JP2016120915A - スタッドレスタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】 良好な耐摩耗性能を維持しつつ、初期雪氷上性能と劣化後の雪氷上性能を共に改善したスタッドレスタイヤを提供する。
【解決手段】 キャップトレッドとベーストレッドとを有するスタッドレスタイヤであって、前記キャップトレッドが、ゴム組成物Aを用いて作製されたものであり、前記ベーストレッドが、ゴム組成物Bを用いて作製されたものであり、該ゴム組成物A100質量%中の軟化剤の含有量をa(質量%)、該ゴム組成物B100質量%中の軟化剤の含有量をb(質量%)、トレッド全体の重量に対する該キャップトレッドの重量の割合をc(質量%)、トレッド全体の重量に対する該ベーストレッドの重量の割合をd(質量%)としたとき、下記関係式(1)及び(2)を満たすスタッドレスタイヤ。
a×c/100<b×d/100・・・(1)
a≧8・・・(2)
【選択図】 なし

Description

本発明は、スタッドレスタイヤに関する。
氷雪路面走行用としてスパイクタイヤの使用やタイヤへのチェーンの装着がされてきたが、粉塵問題等の環境問題が発生するため、これに代わる氷雪路面走行用タイヤとしてスタッドレスタイヤが開発された。スタッドレスタイヤは、一般路面に比べて路面凹凸が大きい雪上路面で使用されるため、材料面及び設計面での工夫がなされている。例えば、低温特性に優れたジエン系ゴムを配合したゴム組成物や、軟化効果を高めるために軟化剤を多量に配合したゴム組成物が開発されてきた(例えば、特許文献1)。
スタッドレスタイヤの雪氷上性能を向上させる手段としては、ゴム組成物中の軟化剤の配合量を増やす方法などが試みられてきた。しかしながら、軟化剤の配合量を増やし過ぎると、トレッドゴムの経年硬度変化(硬化劣化)が大きくなり、経年によって雪氷上性能(以下、劣化後の雪氷上性能ともいう)が低下する懸念があり、軟化剤の配合量を増やすには限界がある。また、初期雪氷上性能と経年硬度変化抑止性能とは背反性能であるため、「劣化後の雪氷上性能」と「初期雪氷上性能」を共に向上させることは困難であった。
特開2009−091482号公報
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、良好な耐摩耗性能を維持しつつ、初期雪氷上性能と劣化後の雪氷上性能を共に改善したスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、キャップトレッドとベーストレッドとを有するスタッドレスタイヤであって、上記キャップトレッドが、ゴム組成物Aを用いて作製されたものであり、上記ベーストレッドが、ゴム組成物Bを用いて作製されたものであり、該ゴム組成物A100質量%中の軟化剤の含有量をa(質量%)、該ゴム組成物B100質量%中の軟化剤の含有量をb(質量%)、トレッド全体の重量に対する該キャップトレッドの重量の割合をc(質量%)、トレッド全体の重量に対する該ベーストレッドの重量の割合をd(質量%)としたとき、下記関係式(1)及び(2)を満たすスタッドレスタイヤに関する。
a×c/100<b×d/100・・・(1)
a≧8・・・(2)
上記ゴム組成物Aは、天然ゴムとブタジエンゴムとを含み、ゴム成分100質量%中の天然ゴムの含有量が30〜80質量%であり、上記ゴム成分100質量%中のブタジエンゴムの含有量が20〜70質量%であることが好ましい。
本発明によれば、キャップトレッド及びベーストレッド中の軟化剤含有量が所定の関係を満たすスタッドレスタイヤであるため、良好な耐摩耗性能を維持しつつ、初期雪氷上性能と劣化後の雪氷上性能を共に改善したスタッドレスタイヤを提供できる。
本発明のスタッドレスタイヤは、キャップトレッドとベーストレッドとを有するスタッドレスタイヤである。キャップトレッドとは、多層構造を有するトレッドの表層部であり、ベーストレッドとは、多層構造を有するトレッドの内層部である。2層構造のトレッドの場合には、表面層(キャップトレッド)及び内面層(ベーストレッド)から構成される。
本発明のスタッドレスタイヤにおいては、トレッドがキャップトレッド及びベーストレッドの2層構造であることが好ましい。
本発明においては、上記キャップトレッドが、ゴム組成物Aを用いて作製されており、上記ベーストレッドが、ゴム組成物Bを用いて作製されている。そして、ゴム組成物A100質量%中の軟化剤の含有量をa(質量%)、ゴム組成物B100質量%中の軟化剤の含有量をb(質量%)、トレッド全体の重量に対するキャップトレッドの重量の割合をc(質量%)、トレッド全体の重量に対するベーストレッドの重量の割合をd(質量%)としたとき、下記関係式(1)及び(2)を満たす。
a×c/100<b×d/100・・・(1)
a≧8・・・(2)
上記式(1)中、「a×c/100」はキャップトレッド中の軟化剤含有量を表す指標であり、「b×d/100」はベーストレッド中の軟化剤含有量を表す指標である。
通常、キャップトレッド中の軟化剤含有量がベーストレッド中の軟化剤含有量を上回ると、部材間の濃度勾配によって、キャップトレッドからベーストレッドへ軟化剤の移行が促進される。一方、本発明においては、キャップトレッド中の軟化剤含有量をベーストレッド中の軟化剤含有量よりも少なくすることにより、キャップトレッドからベーストレッドへ軟化剤が移行することを抑制し、経年硬度変化を抑制することができる。従って、本発明によれば、新品時のタイヤにおける雪氷上性能を高くしつつ、経年硬度変化による雪氷上性能の低下を抑制することができ、初期雪氷上性能と劣化後の雪氷上性能を共に改善できる。
ここで、経年硬度変化とは、劣化因子として酸素が存在する条件下でゴムに熱が加わったときに、ゴムが初期状態に比べて硬くなる劣化現象のことである。
なお、本発明において、軟化剤とは、アセトンに可溶な成分を意味し、具体的には、プロセスオイルや植物油脂等のオイル、液状ジエン系重合体等が挙げられる。
