JP2016120520A - ガスシールドアーク溶接用ワイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】溶接部が健全であり、溶接時に高温割れが生じず、PWHT後のクリープ強度及び靭性に優れたガスシールドアーク溶接用ワイヤを提供する。
【解決手段】本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤは、C、Si、Mn、S、Cr、Mo、V、Nb、Nを所定量含有し、Ni、P、Cu、Al、B、Oを所定量以下に制限し、且つ含有するMn量とNi量の合計量:0.60〜1.15%、含有するMn量/S量:87以上であり、残部がFe及び不可避不純物からなることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、主として火力発電ボイラ内の配管に適用される高Crフェライト系耐熱鋼の溶接に供せられるガスシールドアーク溶接用ワイヤに関するものである。
高Crフェライト系耐熱鋼であるMod.9Cr−1Mo鋼は、高温強度や耐食性に優れているので、高温環境となる火力発電ボイラ内の配管に適用されている。しかしながら、Mod.9Cr−1Mo鋼は、ガスシールドアーク溶接を行うと、溶接金属の凝固過程で割れを生じることがある。いわゆる「高温割れ」である。高温割れを改善することを目的とした発明が、例えば、特許文献1に提案されている。
具体的に、特許文献1には、C:0.02〜0.18%(質量%:以下同じ)、Si:0.03〜0.70%、Mn:0.90〜2.50%、Cr:8.0〜11.0%、Mo:0.80〜0.95%、Ni:1.5%以下、Nb:0.01〜0.15%、V:0.01〜0.50%及びN:0.004〜0.060%を含有するとともに、Ti:0.010%以下、O:0.024%以下、La、Ce、Mgの総含有量を0.030%以下に抑制し、さらに(Mo+Ni)≦2.10%の関係を満たし、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする9Cr−1Mo鋼溶接用ワイヤが提案されている。
特許文献1で提案されている発明は、高温割れに及ぼすNiとMoの相乗効果に着目し、前記したように、MoとNiの総量を2.10%以下に抑えることによって、耐高温割れ性を向上させている。
また、火力発電ボイラ内の配管に適用されるMod.9Cr−1Mo鋼を溶接するガスシールドアーク溶接用ワイヤには、高温割れだけでなく、高温強度が高い(クリープ強度が高い)ことや靭性が高いことが要求されている。高温強度及び靭性を向上させることを目的とした発明が、例えば、特許文献2、3に提案されている。
具体的に、特許文献2には、質量%で(以下、同じ)、C:0.03〜0.18%、Si:0.06〜0.80%、Mn:0.85〜2.00%、Cr:8.00〜11.0%、Mo:0.80〜1.20%、Ni:0.03〜1.00%、Nb:0.010〜0.250%、V:0.02〜0.50%、N:0.026〜0.10%、O:0.002〜0.030%、を含有し、Alは0.020%以下に制限し、更に、Mn+2Ni−10N:3.00%以下、を満足し、残部がFe及び不可避的不純物であることを特徴とする9Cr−1Mo鋼溶接用ワイヤが開示されている。
特許文献2で提案されている発明は、クリープ強度及び靭性に及ぼすMn、Ni及びNの影響に着目し、前記したように、Mn+2Ni−10Nの値を3.00%以下に抑えることによって、クリープ強度及び靭性を両立させている。
また、特許文献3には、具体的に、C:0.070乃至0.150質量%、Si:0.15質量%を超え且つ0.30質量%以下、Mn:0.30質量%以上で且つ0.85質量%未満、Ni:0.30乃至1.20質量%、Cr:8.00乃至13.00質量%、Mo:0.30乃至1.40質量%、V:0.03乃至0.40質量%、Nb:0.01乃至0.15質量%及びN:0.016乃至0.055質量%を含有し、Mn及びNiの総量を1.50質量%以下に規制すると共に、P:0.010質量%以下、S:0.010質量%以下、Cu:0.50質量%未満、Ti:0.010質量%以下、Al:0.10質量%未満、B:0.0010質量%未満、W:0.10質量%未満、Co:1.00質量%未満及びO:0.03質量%以下に規制し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする改良9Cr−1Mo鋼用溶接ワイヤが開示されている。
特許文献3に提案されている発明は、PやS、Cu、Ti、Alといった元素を不純物として取り扱い、これら元素の含有量を低くすることで高温割れ性・クリープ強度・靭性を両立させている。
特開昭64−11092号公報 特開平7−96390号公報 特開2005−329415号公報
しかしながら、特許文献1で提案されている発明には、溶接後熱処理(Post Weld Heat Treatment;PWHT)温度が750℃と低く、また保持時間も1hと短い。そのため、特許文献1で提案されている発明には、特に海外のボイラ製作におけるPWHTの実情と乖離しており、機械性能を評価するには適切な条件ではないという問題がある。
他方、Mod.9Cr−1Mo鋼の溶接時に生じ易い高温割れは、クリープ強度・靭性と同等に扱うべき項目である。しかしながら、特許文献2で提案されている発明には、高温割れに関する明確な言及が無く、実機の溶接性に関して十分な検討がなされているとは言えないという問題がある。
さらに、特許文献3で提案されている発明には、実施例中に記載されている高温割れが、拘束の弱い状態(サブマージアーク溶接(Submerged Arc Welding;SAW))、又は拘束の無い状態(ガスタングステンアーク溶接(Gas Tungsten Arc Weld;GTAW))で溶接された全溶着金属試験材を評価しており、溶接部が強い拘束を受ける実機溶接の実情と乖離している。そのため、特許文献3で提案されている発明には、ワイヤの高温割れ性について十分な検討がなされているとは言えないという問題がある。また、特許文献3で提案されている発明は、Cr量が8.0〜13.0質量%と広く、特に10.5質量%を超えるCr量においては溶着金属中にδフェライト相が残存するため、クリープ強度を劣化させることは明白である。
