6、12、15、18では、Smは3μmであった。
また、チューブ基材の内層の材料をLLDPEとし、チューブダイの内側出口の設定温度を210℃にした例7では、Smは50μmであった。チューブダイの内側出口の設定温度を200℃にした例8では、Smは20μmであった。チューブダイの内側出口の設定温度を185℃にした例9では、Smは3μmであった。
Smが20μmのチューブのうち、例2、5、8は前記手法1の例であり、例11は前記手法2の例であり、例14は前記手法3の例であり、いずれも水の接触角が初期も1週間後も156度であり、超撥水が維持できた。これに対し、手法1〜3のいずれにも該当しない例17のチューブでは、超撥水が維持できなかった。
Smが50μmのチューブである例1、4、7、10、13、16、およびSmが3μmのチューブである例3、6、9、12、15、18は、水の接触角が初期も1週間後もいずれも低く、超撥水ではなかった。
[例19〜36]
例19〜36では、チューブ基材の外層および内層の材料、外層を成形するチューブダイの外側出口の設定温度、ならびに、内層を成形するチューブダイの内側出口の設定温度を表3に示すようにした以外は、例1と同様にして、チューブ基材を成形した。なお、得られたチューブ基材の内面は親水化せず、コーティング剤によるコーティング層を形成しなかった。
表3に、例19〜36の条件および評価結果を示す。
Figure 2016123721
表3に示すように、チューブ基材の内層の材料をETFEとし、チューブダイの内側出口の設定温度を300℃にした例19、チューブ基材の内層の材料をPFAとし、チューブダイの内側出口の設定温度を370℃にした例22、25、チューブ基材の内層の材料をFEPとし、チューブダイの内側出口の設定温度を370℃にした例28、31では、Smは50μmであった。
また、チューブ基材の内層の材料をETFEとし、チューブダイの内側出口の設定温度を290℃にした例20、チューブ基材の内層の材料をPFAとし、チューブダイの内側出口の設定温度を360℃にした例23、26、チューブ基材の内層の材料をFEPとし、チューブダイの内側出口の設定温度を360℃にした例29、32では、Smは20μmであった。
また、チューブ基材の内層の材料をETFEとし、チューブダイの内側出口の設定温度を280℃にした例21、チューブ基材の内層の材料をPFAとし、チューブダイの内側出口の設定温度を350℃にした例24、27、チューブ基材の内層の材料をFEPとし、チューブダイの内側出口の設定温度を350℃にした例30、33では、Smは3μmであった。
Smが20μmのチューブのうち、例20、23、26、29、32は前記手法4の例であり、いずれも水の接触角が初期も1週間後も156度であり、超撥水が維持できた。これに対し、手法4に該当しない例35のチューブでは、超撥水が維持できなかった。
Smが50μmのチューブである例19、22、25、28、31、Smが3μmのチューブである例21、24、27、30、33、およびチューブ基材の内層の材料を軟質塩化ビニルとした例34〜36は、水の接触角が初期も1週間後もいずれも低く、超撥水ではなかった。
本発明の医療用機器は、チューブ、バイアル、プラスチックコートバイアル、シリンジ、プラスチックコートシリンジ、アンプル、プラスチックコートアンプル、カートリッジ、ボトル、プラスチックコートボトル、パウチ、ポンプ、噴霧器、栓、プランジャー、キャップ、蓋、針、ステント、カテーテル、インプラント、コンタクトレンズ、マイクロ流路チップ、ドラッグデリバリーシステム材、人工血管、人工臓器、血液透析膜、ガードワイヤー、血液フィルター、血液保存パック、内視鏡、バイオチップ、糖鎖合成機器、成形補助材、包装材等、医療用に用いられる様々な機器に用い得る。
本発明の医療用機器がチューブである場合、チューブ内面が撥水面とされる。

Claims (9)

  1. 少なくとも一部の表面が撥水面とされた医療用機器であって、
    基材と、前記基材における前記撥水面側に設けられたコーティング層とを有し、
    前記コーティング層がカルボキシ基および加水分解性シリル基のうち少なくとも一方の反応性官能基を有する含フッ素重合体を含有するコーティング剤から形成されてなり、
