JP2016122548A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】製造コストを抑制しつつカソード極への酸素ガスの侵入を正確に検知できる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム1は、酸素ガスが供給されるカソード極と水素ガスが供給されるアノード極とを有する燃料電池スタック10と、燃料電池スタック10のカソード極からアノード極に放電電流を流す放電素子84と、カソード極と放電素子84との間に接続され、スタック電圧が所定の電圧になるまでオフし、放電電流を遮断し、スタック電圧が所定の電圧になるとオンし、放電電流を流すダイオード85と、スタック電圧を検知する電圧センサ16と、燃料電池スタック10の作動停止中に、電圧センサ16が検知した電圧がしきい値電圧に達したときに、燃料電池スタックのカソード極に基準量を超えた酸素ガスが侵入したと判定する制御部64とを有する。しきい値電圧は、電圧センサの検出可能な下限の電圧以上であり且つ所定の電圧以下である。
【選択図】図2

Description

本発明は燃料電池システムに関する。
燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電力を発生すると共に発生した電力を車両駆動用電気モータに供給する燃料電池スタックを搭載した車両が知られている。燃料電池スタックを搭載した車両において、燃料電池スタックのアノード極とカソード極との間にリレー又は継電器とも称されるスイッチング素子を配置することが知られている(例えば、特許文献1を参照)。アノード極とカソード極との間に配置される継電器は、燃料電池スタックの作動中はオンして燃料電池スタックのアノード極とカソード極との間を短絡し、燃料電池スタックの作動停止中はオフして燃料電池スタックのアノード極とカソード極との間を開放する。
特開2009−218066号公報
特許文献1に記載される燃料電池において、カソード極から流出するガスであるカソードオフガスの量を制御するカソードオフガス制御弁として安価な弁が採用されると、燃料電池スタックの作動停止中に、カソードオフガス制御弁を介してカソード極に空気が侵入するおそれがある。燃料電池スタックが作動を停止した直後には、燃料電池スタックのカソード極は、酸素ガスが消費され窒素ガスが残存した状態になっている。一方、燃料電池スタックのアノード極は、燃料ガスである水素ガスが残存した状態になっている。カソードオフガス制御弁を介して燃料電池スタックの作動停止中にカソード極に空気が侵入すると、燃料電池スタックにカソード極に侵入した空気中の酸素ガスに起因する種々の反応により燃料電池スタックが劣化するおそれがある。すなわち、燃料電池スタックの作動停止中にカソード極に侵入した空気中の酸素ガスは、カソード極に局所的に存在し、いわゆる部分電池をアノード極の水素と形成する。形成された部分電池は、アノード極を劣化させながら異常電位を生じ、燃料電池スタックのアノード極とカソード極との間の電圧(以下、スタック電圧とも称する)を上昇させる。さらに酸素ガスがカソード極に侵入すると、カソード極に侵入した酸素ガスが電解質を透過してアノード極に侵入し始める。酸素ガスが電解質を透過してアノード極に侵入し拡散すると、アノード極に拡散した酸素ガスがアノード極の触媒を酸化する反応が起きる。このように、特許文献1に記載される燃料電池では、燃料電池スタックの作動停止中に継電器がオフされ、燃料電池スタックのアノード極とカソード極との間が開放されているので、部分電池に起因するアノード極劣化と、アノード極に拡散した酸素ガスに起因するアノード極劣化とが生じうる。
また、燃料電池スタックを搭載した車両の製造コストを低減するための種々の方策が検討されている。例えば、上述のように、カソードオフガス制御弁として安価な弁を採用すること、及び燃料電池スタックのアノード極とカソード極との間に配置される継電器を省略すること等が検討されている。
燃料電池スタックのアノード極とカソード極との間の継電器が省略された場合には、燃料電池スタックのアノード極とカソード極との間は、燃料電池スタックの作動停止中も開放状態にされずに短絡状態が維持される場合がある。例えば、燃料電池スタックのアノード極とカソード極との間の電位を昇圧する昇圧チョッパが燃料電池スタックのアノード極及びカソード極に接続されている場合、昇圧チョッパに配置される電荷放電用の抵抗素子を介してアノード極とカソード極とが短絡される。
