JP2016120947A - 殺菌方法 - Google Patents
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容器の中で、PETボトルは、プリフォームと呼ばれる試験管状の前駆体に空気を吹き込んで成形される。この成形には、主に二軸延伸ブロー成形法が用いられている。二軸延伸ブロー成形法とは、加熱したプリフォームを金型に挿入後、延伸ロッドと呼ばれる棒で垂直方向に引き伸ばしながら、加圧空気を吹き込んで円周方向に膨らませる成形法である。
PETボトルを対象とする飲料充填システムは、PETボトルの成形装置を上流側に備え、成形されたPETボトルを充填装置に供給する形態もあれば、すでに成形されたPETボトルを用意して充填装置に供給する形態もある。
無菌充填方式における殺菌としては、薬剤、例えば、過酢酸(PAA)、過酸化水素(H2O2)を含む水溶液からなる過酢酸系殺菌剤を用いるのが主流である(例えば、特許文献1,2)。
ところが、過酢酸を殺菌剤として用いる場合は、過酢酸に対する耐性菌が作り出されることが問題となっている。また、過酸化水素については、耐性菌の問題は少ないものの、PETボトルを対象とする場合には、PETに吸収されて、容器に残留してしまうという問題がある。
そこで本発明は、殺菌対象物に向けてオゾンを供給する量を抑えても、所望する殺菌性能を得ることができる殺菌方法を提供することを目的とする。
以上に基づく本発明の殺菌方法は、湿度を含むオゾンガスである湿潤オゾンガスを殺菌対象物に向けて供給する殺菌方法であって、湿潤オゾンガスを供給する第1供給ステップと、湿潤オゾンガスの殺菌対象物に向けた供給を停止するとともに、第1供給ステップにより供給された湿潤オゾンガスに基づく結露水を、殺菌対象物から取り除く処理を行う結露除去処理ステップと、結露除去処理ステップの後に、殺菌対象物に向けた、湿潤オゾンガスの供給を再開する第2供給ステップと、を備えることを特徴とする殺菌方法である。
また、本発明の殺菌方法において、殺菌対象物に向けて供給される湿潤オゾンガスを、殺菌対象物の温度に応じて、その湿度が調整されることが好ましい。
[殺菌の機構]
本発明は、湿度を含むオゾンガスである湿潤オゾンガス(以下、ウェットオゾンガス)を殺菌対象物に向けて供給することを前提とする。例えば、殺菌対象物が飲料用の容器の場合には、ウェットオゾンガスを容器の内部に供給する。この殺菌は、図1(a)に示すように、ウェットオゾンガスに含まれるオゾン(O3)と水(H2O)が反応することで生成されるヒドロキシルラジカル(hydroxyl radical,以下、OHラジカル)が、細菌Bにアタックし、その酸化作用によりなされる。OHラジカルは、いわゆる活性酸素と称される分子種のなかで最も酸化力が強い。この細菌BへのOHラジカルのアタックを促進させるために、本発明は、殺菌対象物Tにウェットオゾンガスが結露することを指向する。
ここで、細菌細胞は、中央のコア部に遺伝情報の機能を司る染色体があり、その外側にたんぱく質と脂質からなる柔らかい細胞膜があり、さらにその外側にたんぱく質、多糖、脂質からなる細胞壁が取り囲んでいる。細菌に対するOHラジカルによる殺菌機構は、強力な酸化力でこの細胞壁を酸化破壊することを起点としている。このように、オゾンを用いた殺菌は、例えば塩素が細胞壁、細胞膜を通過して酵素を破壊する機構とは異なるものと解されている。
そこで、本発明は、図1(c)に示すように、殺菌対象物Tに付着した結露水Wを取り除く処理を行うことにより、細菌Bを露出させて、OHラジカルとの接触機会を生み出すのである。
また、図2(b)に示すように、第1供給ステップと第2供給ステップのそれぞれにおける流量は同じとするが、第1供給ステップの供給時間を第2供給ステップより短くすることができる。図示は省略するが、この逆に、第1供給ステップの供給時間を第2供給ステップより長くすることもできる。
また、図2(c)に示すように、第1供給ステップと第2供給ステップのそれぞれにおける供給時間は同じとするが、第1供給ステップの流量を第2供給ステップより少なくすることができる。図示は省略するが、この逆に、第1供給ステップの流量を第2供給ステップより多くすることもできる。
さらに、図2(d)に示すように、ウェットオゾンガスの供給を、第1供給ステップ、第2供給ステップ及び第3供給ステップに区分して、第1供給ステップと第2供給ステップの間、第2供給ステップと第3供給ステップの間に結露除去処理ステップを行うことができる。つまり、本発明において規定する第1供給ステップと第2供給ステップという二つのステップは、ウェットオゾンガスの供給を区分する最小の単位であり、本発明は第3供給ステップ以降を設けることができる。