特許文献1〜3で提案されている発明に限らず、ガスシールドアーク溶接用ワイヤには、溶接部になじみ不良やスラグといった外観不良、傷(クラック)、及び融合不良やブローホールといった内部欠陥などがないこと、すなわち溶接部が健全であることが求められる。
本発明は前記状況に鑑みてなされたものであって、溶接部が健全であり、溶接時に高温割れが生じず、PWHT後のクリープ強度及び靭性に優れたガスシールドアーク溶接用ワイヤを提供することを課題とする。
ガスシールドアーク溶接用ワイヤには、溶接性に優れているとともに、溶着金属の靭性及びクリープ強度を両立することが求められる。本発明者らは、靭性及びクリープ強度を両立させるため鋭意研究開発し、以下の知見や取り組みによりこれを解決した。
ガスシールドアーク溶接用ワイヤは、溶接時に高温割れを生じ易い。特に、GTAWではクレータ部に、ガスメタルアーク溶接(Gas Metal Arc Welding;GMAW)では溶接ビード表面及び内部に高温割れを生じ易い。これは、Cr量が9質量%程度と比較的高いため溶接時の凝固完了温度が低温化し、凝固の進行に伴って最終凝固部に溶融金属が行き渡らなくなるため、当該箇所に割れが生じるものである。また、最終凝固部に低融点化合物が濃縮することによってもその感受性は増大する。
また、Mod.9Cr−1Mo鋼用ガスシールドアーク溶接用ワイヤによって形成される溶着金属のミクロ組織はマルテンサイト主体であり、溶接のままの状態では硬度が高く、低靭性である。よって、PWHTを実施することで組織を回復させるとともに炭窒化物を析出させ、靭性及びクリープ強度を改善している。
従って、本発明者らは、溶接時に高温割れを発生せず、PWHT後に優れた靭性及びクリープ強度を有する溶着金属を得ることを企図して、ガスシールドアーク溶接用ワイヤの化学成分を設計した。
なお、材料の成分設計の観点から高温割れ性を改善するには、(1)最終凝固部に低融点化合物を形成する元素の低減、(2)凝固完了温度を低くする元素の低減が有効である。
前記(1)の実現には、PやSなどの不純物を低減することが有効であるが、これらの不純物は工業的に既に十分低いレベルで管理されており、溶製能力上これ以上の低減は難しい。
また、前記(2)の実現には、CやCrなどの主要合金成分を低減することが有効であるが、いずれの合金元素もクリープ強度の確保に必要不可欠であり、安易に低減することはできない。しなしながら、CやCr以外の合金元素については改善の余地が残されている。よって、本発明では前記(2)に関して、CやCr以外の合金元素について検討した。
また、クリープ強度の改善には、(3)軟質なδフェライト相の低減、(4)炭窒化物析出量の増加が有効である。
前記(3)の実現には、フェライト相を安定化するSiやCr、Moなどの合金成分を低減するか、オーステナイト相を安定化して相対的にフェライト相を不安定化するMnやNi、Coなどの合金成分を増量することが有効である。しかしながら、これらの合金元素の中には炭窒化物の析出量を変化させ、溶着金属の靭性やクリープ性能に影響を与えるものがある点にも留意せねばならない。なお、ここで言う炭窒化物とは主にNb、Vの炭化物、窒化物による複合化合物を指す。
また、前記(4)の実現には、CrやNb、Vなどの炭窒化物形成元素の増量が有効であるが、炭窒化物の析出量増大は靭性を劣化させる。よって、本発明では炭窒化物の析出量には影響を与えずにクリープ強度を向上させる合金元素について検討した。
本発明者らは、種々検討した結果、Niが溶接時の最終凝固部に濃化して凝固完了温度を低下させ、高温割れを促進することを明らかにした。また、NiはPWHT時の炭窒化物の析出量には影響を与えないが、炭窒化物を不安定化して、所謂、オストワルド成長と呼ばれる単位体積当たりの表面積をできるだけ減少させるよう成長を促し、その粗大化を促進し、クリープ強度を劣化させることも明らかにした。よって、ガスシールドアーク溶接用ワイヤを低Ni設計とすることで高温割れを抑制し、炭窒化物の析出量に影響を与えないことで靭性を劣化させることなく、炭窒化物を安定化することでクリープ強度を高めることに成功した。
また、前記に加えて、低Ni化によるδフェライト相の増加をCr量の特定の範囲とすることによって抑制し、クリープ強度・靭性・溶接性(高温割れ性)を両立させた。例えば、特許文献3では「Ni量を0.30〜1.20%(好ましくは0.40〜1.00%)、Cr量を8.00〜13.00%」と規定している。
これに対し、本発明では後記するように「Ni量を0.50%以下(好ましくは0.20%以下)、Cr量を8.00〜10.50%(好ましくは8.00〜9.50%)」と規定して各種特性を両立していることに特徴がある。
以上に述べた知見や取り組みによって前記課題を解決した本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤは、質量%で、C:0.07〜0.13%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.55〜1.00%、S:0.002〜0.010%、Cr:8.00〜10.50%、Mo:0.85〜1.20%、V:0.15〜0.30%、Nb:0.02〜0.10%、N:0.03〜0.07%含有し、且つNi:0.50%以下、P:0.010%以下、Cu:0.30%以下、Al:0.04%以下、B:0.0015%以下、O:0.030%以下、に制限し、含有するMn量とNi量の合計量:0.60〜1.15%、含有するMn量/S量:87以上であり、残部がFe及び不可避不純物からなることとしている。
また、本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤは、質量%で、C:0.07〜0.13%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.55〜1.00%、S:0.002〜0.010%、Cr:8.00〜10.50%、Mo:0.85〜1.20%、V:0.15〜0.30%、Nb:0.02〜0.10%、N:0.03〜0.07%含有し、且つNi:0.50%以下、P:0.010%以下、Cu:0.30%以下、Al:0.04%以下、B:0.0015%以下、O:0.030%以下、に制限し、含有するMn量とNi量の合計量:0.60〜1.15%、含有するMn量/S量:150以上であり、残部がFe及び不可避不純物からなることとしている。