燃料電池スタックの作動停止中に、燃料電池スタックのアノード極とカソード極が短絡されると、上述した部分電池によるアノード極劣化は生じない。部分電池により生成される電荷は、燃料電池スタック内部ではなく電荷放電用の抵抗素子を介して流れるため、アノード極を劣化させる異常電位が生じないためである。しかしながら、燃料電池スタックのアノード極とカソード極との間の継電器が省略されて燃料電池スタックの作動停止中も短絡状態が維持される場合、上述したアノード極に拡散した酸素ガスに起因するアノード極劣化は依然として生じるおそれがある。そこで、カソード極への酸素ガスの侵入を検知できれば、アノード極劣化を抑制できると考えられる。この点、特許文献1に記載される燃料電池では、燃料電池スタックの作動停止中に燃料電池スタックのアノード極とカソード極との間は、継電器により開放されるので、カソード極に侵入した酸素ガスに起因して形成される部分電池の異常電位により上昇したスタック電圧を検知することにより、酸素ガスがカソード極に侵入したことを検知することができる。しかしながら、燃料電池スタックのアノード極とカソード極との間の継電器が省略されると、カソード極に侵入した酸素ガスに起因して形成される部分電池の異常電位によるスタック電圧の上昇が検知できないため、カソード極への酸素ガスの侵入を正確に検知できないという問題がある。
本発明の一観点によれば、アノード極に供給される水素ガスと、カソード極に供給される空気中の酸素ガスの電気化学反応により電力を発生する燃料電池スタックと、アノード極に水素ガスを供給する水素ガス源と、水素ガス源とアノード極の間に配置され、アノード極に供給される水素ガスの量を調整する水素ガス導入弁と、カソード極に空気を供給する空気供給器と、カソード極からカソードオフガスが流入するカソードオフガス通路と、カソードオフガス通路に配置されたカソードオフガス制御弁と、アノード極とカソード極との間に電気的に接続され、カソード極からアノード極に放電電流を流す放電素子と、カソード極と放電素子との間に電気的に接続され、アノード極とカソード極との間の電圧が所定の電圧に上昇するまでオフし、放電電流を遮断し、アノード極とカソード極との間の電圧が所定の電圧まで上昇するとオンし、放電電流を流すダイオードと、燃料電池スタックのアノード極と燃料電池スタックのカソード極との間の電圧を検知する電圧センサと、水素ガス導入弁及びカソードオフガス制御弁が閉弁し且つ空気供給器が停止している燃料電池スタックの作動停止中に、電圧センサが検知した電圧が、しきい値電圧に達したときに、燃料電池スタックのカソード極に基準量を超えた酸素ガスが侵入したと判定する制御部と、を有し、しきい値電圧は、電圧センサの検出可能な下限の電圧以上であり且つ所定の電圧以下である特徴とする燃料電池システムが提供される。
製造コストを抑制しつつカソード極への酸素ガスの侵入を正確に検知できる燃料電池システムを提供できる。
実施例に係る電動車両の燃料電池システムの全体図である。 図1に示す燃料電池システムの部分回路ブロック図である。 図1に示す燃料電池システムの作動停止時の燃料電池スタックのスタック電圧の経時変化を示す図である。 アノード極劣化防止制御の処理フローを示すフローチャートである。
燃料電池システムは、燃料電池スタックのスタック電圧が所定の電圧になるまでオフし、アノード極とカソード極との間に流れる放電電流を遮断し、スタック電圧が所定の電圧になるとオンし、アノード極とカソード極との間に放電電流を流すダイオードを有する。燃料電池スタックのスタック電圧が所定の電圧になるまで、ダイオードが放電電流を遮断するので、燃料電池スタックのカソード極とアノード極との間が開放される。電圧センサが検知可能な電圧に上昇するまでカソード極とアノード極との間が開放されるので、燃料電池スタックの作動停止中に、カソード極への酸素ガスの侵入によるスタック電圧の上昇を検知し、燃料電池スタックのアノード極劣化を防止する処理を実行することができる。
図1は、実施例に係る電動車両の燃料電池システムの全体図である。燃料電池システム1は、燃料電池スタック10を備える。
燃料電池スタック10は、積層方向に互いに積層された複数の燃料電池単セルを備える。各燃料電池単セルは、膜電極接合体20を含む。膜電極接合体20は、膜状の電解質と、電解質の一側に形成されたアノード極と、電解質の他側に形成されたカソード極とを備える。アノード極及びカソード極のそれぞれは、例えば触媒として作用する白金粒子を担持したカーボン粒子から形成される。