殺菌対象物の実施形態、供給する湿潤オゾンガスの仕様(オゾンの濃度、供給流量,温度等)などに応じて上記のいずれを選択するか、又は、上記以外のパターンを選択することができる。例えば、殺菌工程に費やせる時間が定まっている場合に、第1供給ステップにより生成された結露水が、結露除去処理ステップにおいて十分に除去することを前提として、第1供給ステップ及び結露除去ステップのそれぞれに要する時間を設定することができる。図2(b),(c)は、結露除去処理ステップの前のウェットオゾンガスの供給量を結露除去処理ステップの後よりも少なくしており、結露除去処理ステップに要する時間を短くしつつ、結露水を十分に除去できる利点がある。
次に、本発明に用いるウェットオゾンガスについて説明する。
ウェットオゾンガスは、乾燥状態のオゾンガス(以下、ドライオゾンガス)を生成し、かつ、生成したドライオゾンガスに湿度を付与することで得ることができる。ドライオゾンガスは、典型的には、酸素(O2)ガスを原料としてオゾン(O3)と酸素(O2)の混合ガスとして生成される。本発明において、ドライオゾンガスにおけるオゾン濃度は、5〜20体積%の範囲から選択され、好ましくは10〜15体積%とされる。なお、ドライオゾンガスを生成する原料としては、純粋な酸素に限らず、原料として酸素を含むガス、例えば空気を用いることもできる。この場合も、ドライオゾンガスはオゾン(O3)と酸素(O2)の混合ガスであることに変わりはない。なお、乾燥状態とは、湿潤状態に対する相対的な表現であって、一切の湿度を持たないことを意味するものではなく、意図的に湿度を持たせていないという程度の意味である。
第1ステップ:O2+e→2O+e
第2ステップ:O+O2+M→O3+M
ここでいう相対湿度は、殺菌対象物の温度における相対湿度であり、ウェットオゾンガスが生成された時点の相対湿度とは異なる。換言すると、生成されるウェットオゾンガスは、殺菌対象物の温度を考慮して、その相対湿度が調整されるのが好ましい。
本発明における結露除去処理は、以下の(a)〜(d)の中から一つの手法を選択することができるし、(a)〜(d)の中の少なくとも二つの手法を組み合わせることもできる。
(a)乾燥した気体を供給
結露水が付着した殺菌対象物に向けて、乾燥状態にあるエア(air,ドライエア)を連続的に供給することにより、エアで吸湿して結露水を蒸発させることができる。供給する気体は、エアに限るものでなく、酸素(O2)、不活性ガス(例えば、窒素ガス)、ドライオゾンガスなどの各種の気体を用いることができる。
乾燥した気体を供給する形態は、当該気体の供給源と、供給源から当該気体を送る配管系統とが必要であるが、他の手法に比べて設備的な負担が少ない点で有利である。特に、ウェットオゾンガスを供給するための配管系統を、乾燥用の気体を供給する配管系統と兼用にすれば、設備的な負担の軽減が顕著になる。
(b)密閉空間における減圧(真空乾燥)
殺菌対象物を密閉空間に収容し、この密閉空間を減圧することにより、密閉空間と殺菌対象物の表面との水蒸気分圧差を大きくして結露水を蒸発させる真空乾燥と称される手法を採用することができる。減圧するには真空ポンプを用いればよく、この場合、蒸発した水分は排気とともに密閉空間の外部に排出される。
この手法を採用する場合には、密閉空間を形成しうるチャンバの内部で殺菌を行い、このチャンバを密閉してから真空乾燥に供することができる。
(c)加熱
殺菌対象物を加熱することにより、結露水を蒸発させる。上述した乾燥した気体を加熱して、結露水を蒸発させることもできる。
加熱は、殺菌対象物を直接的に加熱することができるし、間接的に加熱することもできる。直接的な加熱としては、例えば殺菌対象物にヒータを接触させて加熱することが掲げられ、間接的な加熱としては、加熱されたドライな気体を殺菌対象物に供給することが掲げられる。
(d)加速度を与える
(a)〜(c)は、蒸発により結露水を除去するものであるのに対して、殺菌対象物に物理力、具体的には加速度を与えることで、結露水を殺菌対象物から分離することができる。加速度を付与する例としては、高い周波数で殺菌対象物を振動させることが掲げられる。また、殺菌対象物がPETボトルなどの容器の場合には、口部分を外周に向けるとともに容器の底を回転中心にして容器を回転させることにより、結露水を容器外に放出することもできる。
以下、本発明を飲料容器、例えばPETボトル1に対する具体的な適用例を、図3を参照して説明する。
この例は、上流工程から連続的に搬送されるPETボトル1の内周面及び外周面を殺菌して、下流工程にPETボトル1を受け渡すことを前提としている。ここで説明する工程は、殺菌自体を行う殺菌工程と、殺菌されたPETボトル1をすすぐリンス工程と、からなる。殺菌工程は、第1供給ステップと、結露除去処理ステップと、第2供給ステップに区分される。なお、殺菌工程及びリンス工程を通じて、PETボトル1をチャンバ10の中に収容することが好ましい。
ウェットオゾンガスを供給することにより、PETボトル1の内部において生成されたOHラジカルが、PETボトル1の内周面及び外周面を殺菌する。
所定時間だけウェットオゾンガスを供給したならば、ウェットオゾンガスの供給を停止して第1供給ステップを終了するとともに、結露除去処理ステップに移行する。