ゴム組成物A100質量%中の軟化剤の含有量aは、8質量%以上であり、本発明の効果がより良好に得られるという点から、好ましくは9質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは23質量%以下である。
なお、上記軟化剤の含有量aは、アセトンに可溶な成分として容易に求めることができる。
本発明においては、上記式(1)及び(2)を満たす範囲で、ゴム組成物A100質量%中の軟化剤の含有量aを調整すればよい。
本発明の効果がより良好に得られるという点から、ゴム組成物B100質量%中の軟化剤の含有量bは、好ましくは8質量%以上、より好ましくは9質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは23質量%以下である。
なお、上記軟化剤の含有量bは、アセトンに可溶な成分として容易に求めることができる。
本発明においては、上記式(1)を満たす範囲で、ゴム組成物B100質量%中の軟化剤の含有量bを調整すればよい。
本発明の効果がより良好に得られるという点から、トレッド全体の重量に対するキャップトレッドの重量の割合cは、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下である。
なお、上記キャップトレッドの重量の割合cは、タイヤの断面観察により容易に求めることができる。
本発明の効果がより良好に得られるという点から、トレッド全体の重量に対するベーストレッドの重量の割合dは、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下である。
なお、上記ベーストレッドの重量の割合dは、タイヤの断面観察により容易に求めることができる。
本発明においては、上記式(1)を満たす範囲で、トレッド全体の重量に対するキャップトレッドの重量の割合c及びベーストレッドの重量の割合dを調整すればよい。
本発明において、a×c/100の値は、好ましくは6以上、より好ましくは6.5以上、更に好ましくは7以上であり、好ましくは13以下、より好ましくは12.5以下、更に好ましくは12以下である。また、b×d/100の値は、好ましくは7以上、より好ましくは7.5以上、更に好ましくは8以上であり、好ましくは13以下、より好ましくは12.5以下、更に好ましくは12以下である。
以下、ゴム組成物A及びBについて、詳細に説明する。
(ゴム組成物A)
ゴム組成物Aは、少なくともゴム成分と軟化剤とを含有している。
ゴム組成物Aは、ゴム成分として、天然ゴム(NR)とブタジエンゴム(BR)とを含むことが好ましい。これにより、軟化剤の移動を好適に制御でき、本発明の効果がより好適に得られる。
ゴム組成物Aに含まれるNRとしては、TSR20、RSS#3などの一般的に用いられているものが挙げられる。
ゴム組成物Aにおいて、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。NRの含有量が30質量%未満であると、経年硬度変化を抑制する効果が充分に得られないおそれがある。また、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。NRの含有量が80質量%を超えると、スタッドレスタイヤとして必要な低温特性を確保することができず、雪氷上性能が発揮できないおそれがある。
ゴム組成物Aに含まれるBRとしては特に限定されず、例えば、JSR(株)製のBR730、BR51、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B、BR710等の高シス含量BR、日本ゼオン(株)製のBR1250H等の低シス含量BR等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記BRのシス含量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。これにより、より良好な雪氷上性能が得られる。
なお、本明細書において、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
ゴム組成物Aにおいて、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。BRの含有量が20質量%未満であると、スタッドレスタイヤとして必要な低温特性を確保することができず、雪氷上性能が発揮できないおそれがある。また、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。BRの含有量が70質量%を超えると、NRとBRの海島構造が逆転し、分子の運動性が高いBRが海の成分となり、軟化剤の移行を促進するおそれがある。
上記NR、BR以外にゴム組成物Aで使用できるゴム成分としては、例えば、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、ブチルゴムなどが挙げられる。
ゴム組成物Aは、軟化剤を含んでいる。軟化剤を配合することにより、ゴムの硬度が低下し、より良好な雪氷上性能が得られる。
ゴム組成物Aに含まれる軟化剤としては、アセトンに可溶なものであれば特に限定されないが、オイル、液状ジエン系重合体等を好適に使用できる。これらの軟化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、オイルが好ましい。
上記オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、その混合物等を用いることができる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル(アロマオイル)等が挙げられる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。なかでも、アロマオイルが好ましい。