前記した本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤはいずれも、前記した各化学成分と、含有するMn量とNi量の合計量と、含有するMn量/S量と、を前記範囲にそれぞれ制御しているので、溶接時に高温割れが生じず、PWHT後のクリープ強度及び靭性に優れたものとすることができる。
前記した本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤはいずれも、前記C量を0.08〜0.11%とするのが好ましい。
前記した本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤはいずれも、前記Ni量を0.20%以下に制限するのが好ましい。
前記した本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤはいずれも、前記Cr量を8.21〜10.50%とするのが好ましい。
前記した本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤはいずれも、前記含有するMn量とNi量の合計量を0.70〜1.00%とするのが好ましい。
前記した本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤはいずれも、前記Cu量を0.10%以下に制限するのが好ましい。
前記した本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤはいずれも、前記Al量を0.03%以下に制限するのが好ましい。
前記した本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤはいずれも、前記N量を0.04〜0.07%とするのが好ましい。
前記した本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤはいずれも、Sn:0.015%以下、As:0.015%以下、Sb:0.015%以下、に制限するのが好ましい。
前記した本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤはいずれも、Pb:0.0015%以下、Bi:0.0015%以下、に制限するのが好ましい。
前記した本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤはいずれも、Ti:0.010〜0.030%含有するのが好ましい。このようにすると、クリープ強度を向上させることができる。
前記した本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤはいずれも、Co:0.10〜0.75%含有するのが好ましい。このようにすると、δフェライト相の残存を抑制することができる。そのため、クリープ強度を向上させることができる。
本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤは、溶接部が健全であり、溶接時に高温割れが生じず、PWHT後のクリープ強度及び靭性に優れている。
GTAWを行う溶接試験板の開先形状を示す模式図である。 クリープ試験片の形状を示す模式図である。 図2AのA部を拡大した拡大図である。 GTAWを行うシャルピー衝撃試験片及びクリープ試験片の試験片採取位置を示す模式図である。 GTAWにて高温割れ性の評価(以下、クレータ割れ試験)を行う溶接試験板の開先形状を示す模式図(正面図)である。 GTAWにて高温割れ性の評価を行う溶接試験板の開先形状を示す模式図(平面図)である。 GMAWを行う溶接試験板の開先形状を示す模式図である。 GMAWを行うシャルピー衝撃試験片及びクリープ試験片の試験片採取位置を示す模式図である。 GMAWにて高温割れ性の評価を行う溶接試験板の開先形状を示す模式図(正面図)である。 GMAWにて高温割れ性の評価を行う溶接試験板の開先形状を示す模式図(平面図)である。
以下、本発明に係るガスシールドアーク溶接用ワイヤ(以下、単に「溶接用ワイヤ」という。)を実施するための形態について詳細に説明する。
[溶接用ワイヤの一実施形態]
本実施形態に係る溶接用ワイヤは、質量%で、C:0.07〜0.13%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.55〜1.00%、S:0.002〜0.010%、Cr:8.00〜10.50%、Mo:0.85〜1.20%、V:0.15〜0.30%、Nb:0.02〜0.10%、N:0.03〜0.07%含有し、且つNi:0.50%以下、P:0.010%以下、Cu:0.30%以下、Al:0.04%以下、B:0.0015%以下、O:0.030%以下、に制限し、含有するMn量とNi量の合計量:0.60〜1.15%、含有するMn量/S量:87以上であり、残部がFe及び不可避不純物からなる。
なお、化学成分を前記したとおりとするとともに、前記含有するMn量/S量を150以上とするのが好ましい。
以下、溶接用ワイヤを構成する化学成分及びその含有量と、含有するMn量とNi量の合計量と、含有するMn量/S量と、を制御する理由などについて分説する。
(C:0.07〜0.13%)
Cは、溶着金属中の焼き入れ性と炭窒化物の析出量に大きな影響を及ぼすとともに、オーステナイト安定化元素として機能し、溶着金属中のδフェライト相の残存を抑制する。溶着金属中のC量が低いと炭化物の析出量が不十分となり、また、δフェライト相が残存して所定のクリープ強度が得られない。一方で、C量が過剰に高くなると高温割れ感受性が高まり、また、炭化物の析出量が増大して溶着金属の強度を著しく高め、靭性を劣化させる。よって、C量は0.07〜0.13%とする。なお、C量の下限は0.08%であるのが好ましく、上限は0.11%であるのが好ましい。
(Si:0.10〜0.50%)