    前記基材は前記コーティング層側の表面に前記反応性官能基と反応し得る基を有し、
    前記反応性官能基がカルボキシ基である場合、前記反応性官能基と反応し得る基はヒドロキシ基であり、
    前記反応性官能基が加水分解性シリル基である場合、前記反応性官能基と反応し得る基はカルボキシ基またはヒドロキシ基であり、
    前記コーティング層の平均厚さが0.05〜5μmであり、
    前記コーティング層の表面が前記撥水面を構成しており、
    前記撥水面のJIS B0601:1994で定義される凹凸の平均間隔Smが、5μm超45μm未満であることを特徴とする医療用機器。
  2. 少なくとも一部の表面が撥水面とされた医療用機器であって、
    基材と、前記基材における前記撥水面側に設けられたコーティング層とを有し、
    前記コーティング層が含フッ素重合体を含有するコーティング剤から形成されてなり、
    前記含フッ素重合体がフルオロアルキル基を有する単位、ヒドロキシ基を有する単位、および、イソシアナート基または脱保護によりイソシアナート基に変換し得る基を有する単位を含み、
    前記コーティング層の平均厚さが0.05〜5μmであり、
    前記コーティング層の表面が前記撥水面を構成しており、
    前記撥水面のJIS B0601:1994で定義される凹凸の平均間隔Smが、5μm超45μm未満であることを特徴とする医療用機器。
  3. 少なくとも一部の表面が撥水面とされた医療用機器であって、
    基材と、前記基材における前記撥水面側に設けられたコーティング層とを有し、
    前記コーティング層がヒドロキシ基を有する含フッ素重合体およびヒドロキシ基と反応する架橋剤を含有するコーティング剤から形成されてなり、
    前記コーティング層の平均厚さが0.05〜5μmであり、
    前記コーティング層の表面が前記撥水面を構成しており、
    前記撥水面のJIS B0601:1994で定義される凹凸の平均間隔Smが、5μm超45μm未満であることを特徴とする医療用機器。
  4. 少なくとも一部の表面が撥水面とされた、含フッ素重合体を含有する基材層を有する医療用機器であって、
    前記基材層の平均厚さが10μm以上であり、
    前記撥水面のJIS B0601:1994で定義される凹凸の平均間隔Smが、5μm超45μm未満であることを特徴とする医療用機器。
  5. 前記撥水面の水接触角が150度以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用機器。
  6. 内面が前記撥水面とされたチューブである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療用機器。
  7. 請求項1に記載の医療用機器の製造方法であって、
    前記基材の撥水面側の表面に親水化処理を施す、親水化工程と、
    前記基材の親水化処理を施した表面上にコーティング剤を塗布して、平均厚さが0.05〜5μmである前記コーティング層を形成する、コーティング層形成工程とを有し、
    前記基材の撥水面側の表面のJIS B0601:1994で定義される凹凸の平均間隔Smが、5μm超45μm未満であることを特徴とする医療用機器の製造方法。
  8. 請求項2または3に記載の医療用機器の製造方法であって、
    前記基材の撥水面側の表面上にコーティング剤を塗布して、平均厚さが0.05〜5μmであるコーティング層を形成する、コーティング層形成工程を有し、
    前記基材の撥水面側の表面のJIS B0601:1994で定義される凹凸の平均間隔Smが、5μm超45μm未満であることを特徴とする医療用機器の製造方法。
  9. 請求項4に記載の医療用機器の製造方法であって、
    前記医療用機器が、前記一部の表面が撥水面とされた第1の基材層と、第2の基材層とを有し、
    前記第2の基材層上に、前記含フッ素重合体を押出成形して、平均厚さが10μm以上である前記第1の基材層を形成する工程を有することを特徴とする医療用機器の製造方法。
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