燃料電池単セルのアノード極及びカソード極は、それぞれ直列に電気的に接続され、燃料電池スタック10のアノード極及びカソード極を構成する。燃料電池スタック10のアノード極及びカソード極のそれぞれは、昇圧チョッパ11を介してインバータ12に電気的に接続される。インバータ12は、モータジェネレータ13に電気的に接続される。また、燃料電池システム1は、蓄電器14を備えており、蓄電器14は、DC/DCコンバータ15を介してインバータ12に電気的に接続される。昇圧チョッパ11は、燃料電池スタック10のスタック電圧を昇圧してインバータ12に出力する。インバータ12は、昇圧チョッパ11又は蓄電器14から入力された直流電流を交流電流に変換してモータジェネレータ13に出力する。DC/DCコンバータ15は、燃料電池スタック10又はモータジェネレータ13から蓄電器14への電圧を降圧し、又は蓄電器14からモータジェネレータ13への電圧を昇圧する。モータジェネレータ13は、DC/DCコンバータ15から入力された電圧に応じて、車両駆動用の電気モータとして作動し、車両を駆動する。燃料電池システム1では、蓄電器14は、直列接続された複数の蓄電池を有する。燃料電池スタック10のアノード極及びカソード極は、直列接続された燃料電池単セルの合計の電圧である燃料電池スタック10のスタック電圧を検出する電圧センサ16に電気的に接続される。電圧センサ16は、検出可能な下限の電圧が規定されている。例えば、電圧センサの検出可能な下限の電圧は、0.1Vに規定される。
また、燃料電池単セルには、アノード極に水素ガスを供給する水素ガス流通路と、カソード極に空気を供給する空気流通路と、燃料電池単セルに冷却水を供給する冷却水流通路とが形成される。複数の燃料電池単セルの水素ガス流通路、空気流通路、及び冷却水流通路をそれぞれ直列に接続することにより、燃料電池スタック10には、水素ガス通路30、空気通路40、及び冷却水通路(図示しない)がそれぞれ形成される。
水素ガス通路30の入口には水素ガス供給路31が連結され、水素ガス供給路31は水素ガス源である水素タンク32に連結される。水素ガス供給路31には、遮断弁33と、水素ガス供給路31の水素ガスの圧力を調整するレギュレータ34と、水素タンク32からの水素ガスを燃料電池スタック10に供給する水素ガスインジェクタ35とが水素タンク32側から順に配置される。水素ガスインジェクタ35は、燃料電池スタック10のアノード極に供給される水素ガスの量を調整する。図1の実施例では、水素ガスインジェクタ35は、電磁式のインジェクタであり、3個の水素ガスインジェクタ35は、水素ガス供給路31に互いに並列に配置される。他の実施例では、2個以下、又は4個以上の水素ガスインジェクタ35が水素ガス供給路31に互い並列に配置される。一方、水素ガス通路30の出口には、アノードオフガス通路36が連結される。アノードオフガス通路36には、アノードオフガス通路36を流れるアノードオフガスの量を制御するアノードオフガス排出弁37が配置される。遮断弁33が開弁され、水素ガスインジェクタ35が開弁されると、水素タンク32の水素ガスが水素ガス供給路31を介して燃料電池スタック10の水素ガス通路30に供給される。このとき、水素ガス通路30から流出するガス、すなわちアノードオフガスは、アノードオフガス通路36に流入する。
また、空気通路40の入口には空気供給路41が連結され、空気供給路41は空気源である大気42に連結される。空気供給路41には、エアクリーナ43と、空気を燃料電池スタック10のカソード極に供給する空気供給器44と、空気供給器44から燃料電池スタック10に送られる空気を冷却するインタークーラ45とが大気42側から順に配置される。図1の実施例では、空気供給器44は、空気を圧送するコンプレッサである。一方、空気通路40の出口には、カソードオフガス通路46が連結される。空気供給器44が駆動されると、空気が空気供給路41を介して燃料電池スタック10の空気通路40に供給される。このとき空気通路40から流出するガス、すなわちカソードオフガスは、カソードオフガス通路46に流入する。カソードオフガス通路46には、カソードオフガス通路46を流れるカソードオフガスの量を制御するカソードオフガス制御弁47が配置される。カソードオフガス通路46のカソードオフガス制御弁47の下流側と、空気供給路41のインタークーラ45の下流側とは、空気バイパス通路49により互いに連結される。空気バイパス通路49の入口には、空気バイパス制御弁48が配置される。空気バイパス制御弁48は、燃料電池スタック10を迂回して空気供給路41からカソードオフガス通路46へ流れる空気の量を制御する。図1に示される燃料電池システム1では、空気バイパス制御弁48は三方弁である。