Siは、溶接ビードのなじみ性を改善するとともに、脱酸剤として機能し、溶着金属の強度・靭性を向上させる。溶着金属中のSi量が低すぎると溶接作業性(例えば、溶接ビードのなじみ性や融合性)が劣化し、クリープ強度及び靭性も劣化させる。一方で、Si量が過剰になると溶着金属の強度を著しく高め、靭性を劣化させる。よって、Si量は0.10〜0.50%とする。なお、Si量の下限は0.18%であるのが好ましく、上限は0.41%であるのが好ましい。
(Mn:0.55〜1.00%)
(Ni:0.50%以下)
(含有するMn量とNi量の合計量:0.60〜1.15%)
Mnは、Siと同様、脱酸剤として機能し、溶着金属の靭性を向上させる。Niは、ミクロ組織を微細化して靭性を向上させる。さらに、Mnは、オーステナイト安定化元素として機能し、溶着金属中のδフェライト相の残存を抑制する。溶着金属のMn量又はNi量が低すぎると所定の靭性が得られず、また、軟質なδフェライト相が溶着金属中に残存してクリープ強度を劣化させる。一方で、溶着金属中のMn量及びNi量が過剰に高くなると、炭窒化物を不安定化させ、クリープ強度を劣化させる。Mnは後述するとおり、Sの高温割れ性への悪影響を緩和する効果もある。よって、Mn量は0.55〜1.00%とする。Mn量の下限は0.60%とするのが好ましく、上限は0.80%とするのが好ましい。
また、Niは、凝固完了温度を低温化することで高温割れ感受性を高める。よって、Ni量は0.50%以下とする。Ni量は0.20%以下とするのが好ましい。
さらに、靭性の確保、δフェライト相の低減及びクリープ強度確保の観点から、含有するMn量とNi量の合計量を管理することが有効である。すなわち、靭性の確保の観点から含有するMn量とNi量の合計量の下限を規定する必要があり、δフェライト相の低減及びクリープ強度確保の観点から含有するMn量とNi量の合計量の上限の規定が必要である。具体的には、含有するMn量とNi量の合計量は0.60〜1.15%とする。含有するMn量とNi量の合計量の下限は0.70%とするのが好ましく、上限は1.00%とするのが好ましい。
(S:0.002〜0.010%)
(含有するMn量/S量:87以上)
Sは、溶接時にFeと結合してFe−FeSの低融点共晶を最終凝固部に形成し、高温割れ性を高めるだけでなく、溶着金属を脆化させて靭性を劣化させる。一方で、溶接ビードのなじみ性や融合性を改善する効果があるが、S量が少なすぎるとなじみ性改善効果や融合性を改善する効果が得られない。よって、S量は0.002〜0.010%とする。S量の下限は0.003%とするのが好ましく、上限は0.007%とするのが好ましい。
また、Mnは、溶接凝固過程でSと結合してMnSを形成し、上述の悪影響を緩和することで高温割れ性を低減する。このような効果を得るためには、含有するMn量/S量を87以上とすることが必要である。好ましくは前記したように、含有するMn量/S量を150以上とし、より好ましくは、含有するMn量/S量を156以上とする。
(Cr:8.00〜10.50%)
Crは、PWHT時に炭窒化物を形成して溶着金属のクリープ強度を高める。Cr量が少なすぎると炭窒化物の析出量が不足して所定のクリープ強度が得られない。一方、Cr量が多くなると凝固完了温度を低下させて高温割れ感受性を高めるとともに、δフェライト相が溶着金属中に残留してクリープ強度を劣化させる。よって、Cr量は8.00〜10.50%とする。Cr量の下限は8.21%とするのが好ましく、上限は9.56%とするのが好ましい。
(Mo:0.85〜1.20%)
Moは、PWHT時にCr系炭化物中又は母相中に固溶して溶着金属のクリープ強度を向上させる。Mo量が少なすぎると所定のクリープ強度が得られない。一方、Mo量が多くなると、Cr系炭化物及び母相中への固溶量が過剰に増加して溶着金属の強度が著しく高まり、靭性を劣化させる。よって、Mo量は0.85〜1.20%とする。Mo量の下限は0.94%とするのが好ましく、上限は1.05%とするのが好ましい。
(V:0.15〜0.30%)
Vは、PWHT時に炭窒化物を形成し、溶着金属のクリープ強度を向上させる。V量が少なすぎると所定のクリープ強度が得られない。一方、V量が多くなると炭窒化物の析出量が著しく増加して溶着金属の強度が高まり、靭性を劣化させる。よって、V量は0.15〜0.30%とする。V量の下限は0.21%とするのが好ましく、上限は0.27%とするのが好ましい。
(Nb:0.02〜0.10%)
Nbは、Vと同様、PWHT時に炭窒化物を形成し、溶着金属のクリープ強度を向上させる。Nb量が少なすぎると所定のクリープ強度が得られない。一方、Nb量が多くなると炭窒化物の析出量が著しく増加して溶着金属の強度が高まり、靭性を劣化させる。よって、Nb量は0.02〜0.10%とする。Nb量の下限は0.04%とするのが好ましく、上限は0.07%とするのが好ましい。
(N:0.03〜0.07%)
Nは、PWHT時にCrやV、Nbなどと結合して炭窒化物を形成し、溶着金属のクリープ強度を向上させる。N量が少なすぎると所定のクリープ強度が得られない。一方、N量が多くなると炭窒化物の析出量が著しく増加して溶着金属の強度が高まり、靭性を劣化させる。さらに、N量が多くなると溶接過程で発生するNガスが溶融金属中に残留し易くなり、ブローホールを発生させる。よって、N量は0.03〜0.07%とする。N量の下限は0.04%とするのが好ましく、上限は0.06%とするのが好ましい。
(P:0.010%以下)
Pは、溶接時の最終凝固部に低融点化合物を形成し、高温割れ感受性を高めるだけでなく、溶着金属を脆化させて靭性を劣化させる。よって、P量は0.010%以下とする。P量は0.0006%以下とするのが好ましい。
(Cu:0.30%以下)
溶接用ワイヤのCu量が増加すると、溶着金属中のCu量も増加し、靭性を劣化させる。よって、Cu量は0.30%以下とする。Cu量は0.10%以下とするのが好ましい。なお、Cu量は、溶接用ワイヤ中に含有されているCu、及び溶接時の溶接用ワイヤ送給性改善のために電気めっき等の手法で溶接用ワイヤの表面にCuをコーティングしている場合には、当該コーティングしているCuを含めて前記したように0.30%以下とする。
(Al:0.04%以下)