結露除去処理ステップにおいては、ドライエアをPETボトル1の内部空間及びPETボトル1の外部に供給する。このドライエアの供給により、PETボトル1の内周面及び外周面に生成された結露水を乾燥して除去する。ドライエアは、常温でもよいし、加熱されていてもよい。リンス工程で用いられるドライエアも同様である。
所定時間だけドライエアを供給したならば、ドライエアの供給を停止して結露除去処理ステップを終了するとともに、第2供給ステップに移行する。第2供給ステップにおいては、第1供給ステップと同様にして、PETボトル1の内外にウェットオゾンガスを供給する。所庭時間だけウェットオゾンガスを供給したならば、ウェットオゾンガスの供給を停止して、殺菌工程を終了する。
リンス工程は、PETボトル1の内部に残留するウェットオゾンガスを外部に排出させるため、PETボトル1の内外に付着する残渣を除去するために、PETボトル1の内部及び外部にドライエアを供給する。リンス工程は、ドライエアに代えて水を用いてもよく、また、ドライエアと水を併用することもできる。また、PETボトル1に充填される製品液の種類によっては、リンス工程を省略することもできる。
前者の場合には、PETボトル1の温度を計測し、計測された温度に応じて生成するウェットオゾンガスの湿度を変動させる。
後者の場合には、殺菌がなされる領域に供給されるPETボトル1の温度を予め計測しておき、必要な相対湿度が得られるように、PETボトル1を冷却又は加熱すればよい。
また、飲料充填システムにおいて本発明が適用される他の例として、すでに成形され、保管されていたPETボトル1を殺菌する場合がある。この場合には、PETボトル1の温度は、室温(例えば25℃)程度であるが、ウェットオゾンガスの温度、相対湿度によっては、PETボトル1を加熱する必要がある。
PETボトル1の冷却又は加熱を行うには、殺菌工程の前に、例えば、冷風又は温風をPETボトル1の内部に吹き込むか、外部に吹き付ければよい。
菌種としてBacillus atrophaeusを用い、500mLのペットボトル(供試体)について殺菌性能を評価する実験を以下に従って行った。評価結果を図5に示す。
殺菌工程としては、第1供給ステップと第2供給ステップの間に結露除去処理ステップを行う本発明例と、結露除去処理ステップを行わずに、連続的にウェットオゾンガスを供給する比較例1〜3を行った。
ウェットオゾンガス:温度;80℃,オゾン濃度;10vol.%,
流量;20mL/min.(No.1,2)
30mL/min.(No.3,4)
ドライエア:室温,流量;20mL/min.
また、本発明例(No.1)と比較例2,3(No.3,4)を比較すれば、結露除去処理ステップを行うことにより、湿潤オゾンガスの供給量が少なくても、高い殺菌性能が得られることがわかる。
以上説明したように、本発明によれば、結露除去処理ステップを行うことにより、殺菌対象物に向けてオゾンを供給する量を抑えても、所望する殺菌性能を得ることができる。
例えば、実施形態では殺菌対象物としてPETボトル1を示したが、本発明における殺菌対象は任意であり、飲料を含む食品分野の容器及び製造機器、医療分野における器具、機器などに広く適用することができる。
2 口部
3 胴部
10 チャンバ
Claims (7)
- 湿度を含むオゾンガスである湿潤オゾンガスを殺菌対象物に向けて供給する殺菌方法であって、
前記湿潤オゾンガスを供給する第1供給ステップと、
前記湿潤オゾンガスの前記殺菌対象物に向けた供給を停止するとともに、前記第1供給ステップにより供給された前記湿潤オゾンガスに基づく結露水を、前記殺菌対象物から取り除く処理を行う結露除去処理ステップと、
前記結露除去処理ステップの後に、前記殺菌対象物に向けた、前記湿潤オゾンガスの供給を再開する第2供給ステップと、を備える、
ことを特徴とする殺菌方法。 - 前記殺菌対象物から前記結露水を取り除く処理は、
乾燥状態の気体を前記殺菌対象物に向けて供給する処理である、
請求項1に記載の殺菌方法。 - 前記殺菌対象物より高い温度の前記乾燥状態の気体を供給し、前記結露水の蒸発を促進する、
請求項2に記載の殺菌方法。 - 前記乾燥状態の気体を供給するとともに、直接、前記殺菌対象物を発熱体で放射加熱し、昇温させることで、前記結露水の蒸発を促進する、
請求項2に記載の殺菌方法。 - 前記殺菌対象物に向けて供給される前記湿潤オゾンガスは、
前記殺菌対象物よりも温度が高い、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の殺菌方法。 - 前記殺菌対象物に向けて供給される前記湿潤オゾンガスは、
前記殺菌対象物の温度に応じて、その湿度が調整される、
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の殺菌方法。 - 前記殺菌対象物は、
供給される前記湿潤オゾンガスの湿度に応じて、その温度が調整される、
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の殺菌方法。
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