図1に示される実施例では、空気供給器44は、空気供給器44の停止時に、わずかな空気が通過する状態になっている。また、カソードオフガス制御弁47は、閉弁されたときすなわちカソードオフガス制御弁47の開度を最小にしたときに、わずかな空気が通過する状態になっている。言い換えると、空気供給器44が作動停止し且つカソードオフガス制御弁47が閉弁しているときであっても、燃料電池スタック10の空気通路40は密閉されておらず、空気通路40には大気42から空気が侵入可能な状態になっている。このような空気供給器44及びカソードオフガス制御弁47を用いると、燃料電池システム1の製造コストを大幅に低減することができる。図1に示される燃料電池システム1では、カソードオフガス制御弁47は、バタフライバルブである。
電子制御ユニット60は、双方向性バス61によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)62、RAM(ランダムアクセスメモリ)63、制御部64、入力ポート65及び出力ポート66を具備する。制御部64は、電子制御ユニット60の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(マイクロプロセッサ)である。制御部64は、ROM92に記憶されているプログラムに基づいて種々の処理を実行する。例えば、制御部64は、不図示の上位制御装置から燃料電池スタック10の発電の開始を指示されたとき、遮断弁33等の弁を動作させて燃料電池スタック10の発電を開始させるための処理を実行する。また、制御部64は、不図示の上位制御装置から燃料電池スタック10の発電の停止を指示されたとき、遮断弁33等の弁を動作させて燃料電池スタック10の発電を停止させるための処理を実行する。また、制御部64は、後述するアノード極劣化防止制御を実行する。電圧センサ16の出力信号は、対応するAD変換器67を介して、入力ポート65に入力される。一方、出力ポート66は、対応する駆動回路68を介して、昇圧チョッパ11、インバータ12、モータジェネレータ13及びDC/DCコンバータ15に電気的に接続される。また、出力ポート66は、対応する駆動回路68を介して、遮断弁33、レギュレータ34、水素ガスインジェクタ35、アノードオフガス排出弁37、空気供給器44、カソードオフガス制御弁47、空気バイパス制御弁48に電気的に接続される。図1に示される実施例では、電子制御ユニット60は、電源70に電気的に接続される。
燃料電池スタック10が発電を開始するとき、すなわち燃料電池スタック10が作動を開始するときには、制御部64は、遮断弁33及び水素ガスインジェクタ35を開弁し、燃料電池スタック10への水素ガスの供給を開始する。また、制御部64は、空気供給器44を駆動し、空気バイパス制御弁48を開弁して空気供給器44と燃料電池スタック10とを連通し、カソードオフガス制御弁47を開弁し、燃料電池スタック10への空気の供給を開始する。これにより、燃料電池スタック10の燃料電池単セルのそれぞれにおいて電気化学反応(H2→2H++2e-,(1/2)O2+2H++2e-→H2O)が起こり、電力が発生される。燃料電池スタック10の燃料電池単セルのそれぞれで発生された電力はモータジェネレータ13に送られる。その結果、モータジェネレータ13が車両駆動用の電気モータとして作動され、車両が駆動される。一方、例えば車両制動時には、モータジェネレータ13が回生装置として作動し、モータジェネレータ13で生成された電力は、蓄電器14に蓄電される。
燃料電池スタック10の作動を停止するときには、制御部64は、遮断弁33及び水素ガスインジェクタ35を閉弁し、燃料電池スタック10への水素ガスの供給を停止する。また、制御部64は、空気供給器44を停止し、カソードオフガス制御弁47を閉弁し、燃料電池スタック10への酸素ガスの供給を停止する。アノードオフガス排出弁37は、通常は閉弁されている。アノードオフガス排出弁37は、燃料電池スタックの作動中に所定の周期毎に一時的に開弁し、カソード極からアノード極に侵入した酸素ガスと、水素ガスとにより生成された水、及びカソード極からアノード極に侵入した窒素ガスを排出する。
図2は、昇圧チョッパ11の内部回路ブロック図を含む燃料電池システム1の部分回路ブロック図である。
昇圧チョッパ11は、コイル80と、第1スイッチング素子81と、第2スイッチング素子82と、コンデンサ83と、放電用抵抗素子84と、直列接続された2つのダイオード85とを有する。第1スイッチング素子81及び第2スイッチング素子82のそれぞれは、電子制御ユニット60から入力される信号に応じてオンオフする。