Alは、脱酸元素として機能するが、凝固過程で溶融金属中のOと結合してスラグ発生量を増加させる。また、Alは、溶着金属中に粗大な酸化物を形成し、脆性破壊の発生起点として作用して溶着金属の靭性を劣化させる。さらに、Alは、Nとも結合してAlNを形成し、クリープ強度の確保に必要不可欠なCrやNb、Vの炭窒化物析出量を低減し、クリープ強度を劣化させる。よって、Al量は0.04%以下とする。Al量は0.03%以下とするのが好ましい。
(B:0.0015%以下)
Bは、溶接時の最終凝固温度を低下させ、高温割れ感受性を高める。よって、B量は0.0015%以下とする。B量は0.0003%以下とするのが好ましい。
(O:0.030%以下)
Oは、溶接時の凝固過程でSiやMn、Alなどと結合して酸化物を形成し、スラグ量を増加させる。また、形成された酸化物は、脆性破壊の発生起点として作用し、溶着金属の靭性を劣化させる。よって、O量は0.030%以下とする。O量は、0.005%以下とするのが好ましい。
(残部)
本発明に係る溶接用ワイヤを構成する組成の基本成分は前記のとおりであり、残部成分はFe及び不可避不純物である。不可避不純物は、溶製時に不可避的に混入する不純物であり、溶接用ワイヤの諸特性を害さない範囲で含有される。不可避不純物としては、例えば、Ti、Co、W、Sn、Sb、As、Pb、Biなどが挙げられる。これらの元素は高温割れ性や靭性、クリープ強度などの必須特性に悪影響を及ぼすが、それぞれに定められた所定量未満又は所定量以下であれば前記した必須特性に悪影響を及ぼさないので、それぞれに定められた所定量未満又は所定量以下で含有することは許容される。不可避不純物として含有することが許容される許容量として具体的には、Tiであれば0.010%未満、Coであれば0.10%未満、Wであれば0.10%未満、Sn、Sb及びAsであればそれぞれ0.015%以下、Pb及びBiであればそれぞれ0.0015%以下である。なお、本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記した不可避不純物以外の元素を積極的に含有させてもよい(つまり、本発明の技術的範囲に含まれる。)。
ここで、Ti及びCoには、靭性を低下させるという悪影響があり、含有量が低い場合には不可避不純物として扱うことができる。しかしながら、Ti及びCoには、クリープ強度を向上させる作用があることから、クリープ強度を向上させたい場合は、前記した悪影響を甘受できる範囲内で積極的に添加することができる。
[溶接用ワイヤの他の実施形態]
前記したように、Ti及びCoについては、クリープ強度を向上させる作用がある。従って、溶接用ワイヤの他の実施形態として、Ti及びCoのうちの少なくとも一方を所定量含有させることもできる。
他の実施形態に係る溶接用ワイヤの一態様として、前記した基本成分に加えて、さらに、質量%で、Ti:0.010〜0.030%含有させることができる。
(Ti:0.010〜0.030%)
Tiは、必須元素ではないが、溶接時の凝固過程及びPWHT時に微細な炭窒化物を形成し、クリープ強度を向上させる。Ti量が少なすぎると十分な効果が得られず、Ti量が多すぎると溶着金属の強度が著しく高まり、靭性を劣化させる。よって、クリープ強度をさらに高めたい場合には、Ti量を0.010〜0.030%含有させるとよい。
また、他の実施形態に係る溶接用ワイヤの他の態様として、前記した基本成分に加えて、さらに、質量%で、Co:0.10〜0.75%含有させることができる。なお、Coは、Tiとともに前記した基本成分に加えることができるが、単独で加えることもできる。
(Co:0.10〜0.75%)
Coは、必須元素ではないが、オーステナイト安定化元素として機能する。そのため、Coは、δフェライト相の残存を抑制し、クリープ強度を向上させることができる。Co量が少なすぎるとその効果を発揮せず、多すぎると溶着金属の強度が向上し、靭性を劣化させる。よって、クリープ強度をさらに高めたい場合には、Co量を0.10〜0.75%含有させるのが好ましく、0.10〜0.50%含有させるのがより好ましい。
本発明に係る溶接用ワイヤの組成の制御は、例えば、原料を溶解する際に添加する元素の添加量を適宜調節することによって行うことができる。また、不可避不純物の含有量の調整(規制)は公知の手法で地金を精錬することによって行うことができる。
(ソリッドワイヤ)
(溶加棒)
本発明に係る溶接用ワイヤは、ソリッドワイヤ又は溶加棒であるのが好ましい。このようにすると、高Crフェライト系耐熱鋼の溶接に好適に用いることができる。ソリッドワイヤや溶加棒は原料の組成を前記したように調整した後、一般的な条件・設備で製造することができる。
次に、本発明の効果を奏する実施例とそうでない比較例とを参照して、本発明の内容について具体的に説明する。
<1.GTAWに関する検討>
表1のワイヤ番号1〜41に示す化学成分のガスシールドアーク溶接用ワイヤ(以下、単に「ワイヤ」という。)を製造した。そして、ワイヤ番号1〜41に係るワイヤと、図1に示す開先形状の試験板と、を用いて、表2に示す溶接条件でGTAWを行った。その後、GTAWを行った溶接試験材にPWHT(760℃×4h)を実施し、外観試験及び放射線透過試験を実施して溶接部の健全性を評価するとともに、全溶着金属の靭性及びクリープ強度を評価した。各評価は以下のようにして行った。
なお、供試材料であるワイヤの形態は種々存在するが、全溶着金属の各種特性評価はφ1.2mmのスプールワイヤで代表した。
(外観試験)
外観試験は、外観不良が認められなかったものを「○」、外観不良が認められたものを「×」と評価した。○が合格、×が不合格である。
(放射線透過試験)
放射線透過試験は、ASTM E1032に準拠し、その判定基準はASME SFA−5.28(“11.Radiographic Test”)に従った。
放射線透過試験において、ASME SFA−5.28の判定基準を満足するものを「○」、満足しないものを「×」と評価した。○が合格、×が不合格である。
(クリープ強度)
全溶着金属のクリープ強度を評価するためクリープ試験を行った。
全溶着金属のクリープ強度の評価には、溶着金属の板厚中央部から溶接線方向にクリープ試験片(試験片直径:φ6.0mm、平行部長さ:30.0mm)を供した。図2A及び図2Bにクリープ試験片の形状を示す。