上記液状ジエン系重合体としては、重量平均分子量が50000以下のジエン系重合体であれば特に限定されず、例えば、スチレンブタジエン共重合体(ゴム)、ブタジエン重合体(ゴム)、イソプレン重合体(ゴム)、アクリロニトリルブタジエン共重合体(ゴム)等が挙げられる。液状ジエン系重合体のなかでも、雪氷上性能の向上効果が大きいことから、液状スチレンブタジエン共重合体(液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR))が好ましい。また、耐摩耗性能の向上効果が大きいことから、液状ブタジエン重合体(液状ブタジエンゴム(液状BR))が好ましい。
液状ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上である。Mwが1000未満では、耐摩耗性能が低下する傾向がある。また、Mwは、好ましくは50000以下、より好ましくは20000以下、更に好ましくは15000以下である。Mwが50000を超えると、雪氷上性能、特に初期雪氷上性能が低下する傾向がある。また、ゴム成分との分子量の差が小さくなり、軟化剤としての効果が発揮されにくい傾向がある。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
ゴム組成物Aに含まれる軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは22質量部以上、更に好ましくは25質量部以上である。20質量部未満では、スタッドレスタイヤとして必要な低温特性を確保することができず、雪氷上性能が発揮できないおそれがある。また、軟化剤の含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。60質量部を超えると、ベーストレッド中の軟化剤含有量を調整しても耐摩耗性能が悪化するおそれがある。
ゴム組成物Aは、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックを配合することにより、補強効果が得られ、本発明の効果がより良好に得られる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は50m/g以上が好ましく、90m/g以上がより好ましい。50m/g未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性能、雪氷上性能が得られないおそれがある。該NSAは、180m/g以下が好ましく、130m/g以下がより好ましい。180m/gを超えると、分散させるのが困難となり、耐摩耗性能が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、50ml/100g以上が好ましく、100ml/100g以上がより好ましい。50ml/100g未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性能、雪氷上性能が得られないおそれがある。また、カーボンブラックのDBPは、200ml/100g以下が好ましく、135ml/100g以下がより好ましい。200ml/100gを超えると、加工性、耐摩耗性能が低下するおそれがある。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K6217−4:2001に準拠して測定される。
ゴム組成物Aに含まれるカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。10質量部未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性能、雪氷上性能が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。80質量部を超えると、分散性が悪化し、耐摩耗性能が悪化する傾向がある。
ゴム組成物Aは、シリカを含むことが好ましい。シリカを配合することにより、補強効果が得られ、本発明の効果がより良好に得られる。シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは40m/g以上、より好ましくは70m/g以上、更に好ましくは110m/g以上である。40m/g未満であると、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性能、雪氷上性能が得られないおそれがある。また、シリカのNSAは、好ましくは220m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。220m/gを超えると、シリカが分散しにくくなり、耐摩耗性能が悪化するおそれがある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
ゴム組成物Aに含まれるシリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。10質量部未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性能、雪氷上性能が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。80質量部を超えると、分散性が悪化し、耐摩耗性能が悪化する傾向がある。
ゴム組成物Aは、シリカを含む場合、シリカとともにシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等のスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系等が挙げられる。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