コイル80は、一端が燃料電池スタック10のカソード極に電気的に接続され、他端が第1スイッチング素子81のコレクタ及び直列接続されたダイオード85の前段のアノードに電気的に接続される。第1スイッチング素子81及び第2スイッチング素子82はそれぞれ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)である。第1スイッチング素子81及び第2スイッチング素子82のゲートは電子制御ユニット60の出力ポート66に電気的に接続される。第1スイッチング素子81及び第2スイッチング素子82は、燃料電池スタック10の作動時に、燃料電池スタック10のスタック電圧を昇圧するときには、制御部64の指示に応じて、交互にオンオフする。第1スイッチング素子81のエミッタは燃料電池スタック10のアノード極に電気的に接続される。第2スイッチング素子82のコレクタは、直列接続されたダイオード85の後段のカソードに電気的に接続され、第2スイッチング素子82のエミッタは、コンデンサ83及び放電用抵抗素子84の一端に電気的に接続される。コンデンサ83及び放電用抵抗素子84の他端は燃料電池スタック10のアノード極に電気的に接続される。
直列接続された2つのダイオード85は、シリコンで形成され、順方向に電流が流れ始めるカットイン電圧は0.6Vである。すなわち、直列接続された2つのダイオード85は、前段のダイオード85のアノードの電位が後段のダイオード85のカソードの電位よりも1.2V高くなるまでオフして電流を流さない。そして、直列接続された2つのダイオード85は、前段のダイオード85のアノードの電位が後段のダイオード85のカソードの電位よりも1.2V高くなるとオンして電流を流し始める。すなわち、直列接続された2つのダイオード85は、入出力端の電位差が1.2Vになるまでオフして入出力端に流れる電流を遮断し、入出力端の電位差が1.2Vになると入出力端に電流を流す。
燃料電池スタック10が作動する間、第1スイッチング素子81及び第2スイッチング素子82は、所定の周期で交互にオンオフすることにより、コイル80に誘導起電力を発生させて、燃料電池スタック10のスタック電圧を昇圧する。昇圧チョッパ11は、第1スイッチング素子81及び第2スイッチング素子82のそれぞれがオンする1周期当たりの期間の比率に応じてスタック電圧Vsを昇圧した昇圧電圧VUPを出力する。第1スイッチング素子81がオンし且つ第2スイッチング素子82がオフする1周期当たりの期間をT1ONとし、第1スイッチング素子81がオフし且つ第2スイッチング素子82がオンする1周期当たりの期間をT2ONとすると、昇圧電圧VUPは、
Figure 2016122548
となる。一例では、燃料電池スタック10のスタック電圧VSは370Vであり、燃料電池スタック10が作動する間、直列接続された2つのダイオード85は、昇圧電圧VUPは650Vである。
一方、燃料電池スタック10の作動停止中には、第1スイッチング素子81がオフし且つ第2スイッチング素子82がオンする。昇圧チョッパ11は、コンデンサ83及び直列接続された2つのダイオード85を介して、燃料電池スタック10のアノード極からカソード極に放電電流を放電する放電経路を形成する。燃料電池スタック10の作動停止中に形成される放電経路は、燃料電池スタック10のスタック電圧VSが1.2Vより小さいとき、ダイオード85がオフするので燃料電池スタック10のアノード極とカソード極の間が開放されて放電電流を流さない。燃料電池スタック10の作動停止中に形成される放電経路は、スタック電圧VSが1.2V以上になると、ダイオード85がオンして燃料電池スタック10のアノード極とカソード極の間が放電用抵抗素子84を介して短絡されて放電電流を流す。
図3は、燃料電池システム1における、作動停止時の燃料電池スタック10のスタック電圧VSの経時変化を示す図である。
図3においてX1で示されるタイミングでは、燃料電池スタック10は作動中である。この場合、電解質の一側にあるアノード極には水素ガスが供給されており、電解質の他側にあるカソード極には空気が供給されており、燃料電池スタック10の燃料電池単セルのそれぞれで電気化学反応が行われて電力が発生される。図3において、このときのスタック電圧VSはVS1で示される。
次いで、図3においてX2で示されるように燃料電池スタック10の作動が停止されると、上述したように燃料電池スタック10への水素ガス及び空気の供給が停止される。燃料電池スタック10への水素ガス及び空気の供給が停止されても、アノード極に残存する水素ガス及びカソード極に残存する酸素ガスによりの電気化学反応による発電が継続されており、スタック電圧VSは直ちに低下しない。ただし、アノード極に残存する水素ガスの量及びカソード極に残存する酸素ガスの量が次第に減少するので、図3にX3で示されるようにスタック電圧VSは次第に低下する。
次いで、アノード極に残存する水素ガスの量に対してカソード極に残存する酸素ガスの量が不足すると、発電が停止し、図3においてX4で示されるようにスタック電圧VSがゼロとなる。このとき、アノード極には水素ガスが残存し、カソード極には酸素ガスはほとんど残存していない。このとき、アノード極に残存している水素ガスの一部は、アノード極からカソード極に徐々に透過する。
燃料電池スタック10のカソード極に酸素ガスがほとんど存在しないとき、図3においてX5で示されるように、スタック電圧VSはゼロに維持される。ところが、上述したように、図1に示される燃料電池スタック10では、燃料電池スタック10の作動停止時に燃料電池スタック10の空気通路40内に酸素ガスを含む空気が侵入し、カソード極に酸素ガスが到達しうる。アノード極からカソード極に透過する水素ガスの量が、カソード極に侵入する酸素ガスの量の2倍(水素酸素比:2)よりも大きいときには、侵入した酸素ガスは、透過した水素ガスと水を生成することにより消費される。この際には、カソード極の電位は上昇せず、スタック電圧VSはゼロに維持される。
ところが、アノード極に残存する水素ガスの量が次第に少なくなってアノード極からカソード極に透過する水素ガスの量が減少すると、酸素ガスがカソード極に滞留し、酸素溜まりを形成する。カソード極に生じた酸素溜まりに含まれる酸素ガスは、いわゆる部分電池をアノード極の水素と形成する。カソード極に生じた酸素溜まりに含まれる酸素ガスがアノード極の水素と部分電池を形成して、アノード極とカソード極との間に異常電位が発生すると、アノード極の触媒を担持するカーボンが劣化し、アノード極が劣化するおそれがある。さらに酸素ガスがカソード極に侵入すると、カソード極に侵入した酸素ガスが電解質を透過してアノード極に侵入し始める。カソード極に侵入した空気中の酸素ガスが電解質を透過してアノード極に侵入し拡散すると、アノード極に侵入した酸素ガスがアノード極の触媒を酸化する反応が起きてアノード極が劣化するおそれがある。そこで、燃料電池スタック10のカソード極に基準量を超えた酸素ガスが侵入したと判定したときに、アノード極に所定の圧力の水素ガスを供給することにより、作動停止中の燃料電池スタック10のアノード極及びカソード極に存在する酸素ガスを消費する。具体的には、基準量を超えた酸素ガスがカソード極に侵入したと判定したときにアノード極に供給されて水素ガスは、アノード極に侵入した酸素ガスを消費すると共に、アノード極からカソード極に透過してカソード極に侵入した酸素ガスを消費する。
上述のように、燃料電池スタック10のアノード極からカソード極に放電電流を放電する放電経路には、直列接続された2つのダイオード85が配置される。直列接続された2つのダイオード85は、前段のダイオード85のアノードの電位が後段のダイオード85のカソードの電位よりも1.2V高くなるまで、すなわち燃料電池スタック10のスタック電圧VSが1.2Vになるまでオフする。直列接続された2つのダイオード85がオフする間、燃料電池スタック10のアノード極とカソード極との間は開放状態となり、図3においてX6で示されるように、スタック電圧VSは、酸素溜まりに含まれる酸素ガスが部分電池を形成することにより上昇する。
燃料電池システム1では、燃料電池スタック10の作動停止時におけるスタック電圧VSが直列接続された2つのダイオード85のカットイン電圧VDに等しくなるまで、燃料電池スタック10のアノード極とカソード極との間を開放状態にして放電電流を遮断する。燃料電池スタック10のアノード極とカソード極との間を開放状態の間、カソード極の酸素溜まりの酸素ガスがアノード極の水素ガスと形成する部分電池に起因する異常電位によりスタック電圧VSは上昇し、電圧センサ16が検知可能な電圧まで昇圧される。燃料電池システム1では、燃料電池システム10の作動停止中にスタック電圧VSが所定のしきい値電圧Vthに達したときに、制御部64が燃料電池スタック10のアノード極劣化を防止するためのアノード極劣化防止制御を行う。一例では、しきい値電圧Vthは1.0Vである。