クリープ試験は、試験温度を650℃、初期負荷応力を100MPaとし、クリープ破断時間(Tr)が2500h以上のものを「◎」、1500h以上2500h未満のものを「○」、1500h未満のものを「×」と評価した。◎、○が合格、×が不合格である。
(靭性)
全溶着金属の靭生を評価するためシャルピー衝撃試験を行った。
全溶着金属の靭性の評価には、溶着金属の板厚中央部から溶接線と法線方向(継手方向)にAWS B4.0に準拠した10mm角の2mm−Vノッチ(サイドノッチ)のシャルピー衝撃試験片を供した。また、試験温度は20℃、試験数は3としてその平均値を求めた。なお、図3にシャルピー衝撃試験片及びクリープ試験片の試験片採取位置を示す。
全溶着金属の靭性は、20℃におけるシャルピー衝撃試験における吸収エネルギー(vE20℃)の3点平均が114J以上のものを「◎」、76J以上114J未満のものを「○」、76J未満のものを「×」と評価した。◎、○が合格、×が不合格である。
(高温割れ性(クレータ割れ試験))
各ワイヤの高温割れ性を下記のとおり評価した。GTAWでは特に初層のクレータ割れが問題となり易いため、図4A及び図4Bに示す開先形状の試験板を用い、表3に示す溶接条件でパイプ初層のGTAWを模擬した1パス溶接を実施し、クレータ割れの有無を確認した。高温割れ性の評価試験には、表1に示す化学成分のφ2.4mmの切断線を供した。高温割れ性の評価試験は、詳細には、まず、200mm長さの試験片に30mm程度の溶接ビードを5本形成した(つまり、N=5で試験を実施した)。そして、5本の溶接ビードのうち、クレータ割れが発生しなかったものを「◎」、割れが1〜2個発生したものを「○」、割れが3個以上発生したものを「×」と評価した。◎、○が合格、×が不合格である。
GTAWを行った場合における外観試験、放射線透過試験、クレータ割れ試験、シャルピー衝撃試験、クリープ試験の各結果を表4に示す。また、これらの結果を総合的に判断し、「◎」、「○」、「×」の3段階に評価した総評も表4に併せて示す。なお、◎が総合的に特に優れていると判断されたものであり、○が総合的に優れていると判断されたものであり、×が総合的に劣っていると判断されたものである。
Figure 2016120520
Figure 2016120520
Figure 2016120520
Figure 2016120520
表4に示す評価結果のとおり、本発明の発明特定事項を備えたワイヤ番号1〜12に係るワイヤを用いた場合、溶接部が健全であり、溶接時に高温割れが生じず、PWHT後のクリープ強度及び靭性に優れていることが確認された。これらはいずれも総評が◎又は○であった(実施例)。
これに対し、本発明の発明特定事項のうちのいずれかを備えていない(要件を満たしていない)ワイヤ番号13〜41に係るワイヤを用いた場合、溶接部が健全でないか、溶接時に高温割れが生じるか、PWHT後のクリープ強度及び靭性のうちの少なくとも一方に劣ることが確認された。これらはいずれも総評が×であった(比較例)。具体的には以下のとおりであった。
ワイヤ番号13に係るワイヤは、C量が少なかったので、クリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号14に係るワイヤは、C量が多かったので、クレータ割れ試験の結果が不合格になるとともに、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号15に係るワイヤは、Si量が少なかったので溶接ビードのなじみ性が不良となり外観試験が不合格になるとともに、融合不良が生じたため放射線透過試験の結果が不合格になった。また、ワイヤ番号15に係るワイヤは、シャルピー衝撃試験及びクリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号16に係るワイヤは、Si量が多かったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号17に係るワイヤは、Mn量が少なかったので、シャルピー衝撃試験及びクリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号18に係るワイヤは、Mn量が多かったので、クリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号19に係るワイヤは、Ni量が多かったので、クレータ割れ試験及びクリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号20に係るワイヤは、含有するMn量とNi量の合計量(表1において「Mn+Ni」と示す。)が少なかったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号21に係るワイヤは、含有するMn量とNi量の合計量が多かったので、クリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号22に係るワイヤは、S量が少なかったので、溶接ビードのなじみ性が不良となり外観試験が不合格になるとともに、融合不良が生じたため放射線透過試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号23に係るワイヤは、S量が多く、また、含有するMn量/S量(表1において「Mn/S」と示す。)が少なかったので、クレータ割れ試験及びシャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号24に係るワイヤは、含有するMn量/S量が少なかったので、クレータ割れ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号25に係るワイヤは、P量が多かったので、クレータ割れ試験及びシャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号26に係るワイヤは、Cu量が多かったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号27に係るワイヤは、Cr量が少なかったので、クリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号28に係るワイヤは、Cr量が多かったので、クレータ割れ試験及びクリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号29に係るワイヤは、Mo量が少なかったので、クリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号30に係るワイヤは、Mo量が多かったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号31に係るワイヤは、Ti量が多かったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号32に係るワイヤは、V量が少なかったので、クリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号33に係るワイヤは、V量が多かったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号34に係るワイヤは、Al量が多かったのでスラグが発生し、外観試験の結果が不合格になるとともに、シャルピー衝撃試験及びクリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号35に係るワイヤは、B量が多かったので、クレータ割れ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号36に係るワイヤは、Nb量が少なかったので、クリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号37に係るワイヤは、Nb量が多かったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号38に係るワイヤは、Co量が多かったので、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号39に係るワイヤは、N量が少なかったので、クリープ試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号40に係るワイヤは、N量が多かったのでブローホールが発生し、放射線透過試験の結果が不合格になるとともに、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
ワイヤ番号41に係るワイヤは、O量が多かったので、スラグが発生し、外観試験の結果が不合格になるとともに、シャルピー衝撃試験の結果が不合格になった。
<2.GMAWに関する検討>
表1のワイヤ番号1〜12に示す化学成分のワイヤを製造した。そして、ワイヤ番号1〜12に係るワイヤと、図5に示す開先形状の試験板と、を用いて、表5に示す溶接条件でGMAWを行った。その後、GMAWを行った溶接試験材にPWHT(760℃×4h)を実施し、外観試験及び放射線透過試験を実施して溶接部の健全性を評価するとともに、全溶着金属の靭性及びクリープ強度を評価した。
なお、供試材料であるワイヤの形態は種々存在するが、全溶着金属の各種特性評価はφ1.2mmのスプールワイヤで代表した。
(外観試験)
外観試験は、GTAWに関する検討で行ったのと同様の評価基準にて評価した。
(放射線透過試験)
放射線透過試験は、ASTM E1032に準拠し、その判定基準はASME SFA−5.28(“11.Radiographic Test”)に従った。
放射線透過試験において、ASME SFA−5.28の判定基準を満足するものを「○」、満足しないものを「×」と評価した。○が合格、×が不合格である。
(クリープ強度)
全溶着金属のクリープ強度を評価するためクリープ試験を行った。
全溶着金属のクリープ強度の評価には、溶着金属の板厚中央部から溶接線方向にクリープ試験片(試験片直径:φ6.0mm、平行部長さ:30.0mm)を供した。なお、クリープ試験片の形状は前述のものと同一とした。
クリープ試験は試験温度を650℃、初期負荷応力を100MPaとし、クリープ破断時間が800h以上のものを「○」、800h未満のものを「×」と評価した。○が合格、×が不合格である。
(靭性)
全溶着金属の靭生を評価するためシャルピー衝撃試験を行った。
全溶着金属の靭性の評価には、溶着金属の板厚中央部から溶接線と法線方向(継手方向)にAWS B4.0に準拠した10mm角の2mm−Vノッチ(サイドノッチ)のシャルピー衝撃試験片を供した。また、試験温度は20℃、試験数は3としてその平均値を求めた。なお、図6にシャルピー衝撃試験片及びクリープ試験片の試験片採取位置を示す。
全溶着金属の靭性は20℃におけるシャルピー衝撃試験における吸収エネルギー(vE20℃)の3点平均が38J以上のものを「○」、38J未満のものを「×」と評価した。○が合格、×が不合格である。
(高温割れ性)
各ワイヤの高温割れ性を下記のとおり評価した。GMAWでは溶接ビード表面及び内部の高温割れが問題となり易いため、図7A及び図7Bに示す開先形状の試験板を用い、前述と同一の表5に示す溶接条件でパイプ開先内のGMAWを模擬した1パス溶接を実施した。そして、外観試験、浸透探傷試験を行って、溶接ビード表面について高温割れの有無を確かめた。また、溶接ビード内部の高温割れの有無を「1.GTAWに関する検討」で述べた放射線透過試験にて同時に確かめた。
なお、浸透探傷試験はJIS Z2343−1に準拠して行った。
外観試験、浸透探傷試験及び放射線透過試験にて不良がなかったものをそれぞれ「○」、不良があったものを「×」と評価した。○が合格、×が不合格である。
GMAWを行った場合における外観試験、放射線透過試験、浸透探傷試験、シャルピー衝撃試験、クリープ試験の各結果を表6に示す。また、表4と同様、これらの結果を総合的に判断し、「○」、「×」の2段階で評価した。
Figure 2016120520
Figure 2016120520
表6に示す評価結果のとおり、本発明の発明特定事項を備えたワイヤ番号1〜12に係るワイヤを用いた場合、溶接部が健全であり、その溶接方法に関わらず、溶接時に高温割れが生じず、PWHT後のクリープ強度及び靭性に優れていることが確認された。これらはいずれも総評が○であった(実施例)。

Claims (23)

  1. 質量%で、
    C:0.07〜0.13%、
    Si:0.10〜0.50%、