ゴム組成物Aに含まれるシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。1質量部未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性能、雪氷上性能が得られないおそれがある。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。15質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
ゴム組成物Aには、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、ワックス、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等の材料を適宜配合してもよい。
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、又はキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤と、ジフェニルグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤とを併用することがより好ましい。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、CBSが好ましく、CBSと、ジフェニルグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤とを併用することがより好ましい。
(ゴム組成物B)
ゴム組成物Bは、少なくともゴム成分と軟化剤とを含有している。
ゴム組成物Bは、ゴム成分として、天然ゴム(NR)とブタジエンゴム(BR)とを含むことが好ましい。これにより、軟化剤の移動を好適に制御でき、本発明の効果がより好適に得られる。
ゴム組成物Bに含まれるNRとしては、ゴム組成物Aと同様のものを使用することができる。
ゴム組成物Bにおいて、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。NRの含有量が30質量%未満であると、経年硬度変化を抑制する効果が充分に得られないおそれがある。また、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。NRの含有量が80質量%を超えると、スタッドレスタイヤとして必要な低温特性を確保することができず、雪氷上性能が発揮できないおそれがある。
ゴム組成物Bに含まれるBRとしては、ゴム組成物Aと同様のものを使用することができる。
ゴム組成物Bにおいて、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。BRの含有量が20質量%未満であると、スタッドレスタイヤとして必要な低温特性を確保することができず、雪氷上性能が発揮できないおそれがある。また、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。BRの含有量が70質量%を超えると、NRとBRの海島構造が逆転し、分子の運動性が高いBRが海の成分となり、軟化剤の移行を促進するおそれがある。
上記NR、BR以外にゴム組成物Bで使用できるゴム成分としては、ゴム組成物Aと同様に、例えば、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、ブチルゴムなどが挙げられる。
ゴム組成物Bは、軟化剤を含んでいる。軟化剤を配合することにより、ゴムの硬度が低下し、より良好な雪氷上性能が得られる。
ゴム組成物Bに含まれる軟化剤としては、ゴム組成物Aと同様のものを使用することができる。
ゴム組成物Bに含まれる軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。5質量部未満では、スタッドレスタイヤとして必要な低温特性を確保することができず、雪氷上性能が発揮できないおそれがある。また、軟化剤の含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。60質量部を超えると、ベーストレッドに必要な破壊特性が不足し、走行時にトレッドチャンキングなどを引き起こす。
ゴム組成物Bは、ゴム組成物Aと同様、カーボンブラックやシリカを含むことが好ましい。また、ゴム組成物Bがシリカを含む場合、シリカとともにシランカップリング剤を含むことが好ましい。これら各成分は、ゴム組成物Aと同様のものを同様の態様で好適に使用できる。
ゴム組成物Bに含まれるカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。10質量部未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性能、雪氷上性能が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。90質量部を超えると、分散性が悪化し、耐摩耗性能が悪化する傾向がある。
ゴム組成物Bには、ゴム組成物Aと同様、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、ワックス、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤等の材料を適宜配合してもよい。
加硫促進剤としては、ゴム組成物Aと同様のものを使用することができる。
ゴム組成物A及びBは、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
上述のとおり、ゴム組成物Aは、スタッドレスタイヤのキャップトレッドとして用いられ、ゴム組成物Bは、スタッドレスタイヤのベーストレッドとして用いられる。
多層構造のトレッドは、シート状にしたものを、所定の形状に貼り合わせる方法や、2本以上の押出し機に装入して押出し機のヘッド出口で2層以上に形成する方法により作製することができる。