図4は、制御部64が行うアノード極劣化防止制御の処理フローを示すフローチャートである。制御部64は、燃料電池スタック10の作動停止から所定の期間が経過し発電が停止したこと、すなわち図3でX4で示す時点のように燃料電池スタック10の作動停止中にスタック電圧VSがゼロになったことを条件に、アノード極劣化防止制御を実行する。制御部64は、燃料電池スタック10の作動停止中に、アノード極劣化防止制御を一定の周期毎に実行する。
まず、制御部64は、電圧センサ16が検出した燃料電池スタック10の作動停止中のスタック電圧VSを取得する(S101)。次いで、制御部64は、取得したスタック電圧VSが所定のしきい値電圧Vthに達したか否かを判定する(S102)。制御部64が取得したスタック電圧VSが所定のしきい値電圧Vthよりも達していないと判定したとき、処理は終了する。制御部64が取得したスタック電圧VSが所定のしきい値電圧Vthに達したときに、制御部64は、燃料電池スタック10のカソード極に基準量を超えた酸素ガスが侵入したと判定し、遮断弁及び水素ガスインジェクタ35を開弁して、燃料電池スタック10のアノード極に水素ガスを供給する(S103)。次いで、制御部64は、不図示の圧力計から燃料電池スタック10のアノード極の内部圧力を取得し(S104)、燃料電池スタック10のアノード極の内部圧力が所定の圧力に達したか否かを判定する(S105)。燃料電池スタック10のアノード極の内部圧力が所定の圧力に達したと判定すると、制御部64は、遮断弁及び水素ガスインジェクタ35を閉弁して、燃料電池スタック10のアノード極への水素ガスの供給を停止する(S106)。
制御部64がアノード極劣化防止を行うと、燃料電池スタック10のアノード極に侵入した酸素ガスは、アノード極劣化防止制御で供給された水素ガスと反応して消費される。また、燃料電池スタック10のアノード極の内部圧力は、所定の圧力にされる。例えば、燃料電池スタック10のアノード極の内部圧力を図3においてX4で示される時点の圧力と同程度にすることで、カソード極に残存する酸素ガスは、アノード極からカソード極に透過する水素ガスにより消費することができる。図3においてX7で示されるように、カソード極に残存する酸素ガスがアノード極からカソード極に透過する水素ガスにより消費されると、スタック電圧VSはゼロに戻る。
燃料電池システム1では、燃料電池スタック10のスタック電圧VSが、ダイオード85のカットイン電圧VDの合計値よりも小さいときに、燃料電池スタック10のアノード極とカソード極との間に放電電流は流れず、スタック電圧VSが上昇する。燃料電池システム1では、スタック電圧VSをカットイン電圧VDの合計値まで上昇できるので、燃料電池スタック10の作動停止中にカソード極に侵入した酸素ガスによるスタック電圧VSの上昇を、電圧センサ16を使用して検知することができる。すなわち、燃料電池システム1では、一例では370Vである燃料電池スタック10の作動時の電圧を測定する電圧センサ16を使用して、燃料電池スタック10の作動停止中に酸素ガスがカソード極に侵入したことを正確に検知することができる。よって、燃料電池システム1では、カソードオフガス制御弁47に安価なバタフライバルブを使用し且つアノード極とカソード極との間に配置される継電器を省略した場合でも、燃料電池スタック10の作動停止中のカソード極への酸素の侵入を正確に検知できる。そして、燃料電池システム1は、燃料電池スタック10の作動停止中のカソード極への酸素の侵入を検知したときに、燃料電池スタックのアノード極劣化を防止するための処理を実行することができる。
また、燃料電池システム1では、制御部64は、燃料電池スタック10の作動停止中にカソード極への酸素ガスの侵入を検知すると、燃料電池スタック10のアノード極の圧力が所定の圧力になるように水素をアノード極に供給する。制御部64がアノード極に供給した後の圧力は、種々の条件に応じて適当に設定できる。例えば、制御部64がアノード極に供給した後の圧力を、燃料電池スタック10が発電を開始しない範囲で最大の圧力とすると、燃料電池スタック10が作動停止中に実行されるアノード極劣化防止制御の回数を最小限に抑えることができる。
燃料電池システム1では、2つのダイオード85が配置されるが、ダイオード85の数は1つ又は3つ以上であってもよい。また、燃料電池システム1では、ダイオード85は、昇圧チョッパ11の内部に配置されるが、燃料電池スタック10のカソード極と放電用抵抗素子84との間に配置されていれば、昇圧チョッパ11の外部に配置されていてもよい。なお、ダイオード85をコイル80と放電用抵抗素子84との間に配置することにより、ダイオード85を昇圧チョッパ11が配置される基板と同一の基板に配置できることになり、燃料電池システムの製造コストを低減できる。