    Mn:0.55〜1.00%、
    S:0.002〜0.010%、
    Cr:8.00〜10.50%、
    Mo:0.85〜1.20%、
    V:0.15〜0.30%、
    Nb:0.02〜0.10%、
    N:0.03〜0.07%含有し、
    且つ
    Ni:0.50%以下、
    P:0.010%以下、
    Cu:0.30%以下、
    Al:0.04%以下、
    B:0.0015%以下、
    O:0.030%以下、
    に制限し、
    含有するMn量とNi量の合計量:0.60〜1.15%、
    含有するMn量/S量:87以上であり、
    残部がFe及び不可避不純物からなる
    ことを特徴とするガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  2. 質量%で、
    C:0.07〜0.13%、
    Si:0.10〜0.50%、
    Mn:0.55〜1.00%、
    S:0.002〜0.010%、
    Cr:8.00〜10.50%、
    Mo:0.85〜1.20%、
    V:0.15〜0.30%、
    Nb:0.02〜0.10%、
    N:0.03〜0.07%含有し、
    且つ
    Ni:0.50%以下、
    P:0.010%以下、
    Cu:0.30%以下、
    Al:0.04%以下、
    B:0.0015%以下、
    O:0.030%以下、
    に制限し、
    含有するMn量とNi量の合計量:0.60〜1.15%、
    含有するMn量/S量:150以上であり、
    残部がFe及び不可避不純物からなる
    ことを特徴とするガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  3. 前記C量を0.08〜0.11%としたことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  4. 前記Ni量を0.20%以下に制限したことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  5. 前記Cr量を8.21〜10.50%としたことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  6. 前記含有するMn量とNi量の合計量を0.70〜1.00%としたことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  7. 前記Cu量を0.10%以下に制限したことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  8. 前記Al量を0.03%以下に制限したことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  9. 前記N量を0.04〜0.07%としたことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  10. Sn:0.015%以下、
    As:0.015%以下、
    Sb:0.015%以下、
    に制限したことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  11. Pb:0.0015%以下、
    Bi:0.0015%以下、
    に制限したことを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  12. 前記C量を0.08〜0.11%としたことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  13. 前記Ni量を0.20%以下に制限したことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  14. 前記Cr量を8.21〜10.50%としたことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  15. 前記含有するMn量とNi量の合計量を0.70〜1.00%としたことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  16. 前記Cu量を0.10%以下に制限したことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  17. 前記Al量を0.03%以下に制限したことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  18. 前記N量を0.04〜0.07%としたことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  19. Sn:0.015%以下、
    As:0.015%以下、
    Sb:0.015%以下、
    に制限したことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  20. Pb:0.0015%以下、
    Bi:0.0015%以下、
    に制限したことを特徴とする請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  21. Ti:0.010〜0.030%含有することを特徴とする請求項1〜20のうちのいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  22. Co:0.10〜0.75%含有することを特徴とする請求項1〜20のうちのいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
  23. Co:0.10〜0.75%含有することを特徴とする請求項21に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤ。
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