本発明のスタッドレスタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、ゴム成分、軟化剤、及び必要に応じて上記各種配合剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、本発明のスタッドレスタイヤが得られる。
本発明のスタッドレスタイヤは、乗用車用スタッドレスタイヤとして好適に用いることができる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
天然ゴム(NR):RSS#3
ブタジエンゴム(BR):日本ゼオン(株)製のBR1220(シス含量:96質量%)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のシーストN220(N2SA:114m/g、DBP:114ml/100g)
シリカ:エボニックデグサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m/g、平均一次粒子径:15nm)
シランカップリング剤:エボニックデグサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140(アロマオイル)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
(実施例及び比較例)
表1及び表2に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を約150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た(この際、仕様によってはオイルを2分割投入して混練りを行った。)。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を表1及び表2に示す配合内容で添加し、オープンロールを用いて、約80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。表3に示す組み合わせに従い、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃で15分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。
得られた試験用タイヤについて下記の評価を行った。結果を表3に示す。
<雪氷上性能(新品)>
上記試験用タイヤを国産2000ccのFR車に装着し、下記条件下で氷雪上を実車走行し、雪氷上性能を評価した。雪氷上性能評価としては、具体的には、上記車両を用いて氷上又は雪上を走行し、時速30km/hでロックブレーキを踏み、停止させるまでに要した停止距離(氷上制動停止距離、雪上制動停止距離)を測定し、下記式により指数表示した。指数が大きいほど、氷雪上でのグリップ性能が良好である。
(制動性能指数)=(比較例1の制動停止距離)/(各配合の制動停止距離)×100
(氷上) (雪上)
試験場所:北海道名寄テストコ−ス 北海道名寄テストコ−ス
気温 :−1〜−6℃ −2℃〜−10℃
<雪氷上性能(劣化後品)>
経年劣化後の状態を再現するために、上記試験タイヤをオーブン内で80℃168時間加熱して熱劣化させた後、<雪氷上性能(新品)>と同じ条件下で雪氷上性能を評価した。
<耐摩耗性能>
試験用タイヤを国産FF車に装着し、走行距離8000km後のタイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し、下記式により指数表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性能が良好である。なお、指数が90以上の場合に良好であると判断した。
(耐摩耗性指数)=(1mm溝深さが減るときの走行距離)/(比較例1のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)×100
Figure 2016120915
Figure 2016120915
Figure 2016120915
表1〜表3より、上記関係式(1)及び(2)を満たす実施例では、良好な耐摩耗性能を維持しつつ、新品時のタイヤにおける雪氷上性能が高いだけでなく、劣化後のタイヤにおける雪氷上性能も高いことが明らかとなった。

Claims (4)

  1. キャップトレッドとベーストレッドとを有するスタッドレスタイヤであって、
    前記キャップトレッドが、ゴム組成物Aを用いて作製されたものであり、
    前記ベーストレッドが、ゴム組成物Bを用いて作製されたものであり、
    該ゴム組成物A100質量%中の軟化剤の含有量をa(質量%)、
    該ゴム組成物B100質量%中の軟化剤の含有量をb(質量%)、
    トレッド全体の重量に対する該キャップトレッドの重量の割合をc(質量%)、
    トレッド全体の重量に対する該ベーストレッドの重量の割合をd(質量%)としたとき、下記関係式(1)及び(2)を満たすスタッドレスタイヤ。
    a×c/100<b×d/100・・・(1)
    a≧8・・・(2)
  2. 前記ゴム組成物Aは、天然ゴムとブタジエンゴムとを含み、
    ゴム成分100質量%中の天然ゴムの含有量が30〜80質量%であり、
    前記ゴム成分100質量%中のブタジエンゴムの含有量が20〜70質量%である請求項1に記載のスタッドレスタイヤ。
  3. 前記ゴム組成物Aに含まれる軟化剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上である請求項1又は2に記載のスタッドレスタイヤ。
  4. 前記ゴム組成物Bは、天然ゴムとブタジエンゴムとを含む請求項1〜3のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ。
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