また、燃料電池システム1では、電圧センサ16は、燃料電池スタック10のスタック電圧VSのみを検出するが、電圧センサは、燃料電池スタック10のスタック電圧VSと共に燃料電池スタック10の燃料電池単セルのそれぞれの電圧を検出してもよい。
1 燃料電池システム
10 燃料電池スタック
11 昇圧チョッパ
16 電圧センサ
31 水素ガス供給路
32 水素タンク
33 遮断弁
35 水素ガスインジェクタ
36 アノードオフガス通路
37 アノードオフガス排出弁
41 空気供給路
44 空気供給器
47 カソードオフガス制御弁
60 電子制御ユニット
64 制御部
80 コイル
81 第1スイッチング素子
82 第2スイッチング素子
83 コンデンサ
84 放電用抵抗素子(放電素子)
85 ダイオード

Claims (5)

  1. アノード極に供給される水素ガスと、カソード極に供給される空気中の酸素ガスの電気化学反応により電力を発生する燃料電池スタックと、
    前記アノード極に水素ガスを供給する水素ガス源と、
    前記水素ガス源と前記アノード極の間に配置され、前記アノード極に供給される水素ガスの量を調整する水素ガス導入弁と、
    前記カソード極に空気を供給する空気供給器と、
    前記カソード極からカソードオフガスが流入するカソードオフガス通路と、
    前記カソードオフガス通路に配置されたカソードオフガス制御弁と、
    前記アノード極と前記カソード極との間に電気的に接続され、前記カソード極から前記アノード極に放電電流を流す放電素子と、
    前記カソード極と前記放電素子との間に電気的に接続され、前記アノード極と前記カソード極との間の電圧が所定の電圧に上昇するまでオフし、前記放電電流を遮断し、前記アノード極と前記カソード極との間の電圧が前記所定の電圧まで上昇するとオンし、前記放電電流を流すダイオードと、
    前記燃料電池スタックの前記アノード極と前記燃料電池スタックの前記カソード極との間の電圧を検知する電圧センサと、
    前記水素ガス導入弁及び前記カソードオフガス制御弁が閉弁し且つ前記空気供給器が停止している前記燃料電池スタックの作動停止中に、前記電圧センサが検知した電圧がしきい値電圧に達したときに、前記燃料電池スタックの前記カソード極に基準量を超えた酸素ガスが侵入したと判定する制御部と、を有し、
    前記しきい値電圧は、前記電圧センサの検出可能な下限の電圧以上であり且つ前記所定の電圧以下であることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記制御部は、前記燃料電池スタックの前記カソード極に基準量を超えた酸素ガスが侵入したと判定したときに、前記アノード極の圧力が所定の圧力になるように、前記アノード極に水素ガスを供給する、請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記カソードオフガス制御弁は、バタフライバルブである、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記放電素子に並列接続されたコイルと、
    前記アノード極と前記コイルとの間に接続されたコンデンサと、
    前記コンデンサと前記カソード極との間に配置された第1スイッチング素子と、
    前記コイルと前記コンデンサとの間に配置された第2スイッチング素子と、を有する昇圧チョッパを更に有し、
    前記制御部は、前記燃料電池スタックの作動中に、前記カソード極と前記アノード極との間の電圧を昇圧した電圧を前記コンデンサに印加するように、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のそれぞれを制御し、前記燃料電池スタックの作動停止中に、前記第1スイッチング素子をオフし且つ前記第2スイッチング素子をオンして前記ダイオード及び前記放電素子を介して前記放電電流を流す放電回路を形成する、請求項1〜3の何れか一項に記載の燃料電池システム。
  5. 前記ダイオードは、前記コイルと前記放電素子との間に配置される、請求項4に記載の燃料電池システム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112449731A (zh) * 2019-06-27 2021-03-05 株式会社东芝 燃料电池系统及其控制方法

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